生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_腸管免疫調整剤
出願番号:2012531715
年次:2014
IPC分類:A61K 35/74,A61P 43/00,A61P 37/02,A61P 31/04


特許情報キャッシュ

原 崇 樋口 裕樹 藤井 幹夫 JP 5531283 特許公報(B2) 20140509 2012531715 20110526 腸管免疫調整剤 国立大学法人 新潟大学 304027279 亀田製菓株式会社 390019987 藤田 和子 100116872 原 崇 樋口 裕樹 藤井 幹夫 JP 2010194021 20100831 20140625 A61K 35/74 20060101AFI20140605BHJP A61P 43/00 20060101ALI20140605BHJP A61P 37/02 20060101ALI20140605BHJP A61P 31/04 20060101ALI20140605BHJP JPA61K35/74 AA61P43/00A61P37/02A61P31/04 A61K 35/00 CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII) 国際公開第2009/131208(WO,A1) 特開2009−292785(JP,A) 特開2007−308419(JP,A) 国際公開第2007/015132(WO,A2) Darab Ghadimi et al.,Effects of probiotic bacteria and their genomic DNA on TH1/TH2-cytokine production by peripheral blo,Immunobiology,2008年,Vol.213,pp.677-692 黒野 祐一他,インフルエンザ菌外膜蛋白P6に対する鼻粘膜IgA応答におけるIFN−γの役割,日本鼻科学会会誌,1998年,Vol.37 , No.2,pp.98-102 Simona Buccheri et al.,IL-4 depletion enhances host resistance and passive IgA protection against tuberculosis infection in,European Journal of Immunology,2007年,Vol.37,pp.729-737 Prosper N. Boyaka et al.,IL-12 Is an Effective Adjuvant for Induction of Mucosal Immunity,The Journal of Immunology,1999年,Vol.162,pp.122-128 5 FERM BP-11098 JP2011062138 20110526 WO2012029367 20120308 9 20130118 田村 直寛 本発明は、腸管免疫調整剤に関し、より詳細には特定の乳酸菌の菌体又は菌体成分を有効成分として含有する腸管免疫調整剤に関する。 分泌型免疫グロブリンA(SIgA)は、口腔、鼻孔、呼吸器官、消化管等の粘膜に存在し、粘膜免疫の中核をなす免疫物質である。粘膜は常に外気や食物を通じて病原菌やアレルギー物質等に暴露されているが、SIgAは、これらから粘膜を防御するために重要な役割を果たしている。すなわち、SIgAは、細菌やウイルスに結合してこれらを凝集させるとともに、毒素や細菌由来の酵素などに結合してこれらを無毒化することで、粘膜を保護している。SIgAの分泌量は、脳、内分泌系や自律神経系による制御を受けているが、若年層や高齢者では成人と比べて低い。 一方、ナチュラルキラー(NK)細胞は、癌細胞やウイルス感染細胞等の非自己と認識される細胞を発見してこれを殺傷するリンパ球の一種である。NK細胞の数も若年時や高齢者で少なく、そのことが小児や高齢者において感染症を発症する原因の一つと考えられている。 近年、SIgA分泌量又はNK細胞活性を高める食品や食品成分の開発が試みられており、乳酸菌やビフィズス菌の特定の菌株がかような機能を有することが報告されている(特許文献1〜8参照)。特開2005−194259号公報特開2007−308419号公報特開2008−179630号公報特開2008−201708号公報特開2010−057395号公報特開2010−130954号公報特開2010−150206号公報WO2006−087913号パンフレット しかし、従来開発されているものは、SIgA分泌又はNK細胞活性のいずれか一方のみを向上するにとどまり、双方を向上するものではない。このため、粘膜保護が不充分であるか、保護された粘膜が僅かに感染した場合の症状拡大を充分に抑制できない等の懸念がある。 かような作用が発現するためには、かかる機能を有する食品または食品成分を毎日欠かさずに摂取し続けることが重要である。しかし、カプセルや錠剤の形態をしたサプリメントでは、習慣とならない限り、飲み忘れが懸念される。また、一般食品の形態をしたヨーグルトや乳酸菌飲料は、上記の乳酸菌やビフィズス菌を用いて製造することは可能であるが、個人の嗜好により受け入れられない場合があり、飽きが来やすく、毎日欠かさず摂取するための優れた食品の形態であるとは言い難い。 これに対し、米は多くの人々の主食であることから、米を原料として発酵等のプロセスを用いてかかる作用を有する乳酸菌を著量含有する米や炊飯米を提供することができれば、毎日欠かさず摂取できる点で好都合である。 本発明は、以上の実情に鑑みてなされたものであり、より優れた腸管免疫調整剤を提供することを目的とし、具体的には、分泌型免疫グロブリンAの産生亢進作用とNK細胞活性化作用とを併せて有し、かつ主食である米の加工品としても提供が可能な腸管免疫調整剤を提供することを目的とする。 本発明者らは、抗アレルギー作用を有する乳酸菌ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)K71株(FERM BP−11098)が水に浸漬した米の表面で旺盛に生育し、生育した乳酸菌が米の表面に強固に結合して存在するため、発酵により生じた乳酸等の味覚的に好ましくない成分を洗浄除去しても該乳酸菌は米に付着したまま存在すること、乳酸印が付着した洗浄米を炊飯することにより著量の該乳酸菌を含有し、かつ通常のご飯と官能的に差の無い良食味の炊飯米が製造できることを見出し、PCT/JP2009/059141号として国際出願し、その詳細はWO2009/131208号パンフレットとして国際公開されている。本発明者らは、該乳酸菌ラクトバチルス・パラカゼイK71が驚くべきことに、分泌型免疫グロブリンAの産生亢進作用とNK細胞活性化作用とを併せて有することを見出し、本発明を完成するに至った。具体的に、本発明は以下のものを提供する。 (1) 受託番号FERM BP−11098として国際寄託されたラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)K71株の菌体又は菌体成分を有効成分として含有する腸管免疫調整剤。 (2) 前記菌体は、死菌体である(1)記載の腸管免疫調整剤。 (3) 分泌型免疫グロブリンAの産生亢進に用いられる(1)又は(2)記載の腸管免疫調整剤。 (4) ナチュラルキラー細胞の活性化に用いられる(1)から(3)いずれか記載の腸管免疫調整剤。 (5) 経口投与されるものである(1)から(4)いずれか記載の腸管免疫調整剤。 (6) 前記K71株の菌体を用いて発酵させた米か、該米の粉砕物か、前記米または米の粉砕物を炊飯調理して得られる飯かを含む(1)から(5)いずれか記載の腸管免疫調整剤。 (7) (1)から(6)いずれか記載の腸管免疫調整剤を含有し、感染症の予防に用いられる医薬品。 本発明によれば、気道や消化管粘膜においてSIgAの産生が亢進されて体外から侵入した病原体と結合することで、病原体が粘膜上皮細胞に感染するのが阻止され、また、粘膜上皮細胞がウイルス等に感染しても、活性化したNK細胞が攻撃して周囲の細胞への感染を阻止するため、感染症を充分に予防することができる。本発明の実施例に係る方法で製造される組成物をBALB/c雌マウスに経口で5週間摂取させた際の糞便中のSIgA含量を比較したグラフである。エラーバーは標準偏差を、*印は群間の有意差(P<0.05)を示す。本発明の組成物をBALB/c雌マウスに6週間摂取させた場合の糞便中のSIgA含量の変化を1週間毎に示したグラフである。エラーバーは標準偏差を、*印は群間有意差(P<0.05)を示す。本発明の組成物をBALB/c雌マウスに5週間摂取させた後における、脾細胞に含まれるNK細胞による細胞傷害活性を示すグラフである。横線は平均値を、◇は各測定点を示し、*印は群間有意差(P<0.01)を示す。本発明の実施例に係る方法で製造される組成物をSD雄ラットに7日間混餌で摂取させた際の糞便中のSIgA含量の増加を示すグラフである。エラーバーは標準偏差を示す。本発明の組成物を比較的SIgA分泌量が低い健康な成人男女に12週間摂取させた際の唾液中SIgA分泌速度の増加を示すグラフである。エラーバーは標準偏差を、*印は試験開始前の値に対する有意差(P<0.05)を示す。 以下、本発明の実施形態について説明するが、これに本発明が限定されるものではない。 本発明に係る腸管免疫調整剤は、受託番号FERM BP−11098として国際寄託されたラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)K71株の菌体又は菌体成分を有効成分として含有する。かかる菌体及び菌体成分は、分泌型免疫グロブリンAの産生亢進と、ナチュラルキラー細胞の活性化との双方の作用を呈するため、感染症を充分に予防することができる。 本発明において「有効成分として含有する」とは、腸管免疫を調整する能力が統計的に有意でない程度まで損なわれない限りにおいて、他の成分を含有することを除外するものではない。 K71株は、上記受託番号により、2009年2月20日に、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(日本国 茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に国際寄託されている。培養は、通常の培地(例えばMRS培地や野菜果汁等)を用いて通常の培養条件で行うことができる。pH4.0〜7.0、好ましくは6.0〜6.5の培地で培養を開始し、35℃〜42℃、好ましくは37℃〜40℃の温度で培養を行うとよい。静置培養で充分な生育が可能ではあるが、培地成分と菌体とを均一に分散させるために、緩やかに撹拌することが好ましい。乳酸菌の生育に伴い、乳酸が培地中に蓄積し、培地のpHが徐々に低下する。培養中の培地pHを調節しなくとも乳酸菌はある程度回収できるが、炭酸カルシウムを培地中に添加する、又は自動調節により、培地のpHを制御することが好ましい。培養中の培地pHを4.0〜7.0、好ましくは6.0〜6.5に制御することで、高密度の乳酸菌を得ることができる。K71株に関する他の生理・生化学的性状等は、WO2009/131208号パンフレットに記載されているため、その詳細な説明を省略する。 液体培養により生育したK71株は、そのまま又は乾燥させて、腸管免疫調整剤として利用できるが、精白米等を発酵させる際のスターターとして利用することもできる。つまり、本発明の腸管免疫調整剤は、K71株を用いた発酵により製造されてもよい。また、K71株は水に浸漬した精白米を単一の培地として旺盛に生育し、かつ精白米の表面に付着する性質を有することから、K71株による米の発酵品から発酵で生じた乳酸等の好ましくない成分を水洗除去した後、炊飯その他の加熱、加圧等を施して製造されてよい。 菌体は、生菌体及び/又は死菌体であってよく、所望程度の上記作用を確実に得る点では死菌体が好ましい。ただし、乳酸菌の増殖又は代謝による利点や腸管免疫調整剤の製造コスト削減の観点からは、生菌体も好ましい。なお、生菌体とは、生きたままの菌体を指し、死菌体とは、加熱、加圧、薬物処理等で殺菌処理された菌体を指す。また、菌体成分は、酵素処理、ホモジナイズ、超音波処理等で細胞を破壊した破砕物、又は細胞壁画分を分取したものを指す。 本発明の感染症予防剤は、特定されている優れた作用の観点から、分泌型免疫グロブリンAの産生亢進(例えば、粘膜上皮細胞への病原体の感染予防)及び/又はナチュラルキラー細胞の活性化(例えば、ウイルスの感染領域が粘膜上皮細胞から周囲へと拡大することを抑制する)を実現することができる。 本発明の腸管免疫調整剤は、従来飲食されてきた乳酸菌を有効成分とするため、経口投与に最適であり、種々の剤型(溶液、錠剤、顆粒等)で投与されてよい。ただし、腸内へと注射等で直接導入することも除外されない。 このような本発明の腸管免疫調整剤は、優れた腸管免疫調整能力及び安全性を有するため、医薬品の成分として有用である。従って、本発明は、上記腸管免疫調整剤と同様の成分を含有し、感染症(例えば、いわゆる風邪)の予防に用いられる医薬品を包含する。本発明に係る医薬品は、分泌型免疫グロブリンAの産生亢進作用とNK細胞活性化作用とを併せて有するため、優れた感染症予防効果を奏する。 <実施例1> ラクトバチルス・パラカゼイK71をMRS培地に接種し、37℃で20時間培養した。遠心分離により乳酸菌体を回収し、蒸留水で2回洗浄後に乾燥菌体重量と等量のデキストリンを添加して80℃で30分間加熱殺菌を行った。これを凍結乾燥することによりラクトバチルス・パラカゼイK71の死菌体粉末(以下、「K71粉末」と略す)を得た。 BALB/c雌マウス(5週齢、チャールス・リバーより購入)を22℃のコンベンショナルな環境下で1週間馴化飼育した後、5匹ずつ2群に群分けした。K71粉末20mgを1mLの滅菌水に懸濁し、この懸濁液50μLを一方の群に毎日1回経口投与(1mg−K71粉末/マウス/日)した(K71投与群)。他方の群には50μLの滅菌水を同様に毎日1回投与した(対照群)。飼育5週目(34日目夜〜35日目朝)に糞を回収し、PBS緩衝液に適宜懸濁した後、その上清に含まれるIgA量(SIgA)を、ELISA法を用いて測定した。その結果を図1に示す。 図1に示されるように、K71投与群は対照群に比べて糞中のSIgA量が有意に(P<0.05)高くなっていた。 <実施例2> 実施例1と同様に、BALB/c雌マウス(各群6匹)にK71粉末を1mg/マウス/日となるように反復経口投与し、毎週1回糞中のSIgA量を測定した。その結果、図2に示されるように、試験期間全体を通じてK71投与群のSIgAが対照群に比べ高い値を示し、その差は2、4、及び6週目には有意(P<0.05)であった。 <実施例3> 実施例1と同様に、BALB/c雌マウス(各群6匹)にK71粉末又は滅菌水を毎日投与した。5週間の飼育終了後に脾細胞を採取した。脾細胞(1.25×106cells/ml)とYAC−1細胞(1×105cells/ml)とを12.5:1(脾細胞:YAC−1細胞)の比率で混合し、1%ウシ胎児血清を含むRPMI−1640培地(96wellプレート)、37℃、5%CO2条件下で4時間インキュベートした。YAC−1細胞の破壊に伴い放出された乳酸脱水素酵素(LDH)の活性を調べることにより、採取した脾細胞が有する細胞傷害活性を求めた。具体的には脾細胞とYAC−1細胞の共培養液上清50μLを新しい96wellプレートに移し、Roche社製Cytotoxicity Detection Kit(LDH)を使用してLDH酵素活性を測定した。 その結果、図3に示されるように、K71投与群の脾細胞における細胞傷害活性が、対照群と比較して有意に(P<0.01)高い値を示した。このことから、K71株の菌体又は菌体成分の摂取が、ナチュラルキラー細胞の活性化を促進することが分かった。 <実施例4> 6週齢のSD雄ラットを日本SRLより購入し、SPF環境下、固形飼料(フナバシファームFR−2)及び上水道水の自由摂取により、1週間予備飼育した。動物を各群3匹となるように2群に分け、対照群にはFR−2飼料を、K71投与群にはK71粉末を5%混餌したFR−2飼料を自由に摂取させ、22℃のSPF環境下で8日間飼育した。飼育の前後における動物の体重を測定するとともに、飼育開始直前(予備飼育終了前日夜〜終了日朝)及び飼育終了直前(飼育7日目夜〜8日目朝)の糞便を回収した。 回収した糞を適宜生理食塩水に懸濁してストマッカー処理を行い、上清の生菌数(CFDA蛍光染色法)、大腸菌群の数(ニッスイXM−G寒天培地を用いたコロニーカウント法)、及びSIgA濃度(ELISA法)の測定を行った。その結果を表1及び図4に示す。 表1に示されるように、対照群とK71投与群との間で、体重及び体重増加量に差は認められなかった。回収された糞の重量はK71投与群でやや多くなっていたものの、飼育前後における重量差に大きな変化はなかった。糞中の生菌数は両群ともに飼育前後において大きく変動しなかった。 一方、飼育前後における糞中の大腸菌群を比較した結果、K71投与群では大腸菌群の数が全ての個体で減少していた。また、図4に示されるように、K71投与群のSIgA量は、実施例1及び2の結果と同じく、対照群と比較して高い値を示した。このことから、K71株の菌体又は菌体成分の摂取が、消化管粘膜におけるIgAの分泌を促進し、その結果として糞中の大腸菌群を減少させる可能性が示唆された。<実施例5> ヘルシンキ宣言および疫学研究に関する倫理指針に則りヒト試験を実施した。30歳〜57歳の健康な成人男女24名について、摂取前検査として唾液SIgA分泌速度を定法に従い測定した。SIgA分泌速度は47.87±20.07μg/minであった。24名中で比較的SIgA分泌速度が低い11名(男性5名、女性6名)を被験者として選択した。被験者に対して試験食品(1包にK71粉末200mgを含む粉末食品)を配布し、1日に1包を水またはぬるま湯などに混ぜて摂取させた。4週間毎の来院時に問診と唾液SIgAの分泌速度測定を行った。試験途中で2名の中止脱落(男女各1名)があったため、9名を対象として解析を行った。その結果、図5に示す通り、摂取開始後4週目、8週目、12週目のSIgA分泌速度は、摂取前の値と比較して有意に増加していた。摂取期間を通じ、試験食の摂取に起因する有害事象は認められなかった。 受託番号FERM BP−11098として国際寄託されたラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)K71株の菌体又は菌体成分を有効成分として含有し、腸管免疫向上を介した感染症予防剤。 前記菌体は、死菌体である請求項1記載の感染症予防剤。 分泌型免疫グロブリンAの産生亢進に用いられる請求項1又は2記載の感染症予防剤。 ナチュラルキラー細胞の活性化に用いられる請求項1から3いずれか記載の感染症予防剤。 経口投与されるものである請求項1から4いずれか記載の感染症予防剤。


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