タイトル: | 特許公報(B2)_アルクチゲニン含有ゴボウシ抽出物およびその製造方法 |
出願番号: | 2012515281 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | A61K 36/28,A61K 36/00,A61K 31/7048,A61K 31/365,A61P 35/00,C07D 307/33,C07H 15/26 |
大窪 敏樹 与茂田 敏 布施 貴史 川島 孝則 江角 浩安 三好 千香 門田 重利 JP 5190572 特許公報(B2) 20130208 2012515281 20110927 アルクチゲニン含有ゴボウシ抽出物およびその製造方法 クラシエ製薬株式会社 306018343 独立行政法人国立がん研究センター 510097747 国立大学法人富山大学 305060567 相原 礼路 100150142 森脇 理生 100174849 大窪 敏樹 与茂田 敏 布施 貴史 川島 孝則 江角 浩安 三好 千香 門田 重利 JP 2010215118 20100927 20130424 A61K 36/28 20060101AFI20130404BHJP A61K 36/00 20060101ALI20130404BHJP A61K 31/7048 20060101ALI20130404BHJP A61K 31/365 20060101ALI20130404BHJP A61P 35/00 20060101ALI20130404BHJP C07D 307/33 20060101ALI20130404BHJP C07H 15/26 20060101ALI20130404BHJP JPA61K35/78 TA61K35/78 YA61K35/78 XA61K31/7048A61K31/365A61P35/00C07D307/32 GC07H15/26 A61K 36/28 A61K 31/365 A61K 31/7048 A61K 36/00 A61P 35/00 C07D 307/33 C07H 15/26 CA/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) Ou, Zhimin et al,Preparation of arctigenin by hydrolysis of arctii with β-glucosidase,Pharmaceutical Biotechnology,2009年,Vol.16,No.5,pp.443-446 MORITANI S, Cytotoxic Components of Bardanae Fructus (Goboshi),Biol Pharm Bull,1996年,Vol.19,No.11,Page.1515-1517 MIYOSHI Chika et al,すい臓がん細胞に対するアクチゲニンと既存の抗がん剤との併用効果 ,日本癌学会学術総会記事,2008年,Vol.67th ,Page.347 MIYOSHI Chika et al,すい臓がんに対するアクチゲニンの増殖抑制効果 ,日本癌学会学術総会記事,2009年,Vol.68th ,Page.464 8 JP2011072049 20110927 WO2012043549 20120405 13 20120327 鶴見 秀紀 本発明は、アルクチゲニンおよびアルクチインを含有するゴボウシ抽出物の製造方法に関する。より詳細には、本発明は、アルクチゲニンおよびアルクチインをアルクチゲニン/アルクチイン=0.7〜1.3の重量比で含有するゴボウシ抽出物の製造方法に関する。 ゴボウシは、日局15でゴボウ Arctium lappa Linne (Compositae)の果実であると規定されている。また、ゴボウシは、銀翹散、駆風解毒湯、消風散などに処方される生薬であり、専ら医薬品として使用される成分本質に分類される。 ゴボウシは、リグナン配糖体に分類されるアルクチインを約7%およびそのアグリコンであるアルクチゲニンを約0.6%含む。 近年、PANC-1、AsPC-1、BxPC-1およびKP-3などの膵臓癌由来の細胞は、極度の栄養飢餓状態においても強い耐性が見られ、その耐性を解除することが癌治療における新しい生化学的アプローチとなる可能性が報告されている(特許文献1)。 膵臓癌細胞株PANC-1を使用して、低栄養状態における腫瘍細胞の生存能力を解除できる物質のスクリーニングを行ったところ、アルクチゲニンが有効であることが報告されている(非特許文献1)。上記知見から、アルクチゲニンを含有するゴボウシ抽出物は、膵臓癌を治療するための抗癌剤として使用することができる。 現在知られているゴボウシは、ゴボウシ中のアルクチゲニン含量が約0.6%と低い。また、水に溶け難い。このため、従来利用されている熱水抽出法では、アルクチゲニンを高含量で含有するゴボウシ抽出物を製造することがきわめて困難であった。 また、膵臓癌などの治療に使用するにあたり、有効成分であるアルクチゲニンが一定の含有量となるゴボウシ抽出物の提供が望まれているが、上記のとおり、アルクチゲニン高含有ゴボウシ抽出物の製造において、アルクチインをアルクチゲニンに変換し、水に溶け難いアルクチゲニンを一定の含有量となるように制御することは困難であった。 さらに、膵臓癌などの治療に使用するにあたり、アルクチゲニンおよびアルクチインを一定含量で含むゴボウシ抽出物は、特に抗癌効果が優れていることが分かってきている。このため、アルクチゲニン高含有ゴボウシ抽出物の製造において、アルクチゲニンおよびアルクチインを一定の含有量となるように制御することができる製造方法が望まれる。特に、アルクチゲニンおよびアルクチインを約1:1の重量比で含有するゴボウシ抽出物を製造することができる方法が望まれる。特開2002−065298号公報S. AwaLe, J. Lu, S. K. KaLauni, Y. Kurashima, Y. Tezuka, S. Kadota, H. Esumi,Cancer Res.,2006,66(3),1751-1757)。 本発明は、アルクチゲニンおよびアルクチインを一定の割合で含むゴボウシ抽出物およびその製造方法を提供することを目的とする。より詳細には、本発明は、アルクチゲニンおよびアルクチインを約1:1の重量比で含有するゴボウシ抽出物を製造する方法を提供することを目的とする。 本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、原料とするゴボウシの酵素活性、ゴボウシを切裁する粒径、アルクチインをアルクチゲニンに酵素変換する際の温度およびゴボウシからアルクチゲニンおよびアルクチインを抽出する際の温度を調整することにより、アルクチゲニンおよびアルクチインの含有比を調節する技術を見出した。 本発明は、ゴボウシを切裁する工程と、ゴボウシに内在するβ-グルコシダーゼによりゴボウシに内在するアルクチインをアルクチゲニンに酵素変換する工程であって、前記酵素変換は、20℃〜50℃の温度で反応させる工程とを含む、アルクチゲニンおよびアルクチインをアルクチゲニン/アルクチイン=0.7〜1.3の重量比(1.0〜1.9のモル比)で含有するゴボウシ抽出物を製造する方法を提供する。 また、本発明は、切裁する工程において、ゴボウシが0.85mm〜9.5mmの粒径に切裁される、上記のゴボウシ抽出物を製造する方法を提供する。 さらに、本発明は、ゴボウシに内在するβ-グルコシダーゼの酵素活性が、ゴボウシ1g中0.4U以上である、上記のゴボウシ抽出物を製造する方法を提供する。 また、本発明は、酵素変換する工程の後に、有機溶媒を加えることにより、アルクチゲニンおよびアルクチインを含有する抽出物を抽出する工程含む、上記のゴボウシ抽出物を製造する方法を提供する。 また、本発明は、有機溶媒がエタノールである、上記のゴボウシ抽出物を製造する方法を提供する。 また、本発明は、抽出する工程が約80℃で抽出される、上記のゴボウシ抽出物を製造する方法を提供する。 さらに、本発明は、上記方法によって得られる、アルクチゲニン/アルクチインを0.7〜1.3の重量比で含有するゴボウシ抽出物を提供する。 さらに、本発明は、上記方法によって得られる、アルクチゲニン/アルクチインを0.7〜1.3の重量比で含有するゴボウシ抽出物を含有する抗癌剤を提供する。 本発明により、抗腫瘍効果を有するアルクチゲニンをアルクチゲニン/アルクチイン(重量比)=0.7〜1.3と一定の含有比で有するゴボウシ抽出物の提供が可能となった。特に膵臓癌患者に投与することで、安定した腫瘍の増殖抑制や抗腫瘍効果を期待できる。また製造時の生産性も向上させることができる。 以下、本発明について詳細に説明する。開示する条件は一例であり、これに限定されるものではない。 本願発明のゴボウシ抽出物は、生薬切裁工程、抽出工程(酵素変換工程および有機溶媒による抽出工程)、固液分離工程、濃縮工程および乾燥工程を経て製造される。 (生薬切裁工程)本発明のゴボウシ抽出物の製造方法では、原料とするゴボウシを抽出に適した大きさに切裁する。原料となる生薬は、植物の様々な部位や鉱物、動物など種々の大きさ、形状、固さがあり、その特質に応じた切裁が必要となる。ゴボウシは、当業者に公知の任意の手段を使用して切裁することができる。たとえば、市販の切裁機を使用することができる。 本発明のゴボウシ抽出物の製造方法では、ゴボウシに内在する酵素であるβ-グルコシダーゼの活性を事前に測定し、本発明に適したゴボウシを選択することができる。 β-グルコシダーゼの活性を測定する方法としては、たとえばp-ニトロフェニル-β-D-グルコピラノシド(C12H15NO8:分子量301.25)(SIGMA-ALDRICH社製)を基質として、ゴボウシ粉砕品を作用させることで生成するp-ニトロフェノールを400nmの吸光度の変化を測定することにより、酵素活性を測定できる。酵素活性を表す単位として1分間に1マイクロモルのp-ニトロフェノールを生成する酵素量を1単位(U)として表すことができる。 アルクチゲニンおよびアルクチインをアルクチゲニン/アルクチイン=0.7〜1.3の重量比で含有するゴボウシ抽出物を得るためには、ゴボウシに内在するβ-グルコシダーゼの活性が、たとえば0.4U/g以上、好ましくは1U/g以上のゴボウシを用いることができる。 0.4U/g未満の場合は、加水分解が不十分となり、アルクチゲニンの重量比が下がり、所望のゴボウシ抽出物を効率的に得られなくなる。 また、本発明のゴボウシ抽出物の製造方法では、任意の粒径に切裁されたゴボウシを使用することができる。切裁されたゴボウシの粒径が小さいほど酵素変換が促進され、抽出物収率も上昇すると考えられる。その反面、粒径が小さすぎると、酵素変換が速過ぎてプロセス管理が困難になったり、後の工程において正確な固液分離に支障が生じたりすることがある。 アルクチゲニンおよびアルクチインをアルクチゲニン/アルクチイン=0.7〜1.3の重量比で含有するゴボウシ抽出物を得るためには、以下の実施例に示したように、ゴボウシは、9.5mm以下の粒径に、たとえば9.5mmの篩を全通するように切裁される。 また、アルクチゲニンおよびアルクチインをアルクチゲニン/アルクチイン=0.7〜1.3の重量比で含有するゴボウシ抽出物を得るためには、ゴボウシの粒径が、9.5mm篩を全量通過し、たとえば0.85mmの篩に60〜100%が分布するように、さらに好ましくは0.85mmの篩に65〜80%が分布するように切裁されることが望ましい。 (抽出工程) 抽出工程は、生薬抽出物粉末製造工程中で、品質上最も重要な工程である。この抽出工程により、生薬抽出物粉末の品質が決まる。本発明のゴボウシ抽出物の製造方法では、ゴボウシ抽出物を抽出するために、酵素変換工程と有機溶媒による抽出工程の2段階に分けて抽出を行う。 (酵素変換工程) 酵素変換工程は、本発明のゴボウシ抽出物の製造方法において重要な工程である。酵素変換工程は、ゴボウシに内在する酵素であるβ-グルコシダーゼにより、ゴボウシに含まれているアルクチインをアルクチゲニンに酵素変換する工程である。 具体的には、上記工程で準備したゴボウシ切裁物を、適切な温度に保持することによりβ-グルコシダーゼを作用させて、アルクチインからアルクチゲニンへの反応を進行させる。 たとえば、切裁したゴボウシに水などの任意の溶液を加えて、30℃付近の温度にて攪拌することなどにより、ゴボウシを任意の温度に保持することができる。 アルクチゲニンおよびアルクチインをアルクチゲニン/アルクチイン=0.7〜1.3の重量比で含有するゴボウシ抽出物を得るためには、切裁したゴボウシを30℃付近の温度、たとえば20〜50℃の間の温度に保持する。 20℃未満の場合は、加水分解が不十分となり、アルクチゲニンの重量比が下がり、所望のゴボウシ抽出物を効率的に得られなくなる。一方、50℃より高温の場合は、酵素が失活し、アルクチゲニンの重量比が下がり、所望のゴボウシ抽出物を効率的に得られなくなる。 また、保持時間は、上記温度において保持する限り特に限定されず、たとえば約30分保持させることができる。20〜50℃の間に保持することにより、保持時間にかかわらず、適切な量のアルクチインがアルクチゲニンに酵素変換され、アルクチゲニン:アルクチイン(重量比)が約1:1で含有するゴボウシ抽出物を得ることができる。 (有機溶媒による抽出工程) 有機溶媒による抽出工程は、任意の適切な有機溶媒を使用して、ゴボウシからアルクチゲニンおよびアルクチインを抽出する工程である。すなわち、上記の酵素変換工程によりアルクチゲニンが高含量となった状態で、適切な溶媒を添加して、ゴボウシ抽出物を抽出する工程である。たとえば、ゴボウシ抽出物に適切な溶媒を添加して、適切な時間加熱攪拌してゴボウシ抽出物を抽出する。また、加熱攪拌以外にも、加熱還流、ドリップ式抽出、浸漬式抽出または加圧式抽出法などの当業者に公知の任意の抽出法を使用して、ゴボウシ抽出物を抽出することができる。 アルクチゲニンは水難溶性であることから、有機溶媒を添加することにより、アルクチゲニンの収率を向上させることができる。有機溶媒は、任意の有機溶媒を使用することができる。たとえば、メタノール、エタノールおよびプロパノールなどのアルコール、並びにアセトンを使用することができる。安全性の面を考慮すると、本発明のゴボウシ抽出物の製造方法では、有機溶媒としてエタノールを使用することが好ましい。 加熱攪拌によってゴボウシ抽出物を抽出する場合、加熱攪拌は、任意の温度にて行うことができるが、アルクチゲニンおよびアルクチインをアルクチゲニン/アルクチイン=0.7〜1.3の重量比で含有するゴボウシ抽出物を得るためには、80℃以上の温度、たとえば80〜90℃の間の温度に保持する。 また、加熱攪拌する時間は、上記温度において加熱攪拌する限り、特に限定されず、約30分間、たとえば30〜60分間加熱攪拌することにより、溶媒中にゴボウシからアルクチゲニンおよびアルクチインを抽出させることができる。 アルクチゲニンおよびアルクチインの收率は、加熱攪拌の時間が長いほど向上する。しかし、加熱攪拌の時間が長いと、不要な油脂類が多く溶け出し、濃縮工程の負荷が大きくなってしまう。したがって、加熱攪拌の時間は、状況に応じて適宜決定すればよい。 また、アルクチゲニンおよびアルクチインの收率は、エタノール量が多いほどアルクチゲニンおよびアルクチインの溶解度が高くなるため、収率も向上する。しかし、エタノール量が多いと、不要な油脂類も多く溶け出し、濃縮工程の負荷が大きくなってしまう。したがって、投入量は、状況に応じて適宜決定すればよい。なおこの工程での加熱攪拌により、同時にゴボウシ抽出物を滅菌および殺菌することができる。 (固液分離工程) 固液分離工程は、抽出の終わったゴボウシを抽出液から分離する工程である。固液分離は、当業者に公知の任意の方法を使用して行うことができる。固液分離法には、たとえば濾過法、沈降法および遠心分離法などがある。工業的には、遠心分離法が望ましい。 (濃縮工程) 濃縮工程は、乾燥に先立ちゴボウシ抽出液から溶媒を除去する工程である。ゴボウシ抽出液からの溶媒の除去は、当業者に公知の任意の方法を使用して行うことができる。 しかし、上記工程によって得られたゴボウシからの抽出液が、さらに高温に長時間曝されることがないようにすることが好ましい。 たとえば、減圧濃縮法を使用することにより、高温に長時間曝されることなく、ゴボウシ抽出液を濃縮することができる。 ゴボウシ抽出液の濃縮は、所望の濃度のゴボウシ抽出物が得ることができる濃度まで濃縮することができる。 たとえば、以下の乾燥工程において乾燥を適正に行うことができる程度まで濃縮することが望ましい。また、以下の工程においてゴボウシ抽出物を乾燥させて粉末製剤にした場合に、適切な製剤特性が得られる濃度まで濃縮を行うことが望ましい。 アルクチゲニンおよびアルクチインは、水難溶性であるため、アルクチゲニンおよびアルクチインが以下の乾燥工程における製造装置内に付着する量が多く、最終的な収率が大幅に低下する。そこで、製造装置にアルクチゲニンおよびアルクチインが付着するのを防止するために、この濃縮工程で得られたゴボウシ抽出液にデキストリンを添加することができる。デキストリンの添加量は、たとえば濃縮液の固形分に対して15〜30%程度が望ましい。 (乾燥工程) 上記工程によって得られたゴボウシ抽出物を粉末状に仕上げる工程である。乾燥は、当業者に公知の任意の方法を使用して行うことができる。たとえば、乾燥法として、凍結乾燥および噴霧乾燥などが知られているが、実験室レベルであれば前者、量産レベルであれば後者を用いるのが一般的である。 以上の製造工程により、アルクチゲニンおよびアルクチインをアルクチゲニン/アルクチイン=0.7〜1.3の重量比で含有するゴボウシ抽出物を得ることができる。本発明のゴボウシ抽出物の製造方法は、20℃〜50℃の温度で酵素変換を行う工程を含まなければならないが、その他の工程の全てを含む必要はない。 (ゴボウシ抽出物を含有する抗癌剤) ゴボウシ抽出物の主要成分であるアルクチゲニンは、膵臓癌を治療するための抗癌剤の有効成分として作用することが知られている。また、ゴボウシ抽出物を有効成分とする抗癌剤は、ゴボウシ抽出物中のアルクチゲニンおよびアルクチインがおよそ1:1の重量比で含有されている場合に、その抗癌効果が最も優れていることが分かってきた。 一方、本発明のゴボウシ抽出物の製造方法によって得られた抽出物粉末は、上記のとおり、アルクチゲニンおよびアルクチインをアルクチゲニン/アルクチイン=0.7〜1.3の重量比で含有する。したがって、本発明のゴボウシ抽出物の製造方法によって得られた抽出物粉末は、従来のゴボウシ抽出物と比較して、優れた抗癌効果を有する抗癌剤として使用することができる。 本発明のゴボウシ抽出物の製造方法によって得られた抽出物を含有する抗癌剤は、さらに任意の成分を含む組成物であることができる。たとえば、本発明の抽出物を含有する抗癌剤は、医薬として使用される場合、薬学的に許容される基剤、担体、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤および着色剤などと共に医薬組成物として提供することができる。 医薬組成物に使用する担体および賦形剤の例には、乳糖、ブドウ糖、白糖、マンニトール、デキストリン、馬鈴薯デンプン、トウモロコシデンプン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウムおよび結晶セルロースなどを含む。 また、結合剤の例には、デンプン、ゼラチン、シロップ、トラガントゴム、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースなどを含む。 また、崩壊剤の例には、デンプン、寒天、ゼラチン末、結晶セルロース、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよびカルボキシメチルセルロースカルシウムなどを含む。 また、滑沢剤の例には、ステアリン酸マグネシウム、水素添加植物油、タルクおよびマクロゴールなどを含む。また、着色剤は、医薬品に添加することが許容されている任意の着色剤を使用することができる。 また、医薬組成物は、必要に応じて、白糖、ゼラチン、精製セラック、ゼラチン、グリセリン、ソルビトール、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、フタル酸セルロースアセテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メチルメタクリレートおよびメタアクリル酸重合体などで一層以上の層で被膜してもよい。 また、必要に応じて、pH調節剤、緩衝剤、安定化剤および可溶化剤などを添加してもよい。 また、医薬組成物は、任意の形態の製剤として提供することができる。たとえば、医薬組成物は、経口投与製剤として、糖衣錠、バッカル錠、コーティング錠およびチュアブル錠等の錠剤、トローチ剤、丸剤、散剤およびソフトカプセルを含むカプセル剤、顆粒剤、懸濁剤、乳剤、ドライシロップを含むシロップ剤、エリキシル剤等の液剤であることができる。 また、医薬組成物は、非経口投与のために、静脈注射、皮下注射、腹腔内注射、筋肉内注射、経皮投与、経鼻投与、経肺投与、経腸投与、口腔内投与および経粘膜投与などの投与のための製剤であることができる。たとえば、注射剤、経皮吸収テープ、エアゾール剤および坐剤などであることができる。また、抽出物粉末が特有のえぐみを有することから、抽出物粉末をマスキングする製剤としたり、被覆剤で被覆するフィルムコート剤としたりすることができる。 一方、本発明のゴボウシ抽出物の製造方法によって得られた抽出物粉末は、そのままの形で使用することもできる。また、食品などに添加することもできる。また、本発明のゴボウシ抽出物の製造方法によって得られた抽出物粉末は、他の食品に添加し、混合し、または塗布することなどにより、食品素材として提供することができる。食品の他に、化粧品および餌料などとして提供することもできる。 (試験例) ゴボウシの酵素活性および酵素変換条件(温度と時間)が、アルクチゲニン/アルクチイン(重量比)に及ぼす影響、すなわち両者の因果関係を検証した。 (酵素活性の測定) 産地やロットが異なるゴボウシをウイレー氏粉砕機により粉砕し、このゴボウシ粉砕品0.1gを10mLの水で希釈し、試料溶液とした。 基質溶液として、p-ニトロフェニル-β-D-グルコピラノシド0.15gに水を加えて25mLに定容し、20mmol/L p-ニトロフェニル-β-D-グルコピラノシド水溶液を調製した。0.1mol/L酢酸緩衝液1mLに20mmol/L p-ニトロフェニル-β-D-グルコピラノシド水溶液0.5mLを加えて、反応混液を調製し、37℃で約5分予備加熱を行った。 反応混液に試料溶液0.5mL加えて37℃で15分反応させた後、反応停止液である0.2mol/L炭酸ナトリウム水溶液を2mL加えて反応を停止させた。この液の400nmにおける吸光度を測定し、酵素反応を行わないブランク溶液からの変化量から下式により酵素活性を求めた。 酵素活性(U/g)=(試料溶液の吸光度-ブランク溶液の吸光度)×4mL×1/18.1(p-ニトロフェノールの上記測定条件下でのミリモル分子吸光係数:cm2/μmol)×1/光路長(cm)×1/反応時間(分)×1/0.5mL×1/試料溶液濃度(g/mL) 表1に示すように各ゴボウシの酵素活性が0.12〜8.23U/gであることを確認した。 (試験例1) 酵素活性が0.12、0.27、0.40U/g(試料1〜3)である切裁したゴボウシ1gに水7mLを加えて、酵素反応温度15℃、20℃の温度条件でそれぞれの反応温度での反応時間を30分に設定し、反応後エタノールを加え80℃で抽出を行い、得られた抽出物のアルクチゲニン及びアルクチインを定量し、アルクチゲニン/アルクチイン重量比を求めた。 結果を表1の比較例1〜2、実施例1に示す。 酵素活性が0.40U/gの試料3は、酵素反応温度20℃、反応時間30分で、アルクチゲニン/アルクチイン(重量比)=0.82のゴボウシ抽出物が得られた。 一方、酵素反応温度15℃、反応時間30分では、アルクチゲニン/アルクチイン(重量比)=0.69であり、酵素反応温度は20℃以上であることが好ましい。 また、酵素活性が0.40U/g未満の試料1及び2は、酵素反応温度20℃であってもアルクチゲニン/アルクチイン(重量比)=0.70以上を満たすことができないことから、ゴボウシの酵素活性は0.40U/g以上であることが好ましい。 (試験例2) 酵素活性が4.03U/g(試料5)である切裁したゴボウシ1gに水7mLを加えて、酵素反応温度30℃、40℃、50℃、60℃の温度条件でそれぞれの反応温度での反応時間を15分、30分(30℃と60℃のみ)に設定し、反応後エタノールで抽出を行い、得られた抽出物のアルクチゲニン及びアルクチインを定量し、アルクチゲニン/アルクチイン重量比を求めた。 結果を表1の実施例3に示す。酵素反応温度30℃、反応時間15分で、アルクチゲニン/アルクチイン(重量比)=0.7、酵素反応温度30℃、反応時間30分で、アルクチゲニン/アルクチイン(重量比)=1.0、酵素反応温度40℃、反応時間15分で、アルクチゲニン/アルクチイン(重量比)=1.2、酵素反応温度50℃、反応時間15分で、アルクチゲニン/アルクチイン(重量比)=1.2のゴボウシ抽出物が得られた。 一方、酵素反応温度60℃、反応時間15分では、アルクチゲニン/アルクチイン(重量比)=0.4、酵素反応温度60℃、反応時間30分では、アルクチゲニン/アルクチイン(重量比)=0.5であった。 以上のことから、酵素反応温度は60℃未満が好ましい。 (試験例3) 酵素活性が1.42U/g(試料4)である切裁したゴボウシ1gに水を7mL加えて、酵素反応温度25℃の温度条件で反応時間を10分、30分に設定し、反応後エタノールで抽出を行い、得られた抽出物のアルクチゲニン及びアルクチインを定量し、アルクチゲニン/アルクチイン重量比を求めた。 結果を表1の実施例2に示す。酵素反応温度25℃、反応時間10分で、アルクチゲニン/アルクチイン(重量比)=0.74、同じく反応時間30分でアルクチゲニン/アルクチイン(重量比)=0.85のゴボウシ抽出物が得られた。 以上のことから酵素活性1.42U/gであっても所望の結果を得ることができた。 実施例6 ゴボウシ抽出物の製造1 ゴボウシ(酵素活性8.23U/g)を切裁し、9.5mmの篩を全通するものをさらに0.85mmの篩に通し、75%が残ることを確認した。このゴボウシ細切80kgを29〜33℃に保温した水560Lに加えて30分間攪拌した。次いで、エタノール265Lを加えて85℃に昇温し、さらに60分間加熱還流した。この溶液を遠心分離し、ゴボウシ抽出液を得た。この操作を2回繰り返して得られた抽出液を合わせて、減圧濃縮し、抽出物固形分に対してデキストリン20%を加えて、噴霧乾燥した。アルクチゲニンおよびアルクチイン含量は、それぞれ6.2%および7.1%であり、アルクチゲニン/アルクチイン(重量比)=0.89のゴボウシ抽出物粉末(デキストリン20%含有)が得られた。 実施例7 ゴボウシ抽出物の製造2 ゴボウシ(酵素活性8.23U/g)を切裁し、9.5mmの篩を全通するものをさらに0.85mmの篩に通し、75%が残ることを確認した。このゴボウシ細切80kgを30〜33℃に保温した水560Lに加えて30分間攪拌した後、エタノール265Lを加えて85℃に昇温し、さらに30分間加熱還流した。この溶液を遠心分離し、ゴボウシ抽出液を得た。この操作を2回繰り返して得られた抽出液を合わせて、減圧濃縮し、抽出物固形分に対してデキストリン20%を加えて、噴霧乾燥した。アルクチゲニンおよびアルクチイン含量は、それぞれ6.0%および6.8%であり、アルクチゲニン/アルクチイン(重量比)=0.87のゴボウシ抽出物粉末(デキストリン20%含有)が得られた。 実施例8 ゴボウシ抽出物の製造3 ゴボウシ(酵素活性7.82U/g)を切裁し、9.5mmの篩を全通するものをさらに0.85mmの篩に通し、75%が残ることを確認した。このゴボウシ細切80kgを30〜32℃に保温した水560Lに加えて40分間攪拌した後、60分後にエタノール258Lを加えて85℃に昇温し、さらに30分間加熱還流した。この液を遠心分離し、ゴボウシ抽出液を得た。この操作を2回繰り返して得られた抽出液を合わせて、減圧濃縮し、抽出物固形分に対してデキストリン20%を加えて、噴霧乾燥した。アルクチゲニンおよびアルクチイン含量は、それぞれ6.2%および6.7%であり、アルクチゲニン/アルクチイン(重量比)=0.93のゴボウシ抽出物粉末(デキストリン20%含有)が得られた。 実施例9 ゴボウシ抽出物の製造4 ゴボウシ(酵素活性7.82U/g)を切裁し、9.5mmの篩を全通するものをさらに0.85mmの篩に通し、75%が残ることを確認した。このゴボウシ細切80kgを30〜32℃に保温した水560Lに加えて30分間攪拌した後、エタノール253Lを加えて85℃に昇温し、さらに40分間加熱還流した。この液を遠心分離し、得られた抽出液を得た。この操作を2回繰り返して得られた抽出液を合わせて、減圧濃縮し、抽出物固形分に対してデキストリン25%を加えて、噴霧乾燥した。アルクチゲニンおよびアルクチイン含量は、それぞれ6.4%および7.2%であり、アルクチゲニン/アルクチイン(重量比)=0.89のゴボウシ抽出物粉末(デキストリン25%含有)が得られた。 上記の実施例6〜9の結果から、酵素変換工程において、およそ30℃において酵素変換することにより、アルクチゲニン:アルクチイン(重量比)=約1:1の含有量のゴボウシ抽出物が得られることが分かった。通常、酵素による反応は、温度および時間に依存的に反応が進行するが、この温度であれば酵素変換時間にかかわらず、アルクチゲニン:アルクチイン(重量比)=約1:1の含有量のゴボウシ抽出物が得られることが分かった。 また、上記の実施例6〜9の結果から、加熱還流工程において、およそ85℃に温度を上昇させて加熱還流することにより、アルクチゲニン:アルクチイン(重量比)=約1:1の含有量のゴボウシ抽出物が得られることが分かった。通常、加熱還流して抽出物を得る場合、抽出物中の含有物の量は、温度および時間に依存して変化するが、この温度であれば加熱還流時間にかかわらず、アルクチゲニン:アルクチイン(重量比)=約1:1の含有量のゴボウシ抽出物が得られることが分かった。 実施例10 ゴボウシ抽出物粉末配合顆粒剤(1)実施例7のゴボウシ抽出物粉末 33.3%(2)乳糖 65.2%(3)ヒドロキシプロピルセルロース 1.5% 合計 100% 製造方法 「日局」製剤総則、顆粒剤の項に準じて顆粒剤を製造する。すなわち上表に記載の(1)〜(3)までの成分をとり、顆粒状に製した。これを1.5gずつアルミラミネートフィルムに充填し、1包あたりゴボウシ抽出物粉末を0.5g含有する顆粒剤を得た。 実施例11 ゴボウシ抽出物粉末配合錠剤(1)実施例7のゴボウシ抽出物粉末 37.0%(2)結晶セルロース 45.1%(3)カルメロースカルシウム 10.0%(4)クロスポピドン 3.5%(5)含水二酸化ケイ素 3.4%(6)ステアリン酸マグネシウム 1.0% 合計 100% (製造方法)「日局」製剤総則、錠剤の項に準じて錠剤を製する。すなわち上表に記載の(1)〜(6)成分をとり、錠剤を得た。 ゴボウシを切裁する工程と、 ゴボウシに内在するβ-グルコシダーゼによりゴボウシに内在するアルクチインをアルクチゲニンに酵素変換する工程であって、前記酵素変換は、20℃〜50℃の温度で反応させる工程と、を含む、アルクチゲニンおよびアルクチインをアルクチゲニン/アルクチイン=0.7〜1.3の重量比で含有するゴボウシ抽出物を製造する方法。 前記切裁する工程において、ゴボウシが0.85mm〜9.5mmの粒径に切裁される、請求項1に記載の方法。 請求項1記載のゴボウシに内在するβ-グルコシダーゼの酵素活性が、ゴボウシ1g中0.4U以上である、請求項1または2に記載の方法。 請求項1記載の酵素変換する工程の後に、有機溶媒を加えることにより、アルクチゲニンおよびアルクチインを含有する抽出物を抽出する工程含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。 請求項4に記載の有機溶媒がエタノールである、請求項4に記載の方法。 請求項4に記載の抽出する工程は、80℃以上で抽出される、請求項4又は5に記載の方法。 アルクチゲニンおよびアルクチインをアルクチゲニン/アルクチイン=0.7〜1.3の重量比で含有するゴボウシ抽出物を含有する抗癌剤。 膵臓癌を治療するための請求項7に記載の抗癌剤。