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タイトル:特許公報(B2)_慢性前立腺炎、間質性膀胱炎及び/又は排尿障害の改善又は治療剤
出願番号:2012504511
年次:2015
IPC分類:A61K 35/12,A61P 13/08,A61P 13/02,A61P 13/10,A61K 35/36


特許情報キャッシュ

玉木 信 JP 5809620 特許公報(B2) 20150918 2012504511 20110310 慢性前立腺炎、間質性膀胱炎及び/又は排尿障害の改善又は治療剤 日本臓器製薬株式会社 000231796 藤井 郁郎 100125427 玉木 信 JP 2010100234 20100423 JP 2010054626 20100311 20151111 A61K 35/12 20150101AFI20151022BHJP A61P 13/08 20060101ALI20151022BHJP A61P 13/02 20060101ALI20151022BHJP A61P 13/10 20060101ALI20151022BHJP A61K 35/36 20150101ALI20151022BHJP JPA61K35/12A61P13/08A61P13/02A61P13/10A61K35/36 A61K 35/00−35/768 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII) CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) 国際公開第2004/039383(WO,A1) 国際公開第2009/139470(WO,A1) 玉木信,慢性非細菌性前立腺炎に対するノイロトロピンの有効性報告,日本泌尿器科学会雑誌,2010年 3月15日,Vol.101, No.2,p.196(230) Hiroshima J.Med.Sci.,2006年,Vol.55,No.1,p.35-37 8 JP2011055609 20110310 WO2011111770 20110915 12 20140226 六笠 紀子本発明は、ワクシニアウイルス接種炎症組織抽出物の新規な医薬用途に関するものであり、具体的にはワクシニアウイルス接種炎症組織抽出物を有効成分として含有する慢性前立腺炎、間質性膀胱炎及び/又は排尿障害の改善又は治療剤に関する。前立腺炎症候群(prostatitis syndrome)は種々の病態による前立腺炎を包括するもので、成人男性に比較的高い頻度でみられる泌尿器科疾患である。かつてこの疾患は、急性細菌性前立腺炎(Acute bacterial prostatitis)、慢性細菌性前立腺炎(Chronic bacterial prostatitis)、慢性非細菌性前立腺炎(Nonbacterial prostatitis)及び前立腺痛(Prostatodynia)に分類されていたが(Drachら、1978年)、現在は、1999年にアメリカ国立衛生研究所(National Institute of Health; NIH)により新たに提唱された病型分類が広く用いられるようになってきている(Kriegerら)。新しい分類によると、前立腺炎症候群は、カテゴリーI(急性細菌性前立腺炎; Acute bacterial prostatitis)、カテゴリーII(慢性細菌性前立腺炎; Chronic bacterial prostatitis; CBP)、カテゴリーIII(慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群(慢性骨盤内疼痛症候群/前立腺関連疼痛症候群と呼ばれることもある); Chronic prostatitis/chronic pelvic pain syndrome; CP/CPPS)及びカテゴリーIV(無症候性前立腺炎; Asymptomatic inflammatory prostatitis)の4群に分類される。旧分類と新分類の関係は、旧分類の急性細菌性前立腺炎が新分類のカテゴリーIに、旧分類の慢性細菌性前立腺炎が新分類のカテゴリーIIにそれぞれ対応し、旧分類の急性非細菌性前立腺炎と前立腺痛が、新分類のカテゴリーIIIに一括された。カテゴリーIIIには、さらに炎症性のもの(カテゴリーIIIA)と非炎症性のもの(カテゴリーIIIB)がある。新分類のカテゴリーIVに対応する旧分類はなく、新たに設けられたものである。本願において、単に「慢性前立腺炎」と記載したときは、上記新分類におけるカテゴリーII(CBP)とカテゴリーIII(CP/CPPS)を包含するものである。両者とも症状は共通しているが、頻度としてはカテゴリーIIIの方がカテゴリーIIより圧倒的に多いとされている。一方、間質性膀胱炎(Interstitial cystitis; IC)という頻尿等の下部尿路症状を呈する疾患がある。こちらの患者の多くは女性で、男性はまれであるとされている。慢性前立腺炎(カテゴリーIII)では、その60%が麻酔下膀胱水圧拡張により点状出血を認めたとの報告や、尿路上皮の透過性亢進の検査であるカリウムテストで84%の症例が陽性を示したとの報告もあり、間質性膀胱炎との関連・重複が想定されている。症状慢性前立腺炎においては、会陰部、陰型、陰嚢、膀胱部に相当する下腹部の疼痛、射精痛等の骨盤部の疼痛、又は排尿痛、残尿感、頻尿といった排尿症状等の不定愁訴を典型的な症状とする。そして、この慢性前立腺炎の重症度と薬剤治療効果の判定のためには、NIHが定めた、痛み・不快感、排尿症状、生活の質(QOL)の三つの領域(ドメイン)の質問形式で構成された慢性前立腺炎症状インデックス(NIH Chronic Prostatitis Symptom Index; NIH‐CPSI)が用いられている。一方、間質性膀胱炎では、間質が炎症を起こし、膀胱の筋肉が萎縮してしまう。そのため、膀胱が膨らまず、正常時の半分以下の量の尿しか溜めることができないため、頻尿、尿意亢進、尿意切迫感、膀胱痛などの下部尿路症状を呈する。上記のとおり、慢性前立腺炎(カテゴリーIII)と間質性膀胱炎は自覚症状や尿所見では鑑別できないことも多く、しばしば重複している。そのため、間質性膀胱炎であるのに、慢性前立腺炎と診断されたり、逆に、最初は慢性前立腺炎と診断されていた患者が最終的に間質性膀胱炎と診断されたりすることも多い。治療慢性前立腺炎のカテゴリーIIは、細菌感染が原因の可能性があるため、抗菌化学療法が主な治療法となる。しかし、実際には治療に抵抗する症例が多く、抗菌薬の継続あるいは変更を必要としたり、下記カテゴリーIIIの治療薬を併用する場合が多い。一方、カテゴリーIIIについては、現在においてもその発症病因が不明であり、決定的な治療法が存在しない。従って、カテゴリーIIIの治療においては、前立腺液の鬱滞、自己免疫やアレルギーの関与、マイコプラズマやクラミジアの関与、性ホルモンバランス不調、心理的要因等の多様な原因や病態が背景にあることを想定し、多岐にわたる種々の治療法が試みられる。例えば、抗菌薬(ニューキノロン系、テトラサイクリン系)、α1遮断薬(テトラゾシン、タムスロシン、アルフゾシン)、植物製剤(セルニチンポーレンエキス)、非ステロイド性抗炎症薬〔NSAIDs〕(セレコキシブ)、抗不安薬(ジアゼパム)、漢方薬等の各種薬剤による治療、前立腺マッサージ、温熱療法、針治療、経尿道的マイクロ波治療等が挙げられるが、いずれも有効率は50〜60%程度とされている。なお、カテゴリーIIIの中には、複数の要因が合併している症例やカテゴリーIIからIIIへの移行例があるため、よりいっそうカテゴリーIIIの症状、治療が複雑なものとなる。このように慢性前立腺炎(カテゴリーII及びIII)は、各種治療に抵抗性を示す長期持続性の難治性疾患であり、臨床的に課題の多い疾患である。以上のような現状から、慢性前立腺炎に対して有効な薬剤が臨床現場で強く求められている。他方、間質性膀胱炎もまた原因が未だ解明されていない疾患である。細菌によって起こるものではないため、抗生物質は効果がない。通常、膀胱水圧拡張術や膀胱内ジメチルスルホキシド(Dimethyl sulfoxide; DMSO)注入と薬物療法などいくつかの方法を組み合わせて治療される。薬物としては、抗うつ薬や抗ヒスタミン薬などが用いられる。治療は、完全に治癒することを目指すのではなく、症状の緩和、消失が目標とされる。本発明に係る慢性前立腺炎、間質性膀胱炎及び/又は排尿障害の改善又は治療剤(以下「本発明薬剤」という。)の有効成分であるワクシニアウイルス接種炎症組織抽出物については、鎮痛作用、鎮静作用、抗ストレス作用、抗アレルギー作用(特許文献1参照)、免疫促進作用、抗癌作用、肝硬変抑制作用(特許文献2参照)、特発性血小板減少性紫斑病に対する治療効果(特許文献3参照)、帯状疱疹後神経痛、脳浮腫、痴呆、脊髄小脳変性症等への治療効果(特許文献4参照)、レイノー症候群、糖尿病性神経障害、スモン後遺症等への治療効果(特許文献5参照)、カリクレイン産生阻害作用、末梢循環障害改善作用(特許文献6参照)、骨萎縮改善作用(特許文献7参照)、敗血症やエンドトキシンショックの治療に有効な一酸化窒素産生抑制作用(特許文献8参照)、骨粗鬆症に対する治療効果(特許文献9参照)、Nef作用抑制作用やケモカイン産生抑制作用に基づくエイズ治療効果(特許文献10、11参照)、脳梗塞等の虚血性疾患に対する治療効果(特許文献12参照)、線維筋痛症に対する治療効果(特許文献13参照)、感染症に対する治療効果(特許文献14参照)、抗癌剤による末梢神経障害の予防又は軽減作用(特許文献15参照)などが知られている。しかし、本発明薬剤の有効成分であるワクシニアウイルス接種炎症組織抽出物が、慢性前立腺炎、間質性膀胱炎及び/又は排尿障害の改善又は治療に有効であることは知られていない。特開昭53−101515号公報特開昭55−87724号公報(第3、5、6頁)特開平1−265028号公報(第1、2頁)特開平1−319422号公報(第3、4頁)特開平2−28119号公報(第3頁)特開平7−97336号公報(第4頁)特開平8−291077号公報特開平10−194978号公報特開平11−80005号公報(第2、3頁)特開平11−139977号公報特開2000−336034号公報(第2、3頁)特開2000−16942号公報国際公開WO2004/039383号公報特開2004−300146号公報国際公開WO2009/028605号公報本発明の目的は、慢性前立腺炎、間質性膀胱炎及び/又は排尿障害の改善又は治療に有効で且つ安全性が高い薬剤を提供することにある。本発明者は、有効な治療法が求められている慢性前立腺炎及び間質性膀胱炎の薬剤治療について鋭意研究を行った結果、ワクシニアウイルス接種炎症組織抽出物が慢性前立腺炎、間質性膀胱炎及び/又は排尿障害に対して優れた改善又は治療効果を示すことを見出し、本発明を完成した。ワクシニアウイルス接種炎症組織抽出物は、慢性前立腺炎、間質性膀胱炎及び/又は排尿障害を改善又は治療するという優れた薬理作用を有する。また、該抽出物を有効成分として含有する本発明薬剤は、副作用等の問題点の少ない安全な薬剤であり、極めて有用性の高いものである。本発明は、ワクシニアウイルス接種炎症組織抽出物を有効成分として含有する慢性前立腺炎、間質性膀胱炎及び/又は排尿障害の改善又は治療剤に関する。上述したとおり、慢性前立腺炎の治療においては、病因が解明されていないことからも、様々な治療法が試みられるが、いずれも有効率は50〜60%程度とされている。そこで、有効性が期待される治療法を4〜6週間を1コースとして始め、無効であれば他の治療を行っていくことが基本とされている。また、間質性膀胱炎の治療においても、膀胱水圧拡張術、膀胱内DMSO注入療法などの種々の治療法が行われている。このように、患者個人によって適した治療法が異なることから、本発明薬剤は、慢性前立腺炎及び間質性膀胱炎の多岐にわたる治療法の一つの選択肢として有用であり、また適宜他の治療法との併用も可能である。ワクシニアウイルス接種炎症組織抽出物に関しては、ワクシニアウイルスを接種した炎症組織において産生される生理活性物質であること、該物質を病態組織から抽出する方法並びにそれらの薬理活性等が上述のようにすでに種々報告されている(上記特許文献1乃至15等参照)。また、本発明薬剤として使用可能な市販されている製剤として、ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液製剤がある。この製剤は、日本の医療用医薬品集〔2010年版、財団法人日本医薬情報センター編集・発行〕の2978乃至2980頁に記載されているように、ワクシニアウイルスを接種した家兎の炎症皮膚組織から抽出分離した非タンパク性の活性物質を含有するものである。腰痛症、頸肩腕症候群、症候性神経痛、肩関節周囲炎、変形性関節症、皮膚疾患(湿疹、皮膚炎、じんま疹)に伴う掻痒、アレルギー性鼻炎、スモン後遺症状の冷感・異常知覚・痛み、帯状疱疹後神経痛等に対する適応が認められており、皮下、筋注、静注用の注射剤並びに錠剤が医療用医薬品として承認を受けて販売されている。以下、本発明薬剤の有効成分であるワクシニアウイルス接種炎症組織抽出物を製造する方法等について説明する。本発明薬剤に用いるワクシニアウイルス接種炎症組織抽出物は、ワクシニアウイルスを接種して発痘した炎症組織を破砕し、抽出溶媒を加えて組織片を除去した後、除蛋白処理を行い、これを吸着剤に吸着させ、次いで有効成分を溶出することによって得ることができる。ワクシニアウイルス接種炎症組織抽出物は、例えば、以下の工程で製造される。(a)ワクシニアウイルスを接種し発痘させたウサギ、マウス等の皮膚組織等を採取し、発痘組織を破砕し、水、フェノール水、生理食塩液又はフェノール加グリセリン水等の抽出溶媒を加えた後、濾過又は遠心分離することによって抽出液(濾液又は上清)を得る。(b)前記抽出液を酸性のpHに調整して加熱し、除蛋白処理する。次いで除蛋白した溶液をアルカリ性に調整して加熱した後に濾過又は遠心分離する。(c)得られた濾液又は上清を酸性とし活性炭、カオリン等の吸着剤に吸着させる。(d)前記吸着剤に水等の抽出溶媒を加え、アルカリ性のpHに調整し、吸着成分を溶出することによってワクシニアウイルス接種炎症組織抽出物を得ることができる。その後、所望に応じて、適宜溶出液を減圧下に蒸発乾固又は凍結乾燥することによって乾固物とすることもできる。ワクシニアウイルスを接種し炎症組織を得るための動物としては、ウサギ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、サル、ラット、マウスなどワクシニアウイルスが感染する種々の動物を用いることができ、炎症組織としてはウサギの発痘皮膚組織が好ましい。これら炎症組織を採取して破砕し、その1乃至5倍量の抽出溶媒を加えて乳化懸濁液とする。抽出溶媒としては、蒸留水、生理食塩水、弱酸性乃至弱塩基性の緩衝液などを用いることができ、グリセリン等の安定化剤、フェノール等の殺菌・防腐剤、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム等の塩類などを適宜添加してもよい。この時、凍結融解、超音波、細胞膜溶解酵素又は界面活性剤等の処理により細胞組織を破壊して抽出を容易にすることもできる。得られた乳状抽出液を濾過又は遠心分離等によって組織片を除去した後、除蛋白処理を行う。除蛋白操作は、通常行われている公知の方法により実施でき、加熱処理、蛋白質変性剤、例えば、酸、塩基、尿素、グアニジン、アセトン等の有機溶媒などによる処理、等電点沈澱、塩析等の方法を適用することができる。次いで、不溶物を除去する通常の方法、例えば、濾紙(セルロース、ニトロセルロース等)、グラスフィルター、セライト、ザイツ濾過板等を用いた濾過、限外濾過、遠心分離などにより析出してきた不溶蛋白質を除去する。こうして得られた有効成分含有抽出液を、塩酸、硫酸、臭化水素酸等の酸を用いて酸性、好ましくはpH3.5乃至5.5に調整し、吸着剤への吸着操作を行う。使用可能な吸着剤としては、活性炭、カオリン等を挙げることができ、抽出液中に吸着剤を添加し撹拌するか、抽出液を吸着剤充填カラムに通過させて、該吸着剤に有効成分を吸着させることができる。抽出液中に吸着剤を添加した場合には、濾過や遠心分離等によって溶液を除去して、有効成分を吸着させた吸着剤を得ることができる。吸着剤より有効成分を溶出(脱離)させるには、前記吸着剤に溶出溶媒を加え、室温又は適宜加熱して或いは撹拌して溶出し、濾過や遠心分離等の通常の方法で吸着剤を除去して達成できる。用いられる溶出溶媒としては、塩基性の溶媒、例えば塩基性のpHに調整した水、メタノール、エタノール、イソプロパノール等又はこれらの適当な混合溶液を用いることができ、好ましくはpH9乃至12に調整した水を使用することができる。このようにして得られた抽出物(溶出液)は、製剤用原体や医薬品製剤として好ましい形態に適宜調製することができる。例えば、溶液のpHを中性付近に調整して製剤用原体とすることもでき、また濃縮・希釈によって所望の濃度に合せることもできる。さらに注射用製剤として塩化ナトリウムを加えて生理食塩液と等張の溶液に調製することもできる。また、これら溶液を濃縮乾固又は凍結乾燥することによって、錠剤等の原料として利用できる固形物の形態に調製してもよい。患者への投与方法としては、経口投与の他に皮下、筋肉内、静脈内投与等が挙げられ、投与量はワクシニアウイルス接種炎症組織抽出物の種類によって適宜設定することができる。市販製剤で認められている投与量は、前記日本の医療用医薬品集(2978頁)によれば、基本的には内服では1日16NU、注射剤では1日3.6乃至7.2NUを投与するよう示されているが、疾患の種類、重傷度、患者の個人差、投与方法、投与期間等によって適宜増減可能である(NU:ノイロトロピン単位。ノイロトロピン単位とは、疼痛閾値が正常動物より低下した慢性ストレス動物であるSARTストレスマウスを用い、Randall-Selitto変法に準じて試験を行い、鎮痛効力のED50値をもって規定する。1NUはED50値が100 mg/kgであるときのノイロトロピン製剤の鎮痛活性含有成分1mgを示す活性である。)。以下に、ワクシニアウイルス接種炎症組織抽出物の製造方法の具体例、並びに該抽出物の新規な薬理作用、すなわち慢性非細菌性前立腺炎及び間質性膀胱炎の改善・治療に関する臨床効果の評価を示すが、本発明はこれらの実施例の記載によって何ら制限されるものではない。実施例1健康な成熟家兎の皮膚にワクシニアウイルスを接種し、発痘した皮膚を剥出し、これを破砕してフェノール水を加えた。次いでこれを加圧濾過し、得られた濾液を塩酸でpH5に調整した後、90〜100℃で30分間加熱処理した。濾過して除蛋白した後、水酸化ナトリウムでpH9とし、さらに90〜100℃で15分間加熱処理した後濾過した。濾液を塩酸で約pH4.5に調整し、2%の活性炭を加えて2時間撹拌した後、遠心分離した。採取した活性炭に水を加え、水酸化ナトリウムでpH10とし、60℃で1.5時間撹拌した後、遠心分離濾過して上清を得た。採取した活性炭に再び水を加え、水酸化ナトリウムでpH11とし、60℃で1.5時間撹拌した後、遠心分離して上清を得た。両上清を合せて、塩酸で中和し、ワクシニアウイルス接種家兔炎症皮膚抽出物を得た。実施例2健康な成熟家兎の皮膚にワクシニアウイルスを接種し感染させた後、発痘した皮膚を無菌的に剥出しこれを細切した後フェノール加グリセリン水を加え、ホモゲナイザーで磨砕し乳状とした。次いでこれを濾過し、得た濾液を塩酸で弱酸性(pH4.5乃至5.5)に調整した後、100℃で加熱処理し濾過した。濾液を水酸化ナトリウムで弱アルカリ性(pH8.5乃至10.0)とし、さらに100℃で加熱処理した後濾過した。濾液を塩酸で約pH4.5とし、約1.5%の活性炭を加えて1乃至5時間撹拌した後濾過した。濾取した活性炭に水を加え水酸化ナトリウムでpH9.4乃至10に調整し、3乃至5時間撹拌した後、濾過し濾液を塩酸で中和した。実施例3健康な成熟家兎の皮膚にワクシニアウイルスを接種し、活性化させた後、活性化した皮膚を無菌的に剥出し、これを細切して水を加え、ホモゲナイザーで磨砕し乳状物とした。次いでこれを加圧濾過し、得られた濾液を塩酸でpH5.0に調整した後、流通蒸気下100℃で加熱処理した。濾過して除蛋白した後、水酸化ナトリウムでpH9.1とし、さらに100℃で加熱処理した後濾過した。濾液を塩酸でpH4.1に調整し、活性炭2%を加えて2時間撹拌した後濾過した。濾液は更に活性炭5.5%を加えて2時間攪拌した後濾過した。最初に濾取した活性炭に水を加え、水酸化ナトリウムでpH9.9とし、60℃で1.5時間撹拌した後濾過した。最初の活性炭及び次の活性炭に水を加え、水酸化ナトリウムでpH10.9とし、60℃で1.5時間撹拌した後濾過した。濾液を合わせ塩酸で中和した後、分子量100の膜を用いた電気透析法で脱塩処理を行い、減圧下に乾固した。次に、上記実施例1で得られた本発明ワクシニアウイルス接種炎症組織抽出物を被験薬として用いた(1)慢性前立腺炎及び(2)間質性膀胱炎の改善・治療作用に関する臨床評価の結果の一例を示す。(1)NIH‐CPSI・日本語版による慢性前立腺炎の臨床評価本発明薬剤(実施例1で製造されたワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出物)の慢性前立腺炎に対する効果を調べるために、以下の通り、NIH‐CPSIによる臨床評価を行った。新規に前立腺炎症候群のカテゴリーIII(旧分類の慢性非細菌性前立腺炎)と診断された患者49例に「ノイロトロピン錠4単位」(本発明薬剤である経口製剤の商品名)を被験薬として連日経口投与した(1回2錠、1日2回投与)。基本的には他の薬剤は併用しなかった。投与開始前、投与後2週間及び6週間の時点で、患者にNIH‐CPSI・日本語版の質問を行った。NIH‐CPSIの質問は大きく3領域に分類され、痛み・不快感に関する4項目(項目1〜4、合計スコア:0〜21点)、排尿症状(残尿感、頻尿)に関する2項目(項目5〜6、合計スコア:0〜10点)、QOL低下に関する3項目(項目7〜9、合計スコア:0〜12点)の合計9項目の合計スコアから構成されており、スコアが高いほど症状が強いことを意味する。各領域の合計スコア及び全項目の合計スコアの各々平均値を算出し、被験薬投与前後の値を比較して、本発明薬剤の臨床効果を評価した。なお、被験薬投与前後のスコアの比較において有意差の検定は、対応のあるt検定を用いた。また、NIH‐CPSI・日本語版については、日本医事新報 No.4463(2009年11月7日)の59頁に記載されたものと同様のものを用いた。症例数が痛み・不快感の評価項目のみ1例多いが、これは本症例の患者が痛み・不快感の評価項目のみに回答があったためである。上記臨床評価の結果を表1に示す。上記表1から明らかなように、慢性前立腺炎患者に本発明薬剤を投与することにより、NIH‐CPSIの全項目の合計スコアが有意に減少した。本発明薬剤は、NIH‐CPSIの痛み・不快感、排尿症状、QOL低下の3領域の各々の平均スコアについても、いずれも有意に減少させることから、慢性前立腺炎の症状を全般的に改善し、本疾患に対する有効な治療剤であることが示された。本発明薬剤の投与期間に関しては、2週間の投与によりNIH‐CPSIのスコアは減少し十分な治療効果が認められたが、継続して合計6週間の投与を行った患者については、さらにNIH‐CPSIのスコアが減少し、有効性が高くなることが示された。また、全症例において副作用は見られなかった。管会瀬炎itis;tial現在、カテゴリーIIIの治療薬として投与されているα1遮断薬タムスロシン、抗菌剤レボフロキサシン、NSAIDs、植物製剤セルニチンポーレンエキスに関して、上記臨床評価と同様にNIH‐CPSIにより治療効果を評価した文献報告がある。これらの結果と比較しても、本発明薬剤は、カテゴリーIIIに対して、より優れた改善又は治療効果を有することが示された。(2)O'Leary & Santの間質性膀胱炎質問票・日本語版による間質性膀胱炎の臨床評価間質性膀胱炎と診断された患者4例に「ノイロトロピン錠4単位」を被験薬として連日経口投与した(1回2錠、1日2回投与)。基本的には他の薬剤や治療法は併用しなかった。間質性膀胱炎と診断された患者の症状を評価するための尺度としては、O'Leary & Santの間質性膀胱炎質問票が最も汎用されており、その日本語版の妥当性についても検証されている。そこで、本発明薬剤の投与開始前及び開始後において、患者に質問票に記入してもらった。当該質問票は症状に関する質問4項目〔症状スコア; IC Symptom Index〕(合計スコア:0〜20点)と症状によって感じる問題に関する質問4項目〔問題スコア; IC Problem Index〕(合計スコア:0〜16点)に分かれており、スコアが高いほど症状が強いことを意味する。各症例について、症状スコア及び問題スコアの各々合計スコアを算出し、被験薬投与前後の値を比較して、本発明薬剤の臨床効果を評価した。なお、O'Leary & Santの間質性膀胱炎質問票・日本語版については、「間質性膀胱炎診療ガイドライン」(日本間質性膀胱炎研究会 ガイドライン作成委員会編集、ブラックウェルパブリッシング株式会社発行:第1版)に記載されたものと同じものを用いた。上記臨床評価の結果を表2に示す。上記表2に示したように、間質性膀胱炎患者に本発明薬剤を投与することにより、O'Leary & Santの間質性膀胱炎質問票の症状スコア及び/又は問題スコアの各合計スコアが減少した。症状スコアの質問4問のうち質問1乃至3は頻尿や尿意亢進等の排尿障害に関する質問であるが、特に、症例1では合計スコアが3から1へ、症例3では8から1へ、症例4(12週間投与)では、4から1へ、症例5では13から8へ顕著に症状が改善された。また、症例4では、本発明薬剤を継続して長期投与することによって効果が高くなることが示された。このように本発明薬剤投与によって質問票の合計スコアが減少することから、本発明薬剤は間質性膀胱炎に対する有効な改善・治療剤であることが示された。また、全症例において副作用は見られなかった。上記臨床効果の評価より明らかなように、本発明薬剤は、慢性前立腺炎及び/又は間質性膀胱炎の症状全般に亘って優れた改善・治療作用を有することが認められた。また、慢性前立腺炎及び間質性膀胱炎の主症状である排尿障害を改善する効果が認められたことから、本発明薬剤は排尿障害の改善又は治療剤としても有用であることが示された。市販のワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液製剤は長年に亘って使用され、非常に安全性の高い薬剤として認められている。上記臨床評価においても、全症例において副作用は認められなかった。このように、本発明薬剤は、慢性前立腺炎、間質性膀胱炎及び/又は排尿障害の改善又は治療剤として有効であり、副作用もほとんどない安全性の高い極めて有用性の高いものである。 ワクシニアウイルス接種炎症組織抽出物を有効成分として含有する慢性前立腺炎の改善又は治療剤。 ワクシニアウイルス接種炎症組織抽出物を有効成分として含有する間質性膀胱炎の改善又は治療剤。 ワクシニアウイルス接種炎症組織抽出物を有効成分として含有する慢性前立腺炎又は間質性膀胱炎による排尿障害の改善又は治療剤。 排尿障害が頻尿又は尿意亢進である請求項3に記載の改善又は治療剤。 炎症組織が皮膚組織である請求項1乃至4のいずれか一項に記載の改善又は治療剤。 炎症組織がウサギの炎症皮膚組織である請求項5に記載の改善又は治療剤。 経口剤である請求項1乃至6のいずれか一項に記載の改善又は治療剤。 注射剤である請求項1乃至6のいずれか一項に記載の改善又は治療剤。


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