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タイトル:特許公報(B1)_テロメア配列増幅用プライマー
出願番号:2012549174
年次:2013
IPC分類:C12N 15/09,C12Q 1/68


特許情報キャッシュ

山田 修 JP 5288387 特許公報(B1) 20130614 2012549174 20120928 テロメア配列増幅用プライマー 学校法人東京女子医科大学 591173198 辻居 幸一 100092093 熊倉 禎男 100082005 箱田 篤 100084663 浅井 賢治 100093300 山崎 一夫 100119013 市川 さつき 100123777 志村 将 100162422 山田 修 JP 2011226187 20111013 JP 2012092252 20120413 20130911 C12N 15/09 20060101AFI20130822BHJP C12Q 1/68 20060101ALI20130822BHJP JPC12N15/00 AC12Q1/68 A C12N 15/00−15/90 C12Q 1/68 CAplus/MEDLINE/BIOSIS/WPIDS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) PubMed 特表2005−515778(JP,A) 特表2006−516407(JP,A) 国際公開第2010/075413(WO,A1) Nucleic Acids Res.,2002年,vol.30, no.10,pp.e47(1-6) Forenscic Sci. Int. Genet. Suppl. Ser.,2008年,vol.1, no.1,pp.569-571 Nucleic Acids Res.,2009年,vol.37, no.3,pp.e21(1-7) 8 JP2012075242 20120928 32 20121029 特許法第30条第2項適用 2011年9月30日 社団法人日本血液学会東京事務局「臨床血液」編集部発行の「臨床血液」第52巻第9号第557(1323)頁に発表 特許法第30条第2項適用 2011年10月14日 名古屋国際会議場において開催された社団法人日本血液学会主催の「第73回日本血液学会学術集会」において文書をもって発表 戸来 幸男 本発明は、テロメア配列増幅用プライマーに関する。また、本発明は、該プライマーを用いてテロメア配列を増幅する方法に関する。 テロメアは、染色体の末端部にある保護構造であり、TTAGGGの繰り返し配列を有する。正常細胞では、テロメアは細胞分裂のたびに次第に短小化するため、加齢と共に短小化することが知られている。 テロメアを検出するためにはその繰り返し配列を増幅させて検出する必要がある。標的核酸の選択的な増幅により標的核酸の存在を検出するための方法として、適切なプライマーを使用するポリメラーゼ連鎖反応(PCR)が知られている。しかしながら、繰り返し配列であるテロメアをPCRにより増幅する場合、プライマー同士がハイブリダイズしてプライマー二量体を形成してしまうことから、PCRによってテロメアを選択的に増幅するのは困難と考えられていた。 PCRによってテロメア配列を増幅し、定量する方法として、コーソン(Cawthon)らにより報告された方法がある(国際公開第2003/064615号パンフレット及び「Richard M. Cawthon、定量PCRによるテロメア測定(Telomere measurement by quantitative PCR)、Nucleic Acids Research、第30巻、第10号、e47、2002年」参照)。コーソンの方法では、第1のプライマーの少なくとも1つのヌクレオチドが、第2のプライマーの3’末端ヌクレオチド残基との間でミスマッチを形成するように変異された、該第1のプライマーと該第2のプライマーとからなるプライマーセットが使用された。また、コーソンの方法では、相対定量法により、テロメアの量を定量していた。 本来、繰り返し配列であるテロメアをPCRで増幅し、電気泳動法を用いて検出した場合、増幅されたテロメア配列はきれいなスメア状に検出されるはずであるが、コーソンの方法では、テロメア配列はきれいなスメア状に検出されず、若干ラダー状に近い形で検出されていた。これは、コーソンの方法で使用したプライマー等のPCR条件は、テロメア配列を十分な増幅効率及び特異性でもって増幅させるのに十分なものではなかったからと考えられる。そのため、コーソンらの開示した方法ではテロメアの定量に広く利用できるものとは言えないと考えられる。 カールソン(Karlsson)らは、上記のコーソンの方法で使用されたプライマーを一部変更したことを除いて、コーソンの方法と同様の方法を報告した(「Andreas O. Karlsson et al.、テロメアリピート解析による法医学試料におけるヒト年齢の推定(Estimating human age in forensic sample by analysis of telomere repeats)、Forensic Science International: Genetics Supplement Series 1: 第569〜571頁、2008年」参照)。 しかしながら、コーソンの方法に比べて、著しく高いテロメア配列の増幅効率及び特異性を達成したものではない。また、カールソンらの開示した方法ではテロメアの定量に広く利用できるものとは言えない。 本発明は、テロメア配列を高い増幅効率で増幅することができるプライマー、テロメア配列を高い増幅効率で増幅する方法、及び被検2倍体細胞1個当たりのテロメアを定量する方法を提供することを目的とする。 鋭意検討を重ねた結果、特定の塩基配列を有するプライマーを用いることによって、上記目的を達成することができることを見出した。本発明は、これらの新規な知見に基づいて完成されたものである。 即ち、本発明は、以下の式(1)又は(2)で表されるテロメア配列増幅用プライマーを提供する。式(1)L1−(R1)n1 (式中、繰り返し単位であるR1はGTAGGGで示される塩基配列を表し、n1は繰り返し単位であるR1の個数を表し、5又は6であり、n1が5のとき、L1は16個以下の塩基からなるリンカーを表し、n1が6のとき、L1は8個以下の塩基からなるリンカーを表す。)式(2)L2−(R2)n2(X)(式中、繰り返し単位であるR2はGTAGGGで示される塩基配列を表し、Xは、前記繰り返し単位の5’末端側、隣接するいずれか2つの前記繰り返し単位の間又は前記繰り返し単位の3’末端側のいずれか1箇所に結合される、GTAGGGで表される塩基配列から1又は2個の塩基が欠失又は置換されてなる配列を表し、n2は繰り返し単位であるR2の個数を表し、5又は6であり、n2が5のとき、L2は4〜8個の塩基からなるリンカーを表し、n2が6のとき、L2は8個の塩基からなるリンカーを表す。) また、本発明は、上記式(1)又は(2)で表されるプライマーと、配列番号2〜4のいずれかで表される塩基配列からなる少なくとも1つのプライマーとを組み合わせた、テロメア配列増幅用プライマーセットを提供する。 更に、本発明は、上記式(1)又は(2)で表されるプライマーと配列番号2〜4のいずれかで表される塩基配列からなる少なくとも1つのプライマーとを組み合わせたテロメア配列増幅用プライマーセットを用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行うことにより、テロメア配列を増幅する方法を提供する。 更にまた、本発明は、被検2倍体細胞1個当たりのテロメアを定量する方法であって、(a)TTAGGGからなる塩基配列の繰り返し配列である合成テロメアオリゴマーについて、リアルタイムPCRを用いて、テロメア量とCt(threshold cycle)値との関係を示す検量線を作成する工程、(b)被検2倍体細胞の細胞集団サンプルを、工程(a)と同じ条件のリアルタイムPCRに付して、Ct値を得る工程、(c)工程(b)のCt値を工程(a)の検量線にあてはめて、細胞集団サンプル中のテロメア量(X)を得る工程、及び、(d)工程(c)のXを下記式にあてはめて、被検2倍体細胞1個当たりのテロメア量(Y)を得る工程:Y=X/ZZ:被検2倍体細胞中に存在するシングルコピー遺伝子を指標として求めた、細胞集団サンプルに含まれる細胞数を含み、 工程(a)及び(b)のリアルタイムPCRを、上記式(1)又は(2)で表されるプライマーと、配列番号2〜4のいずれかで表される塩基配列からなる少なくとも1つのプライマーとを組み合わせたテロメア配列増幅用プライマーセットを用いて行うことを特徴とする方法を提供する。 本発明によれば、テロメア配列を高い増幅効率で精度よく増幅することができる。これは、当業者には予測できない顕著な効果である。これにより、少量のサンプルについてテロメア量を定量すること、及び僅かなテロメア量の違いについて検出することも可能になる。 また、本発明の被検2倍体細胞1個当たりのテロメアを定量する方法を採用することにより、テロメア量の絶対値が得られるため、異なった実験室間のデータを直接比較することが可能になる。配列番号1で表される塩基配列からなるプライマー(Yama1F primer)と配列番号2で表される塩基配列からなるプライマー(Yama1R primer)とを組み合わせたテロメア配列増幅用プライマーセットを用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行った場合の、各プライマーのテロメア配列とのハイブリダイゼーションを示した図である。配列番号1で表される塩基配列からなるプライマー(Yama1F primer)と配列番号2で表される塩基配列からなるプライマー(Yama1R primer)とを組み合わせたテロメア配列増幅用プライマーセットを用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行った場合の、各プライマー同士のハイブリダイゼーションを示した図である。図3は、エチジウムブロマイド含有のアガロースゲル電気泳動により分離された、蛍光により視覚化されたPCR増幅産物を示す図である。一番左のレーンで使用されたPHYマーカー(PHY marker)により、上から順に4870塩基対(bp)、2016bp、1360bp、1107bp、926bp及び658bpの位置が示される。増幅されたヒトPlacentaテロメアDNAは、約2000 bp以下のスメア状に観察される。図4は、図3で観察された蛍光強度をNIH Image 1.58ソフトウェアにより画像処理解析し、増幅効率を数値化したグラフである。図5は、エチジウムブロマイド含有のアガロースゲル電気泳動により分離された、蛍光により視覚化されたPCR増幅産物を示す図である。H-Yama1+B-Yama1は、Yama1F及びYama1Rの組合せを意味する。H-Caw+B-Yama1は、コーソン(Cawthon)が使用したフォワードプライマー(下記の表1で示されるCawthonF)のリンカー配列をYama1Fの繰り返し配列に結合してなるプライマーと、コーソンが使用したリバースプライマー(下記の表1で示されるCawthonR)のリンカー配列をYama1Rの繰り返し配列に結合してなるプライマーとの組合せを意味する。H-Karl+B-Yama1は、カールソン(Karlsson)が使用したフォワードプライマー(下記の表1で示されるKarlssonF)のリンカー配列をYama1Fの繰り返し配列に結合してなるプライマーと、カールソンが使用したリバースプライマー(下記の表1で示されるKarlssonR)のリンカー配列をYama1Rの繰り返し配列に結合してなるプライマーとの組合せを意味する。H-Yama1+B-Cawは、Yama1Fのリンカー配列をCawthonFの繰り返し配列に結合してなるプライマーと、Yama1Rのリンカー配列をCawthonRの繰り返し配列に結合してなるプライマーとの組合せを意味する。H-Yama1+B-Karlは、Yama1Fのリンカー配列をKarlssonFの繰り返し配列に結合してなるプライマーと、Yama1Rのリンカー配列をKarlssonRの繰り返し配列に結合してなるプライマーとの組合せを意味する。Yama1F/Rの繰り返し配列を有するプライマーを使用した場合のみ、増幅されたヒトテロメアDNAがスメア状に観察される。図6は、エチジウムブロマイド含有のアガロースゲル電気泳動により分離された、蛍光により視覚化されたPCR増幅産物を示す図である。一番左のレーンで使用されたマーカー(Marker)は、φx174である。該マーカーにより、図の上半分において、上から順に1353bp、1078bp、872bp、603bp、及び310bpの位置が示され、かつ、図の下半分において、上から順に1353bp、1078bp、872bp、603bp及び310bpの位置が示される。増幅されたヒトテロメアDNAは、マーカーを参考に肉眼で判別できる範囲内では約1300bp以下のスメア状に観察される。図7左は、エチジウムブロマイド含有のアガロースゲル電気泳動により分離された、蛍光により視覚化されたPCR増幅産物を示す図である。一番左のレーンで使用されたλHindIIIは、上から順に23130bp、9416bp、6557bp、4361bp、2322bp及び2027bpの位置を示す。一番右のレーンで使用されたφX174は、上から順に1353bp、1078bp、872bp、603bp、及び310bpの位置を示す。増幅されたヒトPlacentaテロメアDNAは、サンプル量に応じてその大きさも異なってくる。サンプル量を80 ngとした場合には、約10kb以下のスメア状に観察される。図7右は、サザンブロッティングの結果を示す図である。図8は、テロメアオリゴマー中のテロメア量とCt値の関連を示す検量線のグラフである(テロメア検量線)。図9は、36B4遺伝子のオリゴマーの2倍体コピー数とCt値の関連を示す検量線のグラフである(36B4検量線)。図10は、所定の年齢の正常人から得られた造血幹細胞を含むCD34陽性細胞(図中、34+で表される)とそれが成熟・分化した顆粒球(図中、Graで表される)における、細胞1個当たりのテロメア量を比較したグラフである。図11(a)〜(e)は、Yama1Fのリンカー部分に続いて3'末端側にGTAGGGの配列を3〜7つ繰り返してなるプライマー(Yama1F(3)〜(7))を用いて作成した、テロメアオリゴマー中のテロメア量とCt値の関連を示す検量線のグラフである。図11(f)は、Yama1Fのリンカー部分に続いて3'末端側にGTAGGGの配列を3〜6つ繰り返してなるプライマー(Yama1F(3)〜(6))を用いた絶対定量法により定量したテロメア量を、Yama1F(5)を用いた場合を100%としてそれぞれ比較したグラフである。図12は、実施例7において作成された種々のプライマーを用いた絶対定量法により定量したテロメア量を、Yama1Fを用いた場合を100%としてそれぞれ比較したグラフである。図13は、実施例7において作成された種々のプライマーを用いた絶対定量法により定量したテロメア量を、Yama1Fを用いた場合を100%としてそれぞれ比較したグラフである。図14は、実施例7において作成された種々のプライマーを用いた絶対定量法により定量したテロメア量を、Yama1Fを用いた場合を100%としてそれぞれ比較したグラフである。図15は、Yama1F、コーソンが使用したプライマー又はカールソンが使用したプライマーを用いた絶対定量法により定量したテロメア量を、Yama1Fを用いた場合を100%としてそれぞれ比較したグラフである。図16は、(a)コーソンが使用したプライマー、(b)カールソンが使用したプライマー又は(c)Yama1Fを用いたPCRにより得られる増幅プロットを示した図である。図17は、所定の年齢の正常人(男性及び女性)の集団から得られた細胞1個当たりのテロメア長を比較したグラフである。図18は、所定の年齢の正常人(男性)の集団から得られた細胞1個当たりのテロメア長を比較したグラフである。図19は、所定の年齢の正常人(女性)の集団から得られた細胞1個当たりのテロメア長を比較したグラフである。 本発明のプライマーは、以下の式(1)又は(2)で表される。式(1)L1−(R1)n1 (式中、繰り返し単位であるR1はGTAGGGで示される塩基配列を表し、n1は繰り返し単位であるR1の個数を表し、5又は6であり、n1が5のとき、L1は16個以下の塩基からなるリンカーを表し、n1が6のとき、L1は8個以下の塩基からなるリンカーを表す。)式(2)L2−(R2)n2(X)(式中、繰り返し単位であるR2はGTAGGGで示される塩基配列を表し、Xは、前記繰り返し単位の5’末端側、隣接するいずれか2つの前記繰り返し単位の間又は前記繰り返し単位の3’末端側のいずれか1箇所に結合される、GTAGGGで表される塩基配列から1又は2個の塩基が欠失又は置換されてなる配列を表し、n2は繰り返し単位であるR2の個数を表し、5又は6であり、n2が5のとき、L2は4〜8個の塩基からなるリンカーを表し、n2が6のとき、L2は8個の塩基からなるリンカーを表す。) 但し、L1及びL2は、GTAGGGで示される塩基配列を含まないものとするのが好ましい。 上記式(1)で表される塩基配列からなるプライマーは、TTAGGGの繰り返し配列の中で、1番目のTをGに変えてなるGTAGGGの配列を5又は6個繰り返してなる配列に、リンカー部分として5’側に、GTAGGGが5つのときは0〜16個の塩基(A、G、C又はT)からなるリンカーを結合させたものであり、GTAGGGが6つのときは0〜8個の塩基(A、G、C又はT)からなるリンカーを結合させたものである。リンカー部分は存在しなくても良い。 上記式(1)で表される塩基配列からなるプライマーにおいて、好ましくは、n1は5であり、L1は12個以下、例えば、0〜12個、2〜10個又は4〜8個の塩基からなるリンカーを表す。 上記式(1)で表される塩基配列からなるプライマーにおいて、例えば、L1は、GTTT、GGTTTT、CGGTTTG、GTTTATTA、GTTTGTTG、GGGGAGGA、ATTTATTA及びGTTTATTAGTTTからなる群から選択されるが、これらに限定されるものではない。 上記式(1)で表される塩基配列からなるプライマーにおいて、好ましくは、n1は6であり、L1は4〜8個の塩基からなるリンカーを表す。 上記式(2)で表される塩基配列からなるプライマーは、TTAGGGの繰り返し配列の中で、1番目のTをGに変えてなるGTAGGGの配列を5又は6個繰り返してなる配列に、リンカー部分として5’側に、GTAGGGが5つのときは4〜8個の塩基(A、G、C又はT)からなるリンカーを結合させ、GTAGGGが6つのときは、8個の塩基(A、G、C又はT)からなるリンカーを結合させ、更に、GTAGGGで表される繰り返し単位の5’末端側、即ちリンカー部分と前記繰り返し配列との間、隣接するいずれか2つのGTAGGGで表される繰り返し単位の間、又は前記繰り返し配列の3’末端側、即ち当該プライマーの3’末端、のいずれか1箇所に、GTAGGGで表される塩基配列から1又は2個の塩基が欠失又は置換されてなる配列を結合させたものである。 上記式(2)で表される塩基配列からなるプライマーにおいて、好ましくは、該プライマーの3’末端に、GTAGGGで表される塩基配列から2個の塩基が欠失されてなる配列を含まない。 上記式(2)で表される塩基配列からなるプライマーにおいて、例えば、L2は、GTTTATTA、GTTTGTTG及びGGGGAGGAからなる群から選択されるが、これらに限定されるものではない。 上記式(2)において、Xは、GTAGGGで表される塩基配列から1又は2個の塩基が欠失又は置換されてなる配列を有する。 ここで言う「欠失」は、GTAGGGで表される塩基配列のうちどの部分が欠失しても良いことを表す。例えば、Xは、TAGGG、GAGGG、GTGGG、GTAGG、AGGG、TGGG、GGGG、GTGG、GAGG、TAGG又はGTAGである。 ここで言う「置換」(本明細書において「変異」とも言う)は、GTAGGGで表される塩基配列のうちどの部分が置換されていても良いことを表す。具体的には、GTAGGGで表される塩基配列の1番目のGは、A、T又はCに置換され得、GTAGGGで表される塩基配列の2番目のTは、A、C又はGに置換され得、GTAGGGで表される塩基配列の3番目のAは、T、C又はGに置換され得、GTAGGGで表される塩基配列の4番目のGは、A、T又はCに置換され得、GTAGGGで表される塩基配列の5番目のGは、A、T又はCに置換され得、GTAGGGで表される塩基配列の6番目のGは、A、T又はCに置換され得る。 より好ましくは、上記式(1)又は(2)で表される本発明のプライマーは、リンカー部分にGTTTATTA又はGTTTATTAで表される塩基配列から1〜5個の塩基が欠失又は置換されてなる配列を有する。特に好ましくは、本発明のプライマーは、下記の配列番号1で表される塩基配列からなる。5'-GTTTATTAGTAGGGGTAGGGGTAGGGGTAGGGGTAGGG-3' (配列番号1) 上記配列番号1で表される塩基配列からなるプライマーは、TTAGGGの繰り返し配列の中で、1番目のTをGに変えてGTAGGGの配列を5つ繰り返してなる配列に、リンカー部分として5’側に8つの塩基からなる塩基配列(GTTTATTA)を付加したものである。 本発明のプライマーの合成は、本願出願日における当業者の技術水準に基づいて行うことができる。例えば、プライマーの合成は、シグマアルドリッチジャパン等の合成メーカーに委託してもよい。 本発明のプライマーにおいて、テロメア配列にハイブリダイズする部分は繰り返し配列の部分である。従って、リンカー部分は、本発明のプライマーの機能を損なわない限り変異させ得る。 本発明のプライマーは、本願優先日における当業者の通常の知識に基づいた適当なハイブリダイゼーション条件下で、繰り返し配列であるテロメア配列とハイブリダイズし得る。 上記式(1)又は(2)で表されるプライマーをフォワードプライマーとして使用する場合、リバースプライマーとして、本発明のプライマーがハイブリダイズする鎖と相補的な鎖とハイブリダイズすることができ、かつ、本発明のプライマーの3’末端ヌクレオチド残基と、当該リバースプライマーの3’末端ヌクレオチド残基との間でミスマッチを形成するようなプライマーが使用されることが好ましい。 例えば、本発明のプライマーセットは、上記式(1)又は(2)で表されるプライマーと、配列番号2〜4のいずれかで表される塩基配列からなる少なくとも1つのプライマーとを組み合わせた、テロメア配列増幅用プライマーセットである。配列番号2〜4で表される塩基配列からなるテロメア配列増幅用プライマーは、以下の塩基配列を有する。5'-GGGGCCTAAACCTAAACCTAAACCTAAACCTAAACCTAA-3' (配列番号2)5'-GGGGCCTAATCCTAATCCTAATCCTAATCCTAATCCTAA-3' (配列番号3)5'-GGGGCCTAAGCCTAAGCCTAAGCCTAAGCCTAAGCCTAA-3' (配列番号4) 上記配列番号2で表される塩基配列からなるプライマーは、TTAGGGに相補的なCCCTAAという繰り返し配列の中で、1番目のCをAに変えてACCTAAの配列を5つ繰り返してなる配列に、リンカー部分として5’側に9つの塩基からなる塩基配列(GGGGCCTAA)を付加したものである。 上記配列番号3で表される塩基配列からなるプライマーは、TTAGGGに相補的なCCCTAAという繰り返し配列の中で、1番目のCをTに変えてTCCTAAの配列を5つ繰り返してなる配列に、リンカー部分として5’側に9つの塩基からなる塩基配列(GGGGCCTAA)を付加したものである。 上記配列番号4で表される塩基配列からなるプライマーは、TTAGGGに相補的なCCCTAAという繰り返し配列の中で、1番目のCをGに変えてGCCTAAの配列を5つ繰り返してなる配列に、リンカー部分として5’側に9つの塩基からなる塩基配列(GGGGCCTAA)を付加したものである。 上記配列番号2〜4で表される塩基配列からなるプライマーにおいて、テロメア配列にハイブリダイズする部分は繰り返し配列の部分である。従って、配列番号2〜4に記載されるリンカー部分は、本発明のプライマーの機能を損なわない限り変異させ得る。 上記配列番号2〜4のいずれかで表される塩基配列からなるプライマーは、本願出願日における当業者の通常の知識に基づいた適当なハイブリダイゼーション条件下で、繰り返し配列であるテロメア配列とハイブリダイズし得る。 上記式(1)又は(2)で表されるプライマーと配列番号2〜4のいずれかで表される塩基配列からなる少なくとも1つのプライマーとを組み合わせたテロメア配列増幅用プライマーセットを用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行うことができる。 上記式(1)又は(2)で表されるプライマーと配列番号2〜4のいずれかで表される塩基配列からなる少なくとも1つのプライマーとを組み合わせたテロメア配列増幅用プライマーセットとは、以下の態様を含む。 上記式(1)又は(2)で表されるプライマーと、配列番号2で表される塩基配列からなるプライマーとのセット、 上記式(1)又は(2)で表されるプライマーと、配列番号3で表される塩基配列からなるプライマーとのセット、 上記式(1)又は(2)で表されるプライマーと、配列番号4で表される塩基配列からなるプライマーとのセット、 上記式(1)又は(2)で表されるプライマーと、配列番号2で表される塩基配列からなるプライマーと、配列番号3で表される塩基配列からなるプライマーとのセット、 上記式(1)又は(2)で表されるプライマーと、配列番号2で表される塩基配列からなるプライマーと、配列番号4で表される塩基配列からなるプライマーとのセット、 上記式(1)又は(2)で表されるプライマーと、配列番号3で表される塩基配列からなるプライマーと、配列番号4で表される塩基配列からなるプライマーとのセット、及び 上記式(1)又は(2)で表されるプライマーと、配列番号2で表される塩基配列からなるプライマーと、配列番号3で表される塩基配列からなるプライマーと、配列番号4で表される塩基配列からなるプライマーとのセット。 また、上記プライマーセットはキット化することもでき、当該キットには上記プライマーセットの他に、DNA抽出用試薬、PCR用緩衝液やDNAポリメラーゼ等のPCR用試薬、染色剤や電気泳動用ゲル等の検出用試薬、及び取扱説明書等を含めてもよい。 上記式(1)又は(2)で表されるプライマーと配列番号2〜4のいずれかで表される塩基配列からなる少なくとも1つのプライマーとを組み合わせたテロメア配列増幅用プライマーセットを用いてPCRを行う場合、上記式(1)又は(2)で表されるプライマーはフォワードプライマーとしてテロメア配列の第1の鎖にハイブリダイズし、配列番号2〜4のいずれかで表される塩基配列からなる少なくとも1つのプライマーはリバースプライマーとしてテロメア配列の第2の鎖にハイブリダイズする。次いで、DNAポリメラーゼの作用によってテロメア配列を伸張させることができる。本発明の一態様として、配列番号1で表される塩基配列からなるプライマーと配列番号2で表される塩基配列からなるプライマーとのセットを用いた場合を図1に示す。 また、上記式(1)又は(2)で表されるプライマーと配列番号2〜4のいずれかで表される塩基配列からなる少なくとも1つのプライマーとを組み合わせたテロメア配列増幅用プライマーセットを用いてPCRを行う場合、上記式(1)又は(2)で表されるプライマーと配列番号2〜4のいずれかで表される塩基配列からなる少なくとも1つのプライマーとは相互にハイブリダイズし得る。一態様として、配列番号1で表される塩基配列からなるプライマーと配列番号2で表される塩基配列からなるプライマーとのセットを用いた場合を図2に示す。一方のプライマーの3’末端残基が、他方のプライマーの変異させたヌクレオチド残基とミスマッチを形成し、これにより、PCRでのプライマー伸長を防止してプライマー二量体の形成を防止することができるため、テロメア配列を選択的に増幅することができる。 従って、上記式(1)又は(2)で表されるプライマーと配列番号2〜4のいずれかで表される塩基配列からなる少なくとも1つのプライマーとを組み合わせたプライマーセットを用いてPCRを行うことにより、テロメア配列を選択的に増幅することができる。 なお、一般的に、互いに同様のTm値を有するフォワードプライマー及びリバースプライマーを使用することによって、特定の増幅条件にて同様の増幅効率が提供され得ることが知られている。従って、そのようなプライマーセットを用いてPCRを行う場合、フォワードプライマー及びリバースプライマーの濃度を同程度にすることができ、一方のプライマーを他方のプライマーに比べて高濃度で使用する必要がなくなるという利点がある。 配列番号1で表される塩基配列からなるプライマーと、配列番号2、3又は4で表される塩基配列からなるプライマーとは、互いに近いTm値を有する(配列番号1:75.7℃;配列番号2:73.0℃;配列番号3:73.2℃;配列番号4:78.5℃)。従って、上記のような利点を有している。また、配列番号1で表される塩基配列からなるプライマーと、配列番号2、3又は4で表される塩基配列からなるプライマーとを用いてPCRを行う場合、上記の利点を超える更なる利点をもたらし得る。即ち、配列番号1で表される塩基配列からなるプライマーと、配列番号2、3又は4で表される塩基配列からなるプライマーとを用いてPCRを行うことによって、テロメア配列の増幅における顕著な増幅効率を達成することができる。これは、本願出願時において、当業者には予測できない顕著な効果である。 上述の「プライマー二量体」とは、他のプライマーにハイブリダイズしたプライマーから生成された、ポリメラーゼによる非標的核酸依存性プライマー伸長産物を意味する。非標的核酸依存性プライマー伸長産物の存在は、標的核酸の不存在下で増幅反応を行い、次いで、非標的核酸依存性プライマー伸長産物を、例えば、電気泳動法を用いて検出することにより容易に評価することができる。 本明細書において、「テロメア配列」とは、TTAGGGという塩基配列の繰り返し配列をいい、主に脊椎動物のテロメア配列、特にはヒトのテロメア配列をいう。脊椎動物以外の核酸配列であっても、TTAGGGの繰り返し配列を有する限り、本明細書にいう「テロメア配列」に含まれる。「テロメア配列」には、単なる一本鎖のTTAGGGの繰り返し配列だけでなく、該用語の使用の状況によって、TTAGGGの繰り返し配列と相補的な塩基配列、及びTTAGGGの繰り返し配列とそれに相補的な鎖とからなる二本鎖DNA配列も含まれる。なお、本明細書中、「テロメア配列」は単に「テロメア」とも呼ばれる。 本発明のプライマーにより増幅されるテロメア配列は、様々な態様で存在し得る。例えば、遺伝子配列の全て又は一部分中、或いはプラスミド又はゲノムDNAの制限断片内に含まれ得る。 本発明のプライマーにより増幅されるテロメア配列を含む試料は、国際公開第2003/064615号パンフレットに記載の通り、例えば、血液や種々の組織から得ることができる。また、当該試料は、唾液、尿、糞便、脳脊髄液、精液、乳液等の身体排泄物又は身体排泄液を含み得る。 本発明のプライマーにより増幅されるテロメア配列の源には、ヒト、動物等、テロメア配列を含む全てのものが含まれる。また、本発明のプライマーにより増幅されるテロメア配列は、ポリメラーゼ反応のような化学又は酵素プロセスにより人工的に生成された核酸配列であってもよい。 本発明のプライマーにより増幅されるテロメア配列は、本願出願時の技術水準に基づいて調製することができる。例えば、テロメア配列を含む試料を、洗浄剤、音波処理、電子穿孔、変性剤等を用いて処理して、細胞等からDNAを抽出することにより調製できる。抽出したDNAは、必要に応じて、本願出願時の技術水準に基づいて精製することができる。 また、国際公開第2003/064615号パンフレットに記載の通り、テロメア配列を含む試料に様々な添加剤を添加して、最適なハイブリダイゼーション、増幅及び検出を促すことができる。 本発明のプライマーは、フォワードプライマーが標的核酸の第1の鎖にハイブリダイズでき、リバースプライマーが標的核酸の第2の鎖にハイブリダイズできるように、テロメア配列と接触させ得る。高、中及び低ストリンジェンシー条件を含めた様々なハイブリダイゼーション条件を用いて、本発明のプライマーをテロメア配列とハイブリダイゼーションさせることができる。温度、塩濃度、pH、有機溶媒の種類及び濃度、並びにカオトロピック剤の種類及び濃度等のハイブリダイゼーション条件は、本願出願時の技術水準に基づいて、適宜変更し得る。 本発明のプライマーを用いたPCRにおいては、本願出願時の技術水準に基づいて、変性、アニーリング、伸長の各ステップの温度と時間、DNAポリメラーゼの種類と濃度、10 X PCR バッファーの組成とPH、dNTP濃度、プライマー濃度、塩化マグネシウム濃度、鋳型DNA量等の条件を適宜、変更することができる。 本発明のプライマーを用いたPCRにおいては、当該技術分野においてよく知られている種々の薬剤を使用することができる。例えば、ポリメラーゼの伸長性を増加させるための薬剤、ポリメラーゼを安定化するための薬剤、プライマーの非特異的なハイブリダイゼーションを低下させるための薬剤、及びDNAの複製の効率を増加させるための薬剤等を使用することができる。 本発明のプライマーを用いたPCRは、当該技術分野において利用できるPCR用機器を使用して行われ得る。 PCRの手順は当該技術分野において広く知られており、本発明のプライマーを用いた場合も同様の手順で実施することができる。熱変性によりDNAを一本鎖にした後(例えば、94℃〜96℃)、一本鎖DNAにプライマーをアニーリングさせ(例えば、50℃〜65℃)、耐熱性DNAポリメラーゼを用いて相補鎖を合成する(例えば、72℃)、というサイクルを、例えば、25〜35回繰り返すことにより、目的とする遺伝子領域だけを増幅させることができる。また、2step PCRでは、例えば、95℃10分後、95℃15秒(熱変性)及び60℃1分(アニーリングと伸長)を40回繰り返すことにより、目的とする遺伝子領域だけを増幅させることができる。PCRの反応条件は、PCR用機器にプログラムされているものを使用し得る。 このようにして得られた増幅産物を、例えば、電気泳動やクロマトグラフィー、DNAチップ(マイクロアレイ)、抗原抗体反応等によって検出することができる。また、PCRによる増幅産物は、国際公開第2003/064615号パンフレットに記載の通り検出又は分析され得る。 PCRにより増幅させたテロメア配列を電気泳動等の手段を用いて検出する場合、テンプレートDNAの大きさや量等は、テロメア配列がどの程度の大きさまで増幅されるかに影響を与え得る。 各工程の時間および温度は、通常、ポリメラーゼ、増幅されるべき標的核酸の長さ及び増幅に使用したプライマー配列に依存する。 また、PCRによる増幅産物は、リアルタイムPCRによる増幅反応の間に検出及び定量することができる。リアルタイムPCRは、当該技術分野においてよく知られており、どのような機器及び試薬を使用し得るかについては、本願出願時の技術常識である。例えば、国際公開第2003/064615号パンフレットに記載の通り、リアルタイムPCRによる増幅反応の間に、増幅産物を検出及び定量することができる。例えば、リアルタイムPCRは、アプライドバイオシステム社製のStep One Plusを用いて行い得る。 リアルタイムPCRを用いて増幅産物を検出及び定量する方法として、相対定量法と絶対定量法がある。相対定量法は、既知の細胞のテロメア量に対する比によってサンプルのテロメア量を比較するものである。従って、相対定量法を採用した場合は、通常、異なった実験室間のデータを直接比較することはできない。 一方、絶対定量法では、シングルコピー遺伝子のオリゴマー及びテロメアオリゴマーを標準として使用することにより、テロメア量未知のサンプル中に含有されるテロメア量を、絶対値として定量することができるため、絶対定量法の採用により、異なった実験室間のデータを直接比較することが可能になる。 上述の「シングルコピー遺伝子のオリゴマー」とは、当該シングルコピー遺伝子に特異的な塩基配列を含むオリゴヌクレオチドを意味する。同様に、以下に記載される「36B4遺伝子のオリゴマー」とは、36B4遺伝子に特異的な塩基配列を含むオリゴヌクレオチドを意味する。 テロメアオリゴマー及びシングルコピー遺伝子である36B4遺伝子のオリゴマーによる標準直線を用いたテロメア長の絶対定量法が、ネイサン(Nathan)らによって報告されている(BioTechniques, 44:807-809, May 2008参照)。なお、ネイサンらは、カールソンらの使用したプライマーと同じプライマーを用いている。 本発明のプライマーを使用してリアルタイムPCRを行いサンプル中のテロメア配列を増幅させ、絶対定量法によりサンプル中のテロメア量を測定し、サンプル中のテロメア量を絶対値として定量することができる。これにより、異なった実験室間のデータを直接比較することが可能になる。 また、同一人から加齢に伴って得られたDNAを、テロメア長の標準直線に使用することで、研究室間のデータの比較や再現性を容易に確認することができ、十分な精度管理が可能になる。 本発明のテロメア定量法は、以下のような、被検2倍体細胞1個当たりのテロメアを定量する方法である。 被検2倍体細胞1個当たりのテロメアを定量する方法であって、(a)TTAGGGからなる塩基配列の繰り返し配列である合成テロメアオリゴマーについて、リアルタイムPCRを用いて、テロメア量とCt値との関係を示す検量線を作成する工程、(b)被検2倍体細胞の細胞集団サンプルを、工程(a)と同じ条件のリアルタイムPCRに付して、Ct値を得る工程、(c)工程(b)のCt値を工程(a)の検量線にあてはめて、細胞集団サンプル中のテロメア量(X)を得る工程、及び、(d)工程(c)のXを下記式にあてはめて、被検2倍体細胞1個当たりのテロメア量(Y)を得る工程:Y=X/ZZ:被検2倍体細胞中に存在するシングルコピー遺伝子を指標として求めた、細胞集団サンプルに含まれる細胞数を含み、 工程(a)及び(b)のリアルタイムPCRを、本発明のプライマーセットを用いて行うことを特徴とする方法。 上記工程(a)における「テロメアオリゴマー」とは、TTAGGGからなる塩基配列を繰り返し有し、例えば、TTAGGGを10〜100個繰り返して有する。TTAGGGの繰り返しの数は、好ましくは、10〜50個であり、特に好ましくは、14〜28個である。 上記工程(b)における「被検2倍体細胞の細胞集団サンプルを、工程(a)と同じ条件のリアルタイムPCRに付して」は、被検2倍体細胞の細胞集団サンプルをリアルタイムPCRに付すことができるように処理した後、工程(a)と同じ条件のリアルタイムPCRに付すことを意味する。例えば、被検2倍体細胞の細胞集団サンプルから抽出されたDNAについて、工程(a)と同じ条件のリアルタイムPCRに付すことを意味する。 シングルコピー遺伝子として、例えば、酸性リボソームリン酸化タンパク質をコードする遺伝子として知られている36B4遺伝子を使用し得るが、36B4遺伝子以外のものも使用し得る。例えば、アルブミン、ベータグロビン等を使用し得る。 被検2倍体細胞中に存在するシングルコピー遺伝子を指標として、細胞集団サンプルに含まれる細胞数を算出する方法には、例えば、リアルタイムPCRを用いてシングルコピー遺伝子の総コピー数とCt値との関連を示す検量線を作成して、細胞集団サンプルに含まれる細胞数を算出する方法がある。 以下に絶対定量の具体例を示すが、これに限定されるものではない。 テロメアと36B4の両者の合成オリゴマーを用いる。それぞれの合成オリゴマーについて、分子量と合成した重量から分子数を計算する。テロメアオリゴマーとしては、TTAGGGが14回反復したオリゴマーだけでなく、これをプラスミドに組み込んで安定化させたものも使用し得る。このオリゴマーの塩基数を84 bpとし、分子量を26667.2とすると、1分子あたりの重さは0.44x10-19g(26667.2/6.02x1023)である。例えば、このオリゴマー60 pgを使用した場合、この中には1.36x109個(60x10-12/0.44x10-19)のオリゴマーが含まれていることが分かる。1オリゴマーが84 bpなので、テロメア配列の総量は合計1.14x108 kb(84x1.36x109 bp)と計算できる。このオリゴマーの希釈系列を作り、Ct(threshold cycle)値との検量線を引く。サンプルのCt値をこの検量線にあてはめてテロメア量の合計を求める。 同様にしてシングルコピー遺伝子に関する検量線を作成する。36B4遺伝子のオリゴマー(75bp,MW 22953)を用いた場合、テロメアのときと同様に計算し、1分子あたりの重さは3.81x10-20 g (22953.0/6.02x1023)になる。例えば、この36B4オリゴマー500 pgには、1.31x1010個(500x10-12/3.81x10-20)の分子が存在すると計算できる。36B4遺伝子は12番相同染色体のそれぞれに存在するので6.56x109個(1.31x1010/2)の2倍体コピー数(2倍体細胞数)があることになる。テロメアのときと同様に希釈系列のCt値から検量線を作成しておけば、サンプル中の2倍体コピー数(2倍体細胞数)を求めることができる。そして、サンプル中のテロメア量を2倍体コピー数(2倍体細胞数)で割り算すれば、2倍体細胞1個当たりのテロメア量が求められる。更に、細胞当たり92か所の染色体テロメアが存在すると考えられるため、92で割ると、染色体1箇所の平均的テロメア長が絶対定量値として得られる。 シングルコピー遺伝子に関する検量線は、シングルコピー遺伝子のオリゴマーの総コピー数とCt値との関連を示すものであってもよいし、あらかじめシングルコピー遺伝子の総コピー数を2で割って、2倍体コピー数(2倍体細胞数)とCt値との関連を示すものとしてもよい。 通常、サンプル中のテロメア量を算出する工程と、2倍体コピー数(2倍体細胞数)を算出する工程は同時進行で行ってもよく、どちらの工程を先に行ってもよい。精度を高める観点から、同時進行で行うのが好ましい。 本発明の定量法により、サンプル中のテロメア量を絶対値として定量することができる。これにより、異なった実験室間のデータを直接比較することが可能になるため、本発明は疾患の診断において非常に有効に使用することができる。例えば、癌の診断や再発の予知、加齢疾患の診断、クローン化生物体の完全性及び遺伝疾患のスクリーニング等における適用が見出される。 テロメア量の測定は、医学的診断、疾患の予後管理、及び治療剤の有効性の確認等において、非常に有用である。また、テロメア量の増幅および定量は、テロメア長の変化に関連する種々の疾患に対して有用である。 また、テロメアは細胞の老化や癌化で短小化することは知られていたが、ストレスや生活習慣病でも白血球のテロメアが短くなることが報告されている。従って、本発明は、生検材料からの癌の補助診断、警察鑑識分野、生活習慣病の予知、ストレスの判定、生物年齢と細胞年齢、抗加齢分野及び美容化粧品分野での利用に有益である。 より精度の高いテロメア量の定量を行うためには、プライマーとして、以下のものを使用することが好ましい。 上記式(1)で表され、かつ、n1が5であり、L1は16未満、好ましくは、12個以下の塩基からなるリンカー、例えば、GTTT、GGTTTT、CGGTTTG、GTTTATTA、GTTTGTTG、GGGGAGGA、ATTTATTA及びGTTTATTAGTTT(配列番号21)からなる群から選択されるリンカーを表す、プライマー。 上記式(2)で表され、かつ、3’末端に、GTAGGGで表される塩基配列から2個の塩基が欠失されてなる配列を含まない、プライマー。 上記式(2)で表され、かつ、L2が8個の塩基からなるリンカー、例えば、GTTTATTA、GTTTGTTG及びGGGGAGGAからなる群から選択されるリンカーを表し、3’末端に、GTAGGGで表される塩基配列から2個の塩基が欠失されてなる配列を含まない、プライマー。 上記式(1)又は(2)で表され、かつ、L1又はL2が、GTTTATTAで示されるリンカーを表し、3’末端に、GTAGGGで表される塩基配列から2個の塩基が欠失されてなる配列を含まない、プライマー。 以下において、本発明の効果を、実施例により詳細に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。(実施例1)プライマーの設計 以下の配列番号1、2及び5〜16で表される塩基配列を有するプライマーを合成した(表1)。配列番号1、2、5〜9及び12〜15で表されるプライマーは、TTAGGG又はCCCTAAの繰り返し配列の中で1箇所だけ変異させ、かつ、Tm値を調整する目的で5’側に塩基配列を付加したものの中から、Tm値の近い6組のフォワード及びリバースプライマーを選定したものである。 これらのプライマーについて、国際公開第2003/064615号パンフレット、「Richard M. Cawthon、定量PCRによるテロメア測定(Telomere measurement by quantitative PCR)、Nucleic Acids Research、第30巻、第10号、e47、2002年」又は「Andreas O. Karlsson et al.、テロメアリピート解析による法医学試料におけるヒト年齢の推定(Estimating human age in forensic sample by analysis of telomere repeats)、Forensic Science International: Genetics Supplement Series 1: 第569〜571頁、2008年」に開示されているプライマー(配列番号10、11、13及び16)と比較した(表2)。表1:合成したプライマーの名称と塩基配列表2:6マーの繰り返し配列の変異の部位の比較 上記表1中のプライマー名称において、R及びFとの記号は、それぞれフォワードプライマー及びリバースプライマーを表す。 CawthonF及びCawthonRは、国際公開第2003/064615号パンフレット及び「Richard M. Cawthon、定量PCRによるテロメア測定(Telomere measurement by quantitative PCR)、Nucleic Acids Research、第30巻、第10号、e47、2002年」に具体的に記載されているプライマーと同じものである。 KarlssonF及びKarlssonRは、国際公開第2003/064615号パンフレット及び「Andreas O. Karlsson et al.、テロメアリピート解析による法医学試料におけるヒト年齢の推定(Estimating human age in forensic sample by analysis of telomere repeats)、Forensic Science International: Genetics Supplement Series 1: 第569〜571頁、2008年」に具体的に記載されているプライマーと同じものである。 Yama3R、Yama6R及びCawthonRは同じ配列である。 上記表に記載のTm値は、nearest neighbor methodの計算式に基づいて計算されたものである。(実施例2)設計したプライマーの検討 ABI社10xPCRバッファーII、Taqポリメラーゼ、10 ngの胎盤(Placenta)DNA、 dNTP、 MgCl2及びプライマーを含み、PCR用精製水で最終容量を20μLになるように調整したマスターミックスを用いて、PTC-100 Thermal Cycler(MJR社製)により、以下の条件でPCRを行った。 Placenta DNAは、健康なヒトの胎盤から得られたものであった。 マスターミックス中の終濃度は、dNTP 0.2 mM、MgCl2 3 mM、各プライマー 100 nM及び1 UのTaqポリメラーゼである。以下の実施例においても同様である。 Taqポリメラーゼについては、ニッポンジーン社のGene Taq又はHot-Start Gene Taqを使用した。Gene Taqは試薬調整中にポリメラーゼ反応が進行することが懸念されるため扱いが難しいことから、95℃5分の加温で酵素反応が活性化されるHot-Start Gene Taqを使用した結果、反応が安定化するようになった。以下の実施例においても同様である。 プライマーは、実施例1で設計した、Yama1F-Yama1R、Yama2F-Yama2R、Yama3F-Yama3R、Yama4F-Yama4R、Yama5F-Yama5R、Yama6F-Yama6R、CawthonF-CawthonR及びKarlssonF-KarlssonRの組合せでそれぞれ使用した。プライマーの濃度について、「Andreas O. Karlsson et al.、テロメアリピート解析による法医学試料におけるヒト年齢の推定(Estimating human age in forensic sample by analysis of telomere repeats)、Forensic Science International: Genetics Supplement Series 1: 第569〜571頁、2008年」に従いフォワードプライマー100 nM及びリバースプライマー900 nM使用したものと、これと対比するためにフォワードプライマー及びリバースプライマーを等量の500 nMずつ使用したもので試験した。 PCRのサイクル条件は、95℃10分95℃15秒、60℃1分を40サイクル、であった。 得られたPCR反応液をエチジウムブロマイド含有のアガロースゲル電気泳動に供し、蛍光により視覚されたPCR増幅産物を観察したところ、テロメアDNAのスメアが確認できた(図3)。特に、Yama1F-Yama1Rのプライマーの組合せを使用した場合に、顕著な増幅効率がもたらされることが確認された。 そこで、増幅効率を、図3で観察された蛍光強度をNIH Imageソフトウェア1.58を用いて画像処理解析し、数値化した(図4)。Yama1プライマーを使用した場合のテロメアDNAの増幅効率は、コーソン(Cawthon)やカールソン(Karlsson)らが使用したプライマーを使用した場合と比較して、およそ2〜3倍以上であった。 表2に示される通り、Yama1F-Yama1Rの組み合わせにおいて、Tm値の差は2.7℃(F:75.7℃とR:73.0℃)であった。一方、Yama3F-Yama3Rの組み合わせにおいて、Tm値の差は1.3℃(F:76.4℃とR:77.7℃)であり、Yama1F-Yama1Rの組み合わせに比べてTm値はより近い値であった。また、Yama4F-Yama4Rの組み合わせにおいて、Tm値の差は2.9℃(F:69.3℃とR:72.2℃)であり、Yama1F-Yama1Rの組み合わせと同程度であった。 しかしながら、実施例2の結果から、Yama1F-Yama1Rの組み合わせを使用した場合に、特に顕著な増幅効率がもたらされることが見出された。このことから、Yama1F-Yama1Rの組み合わせは、単に両者が同様のTm値を有していることから得られると予想される利点をはるかに超える、顕著な効果をもたらすものであることが分かる。(実施例3)設計したプライマーの有効部位の検討 以下のプライマーセットを調製した。(i)CawthonFのリンカー配列をYama1Fの繰り返し配列に結合してなるプライマーと、CawthonRのリンカー配列をYama1Rの繰り返し配列に結合してなるプライマーとのセット。(ii)KarlssonFのリンカー配列をYama1Fの繰り返し配列に結合してなるプライマーと、KarlssonRのリンカー配列をYama1Rの繰り返し配列に結合してなるプライマーとのセット。(iii)Yama1Fのリンカー配列をCawthonFの繰り返し配列に結合してなるプライマーと、Yama1Rのリンカー配列をCawthonRの繰り返し配列に結合してなるプライマーとのセット。(iv)Yama1Fのリンカー配列をKarlssonFの繰り返し配列に結合してなるプライマーと、Yama1Rのリンカー配列をKarlssonRの繰り返し配列に結合してなるプライマーとのセット。 次いで、終濃度、dNTP 0.2 mM、MgCl2 3 mM、SYBR Green X80000、ROX色素 0.3 μM、各プライマー 100 nM及び1 U Taqポリメラーゼの、最終容量20μLになるようPCR用精製水で調整したマスターミックスを用いて、PTC-100 Thermal Cycler(MJR社製)により、以下の条件でPCRを行った。サンプルには、10 ngのPlacenta DNA又はK562細胞由来DNAを用いた。 Placenta DNAは、実施例2に同様、健康なヒトの胎盤から得られたものであった。K562細胞とは、ヒト慢性骨髄性白血病細胞株であり、テロメアが短いことが知られている。以下の実施例においても同様である。 プライマーは、上記プライマーセット(i)〜(iv)をそれぞれ使用し、Yama1F-Yama1Rの組み合わせと比較した。 PCRのサイクル条件は、95℃10分95℃15秒及び60℃1分を40サイクル、であった。 得られたPCR反応液をエチジウムブロマイド含有のアガロースゲル電気泳動に供し、蛍光により視覚化されたPCR増幅産物を観察したところ、Yama1F/Rの繰り返し配列を有するプライマーを用いた場合のみ、テロメアの伸長が起こった(図5)。よって、テロメア配列の増幅に必須な部分はYama1F/Rの繰り返し配列であり、リンカー部分の配列は増幅効率に影響することなく改変し得ることが分かった。 また、Yama1F/Rの繰り返し配列を有するプライマーを組み合わせてPCRを行うことにより、K562細胞由来のテロメアのような短いテロメアについても、十分に増幅できることが分かった。(実施例4)プライマーの検討 Yama1Fでは、6マーの繰り返し配列の1番目のTをGに変異させたものであった。そこで、G以外にC(SKF1)又はA(SKF4)に変異させた場合について検討を行った。3種類各々に対して、リバースプライマーにおける塩基の置換は3通りの可能性が考えられるため、合計9通りの組み合わせで検討した。表3に、使用したプライマーの塩基配列を示す。表3:使用したプライマーの名称と塩基配列 プライマーを、以下の組合せで用いたことを除いては、実施例3と同様の条件でPCRを行った。1.Yama1F-Yama1R2.Yama1F-SKR13.Yama1F-SKR44.SKF1-Yama1R5.SKF1-SKR16.SKF1-SKR47.SKF4-Yama1R8.SKF4-SKR19.SKF4-SKR4 得られたPCR反応液をエチジウムブロマイド含有のアガロースゲル電気泳動に供し、蛍光により視覚化されたPCR増幅産物を観察したところ、6マーの繰り返し配列の1番目のTをGに変異させたYama1Fを使用したときのみ、用いたリバースプライマーの種類に関わらずテロメアの伸長が起こった(図6)。 この結果から、最適なプライマーの組合せは、Yama1F-Yama1R、Yama1F-SKR1及びYama1F-SKR4であることが確認された。(実施例5)本発明のプライマーのテロメア配列増幅効率の検証 終濃度、dNTP 0.2 mM、MgCl2 3 mM、SYBR Green X80000, ROX色素 0.3 μM, 各プライマー(Yama1F/R) 100 nM及び1 UのTaqポリメラーゼの、最終容量20μLになるようにPCR用精製水で調整したマスターミックスを用いて、アプライドバイオシステム社製のStep One Plusにより、以下の条件でPCRを行った。サンプルには、5 ng、10 ng、20 ng、40 ng又は80 ngのPlacenta DNAを用いた。 PCRのサイクル条件は、95℃10分95℃15秒及び60℃1分を40サイクル、であった。 得られたPCR反応液をエチジウムブロマイド含有のアガロースゲル電気泳動に供し、蛍光により視覚化されたPCR増幅産物を観察したところ、各テンプレートDNA量の場合においてもテロメアDNAのスメアが確認でき、テンプレートDNA量に応じてPCR反応物も多くなっていくことが確認された(図7左)。また、標準方法に従って行われたサザンブロッティングの結果から、本発明のプライマーはテロメア特異的であることが確認できた(図7右)。これらの結果から、本発明のプライマーは特異性が高く、本発明のプライマーを使用すればテンプレートDNA量が少量でも有効にテロメア配列を増幅することができることが分かった。(実施例6)造血幹細胞を含むCD34陽性細胞とそれが成熟・分化した細胞である顆粒球とのテロメア長の絶対定量法による比較1.細胞からのゲノムDNAの抽出 プロテネースKを細胞10万個当たり5μg添加後撹拌した。細胞融解緩衝液(終濃度でPH8.0トリス緩衝液50 mM、EDTA 10 mM、SDS 1%)を50μL添加し、60℃で2時間振とうし、反応させた。フェノールで2回、かつクロロフォルムで2回精製抽出をした。DNAをエタノール沈殿後、70%エタノールで洗浄した。風乾後、DNAをTE(PH7.5トリス緩衝液10 mM, EDTA 1 mM)100μL中に溶解した。得られた溶液に1mg/mlのRNaseを1μL添加し、室温で30分反応させた。該溶液に、10% SDSを1μL、1 mg/mlのプロテネースKを5μg添加し、60℃で1時間振とうした。フェノールで2回、クロロフォルムで2回精製抽出をした。DNAを、終濃度100 mMのNaCl存在下でエタノール沈殿後、70%エタノールで洗浄した。風乾後、DNAをTE(PH7.5トリス緩衝液10 mM, EDTA 1 mM)100μL中に溶解した。DNAの濃度と純度を測定した。 なお、細胞は、42歳、52歳又は60歳の正常人から得られたCD34陽性細胞及び顆粒球(主に好中球)を使用した。 また、比較のため、K562細胞及びヒト胎盤(Placenta)細胞についても同様に試験を行った。2.絶対定量法によるテロメアの定量 終濃度、dNTP 0.2 mM、MgCl2 3 mM、SYBR Green X80000, ROX色素 0.3 μM, 各プライマー(Yama1F/R) 100 nM及び1 U のTaqポリメラーゼの、最終容量20μLになるようにPCR用精製水で調整したマスターミックスを用いて、リアルタイムPCR装置(アプライドバイオシステム社製Step One Plus)により、95℃10分後、95℃15秒及び60℃1分を40サイクルというサイクル条件でPCRを行い、テロメアオリゴマー中のテロメア量とCt値の関連を示す検量線(図8)を作成した。また、ネイサンらの報告等を基に、36B4遺伝子に関する検量線を作成した(図9)。図9で示されるグラフ中、縦軸は、36B4遺伝子のコピー数を2で割って算出した2倍体コピー数(細胞数)とした。 テロメアオリゴマーとしては、TTAGGGが14回反復した合成オリゴマーを使用した。このオリゴマーは84bpで、重量平均分子量は26667.2であった。以下に塩基配列を示す。5'-ttagggttagggttagggttagggttagggttagggttagggttagggttagggttagggttagggttagggttagggttaggg-3' (配列番号19) 36B4遺伝子のオリゴマーとしては、75bpで重量平均分子量が22953であるものを使用した。以下に塩基配列を示す。5'-cccattctatcatcaacgggtacaaacgagtcctggccttgtctgtggagacggattacaccttcccacttgctg-3' (配列番号20) 次いで、上記1.で得られたサンプル中のゲノムDNAについて、上記と同様の条件でリアルタイムPCRを行った。得られたCt値を図8で示される検量線に当てはめて、上記1.で得られたサンプル中のテロメア量を算出した。 同様に、リアルタイムPCRと図9で示される検量線を用いて、上記1.で使用した各細胞の数(2倍体コピー数)を算出した。 上記1.で得られたサンプル中のテロメア量を、細胞数(2倍体コピー数)で割り算し、細胞1個当たりのテロメア量を求めた。上記手法により、造血幹細胞を含むCD34陽性細胞と、それが成熟・分化した細胞である顆粒球についてテロメア量を算定した例をここに示し、結果を図10に示す。 なお、造血幹細胞のマーカーであるCD34陽性細胞は、顆粒球へと分化する。この間に、細胞は数回分裂を繰り返すと考えられ、細胞分化に伴いテロメレース活性が消失する結果、分化に伴いテロメアが短小化すると考えられる。 上記の通り、42歳、52歳及び60歳の正常人から得られたCD34陽性細胞及び顆粒球のテロメア量を絶対定量法で比較検討したところ、全例でテロメアの短小化を検出できた。即ち、本発明のプライマーを用いることにより、加齢に伴いCD34陽性細胞のテロメア長が短小化していること、及びそれが成熟分化した顆粒球では更にテロメア長が短小化することを確認することができた。よって、本発明の方法では、数回の分裂寿命の差を識別することができると考えられる。更に、本発明の方法は、異なる個体間の加齢に伴うテロメアの短小化も検出できると考えられる。(実施例7)Yama1Fの配列を基にした変異体の検討1.GTAGGG配列の繰り返し数の検討 Yama1Fは、GTAGGGの配列を5つ繰り返してなる配列を含むものであるが、更に、Yama1Fのリンカー部分に続いて3'末端側にGTAGGGの配列を3つ繰り返してなるプライマー(以下、Yama1F(3)という)、Yama1Fのリンカー部分に続いて3'末端側にGTAGGGの配列を4つ繰り返してなるプライマー(以下、Yama1F(4)という)、Yama1Fのリンカー部分に続いて3'末端側にGTAGGGの配列を6つ繰り返してなるプライマー(以下、Yama1F(6)という)及びYama1Fのリンカー部分に続いて3'末端側にGTAGGGの配列を7つ繰り返してなるプライマー(以下、Yama1F(7)という)を作成した。 次いで、実施例6に記載の方法と同じように、絶対定量法によりテロメア量を定量した。但し、上記作成したプライマーをフォワードプライマーとして用い、かつYama1Rをリバースプライマーとして用い、サンプルとしてPlacenta DNA及びK562細胞由来DNAを使用した。これらのプライマーを用いた場合と、Yama1FとYama1Rを用いた場合とを比較した。結果を図11に示す。 図11(a)〜(e)に示される通り、Yama1F(3)、Yama1F(4)、Yama1F(5)(即ちYama1F)及びYama1F(6)を用いたテロメアの増幅において、テロメア量に依存した良好な直線性が認められた。 しかしながら、図11(f)に示される通り、実際に定量を行ってみると、Yama1Fを用いた場合の測定結果を100%としたときに比べ、Yama1F(6)を用いた場合では同程度の増幅が得られたのに対して、Yama1F(3)を用いた場合では、K562では6%、Placentaでは15%と低値であり、また、Yama1F(4)を用いた場合では、K562では27%、Placentaでは24%と低値であった。 よって、テロメアを効率よく増幅させ、定量を行うためには、GTAGGGの配列が5回ないし6回存在することが必要と考えられた。2.GTAGGG配列中の塩基の欠失及び置換、並びにリンカーの塩基の長さ及び配列の変化についての検討 5回又は6回のGTAGGGの繰り返し配列に、更にGTAGGGから1若しくは2塩基欠失又は置換した配列を付加してなるプライマーについて、GTAGGGの繰り返し配列と欠失配列又は変異配列(塩基が置換された配列のことを言う)との位置関係が、テロメア増幅に影響を与えるか否かを検討した。(1)5回のGTAGGGの繰り返し+欠失配列又は変異配列 5回のGTAGGGの繰り返しの他に、GTAGGGの最初のGを欠いた欠失配列TAGGGがリンカーから数えてそれぞれ1番目から6番目に配置されたプライマー(D1-1、D1-2、D1-3、D1-4、D1-5、D1-6とする)を作成した。なお、5'末端側に、Yama1Fと同じリンカー配列を配置した。 5回のGTAGGGの繰り返しの他に、GTAGGGの最初のGをCに変異させた変異配列CTAGGGがリンカーから数えてそれぞれ1番目から6番目に配置されたプライマー(M1-1、M1-2、M1-3、M1-4、M1-5、M1-6とする)を作成した。なお、5'末端側に、Yama1Fと同じリンカー配列を配置した。 5回のGTAGGGの繰り返しの他に、GTAGGGの最初の2塩基を欠いた欠失配列AGGGがリンカーから数えてそれぞれ1番目から6番目に配置されたプライマー(D2-1、D2-2、D2-3、D2-4、D2-5、D2-6とする)を作成した。なお、5'末端側に、Yama1Fと同じリンカー配列を配置した。 5回のGTAGGGの繰り返しの他に、GTAGGGの最初のGをTに、2番目のTをAに、2塩基変異させた配列であるTAAGGGがリンカーから数えてそれぞれ1番目から6番目に配置されたプライマー(M2-1、M2-2、M2-3、M2-4、M2-5、M2-6とする)を作成した。なお、5'末端側に、Yama1Fと同じリンカー配列を配置した。 ここで、「リンカーから数えて1番目」とは、リンカー部分と、最も5'末端側の繰り返し単位GTAGGGとの間を意味する。「リンカーから数えて2番目」とは、最も5'末端側の繰り返し単位GTAGGGと、5'末端側から2つ目の繰り返し単位GTAGGGとの間を意味する。「リンカーから数えて3番目」とは、5'末端側から2つ目の繰り返し単位GTAGGGと、5'末端側から3つ目の繰り返し単位GTAGGGとの間を意味する。「リンカーから数えて4番目」とは、5'末端側から3つ目の繰り返し単位GTAGGGと、5'末端側から4つ目の繰り返し単位GTAGGGとの間を意味する。「リンカーから数えて5番目」とは、5'末端側から4つ目の繰り返し単位GTAGGGと、5'末端側から5つ目の繰り返し単位GTAGGGとの間を意味する。「リンカーから数えて6番目」とは、5回のGTAGGGの繰り返し配列の3'末端側を意味する。以下、同様である。(2)5回のGTAGGGの繰り返し+リンカー変異 5回のGTAGGGの繰り返しを有し、かつ、リンカーの塩基数をゼロにしたもの(L0-5)、Yama1Fのリンカー配列の前半4塩基のみを5'末端側に結合させたもの(L4-5)、Yama1Fのリンカー配列の3'末端側に4塩基(GTTT)付加して12塩基としたリンカーを5'末端側に結合させたもの(L12-5)又はYama1Fのリンカー配列を2つ結合させて16塩基としたリンカーを5'末端側に結合させたもの(L16-5)をそれぞれ作成した。 5回のGTAGGGの繰り返しを有し、かつ、Yama1Fのリンカー配列中のAを全てGに変異させたリンカーを5'末端側に結合させたもの(Yama1FL(A-G))、Yama1Fのリンカー配列中のTを全てGに変異させたリンカーを5'末端側に結合させたもの(Yama1FL(T-G))、Yama1Fのリンカー配列中のGを全てAにしたリンカーを5'末端側に結合させたもの(Yama1FL(G-A))、5'末端側にCawthonFのリンカーを有するもの(Cawthon+GTAGGG×5)又は5'末端側にKarlssonFのリンカーを有するもの(Karlsson+GTAGGG×5)をそれぞれ作成した。 次いで、実施例6に記載の方法と同じように、絶対定量法によりテロメア量を定量した。但し、上記(1)又は(2)の通り作成したプライマーをフォワードプライマーとして用い、かつYama1Rをリバースプライマーとして用い、サンプルとしてPlacenta DNA及びK562細胞由来DNAを使用した。これらのプライマーを用いた場合と、Yama1FとYama1Rを用いた場合とを比較した。結果を図12に示す。(3)6回のGTAGGGの繰り返し+欠失配列又は変異配列 図12に示した結果から、増幅効率の極端に高いものと低いものの配列を考慮し、6回のGTAGGGの繰り返しの他に欠失配列又は変異配列を付加したものについて、以下の通りプライマーを設計した。 6回のGTAGGGの繰り返しの他に、GTAGGGの最初のGを欠いた欠失配列TAGGGがリンカーから数えて1番目に配置されたプライマー(N6D1-1)を作成した。なお、5'末端側に、Yama1Fと同じリンカー配列を配置した。 6回のGTAGGGの繰り返しの他に、GTAGGGの最初のGをCに変異させた変異配列CTAGGGがリンカーから数えて1番目に配置されたプライマー(N6M1-1)を作成した。 6回のGTAGGGの繰り返しの他に、GTAGGGの最初の2塩基を欠いた欠失配列AGGGがリンカーから数えて1番目に配置されたプライマー(N6D2-1)と7番目に配置されたプライマー(N6D2-7)を作成した。なお、「リンカーから数えて7番目」とは、6回のGTAGGGの繰り返し配列の3'末端側を意味する。 6回のGTAGGGの繰り返しの他に、GTAGGGの最初のGをTに、2番目のTをAに2塩基変異させた配列であるTAAGGGがリンカーから数えて1番目に来るようなプライマー(N6M2-1)を作成した。 次いで、実施例6に記載の方法と同じように、絶対定量法によりテロメア量を定量した。但し、上記(3)の通り作成したプライマーをフォワードプライマーとして用い、かつYama1Rをリバースプライマーとして用い、サンプルとしてPlacenta DNA及びK562細胞由来DNAを使用した。これらのプライマーを用いた場合と、Yama1FとYama1Rを用いた場合とを比較した。結果を図13に示す。 図12及び図13の結果から、いずれも良好な結果が得られた。GTAGGGから連続した2塩基が欠失又は置換した配列を付加した場合は、GTAGGGから、1塩基欠失若しくは置換、又は連続していない2塩基が欠失若しくは置換した配列を付加した場合よりも、プライマーとしての機能に影響しやすいと通常考えられる。しかしながら、GTAGGGから連続した2塩基が欠失又は置換した配列を付加した場合においても良好な結果が得られたことから、GTAGGGからどの1若しくは2塩基を欠失又は置換させた配列を付加した場合においても、本発明のプライマーとしての機能はいずれも良好であると考えられた。(4)5回又は6回のGTAGGGの繰り返し+欠失配列又は変異配列+リンカー変異 5回のGTAGGGの繰り返しを有し、Yama1Fのリンカー配列の前半4塩基のみを5'末端側に結合させ、更に、欠失配列TAGGGがリンカーから数えて2番目に配置されたプライマー(L4 D1-2)を作成した。 5回のGTAGGGの繰り返しを有し、Yama1Fのリンカー配列の前半4塩基のみを5'末端側に結合させ、更に、変異配列CTAGGGがリンカーから数えて5番目に配置されたプライマー(L4 M1-5)を作成した。 5回のGTAGGGの繰り返しを有し、Yama1Fのリンカー配列の前半4塩基のみを5'末端側に結合させ、更に、変異配列TAAGGGがリンカーから数えて1番目に配置されたプライマー(L4 M2-1)を作成した。 6回のGTAGGGの繰り返しを有し、Yama1Fのリンカー配列の前半4塩基のみを5'末端側に結合させ、更に、欠失配列TAGGGがリンカーから数えて1番目に配置されたプライマー(L4 N6D1-1)を作成した。 6回のGTAGGGの繰り返しを有し、Yama1Fのリンカー配列の前半4塩基のみを5'末端側に結合させ、更に、変異配列TAAGGGがリンカーから数えて1番目に配置されたプライマー(L4 N6M2-1)を作成した。 5回のGTAGGGの繰り返しを有し、Yama1Fのリンカー配列中のAを全てGに変異させたリンカーを5'末端側に結合させ、更に、欠失配列TAGGGがリンカーから数えて2番目に配置されたプライマー(A-G D1-2)を作成した。 5回のGTAGGGの繰り返しを有し、Yama1Fのリンカー配列中のAを全てGに変異させたリンカーを5'末端側に結合させ、更に、変異配列CTAGGGがリンカーから数えて5番目に配置されたプライマー(A-G M1-5)を作成した。 5回のGTAGGGの繰り返しを有し、Yama1Fのリンカー配列中のAを全てGに変異させたリンカーを5'末端側に結合させ、更に、変異配列TAAGGGがリンカーから数えて1番目に配置されたプライマー(A-G M2-1)を作成した。 6回のGTAGGGの繰り返しを有し、Yama1Fのリンカー配列中のAを全てGに変異させたリンカーを5'末端側に結合させ、更に、欠失配列TAGGGがリンカーから数えて1番目に配置されたプライマー(A-G N6D1-1)を作成した。 6回のGTAGGGの繰り返しを有し、Yama1Fのリンカー配列中のAを全てGに変異させたリンカーを5'末端側に結合させ、更に、変異配列TAAGGGがリンカーから数えて1番目に配置されたプライマー(A-G N6M2-1)を作成した。 5回のGTAGGGの繰り返しを有し、Yama1Fのリンカー配列中のTを全てGに変異させたリンカーを5'末端側に結合させ、更に、欠失配列TAGGGがリンカーから数えて2番目に配置されたプライマー(T-G D1-2)を作成した。 5回のGTAGGGの繰り返しを有し、Yama1Fのリンカー配列中のTを全てGに変異させたリンカーを5'末端側に結合させ、更に、変異配列CTAGGGがリンカーから数えて5番目に配置されたプライマー(T-G M1-5)を作成した。 5回のGTAGGGの繰り返しを有し、Yama1Fのリンカー配列中のTを全てGに変異させたリンカーを5'末端側に結合させ、更に、変異配列TAAGGGがリンカーから数えて1番目に配置されたプライマー(T-G M2-1)を作成した。 6回のGTAGGGの繰り返しを有し、Yama1Fのリンカー配列中のTを全てGに変異させたリンカーを5'末端側に結合させ、更に、欠失配列TAGGGがリンカーから数えて1番目に配置されたプライマー(T-G N6D1-1)を作成した。 6回のGTAGGGの繰り返しを有し、Yama1Fのリンカー配列中のTを全てGに変異させたリンカーを5'末端側に結合させ、更に、変異配列CTAGGGがリンカーから数えて1番目に配置されたプライマー(T-G N6M1-1)を作成した。 6回のGTAGGGの繰り返しを有し、Yama1Fのリンカー配列中のTを全てGに変異させたリンカーを5'末端側に結合させ、更に、変異配列TAAGGGがリンカーから数えて1番目に配置されたプライマー(T-G N6M2-1)を作成した。 次いで、実施例6に記載の方法と同じように、絶対定量法によりテロメア量を定量した。但し、上記(4)の通り作成したプライマーをフォワードプライマーとして用い、かつYama1Rをリバースプライマーとして用い、サンプルとしてPlacenta DNA及びK562細胞由来DNAを使用した。これらのプライマーを用いた場合と、Yama1FとYama1Rを用いた場合とを比較した。結果を図14に示す。 L4 N6D1-1を用いた場合では、K562では232%、Placentaでは265%と極めて高い値を示したが、検量用サンプルでの検量性がYama1Fを用いた場合と比較して劣るため、テロメア量の正確な定量には、Yama1Fよりも不適であると考えられる。 なお、実施例7において試験されたプライマーにおいて、テロメアに対する特異性はいずれのプライマーも有しており、検量性の点でも、上記の通りL4 N6D1-1が劣る以外は、いずれのプライマーも良好な検量性を有する。 以上の結果から、5回のGTAGGGの繰り返しを有し、かつGTAGGGから1若しくは2塩基を欠失又は置換させた配列を付加した場合においては、リンカーが4〜8個の塩基からなるものであれば、良好なテロメア配列増幅効率や定量性を得られることが確認できた。また、6回のGTAGGGの繰り返しを有し、かつGTAGGGから1若しくは2塩基を欠失又は置換させた配列を付加した場合においては、リンカーが8個の塩基からなるものであれば、良好なテロメア配列増幅効率や定量性を得られることが確認できた。(実施例8)本発明のプライマーのテロメア配列増幅効率及び定量性の比較検証 Yama1Fをフォワードプライマーとして用い、かつYama1Rをリバースプライマーとして用い、Placenta DNA及びK562細胞由来DNAを10 ngを使用して、実施例6に記載の方法に準じて、絶対定量法によりテロメア量をそれぞれ定量した。同様に、コーソン、カールソンらのプライマーを用いた場合との比較実験を行った。 Yama1FによるPCR産物の量を100として、それぞれのプライマーによる増幅効率を比較した。結果を図15に示す。コーソンが使用したプライマーを用いた場合では、K562で11%、Placentaで3%、カールソンが使用したプライマーを用いた場合では、K562で25%、Placentaで31%であった。この結果は先に示したゲル電気泳動の結果とも整合し、Yama1Fの増幅が最も良好であり、顕著な増幅効率をもたらすものであることが確認された。 また、図12に示される通り、D2-6又はL16-5を用いた場合に、Yama1Fを用いた場合と比較して増幅効率がやや低下した。しかしながら、Yama1FによるPCR産物の量を100として、D2-6を用いた場合には、K562で55%、Placentaで53%であり、L16-5を用いた場合には、K562で60%、Placentaで64%であった。これらの結果から、D2-6やL16-5を用いた場合であっても、コーソンが使用したプライマーに対しては約5倍〜10倍以上、カールソンが使用したプライマーに対しては約2倍以上の増幅効率をもたらすことが認められた。 次に、検量線用サンプル(実施例6で使用されたテロメアオリゴマー)を10倍毎に希釈した希釈系列を用意し、スタンダードの希釈オリゴが、本発明のプライマー(Yama1F/R)を用いてPCRを行った場合に、容量依存的に増幅されるか否かを測定した。PCR条件等は、実施例6に記載の方法に準じて行った。結果を図16に示す。 図16に示すように、Yama1F/Rを用いた場合には、サンプルの希釈系列に準じた容量依存的な増幅が認められた。一方、コーソンやカールソンのプライマーを使用した場合には、正確な定量性は認められないと考えられる。(実施例9)本発明のプライマーを用いた絶対定量法とTRF法との相関 TRF法とは、テロメアのDNA部分は残し、それ以外のDNA部分は制限酵素処理により細かく切断してゲル電気泳動で流し去り、ゲルに残存するテロメアDNAを相補的なテロメアプローブで検出する方法であり、従来から行われていたテロメア長を測定することができる方法である(Yamada O et al J. Clin. Invest. 95:1117-1123,1995)。しかしながら、本発明法に比べるとサンプル量が約1000倍必要であること、時間が約10倍必要なこと、手技が面倒であること、膨大な経費や特殊な装置が必要であることなどの点で利便性が良くない。 同一個体の36歳、47歳、56歳、62歳の線維芽細砲(ASF4-1〜ASF4-4)から抽出したDNAを使い、サザンブロット法によるテロメア長(TRF)と、本発明のプライマーを用いた絶対定量法を比較検討した(表4)。本発明のプライマーを用いた絶対定量法はTRF法の結果と良好な相関を示した。TRFよりテロメア長が若干短い結果を示すのは、サブテロメア部分を反映せずにテロメア部分のみを増幅しているためと考えられる。なお、上記のような、同一個体から加齢に伴い採取したヒト細胞DNAを、テロメア長絶対定量の標準直線として使用することで、施設間の精度管理も可能である。 結果を下記の表4に示す。 この結果から、本発明のプライマーを用いた絶対定量法による定量が、テロメア長を反映していることが証明された。(実施例10)本発明のプライマーを用いて測定した正常人DNAのテロメア長の比較 30歳代、40歳代、50歳代及び60歳代の健康な男性各10名並びに70歳代の健康な男性7名、更に30歳代、40歳代、50歳代、60歳代及び70歳代の健康な女性各10名について、本発明のプライマーを用いてDNAのテロメア長を測定し、比較した。 各人の末梢血から白血球層を分離し、キアゲン社のキット(QIAamp DNA MiniKit)を使用してDNAを抽出後、Yama1F、Yama1Rの組み合わせのプライマーを使用し、10 ngのサンプル量を用いて、実施例6に記載の方法と同じようにテロメア長を測定した。但し、Taqポリメラーゼについては、Hot-Start Gene Taq NTを使用した。実験はトリプリケートで行い、3つのサンプルのうちの1つが他に比べてかけ離れた値を示した場合には、手技や反応で問題ありと判断し、当該1サンプルを除去して集計した。結果を下記の表5及び図17〜19に示す。 この結果、正常人の集団においてもテロメア長は加齢に伴い減少することが証明された。本発明者が通常同一男性の加齢に伴うテロメアDNAの標準サンプルとして使用しているものは、細胞一個あたりに換算すると36歳時698 kb、47歳時603 kb、56歳時519 kb、62歳時404 kbである。この値と比べても、集団の場合でも同程度のテロメア長の短小化が起こっていることが示された。 各年代間では、10歳の間隔ではテロメア長に優位な差は見いだせなかったが、20歳の間隔では男女ともにテロメア長に優位差を認めた(図17〜19において、*はp <0.05を、**はp <0.01を表す)。テロメア長は生まれながらにして個人差があるため、10歳程度の年齢差では生まれながらの個人差の影響を受けてしまう。しかし、サンプル数を十分に増やすことで、個人差の影響を無視することができると考えられる。以上のことから、本発明のプライマーを用いた絶対定量法による定量は、正常人の集団においてもテロメア長の定量に再現性があると考えられる。 本発明は、医学的診断、疾患の予後管理、及び治療剤の有効性の確認等において有用である。また、本発明は、生検材料からの癌の補助診断、警察鑑識分野、生活習慣病の予知、ストレスの判定、生物年齢と細胞年齢、抗加齢分野及び美容化粧品分野等での利用に有益である。 以下の式(1)又は(2)で表されるテロメア配列増幅用プライマー。(1)L1−(R1)n1 式(1)中、繰り返し単位であるR1はGTAGGGで示される塩基配列を表し、n1は繰り返し単位であるR1の個数を表し、5又は6であり、n1が5のとき、L1は16個以下の塩基からなるリンカーを表し、n1が6のとき、L1は8個以下の塩基からなるリンカーを表す。(2)L2−(R2)n2(X) 式(2)中、繰り返し単位であるR2はGTAGGGで示される塩基配列を表し、Xは、前記繰り返し単位の5’末端側、隣接するいずれか2つの前記繰り返し単位の間又は前記繰り返し単位の3’末端側のいずれか1箇所に結合される、GTAGGGで表される塩基配列から1又は2個の塩基が欠失又は置換されてなる配列を表し、n2は繰り返し単位であるR2の個数を表し、5又は6であり、n2が5のとき、L2は4〜8個の塩基からなるリンカーを表し、n2が6のとき、L2は8個の塩基からなるリンカーを表す。 前記式(1)で表され、n1が5であり、L1が12個以下の塩基からなるリンカーを表す、請求項1に記載のプライマー。 L1が、GTTT、GGTTTT、CGGTTTG、GTTTATTA、GTTTGTTG、GGGGAGGA、ATTTATTA及びGTTTATTAGTTTからなる群から選択される、請求項2に記載のプライマー。 前記式(2)で表され、該プライマーの3’末端に、GTAGGGで表される塩基配列から2個の塩基が欠失されてなる配列を含まない、請求項1に記載のプライマー。 L2が、GTTTATTA、GTTTGTTG及びGGGGAGGAからなる群から選択される、請求項4に記載のプライマー。 請求項1〜5のいずれか1項に記載のプライマーと、配列番号2〜4のいずれかで表される塩基配列からなる少なくとも1つのプライマーとを組み合わせた、テロメア配列増幅用プライマーセット。 請求項6に記載のプライマーセットを用いてポリメラーゼ連鎖反応を行うことにより、テロメア配列を増幅する方法。 被検2倍体細胞1個当たりのテロメアを定量する方法であって、(a)TTAGGGからなる塩基配列の繰り返し配列である合成テロメアオリゴマーについて、リアルタイムPCRを用いて、テロメア量とCt値との関係を示す検量線を作成する工程、(b)被検2倍体細胞の細胞集団サンプルを、工程(a)と同じ条件のリアルタイムPCRに付して、Ct値を得る工程、(c)工程(b)のCt値を工程(a)の検量線にあてはめて、細胞集団サンプル中のテロメア量(X)を得る工程、及び、(d)工程(c)のXを下記式にあてはめて、被検2倍体細胞1個当たりのテロメア量(Y)を得る工程:Y=X/ZZ:被検2倍体細胞中に存在するシングルコピー遺伝子を指標として求めた、細胞集団サンプルに含まれる細胞数を含み、 工程(a)及び(b)のリアルタイムPCRを請求項6に記載のプライマーセットを用いて行うことを特徴とする、前記方法。 本発明は、テロメア配列増幅用プライマーを提供することを目的とする。本発明は、以下の式(1)又は(2)で表されるテロメア配列増幅用プライマーを提供する。(1)L1−(R1)n1 式中、繰り返し単位であるR1はGTAGGGで示される塩基配列を表し、n1は5又は6であり、n1が5のとき、L1は16個以下の塩基からなるリンカーを表し、n1が6のとき、L1は8個以下の塩基からなるリンカーを表す。(2)L2−(R2)n2(X) 式中、繰り返し単位であるR2はGTAGGGで示される塩基配列を表し、Xは、GTAGGGで表される塩基配列から1又は2個の塩基が欠失又は置換されてなる配列を表し、n25又は6であり、n2が5のとき、L2は4〜8個の塩基からなるリンカーを表し、n2が6のとき、L2は8個の塩基からなるリンカーを表す。配列表


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