生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_ヒアルロン酸及び/又はその塩の溶解方法
出願番号:2012505376
年次:2014
IPC分類:C08B 37/08,A61K 9/08,A61K 31/728,A61P 19/02,A61P 29/00,A61K 47/02,C12M 1/02,C12P 19/04


特許情報キャッシュ

萩原 丈士 服部 裕司 星加 博光 JP 5603925 特許公報(B2) 20140829 2012505376 20100317 ヒアルロン酸及び/又はその塩の溶解方法 電気化学工業株式会社 000003296 小林 義教 100101199 園田 吉隆 100109726 萩原 丈士 服部 裕司 星加 博光 20141008 C08B 37/08 20060101AFI20140918BHJP A61K 9/08 20060101ALN20140918BHJP A61K 31/728 20060101ALN20140918BHJP A61P 19/02 20060101ALN20140918BHJP A61P 29/00 20060101ALN20140918BHJP A61K 47/02 20060101ALN20140918BHJP C12M 1/02 20060101ALN20140918BHJP C12P 19/04 20060101ALN20140918BHJP JPC08B37/08 ZA61K9/08A61K31/728A61P19/02A61P29/00 101A61K47/02C12M1/02 AC12P19/04 C C08B 37/ A61K 31/ 特開平08−188534(JP,A) 特開平10−306103(JP,A) 特開2009−256464(JP,A) 特開昭63−123392(JP,A) 特開平02−234689(JP,A) 特開平04−158796(JP,A) 11 JP2010054591 20100317 WO2011114469 20110922 17 20130308 井上 典之 本発明は、ヒアルロン酸及び/又はその塩の含有液から、医薬品に適合したヒアルロン酸及び/又はその塩(以下、総称してヒアルロン酸類ともいう)の注射液を製造する技術に関する。 ヒアルロン酸は、N−アセチル−D−グルコサミンとD−グルクロン酸とが結合した2糖単位が繰り返し連鎖してなる、分子量が500万にも及ぶと言われている高分子量の多糖類である。一般に、そのグルクロン酸がナトリウム塩の形となったヒアルロン酸ナトリウムとして分離精製される。分子量約200万のヒアルロン酸ナトリウムは、分子量約80万のものに比べて医薬品として、変形性膝関節症、肩関節周囲炎、慢性関節リウマチ等の治療に優れた効果を発揮することが知られている(薬理と治療 Vol.22 No.9 289,(1994);薬理と治療 Vol.22 No.9 319,(1994))。 更に、外科手術後の癒着防止用として、また皮膚科領域、眼科領域においても医薬品としての効果が知られており、実用化されているものもある。微生物発酵法により製造されるヒアルロン酸ナトリウムは、例えばある種のストレプトコッカス属を用いて培養し、得られた培養液を希釈し、種々の精製工程を経て、粉末状で取得される。 微生物発酵法によれば、ヒアルロン酸ナトリウムを高分子量のまま精製取得することができるが、ヒアルロン酸ナトリウム注射液を大量製造するに際しては、種々の困難な問題があった。 即ち、高分子量のヒアルロン酸ナトリウムの溶解を短時間で効率よく行うことが難しいこと、該溶液の粘度が非常に高いため取り扱いにくいこと、更に熱等に不安定でろ過あるいは滅菌が難しいこと等である。従って、高分子量のヒアルロン酸ナトリウム注射液を大量に製造する方法については、明らかにされていなかった。 本発明者は、ヒアルロン酸類の含有液を注射液として大量に製造するにあたり、ヒアルロン酸類の含有液中から異物を効率よく分離除去し、高純度の医薬品グレードのヒアルロン酸類を取得する方法について研究を重ねたが、その研究過程で、ヒアルロン酸類を注射溶液に溶解させる際に、一般的な撹拌槽を通常の条件で用いたのでは、ヒアルロン酸類が十分に溶解せず凝集物が生じてしまったり、溶解の際にヒアルロン酸類の分子量の低下を招いてしまったりして、撹拌溶解工程がネックとなってしまうことが判明した。 本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、一般にヒアルロン酸類の注射液を製造する際に好適に実施できるヒアルロン酸類の溶解方法を提供することを目的とする。 また、本発明の目的は、高分子量のヒアルロン酸類を、凝集を可及的に抑制しながら注射用溶解液に十分に分散させ、清澄な溶解液を得ることができるヒアルロン酸類の溶解方法を提供することにある。 更に、本発明の目的は、高分子量のヒアルロン酸類を、その分子量を可及的に低下させることなく注射用溶解液に溶解させることができるヒアルロン酸類の溶解方法を提供することにある。 本発明の第一の態様によれば、次の方法が提供される。即ち、 (1)タービン型、ディスパー型、ディスパータービン型、アンカー型、パドルブレード付鋸羽翼から選ばれた撹拌翼を備えた撹拌槽を用いて、注射用水、生理食塩水、及び緩衝生理食塩水から選ばれた一種の注射用溶解液に、ヒアルロン酸及び/又はその塩を溶解させるヒアルロン酸及び/又はその塩の溶解方法; (2)撹拌翼の軸が容器中央又は偏心させた位置にある撹拌槽を用いる(1)記載のヒアルロン酸及び/又はその塩の溶解方法; (3)撹拌翼が、1段又は多段である撹拌槽を用いる(2)記載のヒアルロン酸及び/又はその塩の溶解方法; (4)撹拌翼の回転数が100〜5000rpmである撹拌槽を用いる(3)記載のヒアルロン酸及び/又はその塩の溶解方法; (5)撹拌槽及びラインの内面材質がテフロン、テフロンライニング又はテフロンコーティングである(4)記載のヒアルロン酸及び/又はその塩の溶解方法; (6)ヒアルロン酸及び/又はその塩が、平均分子量150万〜400万である(1)〜(5)の何れかに記載のヒアルロン酸及び/又はその塩の溶解方法; (7)ヒアルロン酸及び/又はその塩が、ストレプトコッカス・エキFM−100又はストレプトコッカス・エキFM−300を用いて、発酵法により製造されるものである(1)〜(6)の何れかに記載のヒアルロン酸及び/又はその塩の溶解方法。 かかる方法によれば、注射液を製造する際に使用できる高品質のヒアルロン酸類の溶解液を得ることができる。 本発明の他の態様によれば、次の方法が提供される。 即ち、 (8)大ピッチドタービン翼又はディスパータービン翼の撹拌翼を備えた撹拌槽を用いて、注射用水、生理食塩水、及び緩衝生理食塩水から選ばれた一種の注射用溶解液に、ヒアルロン酸及び/又はその塩を溶解させるヒアルロン酸及び/又はその塩の溶解方法; (9)撹拌槽が略縦型円筒状であり、撹拌翼が槽中心から径方向外方に偏心させた位置に軸を位置させて配設される(8)記載のヒアルロン酸及び/又はその塩の溶解方法; (10)撹拌翼の軸の偏心位置が、中心線を1:2に分ける位置である(9)記載のヒアルロン酸及び/又はその塩の溶解方法; (11)撹拌槽が、撹拌翼径/槽内径の比が0.3〜0.5となる撹拌翼を備える(8)〜(10)の何れか一項に記載のヒアルロン酸及び/又はその塩の溶解方法; (12)撹拌翼を1500〜1800rpmの回転数で作動させる(8)〜(11)の何れか一項に記載の溶解方法; (13)撹拌時間を45分以上とする(8)〜(12)の何れか一項に記載の溶解方法; (14)撹拌槽及び撹拌槽に接続されるラインの少なくとも内面がステンレス鋼製で電解研磨仕上げされている(8)〜(13)の何れかに記載の溶解方法; (15)ヒアルロン酸及び/又はその塩が、平均分子量150万〜400万である(8)〜(14)の何れかに記載の溶解方法; (16)ヒアルロン酸及び/又はその塩の濃度が0.75〜1.25w/v%となるように溶解する(8)〜(15)の何れか一項に記載の溶解方法; (17)ヒアルロン酸及び/又はその塩が、ストレプトコッカス・エキFM−100又はストレプトコッカス・エキFM−300を用いて、発酵法により製造されるものである(8)〜(16)の何れか一項に記載の溶解方法。 かかる方法によれば、高分子量のヒアルロン酸類を、凝集や分子量の低下を可及的に抑制しながら、注射用溶解液に十分に分散させることができ、注射液の大量スケールでの製造が可能となる。本発明の一実施態様に係る溶解方法を実施するための撹拌槽に設置されるディスパータービン型撹拌翼の概略平面図である。図1のディスパータービン型撹拌翼の側面図である。他のディスパータービン型撹拌翼の例を示す、図1と同様の図である。図3のディスパータービン型撹拌翼の側面図である。撹拌槽に大ピッチドタービン翼を配設した状態を示す図で、(a)は概略側断面図、(b)は(a)におけるb−b矢視図である。撹拌槽に二段ピッチドタービン翼を配設した状態を示すもので、(a)は概略側断面図、(b)は(a)におけるb−b矢視図、(c)は(a)におけるc−c矢視図である。撹拌槽にピッチドタービン翼とパドルの併用翼を配設した状態を示すもので、(a)は概略側断面図、(b)は(a)におけるb−b矢視図、(c)は(a)におけるc−c矢視図である。ディスパータービン翼を撹拌槽に配設した状態を示すもので、(a)は概略側断面図、(b)は(a)におけるb−b矢視図である。マックスブレンド翼を撹拌槽に配設した状態を示すもので、(a)は概略側断面図、(b)は(a)におけるb−b矢視図である。ディゾルバー翼を撹拌槽に配設した状態を示すもので、(a)は概略側断面図、(b)はディゾルバー翼の平面図である。 以下、本発明を実施するための形態について説明する。 本発明に用いられるヒアルロン酸類は、遊離の形のヒアルロン酸、ヒアルロン酸の塩、又は遊離のヒアルロン酸とヒアルロン酸の塩との混合物を包含する。ヒアルロン酸の塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、リチウム塩等が挙げられるが、ナトリウム塩が最も一般的に用いられる。更に本発明で使用するヒアルロン酸類含有液は、動物組織から抽出したものでも、また発酵法で製造したものでもよいが、発酵法で製造したものを使用するのが好ましい。 発酵法によるヒアルロン酸類は、例えばストレプトコッカス属等のヒアルロン酸生産能を有するバクテリア等の微生物を使用して既知の方法で得ることができる。発酵法で使用する菌株としては、自然界から分離されるヒアルロン酸生産能を有する微生物、又は特開昭63−123392号公報に記載されたストレプトコッカス・エキFM−100(微工研菌寄第9027号)、特開平2−234689号公報に記載されたストレプトコッカス・エキFM−300(微工研菌寄第2319号)のような高収率で安定にヒアルロン酸を生産する変異株が挙げられ、かかる変異株が好適に用いられる。 上記発酵法により製造され、本発明で使用できるヒアルロン酸類は、高分子量のもので、一般に平均分子量が150万〜400万のものである。平均分子量が150万より小さい場合には医薬品としての効能が低下する一方、平均分子量が400万より大きいものを上記の方法で得ることが困難であるからである。但し、本発明に係る溶解方法が、低分子量のヒアルロン酸の溶解に使用できないということではない。 ヒアルロン酸類を溶解する工程で用いる注射用溶解液としては、注射用水、生理食塩水及び緩衝生理食塩水を使用することができ、特に酸、アルカリ、リン酸塩のような緩衝剤を含むpH調整剤等を加えた日本薬局方の製剤総則注射剤の項で認められているものを使用することができる。 溶解工程でのヒアルロン酸類の添加量としては、ヒアルロン酸類濃度が0.75〜1.25w/v%となるように設定する。ヒアルロン酸類濃度0.75w/v%以下では、ヒアルロン酸類溶液の粘度は低く、製造が容易である。また1.25w/v%以上は、ヒアルロン酸類の溶解度から大量に調製することが難しい。よって、高粘度の溶液となるヒアルロン酸類濃度0.75〜1.25w/v%が、本発明の溶解方法が対象とする製造条件に該当する。 溶解するヒアルロン酸類はバルブ付の気密容器に充填しておき、バルブを介した投入シュートによって撹拌槽に投入するのが好ましい。投入シュートの角度は、50°以上の急勾配にするのが好ましく、該容器を逆さにして、ヒアルロン酸類を投入するとき、ロスが少なくなる。バルブは、バタフライ弁を用いるのが好ましく、その切り換えによりヒアルロン酸類を外気に触れさせることなく、無菌的に撹拌槽に投入することが可能になる。尚、このバルブ付の気密容器の材質は、ステンレス鋼もしくはその内面にテフロンコーティングしたもの又は内面を電解研磨仕上げしたものが、洗浄性、取扱いの簡便さ等から好ましい。 溶解に使用される撹拌槽は、一般的な略縦型円筒状の槽本体に縦軸型の撹拌装置を付設してなるもので、撹拌装置は、軸線を上下方向に向けて槽本体の内部に配設される軸と、該軸の下端(及び場合によっては中段部位)に略水平に取り付けられる撹拌翼と、該軸の上端に取り付けられると共に槽本体の天蓋部上に設置される駆動装置を具備してなる。 上記撹拌槽における撹拌溶解工程においては、ヒアルロン酸類の注射用溶解液への溶解性がよくないことと、溶液が高粘度であること、更には、溶解の際に分子量の低下を招くことが多いことから、前述のように解決すべき課題があった。そこで、本発明者は、上記撹拌槽において、様々な型式の撹拌機を様々な条件で使用し、鋭意比較検討を行った。その結果、特定のタイプの撹拌機を特定の条件で使用するのが好ましいことが判明した。 即ち、撹拌装置としては、タービン型、ディスパー型、ディスパータービン型、アンカー型、パドルブレード付鋸羽翼から選ばれた撹拌翼を備えた撹拌機を用いることができるが、これらの間で更に比較検討すると、タービン型、ディスパー型、ディスパータービン型の撹拌翼を有するものが好ましく、特に、大ピッチドタービン翼及びディスパータービン翼が好ましいことが分かった。 また、撹拌翼を配設する位置(撹拌翼の軸の位置)は、通例に従い、槽本体の略中央位置とできるが、撹拌翼の軸を槽本体の半径方向外方に偏心させて設置すると、ヒアルロン酸類の溶解速度が速くなるので好ましいことが分かった。例えば、偏心位置は、槽本体の中心線上の槽直径を1:2に分ける位置、1:3に分ける位置、1:4に分ける位置、1:5に分ける位置等とできるが、なかでも1:2に分ける位置が好ましいことが分かった。 更に、撹拌翼の回転数については、一般には100〜5000rpm、例えば800〜2000rpmが適当であり、特に撹拌翼のなかでも好ましい大ピッチドタービン翼及びディスパータービン翼については、1500〜1800rpmの回転数が好ましいことが分かった。回転数が小さすぎると、ヒアルロン酸類の注射用溶解液への分散性が不良となる。逆に、回転数を大きくしようとしても、ヒアルロン酸類の分子量が高すぎるため、撹拌翼が回転しなくなってしまう。また、溶解に際しては、撹拌と同時に加温するのが効果的である場合が多いが、ヒアルロン酸類の場合は、加温により分子量低下等の不具合な物性変化が起こりうる。更に、撹拌が十分でない場合には、撹拌時間を長くすることが考えられるが、撹拌時間を長くしてしまった場合にも分子量低下等の物性変化が生じうる。しかし、撹拌翼形状、位置、他の運転条件等の調節に加えて、回転数を上記の範囲に設定することにより、加温することのない穏和な条件下で、短時間で溶解することができる。 更に、撹拌翼のサイズについても最適な範囲があることが判明した。即ち、撹拌翼は、撹拌翼径(d)/槽内径(D)の比(d/D)が0.3〜0.5とするのが好ましい。かかる比が0.3より少なくなると、撹拌効果が十分ではなく、溶解性、分散性が悪くなる一方、0.5を越えると、分子量が低下してしまう等の不具合が生じるためである。 また、同様に、撹拌時間も、短いと、撹拌効果が十分ではなく、溶解性、分散性が悪くなる一方、長すぎると、分子量が低下してしまう等の不具合が生じる。例示的には、45分以上で、100分程度まで、特に60分程度までが好ましい。 また、撹拌翼は、上記のように、撹拌翼の種類、大きさ、設置位置、回転数等々を適切に設計すれば、一段で足りるが、多段にすることを排除するものではない。 溶解操作において、適宜撹拌槽内を減圧することが好ましい。それはヒアルロン酸類及び液中の気泡を除去するためであるが、溶解速度を速めるためにも有効である。 ヒアルロン酸類溶液は、高粘度であるが、その脱泡のために、真空ポンプ等の通常の減圧手段を用い、5〜20kPa absまで減圧するのが好ましい。温度を上げたり、溶液の撹拌を併用して行うとさらに効果が上がる。 溶解用撹拌槽内面の材質は、食塩水に対する耐食性、溶解後の内面の洗浄性などから、ステンレス、ガラス、テフロン(登録商標)等が挙げられるが、ヒアルロン酸類溶液の材質表面への付着の点から、テフロン(登録商標)、テフロン(登録商標)ライニング又はテフロン(登録商標)コーティングが好ましい。テフロン(登録商標)は他の材質に比べ、ヒアルロン酸類溶液の付着が少ないので、撹拌槽から溶解液を排出したり、撹拌槽を洗浄するのに適しているためである。 あるいは、テフロン(登録商標)の代わりにステンレス鋼、特にSUS316Lを用いることも好ましく、その場合、内面を電解研磨仕上げすると、テフロン(登録商標)と同等以上の性能が得られる。 撹拌溶解後は、滅菌、異物濾過、脱泡、充填の各工程が実施される。 これらの工程について簡単に説明すると、ヒアルロン酸類溶液の滅菌は、異物除去の前、又はバイアル等の容器に充填した後で行う。 異物ろ過はろ過処理により行われる。ろ過で使用されるろ過膜は孔径0.2〜50μmが好ましい。孔径がその範囲より小さい場合は、前工程で得られた滅菌液が非常に高粘度液のため膜を通液させるのが困難であり、また孔径がその範囲より大きい場合は、異物ろ過が不完全になり、注射液中に目視で判別できる不溶性異物が混在するので好ましくない。 ろ過膜の材質はポリテトラフルオロエチレン、ポリエステル、テフロン(登録商標)、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン及びナイロン等の中から選定できるが、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロピレン又はナイロンが好ましい。ろ過膜の形状としては、平膜、フィルターカートリッジ、ディスポーザブルフィルターのいずれも可能であるが、大量に処理する場合には、フィルターカートリッジ又はディスポーザブルフィルターが好ましい。本発明で使用できるろ過膜の具体例としては、日本ミリポア社製ミリパックやデュラポアミリディスク等がある。 ヒアルロン酸類含有液のpHは2〜10、温度は5〜100℃の中で任意の条件が選択される。通液時の流量及び圧力については、フィルターの種類に応じて耐圧性を考慮して設定するが、圧力をかけるとフィルターから異物が流出することもあるので注意しなければならない。ミリディスク40では、流量50〜300L/hr、処理圧0.01〜0.50MPaが好ましい。ろ過液は注射用溶解液で希釈し、濃度調整することもできる。 充填工程では、ヒアルロン酸類溶液を容器に充填する部分と充填後の容器にゴム栓を打栓あるいは容器を熔封する密封部分からなる充填機が使用される。充填される注射液用容器としては、一般のアンプル、バイアル、デュファージョクト型やプレフィルドシリンジが使用される。 次に、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明がこの実施例の記載内容に限定されるものではない。<実施例1> ストレプトコッカス・エキFM−100(微工研菌寄第9027号)を用いて発酵法で得られた分子量237万のヒアルロン酸ナトリウム1580gを20Lのバタフライ弁のついた気密容器に充填した。内面がテフロンコーティングされているステンレス鋼製の容量200Lの撹拌槽にディスパータービン型の撹拌羽根を取付け、pH7.3の2mMリン酸ナトリウム緩衝液を含む生理食塩液(注射用溶解液)149Lを撹拌槽に仕込んだ。 前述のヒアルロン酸ナトリウムを充填した気密容器を撹拌槽の原末投入口に逆さに取付け、バタフライ弁を開き、ヒアルロン酸ナトリウムを撹拌槽中に投入した。図1〜2にディスパータービン型撹拌羽根(ディゾルバー翼径275mm、12枚羽根とピッチドパドル翼6枚羽根からなる)の平面図を示す。 1800rpmで撹拌を50分間行い、ヒアルロン酸ナトリウムを完全に溶解した。液中の気泡を除去するため、撹拌槽内圧力を20分間、真空度15kPa absに維持し、気泡を除去した後、常圧に戻した。この溶液のヒアルロン酸ナトリウム濃度をカルバゾール硫酸法により測定したところ、1.00%となった。この液の極限粘度を第十五改正日本薬局方に従って測定すると、33.8dL/gであり、分子量に換算すると237万であった。 この溶解液をキッコーマン社製キッズクッカー連続滅菌機で連続滅菌した。この装置は、二重管からなり、内管は内径23mmで、固定の撹拌機が内蔵され、加熱部の容積3.4L、ホールド部容積0.6L、冷却部容積2.6Lであった。ホールド部の温度が135℃になるように、加熱部外管の熱水を調節し、ホールド部での滞留時問が34秒になるように加熱部入口の定量ポンプを制御した。 冷却部は、出口温度が40℃以下になるように、冷却部外管の水を調節した。冷却部出口圧力が0.33MPaになるように圧力調節弁で制御し、冷却したヒアルロン酸ナトリウム溶解液を孔径5μmのポリ塩化ビニリデン製のろ過膜からなる日本ミリポア社製ミリディスク40を用いて流量60L/hrでろ過した。 ろ過液を、30分間、144rpmで攪拌混合した。次いで、その液をダイアフラム型の充填ポンプを有する充填部、ゴム栓の打栓、巻締め機構を有するバイアル充填密封機で、バイアル瓶に2.85Lずつ充填した。ゴム栓はブチルゴム(大協精工社製)を打栓した。 製品の品質試験を第十五改正日本薬局方、製剤総則・注射剤の項に従って行い、その中の不溶性異物検査を行ったところ、合格率は99.9%以上であった。 また、図1〜2に示したディスパータービン型撹拌羽根の代わりに図3〜4に示したようなディスパータービン型撹拌羽根(翼径243mm、12枚羽根、と翼径170mm、4枚羽根からなる)を用いて同様な条件で操作を行ったところ、同様に有効であることが確認された。<実施例2> 撹拌槽における撹拌機の構成を種々変更して最適な撹拌翼、撹拌条件を求めるべく、溶解試験を行った。溶解試験では、生理食塩水149Lを仕込んだ槽内径550mmの撹拌槽に、ヒアルロン酸ナトリウム(極限粘度35.0dL/g)1580gを投入し、撹拌機を作動させてこれを溶解させた。溶解試験の結果は、ヒアルロン酸ナトリウムの分散性、溶解の可否、分子量低下について、以下に記載の各基準に従って評価する。[分散性] ヒアルロン酸類の挙動を目視で確認し、次の判定基準に従って、評価する。 ○:槽内全体にヒアルロン酸類が分散している状態 △:ヒアルロン酸類が槽底付近で分散しており、槽全体には分散していない状態 ×:大半のヒアルロン酸類が槽底にあり、分散が殆ど認められない状態[溶解可否] 次の判定基準a〜cを総合的に判定し、全ての基準を満たせば○、一つ満たさなければ△、全てを満たさない場合には×とする。 a:ヒアルロン酸類溶解中に、目視レベルで凝集物(ままこ)が認められないこと b:ヒアルロン酸類溶解液が無色透明であること c:撹拌槽の壁面に目視レベルで未溶解のヒアルロン酸類が認められないこと[分子量低下度(Δ分子量)] Δ分子量(=(溶解前極限粘度−溶解後極限粘度)/溶解前極限粘度)について、以下の判定基準に従って、判定する。 ○:Δ分子量≦0.03 △:0.03<Δ分子量≦0.15 ×:0.15<Δ分子量[撹拌翼の形状についての試験] 撹拌翼として、大ピッチドタービン翼、二段ピッチドタービン翼、ピッチドタービン翼とパドルの併用、ディスパータービン翼、マックスブレンド翼、ディゾルバー翼を用意して、撹拌槽に取り付け、撹拌回転数1800rpmで溶解試験を行った。結果を以下の表1に示す。 またここで、本実施例で使用した上記の各撹拌翼の形状とその撹拌槽における取付位置を、図5〜10に示す。 図5は撹拌槽4に大ピッチドタービン翼5を配設した状態を示すもので、(a)は概略側断面図、(b)は(a)におけるb−b矢視図であり、図中、H=754mm、h=522mm、D=550mm、d=180mmである(d/D=0.33)。尚、撹拌翼の形状に関する当該試験では、大ピッチドタービン翼5を撹拌槽4の偏心位置(e=90mm)に取り付けた。この偏心位置は後記する偏心(1:2)に相当する。 図6は二段ピッチドタービン翼6を撹拌槽4に配設した状態を示すもので、(a)は概略側断面図、(b)は(a)におけるb−b矢視図、(c)は(a)におけるc−c矢視図であり、図中、H=754mm、h1=290mm、h2=232mm、D=550mm、d1(上)=155mm、d2(下)=180mmである(d1/D=0.28(上);d2/D=0.33(下))。この試験においても、二段ピッチドタービン翼6は偏心位置(e=90mm)に取り付けた。 図7はピッチドタービン翼とパドルの併用翼7を撹拌槽4に配設した状態を示すもので、(a)は概略側断面図、(b)は(a)におけるb−b矢視図、(c)は(a)におけるc−c矢視図であり、図中、H=754mm、h1=283mm、h2=85mm(パドル高)、h3=154mm、D=550mm、d1(パドル径)=155mm、d2(タービン翼径)=180mmである(d1/D=0.28(パドル);d2/D=0.33(タービン翼))。この試験においても、併用翼7は偏心位置(e=90mm)に取り付けた。 図8はディスパータービン翼8を撹拌槽4に配設した状態を示すもので、(a)は概略側断面図、(b)は(a)におけるb−b矢視図であり、図中、H=754mm、h=522mm、D=550mm、d=180mmである(d/D=0.33)。この試験においても、ディスパータービン翼8は偏心位置(e=90mm)に取り付けた。 図9はマックスブレンド翼9を撹拌槽4に配設した状態を示すもので、(a)は概略側断面図、(b)は(a)におけるb−b矢視図であり、図中、H=677mm、h(翼高さ)=450mm、D=550mm、d=290mmである(d/D=0.53)。 図10はディゾルバー翼10を撹拌槽4に配設した状態を示すもので、(a)は概略側断面図、(b)はディゾルバー翼10の平面図であり、図中、H=677mm、e=137.5mm、D=550mm、d=250mmである(d/D=0.53)。 表1の結果から分かるように、大ピッチドタービン翼とディスパータービン翼がヒアルロン酸ナトリウムの分散性、溶解の可否、分子量低下の全ての項目について優れていた。これに対して、二段ピッチドタービン翼は、ヒアルロン酸ナトリウムの分散性に劣る上、分子量低下も見られ、残りのピッチドタービン翼とパドルの併用等も、分散性か溶解可否の何れかで不良であり、分子量低下も見られ、特にマックスブレンド翼において分子量低下度が大きかった。[撹拌翼の位置] 撹拌翼の形状について溶解試験の結果が優れていた大ピッチドタービン翼とディスパータービン翼の各々に対して、撹拌翼を、偏心1:2、偏心1:3、偏心1:5の位置に取り付け、溶解における撹拌翼の位置の影響を調べた。結果を次の表2に示す。 表2の結果から分かるように、大ピッチドタービン翼及びディスパータービン翼の何れについても偏心1:2の位置が撹拌翼の最適取り付け位置であった。[撹拌回転数] これまでの試験で優れていたディスパータービン翼を、性能的に優れていた偏心1:2の位置に設置して、撹拌回転数を1000rpmから2500rpmの範囲で種々変動させて溶解試験を行った。結果を次の表3に示す。 表3の結果から分かるように、撹拌回転数としては1500rpmと1800rpmが同等の性能を示したが、溶解時間が短い点を考慮すると、1800rpmが最も優れていた。[撹拌翼径/槽内径] これまでの試験で優れていたディスパータービン翼のサイズを、撹拌翼径/槽内径の比で0.1から1の範囲で変更し、性能的に優れていた偏心1:2の位置、撹拌回転数1800rpmで、溶解試験を実施した。結果を次の表4に示す。 表4から分かるように、撹拌翼径/槽内径の比が0.3のものと0.5のものが同じ優れた性能を示したが、該比が0.1のものは溶解性が悪く、該比が1のものは分子量低下が大であった。[撹拌時間] 撹拌翼径/槽内径の比が0.33のディスパータービン翼を偏心1:2の位置に取り付け、撹拌時間を30分から120分の範囲で変えて、溶解試験を行った。結果を次の表5に示す。 表5から分かるように、撹拌時間が30分では溶解性が十分ではないが、逆に撹拌時間が120分になると、分子量の低下が顕著になった。これに対して、撹拌時間45分及び60分では、全ての基準を満たした。 1 ディゾルバー翼 2 軸穴 3 ピッチドパドル翼 4 撹拌槽 5 大ピッチドタービン翼 6 二段ピッチドタービン翼 7 ピッチドタービン翼とパドルの併用翼 8 ディスパータービン翼 9 マックスブレンド翼 10 ディゾルバー翼 大ピッチドタービン翼又はディスパータービン翼の撹拌翼を備えた撹拌槽を用いて、注射用水、生理食塩水、及び緩衝生理食塩水から選ばれた一種の注射用溶解液に、平均分子量150万〜400万のヒアルロン酸及び/又はその塩を濃度が0.75〜1.25w/v%となるように溶解させるヒアルロン酸及び/又はその塩の溶解方法。 撹拌翼が、1段又は多段である撹拌槽を用いる請求項1に記載のヒアルロン酸及び/又はその塩の溶解方法。 撹拌翼の回転数が800〜2000rpmである撹拌槽を用いる請求項1又は2に記載のヒアルロン酸及び/又はその塩の溶解方法。 撹拌槽及びラインの内面材質がテフロン、テフロンライニング又はテフロンコーティングである請求項1から3の何れか一項に記載のヒアルロン酸及び/又はその塩の溶解方法。 撹拌槽が略縦型円筒状であり、撹拌翼が槽中心から径方向外方に偏心させた位置に軸を位置させて配設される請求項1から4の何れか一項に記載のヒアルロン酸及び/又はその塩の溶解方法。 撹拌翼の軸の偏心位置が、中心線を1:2に分ける位置である請求項5に記載のヒアルロン酸及び/又はその塩の溶解方法。 撹拌槽が、撹拌翼径/槽内径の比が0.3〜0.5となる撹拌翼を備える請求項1から6の何れか一項に記載のヒアルロン酸及び/又はその塩の溶解方法。 撹拌翼を1500〜1800rpmの回転数で作動させる請求項1から7の何れか一項に記載のヒアルロン酸及び/又はその塩の溶解方法。 撹拌時間を45分以上とする請求項1から8の何れか一項に記載のヒアルロン酸及び/又はその塩の溶解方法。 撹拌槽及び撹拌槽に接続されるラインの少なくとも内面がステンレス鋼製で電解研磨仕上げされている請求項1から3及び5から9の何れか一項に記載のヒアルロン酸及び/又はその塩の溶解方法。 ヒアルロン酸及び/又はその塩が、ストレプトコッカス・エキFM−100又はストレプトコッカス・エキFM−300を用いて、発酵法により製造されるものである請求項1から10の何れか一項に記載のヒアルロン酸及び/又はその塩の溶解方法。


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る