生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_糖尿病の治療または予防剤
出願番号:2012554819
年次:2014
IPC分類:A61K 38/00,A61P 43/00,A61P 3/10,C07K 5/072,C07K 5/093,C07K 5/078,C07K 5/083,C07K 5/097


特許情報キャッシュ

杉原 富人 井上 直樹 小泉 聖子 芳本 忠 尾山 廣 JP 5612131 特許公報(B2) 20140912 2012554819 20120125 糖尿病の治療または予防剤 新田ゼラチン株式会社 000190943 特許業務法人深見特許事務所 110001195 杉原 富人 井上 直樹 小泉 聖子 芳本 忠 尾山 廣 JP 2011015095 20110127 20141022 A61K 38/00 20060101AFI20141002BHJP A61P 43/00 20060101ALI20141002BHJP A61P 3/10 20060101ALI20141002BHJP C07K 5/072 20060101ALN20141002BHJP C07K 5/093 20060101ALN20141002BHJP C07K 5/078 20060101ALN20141002BHJP C07K 5/083 20060101ALN20141002BHJP C07K 5/097 20060101ALN20141002BHJP JPA61K37/02A61P43/00 111A61P3/10C07K5/072C07K5/093C07K5/078C07K5/083C07K5/097 A61K 38/00 A61P 3/10 A61P 43/00 C07K 5/072 C07K 5/093 CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII) 国際公開第2009/035169(WO,A1) 国際公開第2008/066070(WO,A1) 特開2002−326951(JP,A) 国際公開第2010/038323(WO,A1) 国際公開第2010/125910(WO,A1) Biochem.J.,1988年,252,p.723-731 Peptides,2011年,32,p.835-838 5 JP2012051561 20120125 WO2012102308 20120802 24 20130709 六笠 紀子 本発明は、糖尿病の治療または予防剤に関する。より詳しくは、コラーゲンを2段階で酵素処理することで得られるペプチドを含有する糖尿病の治療または予防剤に関する。 糖尿病は、血糖値が病的に高い状態である疾患であり、膵臓のβ細胞が何らかの理由で破壊されてインスリンが枯渇することで生じる1型糖尿病と、血中にインスリンが存在するものの血糖値の調整ができない2型糖尿病に分けられる。インスリンは、骨格筋でグルコースの取り込みを促進し、肝臓で糖新生を抑制し、またグリコーゲンの合成を促進することで、血糖値を調整している。グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)は、下部小腸および大腸に存在するL細胞から血管内に分泌され、膵臓β細胞上のGLP−1受容体に結合して、インスリン分泌を促進する。ジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV)は、標的となるタンパク質のN末第2位のアラニンまたはプロリンを認識して、2アミノ酸を切断することで、同タンパク質を不活性化する。分泌されたGLP−1は、DPPIVで不活性化され、門脈を経由して肝臓から体循環には10〜15%しか回らない(非特許文献1)。従って、DPPIVを阻害することによって、またはGLP−1分泌を促進することによって、インスリン分泌が促進され、血糖値が低下することになるため、最近、糖尿病の治療または予防剤として、DPPIV阻害剤およびGLP−1分泌促進剤が注目されている。 DPPIV阻害剤としては、シタグリプチン等の種々の合成医薬品が知られている。しかし、これらは、糖尿病の治療を第一に考えて、高い薬効を追求したものであるために、低血糖症等の副作用がある。そこで、飲食用素材を分解して得られるペプチドが検討されている。これらのペプチドは、合成医薬品ほどはDPPIV阻害活性が優れてはいないが、人体に対する安全性が担保されており、日常的に服用しても副作用が生じないという点で、極めて有用である。 DPPIV阻害活性を有する、飲食用素材の分解物を含有する混合物については、例えば、以下の特許文献に記載されている。 特許文献1には、コラーゲンを含む飲食用素材を由来とする調製物が記載されている。しかし、実施例記載のコラーゲンペプチド混合物が、いかなる酵素または加水分解条件でコラーゲンを分解して調製されたかが記載されておらず、また、当該コラーゲンペプチド混合物にどのようなペプチドが含まれているかについては、何ら記載されていない。 特許文献2には、コラーゲンまたはゼラチンをコラゲナーゼ等で処理して、さらにプロテアーゼで処理して得られる分解物の混合物がDPPIV阻害活性を有することが記載されている。しかし、当該プロテアーゼには、本発明の2段階目の酵素処理で用いる酵素が有するアミノペプチダーゼN活性またはプロリルトリペプチジルアミノペプチダーゼ活性を有するものではない。また、前記プロテアーゼ分解物の混合物には、どのようなペプチドが含まれているか等については、記載されていない。 他方、DPPIV阻害活性を有するペプチドについて、以下の文献に記載されている。 特許文献3には、チーズの水溶性画分に含まれる24個のペプチドがDPPIV阻害活性を有することが記載されている。しかし、当該ペプチドは、1つを除いて、アミノ酸5つ以上を含む長いペプチドである。特許文献4には、コラーゲンまたはゼラチンをコラゲナーゼ等で処理して得られるペプチドである、Gly−X−Y−(Gly−Z−W)n(nは0〜4の整数、XはProまたはLeu、Y、ZおよびWはそれぞれ独立して同一または異なる任意のアミノ酸(Glyを除く))等が、DPPIV阻害活性を有することが記載されている。しかし、当該ペプチドは、1つを除いて、アミノ酸5つ以上を含む長いペプチドである。非特許文献2には、プロリンを含有するジペプチド、トリペプチドがDPPIV阻害活性を有することが記載されており、特にN末端側に疎水性アミノ酸を含有するジペプチドが高い活性を有することが報告されている。 上記のペプチドは、腸管吸収性が乏しいとの問題を有していた。 GLP−1分泌促進活性を有する、飲食用素材の分解物を含有する混合物については、例えば、以下の文献に記載されている。 特許文献5には、大豆タンパク質のパパイン分解物の混合物が記載されている。非特許文献3には、卵タンパク質の加水分解物の混合物がGLP−1分泌促進活性を有するが、その他のタンパク質の加水分解物の混合物はGLP−1分泌促進活性を示さなかったことが記載されている。非特許文献4には、ホエーおよびカゼインの加水分解物の混合物が記載されている。非特許文献5および6には、とうもろこし由来のゼインの加水分解物の混合物が、GLP−1分泌促進活性とDPPIV阻害活性とを有しており、当該混合物にはGLP−1分泌促進活性を有するペプチドとDPPIV阻害活性を有するペプチドとが含まれていると予想されることが記載されている。 しかし、これらの混合物にどのようなペプチドが含まれているかについては、何ら記載されていない。また、これら文献にはコラーゲンを飲食用素材として用いることは記載されていない。特開2010−13423号公報特開2009−284798号公報特開2007−39424号公報WO2008/066070号公報特開2010−138143号公報実験医学,Vol. 29,No. 5, (増刊), p. 820-835, 2011太田徹他,「DPPIV阻害プロリン含有ペプチドの検索および合成の検討」,第57回 日本食品科学工学会要旨,2010年9月2日,2Ea6Mol. Nutr. Food Res., 2011, 55, 476-484Eur. J. Nutr., (2004) 43: 127-139化学と生物,Vol. 49, No. 1, p. 11-13, 2011Endocrinology, July 2010, 151(7): 3095-3104 本発明が解決しようとする課題は、副作用が少なく、安全性が高く、腸管での吸収や細胞内への移行が容易な、ペプチドを含有する糖尿病の治療または予防剤を提供することにある。また、かかるペプチドを多量に含有するコラーゲンペプチド混合物、およびそのコラーゲンペプチド混合物の製造方法を提供することにある。 本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討を行ったところ、コラーゲンまたはゼラチンを2段階で酵素処理することで得られるコラーゲンペプチド混合物およびそれに含まれるペプチドが、意外にも、DPPIV阻害活性および/またはGLP−1分泌促進活性を有することを見出した。かかるペプチドは、従来知られていたペプチドとは異なって、ほとんどのものがHypを含んでおり、またジペプチドまたはトリペプチドという低分子であるために、腸管での吸収や細胞内への移行が容易であることも見出した。さらには、特殊な酵素の組合せによる2段階の酵素処理を用いる上記製造方法によって、かかるペプチドを多量に含有するコラーゲンペプチド混合物を製造できることも見出した。以上の知見に基づいて、本発明者らは、本発明を完成した。 すなわち、本発明は、以下の通りである。 〔1〕 Glu−Hyp−Gly、Glu−Hyp、Leu−Hyp−Gly、Pro−Ala、Ser−Hyp、Ala−Hyp−Gly、その化学修飾体およびその薬学上許容される塩から選択される3種以上を含有する、コラーゲンペプチド混合物。 〔2〕 Glu−Hyp−Gly、Glu−HypおよびLeu−Hyp−Glyを含有する、〔1〕記載のコラーゲンペプチド混合物。 〔3〕 〔1〕または〔2〕記載のコラーゲンペプチド混合物を含有する、糖尿病の治療または予防剤。 〔4〕 〔1〕または〔2〕記載のコラーゲンペプチド混合物を含有する、DPPIV阻害剤。 〔5〕 〔1〕または〔2〕記載のコラーゲンペプチド混合物を含有する、GLP−1分泌促進剤。 〔6〕 Glu−Hyp−Gly、Glu−Hyp、Leu−Hyp−Gly、Pro−Ala、Ser−Hyp、Ala−Hyp−Gly、Pro−Hyp−Gly、Leu−Hyp、Ile−Hyp、Ser−Hyp−Gly、Gly−Pro−Hyp、(Pro−Hyp−Gly)5、Pro−Hyp、Hyp−Gly、Pro−Gly、Pro−ProおよびAla−Hypからなる群から選ばれる少なくとも1種のペプチドもしくはその化学修飾体またはそれらの薬学上許容される塩を含有する、糖尿病の治療または予防剤。 〔7〕 Glu−Hyp−Gly、Glu−Hyp、Leu−Hyp−Gly、Pro−Ala、Ser−Hyp、Ala−Hyp−Gly、Pro−Hyp−Gly、Leu−Hyp、Ile−HypおよびSer−Hyp−Glyからなる群から選ばれる少なくとも1種のペプチドもしくはその化学修飾体またはそれらの薬学上許容される塩を含有する、DPPIV阻害剤。 〔8〕 Glu−Hyp−Gly、Glu−Hyp、Leu−Hyp−Gly、Pro−Ala、Ser−Hyp、Ala−Hyp−Gly、Gly−Pro−Hyp、(Pro−Hyp−Gly)5、Pro−Hyp、Hyp−Gly、Pro−Gly、Pro−ProおよびAla−Hypからなる群から選ばれる少なくとも1種のペプチドもしくはその化学修飾体またはそれらの薬学上許容される塩を含有する、GLP−1分泌促進剤。 〔9〕 Glu−HypおよびGlu−Hyp−Glyからなる群から選ばれるペプチドもしくはその化学修飾体、またはそれらの薬学上許容される塩。 〔10〕 コラーゲンまたはゼラチンを2段階で酵素処理することによる、Glu−Hyp−Gly、Glu−Hyp、Leu−Hyp−Gly、Pro−Ala、Ser−Hyp、Ala−Hyp−Gly、Pro−Hyp−Gly、Leu−Hyp、Ile−Hyp、Ser−Hyp−Gly、Gly−Pro−Hyp、(Pro−Hyp−Gly)5、Pro−Hyp、Hyp−Gly、Pro−Gly、Pro−ProおよびAla−Hypからなる群より選ばれる少なくとも1種のペプチドを含有するコラーゲンペプチド混合物の製造方法であって、 1次酵素処理で用いる酵素が、コラゲナーゼ、チオールプロテアーゼ、セリンプロテアーゼ、酸性プロテアーゼ、アルカリ性プロテアーゼおよびメタルプロテアーゼからなる群から選択され、 2次酵素処理で用いる酵素が、アミノペプチダーゼN活性を有する酵素、またはアミノペプチダーゼN活性およびプロリルトリペプチジルアミノペプチダーゼ活性を併有する酵素であるか、またはアミノペプチダーゼN活性を有する酵素およびプロリルトリペプチジルアミノペプチダーゼ活性を有する酵素の組合せである、製造方法。 〔11〕 糖尿病を治療または予防するための、〔1〕または〔2〕記載のコラーゲンペプチド混合物。 〔12〕 糖尿病を治療または予防するための、Glu−Hyp−Gly、Glu−Hyp、Leu−Hyp−Gly、Pro−Ala、Ser−Hyp、Ala−Hyp−Gly、Pro−Hyp−Gly、Leu−Hyp、Ile−Hyp、Ser−Hyp−Gly、Gly−Pro−Hyp、(Pro−Hyp−Gly)5、Pro−Hyp、Hyp−Gly、Pro−Gly、Pro−ProおよびAla−Hypからなる群から選ばれる少なくとも1種のペプチドもしくはその化学修飾体またはそれらの薬学上許容される塩。 〔11〕 DPPIVを阻害するための、Glu−Hyp−Gly、Glu−Hyp、Leu−Hyp−Gly、Pro−Ala、Ser−Hyp、Ala−Hyp−Gly、Pro−Hyp−Gly、Leu−Hyp、Ile−HypおよびSer−Hyp−Glyからなる群から選ばれる少なくとも1種のペプチドもしくはその化学修飾体またはそれらの薬学上許容される塩。 〔12〕 GLP−1の分泌を促進するための、Glu−Hyp−Gly、Glu−Hyp、Leu−Hyp−Gly、Pro−Ala、Ser−Hyp、Ala−Hyp−Gly、Gly−Pro−Hyp、(Pro−Hyp−Gly)5、Pro−Hyp、Hyp−Gly、Pro−Gly、Pro−ProおよびAla−Hypからなる群から選ばれる少なくとも1種のペプチドもしくはその化学修飾体、またはそれらの薬学上許容される塩。 〔13〕 〔1〕または〔2〕記載のコラーゲンペプチド混合物を、それを必要とする対象(好ましくは患者)に投与することを含む、糖尿病を治療または予防する方法。 〔14〕 Glu−Hyp−Gly、Glu−Hyp、Leu−Hyp−Gly、Pro−Ala、Ser−Hyp、Ala−Hyp−Gly、Pro−Hyp−Gly、Leu−Hyp、Ile−Hyp、Ser−Hyp−Gly、Gly−Pro−Hyp、(Pro−Hyp−Gly)5、Pro−Hyp、Hyp−Gly、Pro−Gly、Pro−ProおよびAla−Hypからなる群から選ばれる少なくとも1種のペプチドもしくはその化学修飾体またはそれらの薬学上許容される塩を、それを必要とする対象(好ましくは患者)に投与することを含む、糖尿病を治療または予防する方法。 〔15〕 Glu−Hyp−Gly、Glu−Hyp、Leu−Hyp−Gly、Pro−Ala、Ser−Hyp、Ala−Hyp−Gly、Pro−Hyp−Gly、Leu−Hyp、Ile−HypおよびSer−Hyp−Glyからなる群から選ばれる少なくとも1種のペプチドもしくはその化学修飾体またはそれらの薬学上許容される塩を、それを必要とする対象(好ましくは患者)に投与することを含む、DPPIVの阻害方法。 〔16〕 Glu−Hyp−Gly、Glu−Hyp、Leu−Hyp−Gly、Pro−Ala、Ser−Hyp、Ala−Hyp−Gly、Gly−Pro−Hyp、(Pro−Hyp−Gly)5、Pro−Hyp、Hyp−Gly、Pro−Gly、Pro−ProおよびAla−Hypからなる群から選ばれる少なくとも1種のペプチドもしくはその化学修飾体またはそれらの薬学上許容される塩を、それを必要とする対象(好ましくは患者)に投与することを含む、GLP−1の分泌を促進する方法。 本発明で用いられる上記のペプチドを、単に「特定のペプチド」ということがある。また、上記ペプチド分子を構成する各アミノ酸単位を表す3文字表記を一文字表記で表すことがある。具体的には、Leu=L、Hyp=O、Gly=G、Pro=P、Ala=A、Glu=E、Ile=I、Ser=S、F=Pheと略記することがある。 本発明の糖尿病の治療または予防剤、DPPIV阻害剤およびGLP−1分泌促進剤は、副作用が無く、安全性が高く、さらには、消化酵素に対する耐性、腸管での体内への吸収および細胞内への移行が容易であるため、経口投与にも適している。また、本発明のコラーゲンペプチド混合物の製造方法によれば、前記特定のペプチドを多量に含有するコラーゲンペプチド混合物を効果的かつ確実に得ることができる。 以下、本発明にかかる糖尿病の治療または予防剤、DPPIV阻害剤、GLP−1分泌促進剤およびコラーゲンペプチド混合物の製造方法等について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。1.コラーゲンペプチド混合物および特定のペプチド 本発明のコラーゲンペプチド混合物は、EOG、EO、LOG、PA、SO、AOG、その化学修飾体およびその薬学上許容される塩から選択される3種以上を含有する、コラーゲンペプチド混合物である。本コラーゲンペプチド混合物に含まれるペプチド3種以上には、好ましくは、EOG、EO、LOGのいずれかが含まれ、さらに好ましくは、EOG、LOGのいずれかが含まれ、特に好ましくは、LOGが含まれる。EOG、EO、LOG、PA、SO、AOG、その化学修飾体およびその薬学上許容される塩から選択される3種以上の重量の合計は、好ましくは、コラーゲンペプチド混合物に対して2重量%以上であり、より好ましくは3重量%以上であり、さらに好ましくは4重量%以上である。 本発明に用いられる特定のペプチドは、EOG、EO、LOG、PA、SO、AOG、POG、LO、IO、SOG、GPO、(POG)5、PO、OG、PG、PPおよびAOからなる群から選ばれる。EOG、EO、LOG、PA、SO、AOG、POG、LO、IOおよびSOGはDPPIV阻害活性を有しており、EOG、EO、LOG、PA、SO、AOG、GPO、(POG)5、PO、OG、PG、PPおよびAOはGLP−1分泌促進活性を有している。EOG、EO、LOG、PA、SOおよびAOGは、DPPIV阻害活性およびGLP−1分泌促進活性を共に有していることから、好ましいペプチドである。より好ましいペプチドとしては、EOG、EO、LOGが挙げられ、さらに好ましいペプチドとして、EOG、LOGが挙げられ、特に好ましいペプチドとして、LOGが挙げられる。 特定のペプチドは、例えば、後述する、アミノ酸からの合成方法、およびコラーゲンまたはゼラチンを2段階で酵素処理する方法により調製することができる。ただし、これらの方法以外の方法で調製しても良く、例えば、下記2段階酵素処理法に代えて、1次酵素処理を省略した方法や、1次酵素処理および2次酵素処理を同時に行う方法であっても良い。<アミノ酸からの合成方法> アミノ酸から特定のペプチドを合成することができる。アミノ酸からの合成方法としては、一般的に、(1)固相合成法と(2)液相合成法(例えば、特開2003−183298号公報参照)があり、前者の場合は、さらに(A)Fmoc法と(B)Boc法が知られているが、特定のペプチドは、いずれの方法で合成してもよい。 固相法を一例として、以下に詳しく説明する。プロリンを担体ポリスチレンに固定し、アミノ基の保護としてFmoc基あるいはBoc基を使用する公知の固相合成法により合成することができる。すなわち、表面をアミノ基で修飾した直径0.1mm程度のポリスチレン高分子ゲルのビーズを固相として用い、縮合剤としてジイソプロピルカルボジイミド(DIC)を用いた脱水反応によってFmoc(fluorenyl−methoxy−carbonyl)基でアミノ基を保護したプロリンにヒドロキシプロリンを結合(ペプチド結合)させた後、固相を溶媒でよく洗い、残ったヒドロキシプロリンなどを除去する。この後、固相に結合しているプロリンの保護基を除去(脱保護)することにより、POを合成することができる。続いて、同様の方法で、このPOのヒドロキシプロリンのアミノ基にグリシンを結合(ペプチド結合)させることで、POGを得ることができる。このようにして、アミノ酸を順次結合していくことで、目的のペプチドを合成することができる。<化学修飾> 特定のペプチドは、構成アミノ酸のアミノ基またはカルボキシル基が化学修飾されていても良く、ヒドロキシプロリンについては、水酸基が化学修飾されていても良い。その化学修飾によって、弱酸性から中性で溶解性を向上させ、他のDPPIV阻害剤との相溶性向上等を図ることができる。具体的には、ヒドロキシプロリンの水酸基については、O−アセチル化などの化学修飾、グリシンのα−カルボキシル基については、エステル化、アミド化などの化学修飾、プロリンのα−アミノ基については、ポリペプチジル化、スクシニル化、マレイル化、アセチル化、脱アミノ化、ベンゾイル化、アルキルスルホニル化、アリルスルホニル化、ジニトロフェニル化、トリニトロフェニル化、カルバミル化、フェニルカルバミル化、チオール化などの化学修飾が挙げられる。他のDPPIV阻害剤の種類などに応じて、適切な化学修飾を選択すれば良い。また、エチレンジアミン化、スペルミン化などを行うことで、特定のペプチドを塩基性にすることもできる。 特定のペプチドの化学修飾の具体的手段や処理条件は、通常のペプチドの化学修飾技術が適用される。ヒドロキシプロリンの水酸基の化学修飾については、例えば、O−アセチル化は水溶媒中または非水溶媒中で無水酢酸を作用させることなどにより、行うことができる。グリシンのα−カルボキシル基の化学修飾について、例えば、エステル化はメタノールへの懸濁後に乾燥塩化水素ガスを通気することなどにより、アミド化はカルボジイミドなどを作用させることにより、行うことができる。化学修飾のその他の具体例として、特公昭62−44522号公報や特公平5−79046号公報等に記載の化学修飾技術が適用できる。<薬学上許容される塩> 薬学上許容される塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、臭化水素酸塩等の無機酸塩、酢酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、コハク酸塩、シュウ酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩等の有機酸塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩等の無機塩基塩、トリエチルアンモニウム塩等の有機塩基塩等が挙げられる。常法に従って、特定のペプチドを薬学上許容される塩にすることができる。2.コラーゲンペプチド混合物の製造方法 コラーゲンまたはゼラチンを2段階で酵素処理する方法によって、コラーゲンペプチド混合物を製造することができる。また、調製したコラーゲンペプチド混合物をさらに精製することで、特定のペプチドを製造することもできる。 この酵素処理する方法は、具体的には、コラーゲンまたはゼラチンを一般的な方法で1次酵素処理した後に、アミノペプチダーゼN活性を有する酵素、もしくはアミノペプチダーゼN活性およびプロリルトリペプチジルアミノペプチダーゼ活性を併有する酵素、またはアミノペプチダーゼN活性を有する酵素およびプロリルトリペプチジルアミノペプチダーゼ活性を有する酵素の組合せを用いる2次酵素処理を行うという、2段階酵素処理によって、上記特定のペプチドを含むコラーゲンペプチド混合物を得ることができる。 原料のコラーゲンとしては、特に限定するわけではないが、例えば、牛、豚などの哺乳動物由来のコラーゲン、サメ、鯛などの魚類由来のコラーゲン等が挙げられる。これらは、前記哺乳動物の骨、皮部分、前記魚類の骨、皮、鱗部分などから得ることができる。具体的には、前記骨、皮、鱗などに脱脂・脱灰処理、抽出処理などの従来公知の処理を施せば良い。また、原料のゼラチンは、前記コラーゲンを熱水抽出などの従来公知の方法で処理することにより得ることができる。<1次酵素処理> 1次酵素処理で用いる酵素としては、コラーゲンまたはゼラチンのペプチド結合を切断することが可能な酵素であれば、特に限定されないが、通常、タンパク質分解酵素あるいはプロテアーゼと呼ばれる酵素が用いられる。具体的には、例えば、コラゲナーゼ、チオールプロテアーゼ、セリンプロテアーゼ、酸性プロテアーゼ、アルカリ性プロテアーゼ、メタルプロテアーゼなどが挙げられ、これらを単独で、あるいは複数組み合わせて用いることができる。前記チオールプロテアーゼとしては、植物由来のキモパパイン、パパイン、ブロメライン、フィシン、動物由来のカテプシン、カルシウム依存性プロテアーゼなどが知られている。また、前記セリンプロテアーゼとしては、トリプシン、カテプシンDなどが、前記酸性プロテアーゼとしては、ペプシン、キモトリプシンなどが知られている。なお、使用する酵素としては、調製するコラーゲンペプチド混合物および特定のペプチドを医薬または特定保健用食品等に利用することを考慮すると、病原性微生物由来の酵素以外の酵素を用いることが好ましい。 1次酵素処理の処理条件としては、例えば、コラーゲンまたはゼラチン100重量部に対して酵素0.1〜5重量部用い、30〜65℃で1〜72時間処理することができる。上記コラーゲンまたはゼラチンの1次酵素処理により得られるコラーゲンペプチド混合物の平均分子量は、好ましくは500〜2000、より好ましくは500〜1800である。平均分子量が前記範囲にあれば、分子量の比較的大きなペプチドが充分に生成しているといえる。1次酵素処理後に、必要に応じて酵素を失活させても良いが、この場合の失活温度としては、例えば、70〜100℃である。<2次酵素処理> 2次酵素処理で用いる酵素としては、アミノペプチダーゼN活性を有する酵素、またはアミノペプチダーゼN活性およびプロリルトリペプチジルアミノペプチダーゼ活性を併有する酵素であるか、またはアミノペプチダーゼN活性を有する酵素およびプロリルトリペプチジルアミノペプチダーゼ活性を有する酵素の組合せが挙げられる。ここで、「アミノペプチダーゼN活性」は、基本的に、ペプチド鎖のN末端からアミノ酸を遊離させる働きを有するペプチダーゼであり、N末端から2番目にプロリンあるいはヒドロキシプロリン以外のアミノ酸が存在する場合に作用する。また、「プロリルトリペプチジルアミノペプチダーゼ活性」は、N末端から3番目がプロリンあるいはヒドロキシプロリンである基質からN末端3残基を遊離するペプチダーゼのことである。なお、使用する酵素としては、調製するコラーゲンペプチド混合物および特定のペプチドを医薬または特定保健用食品等に利用することを考慮すると、病原性微生物由来の酵素以外の酵素を用いることが好ましい。具体的には、アミノペプチダーゼN活性を有する酵素としては、例えばアミノペプチダーゼN(EC3.4.11.2;Yoshimoto, T., et al., Agric. Biol. Chem., 52: 217-225 (1988)等)が挙げられる。また、プロリルトリペプチジルアミノペプチダーゼ活性を有する酵素としては、例えばプロリルトリぺプチジルアミノペプチダーゼ(EC3.4.14.−;Banbula, A., et al., J.Biol. Chem., 274: 9246-9252, (1999)等)を挙げることができる。 2次酵素処理では、上に述べた酵素、例えば、Aspergillus属由来のアミノペプチダーゼN活性を有する酵素およびプロリルトリペプチジルアミノペプチダーゼ活性を有する酵素を用いた酵素反応がなされる。この反応により、1次酵素処理物には含まれていなかった特定のペプチドが生成する。 2次酵素処理の処理条件としては、例えば、1次酵素処理物100重量部に対して酵素0.01〜5重量部用い、30〜65℃で1〜72時間処理することができる。上記2次酵素処理により得られるコラーゲンペプチド混合物の平均分子量は、好ましくは500〜1800、より好ましくは500〜1500である。この2次酵素処理は、特定構造のペプチド分子の生成を主たる目的としており、1次酵素処理により得られるコラーゲンペプチド混合物のうち、比較的大きなペプチドが過剰に加水分解されてしまわないように、前記平均分子量の範囲となるように2次酵素処理することが好ましい。2次酵素処理後に酵素を失活させる必要があるが、失活温度としては、例えば、70〜100℃である。 さらに、2次酵素処理に用いる酵素として、副生成物の分解などの目的、原料となるコラーゲンの種類、1次酵素処理に用いる酵素の種類に応じて、上記アミノペプチダーゼN活性やプロリルトリペプチジルアミノペプチダーゼ活性の他に、異なる活性を併有する酵素を用いたり、あるいは、異なる活性を有する酵素を併用したりすることができる。 そのような他の活性として、例えば、プロリダーゼ活性やヒドロキシプロリダーゼ活性などのジペプチダーゼ活性を作用させることにより副生するジペプチドを分解したりすることができる。また、アミノペプチダーゼN活性は、基本的にN末端側のアミノ酸を1つずつ遊離するものであるので、原料となるコラーゲンの種類や1次酵素処理に用いる酵素の種類によっては、1次酵素処理での分解が不十分で、2次酵素処理に必要な時間が長くなる場合がある。そこで、例えば、プロリンのカルボキシル基側を加水分解するエンドペプチダーゼであるプロリルオリゴペプチダーゼ活性などの他の活性を作用させることにより、不要部位をオリゴペプチドなどの塊として切断除去することで、2次酵素処理をより効率的に行うことができる。<2段階での酵素処理> この2段階酵素処理について詳しく説明すると、まず、1次酵素処理によって、経口免疫寛容メカニズムを介した骨・軟骨組織の炎症緩和に有用な比較的分子量の大きなペプチド、例えば、[X1−Gly−X2−Hyp−Gly−Pro](X1およびX2≠Hyp)が生成する。 続く2次酵素処理において、上記[X1−Gly−X2−Hyp−Gly−Pro]にアミノペプチダーゼN活性が作用することにより、C末端のプロリンが遊離して[X1−Gly−X2−Hyp−Gly]が得られ、あるいは、さらに、N末端のX1が遊離して、[Gly−X2−Hyp−Gly]が得られる。 さらに、上記[X1−Gly−X2−Hyp−Gly]にアミノペプチダーゼN活性が作用して、グリシンとX2間のペプチド結合が切断されることで、特定のペプチド[X2−Hyp−Gly](X2=Leu,Pro,Glu,SerまたはAla)が得られる。 また、上記[Gly−X2−Hyp−Gly]にプロリルトリペプチジルアミノペプチダーゼ活性が作用して、ヒドロキシプロリンとグリシン間のペプチド結合が切断されて[Gly−X2−Hyp]となり、次に、アミノペプチダーゼN活性が作用することにより、グリシンとX2間のペプチド結合が切断されることで、特定のペプチド[X2−Hyp](X2=Leu,Glu,IleまたはSer)が得られる。 このように、アミノペプチダーゼN活性とプロリルトリペプチジルアミノペプチダーゼ活性との両方を作用させれば、本発明の特定のペプチドのうち、腸管吸収性の優れたジペプチドを効率的に得ることができ、好ましい。 特許文献2で用いられている酵素、例えばプロテアーゼN「アマノ」Gには、アミノペプチダーゼN活性を有する酵素またはプロリルトリペプチジルアミノペプチダーゼ活性を有する酵素が含まれていない。そこで、特許文献2の実施例1(HACP-01−N)と同条件でペプチド混合物(CPT−Cont)を調製し、LC-MS/MS解析法で分析したが、その混合物にはGPO以外は特定のペプチドが含まれていなかった(参照、比較例2)。<コラーゲンペプチド混合物の精製> 前記2段階酵素処理、および必要に応じて追加される発酵によって、コラーゲンペプチド混合物を調製することができる。ただし、同コラーゲンペプチド混合物には、特定のペプチド以外のアミノ酸およびペプチドが含まれているため、必要に応じて、従来公知の方法で精製することもできる。精製方法としては、例えば、限外濾過、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィーなどの各種液体クロマトグラフィー等が挙げられる。 同コラーゲンペプチド混合物を、分画・精製を行うことで、特定のペプチドを得ることができる。分画・精製の方法としては、特に制限はなく、例えば、限外濾過、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィーなどの各種液体クロマトグラフィー、これらを組み合わせた方法などのような従来公知の方法が挙げられる。具体的には、例えば、以下のようにして分画・精製することができる。すなわち、まず、前記コラーゲンペプチド混合物の約2g/10mLをイオン交換カラム(例えば、DEAEトヨパール650Mカラム(東ソー社製)やSPトヨパール650Mカラム(東ソー社製)など)に2回に分けて負荷して、蒸留水で溶出されるボイドボリューム画分を回収する。次いで、回収した画分を前記イオン交換カラムとは逆のイオン交換基を有するカラム(例えば、SPトヨパール650Mカラム(東ソー社製)やDEAEトヨパール650Mカラム(東ソー社製)など)に負荷して、蒸留水で溶出されるボイドボリューム画分を回収する。次に、この画分をゲル濾過カラム(例えば、セファデックスLH−20カラム(ファルマシア社製)など)に負荷し、30%メタノール水溶液で溶出して化学合成品である特定のペプチドが溶出する位置に相当する画分を回収する。本画分については、逆相カラム(例えば、μBondasphere 5μC18 300Åカラム(ウォーターズ社製)など)を装填した高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に供し、0.1%トリフルオロ酢酸を含む32%以下のアセトニトリル水溶液の直線濃度勾配により分画する。そして、回収した特定のペプチド画分を減圧乾固することにより、特定のペプチドを高純度で得ることができる。3.糖尿病の治療または予防剤 本発明にかかるコラーゲンペプチド混合物および特定のペプチド等は、DPPIV阻害活性および/またはGLP−1分泌促進活性を有しており、糖尿病の治療または予防剤として用いることができる。ここで、糖尿病の治療または予防剤とは、糖尿病の治療および/または予防に用いる薬剤を意味する。 コラーゲンペプチド混合物および特定のペプチド等を含有する糖尿病の治療または予防剤は、経口的に又は非経口的に種々の形態の製剤で投与することができる。その形態としては、例えば、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、散剤、粉剤、液剤、注射剤、経皮剤、坐剤、点鼻剤及び吸入剤等が挙げられ、好ましくは経口的に投与する錠剤、顆粒剤、カプセル剤等、非経口的に投与する注射剤、経皮剤等が挙げられる。コラーゲンペプチド混合物および特定のペプチド等の投与量は、患者の状態や体重、化合物の種類、投与経路等によって異なる。成人1日当たり、経口投与の場合は、例えば、約0.1〜1000mg、好ましくは約1〜500mg、より好ましくは約10〜200mgが挙げられる。注射剤の場合は、例えば、約0.01〜200mg、好ましくは約0.1〜100mg、より好ましくは約1〜50mgが挙げられる。その他の形態の製剤は、これらの投与量を参考にして適宜決めることができる。これら製剤は、1日1〜数回に分けて投与するか、または1〜数日に1回投与することができる。なお、経口投与の場合は、食前に投与することで血糖値を正常範囲内で抑えることが可能である。特定のペプチド、特にHypを含有するペプチドは、消化酵素に対する耐性が高いために、アミノ酸への分解がほとんど起こらず、また腸管から血液に迅速に吸収され、あるいは腸管から腸管表面細胞もしくはL細胞に直接吸収されるため、経口投与による摂取が好適である。 経口投与製剤のための医薬担体としては、例えば、賦形剤(結晶性セルロース、乳糖、砂糖、コーンスターチ、リン酸カリウム、ソルビット、グリシン等)、結合剤(シロップ、アラビアゴム、ゼラチン、ソルビット、トラガント、ポリビニルピロリドン等)、潤滑剤(ステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール、シリカ等)、崩壊剤(バレイショデンプン等)及び湿潤剤(ラウリル硫酸ナトリウム等)等の慣用のものを挙げることができる。経口投与製剤は、コラーゲンペプチド混合物または特定のペプチド等と上記医薬担体とを混合したものを、従来公知の方法により、打錠成型によって錠剤としたり、その他、顆粒剤、散剤、カプセル剤などの固形剤、溶液剤、懸濁剤、乳剤などの液剤、凍結乾燥製剤などの任意の形態に調製することもできる。この場合、製剤全量に対し、前記特定のペプチドを、0.001重量部以上の割合で配合することが好ましい。より好ましくは0.01重量部以上の割合で配合する。0.001重量部未満では本発明の効果が充分に発現されないおそれがある。 非経口投与する場合には、例えば、注射用蒸留水、生理的食塩水、ブドウ糖水溶液等を用いて注射剤や点滴剤として、あるいは坐剤等として製剤化することができる。静脈に注入する場合には、コラーゲンペプチド混合物または特定のペプチド等を生理食塩水などで希釈したものを用いるが、その濃度としては、上述の如く、特定構造のペプチド分子の含量を0.1mol/L以上とすることが好ましい。また、前記特定のペプチドの含量が10μmol/L以上であることが好ましい。<他の有効成分> 本発明のコラーゲンペプチド混合物および特定のペプチド等を含有する糖尿病の治療または予防剤は、本発明の効果を害しない範囲で、適宜、他の有効成分と組み合わせることができる。他の有効成分としては、例えば、他の糖尿病治療剤(インスリン製剤、スルホニルウレア剤、ビグアナイド系薬剤、α−グルコシダーゼ阻害剤、インスリン抵抗性改善剤、インスリン分泌促進剤、GLP−1アナログ等)等が挙げられる。その場合、配合剤として用いてもよく、あるいは併用で用いてもよい。4.DPPIV阻害剤/GLP−1分泌促進剤 本発明のDPPIV阻害剤は、上記の通り、糖尿病の治療または予防剤として使用される。それに加えて、本DPPIV阻害剤は、さらに、例えば、発作、虚血、パーキンソン病、片頭痛等の中枢神経系疾患、関節炎、慢性関節リウマチ等の免疫および自己免疫疾患、腫瘍等の治療および予防に用いることができる(特表2004−534836号公報、および「ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤の関節炎発症抑制効果」,田中澄子ら著,炎症,Vol. 18,No. 3, 1998年5月)。 本発明のGLP−1分泌促進剤は、上記の通り、糖尿病の治療または予防剤として使用される。それに加えて、本GLP−1分泌促進剤は、さらに、肺におけるサーファクタント分泌促進作用、心臓における心筋保護作用および心機能改善作用、脳における神経細胞保護作用、記憶脳の増加作用および食欲抑制作用、消化管における胃排泄低下作用、腎臓におけるナトリウム調節作用等を有する。そこで、これらの作用が必要な疾患、例えば、肥満、神経変性症状(アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、脳卒中、多発性硬化症、脳の損傷、脊髄損傷および末梢神経障害等)等の治療および予防のために、用いることができる(非特許文献1および特開2010−90129号公報)。 以下に、本発明の糖尿病の治療または予防剤に含まれるコラーゲンペプチド混合物および特定のペプチド等について、その性能評価試験とその配合例とによって、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下では、便宜上、「重量部」を単に「部」と、「重量%」を「%」と記すことがある。〔特定のペプチドの準備〕 後述する性能評価試験および配合例に用いる特定のペプチドは、前述の固相法により合成した。 すなわち、まず、表面をアミノ基で修飾した直径0.1mm程度のポリスチレン高分子ゲルのビーズを固相として用い、縮合剤としてジイソプロピルカルボジイミド(DIC)10部を用いた脱水反応によってFmoc(fluorenyl−methoxy−carbonyl)基でアミノ基を保護したプロリン45部にアラニン45部を結合(ペプチド結合)させた後、固相を溶媒(エチルアルコール)でよく洗い、残ったプロリンなどを除去した。その後、固相に結合しているプロリンの保護基をトリフルオロ酢酸の温浸により除去(脱保護)することにより、PAを合成した。 上記ペプチド分子の合成には、Libertyペプチド合成システム(CEM社製)を使用した。 同様にして、LO、EO、IO、SO、LOG、POG、EOG、SOG、AOG、AO、GPO、(POG)5、PO、OG、PGおよびPPを合成した。以下に詳しく記すように、LC−MS/MSを用いて、EOおよびEOGの[m/z]を測定した結果、EOは261.1>132.0であり、EOGは318.1>225.0であった。〔他のペプチドの準備〕 後述する性能評価試験および配合例に用いる比較用の他のペプチドとして、PAG、FOおよびIOGの各ペプチドを、上記特定のペプチドと同様に、固相法により合成した。〔実施例1:特定のペプチドを含むコラーゲンペプチド混合物の準備1〕 後述する性能評価試験および配合例に用いる特定のペプチドを含有する豚皮由来のコラーゲンペプチド混合物(CPT−PU)は、以下に示す方法に従って得た。 すなわち、豚皮由来コラーゲンの熱変性物であるゼラチン(I型コラーゲン)1kgを75℃の温水4Lに溶解させ、60℃に温度調節した後、1次反応として、黄色コウジカビ由来プロテアーゼ10gを添加し、pH5.0〜6.0、温度45〜55℃で3時間保持することにより酵素加水分解処理を行った。次いで、2次酵素反応として、これにAspergillus oryzae由来のアミノペプチダーゼN(EC3.4.11.2)およびプロリルトリペプチジルアミノペプチダーゼ(EC3.4.14.−)を各7.5g添加し、これを可溶化した後、50℃で5時間反応させた。反応後、この反応液を10分間100℃に加熱処理し、その後、60℃に冷却し、活性炭と濾過助剤(珪藻土)とを用いて濾過し、得られた母液に120℃で3秒間高温殺菌処理した。そして、殺菌後の母液を噴霧乾燥し、豚皮由来のコラーゲンペプチド混合物(CPT−PU)を得た。 このCPT−PUを、薄層クロマトグラフィー(TLC)に供した。すなわち、TLCプレート(商品名「Cellulose F」,メルク社製)に、水に可溶化したCPT−PUを、10μg滴下し(スポット原点)乾燥させた後、溶媒(n−ブタノール:酢酸:水=4:1:2)で展開した。イサチン−Zn発色液を噴霧し、青色スポットの発色Rf値が同一プレートでの合成ペプチドPOGのRf値と一致することを確認することにより、このCPT−PUがこのペプチドを含むことを確認した。 上記CPT−PUについて、さらに、LC−MS/MS分析を行った。ただし、このCPT−PUにはペプチドが多種含まれていて解析が困難であったため、同サンプルを、Sep−PakC18カートリッジカラム(Waters社製)により逆相クロマト分画分取したのち、凍結乾燥したサンプルを20μLのMQ水で溶解し、LC−MS/MS分析を行うようにした。 上記解析から、このCPT−PUがペプチドLOG、EOG、SOG、AOG、PAをも含むことを確認した。 LC−MS/MSによる定量解析から、前記CPT−PUは、PAを4%、AOG、POGを各々2%、LOG、EOG、SOGを各々1.5%含むものであることが分かった。 ここで、LC−MS/MSによる定量解析は、以下のようにして行った。 HPLC装置として「NANOSPACE SI−2」(資生堂社製)を用いた。この装置は、カラム:Hypersil GOLD PFP 2.1×150mm,5μmを装着している。移動相:(A)0.2%ギ酸および2mM酢酸アンモニウム含有水溶液、(B)メタノールとして、グラジエント設定し、注入量:1μl、カラム温度:40℃でリニアグラジエントをかけた。これに連結したMS/MS(タンデム型質量分析:TSQ Vantage,Thermo Fisher Scientific Inc.)装置を次の条件で使用した。すなわち、イオン化法(positive ESI)を用いて、SRM条件を次のとおりとした(以下、[m/z]で表示する):LOGは302.2>189.4;POGは286.1>189.3;PAは187.1>70.3;EOは261.1>132.0;LOは245.1>132.3;IOは245.2>132.1;EOGは318.1>225.4;SOGは276.1>189.4;SOは219.1>132.2;AOGは260.1>189.4。〔実施例2:特定のペプチドを含むコラーゲンペプチド混合物の準備2〕 後述する性能評価試験および配合例に用いる特定のペプチドを含有する魚鱗由来のコラーゲンペプチド混合物(CPT−P−H)は、魚鱗由来ゼラチンを用いたこと以外は、前記CPT−PUの製造と同様の操作により得た。 このCPT−P−Hを前記CPT−PUの場合と同様にTLCにより分析したところ、ペプチドPOGの存在が確認された。 さらに、LC−MS/MS解析から、このCPT−P−HがペプチドLOG、EOG、SOG、AOG、PAをも含むことを確認した。 LC−MS/MSによる定量解析から、前記CPT−P−Hは、PAを2.5%、SOG、LOG、AOGを各々2%、POGを1.5%、EOGを1%含むものであることが分かった。〔実施例3:特定のペプチドを含むコラーゲンペプチド混合物の準備3〕 後述する性能評価試験および配合例に用いる特定のペプチドを含有する豚皮由来のコラーゲンペプチド混合物(CPT−P−20)は、以下に示す方法に従って得た。 すなわち、豚皮由来コラーゲンの熱変性物であるゼラチン(I型コラーゲン)1kgを20mM Tris−HCl緩衝液(pH7.5)4Lに加温しながら溶解させたのち、40℃に冷却し、1次酵素反応として、1gのコラゲナーゼ(新田ゼラチン社製、Collagenase N2)を添加後、pH7.0〜7.8、40℃で24時間保持することにより酵素分解処理を行った。次いで2次酵素反応として、この反応液にAspergillus niger由来のアミノペプチダーゼN(EC3.4.11.2)およびプロリルトリペプチジルアミノペプチダーゼ(EC3.4.14.−)を各10g添加し、これを可溶化した後、pH4.0、50℃で5時間反応させた。反応後、この反応液を10分間、100℃に加熱処理し、その後、60℃に冷却し、活性炭と濾過助剤(珪藻土)とを用いて濾過し、得られた母液に120℃で3秒間高温殺菌処理した。そして、殺菌後の母液を噴霧乾燥し、CPT−P−20を得た。 このCPT−P−20を前記CPT−PUの場合と同様にTLCにより分析したところ、ペプチドPOGの存在が確認された。 さらに、LC−MS/MS解析から、このCPT−P−20がペプチドPA、LOG、AOG、EOG、SOG、EO、LO、IO、SOをも含むことを確認した。 LC−MS/MSによる定量解析から、前記CPT−P−20は、PAを3%、LOGを2.5%、EOGを2%、AOGを1%、POG、SOG、EO、LO、IO、SOを各々0.5%含むものであることが分かった。〔実施例4:特定のペプチドを含むコラーゲンペプチド混合物の準備4〕 後述する性能評価試験および配合例に用いる特定のペプチドを含有する豚皮由来のコラーゲンペプチド混合物(CPT−P−22)は、以下に示す方法に従って得た。 すなわち、豚皮由来コラーゲンの熱変性物であるゼラチン(I型コラーゲン)1kgを20mM Tris−HCl緩衝液(pH7.5)4Lに加温しながら溶解させたのち、40℃に冷却し、1次酵素反応として、1gのコラゲナーゼ(新田ゼラチン社製、Collagenase N2)を添加後、pH7.0〜7.8、40℃で24時間保持することにより酵素分解処理を行った。次いで2次酵素反応として、この反応液にAspergillus oryzae由来のアミノペプチダーゼN(EC3.4.11.2)およびプロリルトリペプチジルアミノペプチダーゼ(EC3.4.14.−)を各10g添加し、これを可溶化した後、pH4.0、50℃で3時間反応させた。反応後、この反応液を10分間100℃に加熱処理し、その後、60℃に冷却し、活性炭と濾過助剤(珪藻土)とを用いて濾過し、得られた母液に120℃で3秒間高温殺菌処理した。そして、殺菌後の母液を噴霧乾燥し、CPT−P−22を得た。 このCPT−P−22を前記CPT−PUの場合と同様にTLCにより分析したところ、ペプチドPOGの存在が確認された。 さらに、LC−MS/MS解析から、このCPT−P−22がペプチドLOG、EOG、SOG、AOG、EO、LO、IO、PAをも含むことを確認した。 LC−MS/MSによる定量解析から、前記CPT−P−22は、PAを3%、LOGを2.5%、POG、AOG、EOGを各々1%、SOG、EO、LO、IOを各々0.5%含むものであることが分かった。〔実施例5:特定のペプチドを含むコラーゲンペプチド混合物の準備5〕 後述する性能評価試験および配合例に用いる特定のペプチドを含有する豚皮由来のコラーゲンペプチド混合物(CPT−P−25)は、以下に示す方法に従って得た。 すなわち、豚皮由来コラーゲンの熱変性物であるゼラチン(I型コラーゲン)1kgを20mM Tris−HCl緩衝液(pH7.5)4Lに加温しながら溶解させたのち、40℃に冷却し、1次酵素反応として、1gのコラゲナーゼ(新田ゼラチン社製、Collagenase N2)を添加後、pH7.0〜7.8、40℃で24時間保持することにより酵素分解処理を行った。次いで2次酵素反応として、この反応液にAspergillus niger由来のアミノペプチダーゼN(EC3.4.11.2)およびプロリルトリペプチジルアミノペプチダーゼ(EC3.4.14.−)を各7.5g添加し、これを可溶化した後、pH4.0、50℃で3時間反応させた。反応後、この反応液を10分間100℃に加熱処理し、その後、60℃に冷却し、活性炭と濾過助剤(珪藻土)とを用いて濾過し、得られた母液に120℃で3秒間高温殺菌処理した。そして、殺菌後の母液を噴霧乾燥し、CPT−P−25を得た。 このCPT−P−25を前記CPT−PUの場合と同様にTLCにより分析したところ、ペプチドPOGの存在が確認された。 さらに、LC−MS/MS解析から、このCPT−P−25がペプチドLOG、EOG、SOG、AOG、EO、LO、PAをも含むことを確認した。 LC−MS/MSによる定量解析から、前記CPT−P−25は、POGを4%、PAを2.5%、LOGを1%、AOG、EOG、SOG、EO、LOを各々0.5%含むものであることが分かった。〔実施例6:特定のペプチドを含むコラーゲンペプチド混合物の準備6〕 魚鱗由来のコラーゲンペプチド(CPT−PP)は、1次反応としてキウイフルーツ由来のアクチニダイン(EC3.4.22.14)20gを用いた以外は、実施例2のCPT−P−Uの製造と同様の操作により得た。 このCPT−PPを前記CPT−PUの場合と同様にTLCにより分析したところ、ペプチドPOGの存在が確認された。 さらに、LC−MS/MS解析から、このCPT−PPがペプチドLOG、EOG、SOG、AOG、EO、PAをも含むことを確認した。 LC−MS/MSによる定量解析から、前記CPT−PPは、PAを5%、LOGを2%、AOG、EOG、SOG、EOを各々1.5%、POGを0.5%含むものであることが分かった。〔比較例1:特定のペプチドを含まないコラーゲンペプチド混合物の準備〕 後述する性能評価試験および配合例に用いる、GPO以外に特定のペプチドのいずれも含有しない比較用のコラーゲンペプチド混合物(CPT−JB)は、以下に示す方法に従って得た。 すなわち、豚皮由来コラーゲンの熱変性物であるゼラチン(I型コラーゲン)1kgを20mM Tris−HCl緩衝液(pH7.5)4Lに加温しながら溶解させたのち、40℃に冷却し、1次酵素反応として、1gのコラゲナーゼ(新田ゼラチン社製,Collagenase N2)を添加後、pH7.0〜7.8、40℃で18時間保持することにより酵素分解処理を行った。次いで、酵素加水分解処理で得られた溶液を10分間100℃に加熱処理し、その後、60℃に冷却し、活性炭と濾過助剤(珪藻土)とを用いて濾過し、得られた母液に120℃で3秒間高温殺菌処理した。そして、殺菌後の母液を噴霧乾燥し、CPT−JBを得た。 また、このCPT−JBを前記CPT−PUの場合と同様にTLCにより分析し、さらに、LC−MS/MS解析を行ったが、GPO以外に特定のペプチドのいずれの存在も確認できなかった。〔比較例2:特定のペプチドを含まないコラーゲンペプチド混合物の準備〕 後述する性能評価試験および配合例に用いる特定のペプチドのいずれも含有しない比較用のコラーゲンペプチド混合物(CPT−Cont)は、以下に示す方法に従って得た。 すなわち、コラーゲンペプチドHACP−01(ゼライス社製、コラゲナーゼ分解物)10gとプロテアーゼN「アマノ」G(天野エンザイム社製、Bacillus subtilis由来)0.1gを水に溶解し、55℃で1時間加熱し酵素処理した後、80℃で30分間加熱処理して酵素を失活させた。この酵素処理溶液を凍結乾燥し、CPT−Contを得た。 また、このCPT−Contを前記CPT−PUの場合と同様にTLCにより分析し、さらに、LC−MS/MS解析を行ったが、特定のペプチドのいずれの存在も確認できなかった。〔性能評価試験〕 上記各ペプチドおよびコラーゲンペプチド混合物を用いて行った各性能評価試験の詳細を以下に示す。<評価試験1:DPPIV阻害活性> DPPIV阻害活性を、DPPIV阻害活性測定キット「DPPIV Drug Discovery Kit−AK−499」(バイオモル社製)を用いて測定した。ペプチドサンプル基質としては、H−Gly−Pro−7−アミノ−4−メチルクマリン「P189−9090 AMC基質」(バイオモル社製)を用い、酵素としては、DPPIV「E434−9090 DPPIV酵素;ヒト組み替え体」(バイオモル社製)を用いた。 阻害活性は、DPPIV活性を50%阻害するときの濃度で評価した。この値が低いものほど阻害活性が高く、少量で効率的にDPPIV活性を阻害するものである。 ペプチドについての結果を表1に、コラーゲンペプチド混合物についての結果を表2に示す。<評価試験2:GLP−1分泌促進活性> ヒト由来腸管L細胞(NCI−H716細胞:ATCC製)を用いて、FBSを10%含むRPIM培地(ATCC社製)にて、5×105cells/ml×200μl(1×105cells/well)でPre−coated poly−L−lysin plate(96wells plate)に播種し、2日培養した。プレートに細胞が接着していることを確認後、培地を試験培地(146mM NaCl,5mM KCl,1.5mM CaCl2,1mM MgSO4,20mM HEPES,5.6mM glucose,2mg/ml BSA)に置き換え、サンプルを各終濃度5mMになるように添加した。1時間後の培養上清をPBSにて30倍希釈し、GLP−1 ELISAキット(レビス製)にてプロトコールに従って試験した。 サンプル無添加(Blank)のGLP−1分泌を100%とし、サンプル5mM添加区のGLP−1分泌促進率を算出した。 ペプチドについての結果を表3に、コラーゲンペプチド混合物についての結果を表4に示す。 (n=4)BlankのGLP−1濃度は742±231pg/ml。 (n=4)BlankのGLP−1濃度は742±231pg/ml。<評価試験3:腸管吸収性> ウィスター系雄ラット(170g)を一晩絶食させて実験に供した。検体試料には、上記各ペプチドを各215nmol/10mL用い、胃内投与した。 試験方法としては、ラットの心臓と門脈にカニューレを装着して1方向性灌流を行った。灌流液としては、NaCl 9.0g、5.75%KCl 8mL、10.55%KH2PO4 2mL、19%MgSO4 2mL、NaHCO3 2.73g、グルコース3.43g、水1255mLからなるクレブス−リンガー重炭酸液(KRB液,pH7.4)に、前記KRB液500mLに対して牛血清アルブミン10g、デキサメタゾン(0.123mg/mL)0.5mL、ノルアドレナリン(0.024mg/mL)0.5mLを加えたものを用いた。 門脈から採取された灌流試料溶液5.0mLに30%スルフォサリチル酸を0.5mL加え、激しく撹拌し、冷蔵庫で一晩放置した。この試料を3000rpmで10分間遠心分離し、除タンパク質を行った。遠心上澄液について、その0.5mL中のヒドロキシプロリン量を比色定量することにより、遊離型Hyp量を得た。 さらに、前記遠心上澄液3.0mLをネジ口試験管に秤取し、これに当量の濃塩酸を加え、110℃で24時間加水分解した。エバポレーターで濃縮乾固し、塩酸を除去し、5mLの蒸留水に溶解し、飽和水酸化リチウム溶液を数滴加えてpH5〜7に調整し、10mLに定容した。この溶液2mLについて、ヒドロキシプロリン量を比色定量することにより、総Hyp量を得た。加水分解後の総Hyp量から、加水分解前の遊離型Hyp量を差し引いて得られる値がペプチド態Hyp量となる。このペプチド態Hyp量から、検体試料の各ペプチドがラット門脈灌流液中に吸収された定量値をまず確認した。 上記ヒドロキシプロリン量の比色定量は、Firschein and Shill法により行い、具体的には、以下のようにして行った。 すなわち、試料溶液2mLに2−プロパノール2mLを加え、十分に撹拌した。ここに酸化剤であるクロラミンT液0.5mLを加えて正確に4分間放置した後、氷冷した。ここにp−ジメチルアミノベンズアルデヒド溶液5mLを加えて、十分に撹拌した後、沸騰水浴中で正確に2分間加熱した。その後、直ちに氷冷し、1時間放置した後、波長575nmで比色定量した。 なお、クロラミンT液は、クロラミンT(5g)を蒸留水50mLに溶解調整し、冷蔵保存しておき、使用直前に酢酸緩衝液(pH6.0)で1:4に希釈して用いた。また、p−ジメチルアミノベンズアルデヒド溶液(エーリッヒ溶液)は、p−ジメチルアミノベンズアルデヒド粉末20gに濃塩酸22mLを加えて沸騰水中で加熱溶解し、直ちに氷水中にて冷却し、2−プロパノール122mLを加えて撹拌溶解し調製した。 つぎに、ラット門脈灌流液中に回収されたペプチド、すなわち、腸管吸収された上記各ペプチドの同定、定量を下記によるHPLC分析および質量分析(LC/MS/MS)を用いて行った。(HPLC分析) 灌流液中のペプチドの分析を逆相HPLC分析により行った。HPLC装置としては、送液ポンプ、デガッサ、オートサンプラ、カラムオープン、紫外部分光光度計、プリンター、システムコントローラーから構成される日本分光社製のLCSS−905システムを用いた。逆相カラムは、Nova Pak C18(3.9×150mm)を用いた。 0.1%TFA含有アセトニトリル−水系のリニアグラディエント移動層を用い、試料注入量は70μL、流速は1mL/minであった。(LC/MS/MS分析) HPLC装置としてはU980HPLC(日本分光社製)を用い、この装置はODS(C18)カラム(Mightysil RP−18,2×250mm,Kanto Chemical Co Ltd社製)を装着している。移動相溶媒としては、0.2%蟻酸含有アセトニトリル−水系とし、リニアグラディエントにより40分間で0%から40%アセトニトリルまで濃度を上昇させ、100%アセトニトリルで10分間洗浄を行った。試料注入量は10μLであり、カラム温度は40℃であった。 MS分析は、4チャンネルのMultiple Reaction Monitoring法によるQuattro LC質量分光光度計(Micromass,Manchester,UK)によるMS/MS方式で行った。すなわち、HPLCからの溶出液を[M+H]+であるm/zとそのフラグメントイオン種のm/zでモニターした。このとき、[M+H]+m/zとしては、LOGは302.2>189.4;POGは286.1>189.3;PAは187.1>70.3;EOは261.1>243.4;LOは245.1>132.3;IOは245.2>132.1;EOGは318.1>225.4;SOGは276.1>189.4;SOは219.1>132.2;AOGは260.1>189.4を、それぞれ用いてモニターした。 灌流液を最終濃度3%のスルフォサリチル酸処理し、除タンパク質を行った。上清液を凍結乾燥し、乾燥粉末10mgを蒸留水に溶解し、陽イオン交換樹脂カラム処理し、アンモニア溶出画分を得た。この画分の溶媒を除去し、蒸留水に溶解し、LC/MS/MS分析した。 結果は、表5に示すとおりであった。<評価試験4:グルコース負荷試験による耐糖能評価> 6週齢雄ob/obマウス(日本エスエルシー)を通常飼料(MF、オリエンタル酵母)を7日間給餌して順化させ実験に供した。同マウスを一晩(16時間)絶食させた後、各コラーゲンペプチド(0.85g/kg)またはカゼイン(0.85g/kg、DMV社、オランダ)を経口投与し、30分後にグルコース(2g/kg)を経口投与して、耐糖能に及ぼす効果をグルコース負荷試験(2g/kg)を実施した。0,15,30,60および120分後、血中グルコース測定装置(グルテストエースR、三和化学研究所社製)を用いて血糖値を測定し、AUC0−120 minを算出して、評価を行った。結果は、表6に示すとおりであった。 *:カゼインに比較して有意差あり(P<0.05)。<性能評価試験の結果の考察> 上記の通り、Glu−Hyp−Gly、Glu−Hyp、Leu−Hyp−Gly、Pro−Ala、Ser−Hyp、Ala−Hyp−Gly、Pro−Hyp−Gly、Leu−Hyp、Ile−Hyp、Ser−Hyp−Gly、Gly−Pro−Hyp、(Pro−Hyp−Gly)5、Pro−Hyp、Hyp−Gly、Pro−Gly、Pro−ProおよびAla−Hypは、DPPIV阻害活性を有している。特に、Glu−Hyp−Gly、Glu−Hyp、Leu−Hyp−Gly、Pro−Ala、Ser−Hyp、Ala−Hyp−Gly、Pro−Hyp−Gly、Leu−Hyp、Ile−HypおよびSer−Hyp−GlyのDPPIV阻害活性は高い。また、Glu−Hyp−Gly、Glu−Hyp、Leu−Hyp−Gly、Pro−Ala、Ser−Hyp、Ala−Hyp−Gly、Gly−Pro−Hyp、(Pro−Hyp−Gly)5、Pro−Hyp、Hyp−Gly、Pro−Gly、Pro−ProおよびAla−Hypは、GLP−1分泌促進活性を有している。さらに、これらのペプチドは、消化酵素に対する耐性が高いために、アミノ酸への分解がほとんど起こらず、また腸管から血液に迅速に吸収され、あるいは腸管から腸管表面細胞もしくはL細胞に直接吸収されるため、経口投与によって優れた効果を示す。〔配合例〕 上記特定のペプチドを用いて、本発明にかかる製剤を得た。それらの配合例を以下に示す。<実施例7〜12> 表7に示す配合で、各材料を混合し、賦形剤としての結晶性セルロースを、表7に記載の配合全体に対して10部の割合で用いて、常法により打錠成形することにより、経口用として用いうる、実施例7〜12にかかる製剤を得た。<実施例13> 上記CPT−PUを用いてチュアブルタイプのタブレットを製造した。 具体的には、下記配合成分を混合し、打錠成型器を用いて、一粒0.8gのチュアブルタイプのタブレットを調製した。このチュアブルタイプのタブレットは、全量を100%としたとき、POGを1%、PAを2%、AOGを1%、LOG、EOG、SOGを各々0.75%含むものであった。CPT−PU 50.0kgアスコルビン酸 10.0kgミクロカルマグS(エスケーフーヅ社製) 4.6kgマビット(林原社製) 19.0kg結晶セルロース 10.0kg乳化剤 3.2kgアスパルテーム 0.5kg発酵乳パウダー 1.4kg粉末香料 1.0kgクエン酸 0.3kg<実施例14> 上記CPT−PUを用い、下記配合成分を混合して、100〜140mLのお湯に溶解させて飲用する粉末コンソメスープ(1袋6.0g)を調製した。この粉末コンソメスープは、全量を100%としたとき、POGを0.7%、PAを1.4%、AOGを0.7%、LOG、EOG、SOGを各々0.6%含むものであった。CPT−PU 35.0kgチキンエキスパウダー 25.0kg食塩 18.0kgブドウ糖 7.7kg乳酸カルシウム 7.0kgグルタミン酸ナトリウム 4.0kgオニオンエキスパウダー 1.0kgHVP 1.0kgビーフフレーバー 0.5kg5’−リボヌクレオチド2ナトリウム 0.5kgホワイトペッパー 0.2kgターメリック 0.1kg<実施例15> 上記CPT−PUを用い、下記配合成分を混合して、100〜150mLの水に溶解させて飲用する粉末ジュース(1袋13.0g)を調製した。この粉末ジュースは、全量を100%としたとき、POGを0.8%、PAを1.6%、AOGを0.8%、LOG、EOG、SOGを各々0.6%含むものであった。CPT−PU 40.4kgアスコルビン酸ナトリウム 1.2kgエリスリトール 52.0kgアセスルファムK 0.1kgアスパルテーム 0.1kgクエン酸ナトリウム 0.8kgクエン酸(結晶) 4.6kgマスカットフレーバー 0.8kg<実施例16> 上記CPT−PUを用い、下記配合成分に従い、精製水に他の配合成分を溶解し、pH3.5、B’×9.0%に調製したのち、110℃で30秒加熱殺菌処理を施し、10℃に冷却してから紙パックに無菌充填して、清涼飲料水(1パック125mL)を調製した。この清涼飲料水は、全量を100%としたとき、POGを0.05%、PAを0.1%、AOGを0.05%、LOG、EOG、SOGを各々0.04%含むものであった。CPT−PU 2.5kgビタミンミックスDN(BASFジャパン社製)0.1kgエリスリトール 5.5kgアセスルファムK 0.015kgアスパルテーム 0.005kgクエン酸 約0.6kgフルーツミックスフレーバー 0.16Lライチフレーバー 0.04L精製水 残量(合計が100.0kgになるように設定)<実施例17> まず、下記配合成分のうちの精製水(B)に上記CPT−PUおよびゼラチンを浸漬して30分間膨潤させたのち、80℃で30分間加熱して完全に溶解させ、ゼラチン溶液とした。次に、下記配合成分のうちの精製水(A)にミルクオリゴ糖、粉末麦芽還元糖、エリスリトール、および難消化性デキストリンを溶解させ、煮詰めた後、アスパルテーム、前記ゼラチン溶液、予め精製水(A)の一部に溶解させたクエン酸(結晶)、ペパーミントフレーバー、ミントフレーバー、レモンフレーバー、およびベニバナ黄色素を添加し、B’×79〜81%に調製したのち脱泡し、スターチモールドに充填して室温で24時間乾燥させ、グミゼリー(1粒4g)を調製した。このグミゼリーは、全量を100%としたとき、POGを0.1%、PAを0.2%、AOGを0.1%、LOG、EOG、SOGを各々0.08%含むものであった。CPT−PU 5.0kgミルクオリゴ糖 41.0kg粉末麦芽還元糖 31.0kgエリスリトール 5.0kg難消化性デキストリン 5.0kgアスパルテーム 0.05kgゼラチン(APH250、新田ゼラチン社製) 7.0kgクエン酸(結晶) 1.2kgペパーミントフレーバー 0.6Lミントフレーバー 0.2Lレモンフレーバー 0.7Lベニバナ黄色素 適量精製水(A) 20.0L精製水(B) 18.0L<実施例18> 実施例6の製剤を用いて、滅菌済みの生理的食塩水でLOGが2.5mMの濃度となるよう可溶化することにより、静脈への注入用液剤を得た。 本発明によって、糖尿病の治療または予防剤が提供される。また、糖尿病の治療または予防剤として使用しうるコラーゲンペプチド混合物、およびその製造方法が提供される。 Glu−Hyp−Gly、Glu−Hyp、Leu−Hyp−Gly、Pro−Ala、Ser−Hyp、Ala−Hyp−Gly、およびその薬学上許容される塩から選択される3種以上を含有するコラーゲンペプチド混合物を含有する、糖尿病の治療または予防剤。 Glu−Hyp−Gly、Glu−HypおよびLeu−Hyp−Glyを含有する、請求項1記載の糖尿病の治療または予防剤。 Glu−Hyp−Gly、Glu−Hyp、Leu−Hyp−Gly、Pro−Ala、Ser−HypおよびAla−Hyp−Glyから選ばれる少なくとも1種のペプチドまたはそれらの薬学上許容される塩を含有する、糖尿病の治療または予防剤。 Glu−Hyp−Gly、Glu−Hyp、Leu−Hyp−Gly、Pro−Ala、Ser−HypおよびAla−Hyp−Glyから選ばれる少なくとも1種のペプチドまたはそれらの薬学上許容される塩を含有する、ジペプチジルペプチダーゼIVを阻害するための医薬。 Glu−Hyp−Gly、Glu−Hyp、Leu−Hyp−Gly、Pro−Ala、Ser−HypおよびAla−Hyp−Glyから選ばれる少なくとも1種のペプチドまたはそれらの薬学上許容される塩を含有する、グルカゴン様ペプチド−1の分泌を促進するための医薬。


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