タイトル: | 特許公報(B2)_脂質代謝改善剤 |
出願番号: | 2012519409 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | A61K 35/744,A61K 35/747,A61P 3/06,A61P 9/10,A61P 1/16,A61P 3/04,A61P 3/10,A23L 1/30,A23K 1/16 |
仲村 太志 石田 優 藤原 茂 JP 5801802 特許公報(B2) 20150904 2012519409 20110608 脂質代謝改善剤 カルピス株式会社 000104353 平木 祐輔 100091096 藤田 節 100118773 仲村 太志 石田 優 藤原 茂 JP 2010131188 20100608 20151028 A61K 35/744 20150101AFI20151008BHJP A61K 35/747 20150101ALI20151008BHJP A61P 3/06 20060101ALI20151008BHJP A61P 9/10 20060101ALI20151008BHJP A61P 1/16 20060101ALI20151008BHJP A61P 3/04 20060101ALI20151008BHJP A61P 3/10 20060101ALI20151008BHJP A23L 1/30 20060101ALI20151008BHJP A23K 1/16 20060101ALI20151008BHJP JPA61K35/744A61K35/747A61P3/06A61P9/10 101A61P1/16A61P3/04A61P3/10A61P9/10A23L1/30 ZA23K1/16 304B A61K 35/74 A23L 1/00 A23K 1/00 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII) CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) 特開平04−264034(JP,A) 特開2007−077054(JP,A) 特開2007−284360(JP,A) 特開2008−156299(JP,A) 特開2007−269737(JP,A) 特開2003−306436(JP,A) 15 IPOD FERM BP-11255 IPOD FERM BP-11256 IPOD FERM BP-11379 JP2011063117 20110608 WO2011155518 20111215 22 20140606 伊藤 基章 本発明は、脂質代謝改善剤、具体的には乳酸菌の菌体破壊物を含む脂質代謝改善剤に関する。また本発明は、該脂質代謝改善剤を含む機能性食品の製造方法、乳酸菌の脂質代謝改善作用を増強する方法、対象における脂質代謝を改善する方法、並びに脂質代謝関連疾患又は障害を治療又は予防するための医薬組成物に関する。 乳酸菌又はビフィズス菌の菌体やその培養物(培養液、培養上清及びそれらの濃縮物など)が脂質代謝の改善、例えば血中コレステロールの低減、体脂肪又は内臓脂肪の低下などに有効であることが報告されている(例えば、特許文献1〜6)。乳酸菌摂取によるヒトでの脂質代謝改善作用についても多数検証され報告されているが、報告毎に結果が異なり、一定の見解はない。例えば、乳酸菌摂取によるヒトでの有効性を示す文献では、乳酸菌の摂取量が多量であったり、プラセボ対照、二重盲検、カロリーコントロールが不備で評価されたものが多い(例えば非特許文献1)。さらに、乳酸菌摂取ではヒトでの脂質代謝は改善されないという報告も多数ある(例えば非特許文献2〜4)。これらを勘案すると、乳酸菌の脂質代謝改善効果は非常に微弱である可能性が推察される。 乳酸菌は発酵微生物であることから、一般に生菌が有効と考えられており、生菌剤として利用されることが多い。一方、より効力の高い脂質代謝改善作用を示す剤を提供することを目的として、乳酸菌の有機溶媒抽出物を有効成分とした乳酸菌処理物が開発されているが(特許文献1)、その効果は限定的であり、満足できるものではない(後述の実施例5参照)。 一方、近年は、食習慣の変化や運動不足などのために、生活習慣病やメタボリックシンドロームが増加している。生活習慣病及びメタボリックシンドロームは、脂質代謝異常又は糖代謝異常と関連しており、結果的に動脈硬化、脂肪肝、高脂血症、肥満症、高血圧、糖尿病などの症状及び疾患に至る可能性が高い。またそのような脂質代謝異常又は糖代謝異常の状態では、コレステロール、中性脂肪、内臓脂肪などの脂質代謝マーカーが上昇することが知られている。このような生活習慣病及びメタボリックシンドロームを予防又は治療するために、脂質代謝を改善するために有効な手段が依然として求められている。特開2007-284360号公報特開2008-24680号公報特許第4336992号特開2003-306436号公報特許第3777296号特公平第6-96537号Indian Heart J. 42(5):361-364, 1990年J. Dairy Sci. 72(11):2885-2899, 1989年Eur. J. Clin. Nutr. 62(2):232-237, 2008年J. Am. Coll. Nutr. 27(4):441-447, 2008年 本発明の目的は、脂質代謝を改善するための有効な手段及び方法を提供することである。また本発明の目的は、脂質代謝異常に関連する疾患又は障害を治療又は予防するための手段及び方法を提供することである。 本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、偶然にも乳酸菌の破壊によって、脂質代謝改善作用が発現又は増強されることを見出した。この脂質代謝改善作用は、総コレステロール、LDL-コレステロール、中性脂肪、動脈硬化指数及び内臓脂肪を低減させ、HDL-コレステロール及びアディポネクチンを上昇させるものであり、無傷の乳酸菌菌体及び乳酸菌の有機溶媒抽出物と比較して優れたものであった。以上の知見から、本発明者は乳酸菌の菌体破壊物を脂質代謝改善剤において使用できることを想到し、本発明を完成するに至った。 従って、本発明は以下のとおりである。[1]乳酸菌の菌体破壊物を有効成分として含有する脂質代謝改善剤。[2]乳酸菌が、ラクトバチルス属、ビフィドバクテリウム属、エンテロコッカス属、ロイコノストック属、ストレプトコッカス属、ラクトコッカス属、ペディオコッカス属、及びワイセラ属からなる群より選択される属に属する少なくとも1種の細菌である、[1]に記載の脂質代謝改善剤。[3]ラクトバチルス属に属する細菌が、ラクトバチルス・アミロボラス、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・ゼアエ、ラクトバチルス・ラムノーサス、ラクトバチルス・ロイテリ、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・クリスパタス、ラクトバチルス・ガリナーラム、ラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・ファーメンタム、ラクトバチルス・プランタラム、ラクトバチルス・デルブルッキ サブスピーシーズ ブルガリカス、及びラクトバチルス・ジョンソニーからなる群より選択される少なくとも1種である、[2]に記載の脂質代謝改善剤。[4]ラクトバチルス属に属する細菌が、ラクトバチルス・アミロボラスCP1563株、ラクトバチルス・アミロボラスCP1562株、及びラクトバチルス・ガセリCP3238株からなる群から選択される少なくとも1種である、[2]又は[3]に記載の脂質代謝改善剤。[5]ビフィドバクテリウム属に属する細菌が、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・シュードロンガム、ビフィドバクテリウム・アニマリス、ビフィドバクテリウム・アドレッセンティス、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・ラクティス、ビフィドバクテリウム・カテニュラータム、ビフィドバクテリウム・シュードカテニュラータム、及びビフィドバクテリウム・マグナムからなる群より選択される少なくとも1種である、[2]に記載の脂質代謝改善剤。[6]エンテロコッカス属に属する細菌が、エンテロコッカス・フェカリス、エンテロコッカス・ヒラエ、及びエンテロコッカス・フェシウムからなる群より選択される少なくとも1種である、[2]に記載の脂質代謝改善剤。[7]ストレプトコッカス属に属する細菌が、ストレプトコッカス・サーモフィルスである、[2]に記載の脂質代謝改善剤。[8]ロイコノストック属に属する細菌が、ロイコノストック・メセンテロイデス、及びロイコノストック・ラクティスからなる群より選択される少なくとも1種である、[2]に記載の脂質代謝改善剤。[9]ラクトコッカス属に属する細菌が、ラクトコッカス・ラクティス、ラクトコッカス・プランタラム、及びラクトコッカス・ラフィノラクティスからなる群より選択される少なくとも1種である、[2]に記載の脂質代謝改善剤。[10]ペディオコッカス属に属する細菌が、ペディオコッカス・ペントサセウス、及びペディオコッカス・ダムノサスからなる群より選択される少なくとも1種である、[2]に記載の脂質代謝改善剤。[11]ワイセラ属に属する細菌が、ワイセラ・チバリア、ワイセラ・コンフューザ、ワイセラ・ハロトレランス、ワイセラ・ヘレニカ、ワイセラ・カンドレリ、ワイセラ・キムチイ、ワイセラ・コレエンシス、ワイセラ・ミノール、ワイセラ・パラメセンテロイデス、ワイセラ・ソリ、ワイセラ・タイランデンシス、及びワイセラ・ビリデスセンスからなる群より選択される少なくとも1種である、[2]に記載の脂質代謝改善剤。[12]菌体破壊物における菌体の平均長径が破壊前の0〜90%である、[1]〜[11]のいずれかに記載の脂質代謝改善剤。[13]菌体破壊物における菌体の平均長径が0〜2.5μmである、[1]〜[12]のいずれかに記載の脂質代謝改善剤。[14]菌体破壊物が物理的破壊により得られる、[1]〜[13]のいずれかに記載の脂質代謝改善剤。[15]菌体破壊物が薬品処理により得られる、[1]〜[13]のいずれかに記載の脂質代謝改善剤。[16]菌体破壊物が酵素溶解により得られる、[1]〜[13]のいずれかに記載の脂質代謝改善剤。[17]菌体破壊物が自己溶解により得られる、[1]〜[13]のいずれかに記載の脂質代謝改善剤。[18]経口投与用である、[1]〜[17]のいずれかに記載の脂質代謝改善剤。[19]総コレステロール、LDL-コレステロール、中性脂肪、動脈硬化指数及び内臓脂肪からなる群より選択される少なくとも1つを低減させる作用を有する、[1]〜[18]のいずれかに記載の脂質代謝改善剤。[20]HDL-コレステロール及びアディポネクチンからなる群より選択される少なくとも1つを上昇させる作用を有する、[1]〜[19]のいずれかに記載の脂質代謝改善剤。[21]飲食品、飼料又は医薬品に使用するための、[1]〜[20]のいずれかに記載の脂質代謝改善剤。[22]動脈硬化、高脂血症、脂肪肝、肥満症、メタボリックシンドローム、糖尿病、心筋梗塞、又は脳梗塞の予防又は治療に使用するための、[1]〜[21]のいずれかに記載の脂質代謝改善剤。[23][1]〜[22]のいずれかに記載の脂質代謝改善剤を添加した飲食品、飼料又は医薬品。[24][1]〜[22]のいずれかに脂質代謝改善剤を調製する工程、及び 該脂質代謝改善剤を飲食品に配合する工程を含む、機能性飲食品の製造方法。[25]乳酸菌を破壊する工程を含むことを特徴とする、乳酸菌の脂質代謝改善作用を増強する方法。[26]対象に乳酸菌の菌体破壊物を投与することを含む、対象における脂質代謝を改善する方法。[27]乳酸菌の菌体破壊物及び薬学的に許容される担体を含む、脂質代謝関連疾患又は障害を治療又は予防するための医薬組成物。[28]乳酸菌を破壊する工程、得られた菌体破壊物の脂質代謝改善作用を測定する工程、及び脂質代謝改善作用を有する菌体破壊物を製剤化する工程を含む、脂質代謝改善剤の製造方法。[29]ラクトバチルス・アミロボラスCP1563株若しくはラクトバチルス・アミロボラスCP1562株、又はそれらの変異株。[30]その菌体破壊物が脂質代謝改善作用を有するものである、[29]に記載の変異株。 本発明により、脂質代謝改善剤が提供される。本発明の脂質代謝改善剤は、総コレステロール、LDL-コレステロール、中性脂肪、動脈硬化指数及び/又は内臓脂肪を低減させ、並びに/あるいはHDL-コレステロール及び/又はアディポネクチンを上昇させることにより、脂質代謝を正常化することができるため、様々な疾患又は障害の予防又は治療に使用することができる。乳酸菌の破砕処理前(A)及び破砕処理後(B)の菌体の電子顕微鏡写真を示す。食餌誘導性肥満モデルにおける乳酸菌Lactobacillus amylovorus CP1563株破砕物の効果(HDL-コレステロール)を示すグラフである。食餌誘導性肥満モデルにおける乳酸菌Lactobacillus gasseri CP3238株破砕物の効果(HDL-コレステロール)を示すグラフである。食餌誘導性肥満モデルにおける乳酸菌破砕物の用量依存的効果(HDL-コレステロール)を示すグラフである。食餌誘導性肥満モデルにおける乳酸菌破砕物の用量依存的効果(動脈硬化指数)を示すグラフである。食餌誘導性肥満モデルにおける乳酸菌破砕物の抗メタボリックシンドローム効果を示すグラフである。AはHDL-コレステロール、BはLDL-コレステロール、Cは中性脂肪、Dは動脈硬化指数、Eは高分子アディポネクチン、Fは内臓脂肪重量をそれぞれ示す。食餌誘導性肥満モデルにおける乳酸菌破砕物の効果を、乳酸菌の有機溶媒抽出物の効果と対比して示すグラフである。食餌誘導性肥満モデルにおける、異なる破砕条件の乳酸菌破砕物の効果(HDL-コレステロール)を示すグラフである。食餌誘導性肥満モデルにおける乳酸菌Lactobacillus amylovorus CP1562株破砕物の効果(HDL-コレステロール)を示すグラフである。 以下、本発明を詳細に説明する。本願は、2010年6月8日に出願された日本国特許出願第2010-131188号の優先権を主張するものであり、上記特許出願の明細書及び/又は図面に記載される内容を包含する。 本発明は、乳酸菌の菌体を破壊することによって、乳酸菌の脂質代謝改善作用を発現又は増強することができるという知見に基づいている。従って、本発明は、乳酸菌の菌体破壊物を含有する脂質代謝改善剤、並びにその医薬及び食品用途に関する。 本発明において使用する乳酸菌とは、発酵によって糖類から乳酸を産生する細菌であり、例えばラクトバチルス(Lactobacillus)属、ロイコノストック(Leuconostoc)属、ラクトコッカス(Lactococcus)属、ペディオコッカス(Pediococcus)属、エンテロコッカス(Enterococcus)属、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、ワイセラ(Weissella)属などに属する細菌が含まれる。本発明においては、乳酸菌の菌体破壊物が脂質代謝改善作用を示すものであれば、当技術分野で公知の乳酸菌株を使用することができる。なお、動物への投与・摂取を考慮して、動物において安全性が確認されている菌株であることが好ましい。 乳酸菌のより具体的な種としては、ラクトバチルス属に属する細菌として、ラクトバチルス・アミロボラス、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・ゼアエ、ラクトバチルス・ラムノーサス、ラクトバチルス・ロイテリ、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・クリスパタス、ラクトバチルス・ガリナーラム、ラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・ファーメンタム、ラクトバチルス・プランタラム、ラクトバチルス・デルブルッキ サブスピーシーズ ブルガリカス、及びラクトバチルス・ジョンソニーなどがある。 また乳酸菌の具体的な別の種としては、ビフィドバクテリウム属に属する細菌として、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・シュードロンガム、ビフィドバクテリウム・アニマリス、ビフィドバクテリウム・アドレッセンティス、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・ラクティス、ビフィドバクテリウム・カテニュラータム、ビフィドバクテリウム・シュードカテニュラータム、及びビフィドバクテリウム・マグナムが挙げられる。エンテロコッカス属に属する細菌としては、エンテロコッカス・フェカリス、エンテロコッカス・ヒラエ、及びエンテロコッカス・フェシウムが挙げられる。ストレプトコッカス属に属する細菌としては、ストレプトコッカス・サーモフィルスが挙げられる。ロイコノストック属に属する細菌としては、ロイコノストック・メセンテロイデス、及びロイコノストック・ラクティスが挙げられる。ラクトコッカス属に属する細菌としては、ラクトコッカス・ラクティス、ラクトコッカス・プランタラム、及びラクトコッカス・ラフィノラクティスが挙げられる。ペディオコッカス属に属する細菌としては、ペディオコッカス・ペントサセウス、及びペディオコッカス・ダムノサスが挙げられる。ワイセラ属に属する細菌としては、ワイセラ・チバリア、ワイセラ・コンフューザ、ワイセラ・ハロトレランス、ワイセラ・ヘレニカ、ワイセラ・カンドレリ、ワイセラ・キムチイ、ワイセラ・コレエンシス、ワイセラ・ミノール、ワイセラ・パラメセンテロイデス、ワイセラ・ソリ、ワイセラ・タイランデンシス、及びワイセラ・ビリデスセンスが挙げられる。 本発明において「脂質代謝改善作用」とは、脂質代謝を正常化する又は脂質代謝異常を改善する作用を意味し、具体的には、血中脂質の低減作用、皮下脂肪及び/又は内臓脂肪の代謝促進作用、体重増加抑制作用、並びに脂肪組織の機能正常化を意図している。脂質代謝改善作用は、血中脂質(総コレステロール、HDL-コレステロール、LDL-コレステロール、中性脂肪、トリグリセリドなど)、脂肪量(内臓脂肪及び皮下脂肪)、体重量、脂肪組織の機能(アディポネクチンなど)を測定することによって、判定することができる。例えば、脂質代謝改善作用は、総コレステロール、LDL-コレステロール、中性脂肪、動脈硬化指数、内臓脂肪量、及び体重の少なくとも1つを低減させる作用である。また例えば脂質代謝改善作用は、HDL-コレステロール及びアディポネクチンの少なくとも1つを上昇させる作用である。これらの指標は当技術分野で周知であり、公知の方法及び手段を用いて測定することができる。 ある乳酸菌の菌体破壊物が脂質代謝改善作用を有するか否かは、乳酸菌の菌体破壊物を調製し、それを実験動物などの対象(例えば肥満モデル動物など)に投与し、対象において上記の指標を測定することによって、脂質代謝改善作用を有するか否かを判定することができる。 従って、本発明においては、上述したような方法により菌体の破壊物が脂質代謝改善作用を有すると評価された乳酸菌であれば、任意の乳酸菌を用いることができる。そのような脂質代謝改善作用を有する好ましい乳酸菌としては、ラクトバチルス・アミロボラスCP1563株(FERM BP-11255)、ラクトバチルス・アミロボラスCP1562株(FERM BP-11379)、及びラクトバチルス・ガセリCP3238株(FERM BP-11256)が挙げられる。なお、ラクトバチルス・アミロボラスCP1563株及びラクトバチルス・アミロボラスCP1562株はヒトの腸管由来の乳酸菌である。ラクトバチルス・ガセリCP3238株は市販のヨーグルトから採取した乳酸菌である。これらの菌株は、後述する実施例において、破壊菌体が脂質代謝改善作用を有することが確認されており、独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(〒305-8566日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 つくばセンター中央第6)から入手することができる。 また、以前にその菌体に脂質代謝改善作用があることが報告されている乳酸菌の場合には、その菌体破壊物を使用することによって、脂質代謝改善作用の増強が期待される。 また本発明においては、上述した具体的な菌株の変異株も、脂質代謝改善作用を有する限り使用することができる。例えば、ラクトバチルス・アミロボラスCP1563株、ラクトバチルス・アミロボラスCP1562株、及びラクトバチルス・ガセリCP3238株の変異株は、脂質代謝改善作用を有している蓋然性が高く、そのような変異株も本発明に包含される。 本発明において、「変異株」とは、親株から得られた任意の株を意味する。具体的には、親株から自然突然変異や化学的若しくは物理的変異原による誘発変異によって人工的に突然変異の頻度を高める方法、又は特異的な突然変異誘発技術(例えば、遺伝子組換え)により得られる株を意味する。こうした方法により生じた微生物個体を、選別、分離を繰り返し、有用な微生物個体を育種することにより、目的の性質を有する変異株を得ることができる。 例えば、ラクトバチルス・アミロボラスCP1563株、ラクトバチルス・アミロボラスCP1562株、又はラクトバチルス・ガセリCP3238株に由来する変異株は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法による乳酸菌のゲノムDNAの増幅断片の分子量分布により、他の乳酸菌株と容易に識別することができる。簡単に説明すると、目的とする乳酸菌について、DNA試料を調製し、特徴的な配列(例えば16S rDNA塩基配列)を有するプライマーを用いたPCR法により遺伝子増幅を行い、得られた断片の電気泳動パターンを分析することにより、ラクトバチルス・アミロボラスCP1563株、ラクトバチルス・アミロボラスCP1562株、又はラクトバチルス・ガセリCP3238株に由来する変異株であるか否かを判定することができる。ただし、変異株であるか否かを確認する方法はこの方法に限定されるものではなく、菌学的性質などの当技術分野で公知の手法により変異株であるかどうかを確認することができる。 このような変異株の破壊物が脂質代謝改善作用を有するか否かを判定することによって、本発明において菌体破壊物として使用することができる菌株を取得することができる。 乳酸菌は、乳酸菌の培養に通常用いられる培地を使用して、適当な条件下で培養することにより調製することができる。培養に用いる培地は、炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、乳酸菌の培養を効率的に行うことができる培地であれば、天然培地、合成培地のいずれを用いてもよく、当業者であれば使用する菌株に適切な公知の培地を適宜選ぶことができる。炭素源としてはラクトース、グルコース、スクロース、フラクトース、ガラクトース、廃糖蜜などを使用することができ、窒素源としてはカゼインの加水分解物、ホエータンパク質加水分解物、大豆タンパク質加水分解物等の有機窒素含有物を使用することができる。また無機塩類としては、リン酸塩、ナトリウム、カリウム、マグネシウムなどを用いることができる。乳酸菌の培養に適した培地としては、例えばMRS液体培地、GAM培地、BL培地、Briggs Liver Broth、獣乳、脱脂乳、乳性ホエーなどが挙げられる。好ましくは、滅菌されたMRS培地を使用することができる。天然培地としては、トマトジュース、ニンジンジュース、その他野菜ジュース、あるいはリンゴ、パイナップル、ブドウ果汁などを使用することができる。 また乳酸菌の培養は、20℃から50℃、好ましくは25℃から42℃、より好ましくは約37℃において、嫌気条件下で行う。温度条件は、恒温槽、マントルヒーター、ジャケットなどにより調整することができる。また、嫌気条件下とは、乳酸菌が増殖可能な程度の低酸素環境下のことであり、例えば嫌気チャンバー、嫌気ボックス又は脱酸素剤を入れた密閉容器若しくは袋などを使用することにより、あるいは単に培養容器を密閉することにより、嫌気条件とすることができる。培養の形式は、静置培養、振とう培養、タンク培養などである。また、培養時間は3時間から96時間とすることができる。培養開始時の培地のpHは4.0〜8.0に維持することが好ましい。 乳酸菌の具体的な調製例を簡単に説明する。例えば乳酸菌としてラクトバチルス・アミロボラスCP1563株、CP1562株及びラクトバチルス・ガセリCP3238株を用いる場合には、食品グレードの乳酸菌用培地に乳酸菌を植菌し、約37℃で一晩(約18時間)かけて培養を行う。 培養後、得られる乳酸菌培養物をそのまま使用してもよいし、さらに必要に応じて遠心分離などによる粗精製及び/又は濾過等による固液分離や滅菌操作を行ってもよい。好ましくは、遠心分離を行って、乳酸菌の菌体のみを回収する。なお、本発明において使用する乳酸菌は、湿潤菌体であっても又は乾燥菌体であってもよい。 本発明においては、乳酸菌の菌体破壊物を使用する。本発明において「菌体破壊物」は、破砕、磨砕、酵素処理、薬品処理、溶解などによって処理された菌体を含む。また「破壊物」には、例えば、菌体の損傷後に得られる水可溶性画分、有機溶媒可溶性画分、有機溶媒及び水難溶性画分、有機溶媒及び水不溶性画分が含まれる。 菌体の損傷は、当技術分野で公知の方法及び機器を使用して、例えば物理的破砕、酵素溶解処理、薬品処理、あるいは自己溶解処理などによって行うことができる。物理的破砕は、湿式(菌体懸濁液の状態で処理)又は乾式(菌体粉末の状態で処理)のいずれで行ってもよく、ホモゲナイザー、ボールミル、ビーズミル、ダイノミル、遊星ミル等を使用した撹拌により、ジェットミル、フレンチプレス、細胞破砕機等を使用した圧力により、あるいはフィルター濾過により、菌体の損傷を行うことができる。 酵素溶解処理は、例えばリゾチームなどの酵素を用いて、乳酸菌の細胞構造を破壊することができる。 薬品処理は、グリセリン脂肪酸エステル、ダイズリン脂質などの界面活性剤を使用して、乳酸菌の細胞構造を破壊することができる。 自己溶解処理は、一部の乳酸菌自身の酵素により菌体を溶解することができる。 なお、本発明においては、他の試薬又は成分を添加する必要がないため物理的破砕が好ましい。 例えば撹拌による物理的破砕を行う場合には、菌体懸濁液又は菌体粉末を、50〜10,000rpm、好ましくは100〜1,000rpmにて撹拌を行う。 破砕物を調製するための具体的な方法は、例えば、乳酸菌の懸濁液を、公知のダイノミル細胞破砕機(DYNO-MILL破砕装置など)において、ガラスビーズを使用して、周速10.0〜20.0m/s(例えば約14.0m/s)、処理流速0.1〜10L/10min(例えば約1L/10min)にて、破砕槽温度10〜30℃(例えば約15℃)で1〜7回(例えば3〜5回)処理することによって、菌体を破砕する。また例えば、乳酸菌の懸濁液を、公知の湿式ジェットミル細胞破砕機(JN20 ナノジェットパルなど)において、吐出圧力50〜1000Mpa(例えば270MPa)、処理流速50〜1000(例えば300ml/min)にて、1〜30回(例えば10回)処理することによって、菌体を破砕する。また、公知の乾式遊星ミル細胞破砕機(GOT5 ギャラクシー5など)において、乳酸菌の菌体粉末を各種ボール(例えばジルコニア製10mmボール、ジルコニア製5mmボール、アルミナ製1mmボール)共存下で、回転数50〜10,000rpm(例えば240rpm、190rpm)で30分〜20時間(例えば5時間)処理することによって、菌体を破砕することも可能である。乳酸菌の菌体粉末を公知の乾式ジェットミル細胞破砕機(ジェットOマイザーなど)において、供給速度0.01〜10000g/min(例えば0.5g/min)、吐出圧力1〜1000kg/cm2(例えば6kg/cm2)の圧力にて、1〜10回(例えば1回)処理することによって、菌体を破砕してもよい。 本発明においては、乳酸菌破壊物は、菌体に穴が開く程度でも効果を発揮するが、菌体の平均長径が破壊処理前の90%以下となるように調製することが望ましい。例えば溶解処理により菌体を破壊する場合には、菌体の平均長径は0%となることもある。従って、菌体破壊物における菌体の平均長径が破壊前の0〜90%、好ましくは0〜80%、0〜70%、0〜50%、さらに好ましくは0〜20%となるように乳酸菌を破壊する。 菌体破壊物における菌体の平均長径は、使用する乳酸菌の種類によって異なるが、例えば0〜2.5μm、好ましくは0〜2μm、さらに好ましくは0〜1.5μm、0〜1μm、よりさらに好ましくは0〜0.5μmである。 平均長径は、具体的には実施例1に記載の方法により測定する。 また、所望により、乳酸菌の菌体及び/又は菌体破壊物にさらなる処理を行ってもよい。そのような処理の例を以下に記載する。 乳酸菌の菌体及び/又は菌体破壊物を適当な溶媒に懸濁又は希釈することによって、懸濁物又は希釈物として調製することができる。使用することができる溶媒としては、例えば水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)などが挙げられる。 乳酸菌の菌体及び/又は菌体破壊物を滅菌処理によって、滅菌処理物として調製することができる。乳酸菌の菌体及び/又は菌体破壊物を滅菌処理するには、例えば、濾過滅菌、放射性殺菌、過熱式殺菌、加圧式殺菌などの公知の滅菌処理を行うことができる。 また、乳酸菌の菌体及び/又は菌体破壊物を加熱処理することにより、加熱処理物として調製することができる。加熱処理物を調製するには、乳酸菌の菌体及び/又は菌体破壊物を、一定時間、例えば約10分〜1時間(例えば約10〜20分)にわたり、高温処理(例えば80〜150℃)する。 さらに乳酸菌の菌体及び/又は菌体破壊物を乾燥して粉状物又は粒状物とすることができる。具体的な乾燥方法としては、特に制限されないが、例えば、噴霧乾燥、ドラム乾燥、真空乾燥、凍結乾燥などが挙げられ、これらを単独で又は組み合わせて採用できる。その際、必要に応じて通常用いられる賦形剤を添加してもよい。 さらに、乳酸菌の菌体破壊物から、公知の分離・精製法を用いて、脂質代謝改善作用を有する成分又は画分を精製してもよい。そのような分離・精製法としては、塩沈殿及び有機溶媒沈殿などの溶解性を利用する方法、透析、限外濾過、ゲル濾過などの分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーのような電荷の差を利用する方法、アフィニティクロマトグラフィーのような特異的結合を利用する方法、疎水クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィーなどの疎水性を利用する方法などが挙げられ、これらの方法の1種を、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。 上述した処理は、単一の処理を行ってもよいし、あるいは複数を適宜組み合わせて行ってもよい。本発明においては、このような処理物も脂質代謝改善剤に用いることができる。 上記で得られた乳酸菌の菌体破壊物は、単独で又は他の成分と共に、脂質代謝改善剤として継続的に摂取すると、脂質代謝の改善効果と、それによる脂質代謝関連疾患又は障害の治療又は予防効果が期待される。また、脂質代謝改善剤は、飲料、食品又は飼料に添加して使用することもできる。 本発明の脂質代謝改善剤は、有効成分として上述した乳酸菌の菌体破壊物を含むものであるが、1種の乳酸菌の菌体破壊物を含んでもよいし、複数の異なる乳酸菌の菌体破壊物、さらには異なる破壊処理を行った複数の菌体破壊物を組み合わせて含んでもよい。 また本発明の脂質代謝改善剤には、有効成分である乳酸菌の菌体破壊物に加えて、目的とする作用を阻害しない限り、後述する添加剤、他の公知の脂質代謝改善薬などを単独又は複数組み合わせて添加してもよい。 本発明の脂質代謝改善剤の形態は特に制限されないが、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、粉剤、シロップ剤、ドライシロップ剤、液剤、懸濁剤、吸入剤などの経口剤、坐剤などの経腸製剤、点滴剤、注射剤などの剤型としてもよい。これらのうちでは、経口剤とするのが好ましい。なお、液剤、懸濁剤などの液体製剤は、服用直前に水又は他の適当な媒体に溶解又は懸濁する形であってもよく、また錠剤、顆粒剤の場合には周知の方法でその表面をコーティングしてもよい。さらに、本発明の脂質代謝改善剤は、当技術分野で公知の技術を使用して、徐放性製剤、遅延放出製剤又は即時放出製剤などの放出が制御された製剤としてもよい。 このような剤型の脂質代謝改善剤は、上述した成分に、通常用いられる賦形剤、崩壊剤、結合剤、湿潤剤、安定剤、緩衝剤、滑沢剤、保存剤、界面活性剤、甘味料、矯味剤、芳香剤、酸味料、着色剤などの添加剤を剤型に応じて配合し、常法に従って製造することができる。例えば、脂質代謝改善剤を医薬組成物とする場合には、薬学的に許容される担体又は添加剤を配合することができる。そのような薬学的に許容される担体及び添加物の例として、水、薬学的に許容される有機溶剤、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、水溶性デキストリン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、寒天、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、医薬添加物として許容される界面活性剤などの他、リポゾームなどの人工細胞構造物などが挙げられる。 本発明の脂質代謝改善剤が、上記添加剤や他の脂質代謝改善薬などを含む場合、有効成分である乳酸菌の菌体破壊物の含有量は、その剤型により異なるが、破壊処理前の乳酸菌の量として、通常は、0.0001〜99質量%、好ましくは0.001〜80質量%、より好ましくは0.001〜75質量%の範囲であり、有効成分の望ましい摂取量を摂取できるように、1日当たりの投与量が管理できる形にするのが望ましい。また、本発明の脂質代謝改善剤に含まれる乳酸菌の菌体破壊物は、破壊前の乳酸菌数として、約107個/g〜約1012個/g、好ましくは約108個/g〜約1012個/gである。 本発明の脂質代謝改善剤に添加又は配合することができる他の脂質代謝改善薬としては、限定されるものではないが、脂質降下薬(スタチン系薬剤、フィブラート系薬剤、エイコサペンタエン酸など)、ビタミン剤(ニコチン酸、ビタミンEなど)が挙げられる。 さらに、本発明の脂質代謝改善剤には、医薬、飲食品、飼料の製造に用いられる種々の添加剤やその他種々の物質を共存させてもよい。このような物質や添加剤としては、各種油脂(例えば、大豆油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油などの植物油、牛脂、イワシ油などの動物油脂)、生薬(例えばロイヤルゼリー、人参など)、アミノ酸(例えばグルタミン、システイン、ロイシン、アルギニンなど)、多価アルコール(例えばエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、糖アルコール、例としてソルビトール、エリスリトール、キシリトール、マルチトール、マンニトールなど)、天然高分子(例えばアラビアガム、寒天、水溶性コーンファイバー、ゼラチン、キサンタンガム、カゼイン、グルテン又はグルテン加水分解物、レシチン、澱粉、デキストリンなど)、ビタミン(例えばビタミンC、ビタミンB群など)、ミネラル(例えばカルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄など)、食物繊維(例えばマンナン、ペクチン、ヘミセルロースなど)、界面活性剤(例えばグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルなど)、精製水、賦形剤(例えばブドウ糖、コーンスターチ、乳糖、デキストリンなど)、安定剤、pH調製剤、酸化防止剤、甘味料、呈味成分、酸味料、着色料及び香料などが挙げられる。 また、本発明の脂質代謝改善剤には、上記有効成分以外の機能性成分若しくは添加剤として、例えば、タウリン、グルタチオン、カルニチン、クレアチン、コエンザイムQ、グルクロン酸、グルクロノラクトン、トウガラシエキス、ショウガエキス、カカオエキス、ガラナエキス、ガルシニアエキス、テアニン、γ-アミノ酪酸、カプサイシン、カプシエイト、各種有機酸、フラボノイド類、ポリフェノール類、カテキン類、キサンチン誘導体、フラクトオリゴ糖などの難消化性オリゴ糖、ポリビニルピロリドンなどを配合することができる。 これら添加剤の配合量は、添加剤の種類と所望すべき摂取量に応じて適宜決められるが、有効成分である乳酸菌の菌体破壊物の含有量は、その剤型により異なるが、破壊処理前の乳酸菌の量として、通常は、0.0001〜99質量%、好ましくは0.001〜80質量%、より好ましくは0.001〜75質量%の範囲となるよう配合することが望ましい。 本発明の脂質代謝改善剤を投与又は摂取する対象は、脊椎動物、具体的には、哺乳動物、例えばヒト、霊長類(サル、チンパンジーなど)、家畜動物(ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジなど)、ペット用動物(イヌ、ネコなど)、実験動物(マウス、ラットなど)、さらには爬虫類及び鳥類である。特に、既に脂質代謝異常を示すヒト、遺伝的若しくは環境的要因により脂質代謝異常となるリスクの高いヒト、又は以前に脂質代謝異常を患っていたヒトが対象として好ましい。 本発明の脂質代謝改善剤の投与又は摂取量は、対象の年齢及び体重、投与・摂取経路、投与・摂取回数、脂質代謝異常の重篤度などにより異なり、目的とする作用を達成できるように当業者の裁量によって広範囲に変更することができる。例えば、経口的に投与又は摂取する場合には、脂質代謝改善剤に含まれる乳酸菌の菌体破壊物を、破壊処理前の乳酸菌の量として、体重1kgあたり、通常約106個〜約1012個、好ましくは約107個〜約1011個投与することが望ましい。乳酸菌の菌体破壊物の含有割合は特に限定されず、製造の容易性や好ましい一日投与量等に合わせて適宜調節すればよい。本発明の脂質代謝改善剤は安全性の高いものであるため、摂取量をさらに増やすこともできる。1日当たりの摂取量は、1回で摂取してもよいが、数回に分けて摂取してもよい。また、その投与又は摂取の頻度も、特に限定されず、投与・摂取経路、対象の年齢及び体重、脂質代謝異常の重篤度、脂質代謝異常に起因する疾患又は障害の発症の有無、目的とする効果(治療、予防など)などの種々の条件に応じて適宜選択することが可能である。 本発明の脂質代謝改善剤の投与・摂取経路は特に限定されず、経口投与若しくは摂取、又は非経口投与(例えば直腸内、皮下、筋肉内、静脈内投与)などが挙げられる。本発明の脂質代謝改善剤は、特に経口的に投与又は摂取することが好ましい。 本発明の脂質代謝改善剤は、対象の血中脂質の低減作用、皮下脂肪及び/又は内臓脂肪の代謝促進作用、体重増加抑制作用を有する。具体的には、本発明の脂質代謝改善剤は、対象における総コレステロール、LDL-コレステロール、中性脂肪、動脈硬化指数及び/又は内臓脂肪を低減させ、並びに/あるいはHDL-コレステロール及び/又はアディポネクチンを上昇させることにより、脂質代謝を正常化する作用を有する。従って、本発明の脂質代謝改善剤は、脂質代謝に関連する疾患又は障害に対して、優れた予防、改善及び治療効果を示す。また、安全性が高く長期間の継続的摂取が容易である。そのため、本発明の脂質代謝改善剤は、飲食品及び飼料に添加して使用できる。 上述したように、本発明の脂質代謝改善剤は、医薬組成物として又は機能性飲食品に添加して、脂質代謝関連疾患又は障害の予防又は治療のために用いることができる。本発明において「脂質代謝関連疾患又は障害」とは、脂質代謝の異常に起因する疾患、障害、症状又は症候群を指す。脂質代謝関連疾患又は障害には、例えば限定されるものではないが、動脈硬化、高脂血症、脂肪肝、肥満症、メタボリックシンドローム、糖尿病、さらには循環器系疾患(心筋梗塞、脳梗塞など)が含まれる。 また本発明において、脂質代謝関連疾患又は障害の「予防又は治療」とは、動物やヒトなどの対象において、脂質代謝関連疾患又は障害の発症の予防、脂質代謝関連疾患又は障害の発症後(病的状態)の治療を意味するが、脂質代謝関連疾患又は障害の発症を遅延又は抑制することも意味する。また、脂質代謝関連疾患又は障害に起因して発症する疾患又は障害の発症を防止することも含まれる。例えば、予防目的で本発明の脂質代謝改善剤を使用する場合、脂質代謝関連疾患・障害の素因となる遺伝的要因、環境的要因若しくは他の異常を有する対象、又は以前に脂質代謝関連疾患・障害の発症履歴のある対象に、投与又は摂取させることが好ましい。 本発明に係る脂質代謝改善剤により治療又は予防の対象となる脂質代謝関連疾患又は障害は、単独であっても、併発したものであっても、上記以外の他の疾病を併発したものであってもよい。 本発明の脂質代謝改善剤は、他の医薬、治療又は予防法等と併用してもよい。このような他の医薬は、本発明の脂質代謝改善剤と共に一製剤を成していてもよいし、また、別々の製剤であって同時に又は間隔を空けて投与してもよい。 上述したように、本発明の脂質代謝改善剤は、脂質代謝改善作用を有するうえ、食経験のある乳酸菌を含むものであり、安全性が高い。さらに、様々な飲食品に添加しても飲食品自体の風味を阻害しないため、種々の飲食品に添加して継続的に摂取することができ、脂質代謝の改善が期待される。 本発明の飲食品は、上述した脂質代謝改善剤を含有する。本発明において、飲食品には飲料も包含される。本発明の脂質代謝改善剤を含有する飲食品には、脂質代謝改善作用により健康増進を図る健康飲食品、機能性飲食品、特定保健用飲食品などの他、上記脂質代謝改善剤を配合できる、全ての飲食品が含まれる。 本発明の脂質代謝改善剤を含有する飲食品として、機能性飲食品はとりわけ好ましい。本発明の「機能性飲食品」は、生体に対して一定の機能性を有する飲食品を意味し、例えば、特定保健用飲食品(条件付きトクホ[特定保健用食品]を含む)及び栄養機能飲食品を含む保健機能飲食品、特別用途飲食品、栄養補助飲食品、健康補助飲食品、サプリメント(例えば、錠剤、被覆錠、糖衣錠、カプセル及び液剤などの各種剤形のもの)及び美容飲食品(例えばダイエット飲食品)などのいわゆる健康飲食品全般を包含する。本発明の機能性飲食品はまた、コーデックス(FAO/WHO合同食品規格委員会)の食品規格に基づく健康強調表示(Health claim)が適用される健康飲食品を包含する。 飲食品の具体例としては、経管経腸栄養剤などの流動食、錠菓、錠剤、チュアブル錠、錠剤、粉剤、散剤、カプセル剤、顆粒剤及びドリンク剤などの製剤形態の健康飲食品及び栄養補助飲食品;緑茶、ウーロン茶及び紅茶などの茶飲料、清涼飲料、ゼリー飲料、スポーツ飲料、乳飲料、炭酸飲料、野菜飲料、果汁飲料、醗酵野菜飲料、醗酵果汁飲料、発酵乳飲料(ヨーグルトなど)、乳酸菌飲料、乳飲料(コーヒー牛乳、フルーツ牛乳など)、粉末飲料、ココア飲料、牛乳並びに精製水などの飲料;バター、ジャム、ふりかけ及びマーガリンなどのスプレッド類;マヨネーズ、ショートニング、カスタードクリーム、ドレッシング類、パン類、米飯類、麺類、パスタ、味噌汁、豆腐、ヨーグルト、スープ又はソース類、菓子(例えば、ビスケットやクッキー類、チョコレート、キャンディ、ケーキ、アイスクリーム、チューインガム、タブレット)などが挙げられる。 本発明の飲食品は、上記脂質代謝改善剤のほかに、その飲食品の製造に用いられる他の食品素材、各種栄養素、各種ビタミン、ミネラル、食物繊維、種々の添加剤(例えば呈味成分、甘味料、有機酸などの酸味料、安定剤、フレーバー)などを配合して、常法に従って製造することができる。 本発明の飲食品において、脂質代謝改善剤の配合量は、飲食品の形態や求められる食味又は食感を考慮して、当業者が適宜定めることができる。通常は、添加される脂質代謝改善剤中の乳酸菌の菌体破壊物の総量が、破壊処理前の乳酸菌の量として、通常は0.0001〜99質量%、好ましくは0.001〜80質量%、より好ましくは0.001〜75質量%となるような脂質代謝改善剤の配合量が適当である。本発明の脂質代謝改善剤は安全性の高いものであるため、飲食品におけるその配合量をさらに増やすこともできる。脂質代謝改善剤の望ましい摂取量を飲食できるよう、1日当たりの摂取量が管理できる形にするのが好ましい。このように本発明の飲食品を、本発明の脂質代謝改善剤の望ましい摂取量を管理できる形態で飲食することにより、該飲食品を用いた脂質代謝関連疾患又は障害に対する予防方法及び改善方法が提供される。 本発明の脂質代謝改善剤は、当業者が利用可能である任意の適切な方法によって、飲食品に含有させればよい。例えば、本発明の脂質代謝改善剤を、液体状、ゲル状、固体状、粉末状又は顆粒状に調製した後、それを飲食品に配合することができる。あるいは本発明の脂質代謝改善剤を、飲食品の原料中に直接混合又は溶解してもよい。本発明の脂質代謝改善剤は、飲食品に塗布、被覆、浸透又は吹き付けてもよい。本発明の脂質代謝改善剤は、飲食品中に均一に分散させてもよいし、偏在させてもよい。本発明の脂質代謝改善剤を入れたカプセルなどを調剤してもよい。本発明の脂質代謝改善剤を、可食フィルムや食用コーティング剤などで包み込んでもよい。また本発明の脂質代謝改善剤に適切な賦形剤等を加えた後、錠剤などの形状に成形してもよい。本発明の脂質代謝改善剤を含有させた飲食品はさらに加工してもよく、そのような加工品も本発明の範囲に包含される。 本発明の飲食品の製造においては、飲食品に慣用的に使用されるような各種添加物を使用してもよい。添加物としては、限定するものではないが、発色剤(亜硝酸ナトリウム等)、着色料(クチナシ色素、赤102等)、香料(オレンジ香料等)、甘味料(ステビア、アステルパーム等)、保存料(酢酸ナトリウム、ソルビン酸等)、乳化剤(コンドロイチン硫酸ナトリウム、プロピレングリコール脂肪酸エステル等)、酸化防止剤(EDTA二ナトリウム、ビタミンC等)、pH調整剤(クエン酸等)、化学調味料(イノシン酸ナトリウム等)、増粘剤(キサンタンガム等)、膨張剤(炭酸カルシウム等)、消泡剤(リン酸カルシウム)等、結着剤(ポリリン酸ナトリウム等)、栄養強化剤(カルシウム強化剤、ビタミンA等)、賦形剤(水溶性デキストリン等)等が挙げられる。さらに、オタネニンジンエキス、エゾウコギエキス、ユーカリエキス、杜仲茶エキス等の機能性素材をさらに添加してもよい。 本発明の飲食品は、上述したとおり、脂質代謝改善作用を有するため、脂質代謝関連疾患又は障害に対して優れた予防及び改善作用を奏する上に、安全性が高く副作用の心配がない。また、本発明の脂質代謝改善剤は風味がよく、様々な飲食品に添加してもその飲食品の風味を阻害しないため、得られる飲食品は長期間の継続的摂取が容易であり、脂質代謝関連疾患又は障害の優れた予防及び改善作用が期待される。 さらに本発明の脂質代謝改善剤は、ヒト用の飲食品のみならず、家畜、競走馬、ペットなどの飼料にも配合することができる。飼料は、対象がヒト以外であることを除き飲食品とほぼ等しいことから、上記の飲食品に関する記載は、飼料についても同様に当てはめることができる。 以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。[実施例1] 乳酸菌Lactobacillus amylovorus CP1563株(FERM BP-11255)及びLactobacillus gasseri CP3238株(FERM BP-11256)を以下のとおり調製した。 ラクトバチルス・アミロボラスCP1563株はヒトの糞便より、ラクトバチルス・ガセリCP3238株は市販のヨーグルトより採取し、単離した。16S rDNA塩基配列解析及び表現形質の観察により、菌種を同定した。 なお、ここで得られた菌株は、ブタペスト条約の規定下で独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(〒305-8566日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 つくばセンター中央第6)に2010年5月25日付で寄託され、それぞれ受託番号FERM BP-11255及びFERM BP-11256が付与されている。 乳酸菌を自家処方による食品グレードの乳酸菌培地を用いて、37℃、18時間培養し、遠心分離により集菌した。脱イオン水を用いて洗浄・集菌後、適量の水に再懸濁し、90℃達温殺菌した。殺菌後の懸濁液を、以下の条件でダイノミル破砕した。 使用機器:DYNO-MILL破砕装置(Multi-lab 0.6L、シンマルエンタープライゼス社) 周速:14.0m/s 処理流速:1L/10min 処理回数:5回 破砕槽温度:15℃ 使用ガラスビーズ:直径0.5mm 0.4L 上記破砕(破壊)処理により、乳酸菌懸濁液中の菌体の平均長径が処理前の68%に縮小した(2.77μ→1.89μm)。菌体の平均長径は以下のように測定した。 破砕(破壊)又は非破砕(非破壊)乳酸菌凍結乾燥粉末5mgを純水1mlに懸濁し、超音波機器USD-5R(アズワン株式会社)を用いて超音波(出力240W)で2分間処理して分散させ、測定サンプルを調製した。この測定サンプル10μL程度を、イオンスパッタ装置を用いた親水化処理(日立ハイテク製)により親水処理した試料台(日新EM株式会社S-KM、φ15×14×6、アルミ製)に固定後、イオンスパッタ装置によるPt-Pd蒸着を施した。蒸着処理は、イオンスパッタ装置E-1010((株)日立ハイテクノロジーズ)を用いて、TARGET/Pt-Pd, VACUUM/7Pa, CURRENT/12mA, TIME/30sの蒸着装置条件で行った。走査電子顕微鏡(SEM)により顕微鏡観察撮影を行い、下記の測定条件で10〜20枚の画像撮影を行い、撮影画像中の菌体(粒子状を含む)100個以上の長径を測定し、その平均値を平均長径として算出した。なお、画像端部にかかる粒子は測定対照としない。膜のようなものは測定対象としない。粒状のものは測定対象とした。「長径」の測定は、撮影画像を画像解析式粒子径分布ソフトウェアを用いて行った。撮影画像から「長径」を測定する解析方法は、粒子(菌体)に外接する面積が最小となる外接長方形の短辺、長辺のうち長辺の長さを長径として測定した。<測定条件>装置条件:ACCELERATING VOLTAGE / 5kv, W. D. / 5.0mm倍率:×5,000画像信号:SE (SECONDARY ELECTRON)。 破砕処理前及び破砕処理後の菌体の顕微鏡写真をそれぞれ図1のA及びBに示す。図1Bに示されるように、破砕処理によって、完全に分断された菌体(左)と穴が開いたのみの菌体(右)が得られた。破砕後、懸濁液を凍結乾燥し、破砕乳酸菌凍結乾燥粉末を得た。菌体を破砕しない場合(対照)は、殺菌後の液をそのまま凍結乾燥し、非破砕乳酸菌凍結乾燥粉末を得た。[比較例] 比較例として、特許文献1に示される乳酸菌の有機溶媒抽出物を調製した。特許文献1には、乳酸菌の乾燥菌体に有機溶媒を加え、超音波処理した後の上清を濃縮乾固し、乾固物に有機溶媒を加えて調製される乳酸菌の有機溶媒抽出物が記載されている。 乳酸菌Lactobacillus amylovorus CP1563株の凍結乾燥粉末10gに100mlのエタノールを加え、5分間超音波処理後、これを遠心分離(7500 x g、4℃、15分間)することによって上清を回収した。得られた上清をロータリーエバポレーターで濃縮乾固し、乾固物にエタノールを加え、1gの抽出物を得た。同様の操作を繰り返し、合計15gの抽出物を得た。[実施例2] 本実施例では、食餌誘導性肥満モデルマウスに対する乳酸菌の効果を検証した。 まず、表1に示した配合の通り原料を混合し、乳酸菌配合高脂肪食を製造した。 なお、先行技術で示した特許文献中では、高脂肪食の主な脂質源として、大豆油やラードを用いた高脂肪食を用い肥満モデル動物を作製し、乳酸菌の効果を検討している。しかし、乳酸菌がヒトで明確な脂質代謝改善作用を示せていない現状を考慮し、より厳しい条件の肥満モデル動物を作製するために、主な脂質源としてバターを用いた。バターは大豆油やラードと比較して、不飽和脂肪酸が少なく、飽和脂肪酸が多いため、脂質源にバターを用いれば、脂質代謝がより悪化し、乳酸菌の効果を検出することがより一層難しくなる。よって、この条件で得られる結果がヒトで行なう評価結果に近いものと考えた。 C57BL/6 雄マウス(5週齢)を、上記のとおり調製した高脂肪食(コントロール食)で1週間予備飼育して肥満モデルマウスとした。次いで、各種乳酸菌配合高脂肪食で6週間〜3ヶ月間飼育した。飼育はペアフィーディング法に従って実施し、各群の摂食量が同等になるように調整した。実験終了時に採血を行い、各種血中マーカーにて乳酸菌の効果を検証した。 具体的には、以下の実験1及び2を行った: 実験1:コントロール食投与群 1% Lactobacillus amylovorus CP1563株非破砕菌体投与群 1% Lactobacillus amylovorus CP1563株破砕菌体投与群 実験2:コントロール食投与群 1% Lactobacillus gasseri CP3238株非破砕菌体投与群 1% Lactobacillus gasseri CP3238株破砕菌体投与群 実験1及び2の結果をそれぞれ図2及び3に示す。図2及び3に示すように、CP1563株及びCP3238株非破砕乳酸菌投与群では、コントロール群と比較し、HDL-コレステロールに変動が無かったが、CP1563株及びCP3238株の破砕乳酸菌投与群では、HDL-コレステロール値が有意に改善した(それぞれp<0.001、p=0.037)。これにより、乳酸菌を破砕することにより、脂質代謝改善効果が飛躍的に増強されることが立証された。[実施例3] 本実施例では、食餌誘導性肥満モデルマウスに対する乳酸菌の効果の用量依存性を検証した。 具体的には、実施例2に記載の肥満モデルマウスをLactobacillus amylovorus CP1563株破砕菌体配合高脂肪食(0%、0.25%、0.5%、1.0%配合)で飼育した。その後、肥満モデルマウスにおけるHDL-コレステロール及び動脈硬化指数を測定した。なお、動脈硬化指数は、以下の式により求めた: 動脈硬化指数=(総コレステロール−HDLコレステロール)÷HDLコレステロール 結果を図4(HDL-コレステロール)及び図5(動脈硬化指数)に示す。CP1563株破砕菌体の投与により、HDL-コレステロール及び動脈硬化指数が用量依存的に改善した。[実施例4] 本実施例では、食餌誘導性肥満モデルマウスに対する乳酸菌の抗メタボリックシンドローム効果を検証した。 具体的には、実施例2に記載の肥満モデルマウスをLactobacillus amylovorus CP1563株破砕菌体配合高脂肪食(0%、1%配合)で飼育した。その後、肥満モデルマウスにおけるHDL-コレステロール、LDL-コレステロール、中性脂肪、動脈硬化指数、高分子アディポネクチン及び内臓脂肪重量を測定した。 その結果を図6のA〜Fに示す。図6のB、C、D及びFに示すように、CP1563株破砕菌体の投与により、LDL-コレステロール、中性脂肪、動脈硬化指数及び内臓脂肪重量が有意に低減した。また、図6のA及びEに示すように、CP1563株破砕菌体の投与により、HDL-コレステロール及び高分子アディポネクチンが有意に上昇した。従って、乳酸菌の破砕物の投与により、肥満モデルマウスの脂質代謝が有意に改善された。[実施例5] 本実施例では、比較例として乳酸菌の有機溶媒抽出物との比較試験を実施した。 実施例2に記載の肥満モデルマウスを各種高脂肪食で飼育した(コントロール食投与群、1%CP1563株破砕菌体投与群、0.1%CP1563株有機溶媒抽出物投与群)。なお、比較例に記載の通り、10gの菌体から1gの有機溶媒抽出物が得られるため、餌に菌体を1%配合することは、有機溶媒抽出物を0.1%配合することと同等である。その後、肥満モデルマウスにおけるHDL-コレステロールを測定した。 その結果を図7に示す。図7に示すように、CP1563株有機溶媒抽出投与群ではHDLコレステロールに変動が無かったのに対し、CP1563株破砕菌体投与群では有意にHDLコレステロールが改善した(p=0.021)。[実施例6] 本実施例では、食餌誘導性肥満モデルマウスに対する乳酸菌の効果への菌体破壊程度の影響を検証した。 具体的には、実施例1に記載のLactobacillus amylovorus CP1563株の殺菌後懸濁液を、以下のとおり3種類の方法で破砕した。 破砕1:乾式ジェットミル破砕 殺菌懸濁液を凍結乾燥して乳酸菌粉末を得、以下の方法で破砕処理した: 使用機器:乾式ジェットミル細胞破砕機(ジェットOマイザー) 供給速度:0.5g/min 吐出圧力:6kg/cm2 処理回数:1回。 破砕2:ダイノミル破砕(湿式) 実施例1に記載のとおり。 破砕3:乾式遊星ミル破砕 殺殺菌懸濁液を凍結乾燥して乳酸菌粉末を得、以下の方法で破砕処理した: 使用機器:乾式遊星ミル細胞破砕機(GOT5 ギャラクシー5) 使用ポット:500cc x2個 使用ボール:ジルコニア製10mmボール:32.3g ジルコニア製5mmボール:300g アルミナ製1mmボール:250g 回転数:公転240rpm、自転180rpm 処理時間:5時間。 上記破壊処理により、菌体の平均長径は、破砕1:2.41μm、破砕2:1.89μm、破砕3:0.45μmとなり、それぞれ破砕処理前の平均長径(2.77μm)の87%、68%、16%に縮小した。 実施例2に記載の肥満モデルマウスを各種高脂肪食で飼育した(コントロール食投与群、1%CP1563株破砕菌体(破砕1)投与群、1%CP1563株破砕菌体(破砕2)投与群、1%CP1563株破砕菌体(破砕3)投与群)。 結果を図8に示す。この結果より、菌体の破砕方法にかかわらず、菌体破壊物であれば脂質代謝改善効果があることがわかった。また、菌体の破壊の程度が高いほどHDLコレステロールが改善することが示された。[実施例7] 本実施例では、食餌誘導性肥満モデルマウスに対する乳酸菌の効果を検証した。 乳酸菌Lactobacillus amylovorus CP1562株は、ヒトの糞便より採取し、単離した。16S rDNA塩基配列解析及び表現形質の観察により、菌種を同定した。ここで得られた菌株は、ブタペスト条約の規定下で独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(〒305-8566日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 つくばセンター中央第6)に2011年4月22日付で寄託され、受託番号FERM BP-11379が付与されている。 上記のように調製したLactobacillus amylovorus CP1562株を実施例1に記載の方法でダイノミル破砕した破砕菌体を調製し、実施例2に記載の肥満モデルマウスを各種高脂肪食で飼育した(コントロール食投与群、1%CP1563株破砕菌体投与群、1%CP1562株破砕菌体投与群)。 結果を図9に示す。この結果では、CP1562株破砕菌体投与群は、コントロール群と比較してHDLコレステロール値が有意に改善した。[実施例8]変異株の調製 Lactobacillus amylovorus CP1563株又はCP1562株をMRS培地にて対数増殖期まで静置培養した後、滅菌生理食塩水又は滅菌水で洗浄後、同滅菌生理食塩水又は滅菌水中で、N-メチル-N’-ニトロ-N-ニトロソグアニジン(NTG)50〜500μg/ml、30〜37℃、30〜60分処理して変異株を得る。変異誘発には、NTGの他に、紫外線やエチルメタンスルホン酸(EMS)、さらにはフルオロウラシル(5-FU)などの抗癌剤を用いることもでき、一般に知られる手段を適用することができる。得られた菌株がLactobacillus amylovorusであるか否かは、16S rRNA遺伝子塩基配列の相同性を調べる、基準株とのDNA-DNAハイブリダイゼーションによりDNA-DNA相同性を調べる、糖の資化性を調べるなどにより確認することができる。[実施例9]細胞壁溶解酵素による破壊 卵白リゾチーム(ロシュ他)、ムタノリシン(和光純薬)、リゾスタフィン(和光純薬)、ラビアーゼ(生化学工業)、キチナーゼ、スネイルエンザイム(シグマ)、ベータグルクロニダーゼ(シグマ)、N-アセチルムラミダーゼ(和光純薬)等、既存の溶菌酵素を用いて破壊を達成することができるが、食品素材としては、食品添加物グレードの溶菌酵素を用いる。卵白リゾチーム(エーザイフードケミカルなど)、キチナーゼ(洛東化成工業)、キトサナーゼ(エイチビイアイなど)等が望ましい。 菌体破壊は0.1M燐酸緩衝液(pH6〜7)に菌体を1〜10%の範囲で懸濁し、溶菌酵素を0.1〜1%の範囲において至適量を加える。37℃にて1〜24時間保持後、溶菌状態は超深度形状測定顕微鏡(KEYENCE社製、VK-8500)を用いて確認する。100℃達温殺菌後、無菌的に凍結乾燥して破壊菌粉末を得る。[実施例10]界面活性剤による破壊 グリセリン脂肪酸エステル、ダイズレシチン及び卵黄レシチンなど食品添加物としての界面活性剤を用いた菌体破壊処理も可能である。菌体懸濁液10容に対して50%界面活性剤1容を加え、20℃、3日間インキュベートする。溶菌状態は超深度形状測定顕微鏡(KEYENCE社製、VK-8500)を用いて経時的に確認することで、より望ましい菌体破砕液を得ることができる。[実施例11]自己溶解処理による破壊 実施例1に記載の方法で、乳酸菌を培養・集菌・洗浄・集菌後、培養スケールの1/10〜1/20量の脱イオン水に懸濁する。あるいは、実施例1に記載の方法で乳酸菌を培養・集菌・洗浄・集菌後、適量の水に再懸濁し、殺菌処理をせずに凍結乾燥処理を行い、得られた乳酸菌乾燥粉末1kgあたり20Lの脱イオン水に懸濁する。これらの乳酸菌懸濁液を50℃で1〜3日間静置し自己融解させる。この自己融解物を実施例1に記載の方法で殺菌処理し、凍結乾燥して自己融解乳酸菌凍結乾燥粉末を得る。確認は超深度形状測定顕微鏡(KEYENCE社製、VK-8500)を用いて継続的に行う。 本明細書中で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願は、その全文を参考として本明細書中に取り入れるものとする。 本発明により、脂質代謝改善剤及びその用途が提供される。本発明の脂質代謝改善剤は、脂質代謝を正常化することができるため、様々な疾患又は障害の予防又は治療に使用することができる。従って、本発明は、医薬品、飲食品、畜産などの分野に有用である。 受託番号FERM BP-11255(Lactobacillus amylovorus CP1563株、2010年5月25日付寄託) 受託番号FERM BP-11256(Lactobacillus gasseri CP3238株、2010年5月25日付寄託) 受託番号FERM BP-11379(Lactobacillus amylovorus CP1562株、2011年4月22日付寄託) 乳酸菌の菌体破壊物を有効成分として含有する脂質代謝改善剤であって、該菌体破壊物における菌体の平均長径が破壊前の0〜70%である、脂質代謝改善剤。 乳酸菌の菌体破壊物を有効成分として含有する脂質代謝改善剤であって、該菌体破壊物における菌体の平均長径が0〜2μmである、脂質代謝改善剤。 乳酸菌が、ラクトバチルス属又はビフィドバクテリウム属の乳酸菌である、請求項1又は2に記載の脂質代謝改善剤。 乳酸菌が、ラクトバチルス・アミロボラスCP1563株、ラクトバチルス・アミロボラスCP1562株、ラクトバチルス・ガセリCP3238株及びこれらの変異株の群から選択される1種又は2種以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の脂質代謝改善剤。 総コレステロール、LDL−コレステロール、中性脂肪、動脈硬化指数及び内臓脂肪からなる群より選択される少なくとも1つを低減させる作用を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の脂質代謝改善剤。 HDL−コレステロール及びアディポネクチンからなる群より選択される少なくとも1つを上昇させる作用を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の脂質代謝改善剤。 動脈硬化、高脂血症、脂肪肝、肥満症、メタボリックシンドローム、糖尿病、心筋梗塞又は脳梗塞の予防又は改善に使用するための、請求項1〜6のいずれか1項に記載の脂質代謝改善剤。 乳酸菌の菌体破壊物における菌体の平均長径を破壊前の0〜70%とする、乳酸菌を破壊する工程を含むことを特徴とする、乳酸菌の脂質代謝改善作用を増強する方法。 乳酸菌の菌体破壊物における菌体の平均長径を0〜2μmとする、乳酸菌を破壊する工程を含むことを特徴とする、乳酸菌の脂質代謝改善作用を増強する方法。 改善作用が、総コレステロール、LDL−コレステロール、中性脂肪、動脈硬化指数及び内臓脂肪からなる群より選択される少なくとも1つを低減させる作用である、請求項8又は9に記載の方法。 改善作用が、HDL−コレステロール及びアディポネクチンからなる群より選択される少なくとも1つを上昇させる作用である、請求項8〜10のいずれか1項に記載の方法。 改善作用が、動脈硬化、高脂血症、脂肪肝、肥満症、メタボリックシンドローム、糖尿病、心筋梗塞又は脳梗塞の改善である、請求項8〜11のいずれか1項に記載の方法。 請求項8〜11のいずれか1項に記載の乳酸菌の脂質代謝改善作用を増強する方法により、動脈硬化、高脂血症、脂肪肝、肥満症、メタボリックシンドローム、糖尿病、心筋梗塞又は脳梗塞に対する乳酸菌の予防又は改善作用を増強する方法。 乳酸菌の菌体破壊物を有効成分として含有し、総コレステロール、LDL−コレステロール、中性脂肪、動脈硬化指数及び内臓脂肪からなる群より選択される少なくとも1つを低減させるため、並びに/あるいはHDL−コレステロール及びアディポネクチンからなる群より選択される少なくとも1つを上昇させるための脂質代謝改善剤であって、該菌体破壊物における菌体の平均長径が破壊前の0〜70%であるか又は菌体の平均長径が0〜2μmである、脂質代謝改善剤。 動脈硬化、高脂血症、脂肪肝、糖尿病、心筋梗塞又は脳梗塞の予防又は改善に使用するための、請求項14に記載の脂質代謝改善剤。