タイトル: | 特許公報(B2)_コーティング粒子及びコーティング粒子の製造方法 |
出願番号: | 2012519380 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | A61K 47/38,A61K 9/14,A61K 47/34,A61K 47/12,A61K 47/10,A61K 47/14,A61K 47/44,A61K 47/02 |
市川 秀喜 福森 義信 阿部 悟 増江 佑介 JP 5572706 特許公報(B2) 20140704 2012519380 20110606 コーティング粒子及びコーティング粒子の製造方法 学校法人神戸学院 507307374 日本曹達株式会社 000004307 濱田 百合子 100090343 古館 久丹子 100129160 山崎 智子 100177460 市川 利光 100108589 市川 秀喜 福森 義信 阿部 悟 増江 佑介 JP 2010130663 20100608 20140813 A61K 47/38 20060101AFI20140724BHJP A61K 9/14 20060101ALI20140724BHJP A61K 47/34 20060101ALI20140724BHJP A61K 47/12 20060101ALI20140724BHJP A61K 47/10 20060101ALI20140724BHJP A61K 47/14 20060101ALI20140724BHJP A61K 47/44 20060101ALI20140724BHJP A61K 47/02 20060101ALI20140724BHJP JPA61K47/38A61K9/14A61K47/34A61K47/12A61K47/10A61K47/14A61K47/44A61K47/02 A61K 9/00− 9/72 A61K 47/00−47/48 CAplus(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII) 特開2009−114148(JP,A) 特開平10−225501(JP,A) 青柳孝一郎 他,NISSO-HPCのコーティングへの応用,製剤と粒子設計シンポジウム講演要旨集,2005年10月21日,Vol.22,p.85-88,特に、[2]、[3]等を参照 谷川泰士 他,微粒子表面への感温性ポリマー含有膜の構築による温度応答性薬物放出制御,粉体に関する討論会講演論文集,2006年,Vol.44,p.178-181,特に、2−2.等を参照 薗田良一 他,デンプンを用いた乾式コーティング法による難水溶性薬物の溶解性改善,粉体工学会誌,2009年,Vol.46,p.338-346,特に、第344頁3.3.1等を参照 藤元彬宏 他,粉体混合による乾式コーティング−アセトアミノフェンへのEudragit RSPOのコーティング−,第129年会日本薬学会KYOTO2009要旨集4,2009年 3月 5日,p.153 7 JP2011062950 20110606 WO2011155451 20111215 12 20120828 高橋 樹理 本発明は、コーティング粒子及びコーティング粒子の製造方法に関する。具体的には、胃溶性固形製剤、腸溶性固形製剤、徐放性固形製剤、苦味抑制性固形製剤などに好適なコーティング粒子及びコーティング粒子の製造方法に関する。 薬効成分には、経口服用時に苦味を呈する化合物が多い。このような薬効成分の苦味を軽減又は矯味して、患者のコンプライアンスを高めるために、薬効成分を含有する核粒子表面に甘味成分や香味成分などをコーティングする方法が提案されている(特許文献3など参照)。また、経口服用された薬効成分が、胃、腸などの特定部位で溶解されるようにするために、薬効成分を含有する核粒子表面を胃溶性材料や腸溶性材料などでコーティングする方法などが知られている。また、植物などへの薬害を低減し、殺虫、殺菌、除草などの効力を長期間持続させるために、農薬活性成分の放出量を核粒子のコーティングによって制御することが知られている。 核粒子表面に種々の成分をコーティングする方法としては、スプレーコーティング法、ディップコーティング法などの湿式法と、回転式混合法や二軸混練法などの乾式法とが知られている(特許文献1、特許文献2、非特許文献1参照)。日本国特開2007−105705号公報日本国特開平9−132523号公報日本国特開2008−106048号公報福森ら「二軸連続混練機を用いた乾式機能性粒子設計」クリモト技報No.56 湿式法では、コーティング基剤の溶媒が水である場合には噴霧後の蒸発に多くのエネルギーが必要となることや、核粒子に水によって劣化する成分が含まれている場合にはこれが劣化するため、そのような成分の使用が制限されるといった問題がある。また、コーティング基剤の溶媒に有機溶媒を使用する場合には、有機溶媒の除去を完全に行わないと有機溶媒が残存することがある。 一方、乾式法は、コーティング率が低くなる場合があり、またコーティング層と核粒子との密着性が低く、コーティング層が剥がれやすい場合がある。 そこで、本発明は、上記のような不具合を減らした、胃溶性固形製剤、腸溶性固形製剤、徐放性固形製剤、苦味抑制性固形製剤などに好適なコーティング粒子及びコーティング粒子の製造方法を提供することを課題とするものである。 本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、核粒子に、ヒドロキシアルキルセルロースおよびバインダーを乾式コーティングすることによって、胃溶性固形製剤、腸溶性固形製剤、徐放性固形製剤、苦味抑制性固形製剤などに好適なコーティング粒子が得られることを見出した。本発明は、この知見に基づいてさらに検討することによって完成するに至ったものである。 即ち、本発明は以下の態様を含む。〈1〉核粒子に、コーティング層が被覆されてなるコーティング粒子であって、該コーティング層がヒドロキシアルキルセルロース、バインダーならびに溶出制御基剤および/またはシリカを含む層であり、該ヒドロキシアルキルセルロースの体積平均粒子径が、0.1〜20μmである、コーティング粒子。〈2〉前記バインダーが、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコール高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸、高級アルコール、高級アルコールエステルおよび天然ワックスからなる群から選ばれる少なくとも1種である、前記〈1〉に記載のコーティング粒子。〈3〉核粒子に、ヒドロキシアルキルセルロースおよびバインダーを乾式コーティングする第1工程を含む、コーティング粒子の製法。〈4〉第1工程で得られた粒子に溶出制御基剤およびバインダーを乾式コーティングする第2工程を含む、前記〈3〉に記載のコーティング粒子の製法。〈5〉第1工程で得られた粒子をシリカでオーバーコーティングする第3工程を含む、前記〈3〉に記載のコーティング粒子の製法。〈6〉第1工程で得られた粒子に溶出制御基剤およびバインダーを乾式コーティングする第2工程と、第2工程で得られた粒子をシリカでオーバーコーティングする第3工程を含む、前記〈3〉または〈4〉に記載のコーティング粒子の製法。〈7〉前記〈3〉〜〈6〉のいずれか一つに記載のコーティング粒子の製法により製造されたコーティング粒子。 本発明のコーティング粒子は、コーティング率が高く、薬剤の溶出速度の調整が容易で、且つ流動性に優れる。本発明のコーティング粒子は、胃溶性固形製剤、腸溶性固形製剤、徐放性固形製剤、苦味抑制性固形製剤などに好適である。図1は、アセトアミノフェン原末および実施例1〜3で得られたコーティング粒子についての溶出試験の結果を示す図である。 本発明において“コーティング粒子”とは、“coated particle(s)”を意味する。 本発明のコーティング粒子は、核粒子に、コーティング層が被覆されてなるものである。該コーティング層は、ヒドロキシアルキルセルロースおよびバインダーを含む層である。 本発明に用いられる核粒子は、有効成分(例えば医薬や農薬であれば薬物)そのものからなる粒子であってもよいし、担体と薬物の混合物からなる粒子であってもよいし、担体表面を薬物で覆った粒子であってもよいし、薬物を一切含まない担体からなる粒子であってもよい。核粒子は操作中に型崩れを起こすものでなければ特に制限なく使用できる。核粒子は、その体積平均粒子径によって特に限定されないが、30〜1000μmのものが好ましく、50〜500μmのものがより好ましい。 核粒子としては、例えば、丸剤、顆粒剤、散剤、薬物の単結晶、薬物粉末の凝集物、乳糖粒子、ヒドロキシアパタイト、炭酸カルシウム粒子;製剤分野でコーティング核粒子として市販されている結晶セルロース顆粒、シュクロース球形顆粒、マンニトール球形顆粒などが使用できる。 該核粒子は、速放性製剤および放出持続型製剤(徐放性製剤)などの放出制御型製剤であってもよい。核粒子は、慣用の添加剤を含有していてもよい。該添加剤としては、例えば、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、着色剤、pH調整剤、pH緩衝剤、界面活性剤、徐放化剤、安定化剤、酸味料、香料、流動化剤、清涼化剤、甘味料、旨み成分、甘味増強剤などが挙げられる。これら添加剤は、製剤分野において慣用の量が用いられる。 医薬の有効成分である薬物としては、例えば、鎮痛剤、解熱鎮痛剤、頭痛治療剤、鎮咳剤、去痰剤、鎮静剤、鎮けい剤、抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤、抗プラスミン剤、気管支拡張剤、喘息治療剤、糖尿病治療剤、肝疾患治療剤、潰瘍治療剤、胃炎治療剤、健胃消化剤、消化管運動賦活剤、高血圧治療剤、狭心症治療剤、血圧降下剤、低血圧治療剤、高脂血症治療剤、ホルモン剤、抗生物質、抗ウイルス剤、サルファ剤、抗炎症剤、精神神経用剤、眼圧降下剤、制吐剤、止瀉薬、痛風治療剤、不整脈治療剤、血管収縮剤、消化剤、睡眠又は催眠導入(誘導)剤、交感神経遮断剤、貧血治療剤、抗てんかん剤、抗めまい剤、平行傷害治療剤、結核治療剤、ビタミン欠乏症治療剤、痴呆治療剤、尿失禁治療剤、鎮うん剤、口内殺菌剤、寄生虫駆除剤、ビタミン剤、アミノ酸類、ミネラル類などが挙げられる。より具体的に、例えば、中枢神経系用薬(アセトアミノフェン、アスピリン、インドメタシン、イブプロフェン、ナプロキセン、ジクロフェナックナトリウム、塩酸メクロフェノキサート、クロルプロマジン、トルメチンナトリウム、塩酸ミルナシプラン、フェノバルビタールなど)、末梢神経系用薬(エトミドリン、塩酸トルペリゾン、臭化エチルピペタナート、臭化メチルベナクチジウム、フロプロピオンなど)、止血薬(カルバゾクロムスルホン酸ナトリウム、硫酸プロタミンなど)、循環器官用薬(アミノフィリン、塩酸エチレフリン、塩酸ジルチアゼム、ジギトキシン、カプトプリルなど)、呼吸器官用薬(塩酸エフェドリン、塩酸クロルプレナリン、クエン酸オキセラジン、クロペラスチン、クロモグリク酸ナトリウムなど)、消化器官用薬(塩化ベルベリン、塩酸ロペラミド、シメチジン、塩酸ラニチジン、ファモチジンなど)、冠血管拡張薬(ニフェジピン、ニカルジピン、ベラパミルなど)、ビタミン剤(アスコルビン酸、塩酸チアミン、パントテン酸カルシウム、酪酸リボフラビンなど)、代謝性製剤(メシル酸カモスタット、ミゾリビン、塩化リゾチームなど)、アレルギー用薬(塩酸シプロヘプタジン、塩酸ジフェンヒドラミン、酒石酸アリメマジン、トシル酸スプラタスト、マレイン酸ジフェンヒドラミンなど)、化学療法剤(アシクロビル、エノキサシン、オフロキサシン、ピペミド酸三水和物、レボフロキサシンなど)、抗生物質(エリスロマイシン、塩酸セフカペンピボキシル、セフテラムピボキシル、セフポドキシムプロキセチル、セファクロル、セファレキシン、クラリスロマイシン、ロキタマイシン)などが挙げられる。 農薬の有効成分である薬物としては、例えば、抗菌剤、抗ウイルス剤、殺菌剤、殺ダニ剤、殺虫剤、殺線虫剤、殺鼠剤、除草剤、植物生長調節剤、肥料、薬害軽減剤などが挙げられる。 医薬や農薬の有効成分である上記化合物のうち、塩形成部位を有する化合物では、その生理的又は薬学的に許容可能な塩(特に、医薬的または農薬的に許容可能な塩など)なども含まれる。 賦形剤としては、例えば、トウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、コムギデンプン、コメデンプン、部分アルファー化デンプン、アルファー化デンプン、有孔デンプンなどのデンプン類;乳糖、果糖、ブドウ糖、D−マンニトール、ソルビトール、トレハロースなどの糖・糖アルコール類;無水リン酸カルシウム;結晶セルロース;沈降炭酸カルシウム;ケイ酸カルシウムなどが挙げられる。 崩壊剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチなどが挙げられる。 結合剤としては、例えば、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム末などが挙げられる。 滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、蔗糖脂肪酸エステル、フマル酸ステアリルナトリウムなどが挙げられる。 着色剤としては、例えば、食用黄色5号、食用赤色2号、食用青色2号などの食用色素、食用レーキ色素、三二酸化鉄などが挙げられる。 pH調整剤としては、クエン酸塩、リン酸塩、炭酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、酢酸塩、アミノ酸塩などが挙げられる。 pH緩衝剤としては、クエン酸−クエン酸ナトリウム緩衝剤などが挙げられる。 界面活性剤として、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールなどが挙げられる。 安定化剤としては、例えば、トコフェロール、エデト酸四ナトリウム、ニコチン酸アミド、シクロデキストリン類などが挙げられる。 酸味料としては、例えば、アスコルビン酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸などが挙げられる。 香料としては、例えば、メントール、ハッカ油、レモン油、バニリンなどが挙げられる。 流動化剤としては、例えば、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素などが挙げられる。 清涼化剤としては、カンフル及びボルネオールなどのテルペン系化合物(モノテルペンアルコールなど)などの他、この前記テルペン系化合物を含む精油、エッセンス又はパウダー;ペパーミント、スペアミント、クールミントなどの精油、エッセンス又は粉末(パウダー);前記の精油又はエッセンスを粉末状担体(例えば、デキストリンなど)に吸着させたもの、精油又はエッセンスを賦形材(アラビアガムなど)及び液体基剤(水、アルコールなど)と混合し、粉粒化したものなどが挙げられる。 甘味料としては、非糖質系甘味料、糖アルコール及び糖類などが挙げられる。非糖質系甘味料としては、合成甘味料及び天然甘味料のいずれも使用できる。 旨み成分としては、アミノ酸系旨み成分(アミノ酸又はその塩、例えば、グルタミン酸、グルタミン酸ナトリウム、グルタミン酸カリウム、グルタミン酸塩酸塩、グアニル酸ナトリウム、イノシン酸、イノシン酸ナトリウム、アルギニン−グルタミン酸塩、アスパラギン酸、アスパラギン酸ナトリウム、グリシン、アラニンなど)、ペプチド系旨み成分(L−グルタミル−L−グルタミン酸、L−グルタミル−L−セリンなどのジペプチド;トリ−L−グルタミン酸、L−グルタミル−L−グリシル−L−セリンなどのトリペプチドなど)、カルボン酸系旨み成分(コハク酸ナトリウムなどのカルボン酸塩など)などが挙げられる。 さらに鹹味(塩味)を有する甘味増強剤(又は鹹味剤)を含有してもよい。このような甘味増強剤としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸塩(リン酸水素カリウム、リン酸水素ナトリウムなど)などが例示できる。甘味増強剤(又は鹹味剤)は中性塩、例えば、ナトリウムイオン及び/又は塩素イオン(塩化物イオン)として解離する塩である場合が多い。 核粒子に含有させることができる成分としては、その他に、抗酸化剤又は酸化防止剤、分散剤、懸濁剤、溶解補助剤、増粘剤(カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、ゼラチンなどの水溶性高分子;カルボキシメチルセルロースなどのセルロースエーテル類など)、防腐剤又は保存剤(メチルパラベン、ブチルパラベンなどのパラベン類など)、殺菌剤又は抗菌剤(安息香酸ナトリウムなどの安息香酸類など)、帯電防止剤、矯味剤又はマスキング剤、矯臭剤、消泡剤、等張化剤、無痛化剤などが挙げられる。これらの添加剤は1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。核粒子の製法は特に制限されず、一般的な造粒方法を採用することができる。 コーティング層に用いられるヒドロキシアルキルセルロースは、例えば、原料のセルロースに、水酸化ナトリウムを作用させてアルカリセルロースとし、次いでアルカリセルロースとアルキレンオキサイドとを置換反応させることによって得られる。置換反応の後、反応液に、酢酸や塩酸などの酸を加えて水酸化ナトリウムを中和し、次いで精製することができる。この置換反応によってセルロースのグルコース環単位中の−OH基の一部または全部が−O−(R−O)m−H基に置換される。ここでRは2価のアルキル基を表す。mは1以上の自然数である。なお、Rとしては、エチレン基またはプロピレン基が好ましく、プロピレン基が特に好ましい。 ヒドロキシアルキルセルロースは、ヒドロキシアルキルセルロースの全重量に対してヒドロキシアルキル基(−(R−O)m−H)の含有量が40〜80重量%の範囲にあることが好ましく、53〜78重量%の範囲にあることがより好ましい。なお、ヒドロキシアルキル基の含有量は、USP24(米国薬局方)による方法などによって求めることができる。 置換反応に用いられるアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどが挙げられる。これらのうち、本発明ではプロピレンオキサイドが好ましく用いられる。プロピレンオキサイドを用いて置換反応させると、ヒドロキシプロピルセルロースが得られる。 ヒドロキシアルキルセルロースは、2%水溶液の20℃における粘度が、2.0〜4000mPa・sの範囲にあることが好ましく、2.0〜2000mPa・sの範囲にあることがより好ましく、2.0〜1000mPa・sの範囲にあることがさらに好ましい。粘度は、例えばB型粘度計を用いて測定することができる。粘度はヒドロキシアルキルセルロースの重合度を表す指標である。粘度が高くなると、得られる固形製剤の引張強度がわずかに高くなる傾向がある。また、粘度が低くなると、得られる固形製剤の崩壊時間が短くなる傾向がある。 本発明に用いられるヒドロキシアルキルセルロースは、その体積平均粒子径が、好ましくは0.1〜20μm、より好ましくは0.1〜10μmである。ヒドロキシアルキルセルロース粒子の形状は、特に制限されないが、不定形若しくは繊維形状が好ましい。なお、本発明において、体積平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(たとえば、LDSA−2400;東日本コンピュータ社製)を用いて、空気圧3.5kgf/cm2、焦点距離100mmの条件で測定して得られた粒度分布における積算値50%の粒度D50の値である。また、粒子形状は走査型電子顕微鏡(たとえば、JSM−7330;日本電子社製)で観察することができる。 コーティング層におけるヒドロキシアルキルセルロースの含有量は、特に制限されないが、コーティング粒子中に、5〜70重量%であることが好ましく、10〜60重量%であることがより好ましい。 コーティング層に用いられるバインダーは、核粒子とコーティング層とを結着させる機能を有するものであれば特に制限されない。 バインダーとしては、例えば、有機脂肪酸(ラウリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸など)、有機脂肪酸のエステル誘導体、高級アルコール(セチルアルコール、ステアリルアルコールなど)、グリセリン脂肪酸エステル(グリセリルモノステアレートなど)、ポリエチレングリコール類(マクロゴール6000など)、天然ワックス(カルナバワックス、ライスワックスなど)などのワックス様物質などが挙げられる。これらのうち、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコール高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸、高級アルコール、高級アルコールエステルおよび天然ワックスからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ポリエチレングリコールが特に好ましい。バインダーは親水性のものが好ましい。また、融点が、40〜70℃のものが好ましく、50〜65℃のものが特に好ましい。 バインダーは、その体積平均粒子径が1〜100μmのものが好ましく、1〜50μmのものがより好ましく、1〜20μmのものがよりいっそう好ましい。 コーティング層におけるバインダーの含有量は、特に制限されないが、コーティング粒子中に、0.1〜20重量%であることが好ましく、0.5〜15重量%であることがより好ましい。 コーティング層における、ヒドロキシアルキルセルロースとバインダーとの重量比(ヒドロキシアルキルセルロース/バインダー)は特に制限されないが、好ましくは、99/1〜50/50、より好ましくは95/5〜70/30である。 コーティング層には、ヒドロキシアルキルセルロースおよびバインダー以外に、他のコーティング基剤が含まれていてもよい。該コーティング基剤は、その体積平均粒子径が、好ましくは0.1〜100μm、より好ましくは0.1〜50μmである。 他のコーティング基剤としては、高分子基剤、無機粉粒、薬物などの有効成分、などが挙げられる。また、前記において、核粒子に含有させることができるものとして例示した添加剤を他のコーティング基剤として用いることができる。 高分子基剤としては、合成高分子や天然高分子を挙げることができる。具体的には、アクリル系高分子、生体内分解性高分子、ポリビニル系高分子などが挙げられる。 アクリル系高分子としては、例えば、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーE、メタアクリル酸−メチルメタアクリレートコポリマーなどが挙げられる。生体内分解性高分子としては、例えば、L−乳酸、D−乳酸、DL−乳酸、グリコール酸、ε−カプロラクトン、N−メチルピロリドンなどからなるホモポリマー、コポリマー又はこれらポリマーの混合物、ポリカプロラクタム、キチン、キトサンなどが挙げられる。ポリビニル系高分子としては、例えば、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、PVAコポリマーなどが挙げられる。 高分子基剤としては、腸溶性コーティング基剤、胃溶性コーティング基剤、水不溶性コーティング基剤、徐放性コーティング基剤、水溶性コーティング基剤などの溶出制御基剤を好ましく用いることができる。その中でも水不溶性コーティング基剤が好ましいものとして挙げられる。これら高分子基剤は1種単独で若しくは2種以上を組み合わせて用いることができる。例えば、水不溶性コーティング基剤と腸溶性コーティング基剤との組合せ、および水不溶性コーティング基剤と水溶性コーティング基剤の組合せが好ましいものとして挙げられる。 腸溶性コーティング基剤としては、実質的に酸性液下で不溶であり、アルカリ性液下で可溶の高分子が使用できる。例えば、メタアクリル酸コポリマーLD(Eudragit L30D55;エボニック社製)、メタアクリル酸コポリマーL(Eudragit L100;エボニック社製)、メタアクリル酸コポリマーS(Eudragit S100;エボニック社製)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(AQOAT)、カルボシキメチルエチルセルロース(CMEC)、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP)、セルロースアセテートトリメリテート(CAT)、アクアテリック(CAP水分散)、ゼインなどが挙げられる。 水不溶性コーティング基剤としては、水にほとんど溶解しないが、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトンなどの有機溶媒に溶解または均一に分散するものが使用できる。例えば、エチルセルロース;シェラックなどの水不溶性天然樹脂;アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS(Eudragit RS;エボニック社製)、メタアクリル酸コポリマーRSPO(Eudragit RSPO;エボニック社製)などの水不溶性アクリル系高分子などが挙げられる。これらのうち、水不溶性アクリル系高分子が好ましい。 水溶性コーティング基剤としては、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。 無機粉粒としては、タルク、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、軟質無水ケイ酸(シリカ)、沈降炭酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、酸化チタンなどが挙げられる。これらのうち、シリカが好ましい。無機粉粒を配合することによって固形製剤の流動性が高くなる。 本発明のコーティング粒子は、公知のコーティング方法を用いて、核粒子にコーティング層を被覆させることによって得られる。 コーティング方法としては、造粒ハンドブック(日本粉体工業技術協会編、オーム社)、経口投与製剤の処方設計(京都大学大学院薬学研究科教授 橋田充編、薬業時報社)、粒子設計工学(粉体工学会編、産業図書)、粒子設計と製剤技術(粉体工学会製剤と粒子設計部会 部会長 川島嘉明編、薬業時報社)のような刊行物に記載されている方法が挙げられるが、本発明では乾式コーティング法が好ましい。 乾式コーティング法は、ヒドロキシアルキルセルロースおよびバインダーならびに溶出制御基剤やシリカなどの他のコーティング基剤(以下、これらを「コーティング層用粉末」ということがある。)と、核粒子とを混ぜ合わせ、それらを撹拌することによって、核粒子の表面にコーティング層用粉末を付着被覆させる方法である。コーティング層用粉末が核粒子に付着被覆されやすくするために、加熱しながら撹拌することが好ましい。撹拌時の温度は、バインダーの融点近傍、好ましくは該融点より0.5〜10℃低い温度、より好ましくは該融点より0.5〜7℃低い温度である。バインダーがポリエチレングリコールである場合には、撹拌時の温度は、好ましくは40〜120℃であり、より好ましくは45〜100℃である。温度が高すぎると、核粒子同士やコーティング層用粉末同士などが融着して凝集物を生じやすくなる。温度が低すぎるとコーティング率が低下傾向になる。なお、撹拌時の温度は、撹拌槽の温度である。 乾式コーティングに用いられる攪拌機としては、例えば、ヘンシェルミキサー(商品名、三井鉱山社製)、スーパーミキサー(商品名、川田製作所社製)、Qミキサー(商品名、三井鉱山社製)、メカノフュージョンシステム(商品名、細川ミクロン社製)、メカノミル(商品名、岡田精工社製)、二軸混練機、ボルテックスミキサー、振動ミル、V型混合機などが挙げられる。また、少量処理においては、ロータリーエヴァポレーターを用いることができる。 本発明では、核粒子に、ヒドロキシアルキルセルロースおよびバインダーならびに溶出制御基剤やシリカなどの他のコーティング基剤を一括して、混ぜ合わせ、撹拌することで、乾式コーティングすることができる。また、本発明では、核粒子に、ヒドロキシアルキルセルロースおよびバインダーを乾式コーティングし(第1工程)、次いで溶出制御基剤およびバインダーを乾式コーティングする(第2の工程)ことによって得られるコーティング粒子が好ましく、核粒子に、ヒドロキシアルキルセルロースおよびバインダーを乾式コーティングし(第1の工程)、次いでシリカでオーバーコーティングする(第3の工程)ことによって得られるコーティング粒子がより好ましく、核粒子に、ヒドロキシアルキルセルロースおよびバインダーを乾式コーティングし(第1の工程)、溶出制御基剤およびバインダーを乾式コーティングし(第2の工程)、次いでシリカでオーバーコーティングする(第3の工程)ことによって得られるコーティング粒子がさらに好ましい。このような乾式コーティングで得られるコーティング粒子は、流動性および徐放性が特に優れている。 また、コーティング層用粉末を1回の操作で乾式コーティングしてもよいし、コーティング層用粉末を複数回に分けて乾式コーティングしてもよい。 本発明のコーティング粒子としての固形製剤では、コーティング後、必要とあれば、フィルムコーティング、糖衣、薄層糖衣、シュガーレス糖衣、シュガーレス薄層糖衣などの別のコーティングを施すこともできる。また、コーティング顆粒、細粒、薬物粒子が得られる場合は、他の賦形剤と共に圧縮し、錠剤とすることもできる。または、カプセルに充填し、カプセル剤とすることもできる。更には、そのまま、顆粒剤、細粒剤として分包し、服用することもできる。あるいは、用時溶解型の製剤、口腔内速崩壊錠、徐放性製剤、フィルムシート型製剤、グミ製剤、ゼリー製剤とすることもできる。 次に、実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。 実施例1 容量50mlの三角フラスコに、粒子径の範囲が75〜106μmのアセトアミノフェン原末2.0gを入れた。該フラスコをロータリーエヴァポレーターに装着した。 それに、体積平均粒子径6.27μmのヒドロキシプロピルセルロース(商品名:HPC−H、日本曹達社製)0.1gと、体積平均粒子径11.23μmのポリエチレングリコール(PEG6000;融点55〜60℃)0.01gとを添加し、室温で1分間混合させた。次いで、55℃の恒温液槽に前記フラスコを浸して、10分間、77rpmで回転させた。この操作を15回繰返した。 次に、体積平均粒子径8.87μmのメタアクリル酸コポリマー(水不溶性コーティング基剤:Eudragit RSPO;エボニック社製)0.1gと、体積平均粒子径11.23μmのポリエチレングリコール(PEG6000;融点55〜60℃)0.01gとを添加し、室温で1分間混合させた。次いで、55℃の恒温液槽に前記フラスコを浸して、10分間、77rpmで回転させた。この操作を5回繰返した。 フラスコから処理された粒子を取り出した。53μm篩を用いてエアジェットシーブ(AJS)法で1分間分級した。収率89.57%でコーティング率80.1%のコーティング粒子が得られた。 なお、コーティング率は、分級後のコーティング粒子の重量からアセトアミノフェンの仕込み重量を差し引き、それをコーティング処理に使用したヒドロキシプロピルセルロース、ポリエチレングリコールおよびメタアクリル酸コポリマーの合計重量で除算することで、求められた値である。 実施例2 容量50mlの三角フラスコに、粒子径の範囲が75〜106μmのアセトアミノフェン原末2.0gを入れた。該フラスコをロータリーエヴァポレーターに装着した。 それに、体積平均粒子径6.27μmのヒドロキシプロピルセルロース(商品名:HPC−H、日本曹達社製)0.1gと、体積平均粒子径11.23μmのポリエチレングリコール(PEG6000;融点55〜60℃)0.01gとを添加し、室温で1分間混合させた。次いで、55℃の恒温液槽に前記フラスコを浸して、10分間、77rpmで回転させた。この操作を10回繰返した。 次に、体積平均粒子径8.87μmのメタアクリル酸コポリマー(Eudragit RSPO;エボニック社製)0.1gと、体積平均粒子径11.23μmのポリエチレングリコール(PEG6000;融点55〜60℃)0.01gとを添加し、室温で1分間混合させた。次いで、55℃の恒温液槽に前記フラスコを浸して、10分間、77rpmで回転させた。この操作を10回繰返した。 フラスコから処理された粒子を取り出した。53μm篩を用いてエアジェットシーブ(AJS)法で1分間分級した。収率89.2%でコーティング率79.39%のコーティング粒子が得られた。 なお、コーティング率は、分級後のコーティング粒子の重量からアセトアミノフェンの仕込み重量を差し引き、それをコーティング処理に使用したヒドロキシプロピルセルロース、ポリエチレングリコールおよびメタアクリル酸コポリマーの合計重量で除算することで、求められた値である。 実施例3 容量50mlの三角フラスコに、粒子径の範囲が75〜106μmのアセトアミノフェン原末2.0gを入れた。該フラスコをロータリーエヴァポレーターに装着した。 それに、体積平均粒子径6.27μmのヒドロキシプロピルセルロース(商品名:HPC−H、日本曹達社製)0.1gと、体積平均粒子径11.23μmのポリエチレングリコール(PEG6000;融点55〜60℃)0.01gとを添加し、室温で1分間混合させた。次いで、55℃の恒温液槽に前記フラスコを浸して、10分間、77rpmで回転させた。この操作を20回繰返した。 フラスコから処理された粒子を取り出した。53μm篩を用いてエアジェットシーブ(AJS)法で1分間分級した。収率84.38%でコーティング率70.31%のコーティング粒子が得られた。 なお、コーティング率は、分級後のコーティング粒子の重量からアセトアミノフェンの仕込み重量を差し引き、それをコーティング処理に使用したヒドロキシプロピルセルロース、およびポリエチレングリコールの合計重量で除算することで、求められた値である。 実施例1〜3で得られたコーティング粒子、およびアセトアミノフェン原末について、溶出試験を行った。 溶出試験は、JP XV パドル法に従って、パドル回転数100rpm、900ml純水、37℃の条件で実施した。アセトアミノフェンの溶出濃度は吸光度(285nm)から求めた。結果を図1に示す。 図1に示すように、アセトアミノフェン原末は0.5分経過後に溶出濃度90%に達し、1分経過後には溶出濃度100%に達した。実施例1および2で得られたコーティング粒子は、約1分経過後でも溶出濃度が50%以下で、5分経過後に溶出濃度が約95%に達した。実施例3で得られたコーティング粒子は、約1分経過後に溶出濃度が25%以下で、5分経過後に溶出濃度が約70%に達し、30分経過後に溶出濃度が約90%であった。 また、アセトアミノフェン原末をヒドロキシアルキルセルロース溶液でコーティングした固形製剤は、粘着性があり、流動性が悪かった。これに対して、実施例1〜3で得られたコーティング粒子は、いずれも、流動性に優れていた。 本発明を詳細に、また特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく、様々な修正や変更を加えることができることは、当業者にとって明らかである。 本出願は、2010年6月8日出願の日本特許出願2010−130663に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。 核粒子に、コーティング層が被覆されてなるコーティング粒子であって、 該コーティング層がヒドロキシアルキルセルロース、バインダーならびに溶出制御基剤および/またはシリカを含む層であり、 該ヒドロキシアルキルセルロースの体積平均粒子径が、0.1〜20μmである、コーティング粒子。 前記バインダーが、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコール高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸、高級アルコール、高級アルコールエステルおよび天然ワックスからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載のコーティング粒子。 核粒子に、ヒドロキシアルキルセルロースおよびバインダーを乾式コーティングする第1の工程を含む、コーティング粒子の製法。 第1工程で得られた粒子に溶出制御基剤およびバインダーを乾式コーティングする第2の工程を含む、請求項3に記載のコーティング粒子の製法。 第1の工程で得られた粒子をシリカでオーバーコーティングする第3の工程を含む、請求項3に記載のコーティング粒子の製法。 第1工程で得られた粒子に溶出制御基剤およびバインダーを乾式コーティングする第2工程と、第2工程で得られた粒子をシリカでオーバーコーティングする第3工程を含む、請求項3または4に記載のコーティング粒子の製法。 請求項3〜6のいずれか一項に記載のコーティング粒子の製法により製造されたコーティング粒子。