タイトル: | 特許公報(B2)_ペンタエリスリトールのテトラエステル |
出願番号: | 2012528575 |
年次: | 2012 |
IPC分類: | C07C 69/33,C10M 105/38,C10N 30/00,C10N 40/30 |
稲山 俊宏 日吉 聡 雨宮 信仁 岸本 茂久 JP 5089826 特許公報(B2) 20120921 2012528575 20110630 ペンタエリスリトールのテトラエステル KHネオケム株式会社 312004880 特許業務法人 もえぎ特許事務所 110000774 稲山 俊宏 日吉 聡 雨宮 信仁 岸本 茂久 JP 2010187570 20100824 20121205 C07C 69/33 20060101AFI20121115BHJP C10M 105/38 20060101ALI20121115BHJP C10N 30/00 20060101ALN20121115BHJP C10N 40/30 20060101ALN20121115BHJP JPC07C69/33C10M105/38C10N30:00 AC10N40:30 C07C 69/33 C10M 105/38 C10N 30/00 C10N 40/30 CA/REGISTRY(STN) 国際公開第97/11933(WO,A1) 特開平6−25682(JP,A) 特開平6−17073(JP,A) 特開2002−129177(JP,A) 国際公開第2012/026212(WO,A1) 国際公開第2012/026213(WO,A1) 特開平6−108076(JP,A) 2 JP2011065109 20110630 WO2012026214 20120301 11 20120620 宮田 和彦 本発明は、冷凍機油等の工業用潤滑油等に用いられるペンタエリスリトールのテトラエステルに関する。 近年、オゾン破壊係数がゼロであり、地球温暖化係数(GWP)がより低いハイドロフルオロカーボン(HFC)が冷凍機用の冷媒として使用されている。ジフルオロメタン冷媒(HFC−32)は、GWPが現在用いられている冷媒[R−410A(ジフルオロメタンとペンタフルオロエタンとの混合物)、R−407C(ジフルオロメタンとペンタフルオロエタンと1,1,1,2−テトラフルオロエタンとの混合物)等]の約1/3〜1/4と低く、かつ成績係数(COP)もR−410A、R−407C等に対して約5〜13%向上するため省エネルギー化の観点から好ましい冷媒である(非特許文献1)。 特許文献1には、ジフルオロメタン冷媒用冷凍機油に用いられるペンタエリスリトールと脂肪酸とのエステルが開示されているが、該エステルのジフルオロメタン冷媒に対する相溶性等は十分でない。 特許文献2には、ペンタエリスリトールとi−ノナン酸と無水i−酪酸とを1:3:0.5のモル比で反応させて得た混合エステルがセラミック含有エンジンを潤滑させる方法に用いられることが記載されているが、該混合エステルのジフルオロメタン冷媒に対する相溶性については記載も示唆もされていない。特開2002−129177号公報特開2004−43821号公報「潤滑経済」,2004年6月号(No.460),p.17 本発明の目的は、ジフルオロメタン冷媒に対する優れた相溶性等を有する冷凍機油等に用いられるペンタエリスリトールのテトラエステルを提供することにある。 本発明は、以下の[1]〜[2]に記載のペンタエリスリトールのテトラエステルを提供する。[1]ペンタエリスリトールとイソ酪酸および3,5,5−トリメチルヘキサン酸からなるカルボン酸との混合エステルであり、前記カルボン酸における3,5,5−トリメチルヘキサン酸に対するイソ酪酸のモル比(イソ酪酸/3,5,5−トリメチルヘキサン酸比)が36/64〜80/20の範囲にあるペンタエリスリトールのテトラエステル。[2]前記カルボン酸における3,5,5−トリメチルヘキサン酸に対するイソ酪酸のモル比(イソ酪酸/3,5,5−トリメチルヘキサン酸比)が36/64〜67/33の範囲にある[1]に記載のペンタエリスリトールのテトラエステル。 本発明により、ジフルオロメタン冷媒に対する優れた相溶性等を有する冷凍機油等に用いられるペンタエリスリトールのテトラエステルを提供できる。 以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。 本発明のペンタエリスリトールのテトラエステルは、ペンタエリスリトールとイソ酪酸および3,5,5−トリメチルヘキサン酸からなるカルボン酸との混合エステルであり、前記カルボン酸における3,5,5−トリメチルヘキサン酸に対するイソ酪酸のモル比(イソ酪酸/3,5,5−トリメチルヘキサン酸比)が36/64〜80/20の範囲にあり、その中でも36/64〜67/33の範囲にあるのが好ましい。但し、この範囲外であっても本発明の効果を奏する場合は、本発明に含まれる。ここで、ペンタエリスリトールのテトラエステルとは、ペンタエリスリトールにおける4つの水酸基を4分子のカルボン酸で完全にエステル化して得られる化合物を意味する。 本発明でいう「混合エステル」には、下記(i)〜(iii):(i)同一分子における構成カルボン酸が、イソ酪酸および3,5,5−トリメチルヘキサン酸の双方からなるペンタエリスリトールのテトラエステル(ii)ペンタエリスリトールとイソ酪酸とのエステル、およびペンタエリスリトールと3,5,5−トリメチルヘキサン酸とのエステルの混合物(iii)上記(i)および(ii)の混合物の各態様が包含される。 また、本発明のペンタエリスリトールのテトラエステル中にペンタエリスリトールのトリエステル等が不純物として含まれていてもよい。 本発明のペンタエリスリトールのテトラエステルは、ペンタエリスリトールと、イソ酪酸と、3,5,5−トリメチルヘキサン酸とを、所望により触媒の存在下、120〜250℃で、5〜60時間反応させることにより製造することができる。 触媒としては、例えば、鉱酸、有機酸、ルイス酸、有機金属、固体酸等が挙げられる。鉱酸の具体例としては、例えば、塩酸、フッ化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸等が挙げられる。有機酸の具体例としては、例えば、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ブタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、エタンスルホン酸、メタンスルホン酸等が挙げられる。ルイス酸の具体例としては、例えば、三フッ化ホウ素、塩化アルミニウム、四塩化スズ、四塩化チタン等が挙げられる。有機金属の具体例としては、例えば、テトラプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン等が挙げられる。固体酸の具体例としては、例えば、陽イオン交換樹脂等が挙げられる。 イソ酪酸の使用量と3,5,5−トリメチルヘキサン酸の使用量との和が、使用するペンタエリスリトールの水酸基に対して、1.1〜1.4倍モルであるのが好ましい。 前記反応において、反応により生成する水を反応混合物から取り除きながら反応を行うことが好ましい。反応により生成する水を反応混合物から取り除くとき、同時にイソ酪酸も反応混合物から取り除いてしまうことがある。 前記反応において、反応器に精留塔を付帯し、反応により生成する水を反応混合物から取り除くことができる。精留塔を付帯し、反応により生成する水を反応混合物から取り除くとき、該精留塔の運転条件を調整してイソ酪酸の炊き上げ量を変化させることにより、本発明のペンタエリスリトールのテトラエステルを構成するイソ酪酸の比率を調整することができる。 前記反応において、溶媒を用いてもよく、溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、イソヘキサン、イソオクタン、イソノナン、デカン等の炭化水素系溶媒等が挙げられる。溶媒を用いることで、反応により生成する水を反応混合物から効率よく取り除くことができ、反応時間を短縮することができる。 反応後、必要に応じて、本発明のペンタエリスリトールのテトラエステルを有機合成化学で通常用いられる方法(水および/またはアルカリ水溶液を用いた洗浄、活性炭、吸着剤等による処理、各種クロマトグラフィー法、蒸留法等)で精製してもよい。 本発明のペンタエリスリトールのテトラエステルは、ジフルオロメタン冷媒に対する優れた相溶性、優れた低温流動性、加水分解などに対する優れた安定性、優れた潤滑性等を有する。 本発明のペンタエリスリトールのテトラエステルを空調機用冷凍機油に用いるとき、該テトラエステルの40℃における動粘度が20〜70mm2/秒の範囲にあるのが好ましく、40〜70mm2/秒の範囲にあるのがより好ましい。二層分離温度が−15℃以下であるのが好ましい。流動点が−40.0℃以下であるのが好ましく、−42.5℃以下であるのがより好ましい。 本発明のペンタエリスリトールのテトラエステルは、冷凍機油に用いられる他、エンジン油、ギア油、グリース、可塑剤等にも用いることができる。 本発明のペンタエリスリトールのテトラエステルを用いた冷凍機油としては、例えば、本発明のペンタエリスリトールのテトラエステルと、潤滑油用添加剤とを含有する冷凍機油等が挙げられる。本発明のペンタエリスリトールのテトラエステルを用いた冷凍機油において、該テトラエステルは潤滑油基油として用いられる。 潤滑油用添加剤としては、例えば、酸化防止剤、摩耗低減剤(耐摩耗剤、焼付き防止剤、極圧剤等)、摩擦調整剤、酸捕捉剤、金属不活性化剤、消泡剤等の、通常潤滑油添加剤として用いられているもの等が挙げられる。これらの添加剤の含有量は、冷凍機油中、それぞれ、0.001〜5重量%であるのが好ましい。 本発明のペンタエリスリトールのテトラエステルと、その他の潤滑油基油とを併用して用いてもよい。その他の潤滑油基油としては、例えば、鉱物油、合成基油等が挙げられる。 鉱物油としては、例えば、パラフィン基系原油、中間基系原油、ナフテン基系原油等が挙げられる。また、これらを蒸留などにより精製した精製油も使用可能である。 合成基油としては、例えば、ポリ−α−オレフィン(ポリブテン、ポリプロピレン、炭素数8〜14のα−オレフィンオリゴマー等)、本発明のペンタエリスリトールのテトラエステル以外の脂肪族エステル(脂肪酸モノエステル、多価アルコールの脂肪酸エステル、脂肪族多塩基酸エステル等)、芳香族エステル(芳香族モノエステル、多価アルコールの芳香族エステル、芳香族多塩基酸エステル等)、ポリアルキレングリコール、ポリビニルエーテル、ポリフェニルエーテル、アルキルベンゼン、カーボネート、合成ナフテン等が挙げられる。 また、本発明のペンタエリスリトールのテトラエステルは、ベンゾトリアゾール等の金属不活性剤、シリコーン系消泡剤等の潤滑油用添加剤を溶解する能力に優れる。該潤滑油用添加剤は、例えば、潤滑油、潤滑油を用いる機器等の寿命を長くするために潤滑油に溶解して用いられる。該潤滑油用添加剤は、一般的にペンタエリスリトールエステルに対する溶解性が低い(特開平10−259394号公報)。また、ベンゾトリアゾールは、鉱油および/または合成油に対する溶解度が低い(特開昭59−189195号公報)。しかし、例えば、本発明のペンタエリスリトールのテトラエステルであるエステル1(後述の実施例1)およびエステル6(後述の実施例6)中におけるベンゾトリアゾールの溶解度(25℃)は0.005g/g以上であり、いずれのペンタエリスリトールのテトラエステルにおいてもベンゾトリアゾールの高い溶解度を示す。本発明のペンタエリスリトールのテトラエステルは、ベンゾトリアゾールを溶解させたときにおいて、優れた低温流動性、優れた耐摩耗性を有する。 また、本発明のペンタエリスリトールのテトラエステルを潤滑油として使用した後の機器を洗浄する際に、フッ素系洗浄剤、アルコール系洗浄剤等の洗浄剤により機器を容易に洗浄できる。 以下、実施例、参考例および試験例により、本発明をさらに具体的に説明するが、以下の実施例に限定されるものではない。 以下の実施例1〜11および参考例1〜2において製造したペンタエリスリトールのテトラエステルのそれぞれについて、核磁気共鳴スペクトルを測定し、ペンタエリスリトールのテトラエステルにおけるイソ酪酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸とのモル比を以下の式により算出した。核磁気共鳴スペクトルは、以下の測定機器、測定手法により測定した。測定機器;日本電子社製GSX−400(400MHz)測定手法;1H−NMR、標準物(テトラメチルシラン)、溶媒(CDCl3) イソ酪酸/3,5,5−トリメチルヘキサン酸=ピークXの積分値/ピークYの積分値 ここで、ピークXはイソ酪酸におけるメチン基上の水素原子のピークに相当し、ピークYは3,5,5−トリメチルヘキサン酸におけるメチン基上の水素原子のピークに相当する。[実施例1:イソ酪酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸とのモル比(イソ酪酸/3,5,5−トリメチルヘキサン酸比)が39/61であるペンタエリスリトールのテトラエステル(テトラエステル1)の製造] 吸着剤としては、協和化学工業社製キョーワード500を用いた。 活性炭としては、日本エンバイロケミカルズ社製白鷺Pを用いた。 ディーンスタークトラップの付いた反応器にペンタエリスリトール1634g(12.0モル、広栄パーストープ社製)、イソ酪酸1979g(22.5モル、東京化成社製)および3,5,5−トリメチルヘキサン酸5560g(35.1モル、協和発酵ケミカル社製)を仕込み、混合物を攪拌しながら室温で30分間窒素バブリングを行うことにより混合物を脱気した。 次いで、窒素バブリングを行いながら混合物を155〜230℃で12.5時間攪拌し、次いで、反応混合物にテトラブトキシチタン1.3gを添加し、次いで、反応混合物を230℃で12時間攪拌した。反応後、反応生成物を1.1kPaの減圧下、225℃で1時間攪拌することにより、反応生成物中の未反応のカルボン酸を留去した。反応生成物を、該反応生成物の酸価に対して2倍モルの水酸化ナトリウムを含むアルカリ水溶液2Lで、77℃で1時間洗浄した。次いで、反応生成物を、水2Lで68℃で1時間、3回洗浄した。次いで、窒素バブリングを行いながら反応生成物を1.1kPaの減圧下、68℃で1時間攪拌することにより反応生成物を乾燥した。 反応生成物に吸着剤141g(反応生成物の2重量%に相当する)および活性炭141g(反応生成物の2重量%に相当する)を添加し、窒素バブリングを行いながら反応生成物を1.3kPaの減圧下、110℃で2時間攪拌した後、濾過助剤を用いて濾過することにより、テトラエステル1を6402g得た。[実施例2:イソ酪酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸とのモル比(イソ酪酸/3,5,5−トリメチルヘキサン酸比)が36/64であるペンタエリスリトールのテトラエステル(テトラエステル2)の製造] ペンタエリスリトール、イソ酪酸および3,5,5−トリメチルヘキサン酸の使用量のモル比(ペンタエリスリトール/イソ酪酸/3,5,5−トリメチルヘキサン酸比)を1/1.73/3.07にする以外は、実施例1と同様に操作して、テトラエステル2を得た。[実施例3:イソ酪酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸とのモル比(イソ酪酸/3,5,5−トリメチルヘキサン酸比)が37/63であるペンタエリスリトールのテトラエステル(テトラエステル3)の製造] ペンタエリスリトール、イソ酪酸および3,5,5−トリメチルヘキサン酸の使用量のモル比(ペンタエリスリトール/イソ酪酸/3,5,5−トリメチルヘキサン酸比)を1/1.78/3.02にする以外は、実施例1と同様に操作して、テトラエステル3を得た。[実施例4:イソ酪酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸とのモル比(イソ酪酸/3,5,5−トリメチルヘキサン酸比)が58/42であるペンタエリスリトールのテトラエステル(テトラエステル4)の製造] ペンタエリスリトール、イソ酪酸および3,5,5−トリメチルヘキサン酸の使用量のモル比(ペンタエリスリトール/イソ酪酸/3,5,5−トリメチルヘキサン酸比)を1/2.78/2.02にする以外は、実施例1と同様に操作して、テトラエステル4を得た。[実施例5:イソ酪酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸とのモル比(イソ酪酸/3,5,5−トリメチルヘキサン酸比)が67/33であるペンタエリスリトールのテトラエステル(テトラエステル5)の製造] ペンタエリスリトール、イソ酪酸および3,5,5−トリメチルヘキサン酸の使用量のモル比(ペンタエリスリトール/イソ酪酸/3,5,5−トリメチルヘキサン酸比)を1/3.22/1.58にする以外は、実施例1と同様に操作して、テトラエステル5を得た。[実施例6:イソ酪酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸とのモル比(イソ酪酸/3,5,5−トリメチルヘキサン酸比)が76/24であるペンタエリスリトールのテトラエステル(テトラエステル6)の製造] ペンタエリスリトール、イソ酪酸および3,5,5−トリメチルヘキサン酸の使用量のモル比(ペンタエリスリトール/イソ酪酸/3,5,5−トリメチルヘキサン酸比)を1/3.65/1.15にする以外は、実施例1と同様に操作して、テトラエステル6を得た。[実施例7:イソ酪酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸とのモル比(イソ酪酸/3,5,5−トリメチルヘキサン酸比)が80/20であるペンタエリスリトールのテトラエステル(テトラエステル7)の製造] ペンタエリスリトール、イソ酪酸および3,5,5−トリメチルヘキサン酸の使用量のモル比(ペンタエリスリトール/イソ酪酸/3,5,5−トリメチルヘキサン酸比)を1/3.84/0.96にする以外は、実施例1と同様に操作して、テトラエステル7を得た。[実施例8:イソ酪酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸とのモル比(イソ酪酸/3,5,5−トリメチルヘキサン酸比)が50/50であるペンタエリスリトールのテトラエステル(テトラエステル8)の製造] ペンタエリスリトール、イソ酪酸および3,5,5−トリメチルヘキサン酸の使用量のモル比(ペンタエリスリトール/イソ酪酸/3,5,5−トリメチルヘキサン酸比)を1/2.40/2.40にする以外は、実施例1と同様に操作して、テトラエステル8を得た。[実施例9:イソ酪酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸とのモル比(イソ酪酸/3,5,5−トリメチルヘキサン酸比)が62/38であるペンタエリスリトールのテトラエステル(テトラエステル9)の製造] ペンタエリスリトール、イソ酪酸および3,5,5−トリメチルヘキサン酸の使用量のモル比(ペンタエリスリトール/イソ酪酸/3,5,5−トリメチルヘキサン酸比)を1/2.98/1.82にする以外は、実施例1と同様に操作して、テトラエステル9を得た。[実施例10:イソ酪酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸とのモル比(イソ酪酸/3,5,5−トリメチルヘキサン酸比)が64/36であるペンタエリスリトールのテトラエステル(テトラエステル10)の製造] ペンタエリスリトール、イソ酪酸および3,5,5−トリメチルヘキサン酸の使用量のモル比(ペンタエリスリトール/イソ酪酸/3,5,5−トリメチルヘキサン酸比)を1/3.07/1.73にする以外は、実施例1と同様に操作して、テトラエステル10を得た。[実施例11:イソ酪酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸とのモル比(イソ酪酸/3,5,5−トリメチルヘキサン酸比)が37/63であるペンタエリスリトールのテトラエステル(テトラエステル11)の製造] ペンタエリスリトール、イソ酪酸および3,5,5−トリメチルヘキサン酸の使用量のモル比(ペンタエリスリトール/イソ酪酸/3,5,5−トリメチルヘキサン酸比)を1/1.80/3.00にし、溶媒としてイソオクタン(キョーワゾールC−800;協和発酵ケミカル社製)を用いる以外は、実施例1と同様に操作して、テトラエステル11を得た。[参考例1:イソ酪酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸とのモル比(イソ酪酸/3,5,5−トリメチルヘキサン酸比)が24/76であるペンタエリスリトールのテトラエステル(テトラエステルA)の製造] イソ酪酸の代わりに無水イソ酪酸を用い、ペンタエリスリトール、無水イソ酪酸および3,5,5−トリメチルヘキサン酸の使用量のモル比(ペンタエリスリトール/無水イソ酪酸/3,5,5−トリメチルヘキサン酸比)を1/0.5/3にする以外は、実施例1と同様に操作して、テトラエステルAを得た。[参考例2:イソ酪酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸とのモル比(イソ酪酸/3,5,5−トリメチルヘキサン酸比)が84/16であるペンタエリスリトールのテトラエステル(テトラエステルB)の製造] ペンタエリスリトール、イソ酪酸および3,5,5−トリメチルヘキサン酸の使用量のモル比(ペンタエリスリトール/イソ酪酸/3,5,5−トリメチルヘキサン酸比)を1/4.03/0.77にする以外は、実施例1と同様に操作して、テトラエステルBを得た。[試験例1:流動点の測定] 自動流動点測定器RPP−01CML(離合社製)を用い、JIS K2269−1987の方法に準じてテトラエステル1〜10、およびA、Bの流動点を測定した。結果を表1に示す。[試験例2:動粘度の測定] キャノン−フェンスケ粘度計を用い、JIS K2283:2000の方法に準じてテトラエステル1〜11、およびA、Bの40℃における動粘度を測定した。結果を表1および以下に示す。[試験例3:二層分離温度の測定] JIS K2211:2009の方法に準じてテトラエステル1〜10、およびA、Bの二層分離温度を測定した。テトラエステル1〜11、およびA、Bのそれぞれ0.4gとジフルオロメタン冷媒3.6gを耐圧ガラス管に封入し、混合物を30℃から毎分0.5℃の速度で冷却し、混合物が二層分離または白濁する温度を二層分離温度とした。結果を表1および以下に示す。[試験例4:5℃におけるベンゾトリアゾールの溶解度の測定] テトラエステル1〜10、およびA、Bのそれぞれ4.85gに、ベンゾトリアゾール0.15gを混合し、60℃で加熱して、ベンゾトリアゾールの3重量%テトラエステル溶液のそれぞれを得た。該テトラエステル溶液のそれぞれを5℃で40時間静置した後、目視により析出物の確認を行った。析出物の見られなかった該テトラエステル溶液は、5℃におけるベンゾトリアゾールの溶解度[テトラエステル1gに対するベンゾトリアゾールの溶解量(g)]を0.030g/g以上とした。析出物の見られた該テトラエステル溶液は、析出物を濾過(濾紙;No.5A、桐山製作所製)により除去した後に、得られた濾液を高速液体クロマトグラフィー(AGILENT社製1200SERIES、カラム:YMC Pack Ph A−414 Φ6.0×300mm、移動相:テトラヒドロフラン/0.1%リン酸水溶液=7/3、カラム温度:40℃、流速:0.7mL/分、検出:UV(220nm)、サンプル濃度:50g/L、インジェクト量:5μL)で測定し、絶対検量線法により、5℃におけるベンゾトリアゾールの溶解度[テトラエステル1gに対するベンゾトリアゾールの溶解(g)]を求めた。結果を表2に示す。[試験例5:テトラエステル溶液の摩耗痕径の測定] テトラエステル1〜10、およびA、Bのそれぞれ19.80gに、ベンゾトリアゾール0.20gを混合し、60℃で加熱して、ベンゾトリアゾールの1重量%テトラエステル溶液のそれぞれを得た。得られた該1重量%テトラエステル溶液のそれぞれを、シェル式四球摩擦試験機(神鋼造機社製)を用い、荷重200N、回転数1200rpm、時間30分、温度75℃、試験材[試験球(SUJ−2)]の条件で試験を行い、試験後の摩耗痕径を測定した。摩耗痕径は3つの固定球の垂直方向、水平方向全ての平均値とした。結果を表2に示す。 表2において、摩耗痕径の値が小さいもの程、テトラエステル溶液の耐摩耗特性が優れていることを表す。[試験例6:テトラエステル溶液の流動点の測定] テトラエステル1〜10、およびA、Bのそれぞれ43.65gに、ベンゾトリアゾール1.35gを混合し、60℃で加熱して、ベンゾトリアゾールの3重量%テトラエステル溶液のそれぞれを得た。自動流動点測定器RPP−01CML(離合社製)を用い、JIS K2269−1987の方法に準じて、該3重量%テトラエステル溶液のそれぞれの流動点を測定した。結果を表2に示す。 表2において、BZTはベンゾトリアゾールを示す。 表1より、テトラエステル1〜10は、40℃における動粘度が30.6〜69.5mm2/秒であって、流動点が−40.0〜−45.0℃と優れた低温流動性を有し、二層分離温度が−20℃以下とジフルオロメタン冷媒に対する優れた相溶性を有することがわかる。また、テトラエステル1〜5、8〜10は、流動点が−42.5〜−45.0℃とより優れた低温流動性を有していることがわかる。テトラエステル11は、動粘度が68.3mm2/秒、二層分離温度が−20℃で、ほぼ実施例3と同等である。 表2より、テトラエステル1〜10は、5℃におけるベンゾトリアゾールの溶解度が0.020g/g以上とベンゾトリアゾールを溶解する能力に優れていることがわかる。また、テトラエステル1〜10は、ベンゾトリアゾールの3重量%テトラエステル溶液の流動点が−40.0℃以下であり、ベンゾトリアゾールの1重量%テトラエステル溶液の摩耗痕径が0.60mm以下であることから、ベンゾトリアゾールを溶解させたときにおいて、優れた低温流動性と優れた耐摩耗性を有することがわかる。 本発明により、ジフルオロメタン冷媒に対する優れた相溶性等を有する冷凍機油等に用いられるペンタエリスリトールのテトラエステルを提供できる。 ペンタエリスリトールとイソ酪酸および3,5,5−トリメチルヘキサン酸からなるカルボン酸との混合エステルであり、前記カルボン酸における3,5,5−トリメチルヘキサン酸に対するイソ酪酸のモル比(イソ酪酸/3,5,5−トリメチルヘキサン酸比)が36/64〜80/20の範囲にあるペンタエリスリトールのテトラエステル。 前記カルボン酸における3,5,5−トリメチルヘキサン酸に対するイソ酪酸のモル比(イソ酪酸/3,5,5−トリメチルヘキサン酸比)が36/64〜67/33の範囲にある請求項1に記載のペンタエリスリトールのテトラエステル。