タイトル: | 公開特許公報(A)_乾式研磨法による脆弱試料薄片の作製法 |
出願番号: | 2012286077 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | G01N 1/28,G01N 1/36,G01N 23/225 |
大和田 朗 佐藤 卓見 平林 恵理 永好 けい子 鈴木 正哉 JP 2014126546 公開特許公報(A) 20140707 2012286077 20121227 乾式研磨法による脆弱試料薄片の作製法 独立行政法人産業技術総合研究所 301021533 大和田 朗 佐藤 卓見 平林 恵理 永好 けい子 鈴木 正哉 G01N 1/28 20060101AFI20140610BHJP G01N 1/36 20060101ALI20140610BHJP G01N 23/225 20060101ALI20140610BHJP JPG01N1/28 FG01N1/28 GG01N1/28 RG01N23/225 5 4 OL 9 2G001 2G052 2G001AA03 2G001BA05 2G001BA07 2G001CA01 2G001CA03 2G001GA06 2G001HA01 2G001HA09 2G001HA13 2G001KA01 2G001LA03 2G001MA03 2G001QA02 2G001RA01 2G001RA20 2G052AA21 2G052AD32 2G052AD52 2G052EC11 2G052FA01 2G052GA32 2G052GA35 本発明は、天然に存在する鉱物のうち軽石や粘土など加熱に弱いあるいは水や有機溶剤によって膨潤し壊れてしまう脆弱試料において、走査型電子顕微鏡や電子線マイクロアナライザーなどの分析電子顕微鏡用の試料として用いることが可能な高度な平滑化表面を有する薄片の作製法に関するものである。 一般的な岩石の薄片作製においては、試料切断時および研磨時に水や油を用いた、湿式による薄片作製法が用いられている。しかし水や油によって膨潤してしまう脆弱試料では、薄片作製工程において水や油を用いると、膨潤により試料が破壊されてしまうという問題があった。また、崩れやすい脆弱な試料においては試料の硬度を高める為に一般的にエポキシ系かアクリル系の樹脂で包埋するが、熱硬化型樹脂は加熱によって硬化し、冷間硬化型樹脂一部は自然発熱することによって硬化するため、試料が100℃程度の高温にさらされる。その為、軽石(アロフェン・イモゴライトを含む)・粘土・珪藻土・マンガンノジュール・未石化の化石・イオウや塩分を含む鉱物など、水分を多く含む脆弱試料では、上記のような一般的な試料硬化に用いられる樹脂により包埋すると、加熱により含有していた水蒸気が蒸発することによりひび割れが生じたり、溶解したりすることにより、未硬化部分が残り、切断または研磨時に試料が破壊されてしまうという問題があった。 上記のように、加熱によりひび割れや破壊が生じたり、水・油などにより膨潤し破壊されてしまう脆弱試料については、高温加熱の必要がなく、発熱も50℃以下となるメタクリル酸メチルモノマーとアゾビス系重合開始剤V-601からなる包理樹脂キット(和光純薬工業株式会社製、オステオレジン(登録商標))を用いた乾式法による薄片作製法が開発された(非特許文献1)。この樹脂は、常温硬化型であって、高温加熱の必要がないため、樹脂による固化の際に試料が破壊されず、透過顕微鏡観察用の薄片試料を作製することが可能となった。 また当時の開発では、最終研磨の段階でメノウ板上で灯油を潤滑剤とした白色溶融アルミナ(ホワイトアランダム)での研磨や、さらなる薄片表面の平滑化が求められる走査型電子顕微鏡・エネルギー分散X線分光法・電子線マイクロアナライザー・反射顕微鏡等に用いられる薄片作製の場合には、可変式自動研磨台の回転台にダイヤモンドペーストを塗布して最終研磨を行うことが試みられた。粘土科学第50巻第2号p63〜68(2011) しかしながら当時の技術においては、透過顕微鏡用薄片の作製が可能になったとはいうものの、いくつかの問題点があった。 薄片を研磨していく工程において、試料を包埋した樹脂は、試料チップの周囲から削れていき平面性を保ちにくいという欠点を持ち合わせていた。また、通常薄片の厚さ調整については、偏光顕微鏡観察における鉱物の干渉色によって判断を行っていたが、例えば透明なゲル状の鉱物であるイモゴライトを樹脂に包埋した場合など、石英などの標準鉱物が含まれていない試料においては、薄片の厚さを識別する手段がないという致命的な問題点も含まれていた。 また、最終研磨の段階において、メノウ板上で切削油を潤滑液とし研磨材での研磨を行った場合には、潤滑液により脆弱試料が膨潤し破壊されるため、研磨段階においても乾式法による研磨が求められていた。 さらに、脆弱試料において、より薄片表面を平滑にするため、ダイヤモンドペーストを用いて研磨を行った場合、ペーストに含有している液体によって試料が膨潤することや、試料中の空隙にダイヤモンドペーストが入り込むと、超音波洗浄でしか取り除けないため、超音波洗浄で用いられる液体によって試料が破壊されるという問題があった。またダイヤモンドペーストに含まれるダイヤモンド粒子の硬度は高く切削角があり、試料表面に切削傷が生じることも課題として残されていた。さらに回転式の可変式自動研磨機に装着した研磨クロス上にダイヤモンドペーストを塗布しても均一に塗り広げることが出来ず、ダイヤモンドペーストが塗布されたクロス上を通過する厚片試料の研磨速度が一定の速度に安定しないため軟弱な部分が削れすぎ薄片作製に支障をきたしていた。そして通常のダイヤモンドペーストを使用して行う研磨では、可変式自動研磨機で冷却剤を滴下しながら回転板を高速回転させ、1時間以上の研磨を行うため、従来の方法では樹脂が熱により変形し、脆弱な試料は、その回転による摩擦熱と冷却剤になる液体によって破壊されてしまうという欠点を有していた。 さらにまた、前記の樹脂(オステオレジン)を用いて脆弱試料を固化させた場合、樹脂に揮発成分の含有量が多いため固化中に目減りしてしまい、当初液中に試料のすべてが浸かっていたにもかかわらず、試料が液面から露出してしまうことがあった。また硬化するまで3ヶ月程度も時間を要したり、場合によっては完全に固結しないこともあった。 本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであって、天然に存在する鉱物のうち軽石(アロフェン・イモゴライトを含む)・粘土・珪藻土・マンガンノジュール・未石化の化石・イオウや塩分を含む鉱物など、加熱に弱いあるいは水・油により膨潤し破壊されてしまうような脆弱な試料に対し、高度な薄片表面の平滑化が求められる走査型電子顕微鏡・エネルギー分散X線分光法・電子線マイクロアナライザー・反射顕微鏡等に用いられる薄片を提供することを目的とするものである。 本発明者等は、上記目的を達成すべく、樹脂により包理固化した後の試料を成形切断した後、例えば標準鉱物を含まない透明なゲル状の試料であっても薄片の厚さを判断しながら研磨可能な方法、ダイヤモンドペーストを用いずに高度な薄片表面の平滑化が可能な研磨法、さらには常温あるいは低温による硬化が可能でかつ固化時間が短い樹脂の探索に関しての検討を行った。 そしてさらに鋭意検討を重ねた結果、試料を切断した後に、該試料の研磨される面と直行する4面、又はさらに研磨される一方の面と反対側の面を加えた5面に、試料厚を判断できる鉱物あるいはその鉱物を含んだ岩石を貼り付けること、アルミナ粉末を含侵させたシルククロスによる研磨を行うこと、及び包理固化に用いる樹脂として、常温あるいは低温で硬化が可能でかつ硬化時間が短い樹脂を用いることにより、高度な表面の平滑性を有する脆弱試料の薄片を供給することのできる本発明を完成するに至った。 すなわち、上記課題を解決するための本発明は、以下のとおりである。[1]天然に存在する鉱物のうち加熱に弱いあるいは水・油によって膨潤してしまう脆弱試料を用いて、上下面が研磨された薄片試料を作製する方法であって、脆弱試料を樹脂により包理固化し、直方体に成形切断した後、該試料の研磨される面と直行する4面、又はさらに研磨される一方の面と反対側の面を加えた5面に、岩石又は鉱物を貼り付けた後、研磨を行うことを特徴とする薄片試料の作製方法。[2]前記岩石又は鉱物の干渉色を、偏光顕微鏡を用いて観察することにより、薄片試料の厚さ調製を行うことを特徴とする[1]に記載の薄片試料の作製方法。[3]前記樹脂として、常温あるいは低温で硬化が可能でかつ硬化時間が短い樹脂を用いることを特徴とする[1]又は[2]に記載の薄片試料の作製方法。[4]アルミナ粉末を含浸させたシルククロスを用いた研磨を行うことを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の薄片試料の作製方法。[5][1]〜[4]のいずれかに記載の方法で作製された薄片試料を用いて、走査型電子顕微鏡、エネルギー分散X線分光法、電子線マイクロアナライザー、又は反射顕微鏡による観察・分析を行うことを特徴とする脆弱試料の観察・分析方法。 本発明の脆弱試料への薄片作製法によれば、高度な薄片表面の平滑化が求められる走査型電子顕微鏡・エネルギー分散X線分光法・電子線マイクロアナライザー・反射顕微鏡等に用いることが可能になるという利点を有するものである。包埋樹脂に含浸させ固化した脆弱試料の写真スライドガラスへの接着面を除く試料の5面に岩石を貼り付けた脆弱試料の写真アルミナ粉末を含浸させたシルククロスの写真脆弱試料の、高度な平滑面を有する薄片試料の写真 本発明について更に詳細に説明する。 本発明の薄片試料作製法は、常温あるいは低温で硬化が可能でかつ固化時間が短い樹脂を用いて試料を包理固化し、固化後に成形切断した後、平面性を保ちつつかつ試料の厚さを判断しながら研磨が可能で、さらには高度な表面の平滑性を有する脆弱試料の薄片を可能とする研磨方法により、高度な薄片表面の平滑化が求められる走査型電子顕微鏡・エネルギー分散X線分光法・電子線マイクロアナライザー・反射顕微鏡等に用いることが可能な、薄片を作製することを特徴とするものである。ここで脆弱試料とは、天然に存在する鉱物のうち軽石(アロフェン・イモゴライトを含む)・粘土・珪藻土・マンガンノジュール・未石化の化石・イオウや塩分を含む鉱物など、加熱に弱いあるいは水・油によって膨潤してしまう試料を示す。 本発明において、脆弱試料の固化にあたっては、常温あるいは低温で硬化が可能でかつ固化時間が短い樹脂を用いることが好ましく、市販の種々の樹脂について検討を重ねた結果、樹脂には、メタクリル酸メチルモノマー、メタクリル酸メチルポリマー、及び重合促進剤(過酸化ベンゾイルBPO)とからなる包理樹脂キット((株)マルトー製、MMA樹脂)或いは、ビスフェノールAエポキシ樹脂と7−ジメチルオクタン酸からなる樹脂(ストルアス社製、カルドフィックス)を用いて固化を行った。硬化時間は、前記MMA樹脂を用いることにより2ヵ月以内、カルドフィックスでは一週間程度と、オステオレジンと比較して大きな時間短縮が図られるとともに、揮発による目減りが少ないため試料の露出がなく、全体に均質に含浸させることが可能となった。 またMMA樹脂およびカルドフィックスには撥水性があり、切断時に使用する冷却液による膨潤を避けることが出来る。さらにこれらの樹脂は、切断が容易であるため、切断時間の短縮ができ、カッター刃の摩擦による加熱が抑制される効果を有している。 本発明において、脆弱試料の固化剤としては、MMA樹脂やカルドフィクスが好ましく用いられるが、脆弱試料の固化剤としては、試料への浸透性や透明度に優れ、固結時の発熱が高温にならない樹脂であればよく、上記の固化剤に限定されるものではなく、それらと同効のものであれば同様に使用することができる。 本発明において、樹脂により包理固化後に試料を成形切断した後、平面性を保ちつつかつ試料の厚さを判断しながら研磨を可能とする方法として、固化試料切断後に、該試料の研磨される面と直行する4面、又はさらに研磨される一方の面と反対側の面を加えた5面に、岩石あるいは鉱物を貼り付ける方法を開発した。試料を岩石あるいは鉱物で囲むことにより、試料の歪みや、研磨の際の試料の角の欠落を防止することができるとともに、一部が削れ過ぎることを抑制できるという利点を有する。さらに、貼り付けた岩石あるいは鉱物により薄片の厚さを判断できるばかりでなく、コンタミネーションを防ぐことができる。 本発明において、貼り付ける岩石あるいは鉱物として、石英を多く含む花崗岩や長石を含む花崗閃緑岩等が硬度的にも好適なものとして挙げられる。これらの岩石あるいは鉱物は、上記の岩石あるいは鉱物に限定されるものではなく、それらと同効のものであれば同様に使用することができる。 本発明において、高度な表面の平滑性を有する脆弱試料の薄片を可能とすること研磨方法として、アルミナ粉末を含浸させたシルククロスを用いての研磨を開発した。アルミナ粉末は、ダイヤモンド粒子と異なり、硬度が低く粒子が丸いため切削傷がつかないことに加え、アルミナ粒子はダイヤモンドペーストに比べ安価でコストの削減が可能な上、容易に入手が可能であるという利点を有している。またアルミナ粒子をシルククロスに含浸させるため、均一に粒子が分散し研磨速度に変化がないこと、含浸時の溶媒は揮発させるため液体成分が残らないこと、そしてアルミナ粉末含浸のシルククロス研磨では、試料が均一に早く削れるため、50rpm以下の回転で、10分程度の研磨でよく、研磨時間がダイヤモンドペースト使用時の1/5〜1/10程度となるため、試料の膨潤や摩擦熱の発生が抑制できるため試料研磨に対する悪影響が少ないという利点を有している。 本発明において、シルククロスに含浸させる研磨材としてアルミナ粉末が好適なものとして挙げられる。これらの研磨材は、上記の研磨材に限定されるものではなく、それらと同効のものであれば同様に使用することができる。 次に本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。<実施例:イモゴライトの薄片作製><イモゴライト中の水分除去> 試料が脆く壊れやすい試料の場合には、通常十分乾燥してから樹脂で補強するが、イモゴライトは乾燥すると収縮・変形してしまうため、樹脂を含浸させる前に水分を含んだイモゴライトを脱水させエタノールに置き換える工程を必要とする。 イモゴライトを含む土壌については、縦横約60mm×70mm、厚さ30mm程の大きさにナイフ等で成形したものを使用した。1)試料を容器に入れ、密閉状態にて数日間キシレンに浸す。2)試料を容器から取り出し、試料に含まれるキシレンを塵が発生し難い紙・布等によって試料表面の乾燥を避けながら吸収させた後、試料を容器に入れ今度はエタノールに浸し、さらに数日間放置する。3)試料を容器から取り出し、試料に含まれるキシレンとエタノールを紙や布によって吸収させ、再度密閉状態でエタノールに数日間浸す。4)3)の工程を繰り返し行い、試料全体にエタノールが十分浸透するまで常温にて放置する。<樹脂包埋>5)4)にてエタノールを浸透させた試料を包埋樹脂(ストルアス社製、カルドフィクス)に浸す。6)真空含浸装置にて、包埋樹脂が試料の内部へ浸透するように真空含浸を行う。この際、真空含浸中に大量に発生する気泡により、脆弱な試料が破壊されることを避けるため、真空含浸の途中で外気を送り込むようにして気泡の発生を最小限に抑えることが必要である。7)真空含浸後、未硬化状態の包埋樹脂を含む試料をポリプロピレン・ビニール等の上に放置し出来る限り包埋樹脂を取り除く。8)新たな包埋樹脂で気泡の発生を抑えながら6)・7)の工程により、試料を再度真空含浸させる。9)真空含浸後、試料と包埋樹脂の入った容器ごと取り出し容器ごと常温硬化させる。イモゴライトを含む土壌試料については、試料全体を包埋樹脂に浸し、常温でひたすら硬化を待つ。一方イモゴライトゲルは、試料全体を包埋樹脂に浸し、常温で1週間放置した後、薄皮状のイモゴライトゲルを小さな容器に移し替え、新しい包埋樹脂を入れてイモゴライトゲルが容器底部に沈殿するようにした上で、常温硬化させる。 図1は、包埋樹脂に含浸させ固化した脆弱試料の写真である。<試料の成形>10)包埋硬化した試料を刃にダイヤモンドを使用したバンドソーにて乾式切断する。イモゴライトを含む土壌試料は約45mm×60mm、厚さ10mmに切断成形する。11)5mm程度の厚さに研磨した岩石(花崗岩などの標準鉱物を含むある程度の硬度のあるもの、あるいは石英などの標準鉱物そのもの)を、試料のスライドガラスに貼りつける面と直行する4面に貼りつける。12)スライドガラスに貼りつける面と反対側の面を研磨し、5mm程度の厚さに研磨した岩石を貼りつける。図2は、スライドガラスへの接着面を除く試料の5面に岩石を貼り付けた脆弱試料の写真である。<接着面の研磨> 試料をスライドガラスへ貼り付けるための基準となる面を研磨するが、試料に水分や油分が浸透するとイモゴライト等が膨潤することから、ここでも乾式法の研磨とする。13)可変式自動研磨機の板上に粘着剤を貼り、精密研磨専用の円形耐水研磨紙を粘着剤に貼る。耐水研磨紙の番砥については、320番→500番→800番→1200番→2400番→4000番の順に使用するが、使用前に番砥粒子の大きさを均等にするため、同番砥またはそれよりも粒子の細かい番砥の研磨紙によるすり合わせを行い、その後洗浄し乾燥させる。14)研磨する試料を耐水研磨紙の中央に置き、円板を低速回転(40〜50回転/分程度)させ、研磨紙の中心から外へまたは外から中心へ、試料が一度通過した研磨紙の上を繰り返し通過することが無いように研磨を行う。細かい番砥の研磨紙を用いた際には、試料の研磨面に残っている磨き屑をエアーガンにて吹き飛ばす。また研磨面に試料の脱落が見られる場合には、シアノアクリレート系接着剤を滴下して補強を行う。 研磨の工程においては、研磨面に前の段階の研磨材の磨き屑が残らないようにブラッシングとエアーガンによるクリーニング作業を施すこと、試料の縁だけが減りすぎて起こる“縁だれ”が生じないようにすること、さらには硬さの異なる鉱物や樹脂の境界に段差が生じないように平滑に研磨することに注意する。<試料のスライドグラスへの接着と2次切断>15)エポキシ系常温硬化型の2液混合接着剤(セメダインスーパー60分硬化型)を用いて、試料をスライドガラスに貼り付ける。スライドガラスについては、55mm×78mmを用いる。16)エポキシ系常温硬化型の2液混合接着剤の厚さを均一にし、試料がずれて接着されないようにジグで固定し、常温の状態で一昼夜放置して接着剤を硬化させる。17)接着硬化後の試料を、専用のチャックホルダーに固定し、10)で使用したバンドソーを使用し慎重に時間をかけて乾式切断する。スライドガラスに接着された切断後の試料の厚さは、約0.8mmとする。18)切断面の試料の脱落を防ぐために、シアノアクリレート系接着剤にて試料表面を固結させる。<仕上げ研磨>19)13)・14)での乾式法による接着面の研磨作業工程と同様に、40〜50回転にてスライドガラスを指先で押さえながら試料を擦り減らす。耐水研磨紙の番砥は、320番→500番→800番→1200番→2400番→4000番の順で、試料の厚さが約35ミクロンになるまで研磨する。その後にアルミナ粒子が蒸着されたラッピングフィルム6000番(1,5μm)で研磨する。 各研磨工程での試料の厚さの目安は、320番で100μm、500番で80μm、800番で60μm、1200番で40μm、2400番と4000番で35μm、ラッピングフィルム6000番で31μmとする。必要であれば320番で研磨を終え100μm厚となった時点でシアノアクリレート系接着剤による試料面の固結を図る。20)最終研磨として、アルミナ粉末(φ1μm)にエチルアルコールを加え、ペースト状にした後、可変型自動研磨装置の回転板に取り付けたシルククロス円板上に、回転板を回転させながらアルミナのペーストを平らに塗布する。図3は、アルミナ粉末を含浸させたシルククロスの写真である。回転台の回転数をあげ、アルコールを蒸発させる。その後、スライドガラスを保持具に取り付け、50回転にて30μmになるまで研磨する。 図4は、脆弱試料の、高度な平滑面を有する薄片試料の写真である。 天然に存在する鉱物のうち加熱に弱いあるいは水・油によって膨潤してしまう脆弱試料を用いて、上下面が研磨された薄片試料を作製する方法であって、 脆弱試料を樹脂により包理固化し、直方体に成形切断した後、該試料の研磨される面と直行する4面、又はさらに研磨される一方の面と反対側の面を加えた5面に、岩石又は鉱物を貼り付けた後、研磨を行うことを特徴とする薄片試料の作製方法。 前記岩石又は鉱物の干渉色を、偏光顕微鏡を用いて観察することにより、薄片試料の厚さ調製を行うことを特徴とする請求項1に記載の薄片試料の作製方法。 前記樹脂として、常温あるいは低温で硬化が可能でかつ硬化時間が短い樹脂を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の薄片試料の作製方法。 アルミナ粉末を含浸させたシルククロスを用いた研磨を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の薄片試料の作製方法。 請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法で作製された薄片試料を用いて、走査型電子顕微鏡、エネルギー分散X線分光法、電子線マイクロアナライザー、又は反射顕微鏡による観察・分析を行うことを特徴とする脆弱試料の観察・分析方法。 【課題】 軽石・粘土・珪藻土・マンガンノジュール・未石化の化石・イオウや塩分を含む鉱物など、天然に存在する鉱物において加熱に弱いあるいは水・油により膨潤し破壊されてしまうような脆弱な試料に対し、高度な薄片表面の平滑化が求められる走査型電子顕微鏡・エネルギー分散X線分光法・電子線マイクロアナライザー・反射顕微鏡等に用いられる薄片を提供する。【解決手段】 脆弱試料を樹脂により包理固化し、直方体に成形切断した後、該試料の研磨される面と直行する4面、又はさらに研磨される一方の面と反対側の面を加えた5面に、岩石又は鉱物を貼り付けた後に研磨を行うことにより、平面性を保ちつつかつ薄片の厚さを判断しながら研磨を行うことを可能とする。包理固化のための樹脂には、常温あるいは低温で硬化が可能でかつ固化時間が短い樹脂を用い、脆弱試料の最終研磨には、アルミナ粉末を含侵させたシルククロスを用いる。【選択図】 図4