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タイトル:公開特許公報(A)_遺伝子組換え大腸菌によるタンパク質の製造方法
出願番号:2012283328
年次:2014
IPC分類:C12P 21/02,C12N 15/09


特許情報キャッシュ

今泉 暢 半澤 敏 JP 2014124135 公開特許公報(A) 20140707 2012283328 20121226 遺伝子組換え大腸菌によるタンパク質の製造方法 東ソー株式会社 000003300 今泉 暢 半澤 敏 C12P 21/02 20060101AFI20140610BHJP C12N 15/09 20060101ALN20140610BHJP JPC12P21/02 CC12N15/00 A 6 1 OL 11 4B024 4B064 4B024AA03 4B024BA44 4B024DA06 4B024GA11 4B064AG27 4B064CA02 4B064CA19 4B064CC21 4B064DA16 本発明は、遺伝子工学的手法により得られた、組換えタンパク質を発現可能な大腸菌を用いて、組換えタンパク質、特にヒトFc結合性タンパク質を効率的に製造する方法に関する。特に本発明は、前記大腸菌を培養する際に、適切な濃度になるよう栄養源を培養液に供給することで、組換えタンパク質の製造量を向上させる方法に関する。 大腸菌を利用した組換えタンパク質の生産は、特許文献1をはじめとし、これまでにも多くの例が報告されている。組換え大腸菌を用いた組換えタンパク質生産では、一般的に、当該大腸菌を大量かつ高密度に培養することで、当該大腸菌の菌体内および/または菌体外にタンパク質を生産させる。 工業的な大腸菌の培養において、必要な栄養源を一度に仕込んで行なう回分培養法に比べて、培養中に培地成分を供給しながら(流加しながら)培養する流加培養法により目的物や微生物菌体が高い収率で得られることがあることが知られている。流加培養は供給する栄養源の濃度を任意に(多くの場合は低い濃度に)制御ができる利点があるため、高濃度の基質による増殖阻害や生産阻害の影響を低減させることができる。また、有機酸などの副生成物の生産を抑えることができる。副生成物の生産は、大腸菌で生産させようとする物質の品質低下や、当該物質精製の困難さにつながるため、副生成物の生産を抑える、流加培養法はこの点で好ましい培養法といえる。 対象となる栄養源としては消費量が多い糖類などの炭素源があげられるが、その消費速度は大腸菌の生育状態により一定ではない。よって、培養中に炭素源の濃度を一定に維持するためには、大腸菌の生育状態を何らかの方法でモニターしつつ、流加量を制御する必要がある。そのために種々の提案がなされている。例えば、酸素消費量を指標として炭素源を流加する方法が知られている。この方法では供給ガスおよび排気ガス中の酸素濃度差より酸素消費量が求められる。しかしながら酸素濃度の測定は比較的誤差が大きく、またレスポンスが遅いという欠点があり、培養中の微生物活性を精度良く推定できないため、予想を越えた変化が起きた場合には制御が困難になるという問題がある。他の方法として、排ガス組成の分析による方法としては呼吸商(RQ)を指標として流加を行なう方法も知られている。呼吸商は例えば酵母の培養において醗酵と呼吸の割合を示す指標であり、微生物の代謝状態を大きく反映するという利点がある(非特許文献1)。しかしながら酵母以外の微生物においてはその有効性が明らかとなっていない。また呼吸商は供給ガスおよび排気ガスとの酸素濃度および炭酸ガス濃度差から計算されるため、上記の酸素濃度測定の問題が存在するだけでなく、酸素濃度と炭酸ガス濃度の二つの指標の測定値からの計算が必要であり、データ処理が比較的複雑であるという問題があった。その他の物理化学的指標として、pHの変化や溶存酸素(DO)の変化を利用した方法があるが、これらはセンサーの応答速度等に問題があり、炭素源が枯渇した場合にはその修正へのレスポンスが遅く、枯渇によるストレスが生じて生物代謝活性に変化が生じる問題がある。またオンライングルコース分析計による方法では、必要サンプル量、分析時間、精度、安定性、液性等の影響から長時間の安定制御に問題がある。特表2000−501936号公報村山ら、東洋曹達研究報告、28、49−58(1984) 本発明の目的は、組換えタンパク質を発現可能な大腸菌を培養することで前記タンパク質を効率的に製造するための方法を提供することにある。 本発明者らは前記課題に対し鋭意検討した結果、オンラインレーザー濁度計の値を指標として培養液中の炭素源濃度を制御することで、本発明の完成に至った。 すなわち本発明は、以下の態様を包含する: (i)タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターで大腸菌を形質転換して得られた組換え大腸菌を、オンラインレーザー濁度計により測定される菌体濃度に基づいて、培養液中の炭素源濃度を制御しながら培養することで、前記タンパク質を製造する方法。 (ii)培養液中の炭素源濃度の制御を、オンラインレーザー濁度計により測定される菌体濃度に比例して炭素源を供給することで制御する、(i)に記載の方法。 (iii)炭素源の供給を式(1)(F:炭素源流加速度(単位はg/時間)、qsf:比例係数(単位はg/(時間・L))、Sin:流加液中の炭素源濃度(単位はg/L)、V:培養液量(単位はL)、X:菌体濃度(単位はg/L))に基づき実施し、かつ式(1)の(qsf/Sin)値を0.0005から0.0013の間とする、(ii)に記載の方法。 (iv)大腸菌がW3110株(ATCC 27235)である、(i)から(iii)のいずれかに記載の方法。 (v)タンパク質がヒトFc結合性タンパク質である、(i)から(iv)のいずれかに記載の方法。 (vi)ヒトFc結合性タンパク質が、(1)配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち少なくとも16番目のグルタミンから289番目のバリンまでのアミノ酸を含むタンパク質、または(2)配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち少なくとも16番目のグルタミンから289番目のバリンまでのアミノ酸を含み、かつ前記アミノ酸のうちの一つ以上が他のアミノ酸に置換、挿入または欠失したタンパク質である、(v)に記載の方法。 以下、本発明を詳細に説明する。 本発明の製造方法では、タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターで大腸菌を形質転換して得られた組換え大腸菌を、適切な培地で培養することで、前記タンパク質を発現させ、製造する。前記発現ベクターで形質転換させる宿主として用いる大腸菌の好ましい例として、W3110株(ATCC 27235)があげられる。 組換え大腸菌を培養するための培地成分については、組換え大腸菌を増殖可能で、かつ発現ベクターに挿入したポリヌクレオチドがコードするタンパク質を発現可能なものであれば特に限定はない。培地に含まれる炭素源の一例としては、グルコース、フルクトース、マルトース、ショ糖、粗糖、糖蜜があげられる。培地に含まれる窒素源の一例としては、酵母エキス、ポリペプトン、カゼインおよびその代謝物、コーンスティープリカー、大豆タンパク質、肉エキス、魚肉エキスがあげられるが、中でも酵母エキスが好ましい。なお、マグネシウム塩、ナトリウム塩、鉄塩やマンガン塩などの金属塩をさらに培地に添加してもよい。金属塩の具体例としては、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、塩化ナトリウム、硫酸鉄(II)、硫酸鉄(III)、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、クエン酸鉄、硫酸アンモニウム鉄、塩化カルシウム二水和物、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、硫酸銅、塩化銅、硫酸マンガン、塩化マンガンがあげられる。さらに必要に応じ、ビオチン、ニコチン酸、チアミン、リボフラビン、イノシトール、ピリドキシンといったビタミン類を培地に添加してもよい。 組換え大腸菌を培養する際、培養開始時に炭素源や窒素源といった栄養源を一度に培地に投入すると、組換え大腸菌の増殖およびタンパク質製造が阻害されたり、酢酸などの副生成物が生産されたりするため、タンパク質の発現効率および得られたタンパク質の品質に悪影響を与える可能性がある。そのため本発明の製造方法では、培養開始時に投入する栄養源は最小限とし、培養中に栄養源を追加供給(流加)しながら培養を行なう流加培養により、タンパク質を製造する。 流加培養によるタンパク質製造は、必要最小限の炭素源および窒素源を投入した培地に、必要に応じて金属塩やビタミン類等を添加した後、組換え大腸菌の培養を開始し、組換え大腸菌の増殖により炭素源が消費され所定の濃度まで低下した時点で、培養液中の炭素源を所定の濃度に維持しつつ、炭素源と窒素源を供給(流加)して培養することで、組換え大腸菌から前記タンパク質を発現させ、製造すればよい。前述した流加培養によるタンパク質製造において、培養開始時に投入する炭素源の濃度は、炭素源がグルコースの場合、0から20g/Lとすると好ましい。また供給(流加)する炭素源と窒素源は、高濃度の溶液とすると培養液の液量増加を抑えられるため好ましく、炭素源をグルコース、窒素源を酵母エキスとした場合、供給(流加)するグルコース溶液の濃度は300から900g/Lに、酵母エキス溶液の濃度は150から500g/Lに、それぞれすると好ましい。炭素源と窒素源を供給(流加)する際維持する、所定の濃度とは、炭素源が枯渇せず有機酸などの副生成物が生産しない濃度をいう。炭素源をグルコースとした場合、炭素源濃度が5g/Lを超えた状態で培養を行なうと副生成物として有機酸が生産され、それが多量に蓄積することにより組換え大腸菌の増殖やFc結合性タンパク質の生産を抑制する可能性があるため、好ましくない。よって、炭素源をグルコースとした場合の所定の濃度とは、少なくとも5g/L以下、好ましくは1g/L以下、さらに好ましくは0.5g/L以下、最も好ましくは0.1g/L以下である。 本発明の製造方法は、組換え大腸菌を培養する際、オンラインレーザー濁度計により測定される菌体濃度に基づいて、培養液中の炭素源濃度を前記所定の濃度に制御しながら培養することを特徴としている。オンラインレーザー濁度計を用いた培養液中の炭素源濃度の制御に関しては、Yamaneらの文献(J. of Ferment. Bioeng.,75,451(1993))に開示されているが、当該文献は大腸菌を対象としたものではなく、大腸菌に対しての有効性は全く知られていなかった。 オンラインレーザー濁度計により測定される菌体濃度に基づいた、培養液中の炭素源濃度の制御は、具体的には、オンラインレーザー濁度計により菌体濃度Xをリアルタイムにモニターし、モニターした菌体濃度Xを下記式(1)に示す流加式に代入することで、炭素源流加速度Fを算出し、算出した流加速度の値に基づき、炭素源を含む流加液を培養液へ送液することで、炭素源濃度の制御を行なう。なお式(1)において、Fは炭素源流加速度(単位はg/時間)、qsfは比例係数(単位はg/(時間・L))、Sinは流加液中の炭素源濃度(単位はg/L)、Vは培養液量(単位はL)、Xは菌体濃度(単位はg/L)を表す。なお式(1)において、(qsf/Sin)の値を0.0005から0.0013の範囲内とすると好ましく、0.001から0.0013の範囲内とするとさらに好ましい。また本発明の製造方法で用いる、オンラインレーザー濁度計に特に限定はなく、一例としてオートマチックシステムリサーチ製LA−401があげられる。 炭素源流加速度Fの制御は、例えば、炭素源を含む流加液を供給するポンプの稼働時間より行なうことができる。なお窒素源の供給(流加)は、炭素源流加速度Fに比例した速度で供給(流加)すればよい。窒素源の供給(流加)方法は特に限定はなく、例えば、炭素源水溶液と窒素源水溶液を任意の濃度で混合し、当該混合液を培地に供給(流加)する方法が例示できる。 組換え大腸菌を培養する際、菌体増殖が活発な対数増殖期には、大量の酸素が必要となるため、酸素供給量を増やす必要がある。酸素供給量を増やすには、撹拌回転数を上昇させる、加圧により酸素の液中への溶解度を増加させる、通気中の酸素分圧を上昇させる、等の方法により酸素供給量を上昇させればよい。前述した方法で酸素供給量を上昇させた後、溶存酸素電極により培養液中の酸素濃度を測定して、酸素濃度20%以上50%未満になるよう制御し、培養すればよい。 本発明の製造方法における組換え大腸菌の培養条件は、製造に用いる組換え大腸菌が増殖しタンパク質を発現し得る条件であれば特に限定はないが、培養温度は15から50℃が好ましく、特に好ましい温度は20から33℃である。pHは6から8が好ましい。培養時間は任意に設定できるが、通常は数時間から100時間の間に設定される。なお、発現ベクターに誘導性のプロモータが含まれている場合、培養開始から一定時間経過後、当該プロモータに対応した誘導剤を添加して、さらに培養することで組換え大腸菌からのタンパク質発現を誘導させるとよい。誘導剤がイソプロピル−β−チオガラクトピラノシド(IPTG)の場合、添加量は最終濃度として0.01から2.0mMが好ましく、最終濃度として0.1から2.0mMが特に好ましい。 本発明の方法で製造するタンパク質は、タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを用いて大腸菌を形質転換して得られた形質転換体の菌体内に発現するタンパク質であれば特に限定されない。ここでは前記タンパク質の一例である、ヒトFc結合性タンパク質について詳細に説明する。 本明細書においてヒトFc結合性タンパク質は、ヒトFcγRIの細胞外領域(具体的には天然型ヒトFcγRIの場合、配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち16番目から292番目までの領域)を構成するタンパク質のことをいう。ただし必ずしもヒトFcγRI細胞外領域の全領域でなくてもよく、ヒトFcγRI細胞外領域を構成するポリペプチドのうち、少なくとも抗体(IgG)のFc領域に結合する本来の機能を発現し得る領域のポリペプチドを含んでいればよい。当該ヒトFc結合性タンパク質の一例として、(i)配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち少なくとも16番目のグルタミンから289番目のバリンまでのアミノ酸を含むタンパク質や、(ii)配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち少なくとも16番目のグルタミンから289番目のバリンまでのアミノ酸を含み、かつ前記アミノ酸のうちの一つ以上が他のアミノ酸に置換、挿入または欠失したタンパク質、があげられる。前記(ii)の具体例としては、特開2011−206046号公報に開示のヒトFc結合性タンパク質があげられる。 本発明は、タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターで大腸菌を形質転換して得られた組換え大腸菌を培養することで前記タンパク質を製造する際、オンラインレーザー濁度計により測定される菌体濃度に基づいて、培養液中の炭素源濃度を制御しながら培養することを特徴としている、本発明の方法は、従来の方法と比較し、培養液中の菌体濃度を正確に反映させることができるため、培養液中の炭素源濃度の制御がより容易となる。したがって、副生成物の生産を抑制することができ、前記タンパク質を効率的に製造することができる。実施例1の製造方法における、形質転換体(組換え大腸菌)の増殖およびヒトFc結合性タンパク質(FcR)生産量を示した図。図中、横軸は時間(単位は時間)を示し、縦軸のうち、丸は微生物の増殖量を示す600nmにおける吸光度(単位は任意単位)を、三角はヒトFcRの生産量(単位はmg/L)を、四角は培養液中のグルコース濃度(単位はg/L)をそれぞれ示す。比較例1の製造方法における、形質転換体(組換え大腸菌)の増殖およびヒトFc結合性タンパク質(FcR)生産量を示した図。図中、横軸は時間(単位は時間)を示し、縦軸のうち、丸は微生物の増殖量を示す600nmにおける吸光度(単位は任意単位)を、三角はヒトFcRの生産量(単位はmg/L)を、四角は培養液中のグルコース濃度(単位はg/L)をそれぞれ示す。 以下、本発明の製造方法によるヒトFc結合性タンパク質の製造を例として、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。 実施例1 ヒトFc結合性タンパク質を発現可能な形質転換体(組換え大腸菌)を、オンラインレーザー濁度計により測定される菌体濃度に比例して炭素源供給量を設定する流加培養で培養することで、Fc結合性タンパク質の生産を行なった。(A)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるFc結合性タンパク質をコードする、配列番号3に記載のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドを、公知の方法(例えば特許文献2の方法)により、プラスミドpTrc99aのNcoIサイトとHindIIIサイトの間に挿入することで、発現ベクター(pTrcperBFcRm36bD4C)を作製した。なお、配列番号2のうち、1番目のメチオニンから26番目のアラニンまでがMalEシグナルペプチド、27番目のリジンから33番目のグリシンまでがリンカーペプチド、34番目のグルタミンから307番目のバリンまでがFc結合性タンパク質FcRm36bのアミノ酸配列、308番目から318番目のグリシンまでが不溶性担体へ固定化するためのタグペプチドである。また、FcRm36bは、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるヒト天然型FcγRIのうち、16番目のグルタミンから289番目のバリンまでの領域に相当し、かつ下記に示すアミノ酸置換を行なった、Fc結合性タンパク質である(特開2011−206046号公報)。(1)配列番号1の20番目のスレオニンをプロリンに置換(2)配列番号1の25番目のスレオニンをリジンに置換(3)配列番号1の35番目のグルタミンをロイシンに置換(4)配列番号1の36番目のグルタミン酸をグリシンに置換(5)配列番号1の38番目のスレオニンをセリンに置換(6)配列番号1の41番目のロイシンをメチオニンに置換(7)配列番号1の45番目のバリンをアラニンに置換(8)配列番号1の46番目のロイシンをプロリンに置換(9)配列番号1の49番目のプロリンをセリンに置換(10)配列番号1の52番目のセリンをグリシンに置換(11)配列番号1の60番目のグリシンをアスパラギン酸に置換(12)配列番号1の63番目のスレオニンをイソロイシンに置換(13)配列番号1の65番目のスレオニンをアラニンに置換(14)配列番号1の69番目のセリンをスレオニンに置換(15)配列番号1の71番目のアルギニンをヒスチジンに置換(16)配列番号1の77番目のバリンをグルタミン酸に置換(17)配列番号1の78番目のアスパラギンをアスパラギン酸に置換(18)配列番号1の100番目のイソロイシンをバリンに置換(19)配列番号1の114番目のフェニルアラニンをロイシンに置換(20)配列番号1の133番目のチロシンをヒスチジンに置換(21)配列番号1の139番目のアルギニンをヒスチジンに置換(22)配列番号1の149番目のトリプトファンをアルギニンに置換(23)配列番号1の152番目のアスパラギンをスレオニンに置換(24)配列番号1の156番目のロイシンをプロリンに置換(25)配列番号1の160番目のイソロイシンをスレオニンに置換(26)配列番号1の163番目のアスパラギンをセリンに置換(27)配列番号1の173番目のリジンをアルギニンに置換(28)配列番号1の181番目のイソロイシンをスレオニンに置換(29)配列番号1の195番目のアスパラギンをスレオニンに置換(30)配列番号1の203番目のロイシンをヒスチジンに置換(31)配列番号1の206番目のアスパラギンをスレオニンに置換(32)配列番号1の207番目のロイシンをグルタミンに置換(33)配列番号1の231番目のメチオニンをリジンに置換(34)配列番号1の240番目のアスパラギンをアスパラギン酸に置換(35)配列番号1の283番目のロイシンをヒスチジンに置換(36)配列番号1の285番目のロイシンをグルタミンに置換(B)(A)で作製した発現ベクターpTrcperBFcRm36bD4Cを用いて、公知の方法(例えば特許文献2の方法)により、大腸菌W3110株(ATCC 27325)を形質転換した。(C)形質転換体を、100mLの2×YT培地(バクトトリプトン:16g/L、酵母エキス:10g/L、塩化ナトリウム:5g/L、アンピシリン:0.1mg/L)を入れた、500mL容バッフル付三角フラスコに植菌し、30℃で16時間、毎分130回の回転速度、回転半径1インチで前培養を行なった。(D)表1に示す培地組成のうち、酵母エキス、リン酸三ナトリウム十二水和物およびリン酸水素二ナトリウム十二水和物を投入した培地約3.0Lを10Lの発酵槽に入れ、121℃で20分間滅菌後、グルコース、硫酸マグネシウム七水和物、硫酸鉄(II)七水和物および塩化マンガン(II)四水和物を表1に示す濃度に、それぞれなるよう添加し、さらに(A)の前培養液150mLを添加して、本培養を行なった。培養装置はエイブル社製BMS−03PIを使用し、通気した空気速度は1.8L/分に、培養温度は30℃に、pHは6.9から7.1にそれぞれ設定し、培養中におけるpHの変動は、14%アンモニア水または50%リン酸の添加により前記範囲に制御した。培養中はグルコース分析計(YSI社製2700)を用いて定期的にグルコース濃度を測定した。炭素源の供給には700g/Lのグルコースを、窒素源の供給には400g/Lの酵母エキス(オリエンタル酵母工業製)を、それぞれ使用した。栄養源の供給は、式(1)に基づき算出される炭素源流加速度Fに基づき、前記炭素源を含む溶液と前記窒素源を含む溶液との容量比1:1の混合液を供給することで実施した。なお、式(1)におけるSinは350g/Lに、Vは3.0Lに、比例係数qsfは0.4に、それぞれ設定した。供給にはワトソン・マーロウ社製定量ポンプ101Uの高速型を使用した。微生物の増殖は培養液の600nmの濁度(OD600)により測定した。オンラインレーザー濁度計(株式会社オートマチックシステムリサーチ製、型式LA−401)により測定した菌体濃度から前述の式(1)によりポンプによる前記栄養源溶液(炭素源:窒素源=1:1(容量比)の混合溶液)の供給流速を算出し、パーソナルコンピューターを介して自動制御を行なった。このときオンラインレーザー濁度計出力(A、単位:mA)と菌体密度(X、単位:g/L)との間には以下の式(2)の関係があることを事前の実験で求めている。(E)培養開始24時間後、OD600が200に達したとき、培養温度を25℃に下げ、IPTGを終濃度0.5mMとなるよう培養液に添加することで、Fc結合性タンパク質の生産誘導をかけた。 72時間培養を行なったところ、培養液の濁度は230に達した。予め求めた濁度と菌体密度の相関式より、乾燥菌体収量は培養液1Lあたり65gと求められた。なお、グルコース濃度は、グルコースと酵母エキスの供給を開始した、培養開始8時間後から培養終了(72時間後)までの期間中、0から0.1g/Lに維持された。また、培養終了後の培養液に含まれるFc結合性タンパク質の生産量をELISA法により定量した結果、培養液1Lあたり600mgであった(図1)。 比較例1 流加制御の方式をDOスタット法としたことを除き実施例1と同様の培養を行なった。すなわち、エイブル社製DO(溶存酸素)電極による信号を、エイブル社製培養制御プログラムをインストールしたパーソナルコンピューターにより解析し、溶存酸素が上昇し始めることで本培養初期に投入したグルコース(20g/L)が消費されたことを検知し、DOが40%飽和を超えた時点で、グルコース350g/Lと酵母エキス200g/Lとの混合液を流加ポンプにより送液速度1.8g/(L・min)で10秒間起動することで供給(流加)することでDOを低下させ、以降DOが40%飽和を超えるたびに前記流加ポンプを起動する方法で流加制御を行なった。 48時間培養を行なったところ、培養液の濁度は140に達した(乾燥菌体収量40g/L)。また、培養終了後の培養液に含まれるFc結合性タンパク質の生産量をELISA法により定量した結果、培養液1Lあたり300mgであった(図2)。 実施例2 式(1)の比例係数qsfを0.2に設定した他は、実施例1と同様な方法でFc結合性タンパク質を発現する形質転換体を培養した。72時間培養を行なったところ、培養液の濁度は200に達した(乾燥菌体収量56g/L(培養液))。また、培養終了後の培養液に含まれるFc結合性タンパク質(ヒトFcγRI)の生産量をELISA法により定量した結果、培養液1Lあたり400mgであった。 実施例3 式(1)の比例係数qsfを0.3に設定した他は、実施例1と同様な方法でFc結合性タンパク質を発現する形質転換体を培養した。72時間培養を行なったところ、培養液の濁度は200に達した(乾燥菌体収量56g/L(培養液))。また、培養終了後の培養液に含まれるFc結合性タンパク質(ヒトFcγRI)の生産量をELISA法により定量した結果、培養液1Lあたり400mgであった。 実施例4 式(1)の比例係数qsfを0.5に設定した他は、実施例1と同様な方法でFc結合性タンパク質を発現する形質転換体を培養した。72時間培養を行なったところ、培養液の濁度は170に達した(乾燥菌体収量48g/L(培養液))。また、培養終了後の培養液に含まれるFc結合性タンパク質の生産量をELISA法により定量した結果、培養液1Lあたり300mgであった。 実施例1から4ならびに比較例1の結果をまとめたものを表2に示す。表2から分かるように、オンラインレーザー濁度計により測定される菌体濃度に基づいて(レーザー濁度法で)培養液中の炭素源濃度を制御する本発明の製造方法は、DO(溶存酸素)の変化を利用して(DOスタット法で)培養液中の炭素源濃度を制御する従来の方法と比較し、ヒトFc結合性タンパク質の生産量が増大することがわかる。また前記式(1)に示す流加式における、(qsf/Sin)の最適値を検討した結果、(qsf/Sin)0.0005から0.0013の範囲内(実施例1から3)とすると好ましく、0.001から0.0013の範囲内(実施例1)とするとさらに好ましいことがわかる。タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターで大腸菌を形質転換して得られた組換え大腸菌を、オンラインレーザー濁度計により測定される菌体濃度に基づいて、培養液中の炭素源濃度を制御しながら培養することで、前記タンパク質を製造する方法。培養液中の炭素源濃度の制御を、オンラインレーザー濁度計により測定される菌体濃度に比例して炭素源を供給することで制御する、請求項1に記載の方法。炭素源の供給を式(1)(F:炭素源流加速度(単位はg/時間)、qsf:比例係数(単位はg/(時間・L))、Sin:流加液中の炭素源濃度(単位はg/L)、V:培養液量(単位はL)、X:菌体濃度(単位はg/L))に基づき実施し、かつ式(1)の(qsf/Sin)値を0.0005から0.0013の間とする、請求項2に記載の方法。大腸菌がW3110株(ATCC 27235)である、請求項1から3のいずれかに記載の方法。タンパク質がヒトFc結合性タンパク質である、請求項1から4のいずれかに記載の方法。ヒトFc結合性タンパク質が、(1)配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち少なくとも16番目のグルタミンから289番目のバリンまでのアミノ酸を含むタンパク質、または(2)配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち少なくとも16番目のグルタミンから289番目のバリンまでのアミノ酸を含み、かつ前記アミノ酸のうちの一つ以上が他のアミノ酸に置換、挿入または欠失したタンパク質である、請求項5に記載の方法。 【課題】 組換えタンパク質を発現可能な大腸菌を培養することで前記タンパク質を効率的に製造するための方法を提供すること。【解決の手段】 前記組換え大腸菌を、オンラインレーザー濁度計により測定される菌体濃度に基づいて、培養液中の炭素源濃度を制御しながら培養することで、前記課題を解決する。【選択図】 図1配列表


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