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タイトル:特許公報(B2)_口腔内アセトアルデヒド低減剤
出願番号:2012520378
年次:2015
IPC分類:A61K 38/51,A61K 38/44,A61P 1/02,A61P 35/00


特許情報キャッシュ

山城 寛 小山 貴史 JP 5774000 特許公報(B2) 20150710 2012520378 20110607 口腔内アセトアルデヒド低減剤 天野エンザイム株式会社 000216162 萩野 幹治 100114362 山城 寛 小山 貴史 JP 2010140026 20100619 20150902 A61K 38/51 20060101AFI20150813BHJP A61K 38/44 20060101ALI20150813BHJP A61P 1/02 20060101ALI20150813BHJP A61P 35/00 20060101ALI20150813BHJP JPA61K37/56A61K37/50A61P1/02A61P35/00 A61K 38/00 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII) CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) 米国特許第05855881(US,A) 特開平11−276116(JP,A) 特表2008−534001(JP,A) 特表2008−515859(JP,A) 特開2010−110248(JP,A) Pigeau GM, et al,Upregulation of ALD3 and GPD1 in Saccharomyces cerevisiae during Icewine fermentation.,J Appl Microbiol,2005年,Vol.99, No.1,p.112-25.,Abstract Liu JQ, et al,Gene cloning, biochemical characterization and physiological role of a thermostable low-specificity,Eur J Biochem,1998年,Vol.255, No.1,p.220-6 Medical Hypotheses,2003年,Vol.60, No.6,p.856-8 Int J Cancer,2002年,Vol.97,p.361-4 5 JP2011062991 20110607 WO2011158689 20111222 11 20140501 伊藤 基章 本発明は口腔内アセトアルデヒド低減剤に関する。詳しくは、口腔内のアセトアルデヒドをアセトアルデヒド分解酵素により低減する剤及びその用途に関する。本出願は、2010年6月19日に出願された日本国特許出願第2010−140026号に基づく優先権を主張するものであり、当該特許出願の全内容は参照により援用される。 唾液中のアセトアルデヒドは口臭の原因になることのみならず、近年では上部消化器癌などの疾病リスクを高めることが報告されている。唾液中のアセトアルデヒドの由来は様々であるが、代表的なものとしては飲酒時のアルコール代謝時によるもの、喫煙によるもの、或いは口中の歯周病菌由来のものが近年とくに問題視されている。 このうち、飲酒時においては、アルコール分解過程で代謝産物であるアセトアルデヒドが唾液中に蓄積され、食道及び胃癌のリスクファクターとなる。特にフラッシャー(アルデヒド脱水素酵素遺伝子がAG型及びGG型の者)においては、飲酒により唾液中のアセトアルデヒド濃度が100μM近くまで上昇することが報告されている。 喫煙により唾液中のアセトアルデヒド濃度が増加することも知られている。これは煙草の紫煙中に含まれるアセトアルデヒドがその一因と考えられる(たばこ煙のろ過(大谷 吉生著)、喫煙科学研究の歩み:1996年から2005年、三須良實、上里一郎、大和田英美、中尾一和、井谷舜郎編、喫煙科学研究財団、2007年)。 東京大学の研究グループによると、フラッシャーが1日缶ビール1本以上の飲酒と喫煙をすると、食道がんになるリスクが、フラッシャーでなく飲酒も喫煙もしない人に比べ、最大190倍も高くなることが報告されている(Cui R, Kamatani Y, et. al. Functional variants in ADH1B and ALDH2 coupled with alcohol and smoking synergistically enhance esophageal cancer risk. Gastroenterology 137:1768-1775 (2009))。 口中細菌の中にはアセトアルデヒドを合成するものが存在しており、当該細菌由来のアセトアルデヒドが口臭や食道や胃などの上部消化器癌のリスクファクターとなることが、疫学的調査で明らかとなっている(平成21年度日本癌(がん)学会にて発表)。愛知県がんセンター研究所(名古屋市)が行った約3,800人を対象とした疫学調査の結果によれば、1日2回以上歯を磨く人が口の中や食道のがんになる危険性は、1日1回歯を磨く人より3割低い。これは、歯磨きにより口中のアセトアルデヒド産生細菌或いは産生されたアセトアルデヒドが洗い流されるためと考えられている。 ところで、唾液や食品中のアセトアルデヒドを除去する手段として、L-システイン(非特許文献1)や、微生物由来アルデヒドオキシダーゼを用いたもの(特許文献1)がある。前者はL-システインがアセトアルデヒドと結合する性質を利用したものである。しかし、この反応は可逆反応でありアセトアルデヒドが再び遊離する可能性がある。また、L-システイン自体に特有の匂いがあるため、オーラルケア製品に応用することは難しい。一方、微生物由来アルデヒドオキシダーゼには補酵素を要求しないという利点があるものの、その反応に伴い有害な過酸化水素を発生するという問題がある。また、上記報告の微生物由来アルデヒドオキシダーゼは酸性条件で活性を示し(pH3.5付近)、生理的条件下での反応性は不明である。さらには、当該酵素の反応性は比較的高濃度(mMオーダー)の基質に対してのみ確認されているに過ぎない。唾液中に含まれるアセトアルデヒド濃度は通常μMオーダーであり、酵素反応はKm以下の濃度の基質に対しては反応性が低くなる為、低濃度基質に対して十分な活性を持つ酵素の開発が望まれる。尚、Gluconobacter属微生物由来のスーパーオキシドディスムターゼがアセトアルデヒド分解活性を示すことが報告されている(特許文献2)。特開2010−57482号公報特開2010−110248号公報Salaspuro V, Hietala J, Kaihovaara P, et. al., Int J Cancer. 2002 Jan 20; 97(3): 361-4. 以上の通り、口腔内(口中)アセトアルデヒドが健康障害リスクを引き起こすことが判明しており、当該アセトアルデヒドを分解除去できるオーラルケア製品の開発が求められている。そこで本発明は、口腔内アセトアルデヒドの低減に効果的な新規酵素剤を提供することを課題とする。 本発明者らは口腔内のアセトアルデヒドの低減に効果的な酵素を見出すべく、人工唾液を用いて鋭意検討した。その結果、アルデヒドデヒドロゲナーゼ(Aldehyde Dehydrogenase)及びスレオニンアルドラーゼ(Threonine Aldolase)に低基質濃度下での良好な活性を認め、以下に示す本発明を完成するに至った。 [1]アルデヒドデヒドロゲナーゼ又はスレオニンアルドラーゼを含む口腔内アセトアルデヒド低減剤。 [2]アルデヒドデヒドロゲナーゼがサッカロマイセス属微生物由来であることを特徴とする、[1]に記載の口腔内アセトアルデヒド低減剤。 [3]サッカロマイセス属微生物がサッカロマイセス・セレビシエである、[2]に記載の口腔内アセトアルデヒド低減剤。 [4]スレオニンアルドラーゼが大腸菌由来であることを特徴とする、[1]に記載の口腔内アセトアルデヒド低減剤。 [5]基質濃度1μM〜1mMのアセトアルデヒドに対して分解活性を示すことを特徴とする、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の口腔内アセトアルデヒド低減剤。 [6]基質濃度1μM〜100μMのアセトアルデヒドに対して分解活性を示すことを特徴とする、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の口腔内アセトアルデヒド低減剤。 [7][1]〜[6]のいずれか一項に記載の口腔内アセトアルデヒド低減剤を含む口腔用組成物。 [8][7]に記載の口腔用組成物を唾液に作用させることによって、唾液中のアセトアルデヒドを低減する方法。 [9]口腔内の臭気低減に有効である、[8]に記載の方法。 [10]アセトアルデヒドが原因又は一因となる癌の予防に有効である、[8]に記載の方法。人工唾液に酵素を各々添加した際のアセトアルデヒド濃度を示す図である。Nash法を用いて各酵素の活性を評価した。ADはアルデヒドデヒドロゲナーゼを、TAはスレオニンアルドラーゼを、BSAはウシ血清アルブミンをそれぞれ表す。人工唾液に酵素を各々添加した際のアセトアルデヒド濃度の経時変化を示す図である。GC-MSを用いて各酵素の活性を評価した。ADはアルデヒドデヒドロゲナーゼを、TAはスレオニンアルドラーゼを、BSAはウシ血清アルブミンをそれぞれ表す。 本明細書において「口腔内アセトアルデヒド低減剤」とは、口腔内に適用されることが予定され、その使用によって口腔内(より具体的には唾液中)のアセトアルデヒド濃度を低減させることが可能な剤をいう。尚、本明細書では用語「口腔内」と用語「口中」を交換可能な用語として使用する。1.アセトアルデヒド低減剤 本発明の第1の局面は口腔内アセトアルデヒド低減剤(以下、説明の便宜上、略称して「低減剤」とする)に関する。本発明の低減剤はアルデヒドデヒドロゲナーゼ又はスレオニンアルドラーゼを有効成分として含む。これら二つの酵素を併用してもよい。アルデヒドデヒドロゲナーゼとして好ましくはサッカロマイセス属微生物(例えばサッカロマイセス・セレビシエ)由来のものが用いられる。サッカロマイセス・セレビシエ由来のアルデヒドデヒドロゲナーゼはシグマ アルドリッチ社、ロッシュ・ダイアグノスティクス社、メルク社などから入手できる。他方、スレオニンアルドラーゼとして、好ましくは大腸菌由来のもの(例えば、Eur. J. Biochem, 255, 220-226(1998)を参照)が用いられる。 本発明の低減剤が作用可能なアセトアルデヒド濃度(基質濃度)は特に限定されないが、好ましくは1μM〜1mM、より好ましくは1μM〜100μMである。尚、本発明の低減剤の活性の強さ(程度)は特に限定されない。 本発明の低減剤は有効成分(アルデヒドデヒドロゲナーゼ又はスレオニンアルドラーゼ)の他、賦形剤、緩衝剤、懸濁剤、安定剤、pH調整剤、保存剤、防腐剤、香料、増粘剤、油脂、光沢剤、結着剤、結着補強剤、乳化安定剤、生理食塩水などを含有していてもよい。賦形剤としてはデンプン、デキストリン、マルトース、トレハロース、乳糖、D-グルコース、ソルビトール、D-マンニトール、白糖、グリセロール等を用いることができる。緩衝剤としてはリン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩等を用いることができる。安定剤としてはプロピレングリコール、アスコルビン酸等を用いることができる。pH調製剤としてはイタコン酸、コハク酸、酒石酸、フマル酸、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸、グルコン酸、ピロリン酸、酢酸、乳酸、α-ケトグルタル酸、フィチン酸等の有機酸又は有機酸塩;炭酸等の無機酸又は無機酸塩;アスパラギン酸、グルタミン酸等の酸性アミノ酸;アルギニン、リジン、ヒスチジン等の塩基性アミノ酸等を用いることができる。保存剤としてはフェノール、塩化ベンザルコニウム、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチルパラベン等を用いることができる。防腐剤としてはエタノール、塩化ベンザルコニウム、パラオキシ安息香酸、クロロブタノール等を用いることができる。香料としてはジャコウ、シベット、カストリウム、アンバーグリス等の動物性香料;アニス精油、アンゲリカ精油、イランイラン精油、イリス精油、ウイキョウ精油、オレンジ精油、カナンガ精油、カラウェー精油、カルダモン精油、グアヤクウッド精油、クミン精油、黒文字精油、ケイ皮精油、シナモン精油、ゲラニウム精油、コパイババルサム精油、コリアンデル精油、シソ精油、シダーウッド精油、シトロネラ精油、ジャスミン精油、ジンジャーグラス精油、杉精油、スペアミント精油、西洋ハッカ精油、大茴香精油、チュベローズ精油、丁字精油、橙花精油、冬緑精油、トルーバルサム精油、バチュリー精油、バラ精油、パルマローザ精油、桧精油、ヒバ精油、白檀精油、プチグレン精油、ベイ精油、ベチバ精油、ベルガモット精油、ペルーバルサム精油、ボアドローズ精油、芳樟精油、マンダリン精油、ユーカリ精油、ライム精油、ラベンダー精油、リナロエ精油、レモングラス精油、レモン精油、ローズマリー精油、和種ハッカ精油等の植物性香料;その他合成香料等を用いることができる。増粘剤としては、天然高分子またはデンプン系もしくはセルロース系天然高分子誘導体等を用いることができる。天然高分子としては、例えば、フコイダン、カラギーナン等の海藻抽出物、グァーガム等の種子粘出物、アラビアガム等の樹脂様粘着物、またはキサンタンガム等の微生物産生粘着物質等を挙げることができる。デンプン系もしくはセルロース系天然高分子誘導体としては、例えば、リン酸デンプン等のデンプン系またはメチルセルロースなどのセルロース系の天然高分子誘導体が挙げられる。油脂としては、例えば、アボガド油、アマニ油、アーモンド油、ウイキョウ油、エゴマ油、オリーブ油、オレンジ油、オレンジラファー油、カカオ脂、カミツレ油、カロット油、キューカンバー油、ココナッツ油、ゴマ油、コメ油、サフラワー油、シア脂、液状シア脂、大豆油、ツバキ油、トウモロコシ油、ナタネ油、パーシック油、ヒマシ油、ヒマワリ油、葡萄種子油、綿実油、落花生油、タートル油、ミンク油、卵黄油、パーム油、パーム核油、モクロウ、ヤシ油、牛脂、豚脂等を用いることができる。また、これらの油脂に水素添加、分別、エステル交換等の処理をして改質された油脂も利用できる。光沢剤として、ミツロウ、カルナバロウ、鯨ロウ、ラノリン、液状ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、カンデリラロウ、モンタンロウ、セラックロウ、ライスワックス、スクワレン、スクワラン、プリスタン等のロウ類(植物性、動物性を問わない。);流動パラフィン、ワセリン、パラフィン、オゾケライド、セレシン、マイクロクリスタンワックス等の鉱物油を用いることができる。結着剤としては大豆蛋白質、卵蛋白質、乳蛋白質、血液蛋白質、カゼイン、デンプン、トランスグルタミナーゼ等を用いることができる。結着補強剤としては重合リン酸塩等を用いることができる。乳化安定剤としてはカゼインナトリウム等を用いることができる。 一態様において本発明の低減剤は、本発明に係る酵素(アルデヒドデヒドロゲナーゼ又はスレオニンアルドラーゼ)を産生する微生物の菌体破砕物で構成される。即ち、この態様の低減剤は所定の微生物の菌体破砕物を含むことになる。菌体破砕液(通常は微生物の培養、集菌及び菌体破砕からなる一連の工程によって得られる)をそのまま菌体破砕物として用いることができる。一方、菌体破砕液を更なる処理(精製処理、凍結処理、乾燥処理、他の成分の添加など)に供した後に菌体破砕物として用いることもできる。2.低減剤の用途 本発明の第2の局面は本発明の低減剤の用途に関する。本発明の低減剤は低基質濃度でも作用することが可能である。従って、基質(即ちアセトアルデヒド)が低濃度で存在する口腔内での使用に適する。そこで本発明は、本発明の低減剤を有効成分として含有し、オーラルケアに利用される口腔用組成物を提供する。本明細書において「オーラルケア」とは口腔内の環境を改善することをいう。本発明の口腔用組成物を唾液に作用させると唾液中のアセトアルデヒドを低減させることができる。この「アセトアルデヒドの低減」という効果によって口腔内の環境が改善し、例えば、臭気の低減やアセトアルデヒドが原因又は一因となる上部消化器癌(咽頭癌・喉頭癌・食道癌・胃癌・十二指腸癌等)の予防が図られる。 唾液に作用させるという使用態様を実現可能な限り、口腔用組成物の形態は特に限定されない。口腔用組成物の形態を例示すると、ガム、あめ、栄養補助食品(サプリメント、栄養ドリンク等)、口腔洗浄剤(例えば粉歯磨、湿潤歯磨、練歯磨、液状歯磨)、である。本発明の低減剤を含む一般食品(穀類、野菜、食肉、各種加工食品、菓子類、牛乳、清涼飲料水、アルコール飲料等)や食品添加物の形態に本発明の口腔用組成物を構成してもよい。また、発癌予防用の医薬として本発明の口腔用組成物を提供してもよい。この場合の剤型も特に限定されない。剤型の例は錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、シロップ剤である。 本発明の口腔用組成物には、期待される効果を得るために必要な量の有効成分が含有される。本発明の口腔用組成物中の有効成分量は口腔用組成物の形態・形状、適用対象、使用頻度などを考慮して適宜設定することができる。例えば、所望の量の有効成分が投与(適用)されるように有効成分量を例えば約0.1重量%〜約95重量%の範囲内とする。 通常は、有効成分である低減剤の他、形態に応じて各種成分が含まれる。例えば、代表的な形態である練歯磨の場合は、粘稠剤(保湿剤)、粘結剤、界面活性剤、甘味剤、香料、防腐剤、研磨剤、pH調整剤、キレート剤、フッ化物、酵素等を含んでいてもよく、これらを必要に応じ適宜選択することができる。粘稠剤としては、ソルビット、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、キシリツト、マルチット、ラクチット等が挙げられる。粘結剤としては、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の合成粘結剤、キサンタンガム、カラギーナン、アルギン酸等の天然系粘結剤、ゲル化性シリカ、ゲル化アルミニウムシリカ、ビーガム、ラポナイト等の無機粘結剤が挙げられる。界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、非イオン性界面活性剤および両性イオン界面活性剤のいずれも用いることができる。アニオン界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、N-ラウロイルザルコシン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、α-スルホ脂肪酸アルキルエステル・ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、N-ミリストリルザルコシン酸ナトリウム、水素添加ココナッツ脂肪酸モノグリセリドモノ硫酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、α-オレフィンスルホン酸ナトリウム、N-ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、N-パルミトイルグルタミン酸ナトリウム等のN-アシルグルタメート、N-メチル-N-アシルタウリンナトリウム等のN-アシルタウレート等が挙げられる。ノニオン界面活性剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アルキルグリコシド類、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アルキルジメチルアミンオキシド、マルチトール脂肪酸エステル、ラクトール脂肪酸エステル等の糖アルコール脂肪酸エステル、アルキロールアマイト、ラウリル酸モノ又はジエタノールアミド等の脂肪酸エタノールアミド、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン脂肪酸エステルあるいはプルロニック等があげられる。また、両性イオン界面活性剤としては、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の酢酸べタイン型、N-脂肪酸アシル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルエチレンジアミン塩等のイミダゾリン型、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン、N-ラウリルジアミノエチルグリシン、N-ミリスチルジアミノエチルグリシン等のN-アルキルジアミノエチルグリシンあるいは、N-アルキル-1-ヒドロキシエチルイミダゾリンベタインナトリウム等が挙げられる。甘味剤としては、サッカリンナトリウム、ステビオサイド、ネオヘスペリジヒドロカルコン、グリチルリチン、ペリラルチン、タウマチン、アスパラチルフェニルアラニンメチルエステル、p-メトキシシンアミックアルデヒド、ショ糖、果糖、サクラミン酸ナトリウム、ステビアエキス、ソーマチン等が挙げられる。香料としては、スペアミント油、ペパーミント油、ウインターグリーン油、サッサフラス油、丁字油、ユーカリ油、セージ油、マヨナラ油、タイム油、レモン油、オレンジ油、ローズマリー油、桂皮油、ピメント油、桂棄油、シソ油、冬緑油、1-メントール、カルボン、アネトール、サリチル酸メチル、オイゲノール、リモネン、n-デシルアルコール、シトロネロール、α-テレピネオール、シトロネリルアセテート、シネオール、リナロール、エチルリナロール、ワニリンあるいはチモール等が挙げられる。研磨剤としては、結晶質シリカ、非晶質シリカ、その他のシリカ系研磨剤、アルミノシリケート、アルミナ、水酸化アルミニウム、不溶性メタリン酸ナトリウム、不溶性メタリン酸カリウム、酸化チタン、第2リン酸カルシウム・2水和物、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム等の無機素材の他、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等のポリオレフイン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の含ハロゲン系樹脂、メタクリル樹脂等のアクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル又はその鹸化物のフォルマール化樹脂、ナイロン等のポリアミド樹脂、スチレン樹脂、EVA樹脂、シリコーン樹脂、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、シリコンゴム、セルロース等の樹脂を用いることができる。pH調整剤としては、イタコン酸、コハク酸、酒石酸、フマル酸、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸、グルコン酸、ピロリン酸、酢酸、乳酸、α−ケトグルタル酸、フィチン酸等の有機酸又は有機酸塩;炭酸等の無機酸又は無機酸塩;アスパラギン酸、グルタミン酸等の酸性アミノ酸;アルギニン、リジン、ヒスチジン等の塩基性アミノ酸等を用いることができる。キレート剤としてはピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、EDTA等を用いることができる。殺菌剤としては、トリクロサン、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等を用いることができる。酵素として、デキストロナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、ムタナーゼ、リゾチーム、溶菌酵素、リテックエンザイム等と併用して用いることができる。フッ化物としては、フッ化ナトリウム、フッ化第1スズ等が挙げられる。その他、クロロヘキシジン塩類、ヒドロコレステロール、グリチルレチン塩類、グリチルレチン酸、クロロフィカ、カロペプタイド、ビタミン類、アズレン、塩化リゾチーム、歯石防止剤、歯垢防止剤、硝酸カリウム等の有効成分あるいは薬効成分を含有してもよい。尚、配合量は適宜使用することができる。 本発明の口腔用組成物が適用される対象は特に限定されない。ここでの対象として、ヒトの他、ヒト以外の哺乳動物(ペット動物、家畜、実験動物を含む。具体的には例えばサル、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、サル、ウシ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、馬、ニワトリ、羊、鯨、イルカ、イヌ、ネコ等)を挙げることができる。 本発明の口腔用組成物の一態様は、有効成分の一つとして、本発明の低減剤に使用される酵素以外のアセトアルデヒド分解酵素も含有する。即ち、この態様ではアルデヒドデヒドロゲナーゼ又はスレオニンアルドラーゼに加えて、他のアセトアルデヒド分解酵素を使用し、相加的効果又は相乗的効果を発揮させる。ここでの「他のアセトアルデヒド分解酵素」としてベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼ(benzoylformate decarboxylase)、ラムヌロース-1-リン酸アルドラーゼ(rhamnulose-1-phosphate aldolase)、デオキシリボースリン酸アルドラーゼ(deoxyribose-phosphate aldolase)、ブタナールデヒドロゲナーゼ(butanal dehydrogenase)、カルボン酸レダクターゼ(carboxylate reductase)、マンデロニトリルリアーゼ(mandelonitrile lyase)、1,5-無水-D-フルクトースレダクターゼ(1,5-anhydro-D-fructose reductase)、3−メチルブタナールレダクターゼ(3-methylbutanal reductase)、インドール-3-アセトアルデヒドレダクターゼ(indole-3-acetaldehyde reductase)、グルコン酸2-デヒドロゲナーゼ(gluconate 2-dehydrogenase)、グルセロールデヒドロゲナーゼ(glycerol dehydrogenase)、グリオキシル酸レダクターゼ(glyoxylate reductase)、カルボニルレダクターゼ(carbonyl reductase)、アリルアルコールレダクターゼ(aryl-alcohol reductase)、メチルグリオキサルレダクターゼ(methylglyoxal reductase)、アルコールデヒドロゲナーゼ(alcohol dehydrogenase)、アルデヒドレダクターゼ(aldehyde reductase)、アセトインデヒドロゲナーゼ(acetoin dehydrogenase)、グリセルアルデヒド-3-リン酸レダクターゼ(glyceraldehyde-3-phosphate reductase)、マロン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ(malonate-semialdehyde dehydrogenase)、アミノブチルアルデヒドデヒドロゲナーゼ(aminobutyraldehyde dehydrogenase)、ラクトアルデヒドデヒドロゲナーゼ(lactaldehyde dehydrogenase)、L-アミノアジピン酸−セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ(L-aminoadipate-semialdehyde dehydrogenase)、4-トリメチルアンモニオブチルアルデヒドデヒドロゲナーゼ(4-trimethylammoniobutyraldehyde dehydrogenase)、アミノムコネート−セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ(aminomuconate-semialdehyde dehydrogenase)、レチナールデヒドロゲナーゼ(retinal dehydrogenase)、グルタミン酸-5-セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ(glutaminate-5-semialdehyde dehydrogenase)、ベタイン−アルデヒドデヒドロゲナーゼ(betain-aldehyde dehydrogenase)、1-ピロリン-5-カルボン酸デヒドロゲナーゼ(1-pyrroline-5-carboxylate dehydrogenase)、フルオロアセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ(fluoloacetaldehyde dehydrogenase)、コハク酸−セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ(succinate-semialdehyde dehydrogenase)、ホルムアルデヒドデヒドロゲナーゼ(formaldehyde dehydrogenase)、グルコアルデヒドデヒドロゲナーゼ(glucoaldehyde dehydrogenase)、フェニルアセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ(phenylacetaldehyde dehydrogenase)、メチルマロン酸−セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ(methylmalonate-semialdehyde dehydrogenase)、キサンチンオキシダーゼ(xanthine oxidase)、ピルビン酸オキシダーゼ(pyruvate oxidase)、インドール-3-アセトアルデヒドオキシダーゼ(indole-3-acetaldehyde oxidase)、ホルムアルデヒドジスムターゼ(formaldehyde dismutase)、2-ヒドロキシ-3-オキソアジピン酸シンターゼ(2-hydroxy-3-oxoadipate syntase)、ホルムアルデヒドトランスケトラーゼ(formaldehyde transketorase)、オキシアミノトランスフェラーゼ(oxiaminotransferase)、アルデヒドフェレドキシンオキシドレダクターゼ(aldehyde ferredoxin oxidoreductase)、乳酸アルドラーゼ(lactate aldolase)、ピルビン酸デカルボキシラーゼ(pyruvate decarboxylase)、フェニルピルビン酸デカルボキシラーゼ(phenylpyruvate decarboxylase)、ベンゾインアルドラーゼ(benzoin aldolase)、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ(pyruvate dehydrogenase)、キノプロテインホルムアルデヒドデヒドロゲナーゼ(quinoprotein formaldehyde dehydrogenase)、2,5-ジオキソ吉草酸デヒドロゲナーゼ(2,5-dioxovalerate dehydrogenase)等が挙げられる。 以下、アセトアルデヒド分解酵素を用いたアセトアルデヒドの低減に関する実験の結果を示す。(人工唾液) 人工唾液には、0.51% w/v NaHCO3、 0.137% w/v K2HPO4、0.088% w/v NaCl、 0.048% w/v KCl、0.044% w/v CaCl2・2H2O (特開2007−236233号公報参照)を用いた。実験では2倍濃度の人工唾液(2×saliva sol.)を作成して用いた。(Nash法によるアセトアルデヒドの検出) アセトアルデヒドを含む溶液(200μl)に、等量のNash試薬(15% w/v アンモニウムアセテート, 0.5% v/v 酢酸, 2% v/v アセチルアセトン)を添加し、55℃で30分反応後、388nmの吸光度を測定した。初発のアセトアルデヒド濃度は10mMで行った。(GC-MSによるアセトアルデヒドの検出) アセトアルデヒドは非常に反応性の高い物質であることから、安定な誘導体に変換して検出することにした。アセトアルデヒドを含む溶液(800μl)に、10 mg/mlペンタフルオロベンジルヒドロキシルアミン(以下、「PFBOA」)160μlと10%トリクロロ酢酸(TCA) 160μlを添加し、氷上で30分反応後、室温で1.5時間以上反応させた。そこに、内部標準として4-ブロモフルオロベンゼン(1mg/mlメタノール溶液)を10μl加え、サンプル1mlをGC-MS用バイアルに移した。カラムはHP-INNOWax (Agilent Technologies)を用いた。なお、GC-MSのオーブン温度を60℃、ループ温度を200℃に設定して測定した。1.アルデヒド低減活性測定1(Nash法) 以下の3つのサンプルを調製し、アセトアルデヒド低減効果を比較した。コントロールとしてウシ血清アルブミン(Bovine Serum Albumin;BSA)を用い、0.2mM Tris buffer (pH 8.0), 1×saliva sol., 10mM アセトアルデヒド, 50μg/μl BSAの混合液を調製した。また、アルデヒドデヒドロゲナーゼ(サッカロマイセス・セレビシエ由来、A6228、シグマ アルドリッチ社。以下、「AD」)のサンプルとして20 mM Tris buffer (pH 8.0), 1×saliva sol., 10mM アセトアルデヒド, 50μg/μl AD, 2.5 mM NAD+の混合液、スレオニンアルドラーゼ(大腸菌由来、Eur. J. Biochem, 255, 220-226(1998)。以下、「TA」)のサンプルとして20 mM ナトリウムリン酸 buffer (pH 7.0), 1×saliva sol., 10mM アセトアルデヒド, 50μg/μl TA, 100 mM グリシンの混合液を用いた。反応溶液量は200μlとし、37℃で30分間反応させた。結果を図1に示す。スレオニンアルドラーゼ、アルデヒドデヒドロゲナーゼ共にアセトアルデヒド低減活性を示した。尚、アセトアルデヒド濃度は、作成した検量線をもとに算出した。2.アルデヒド低減活性測定2(GC-MS) Nash法と同様、以下の通り3つのサンプルを調製し、アセトアルデヒド低減効果を比較した。 (1)BSAサンプル: 18.8 μg/ml BSA, 1×saliva sol., 100 μM アセトアルデヒド (2)ADサンプル: 20 mM Tris buffer (pH 8.0), 18.8 μg/ml AD, 1×saliva sol., 100 μM アセトアルデヒド, 1 mM NAD+ (3)TAサンプル: 2.5 mM ナトリウムリン酸 buffer (pH 7.0), 1×saliva sol., 100μM アセトアルデヒド, 18.8 μg/μl TA, 100 mM グリシン 反応溶液量は800μlとし、37℃で反応させた。図2に示す通り、スレオニンアルドラーゼ及びアルデヒドデヒドロゲナーゼに強いアセトアルデヒド低減効果を認めた。アセトアルデヒドアルデヒドは50μMという低濃度であっても発がん性を示すといわれているが(詳細は例えばUS2008/0166394A1を参照)、これら二つの酵素は人工唾液中のアセトアルデヒド濃度100μMを5分以内に発がん性濃度以下まで減少できた。尚、アセトアルデヒド濃度は、作成した検量線をもとに算出した。 以上の通り、サッカロマイセス・セレビシエ由来のアルデヒドデヒドロゲナーゼ及び大腸菌由来のスレオニンアルドラーゼが低濃度で存在する、唾液中のアセトアルデヒドに対して良好に作用することが判明した。特に前者は、低濃度のアセトアルデヒドに対する分解活性及び分解速度の点で極めて優れている(図2)。 本発明のアセトアルデヒド低減剤は、微量に存在する唾液中のアセトアセトアルデヒドを分解することができる。即ち、口腔内のアセトアルデヒドの低減に有効である。本発明のアセトアルデヒド低減剤はオーラルケア分野、医薬分野、食品分野等において適用可能である。 この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。 本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。 サッカロマイセス属微生物由来アルデヒドデヒドロゲナーゼ又は大腸菌由来スレオニンアルドラーゼを含む口腔内アセトアルデヒド低減剤。 サッカロマイセス属微生物がサッカロマイセス・セレビシエである、請求項1に記載の口腔内アセトアルデヒド低減剤。 基質濃度1μM〜1mMのアセトアルデヒドに対して分解活性を示すことを特徴とする、請求項1又は2に記載の口腔内アセトアルデヒド低減剤。 基質濃度1μM〜100μMのアセトアルデヒドに対して分解活性を示すことを特徴とする、請求項1又は2のいずれか一項に記載の口腔内アセトアルデヒド低減剤。 請求項1〜4のいずれか一項に記載の口腔内アセトアルデヒド低減剤を含む口腔用組成物。


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