タイトル: | 特許公報(B2)_赤血球濃厚液用添加剤および医療用容器 |
出願番号: | 2012501749 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | A61K 35/14,A61K 47/34,A61K 47/26,A61K 47/22,A61K 47/02,A61J 1/14 |
武田 典彦 JP 5504332 特許公報(B2) 20140320 2012501749 20110216 赤血球濃厚液用添加剤および医療用容器 テルモ株式会社 000109543 磯野 道造 100064414 多田 悦夫 100111545 武田 典彦 JP 2010036932 20100223 20140528 A61K 35/14 20060101AFI20140501BHJP A61K 47/34 20060101ALI20140501BHJP A61K 47/26 20060101ALI20140501BHJP A61K 47/22 20060101ALI20140501BHJP A61K 47/02 20060101ALI20140501BHJP A61J 1/14 20060101ALI20140501BHJP JPA61K35/14 AA61K47/34A61K47/26A61K47/22A61K47/02A61J1/00 390T A61K 35/14 A61K 47/02 A61K 47/22 A61K 47/26 A61K 47/34 CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII) PubMed 特開平01−106824(JP,A) 特開平01−123147(JP,A) 特開平01−171562(JP,A) 特表平05−500319(JP,A) 笹川滋,これからの赤血球製剤−赤血球の長期保存剤を用いると?,医学のあゆみ,1992年 5月,Vol. 161, No. 6,p. 399-402 SAINT-BLANCARD J, et al.,Properties of red blood cell concentrates stored in PAGGS-sorbitol,Annales Pharmaceutiques Francaises,1995年,Vol. 53, No. 5,p. 220-229 8 JP2011053209 20110216 WO2011105257 20110901 15 20120820 安藤 公祐 本発明は、赤血球濃厚液を長期間保存するために用いられる赤血球濃厚液用添加剤および医療用容器に関するものである。 全血もしくは赤血球濃厚液(CRC)などを長期間保存すると、全血もしくはCRCに、赤血球膜が破壊されヘモグロビンが外界に遊離するいわゆる溶血が生じる。そして、最近、医療用容器を構成する塩化ビニル樹脂の可塑剤として汎用的に使用されているジ−2−エチルヘキシルフタレータ(DEHP)に溶血を抑制できる作用があることが明らかとなった。そのため、DEHPで可塑化された塩化ビニル樹脂で構成された医療用容器に全血もしくはCRCを赤血球保存液と共に収容して混和し、全血もしくはCRCにDEHPを溶出させることによって、溶血を抑制して赤血球保存性の向上を図ることが行われている。しかしながら、DEHPには血小板を破壊する等の作用があり、また、生殖毒性も危惧されているため、DEHPを赤血球濃厚液用添加剤として使用することは、生理学的安全性の面で好ましいことではなかった。 このような問題を解決するために、特許文献1、2では、血小板の破壊による損失を防止する目的で、血液を保存(貯蔵)する医療用容器を構成する樹脂中にビタミンEを含有させることが提案されている。特表平05−500319号公報特公平06−34820号公報 しかしながら、特許文献1、2で提案された方法では、血小板の損失を抑制することにおいては十分な効果が得られるが、赤血球保存性においては十分な効果が得られていない。すなわち、ビタミンEは、DEHPに比べて溶血抑制効果が低く、赤血球保存性において優れているとは言えなかった。 そこで、本発明は、このような問題を解決すべく創案されたもので、その目的は、溶血抑制効果が高く、赤血球保存性に優れた赤血球濃厚液用添加剤および医療用容器を提供することにある。 前記課題を解決するために、本発明に係る赤血球濃厚液用添加剤は、溶血防止剤と、界面活性剤とを赤血球保存液に添加した赤血球濃厚液用添加剤であって、前記界面活性剤の分子構造中の親水部がポリオキシエチレンソルビタンまたはポリオキシエチレンからなり、前記界面活性剤のHLB値が13以上で、かつ、前記界面活性剤の分子構造中の親水部のオキシエチレン基数が20以上であり、前記溶血防止剤がビタミンEであり、前記赤血球濃厚液用添加剤を赤血球濃厚液に混和して作製される赤血球製剤において、前記ビタミンEの前記赤血球製剤中の濃度が25〜100ppmであることを特徴とする。 前記構成によれば、溶血防止剤と界面活性剤との両者が赤血球保存液に添加されていることによって、溶血防止剤と界面活性剤の溶血抑制作用が相乗的に機能する。すなわち、溶血防止剤は、赤血球膜の外表面を被覆する作用を有し、それによって、赤血球膜の破壊を抑制する。また、溶血防止剤がビタミンEであることによって、ビタミンEの抗酸化作用および赤血球膜の脂質との親和作用等で赤血球膜の破壊をさらに抑制する。また、界面活性剤は、赤血球保存液への溶血防止剤の均一な分散と、溶血防止剤による赤血球膜の被覆を助長する作用を有する。また、界面活性剤が所定のHLB値で、かつ、界面活性剤の親水部が所定数のオキシエチレン基を有することによって、界面活性剤単独でも赤血球膜の破壊を抑制することが可能となる。 本発明に係る赤血球濃厚液用添加剤は、前記界面活性剤の分子構造中の親水部がポリオキシエチレンソルビタンからなり、前記赤血球保存液がマンニトール、グルコース、アデニン、リン酸塩、クエン酸塩および塩化ナトリウムを含有する混合溶液であることが好ましい。 また、赤血球濃厚液用添加剤は、前記界面活性剤の分子構造中の親水部がポリオキシエチレンソルビタンからなり、前記赤血球保存液がマンニトール、グルコース、アデニンおよび塩化ナトリウムを含有する混合溶液であることが好ましい。 また、赤血球濃厚液用添加剤は、前記界面活性剤の分子構造中の親水部がポリオキシエチレンソルビタンからなり、前記赤血球保存液がソルビトール、グルコース、アデニン、グアノシン、リン酸塩および塩化ナトリウムを含有する混合溶液であることが好ましい。 また、赤血球濃厚液用添加剤は、前記界面活性剤の分子構造中の親水部がポリオキシエチレンからなり、前記赤血球保存液がマンニトール、グルコース、アデニン、リン酸塩、クエン酸および塩化ナトリウムを含有する混合溶液であることが好ましい。 また、赤血球濃厚液用添加剤は、前記界面活性剤の分子構造中の親水部がポリオキシエチレンからなり、前記赤血球保存液がソルビトール、グルコース、アデニン、グアノシン、リン酸塩および塩化ナトリウムを含有する混合溶液であることが好ましい。 前記した五形態の構成によれば、所定構造の界面活性剤と、所定組成の赤血球保存液からなることによって、界面活性剤と赤血球保存液とが相乗的に機能し、赤血球膜の破壊がさらに抑制される。 本発明に係る赤血球濃厚液用添加剤は、前記ビタミンEが酢酸エステル化合物であることを特徴とする。 前記構成によれば、溶血防止剤がビタミンEの酢酸エステル化合物であることによって、ビタミンEの抗酸化作用および赤血球膜の脂質との親和作用等で赤血球膜の破壊がさらに抑制される。 本発明に係る医療用容器は、前記の赤血球濃厚液用添加剤が容器本体の内部に充填されていることを特徴とする。 前記構成によれば、前記の赤血球濃厚液用添加剤が容器本体の内部に充填されていることによって、容器本体の内部に収容される全血またはCRCの赤血球膜の破壊が抑制される。 本発明に係る赤血球濃厚液用添加剤および医療用容器によれば、従来のDEHPにより可塑化された塩化ビニル樹脂で構成された医療用容器を使用した場合と同等以上の溶血抑制効果が得られ、赤血球保存性が優れたものとなる。各種の界面活性剤におけるミニバッグテストでの血漿中遊離Hb量の推移を示すグラフである。各種の界面活性剤におけるミニバッグテストでの血漿中遊離Hb量の推移を示すグラフである。各種の界面活性剤におけるミニバッグテストでの血漿中遊離Hb量の推移を示すグラフである。各種の界面活性剤におけるミニバッグテストでの血漿中遊離Hb量の推移を示すグラフである。溶血防止剤と界面活性剤との濃度割合を変更した際のミニバッグテストでの血漿中遊離Hb量を示すグラフである。本発明に係る医療用容器の構成を示す模式図である。 本発明に係る赤血球濃厚液用添加剤の実施の形態について説明する。 赤血球濃厚液用添加剤(以下、必要に応じて添加剤と称す)は、溶血防止剤と、界面活性剤とを赤血球保存液に添加したもので、界面活性剤が所定の分子構造を有するものである。添加剤がこのような構成であることによって、従来のDEHP(DEHPにより可塑化された塩化ビニル樹脂で構成された医療用容器)と比べて、赤血球膜の破壊(溶血)をより一層抑制することができる。なお、添加剤の添加量は、赤血球濃厚液100mLあたり40〜60mL、すなわち、採血量100mLあたり20〜30mLである。以下、各構成について説明する。(溶血防止剤) 溶血防止剤は、抗酸化作用および赤血球膜の脂質との親和作用等によって赤血球膜の破壊を防止するためのもので、具体的には、ビタミンE、または、7−テトラデセン、8−オクタデセン、9−エイコセンおよびスクアレンからなる群から選ばれた不飽和鎖式炭化水素化合物が好ましい。また、ビタミンEは、α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロール等のトコフェロール類、α−トコトリエノール、β−トコトリエノール、γ−トコトリエノール、δ−トコトリエノール等のトコトリエノール類などがあるが、α−トコフェロールが好ましい。また、ビタミンEは、これらのトコフェロールまたはトコトリエノールのエステル化合物であってもよく、酢酸エステル化合物、具体的には酢酸トコフェロールが好ましい。 溶血防止剤は、赤血球製剤中の濃度が25〜100ppmであることが好ましいことから(図5参照)、界面活性剤と共に添加された際、添加剤における溶血防止剤の濃度は75〜300ppmであることが好ましい。濃度が75ppm未満の場合には、赤血球膜の破壊が抑制しにくくなる。具体的には、溶血抑制率が低下しやすく、言い換えれば、血漿中Hb量が増大しやすくなる。また、濃度が300ppmを超える場合には、赤血球膜の破壊抑制効果に顕著な向上が見られなくなると共に、コストアップにつながりやすい。(界面活性剤) 界面活性剤は、赤血球保存液への溶血防止剤の均一な分散と、溶血防止剤による赤血球膜の被覆を助長する作用を有すると共に、単独でも赤血球膜の破壊を抑制することが可能なものである。そのために、界面活性剤は、そのHLB値が13以上、好ましくは13〜20で、かつ、その分子構造中の親水部のオキシエチレン基数(EO数)が20以上、好ましくは20〜40である。また、界面活性剤は、その分子構造の親水部がポリオキシエチレン(PEO)からなる第1形態、または、ポリオキシエチレンソルビタン(PEOソルビタン)からなる第2形態が好ましい。 HLB値が13未満の場合には、界面活性剤が添加剤中に分散しないため、赤血球膜の破壊を抑制することができない。また、EO数が20未満の場合には、界面活性剤の親水部の分子量が低いため、赤血球膜の破壊を抑制することができない。また、HLB値が20を超える場合、または、EO数が40を超える場合には、赤血球膜の破壊抑制に顕著な向上が見られなくなると共に、コストアップにつながりやすい。なお、HLB値は、グリフィン法で測定し、HLB値=(20×親水部の式量の総和)/(界面活性剤の分子量)で算出されたものである。 第1形態の界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテル(エマルゲン(登録商標)430)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(エマルゲン130K)等が挙げられる(表1参照)。 第2形態の界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(Tween(登録商標)80、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート(Tween60)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(Tween20)等が挙げられる(表1参照)。 界面活性剤は、赤血球製剤中の濃度が100〜300ppmであることが好ましいことから(図5参照)、溶血防止剤と共に添加された際、添加剤における界面活性剤の濃度は300〜900ppmであることが好ましい。濃度が300ppm未満の場合には、赤血球膜の破壊が抑制しにくくなる。具体的には、溶血抑制率が低下しやすく、言い換えれば、血漿中Hb量が増大しやすくなる。また、濃度が900ppmを超える場合には、赤血球膜の破壊が抑制しにくくなると共に、コストアップにつながりやすい。(赤血球保存液) 赤血球保存液は、赤血球濃厚液の長期保存のために用いられている従来公知の保存液が用いられる。赤血球保存液としては、ACD液、CPD液、MAP液、SAGM液、OPTISOL(登録商標)(AS−5)、ADSOL(AS−1)、Nutricel(AS−3)、PAGG−S、SAGP−maltose等が挙げられる。特に、MAP液、SAGM液またはPAGG−Sが好ましい。ここで、MAP液とは、マンニトール、グルコース、アデニン、リン酸塩、クエン酸塩および塩化ナトリウムを含有する混合溶液である。また、SAGM液とは、マンニトール、グルコース、アデニンおよび塩化ナトリウムを含有する混合溶液である。さらに、PAGG−Sとは、ソルビトール、グルコース、アデニン、グアノシン、リン酸塩および塩化ナトリウムを含有する混合溶液である。 なお、赤血球保存液の添加量は、赤血球濃厚液100mLあたり40〜60mL、すなわち、採血量100mLあたり20〜30mLである。添加量が下限値未満である場合には、赤血球膜の破壊を抑制しにくくなる。また、添加量が上限値を超える場合には、赤血球膜の破壊抑制に顕著な向上が見られないと共に、コストアップにつながりやすい。 次に、本発明に係る医療用容器について説明する。 医療用容器は、赤血球濃厚液用添加剤が容器本体の内部に充填されていることを特徴とする。そして、容器本体は、ポリオレフィン、塩化ビニル樹脂等からなる2枚の樹脂シートの周縁部を融着して容器状に作製したものである。また、本発明に係る医療用容器は、図6に示すように、血液バッグシステム100の薬液充填バッグ107に相当する。 血液バッグシステム100は、先端に採血針102を有する採血チューブ101aを介して、供血者(ドナー)から採血した血液が充填される採血バッグ103と、採血バッグ103からチューブ101bを介して移送された血液(全血)から所定の血液成分(白血球および血小板)を分離する血液処理フィルター110と、チューブ101cを介して血液処理フィルター110を通過することによって所定の血液成分が除去された血液を回収する血液保存バッグ105と、その血液保存バッグ105内で遠心分離された血液成分(血漿)がチューブ101d、101eおよび分岐管104を介して移送される血液保存バッグ106と、前記の赤血球濃厚液用添加剤が充填された薬液充填バッグ107と、を備えており、赤血球濃厚液用添加剤は、薬液充填バッグ107からチューブ101f、101dおよび分岐管104を介して血液保存バッグ105に移送され、血液保存バッグ105内の血液成分(赤血球濃厚液)に添加される。 なお、採血バッグ103、血液保存バッグ105、106および薬液充填バッグ107は、例えば、100〜600mL程度の容量になっている。 また、採血バッグ103、血液保存バッグ105、106および薬液充填バッグ107の上部側には、排出口108が形成されている。また、採血バッグ103、血液保存バッグ105、106および薬液充填バッグ107には、その充填される血液成分を示すためのラベル109が貼り付けられている。また、チューブ101b〜101fには、図示しない流路封止部材が必要に応じて設置されている。流路封止部材とは、チューブ内の流路を遮断(封止)した状態で設置され、破断により流路を開通させる部材である。 以下のミニバッグテストを実施し、添加剤の赤血球保存性を評価した。<ミニバッグテスト> 赤血球保存液(MAP液)100mLに、表1に示す界面活性剤から選択した7種の界面活性剤90mgと溶血防止剤(ビタミンE:酢酸トコフェロール)15mgを共に添加して、表2に示すNo.1〜3、8〜11の添加剤とした。また、界面活性剤の代わりとして、ポリエチレングリコール(分子量1000)を使用したものも添加して、表2に示すNo.12の添加剤とした。さらに、界面活性剤を使用せず、溶血防止剤(ビタミンE)のみを添加して、表2に示すNo.13の添加剤とした。その後、各添加剤20mLと赤血球濃厚液40mLを混和して赤血球製剤とし、トリメリット酸トリ(2−エチルヘキシル)(TOTM)で可塑化された塩化ビニル樹脂(PVC)製のミニバッグ内で4℃を保ちながら5週間保存した。この時の赤血球製剤中の溶血防止剤の濃度は50ppm、界面活性剤の濃度は300ppmである。さらに、添加剤が添加されていない赤血球製剤をジ−2−エチルヘキシルフタレート(DEHP)で可塑化されたPVC製のミニバッグ内で同様にして保存した。 保存前、2週間保存後、4週間保存後および5週間保存後の赤血球製剤について、以下のLCV法で血漿中遊離Hb量を測定し、以下の評価基準で赤血球保存性を評価した。その結果を図1、表2に示す。(LCV法) 血漿中遊離Hb(ヘモグロビン)量は、以下の手順で測定する。(1)Leuco Crystal Violet20mgをアセトン75mLに溶解させた後、酢酸20mL、RO水25mLを加えて攪拌混合し、これを発色試薬として使用する。(2)30質量%の過酸化水素水1mLにRO水30mLを加えて混合し、これを発色基質液として使用する。(3)赤血球製剤の保存終了後、赤血球製剤を遠心して上澄を採取し、これを血漿中遊離ヘモグロビン量の測定検体とする。また、ヘモグロビン標準液(アルフレッサファーマ製ヘモコン−N)をRO水で希釈して、2〜300mg/dLの濃度の検量線作製用ヘモグロビン標準液(検量線サンプル)も同時に調製する。(4)試験管に発色試薬6mL、測定検体および検量線サンプル25μLを加えてよく攪拌する。(5)さらに、発色基質液1mLを加えて攪拌後、37℃の水流式恒温槽中で20分間インキュベートする。(6)インキュベート終了後、分光光度計(U−3010、日立製作所)を用いて590nmの吸光度を測定し、同時に測定した検量線サンプルの値からヘモグロビン濃度を計算し、血漿中遊離ヘモグロビン量とする。(赤血球保存性の評価基準) 5週間保存後の血漿中遊離Hb量が、DEHP可塑化PVC製のミニバッグで保存した際の血漿中遊離Hb量に比べて少ない場合を赤血球保存性が良好(○)、多い場合を赤血球保存性が不良(×)とした。 また、赤血球保存液(MAP液)100mLに、表1に示す界面活性剤から選択した4種の界面活性剤60mgと溶血防止剤(ビタミンE:酢酸トコフェロール)15mgを共に添加して、表2に示すNo.4〜7の添加剤とした。その後、各添加剤20mLと赤血球濃厚液40mLを混和して赤血球製剤とし、トリメリット酸トリ(2−エチルヘキシル)(TOTM)で可塑化された塩化ビニル樹脂(PVC)製のミニバッグ内で4℃を保ちながら5週間保存した。この時の赤血球製剤中の溶血防止剤の濃度は50ppm、界面活性剤の濃度は200ppmである。さらに、添加剤が添加されていない赤血球製剤をジ−2−エチルヘキシルフタレート(DEHP)で可塑化されたPVC製のミニバッグ内で同様にして保存した。前記と同様にして、赤血球製剤の血漿中遊離Hb量を測定し、赤血球保存性を評価した。その結果を図2、表2に示す。 以下のミニバッグテストを実施し、添加剤の赤血球保存性を評価した。<ミニバッグテスト> 赤血球保存液(SAGM液)100mLに、表1に示す界面活性剤から選択した3種の界面活性剤60mgと溶血防止剤(ビタミンE:酢酸トコフェロール)15mgを共に添加して、表2に示すNo.1、4、9の添加剤とした。その後、各添加剤20mLと赤血球濃厚液40mLを混和して赤血球製剤とし、トリメリット酸トリ(2−エチルヘキシル)(TOTM)で可塑化された塩化ビニル樹脂(PVC)製のミニバッグ内で4℃を保ちながら5週間保存した。この時の赤血球製剤中の溶血防止剤の濃度は50ppm、界面活性剤の濃度は200ppmである。さらに、添加剤が添加されていない赤血球製剤をジ−2−エチルヘキシルフタレート(DEHP)で可塑化されたPVC製のミニバッグ内で同様にして保存した。前記の実施例1と同様にして、赤血球製剤の血漿中遊離Hb量を測定し、赤血球保存性を評価した。その結果を図3、表2に示す。 以下のミニバッグテストを実施し、添加剤の赤血球保存性を評価した。<ミニバッグテスト> 赤血球保存液(PAGG−S)100mLに、表1に示す界面活性剤から選択した3種の界面活性剤60mgと溶血防止剤(ビタミンE:酢酸トコフェロール)15mgを共に添加して、表2に示すNo.1、4、9の添加剤とした。その後、各添加剤20mLと赤血球濃厚液40mLを混和して赤血球製剤とし、トリメリット酸トリ(2−エチルヘキシル)(TOTM)で可塑化された塩化ビニル樹脂(PVC)製のミニバッグ内で4℃を保ちながら5週間保存した。この時の赤血球製剤中の溶血防止剤の濃度は50ppm、界面活性剤の濃度は200ppmである。さらに、添加剤が添加されていない赤血球製剤をジ−2−エチルヘキシルフタレート(DEHP)で可塑化されたPVC製のミニバッグ内で同様にして保存した。前記の実施例1と同様にして、赤血球製剤の血漿中遊離Hb量を測定し、赤血球保存性を評価した。その結果を図4、表2に示す。 図1〜図4、表2に示すように、本発明の界面活性剤の要件を満足する実施例(No.1〜3、8、9)は、赤血球保存性が良好であった。これに対し、比較例(No.4〜7、10、11)は、HLB値が下限値未満で界面活性剤が添加剤中(水中)へ分散しないこと、EO数が下限値未満で界面活性剤の親水部の分子量が低いことの少なくとも一方であるため、赤血球膜の破壊を抑制できず、赤血球保存性が不良であった。また、参考例(No.12、13)も赤血球保存性が不良であった。 以上のことから、実施例の添加剤は、比較例の添加剤に比べて、赤血球保存性において優れていることが確認された。また、実施例の添加剤は、従来のDEHPにより可塑化された塩化ビニル樹脂で構成された医療用容器(DEHP溶出濃度30ppm)で赤血球製剤を保存した場合に比べて、赤血球保存性において優れていることが確認された。 赤血球保存液(MAP液)100mLに、溶血防止剤(ビタミンE:酢酸トコフェロール)7.5mg、15mgおよび30mgと界面活性剤(Tween80)30mg、60mgおよび90mgを種々の組合せで添加して、表3に示すNo.14〜18の添加剤とした。その後、各添加剤20mLと赤血球濃厚液40mLを混和して赤血球製剤とし、前記した実施例1と同様にミニバッグテストを実施し、血漿中遊離Hb量を測定した。この時の赤血球製剤中の溶血防止剤および界面活性剤の濃度は表3の通りである。また、溶血防止剤および界面活性剤を添加せず、従来のバッグと同等のバッグ素材であるDEHPで可塑化されたPVC製のミニバッグでも同様の保存実験を同時に実施した(No.19)。そして、No.19における血漿中遊離Hb量と同等以下の場合を赤血球保存性が良好(○)とした。その結果を図5、表3に示す。 図5、表3に示すように、本発明の添加剤は、溶血防止剤25〜100ppmおよび界面活性剤100〜300ppmを添加した際に(実施例No.14〜18)、従来のDEHPにより可塑化された塩化ビニル樹脂で構成された医療用容器(DEHP溶出濃度30ppm)で赤血球製剤を保存した場合(参考例No.19)に比べて、赤血球保存性において同等以上の効果を有することが確認された。 100 血液バッグシステム 103 採血バッグ 105 血液保存バッグ 106 血液保存バッグ 107 薬液充填バッグ(医療用容器) 110 血液処理フィルター 溶血防止剤と、界面活性剤とを赤血球保存液に添加した赤血球濃厚液用添加剤であって、 前記界面活性剤の分子構造中の親水部がポリオキシエチレンソルビタンまたはポリオキシエチレンからなり、前記界面活性剤のHLB値が13以上で、かつ、前記界面活性剤の分子構造中の親水部のオキシエチレン基数が20以上であり、 前記溶血防止剤がビタミンEであり、前記赤血球濃厚液用添加剤を赤血球濃厚液に混和して作製される赤血球製剤において、前記ビタミンEの前記赤血球製剤中の濃度が25〜100ppmであることを特徴とする赤血球濃厚液用添加剤。 前記界面活性剤の分子構造中の親水部がポリオキシエチレンソルビタンからなり、前記赤血球保存液が、マンニトール、グルコース、アデニン、リン酸塩、クエン酸塩および塩化ナトリウムを含有する混合溶液であることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の赤血球濃厚液用添加剤。 前記界面活性剤の分子構造中の親水部がポリオキシエチレンソルビタンからなり、前記赤血球保存液が、マンニトール、グルコース、アデニンおよび塩化ナトリウムを含有する混合溶液であることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の赤血球濃厚液用添加剤。 前記界面活性剤の分子構造中の親水部がポリオキシエチレンソルビタンからなり、前記赤血球保存液が、ソルビトール、グルコース、アデニン、グアノシン、リン酸塩および塩化ナトリウムを含有する混合溶液であることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の赤血球濃厚液用添加剤。 前記界面活性剤の分子構造中の親水部がポリオキシエチレンからなり、前記赤血球保存液が、マンニトール、グルコース、アデニン、リン酸塩、クエン酸塩および塩化ナトリウムを含有する混合溶液であることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の赤血球濃厚液用添加剤。 前記界面活性剤の分子構造中の親水部がポリオキシエチレンからなり、前記赤血球保存液が、ソルビトール、グルコース、アデニン、グアノシン、リン酸塩および塩化ナトリウムを含有する混合溶液であることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の赤血球濃厚液用添加剤。 前記ビタミンEが、酢酸エステル化合物であることを特徴とする請求の範囲第1項ないし第6項のいずれか一項に記載の赤血球濃厚液用添加剤。 請求の範囲第1項ないし第6項のいずれか一項に記載の赤血球濃厚液用添加剤が容器本体の内部に充填されていることを特徴とする医療用容器。