生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_ヨウ化物イオンと鉄イオンを含有する酸性溶液の処理方法
出願番号:2012515930
年次:2015
IPC分類:C02F 3/34,C02F 1/28,C02F 1/72,C22B 3/04,C22B 15/00,C12N 1/00


特許情報キャッシュ

桑野 兼一 阿部 温子 真鍋 学 三浦 彰 JP 5711225 特許公報(B2) 20150313 2012515930 20110519 ヨウ化物イオンと鉄イオンを含有する酸性溶液の処理方法 JX日鉱日石金属株式会社 502362758 アクシス国際特許業務法人 110000523 桑野 兼一 阿部 温子 真鍋 学 三浦 彰 JP 2010128300 20100519 20150430 C02F 3/34 20060101AFI20150409BHJP C02F 1/28 20060101ALI20150409BHJP C02F 1/72 20060101ALI20150409BHJP C22B 3/04 20060101ALI20150409BHJP C22B 15/00 20060101ALI20150409BHJP C12N 1/00 20060101ALN20150409BHJP JPC02F3/34 ZC02F1/28 DC02F1/72 ZC22B3/00 BC22B15/00 105C12N1/00 P C02F 3/34 C02F 1/28 C02F 1/72 C22B 3/04 C22B 15/00 C12N 1/00 特開2010−24511(JP,A) 特開2009−228109(JP,A) 特開2009−228094(JP,A) 特開2003−73752(JP,A) 特開平10−273742(JP,A) 特開平10−265864(JP,A) 特開平9−253523(JP,A) 特開2011−190520(JP,A) 7 JP2011061547 20110519 WO2011145688 20111124 12 20140327 富永 正史 本発明は、硫化銅鉱を浸出させる方法に関する。より具体的には、ヨウ化物イオンを用いた硫化銅鉱の浸出の際、必要な鉄(III)イオンを鉄酸化微生物を用いて効率的に再生する方法に関する。 一般に湿式製錬による硫化銅鉱の浸出形態としては:・硫酸または塩酸を用いた回分攪拌反応による浸出形態;・積層体を形成しその頂部から硫酸または塩酸を供給して重力により滴り落ちる液を回収する浸出形態(ヒープリーチング法);及び・鉄酸化微生物などのバクテリアを利用して銅を効率よく浸出し、回収する方法(バイオリーチング)などが知られている。 硫化銅鉱の湿式製錬のうち、輝銅鉱、銅藍等の二次硫化銅鉱に対してはバイオリーチング法などが実用化されている。しかしながら、黄銅鉱などの一次硫化銅鉱は無機酸への溶解度が極めて低い。従って、バイオリーチング法を用いて常温で浸出を行うと浸出速度が非常に遅い。 上述の浸出速度の問題に対して、特開2011−42858号(特許文献 1)には、ヨウ化物イオンおよび酸化剤としての鉄(III)イオン共存下、常温において黄銅鉱や硫砒銅鉱を主成分とする硫化銅鉱の浸出が促進されるという例が報告されている。 一方、特開平7−91666号(特許文献2)には、ヨウ素を酸化するための酸化剤として活性塩素、吸着剤として活性炭、陰イオン交換樹脂を用い、溶液中のヨウ素を除去する例が報告されている。アルカリ金属塩化物水溶液の精製方法において、液中のヨウ素を除去する方法の代表的なものとして、(1)ヨウ素とアルカリ金属塩化物を含有する溶液に塩素、次亜塩素酸または塩素水を添加し、(2)ヨウ化物イオンをヨウ素分子(I2)に酸化し、(3)活性炭に通液させ活性炭に吸着させる方法がある。同様に特開平4−16554号(特許文献3)には、工業的な食塩電解法において、酸化剤と活性炭を用いてヨウ素を液中から除去する方法が記載されている。 また、特公昭62―34681号(特許文献4)には、かん水からヨウ素を分離回収する方法として、イオン交換樹脂を使用する方法が報告されている。特開2011−42858号特公平7−91666号特公平4−16554号特公昭62―34681号 特許文献1の場合において、浸出反応の結果得られる鉄(II)イオンから、及び/又は安価な薬品である硫酸第一鉄から、鉄酸化微生物を用いて酸化することによって、鉄(III)イオンを産生し供給できれば経済的にも望ましい。また、浸出後液についても廃棄することなく浸出液として繰り返し利用することが経済的にも環境的にも望ましい。しかしながら、ヨウ素分は強い殺菌性を持つ。従って、ヨウ素分存在下で(即ちヨウ素分を用いた浸出において)鉄酸化微生物を用いて鉄(III)イオンを再生することは困難である。 特許文献2〜4は、ヨウ素分を分離除去する方法が記載されている。しかしながら、これらヨウ素分除去例で用いられる溶液は、鉄・銅などの金属イオンを含む酸性の硫化銅鉱の浸出液とは全く異なっている。従って、これら方法をそのまま、特許文献1の方法に適用することは困難である。また、これらの方法では微生物にとっては毒性の強い塩素系酸化剤を用いている。従って、これら方法をそのまま適用し硫化銅鉱の浸出液からヨウ素分を除去することが可能であったとしても、塩素系酸化剤もしくは塩化物イオンによる微生物への影響が残存する。よって、微生物を用いて、ヨウ素分除去後の溶液中の鉄を効率的に酸化することは困難である。 従って、本発明の課題は、上記のような事情に鑑み、ヨウ化物イオンを用いた浸出において実操業レベルで汎用性ある条件で、微生物を用い効率よく鉄(III)イオンを再生しつつ硫化銅鉱から銅を浸出する方法を提供することにある。 本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、黄銅鉱や硫砒銅鉱を主成分とする硫化銅鉱のヨウ素分を用いた浸出において、ヨウ化物イオンと鉄(II)イオンを含む酸性溶液を、活性炭と鉄酸化微生物を含むリアクター内で反応させると、同溶液中の鉄(II)イオンを鉄酸化微生物により鉄(III)イオンに酸化させながら、同時に鉄(III)イオンにより酸化されたヨウ素分を活性炭に吸着させ分離・回収することが可能になることを見出した。本発明はかかる知見により完成されたものである。 すなわち、本発明は以下の発明を包含する。(1) ヨウ化物イオンと鉄(II)イオンとを含む酸性溶液を処理するための方法であって、当該溶液中の鉄(II)イオンを鉄酸化微生物により鉄(III)イオンへ酸化させる工程を含み、当該工程を活性炭存在下で行う方法。(2) 前記酸化によって生じた鉄(III)イオンによってヨウ化物イオンが酸化し、前記ヨウ化物イオンの酸化により生じたヨウ素分子又は/及び三ヨウ化物イオンの活性炭への吸着が並行して行われる前記(1)に記載の方法。(3) 前記ヨウ化物イオンと鉄(II)イオンとを含む酸性溶液が、ヨウ化物イオンと鉄(III)イオンとを含有する硫酸溶液を浸出液として硫化銅鉱から銅を浸出させる工程で得られた浸出後液である前記(1)又は(2)に記載の方法。(4) 前記(2)に記載の方法によって得られた処理済酸性溶液から活性炭を除去した後の鉄(III)イオンを含む溶液、及び/又は 前記(2)に記載の方法によって得られた処理済酸性溶液から活性炭を回収後、活性炭に吸着したヨウ素分子及び/又は三ヨウ化物イオンをヨウ化物イオンに還元して活性炭から遊離させることによって得られたヨウ化物イオンを含む溶液を、硫化銅鉱の浸出液として利用することを含む、硫化銅鉱から銅を浸出させるための方法。(5)前記酸化が流動床式リアクターで行われ、溶液中において活性炭濃度が、重量比でヨウ素濃度の10倍以上である、前記(1)〜(4)の何れかに記載の処理方法又は浸出方法。(6) 前記鉄酸化微生物がAcidithiobacillus ferrooxidansであり、前記酸化が大気圧下で行われる、前記(1)〜(5)の何れかに記載の処理方法又は浸出方法。(7) 前記活性炭に吸着したヨウ素分子及び/又は三ヨウ化物イオンを、亜硫酸イオンを含む溶液を用いて、ヨウ化物イオンに還元して活性炭から遊離させる、前記(2)又は(4)に記載の処理方法又は浸出方法。 本発明の方法によれば、(1)鉄酸化微生物は鉄(II)イオンから鉄(III)イオンを産生する。産生した鉄(III)イオンがヨウ化物イオン(I-)を酸化して、ヨウ素分子(I2)及び/又は三ヨウ化物イオン(I3-)を生成する。前記ヨウ素分子又は三ヨウ化物イオンは、鉄酸化微生物にとって毒性が高い。しかし、活性炭を投入することにより、ヨウ素分子(I2)及び/又は三ヨウ化物イオン(I3-)が活性炭へ吸着する。すなわち同一系内で(i)鉄酸化微生物による鉄(II)イオンの酸化と、(ii)生成した鉄(III)イオンによるヨウ素分の酸化と、(iii)活性炭へのヨウ素分吸着が同時並行に起きる。このことにより効率的な鉄(III)イオン産生とヨウ素分の分離回収が可能となる。(2)また、上記(1)で説明したメカニズムを通して産生した鉄(III)イオンをヨウ素分を含有する溶液と混合することによって、硫化銅鉱溶解反応の触媒となるヨウ素分子(I2)及び/又は三ヨウ化物イオン(I3-)が再生されて常に供給される反応系を構築することができる。 本発明とは別の方法として、浸出後液を活性炭によりヨウ素分の回収を行ってから微生物により鉄酸化を行う方法も考えられる。しかし、この場合には、活性炭にヨウ素分を吸着させるために、溶液中に鉄(III)イオンなどの酸化剤を添加してヨウ素分を酸化する必要がある。しかも、微生物毒性を低減するためにヨウ素分に対して重量比で200倍以上の活性炭量が必要である。一方で、本発明においては、鉄酸化処理前に浸出後液に鉄(III)イオンを添加する必要がない。また、本発明においては、ヨウ素分に対して重量比で200倍以上といった大量の活性炭を必要としない。従って、本発明によって低コスト化・プロセス簡略化が可能となる。(3)活性炭に吸着したヨウ素分は亜硫酸イオンにより溶出させ回収することができる。回収したヨウ素分を浸出液に再利用することで、さらに低コスト・高効率化が可能となる。(4)黄銅鉱や硫砒銅鉱を含む硫化銅鉱からの銅浸出が常温にて効率よく低コストで実施することができる。本発明において活性炭を流動床式リアクター内で使用した場合の処理フローを示す。ヨウ素濃度が8mg/Lになるように添加した時に、各濃度の活性炭を添加した場合の鉄酸化微生物に対するヨウ素毒性低減効果を示す。ヨウ素濃度が20mg/Lになるように添加した時に、各濃度の活性炭を添加した場合の鉄酸化微生物に対するヨウ素毒性低減効果を示す。 本発明の方法はヨウ化物イオンと鉄(II)イオンを含有する酸性溶液の処理方法である。より具体的には、ヨウ化物イオンと鉄(II)イオンとを含有する溶液から鉄(III)イオンを生産する方法である。さらに本発明の方法は、ヨウ素分を分離回収する方法も含む。 本発明は一実施形態において、ヨウ化物イオンと鉄(II)イオンとを含有する酸性溶液中の鉄(II)イオンを鉄酸化微生物を用いて鉄(III)イオンへ酸化する際に、活性炭の存在下で行う。 また、本発明の一実施形態において、ヨウ化物イオンと鉄(II)イオンとを含有する溶液に、活性炭と(例えばAcidithiobacillus ferrooxidansなどの)鉄酸化微生物とを投入して(例えば、鉄酸化リアクターにて好気的に)反応させる。 この反応により、鉄(III)イオンを産生すると同時に、ヨウ化物イオンが鉄(III)イオンにより酸化されてヨウ素分子及び/又は三ヨウ化物イオンが生成する。そして、酸化物のヨウ素分子(I2)及び/又は三ヨウ化物イオン(I3-)を活性炭に吸着させる。 従って、本発明の利点の一つは、ヨウ素酸化物の鉄酸化微生物に対する毒性を低減して鉄酸化を継続して行うことを可能にするとともに、有価物であるヨウ素分を分離回収することである。 また、本発明の一実施形態において、ヨウ化物イオンと、(例えば、前記ヨウ化物イオンに対して過剰量の)鉄(III)イオンとを含有する硫酸溶液を浸出液として用いて、硫化銅鉱から銅を浸出させる方法に使用される(図1A、a及びe)。具体的には、前記銅浸出工程後に得られる溶液を活性炭と(例えば、Acidithiobacillus ferrooxidans などの)鉄酸化微生物を投入して(例えば、リアクターで好気的に)反応させる(図1D)。即ち、前記溶液中の鉄(II)イオン、もしくは新規に添加した鉄(II)イオン(図1b、例えば硫酸第一鉄)を酸化させながら活性炭によるヨウ素分の除去を同時に行う。その後、鉄酸化微生物を用いて産生した鉄(III)イオンを含む酸性水溶液は、硫化銅鉱の浸出液として利用することができる。或いは、活性炭に吸着後回収したヨウ素分を含む水溶液と混合し、硫化銅鉱の浸出液として利用することができる。 本発明の方法で用いる硫化銅鉱は、黄銅鉱または硫砒銅鉱を含有する。また、前記硫化銅鉱は、黄銅鉱または硫砒銅鉱を主成分とする硫化銅鉱であってもよい。あるいは、前記硫化銅鉱は、黄銅鉱または硫砒銅鉱を一部に含有する硫化銅鉱であってもよい。その含量は特に限定はされないが、本発明の方法による銅浸出効果が十分に得られる点で、本発明の方法で用いる硫化銅鉱は、黄銅鉱や硫砒銅鉱を主成分とする硫化銅鉱であることが好ましい。 本発明の方法は、硫酸溶液を浸出液とする銅の湿式製錬であれば、いずれの浸出形態にも用いることができる。例えば、前記浸出形態は、回分攪拌浸出のみならず、鉱石を堆積させた上から硫酸を散布して、銅を硫酸中に浸出させる、ヒープリーチングまたはダンプリーチングのいずれであってもよい。 また、浸出の温度は特に規定しないが、特に加熱などは必要とせず、常温での浸出が可能である。 本発明の方法による硫化銅鉱の溶解・浸出は、下記(式1)と(式2)に示す一連のヨウ素分による触媒反応によって進行すると考えられる。2I-+2Fe3+→I2+2Fe2+(式1)CuFeS2+I2+2Fe3+→Cu2++3Fe2++2S+2I-(式2) 上記(式1)と(式2)の両辺の和をとりヨウ素成分を消去すると下記(式3)となり、従来提唱されている硫化銅鉱に対する鉄(III)イオンを酸化剤として用いた浸出反応であることがわかる。CuFeS2+4Fe3+→Cu2++5Fe2++2S(式3) まず、式(1)の反応において、浸出液に添加したヨウ化物イオン(I-)が鉄(III) イオン(Fe3+)により酸化されてヨウ素分子(I2)が生成する。 また、式(1)の反応で生じたヨウ素分子(I2)が、残存するヨウ化物イオン(I-)と反応することによって三ヨウ化物イオン(I3-)も浸出液内に生成する。 このとき浸出液中のヨウ素濃度は反応形態や対象となる硫化銅鉱の種類・形状・銅品位などにより適宜決めることができる(なお本明細書中の「ヨウ素濃度」は、I2のみならずI-、I3-等のあらゆる状態を含めた、総ヨウ素濃度を意味する)。しかし、前記ヨウ素濃度は特開2010-24511号に示した100mg/Lから300mg/Lもしくは特開2011-42858号に示した8mg/Lから100mg/Lが好ましい。 また(式3)に示すとおり、黄銅鉱浸出には、黄銅鉱(CuFeS2)に対応する量の酸化剤としての鉄(III)イオンの供給が必要である。そして、連続的な黄銅鉱の浸出のためには、連続的な酸化剤としての鉄(III)イオンの供給が必要となる。しかし、ヨウ素分は微生物に対して強い毒性を有している。 特に鉄酸化微生物を利用する場合、微生物に強い毒性を示さないヨウ化物イオンも産生する鉄(III)イオンによって酸化され、微生物に対して毒性の強いヨウ素分子(I2)もしくは三ヨウ化物イオン(I3-)に変換される。従って、溶液中のヨウ化物イオン濃度が1ppmしか存在しない場合でも、鉄酸化微生物を用いて酸化し鉄(III)イオンを産生させることが困難なことを見出した。 本発明の典型的な実施形態においては、活性炭と鉄酸化微生物とを同一反応系内で浸出後液に投入することを行う。当該投入により、浸出後液から鉄酸化微生物に対して強い毒性を示すヨウ素分を除去しつつ、同一系内において鉄酸化微生物による鉄(III)イオンを産生することが可能となる。 本発明では、銅浸出工程後に得られる溶液中の鉄(II)イオンの酸化とヨウ素分の活性炭への吸着は、活性炭と鉄酸化微生物を含む流動床式リアクターで並行して行われるのが好ましい(図1D)。また、活性炭濃度が、当該投入前の溶液中ヨウ素濃度に対して重量比で10倍以上であることが好ましく、13倍以上であることがさらに好ましい。また、活性炭濃度の上限については、特に限定しないが、コスト等の観点から、例えば重量比で1000倍以下、典型的には700倍以下又は150倍以下である。 また、ヨウ素分を除去するための材料は疎水性相互作用によりヨウ素分を吸着する能力を有する材料が好ましい。 従って、活性炭以外の疎水性表面を有する固体、例えばコークスや疎水性樹脂などの利用も可能である。しかし、比表面積が高く、ヨウ素分除去能も高いため、活性炭が特に優れている。 本発明に用いる活性炭の種類・原料等は特に規定しない。しかし、表面積が大きく、かつ液相中での利用に適し、かつ安定性に優れた活性炭が好ましい。また、活性炭の形状は粒状もしくは球状が好ましい。例えば太平化学産業製ヤシコールMc、日本エンバイロケミカルズ製白鷺 X7000H などが使用可能である。 また本発明の対象となる溶液中の鉄(II)イオン濃度は、特に規定しない。しかし、鉄酸化微生物の生育が良好となる範囲として0.2g/Lから10g/Lの範囲が好ましい。前記鉄(II)イオンの濃度範囲は、硫化銅鉱からの浸出後液中の鉄(II)イオン濃度としても適当である。また、前記鉄(II)イオンの濃度範囲は、産生する鉄(III)イオンを含む溶液をヨウ素分含有溶液と混合して硫化銅鉱の浸出液として利用するために必要な鉄(II)イオン濃度としても適当である。 また本発明の対象となる溶液中のヨウ素濃度も特に規定しない。しかし、活性炭無添加時に鉄酸化微生物の生育阻害を示す濃度の場合にはじめて本発明の効果が発揮できる。そして、生育阻害を示す濃度はおおむね0.5mg/L以上である。 また、活性炭に吸着したヨウ素分は薬液・加熱・燃焼処理などにより回収して再利用することも可能である。特に、本発明ではヨウ素分(例えばヨウ素分子及び/又は三ヨウ化物イオン)が吸着した活性炭を、亜硫酸イオンを含む溶液で処理、溶出させることにより、活性炭に吸着したヨウ素分をヨウ化物イオン(I-)に還元して遊離させることができる(図1c)。そして、ヨウ化物イオン(I-)を含んだ溶液を、硫化銅鉱の浸出に再利用することができる。或いはヨウ化物イオン(I-)を含んだ溶液を、鉄(III)イオンを含んだ酸性溶液(図1a)と混和し再び硫化銅鉱の浸出に再利用することができる(図1e)。無論、再利用する際には新たなヨウ化物イオン含有溶液を補充してもよい(図1d)。 このとき溶出させるヨウ素分に対して、重量比で1倍から100倍の亜硫酸イオンを含む溶液を用いてヨウ素分を回収することが好ましい。そして、33倍〜100倍の亜硫酸イオンを含む溶液を用いることが更に好ましい。 銅浸出工程後の溶液から銅を回収(図1B、C及びf)する際には、一般に銅を選択的に抽出する抽出剤を用いる溶媒抽出法が用いられる。まれにセメンテーション法が用いられる。 これらの方法については本発明におけるヨウ素分回収・鉄酸化工程(図1D)の前段・後段等どの段階でも実施可能である。 溶媒抽出工程も含めた本発明のプロセスフローの一例を図1に示す。図1は活性炭と鉄酸化微生物を用いた流動式リアクターの一例である。プロセスは図1に示すような直列的なフローに限る必要はなく、銅抽出工程もしくはヨウ素分回収・鉄酸化工程をバイパスさせて並列的に設置することも可能である。 実際には、抽出剤の微生物毒性などの影響を考慮し、最適なプロセスフローを適用すればよい。 本発明において用いる鉄酸化微生物としては、鉄酸化能を有していればその種属を限定しない。具体的にはAcidithiobacillus ferrooxidans;Acidimicrobium ferrooxidans;Leptosprillum属に属する微生物;Ferroplasma属に属する微生物;もしくはAcidiplasma属に属する微生物などが利用できる。 その中でも Acidithiobacillus ferrooxidans は常温常圧での鉄酸化が可能なため本発明に好ましい。その一例として、Acidithiobacillus ferrooxidans FTH6B が利用できる。前記FTH6Bは、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに寄託番号NITE BP-780として寄託されている。 また鉄酸化反応時の温度・圧力についても、それぞれの微生物に適した条件を使用すればよい。 上記 Acidithiobacillus ferrooxidans を利用する場合には、大気圧下で実施することが望ましい。また、温度については、20〜40℃の範囲で実施することが望ましい。 以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。(実施例1)ヨウ化物イオンおよび鉄(II)イオンを含む溶液中の活性炭共存下での鉄酸化微生物による鉄(III)イオンの産生。(1)硫酸を用いて溶液のpHを2.0に調整した、以下の組成の溶液25mLを三角フラスコ(50mL容量)に分取した。 Fe2+ 6g/L (NH4)2SO4 3g/L K2HPO4 0.1g/L MgSO4 0.4g/L Ca(NO3)2 0.01g/L(2)ヨウ化カリウム(KI)および活性炭(太平化学産業製ヤシコールMc)を下記表1の条件になるように添加した。(3)軽く攪拌した後、鉄酸化微生物FTH6Bを菌濃度2.5×106cells/mLになるよう添加した。(4)これらを温度 30℃、大気圧下で緩やかに振とうし、鉄酸化微生物による鉄酸化を促した。 各条件での微生物処理後液中の鉄(II)イオン濃度を二クロム酸カリウムによる酸化還元滴定法で測定した。鉄(II)イオン及び鉄(III)イオンを含む全鉄イオン濃度をICP発光分光分析装置(ICP−AES)で測定した。全鉄イオン濃度と鉄(II)イオン濃度の差を鉄(III)イオン濃度として算出した。 鉄(III)イオン濃度の経時変化を図2、3に示す。 図2のグラフにおいて、処理条件Aは、ヨウ素分を含まない溶液中の鉄酸化細菌による鉄酸化を示す。一方、処理条件Bは、ヨウ素濃度8mg/Lの溶液中の鉄酸化細菌による鉄酸化を示す。処理条件A及びBを比べると、ヨウ素分の存在により、鉄酸化細菌による鉄酸化が著しく抑制されることが示された。 また、処理条件C〜Gは、処理条件Bの溶液にさらに活性炭を0.01g/L〜5g/Lの範囲で添加したときの鉄酸化細菌による鉄酸化を示す。処理条件A〜Bと処理条件C〜Gとを比べると、活性炭の添加により鉄酸化が回復することが示された。特にヨウ素濃度に対する活性炭量濃度が重量比で13倍以上の場合(処理条件D〜G)、鉄酸化が著しく回復することが示された。 図3のグラフにおいて、処理条件Hは、ヨウ素濃度20mg/Lの溶液中の鉄酸化細菌による鉄酸化を示す。また、処理条件I〜Mは、処理条件Hの溶液にさらに活性炭を0.01g/L〜5g/Lの範囲で添加したときの鉄酸化細菌による鉄酸化を示す。処理条件Hと処理条件I〜Mを比べると、活性炭の添加により鉄酸化が回復することが示された。特にヨウ素濃度に対する活性炭量濃度が重量比で25倍以上の場合(処理条件K〜M)、鉄酸化が著しく回復することが示された。 また、微生物処理後の溶液中のヨウ素濃度をICP質量分析装置(ICP-MS)を用いて測定した結果、表 1 の通りとなっており、活性炭を添加した条件では、ヨウ素分はほとんど液中には存在せず、活性炭に吸着されていた。 図2及び図3の結果から、ヨウ化物イオンと、鉄(II)イオンとを含有する酸性溶液を、活性炭および鉄酸化微生物を含むリアクター内で反応させることにより、同溶液中の鉄(II)イオンを鉄酸化微生物により鉄(III)イオンに酸化させることが可能となることが示された。さらに、表1の結果から鉄(III)イオンにより酸化されたヨウ素分を活性炭に吸着させて分離・回収することが可能となることが示された。 (実施例2)ヨウ化物イオンおよび鉄(II)イオンを含む溶液中の活性炭共存下での活性炭に吸着したヨウ素分の回収(1) 鉄(II)イオン6g/Lを含む実施例1(1)と同じ組成の溶液300mLを容量500mLの坂口フラスコに添加した。(2)ヨウ化カリウムを25mg/L、活性炭を1g/Lとなるよう添加した。(3)軽く攪拌した後、鉄酸化微生物FTH6Bを菌濃度2×107cells/mLになるよう添加した。(4) これら温度30℃、大気圧下で緩やかに振とうし、鉄酸化微生物による鉄酸化を促した。(5)微生物処理後液をろ過し、活性炭を含む沈殿を回収した。(6)回収した沈殿に、24mM亜硫酸水100mL(2g/L、ヨウ素分に対して重量で33倍)を加えた。(7)1時間常温で撹拌したのち、溶出したヨウ素分をヨウ素電極を用いて特願2009−245771に示した方法に従い定量した。具体的には亜鉛粉末を適量添加することによって、ヨウ素分子及び三ヨウ化物イオンとして存在するヨウ素分を全てヨウ化物イオンに還元した後、ヨウ素電極を用いて測定した。 その結果、ヨウ素濃度は32mg/Lであり、ヨウ素分が溶出していることを確認した。この実施例によりヨウ化物イオンと、鉄(II)イオンとを含有する酸性溶液を、活性炭および鉄酸化微生物を含むリアクター内で反応させることにより、活性炭にヨウ素分を吸着させ、活性炭を回収後、亜硫酸で活性炭を処理することにより活性炭に吸着したヨウ素分を溶液中に回収できることが示された。 また実施例1、2の結果から、鉄(II)イオンとヨウ化物イオンを含む溶液から、鉄(III)イオンを含む水溶液、ヨウ化物イオンを含む水溶液をそれぞれ調製することが可能であることが示された。さらに、それらを適当な濃度に調製して混合した溶液を硫化銅鉱の浸出に用いれば、硫化銅鉱からの銅の浸出を促進させることが可能となることも示された。 ヨウ化物イオンと鉄(II)イオンとを含む酸性溶液を処理するための方法であって、当該溶液中の鉄(II)イオンを鉄酸化微生物により鉄(III)イオンへ酸化させる工程を含み、当該工程を活性炭存在下で行う方法。 前記酸化によって生じた鉄(III)イオンによってヨウ化物イオンが酸化し、前記ヨウ化物イオンの酸化により生じたヨウ素分子又は/及び三ヨウ化物イオンの活性炭への吸着が並行して行われる請求項1に記載の方法。 前記ヨウ化物イオンと鉄(II)イオンとを含む酸性溶液が、ヨウ化物イオンと鉄(III)イオンとを含有する硫酸溶液を浸出液として硫化銅鉱から銅を浸出させる工程で得られた浸出後液である請求項1又は2に記載の方法。 請求項2に記載の方法によって得られた処理済酸性溶液から活性炭を除去した後の鉄(III)イオンを含む溶液、及び/又は 請求項2に記載の方法によって得られた処理済酸性溶液から活性炭を回収後、活性炭に吸着したヨウ素分子及び/又は三ヨウ化物イオンをヨウ化物イオンに還元して活性炭から遊離させることによって得られたヨウ化物イオンを含む溶液を、硫化銅鉱の浸出液として利用することを含む、硫化銅鉱から銅を浸出させるための方法。 前記酸化が流動床式リアクターで行われ、溶液中において活性炭濃度が、重量比でヨウ素濃度の10倍以上である、請求項1〜4の何れかに記載の処理方法又は浸出方法。 前記鉄酸化微生物がAcidithiobacillus ferrooxidansであり、前記酸化が大気圧下で行われる、請求項1〜5の何れかに記載の処理方法又は浸出方法。 前記活性炭に吸着したヨウ素分子及び/又は三ヨウ化物イオンを、亜硫酸イオンを含む溶液を用いて、ヨウ化物イオンに還元して活性炭から遊離させる、請求項2又は4に記載の処理方法又は浸出方法。


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