タイトル: | 特許公報(B2)_ドネペジル含有経皮吸収製剤 |
出願番号: | 2012512893 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | A61K 31/445,A61K 47/28,A61K 9/70,A61P 25/28 |
間 和之助 道中 康也 新 健治 高田 恭憲 JP 5665861 特許公報(B2) 20141219 2012512893 20110427 ドネペジル含有経皮吸収製剤 久光製薬株式会社 000160522 長谷川 芳樹 100088155 清水 義憲 100128381 渡辺 欣乃 100140888 間 和之助 道中 康也 新 健治 高田 恭憲 JP 2010104120 20100428 20150204 A61K 31/445 20060101AFI20150115BHJP A61K 47/28 20060101ALI20150115BHJP A61K 9/70 20060101ALI20150115BHJP A61P 25/28 20060101ALI20150115BHJP JPA61K31/445A61K47/28A61K9/70 401A61P25/28 A61K 31/00−33/44 A61K 9/00− 9/72 A61K 47/00−47/48 CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII) 特開平11−315016(JP,A) 国際公開第2003/032960(WO,A1) 国際公開第2008/021113(WO,A1) 国際公開第2009/075258(WO,A1) 桝渕幸吉,最近の皮膚外用剤,南山堂,1991年,第1版,p.195-8 2 JP2011060298 20110427 WO2011136288 20111103 13 20130501 平林 由利子 本発明は、皮膚刺激が低減されるドネペジル含有経皮吸収製剤及びその製造方法、並びに、ドネペジル含有経皮吸収製剤の皮膚刺激を低減する方法に関する。 ドネペジルはアセチルコリンエステラーゼ阻害剤であり、アルツハイマー型認知症の薬物治療に有効とされている。現在利用可能なドネペジル製剤は、ドネペジル塩酸塩を含む、口腔崩壊錠や細粒剤などの経口投与剤のみである。しかしながら、経口製剤の場合、肝臓における代謝・分解を回避することができず、消化器系における副作用や、一過性の急激な血中濃度の上昇が認められる場合がある。 さらに、ドネペジルの治療効果が期待されるアルツハイマー型認知症の患者には高齢者が多い。このため、消化器系の機能の低下により、経口投与による生物学的利用率が一定になりにくく、さらにコンプライアンスにも問題がある場合がある。また、アルツハイマー型認知症と並んでドネペジルの治療効果が期待されるダウン症及び注意欠陥多動性障害の患者のほとんどは小児である。このため、ドネペジルの副作用が深刻になる場合があり、さらに高齢者と同様にコンプライアンスが問題になる場合がある。 経口投与剤による上記の問題点や副作用を低減すべく、近年、経口剤に代わる製剤としてドネペジルを含有する経皮吸収製剤がいくつか提案されている。しかし、一般に皮膚は薬物を透過させないため、治療有効量の薬物を皮膚から体内に吸収させることは困難であり、ドネペジル含有経皮吸収製剤の十分な薬物の皮膚透過性も課題となっている。そこで特許文献1には、ドネペジルに加えて、高級アルコール、高級アルコールの乳酸エステル、高級脂肪酸と低級アルコールとのエステル、及び炭素数6〜18の脂肪酸とプロピレングリコールとのエステルから選択される経皮吸収促進剤を含む経皮適用製剤が提案されている。また、特許文献2には、TypeBの結晶形ドネペジルを含むドネペジル及び/又はその塩を粘着剤総重量当たり9質量%〜50質量%含む経皮吸収型製剤が、皮膚透過性に優れることが記載されている。 ステロイド骨格を持つステロイド類が一般に抗炎症効果を有することは周知であったが、例えば特許文献3には、コレステロールは抗炎症活性を持たないことが記載されている。また、特許文献4には、コレステロールはビスフォスフォネートを含むテープ型経皮吸収製剤において皮膚刺激性を抑制することに効果があることが記載されている。米国特許US6815454号明細書特開2007−302582号公報特開平4−501415号公報国際公開2009/075258号公報 しかしながら、本発明者らは、従来のドネペジル含有経皮吸収製剤は、適用した局所皮膚に、そう痒、紅潮、発疹、疼痛、湿疹及び皮膚炎などの皮膚刺激が生じる場合があることを見出した。そこで、皮膚刺激を低減するために経皮吸収製剤中のドネペジル含有量を低下させたところ、皮膚刺激を低減することは可能であるが、治療に必要なドネペジルの皮膚透過速度(一定時間の吸収量)が確保できなくなることを見出した。 そこで本発明の一実施形態は、皮膚刺激が少なく、ドネペジルの十分な皮膚透過速度を有する、ドネペジル及びその薬学的に許容される塩から選択される1以上の薬物を含有する経皮吸収製剤を提供することを目的とする。 本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねる中で、ドネペジルと皮膚刺激低減剤とを含む経皮吸収製剤は、皮膚刺激が少なく、ドネペジルの十分な皮膚透過速度を有することを見出し、本発明を完成するに至った。 本発明の一実施形態は、ドネペジル及びその薬学的に許容される塩から選択される1以上の薬物、並びに皮膚刺激低減剤を含有する、経皮吸収製剤を提供する。上記経皮吸収製剤によれば、皮膚に適用した際、治療に必要な薬物の皮膚透過速度を有すると共に、薬物による皮膚刺激も低減された、ドネペジル及びその薬学的に許容される塩から選択される1以上の薬物を含有する経皮吸収製剤を提供することができる。 上記の皮膚刺激低減剤は、コレステロール、コレステロール誘導体及びコレステロール類似体から選択される1以上のステロール化合物であってもよい。これにより、ドネペジルのより大きな皮膚透過速度を達成するとともに、皮膚刺激をさらに低減させることができる。 上記の皮膚刺激低減剤の含有量は、経皮吸収製剤の全量基準で0.5〜5質量%であってもよい。 本発明によれば、皮膚刺激が少なく、ドネペジルの十分な皮膚透過速度を有するドネペジル及びその薬学的に許容される塩から選択される1以上の薬物を含有する経皮吸収製剤を提供することができる。本発明はまた、皮膚刺激が低減されるドネペジル含有経皮吸収製剤の製造方法、並びに、ドネペジル含有経皮吸収製剤の皮膚刺激を低減する方法を提供することができる。図1は実験例1の結果を表すグラフである。図2は実験例3の結果を表すグラフである。 本発明の一実施形態は、少なくとも、ドネペジル及びその薬学的に許容される塩から選択される1以上の薬物、並びに皮膚刺激低減剤を含有する経皮吸収製剤を提供する。 ドネペジル(体系名:2−[(1−ベンジル−4−ピペリジニル)メチル]−5,6−ジメトキシインダン−1−オン)は、アセチルコリンを分解する酵素であるアセチルコリンエステラーゼを可逆的に阻害することにより、脳内アセチルコリン量を増加させ、脳内コリン作動性神経系を賦活するとされる。アルツハイマー型認知症の進行抑制に適用されている薬物である。使用される薬物は、フリー体のドネペジルであっても、薬学的に許容されるドネペジル塩であってもよく、これらの2つ以上の組み合わせであってもよい。薬学的に許容される塩は特に限定されず、無機塩であっても有機塩であってもよい。無機塩としては、塩酸塩、臭酸塩及びケイ酸塩などが挙げられ、特に塩酸塩が好ましい。有機塩としては、酢酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩及びマレイン酸塩などが挙げられ、特に酢酸塩が好ましい。 経皮吸収製剤において、ドネペジル及びその薬学的に許容される塩から選択される1以上の薬物の含有量は治療有効量であればよく、経皮吸収製剤の種類によって異なるが、通常経皮吸収製剤の全量基準で4〜50質量%であり、5〜30質量%、さらに6〜15質量%であってもよい。この含有量であれば、経皮吸収製剤の、ドネペジルによる皮膚刺激の低減及び十分なドネペジルの皮膚透過速度の達成を両立させることができる。なお、本明細書において、経皮吸収製剤の全量とは、薬物含有部分の全質量を意味する。軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、ゲル状クリーム剤、リニメント剤及びローション剤などの剤型の場合にはその全質量を意味し、パップ剤、テープ剤及びリザーバー型パッチなどの剤型の場合には、支持体部分を除いた部分の質量を意味し、スプレー剤及びエアゾール剤などの剤型の場合は容器部分を除いた部分の質量を意味する。 薬物の皮膚刺激を発現するメカニズムの一つとして、表皮細胞の免疫反応について様々な研究がなされている。表皮細胞は、サイトカイン、ケモカイン、炎症メディエータ及び細胞成長因子など多くの炎症誘導物質を細胞外に放出することや、サイトカインレセプター、接着因子及びMHCクラスIIを細胞上に発現することで皮膚免疫の中心的役割を演じている(皮膚免疫ハンドブック(中外医学社))。 例えば、表皮細胞が放出する炎症誘導物質には、インターロイキン(IL)−1α、IL−10、IL−12、IL−18、TNF−α、GM−CSF、IL−6、IL−7、IL−15、TGF−α、amphiregulin、HB−EGF、bFGF、VEGF、PDGF、SCF、IFN−β、IFN−γ、TGF−β、MIP−3α、IP−9、IP−10、Mig、IL−8、GROα、RANTES、MCP−1、TRAC、プロスタグランジン、ロイコトリエン、サブスタンスP、活性酸素種及び窒素酸化物があり、非常に多岐にわたり、各々が複雑に相互作用して免疫反応を調節している。 そこで、本明細書において、皮膚刺激低減とは、表皮細胞を用いたin vitro試験においては、薬物によるプロスタグランジンE2(PGE2)、IL−1α、IL−6、IL−8などの、いわゆる皮膚刺激メディエータの産生が減少すること、及び/又は、in vivoにおいては、薬物による皮膚の紅斑・痂皮及び浮腫形成などの皮膚刺激が低減されることを意味する。皮膚刺激は、例えば後述する皮膚一次刺激指数(Primary Irritation Index、PII)により評価され得る。 皮膚刺激低減剤として、例えば、水酸化アルミニウム、酸化チタン、ショ糖脂肪酸エステル、エデト酸塩、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ハイドロキノン配糖体、パンテチン、トラネキサム酸、レシチン、並びにステロイド性及び非ステロイド性抗炎症剤を使用することができる。発明者らは、ドネペジルの皮膚刺激低減剤として、コレステロール、コレステロール誘導体及びコレステロール類似体などのステロール化合物が特に好ましいことを見出した。 コレステロールとは、(3β)−コレスタ−5−エン−3−オールコレスタ−5−エン−3β−オールであり、高等動物の細胞膜の必須成分として知られている。コレステロール誘導体とは、天然又は合成コレステロール誘導体を意味し、ヒドロキシ基の部分に脂肪酸が結合したエステル体であるアシルコレステロールが例示される。また、コレステロール類似体とは、天然又は合成のコレステロール類似体を意味し、植物細胞由来のシトステロール、スチグマステロール、フコステロール、スピナステロール、カンペステロール及びブラシカステロールなどのフィトステロール類、真菌由来のエルゴステロールなどが例示される。 コレステロール、コレステロール誘導体及びコレステロール類似体は全てステロイドに分類され、その中でもステロール(ステロイドアルコール)とよばれるサブグループに属する。経皮吸収製剤は、これらステロール化合物のいずれか1つ、又は2以上の組合せを含有してもよい。これらのステロール化合物は、ドネペジルによる皮膚刺激を低減させる作用があるため、これら化合物の配合により、ドネペジルによる皮膚刺激を低減させることができる。 皮膚刺激低減剤の含有量は、経皮吸収製剤の種類によって異なるが、通常経皮吸収製剤の全量基準で0.1〜30質量%であり、0.3〜10質量%、0.5〜5質量%、さらに0.5〜3質量%であってもよい。0.1質量%以下であると十分な皮膚刺激低減効果が得られない場合があり、30質量%以上であると、経皮吸収製剤の粘着性が十分に得られない場合がある。 経皮吸収製剤は更に経皮吸収促進剤を含有することが好ましい。使用され得る経皮吸収促進剤としては、従来皮膚での経皮吸収促進作用が認められている化合物のいずれでも良い。例えば炭素鎖数6〜20の脂肪酸、脂肪アルコール、脂肪酸エステル、アミド、エーテル類、芳香族系有機酸、芳香族系アルコール、芳香族系有機酸エステル及びエーテル(以上は飽和、不飽和のいずれでもよく、また、環状、直鎖状分枝状のいずれでもよい)、乳酸エステル類、酢酸エステル類、モノテルペン系化合物、セスキテルペン系化合物、エイゾン(Azone)、エイゾン(Azone)誘導体、ピロチオデカン、グリセリン脂肪酸エステル類、プロピレングリコール脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類(Span系)ポリソルベート系(Tween系)、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油系(HCO系)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ショ糖脂肪酸エステル類及び植物油などが挙げられる。 具体的にはカプリル酸、カプリン酸、カプロン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、セチルアルコール、ラウリン酸メチル、ラウリン酸ヘキシル、ラウリン酸ジエタノールアミド、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸セチル、サリチル酸、サリチル酸メチル、サリチル酸エチレングリコール、ケイ皮酸、ケイ皮酸メチル、クレゾール、乳酸セチル、乳酸ラウリル、酢酸エチル、酢酸プロピル、ゲラニオール、チモール、オイゲノール、テルピネオール、l−メントール、ボルネオロール、d−リモネン、イソオイゲノール、イソボルネオール、ネロール、dl−カンフル、グリセリンモノカプリレート、グリセリンモノカプレート、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ショ糖モノラウレート、ポリソルベート20、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HCO−60、ピロチオデカン及びオリーブ油が例示できる。この中でも特にオレイルアルコール、ラウリルアルコール、イソステアリルアルコール、ラウリン酸ジエタノールアミド、グリセリンモノカプリレート、グリセリンモノカプレート、グリセリンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、プロピレングリコールモノラウレート、ポリオキシエチレンラウリルエーテル及びピロチオデカンが好ましい。中でも、炭素数6〜20の脂肪酸が好ましく、特にオレイン酸が好ましい。このような経皮吸収促進剤は2種以上混合して使用しても良い。 経皮吸収促進剤の配合により、十分なドネペジルの皮膚透過速度を達成できる。経皮吸収促進剤としてオレイン酸を配合する場合、オレイン酸の含有量は、通常経皮吸収製剤の全量基準で0.1〜20質量%であり、0.5〜15質量%、5〜10質量%、さらに6〜8質量%であってもよい。 経皮吸収製剤において、薬物とステロール化合物との質量比は20:1〜1:10、10:1〜1:5、さらに5:1〜1:1であってもよい。この質量比であれば、ドネペジルの皮膚透過速度に影響を与えることなく、皮膚刺激を低減することができる。また、経皮吸収促進剤としてオレイン酸を配合する場合、薬物とオレイン酸との質量比は1:10〜5:1、1:5〜3:1、さらに1:2〜2:1であってもよい。この質量比であれば、皮膚刺激を抑えつつ、十分なドネペジルの皮膚透過速度を達成することができる。 経皮吸収製剤の剤型は特に制限されないが、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、ゲル状クリーム剤、リニメント剤、ローション剤、スプレー剤、エアゾール剤、パップ剤、テープ剤及びリザーバー型パッチなどが挙げられる。中でも、付着性及び吸収性の観点から、実質的に水を含有しない剤型であるテープ剤や軟膏剤が好ましい。但し、薬物含有組成物が、原料又は製造環境に由来する1質量%以下の微量の水分を含有することは許容される。 1実施形態の経皮吸収製剤としてテープ剤を以下に挙げる。テープ剤は、支持体と、支持体の少なくとも一方の面上に積層された薬物層とを備える。薬物層はドネペジル及びその薬学的に許容される塩から選択される1以上の薬物、皮膚刺激低減剤、並びに粘着基剤を含む。皮膚刺激低減剤としては、コレステロール、コレステロール誘導体及びコレステロール類似体から選択される1以上のステロール化合物が好ましい。また、オレイン酸などの経皮吸収促進剤を更に含んでもよい。 テープ剤の薬物層は実質的に水を含有しないことが好ましい。実質的に水を含有しないとは、薬物層が非水系材料で構成されることを意味する。但し、薬物層が、原料又は製造環境に由来する1質量%以下の微量の水分を含有することは許容される。 粘着基剤としては、アクリル系粘着基剤、ゴム系粘着基剤、シリコーン系粘着剤基などが例示される。アクリル系粘着基剤としては、アルキル基の炭素数が4〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単独重合体又は共重合体、あるいは上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとその他の官能性モノマ−との共重合体が好適に用いられる。なお、(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルを意味する。 具体的な粘着基剤としては、医薬品添加物事典2000(日本医薬品添加剤協会編集)に粘着剤として収載されているアクリル酸・アクリル酸オクチルエステル共重合体、アクリル酸2−エチルヘキシル・ビニルピロリドン共重合体溶液、アクリル酸エステル・酢酸ビニルコポリマー、アクリル酸2−エチルヘキシル・メタクリル酸2−エチルヘキシル・メタクリル酸ドデシル共重合体、アクリル酸メチル・アクリル酸2−エチルヘキシル共重合樹脂エマルジョン、アクリル樹脂アルカノールアミン液に含有するアクリル系高分子などの粘着剤、DURO−TAKアクリル粘着剤シリーズ(ヘンケル)、オイドラギットシリーズ(Evonik Industries)などを使用することができる。 アクリル系粘着基剤としては、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート及び2−エチルヘキシルメタアクリレートなどに代表される(メタ)アクリル酸誘導体の少なくとも一種を含む共重合体を含むものであれば特にその限定は無いが、2−エチルヘキシルアクリレートを50%以上含有するものが望ましい。 ゴム系粘着基剤としては、スチレンーイソプレンースチレンブロック共重合体(SIS)、イソプレンゴム、ポリイソブチレン(PIB)、スチレンーブタジエンースチレンブロック共重合(SBS)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)及びポリシロキサンなどが挙げられ、その中でもSIS、PIB及びポリシロキサン類が好ましく、特にSIS及びPIBが好ましい。 シリコーン系粘着基剤としては、ポリオルガノシロキサン、ポリジメチルシロキサンを主成分とするものが使用される。 上記の粘着基剤は2種以上混合して使用してもよく、粘着基剤の配合量は、薬物層の形成及び充分なドネペジルの皮膚透過速度を考慮して、通常全量基準で5〜90質量%であり、10〜70質量%、さらに10〜50質量%であってもよい。 薬物層はさらに可塑剤を含有してもよい。可塑剤としては、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル及び芳香族系プロセスオイルなどの石油系オイル;スクワラン;スクワレン;オリーブ油、ツバキ油、ひまし油、トール油及びラッカセイ油などの植物系オイル;シリコンオイル;ジブチルフタレート及びジオクチルフタレートなどの二塩基酸エステル;ポリブテン及び液状イソプレンゴムなどの液状ゴム;ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、セバシン酸ジエチル及びセバシン酸ジイソプロピルなどの液状脂肪酸エステル類;ジエチレングリコール;ポリエチレングリコール;サリチル酸グリコール;プロピレングリコール;ジプロピレングリコール;トリアセチン;クエン酸トリエチル;クロタミトンなどが例示できる。これらの中でも、流動パラフィン、液状ポリブテン、ミリスチン酸イソプロピル、セバシン酸ジエチル及びラウリン酸ヘキシルが好ましく、特に、液状ポリブテン、ミリスチン酸イソプロピル及び流動パラフィンが好ましい。これらの可塑剤は2種以上混合して使用しても良い。 可塑剤の配合量は、充分なドネペジルの皮膚透過速度及び経皮吸収製剤としての充分な凝集力の維持を考慮して、通常全量基準で10〜70質量%であり、10〜60質量%、さらに10〜50質量%であってもよい。 薬物層はさらに粘着付与樹脂を含有してもよい。粘着付与樹脂としては、ロジン、ロジンのグリセリンエステル、水添ロジン、水添ロジンのグリセリンエステル及びロジンのペンタエリストールエステルなどのロジン誘導体、アルコンP100(商品名、荒川化学工業)などの脂環族飽和炭化水素樹脂、クイントンB170(商品名、日本ゼオン)などの脂肪族1系炭化水素樹脂、クリアロンP−125(商品名、ヤスハラケミカル)などのテルペン樹脂、マレイン酸レジンなどが挙げられる。これらの中でも、特に水添ロジンのグリセリンエステル、脂環族飽和炭化水素樹脂、脂肪族系炭化水素樹脂及びテルペン樹脂が好ましい。 粘着付与樹脂の配合量は、経皮吸収製剤としての充分な粘着力及び剥離時の皮膚への刺激性を考慮して、通常全量基準で5〜70質量%であり、5〜60質量%、さらに10〜50質量%であってもよい。 支持体は、薬物層を支持するのに適したものであれば特に限定はされず、伸縮性又は非伸縮性のものを用いることができる。ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ナイロン、ポリウレタンなどのフィルム、シート、これらの積層体、多孔体、発泡体、布及び不織布、並びにこれらのラミネート品などが使用できる。テープ剤の薬物層の、支持体に接する面と反対側の面には、患部への適用前にはがして使用する剥離被覆物を備えてもよい。剥離被覆物としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート及びこれらをシリコーンで離型処理したものや剥離紙などを用いることができる。 次に、テープ剤の製造方法を説明する。アクリル系粘着基剤を使用したテープ剤の場合、薬物、必要に応じてオレイン酸、ステロール化合物及び粘着基剤を溶媒に溶解ないし分散させ、得られた溶液ないし分散液を支持体表面に直接塗布・乾燥し、厚み30〜200μmの薬物層を形成するか、上記の溶液ないし分散液を、一旦剥離処理の施されている紙あるいはフィルム上に塗布し、乾燥後に得られた貼付層を支持体に圧着転写する。続いて、薬物層の、支持体に接する面と反対側の面を剥離被覆物で覆い、適宜の大きさに裁断してテープ剤を得る。なお、上記の製造方法における各成分の配合順序は、その一例を述べたにすぎず、この配合順序に限定されるものではない。この製造方法に用いられる溶媒は、粘着基剤及び薬物などの配合成分の全てに相溶性のある有機溶媒であれば特に限定されないが、例えば、トルエン、ベンゼン及びキシレンなどの芳香族炭化水素類、酢酸エチルなどのエステル類、四塩化炭素、クロロホルム及び塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素類が使用できる。 ゴム系粘着基剤を使用したテープ剤の場合、ニーダー、ミキサーなどの混合機を用い、粘着基剤及び必要に応じて可塑剤及び粘着付与樹脂を加熱混合する。続いて、薬物、必要に応じてオレイン酸、及びステロール化合物を加え、均一に分散させて支持体に直接展延するか、一旦剥離処理の施されている紙あるいはフィルムに展延し、その後支持体に圧着転写する。続いて、薬物層の、支持体に接する面と反対側の面を剥離被覆物で覆い、適宜の大きさに裁断してテープ剤を得る。なお、上記の製造方法における各成分の配合順序は、その一例を述べたにすぎず、この配合順序に限定されるものではない。 上記したような構成を有する経皮吸収製剤は、通常知られているいずれの方法によっても製造されることができる。例えば、ドネペジルを含む粘着基剤を熱融解させ、離型紙又は支持体に塗工後、支持体又は離型紙と張り合わせて本剤を得る。また、ドネペジルを含む粘着基剤成分をトルエン、ヘキサン又は酢酸エチルなどの溶媒に溶解させ、離型紙又は支持体上に伸展して溶剤を乾燥除去後、支持体あるいは離型紙と張り合わせ本剤を得ることが可能である。 別の実施形態として、経皮吸収製剤の軟膏剤を以下に挙げる。軟膏剤は、ドネペジル及びその薬学的に許容される塩から選択される1以上の薬物、並びに皮膚刺激低減剤を含む。皮膚刺激低減剤としては、コレステロール、コレステロール誘導体及びコレステロール類似体から選択される1以上のステロール化合物が好ましい。また、オレイン酸などの経皮吸収促進剤を更に含んでもよい。 軟膏剤は実質的に水を含有しないことが好ましい。実質的に水を含有しないとは、軟膏剤が非水系材料で構成されることを意味する。但し、軟膏剤が、原料又は製造環境に由来する1質量%以下の微量の水分を含有することは許容される。 軟膏剤は、薬物、必要に応じてオレイン酸、及びステロール化合物に加えて、ミリスチン酸などの高級脂肪酸又はそのエステル、鯨ロウなどのロウ類、ポリオキシエチレンなどの界面活性剤、親水ワセリンなどの炭化水素類を含む。軟膏剤は、全量基準で、高級脂肪酸又はそのエステル5〜15質量%、界面活性剤1〜10質量%、薬物0.1〜30質量%、ステロール化合物0.1〜30質量%、ロウ類4〜10質量%及び炭化水素類50〜90質量%を加えて加熱し、全成分が透明溶解液になった後、ホモミキサーで均一に混和し、撹拌しながら室温まで下げることによって製造できる。 これらの経皮吸収製剤には、本発明の目的を損なわない範囲で、薬理上許容される各種添加剤、例えば、安定剤、酸化防止剤、香料、充填剤及び経皮吸収促進剤を添加することができる。 本発明の他の実施形態はまた、経皮吸収製剤にドネペジル及びその薬学的に許容される塩から選択される1以上の薬物並びに皮膚刺激低減剤を配合する工程を含む、皮膚刺激が低減されるドネペジル含有経皮吸収製剤の製造方法、及び経皮吸収製剤の皮膚刺激を低減する方法を提供する。 以下、実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲での種々の変更が可能である。(製造例) ドネペジル含有経皮吸収製剤を調製した。表1記載の配合量にて材料を混合し、塗布液とした。塗布液を離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム上に展延し、温風をあてて溶剤を乾燥除去して薬物層を形成し、これに支持体(サンドマットPET、帝人デュポンフィルム株式会社製)を積層した。その後、適宜裁断して実施例1〜9及び比較例1のドネペジル含有経皮吸収製剤を得た。なお、表1に記載の割合はドネペジル含有経皮吸収製剤の全量基準(質量%)である。(実験例1 ヘアレスマウス皮膚透過試験) ヘアレスマウスの体側部皮膚を剥離し、角質層側に実施例6及び比較例1のドネペジル含有経皮吸収製剤(約3cm2)を貼付した後、真皮側をレセプター層側にして、37℃の温水を外周部に循環させたフロースルーセルに装着した。レセプター層にpH7.4のリン酸緩衝液(PBS)を用い、約5mL/hrの流速で、実施例6の経皮吸収製剤については3時間毎、比較例1の経皮吸収製剤については2時間毎に24時間までサンプリングを行った。得られたレセプター溶液の流量を正確に測定し、高速液体クロマトグラフ法によりドネペジルの薬物濃度を測定し、1時間あたりのドネペジルの皮膚透過速度を算出した。結果を図1に示す。実施例6のドネペジル含有経皮吸収製剤は、比較例1のものと比較してより高い皮膚透過速度を示した。(実験例2 コレステロールによるヒト表皮細胞の皮膚刺激メディエータの産生低減) ヒト正常表皮細胞を重層培養したヒト3次元培養表皮モデル(LabCyte EPI−MODEL、ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング社製)を用いた。LabCyteはトランスウェル内で培養された培養皮膚である。実験にはLabCyteをトランスウェルとともに使用した。 被験物質として、コレステロール(和光純薬工業社製)を用いた。薬物として塩酸ドネペジルを用いた。媒体として、オリーブ油(和光純薬)を用いた。 以下の群構成で試験を行った。・薬物単独添加群:試験溶液として4×10−4Mの塩酸ドネペジルのみを媒体に分散させたものを添加した群。・コレステロール添加群:試験溶液として4×10−4Mの塩酸ドネペジルと1質量%のコレステロールを媒体に分散させたものを添加した群。 細胞に各群の試験溶液を添加し48時間培養した培養液を回収し、皮膚刺激メディエータの産生量を測定した。皮膚刺激メディエータとして、PGE2、IL−1α、IL−6及びIL−8を測定した。皮膚刺激メディエータの測定には、市販のELISAキット(R&Dシステムズ社製)を用いた。薬物単独添加群における皮膚刺激メディエータの産生量を100とした場合のコレステロール添加群における皮膚刺激メディエータの相対産生量を以下のように算出した。 相対産生量=(コレステロール添加群のメディエータ産生量)/(薬物単独添加群のメディエータ産生量)×100 結果を表2に示す。表2によれば、コレステロールは、塩酸ドネペジルによる皮膚刺激メディエータの産生低減効果を示した。(実験例3 ウサギ皮膚一次試験) 2cm×2cmの実施例5〜9及び比較例1のドネペジル含有経皮吸収製剤を、ウサギの剃毛済み背部皮膚に貼付した。貼付24時間後に剥離し、剥離後1時間及び48時間目に紅斑・痂皮及び浮腫形成について肉眼的に観察し、表3に示すDraizeらの評価基準に基づいて採点し、皮膚一次刺激指数(PII)を算出した。結果を図2に示す。ドネペジル含有経皮吸収製剤は、コレステロールの配合によりPIIを減少させ、コレステロールの配合量が0.5〜5質量%の間である場合、コレステロール未配合の比較例1と比べて十分にPIIを減少させた。 本発明の一実施形態によれば、皮膚刺激が少なく、ドネペジルの十分な皮膚透過速度を有するドネペジル及びその薬学的に許容される塩から選択される1以上の薬物を含有する経皮吸収製剤を提供することができる。本発明の他の実施形態によれば、経皮吸収製剤にドネペジル及びその薬学的に許容される塩から選択される1以上の薬物並びに皮膚刺激低減剤を配合する工程を含む、皮膚刺激が低減されるドネペジル含有経皮吸収製剤の製造方法、及び経皮吸収製剤の皮膚刺激を低減する方法を提供することができる。 ドネペジル及びその薬学的に許容される塩から選択される1以上の薬物、並びに、コレステロールからなる皮膚刺激低減剤を含有する、経皮吸収製剤。 前記皮膚刺激低減剤の含有量は、経皮吸収製剤の全量基準で0.5〜5質量%である、請求項1に記載の経皮吸収製剤。