生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_腸内環境改善候補物質の評価方法
出願番号:2012281815
年次:2014
IPC分類:G01N 33/15,G01N 33/50,A01K 67/027,C12N 15/09,C12Q 1/68


特許情報キャッシュ

市川 晋太郎 堀江 暁 人見 能貴 JP 2014126413 公開特許公報(A) 20140707 2012281815 20121225 腸内環境改善候補物質の評価方法 キリンホールディングス株式会社 000253503 廣田 雅紀 100107984 小澤 誠次 100102255 東海 裕作 100096482 ▲高▼津 一也 100120086 堀内 真 100131093 市川 晋太郎 堀江 暁 人見 能貴 G01N 33/15 20060101AFI20140610BHJP G01N 33/50 20060101ALI20140610BHJP A01K 67/027 20060101ALN20140610BHJP C12N 15/09 20060101ALN20140610BHJP C12Q 1/68 20060101ALN20140610BHJP JPG01N33/15 ZG01N33/50 ZA01K67/027C12N15/00 AC12Q1/68 A 1 OL 12 2G045 4B024 4B063 2G045AA40 2G045CB04 2G045FB05 2G045JA01 4B024AA11 4B024CA09 4B024HA12 4B063QA01 4B063QQ06 4B063QQ42 4B063QR32 4B063QR62 4B063QS25 4B063QS34 4B063QX02 本発明は、腸内環境改善候補物質の評価方法に関し、より詳細には、非ヒト動物の糞便の酸化還元電位を測定する工程を含む、腸内環境改善候補物質の評価方法に関する。 ヒトの腸内には細菌が常在し、腸内細菌叢を構成している。近年、この腸内細菌叢が人間の健康と重要な係わりをもっていることが認識され、腸内細菌に対する関心が高まっている。ヒトの腸内細菌叢の構成は、環境及び食餌内容が安定であり、かつ宿主が健康である限りほとんど一定している。しかし、この腸内細菌叢の生態系は、宿主の年齢、疾病、微生物感染、ストレス、栄養成分、薬物投与等種々の要因により変動し、腸内細菌叢が悪化して、いわゆる悪玉菌である有害菌がいわゆる善玉菌である有用菌よりも優勢となると、宿主の健康に悪い影響を及ぼす原因となる。 善玉菌としては、ビフィズス菌などのビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属細菌や、ラクトバチルス(Lactobacillus)属細菌などがよく知られており、悪玉菌としては、クロストリジウム(Clostridium)属細菌や大腸菌などがよく知られている。悪玉菌は悪臭のもととなる腐敗物質を産生するものが多く、中には病原性物質を産生するものもいる。善玉菌が宿主の腸内で優勢となり、腸内細菌叢が改善すると、悪玉菌の生育や働きが抑制され、宿主の健康に良い影響を及ぼす。また、善玉菌の中には、宿主に有用な生理活性を有する有機酸を産生することによって宿主の健康に良い影響を及ぼすものもある。そのため、腸内環境改善作用や腸内細菌叢改善作用を有する様々な物質がこれまでに探索されている(特許文献1〜4参照)。 従来、ある食品素材などのある物質が腸内環境改善作用を示すかどうかを評価するためには、その物質を対象に長期間(一般的には4週間ほど)継続投与し、その糞便中の菌叢や菌叢由来の代謝産物などの各種パラメータを測定する必要があった。しかし、かかる従来の評価方法は、長期間を要し、また、操作も煩雑であった。したがって、より簡便かつ迅速に腸内環境改善候補物質を評価し得る方法が求められていた。 なお、潰瘍性大腸炎の患者では、糞便中の細菌叢において、好気性菌の菌数に対する嫌気性菌の菌数が減少し、腸内細菌叢が悪化していることが知られている(非特許文献1参照)。また、微生物を用いた下排水の処理装置において、ろ床の嫌気度合の指標として酸化還元電位を用いることは知られていた(特許文献5参照)。しかし、宿主の糞便の酸化還元電位の上昇を抑制する物質を、腸内細菌叢改善候補物質等の腸内環境改善候補物質と評価し得ることは全く知られていなかった。特開2007−031345号公報特開2007−204423号公報特開2008−237162号公報特開2009−161502号公報特開平09−141292号公報日本消化器病学会雑誌(1987),84(12),2669−2680 本発明の課題は、より簡便かつ迅速に実施することができ、加えて、より精度の良い、腸内環境改善候補物質の評価方法を提供することにある。 本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討する中で、脂質投与による非ヒト動物の糞便の酸化還元電位の上昇をプロピルガレートが抑制すること、脂質投与による非ヒト動物の糞便中の大腸菌数の増加をプロピルガレートが抑制すること、及び、脂質投与による非ヒト動物の盲腸内糞便中の有機酸濃度の低下をプロピルガレートが抑制することを見いだし、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明は、(1)少なくとも以下の工程A〜Eを有することを特徴とする腸内環境改善候補物質の評価方法:(A)腸内の酸化還元電位を上昇させる処置を非ヒト動物に施す工程A:(B)非ヒト動物に被験物質を投与する工程B:(C)前記工程A及び工程Bより後に、前記非ヒト動物の腸内又は体外の糞便の酸化還元電位を測定する工程C:(D)前記工程Cで測定した酸化還元電位の値を、基準値と比較する工程D:(E)前記工程Dにおける比較の結果、前記被験物質が工程Aにおける処置による酸化還元電位の上昇を抑制している場合に、前記被験物質を腸内環境改善候補物質と評価する工程E:に関する。 本発明は、より簡便かつ迅速に実施することができ、加えて、より精度の良い、腸内環境改善候補物質の評価方法を提供する。本発明によれば、腸内環境改善候補物質をより簡便、迅速かつ精度良く評価し得るので、一定期間内により多くの被験物質をより低コストで効率良く評価することができる。本発明の実施例において、5つの群(control群、oil群、tBHQ群、PG群、AX群)のマウスの盲腸内糞便の酸化還元電位(mV)を測定した結果を示す図である。縦軸の酸化還元電位は負の値であるため、酸化還元電位が上昇するにつれて絶対値が小さくなる。なお、群間の有意差検定はStudent-Newman-Keuls法を用いた。各群の棒グラフに付記されたa又はbの記号は、記号の異なる群間に有意な差があることを表している。また、各群の内容は以下の通りである。「control群:200μLの水を経口投与。」「oil群(被験物質非投与群):200μLのコーン油を経口投与。」「tBHQ群:tert−ブチルヒドロキノン(2mg)を200μLのコーン油に懸濁し経口投与。」「PG群:プロピルガレート(2mg)を200μLのコーン油に懸濁し経口投与。」「AX群:アスタキサンチン(1mg)を200μLのコーン油に懸濁し経口投与。」本発明の実施例において、3つの群(control群、oil群、PG群)のマウスの糞便中の大腸菌数を測定した結果を示す図である。縦軸は糞便1g中の大腸菌数を常用対数で示しているため、縦軸の数値が1増えると大腸菌数は10倍となる。本発明の実施例において、3つの群(control群、oil群、PG群)のマウスの盲腸内糞便中の有機酸濃度を測定した結果を示す図である。本発明の実施例において、3つの群(control群、oil群、PG群)のマウスの盲腸内糞便中の酢酸濃度(左パネル)及び酪酸濃度(右パネル)を測定した結果を示す図である。 本発明は、少なくとも以下の工程A〜Eを有することを特徴とする腸内環境改善候補物質の評価方法(以下、単に「本発明の評価方法」とも表示する。)からなる。(A)腸内の酸化還元電位を上昇させる処置を非ヒト動物に施す工程A:(B)非ヒト動物に被験物質を投与する工程B:(C)前記工程A及び工程Bより後に、前記非ヒト動物の腸内又は体外の糞便の酸化還元電位を測定する工程C:(D)前記工程Cで測定した酸化還元電位の値を、基準値と比較する工程D:(E)前記工程Dにおける比較の結果、前記被験物質が工程Aにおける処置による酸化還元電位の上昇を抑制している場合に、前記被験物質を腸内環境改善候補物質と評価する工程E: また、本発明の評価方法は前述の工程A〜Eに加えて、以下の工程Xをさらに有していてもよい。(X)工程A又はBより前に、非ヒト動物の腸内又は体外の糞便の酸化還元電位を測定する工程X: 本発明の評価方法では、非ヒト動物の腸内又は体外の糞便の酸化還元電位の値を利用することにより、被験物質が腸内環境改善候補物質であるかどうかをより簡便、迅速かつ精度良く評価することができる。なお、本発明の腸内環境改善候補物質の評価方法には、腸内環境改善候補物質のスクリーニング方法も含まれる。 上記工程Aとしては、腸内の酸化還元電位を上昇させる処置を非ヒト動物に施す工程である限り特に制限されず、腸内の酸化還元電位を上昇させる作用を有する物質を非ヒト動物に投与する処置を好適に例示することができる。該「腸内の酸化還元電位を上昇させる作用を有する物質」としては、非ヒト動物に投与することによって、その腸内の酸化還元電位を上昇させ得る物質である限り特に制限されないが、油脂;デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)、2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)等の腸炎惹起物質;過酸化水素、過酸化カルシウム、過マンガン酸カリウム、塩素酸カリウム、臭素酸ナトリウム、臭素酸カリウム、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、クロラミン、過酢酸、メタクロロ過安息香酸等の酸化剤;などを好適に例示することができる。上記の油脂としては、コーン油、大豆油、米油、ナタネ油、オリーブ油、ごま油、ヤシ油、パーム油、べにばな油等の植物油;魚油、肝油、鯨油等の海産動物油;さなぎ油、牛脚油、骨油などの陸産動物油;などの油や、ヘット、ラード、馬脂、骨脂、乳酪脂などの脂を好適に例示することができ、中でも、所定量を投与しやすい点で油をさらに好適に例示することができ、中でも、植物油をより好適に例示することができ、中でも、入手が容易で比較的安価である点でコーン油、べにばな油、大豆油などをさらに好適に例示することができる。 前述の「腸内の酸化還元電位を上昇させる作用を有する物質を非ヒト動物に投与する」方法としては、非ヒト動物に投与された該物質がその腸内の酸化還元電位を上昇させる作用を発揮し得る投与方法である限り特に制限されず、経口投与、経腸投与などを例示することができる。なお、工程Aには、腸内の酸化還元電位を上昇させる処置があらかじめ施された非ヒト動物を用意することも便宜上含まれる。該非ヒト動物として例えば腸炎モデル非ヒト動物、大腸癌モデル非ヒト動物、老齢モデル非ヒト動物などを例示することができる。かかるモデル非ヒト動物としては、公知のものなどを用いることができる。また、老齢の非ヒト動物も用いることができる。 本願明細書における非ヒト動物としては、ヒト以外の哺乳類、鳥類、は虫類、両生類、魚類等に属する動物を例示することができ、中でも、哺乳動物を好適に例示することができ、中でも、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウマ、ウシ、サル等をより好適に例示することができ、比較的安価で、サイズも小さく扱いやすい点で、マウス、ラット、モルモットなどをさらに好適に例示することができる。 上記工程Bとしては、非ヒト動物に被験物質を投与する工程である限り特に制限されず、かかる投与方法としては、経口投与、経腸投与、腹腔内投与などを例示することができ、簡便性の観点から経口投与を好適に例示することができる。なお、本明細書における「経口投与」には、混餌投与や飲水投与を好適に例示することができる。 上記工程Aは、本発明の効果が達成され得る限り、工程Bより先に行ってもよいし、工程Bより後に行ってもよいし、工程Bと同時に行ってもよいが、簡便性の観点から、工程Bと同時に行うことが好ましく、中でも、腸内の酸化還元電位を上昇させる作用を有する物質と被験物質を非ヒト動物に同時に投与することによって、工程Aと工程Bを同時に行うことがより好ましい。ここで両物質を非ヒト動物に同時に投与することには、非ヒト動物に両物質を別々に同時に投与することや、両物質を混合した上で同時に投与することが含まれる。 上記工程Cとしては、前記工程A及び工程Bより後に、前記非ヒト動物の腸内又は体外の糞便の酸化還元電位を測定する工程である限り特に制限されない。かかる「非ヒト動物の腸内又は体外の糞便の酸化還元電位を測定する」方法としては、特に制限されないが、酸化還元電位計のセンサー部を非ヒト動物の腸内又は体外の糞便に接触させる方法を好適に例示することができる。非ヒト動物の腸内の糞便の酸化還元電位を計測する方法としては、酸化還元電位計のセンサー部を非ヒト動物の肛門から挿入して計測する方法や、非ヒト動物を開腹、開腸して酸化還元電位計のセンサー部を腸内に挿入して計測する方法を例示することができる。ここで「腸内」としては、大腸内、盲腸内、結腸内、直腸内を例示することができるが、酸化還元電位計のセンサー部を糞便に接触させやすい点で盲腸内を好適に例示することができる。また、体外の糞便の酸化還元電位を計測する方が、腸内の糞便の酸化還元電位を計測するよりも簡便であるが、体外の糞便のサイズは、用いる非ヒト動物の種類などによっては、酸化還元電位を測定するのに十分な大きさを備えていない場合もある。当業者は、これら諸条件を考慮して、いずれの糞便の酸化還元電位を計測するか適宜決定することができる。なお、上記工程Xは、酸化還元電位の測定を工程A又はBより前に行うこと以外は、工程Cと同様に行うことができる。 上記工程Cにおける「前記工程A及び工程Bより後に」が具体的にどの程度の時間かは、本発明の効果が達成され得る限り特に制限されず、上記工程Aの「腸内の酸化還元電位を上昇させる処置」の種類や、被験物質の投与方法などに応じて適宜調整することができるが、「腸内の酸化還元電位を上昇させる処置」として例えば油脂を非ヒト動物に経口投与した場合は、腸内環境改善候補物質の評価の精度と、評価に要する時間のバランスの観点から、工程Bを行った時から3時間以上、好ましくは5時間以上15時間以内、より好ましくは6時間以上10時間以内を好適に例示することができ、臭素酸カリウムを非ヒト動物に経口投与した場合は、工程Bを行った時から5時間以上、好ましくは8時間以上20時間以内、より好ましくは10時間以上16時間以内を好適に例示することができる。 上記工程Dとしては、前記工程Cで測定した酸化還元電位の値を、基準値と比較する工程である限り特に制限されない。ここで、「基準値」には、「被験物質非投与の場合の酸化還元電位の値」や、「工程Xで測定した酸化還元電位の値」が含まれ、本発明の評価方法が工程Xを有さない場合は、「被験物質非投与の場合の酸化還元電位の値」を基準値とすることができ、本発明の評価方法が工程Xをさらに有する場合は、「被験物質非投与の場合の酸化還元電位の値」、「工程Xで測定した酸化還元電位の値」のいずれも基準値とすることができるが、より簡便であることから、「工程Xで測定した酸化還元電位の値」を基準値とすることが好ましい。 上記の「被験物質非投与の場合の酸化還元電位の値」とは、被験物質を投与しなかったこと以外は工程Cにおける非ヒト動物と同様の非ヒト動物について、工程Cと同様の条件下で計測した酸化還元電位の値を意味する。なお、本発明の評価方法についてより高い精度を求める観点からは、工程Cの酸化還元電位を測定する際に、「被験物質非投与の場合の酸化還元電位の値」についても測定することが好ましいが、本発明の評価方法を実施する度に「被験物質非投与の場合の酸化還元電位の値」を行う必要は必ずしもなく、同様の実験条件で以前に測定した「被験物質非投与の場合の酸化還元電位の値」を用いることもできる。 上記工程Eとしては、前記工程Dにおける比較の結果、前記被験物質が工程Aにおける処置による酸化還元電位の上昇を抑制している場合に、前記被験物質を腸内環境改善候補物質と評価する工程である限り特に制限されない。ここで、「工程Aにおける処置による酸化還元電位の上昇を抑制している場合」とは、工程Aにおける処置による酸化還元電位の上昇を完全に抑制している場合だけでなく、その上昇の一部を抑制している場合も含まれる。以下、工程Eを、本発明の評価方法の態様ごとに説明する。態様1:本発明の評価方法が工程Xを有さない場合。 かかる態様1の場合は、前記工程Cで測定した酸化還元電位の値が、「被験物質非投与の場合の酸化還元電位の値」(基準値)よりも低い場合に、該被験物質を腸内環境改善候補物質と評価することができるが、「被験物質非投与の場合の酸化還元電位の値」の絶対値に対して、割合として好ましくは1%以上、より好ましくは2%以上、さらに好ましくは4%以上、より好ましくは6%以上に相当する値の分、「被験物質非投与の場合の酸化還元電位の値」よりも低い場合に、被験物質を腸内環境改善候補物質と好適に評価することができる。なお、前記工程Cで測定した酸化還元電位の値が、「被験物質非投与の場合の酸化還元電位の値」の絶対値に対して、割合としてY%に相当する値の分、「被験物質非投与の場合の酸化還元電位の値」よりも低い場合とは、例えば、「被験物質非投与の場合の酸化還元電位の値」が−400mVであれば、割合としてY%に相当する値の分は、400×(Y/100)=4Yとなるので、工程Cで測定した酸化還元電位の値が(−400−4Y)の場合ということになる。態様2:本発明の評価方法が工程Xを有し、該工程Xが工程A及びBよりも前である場合。 かかる態様2の場合であっても、基準値として「被験物質非投与の場合の酸化還元電位の値」を用いる場合は、前述の態様1と同様に評価することができる。かかる態様2において、基準値として「被験物質非投与の場合の酸化還元電位の値」を用いる場合には、例えば、工程Xで酸化還元電位を測定した非ヒト動物を例えば2群に分けて、一方の群(工程Aのみ実施群)には工程Aのみを施し、他方の群(工程A、B実施群)には工程A及び工程Bを施すことを含む方法において、工程Aのみ実施群の酸化還元電位の値を「被験物質非投与の場合の酸化還元電位の値」として用いる場合なども含まれる。一方、態様2で基準値として、「工程Xで測定した酸化還元電位の値」を用いる場合は、前記工程Cで測定した酸化還元電位の値が、「工程Xで測定した酸化還元電位の値」とほぼ同程度である場合などに、該被験物質を腸内環境改善候補物質と評価することができる。「工程Xで測定した酸化還元電位の値」とほぼ同程度である場合としては、例えば、「工程Xで測定した酸化還元電位の値」の絶対値に対して、割合として好ましくは5%以内、より好ましくは3%以内、さらに好ましくは1%以内に相当する分、「工程Xで測定した酸化還元電位の値」よりも高い又は低い場合を挙げることができる。態様3:本発明の評価方法が工程Xを有し、該工程Xが工程AとBとの間であり、かつ、工程Aが先の場合。すなわち、工程A、工程X、工程Bの順序である場合。 かかる態様3の場合は、「被験物質非投与の場合の酸化還元電位の値」と「工程Xで測定した酸化還元電位の値」が同じ値を表すことになるので、以下では単に基準値と表す。態様3の場合は、前記工程Cで測定した酸化還元電位の値が、基準値よりも低い場合に該被験物質を腸内環境改善候補物質と評価することができる。かかる低下の好ましい程度としては、前述の態様1で記載したのと同様のものを挙げることができる。なお、本態様3において、工程Xにおける酸化還元電位の測定の時点で、工程Aの作用がまだ発揮されていない場合、すなわち、腸内の酸化還元電位の上昇が見られないような場合は、前述の態様2の場合と同様に評価することができる。態様4:本発明の評価方法が工程Xを有し、該工程Xが工程AとBとの間であり、かつ、工程Bが先の場合。すなわち、工程B、工程X、工程Aの順序である場合。 かかる態様4の場合であっても、基準値として「被験物質非投与の場合の酸化還元電位の値」を用いる場合は、前述の態様1と同様に評価することができる。かかる態様4において、基準値として「被験物質非投与の場合の酸化還元電位の値」を用いる場合には、例えば、工程Bを施す前に非ヒト動物を例えば2群に分けて、一方の群(工程B、A実施群)には工程B、Aを施し、他方の群(工程Aのみ実施群)には工程Aのみを施すことを含む方法において、工程Aのみ実施群の酸化還元電位の値を「被験物質非投与の場合の酸化還元電位の値」として用いる場合なども含まれる。一方、態様4で基準値として、「工程Xで測定した酸化還元電位の値」を用いる場合は、前記工程Cで測定した酸化還元電位の値が、「工程Xで測定した酸化還元電位の値」とほぼ同程度である場合などに、該被験物質を腸内環境改善候補物質と評価することができる。「工程Xで測定した酸化還元電位の値」とほぼ同程度である場合としては、前述の態様2で記載したのと同様のものを挙げることができる。 なお、工程Xにおける非ヒト動物などの、基準値の算出に用いる非ヒト動物は、工程Cにおける非ヒト動物と同一個体であってもよいし、同種の別個体であってもよいが、より高い評価精度を得る観点から、同一個体である場合を好適に例示することができる。 本明細書における「値」は、1個体の非ヒト動物の測定値であってもよいが、より高い評価精度を得る観点から、複数個体の非ヒト動物の測定値の平均値であることが好ましい。 本明細書における「腸内環境改善候補物質」とは、腸内環境改善作用を有する物質の候補となる物質を意味し、好適には、腸内環境改善作用を有する物質を含む。ここで「腸内環境改善作用」とは、腸内細菌叢や、腸内細菌により産生される有機酸(好ましくは酢酸や酪酸)等の代謝産物及びpHや水分といった理化学的指標を、宿主にとって都合の良い方向に改善する作用や、腸内の炎症を予防、改善する作用を意味し、好適には、「腸内細菌叢改善作用」を含む。「腸内細菌叢改善作用」とは、善玉菌の増殖により、腸内細菌叢を宿主にとって都合のよい方向に変動させる作用を意味する。腸内環境改善作用を有する物質は、投与された動物の便通改善や下痢抑制、あるいは、炎症性腸疾患等の腸内の炎症を予防、改善し得る。 本発明の評価方法によって、腸内環境改善候補物質と評価された被験物質については、腸内環境や腸内細菌叢に与える影響等についてさらに詳細に解析すること等によって、該被験物質が腸内環境改善物質であるかどうか、さらには、どのような効用を発揮することによって腸内環境を改善するかなどを解析することができる。 以下に実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。[盲腸内の糞便の酸化還元電位の測定] 脂質投与による糞便の酸化還元電位の上昇を抑制し得る物質を探索するために、以下のような方法で、マウス盲腸内の糞便の酸化還元電位を測定した。 6週齢のC57BL/6Jマウスを購入後1週間順化させた。順化させたマウス20匹を、1群につき4匹ずつ、5群に分け、各群のマウスには以下のような強制経口投与を行った。・control群:200μLの水を経口投与。・oil群(被験物質非投与群):200μLのコーン油を経口投与。 ・tBHQ群:tert−ブチルヒドロキノン(2mg)を200μLのコーン油に懸濁し経口投与。・PG群:プロピルガレート(2mg)を200μLのコーン油に懸濁し経口投与。・AX群:アスタキサンチン(1mg)を200μLのコーン油に懸濁し経口投与。 なお、tert−ブチルヒドロキノン、プロピルガレート、アスタキサンチンを被験物質として用いたのは、tert−ブチルヒドロキノン及びプロピルガレートは、食品添加物として使用されている強力な抗酸化剤であることが知られており、アスタキサンチンは強い抗酸化力を有することが知られていたからである。 投与終了6時間後に各マウスを麻酔下で開腹し、酸化還元電位(ORP)計(Liquisys M、Endress+Hauser社製)の測定プローブを盲腸内に挿入することにより、各マウスの盲腸内の糞便のORP値(mV)を測定した。各群におけるORP値の平均±SD(標準偏差)を図1に示す。なお、各群のORP値の平均値(以下、単に「ORP値」と表示する。)は、control群が−421mV、oil群が−400mV、tBHQ群が−394mV、PG群が−424mV、AX群が−398mVであった。 図1から分かるように、コーン油を投与したoil群では、水を投与したcontrol群に対して、ORP値が有意に上昇した。これは、コーン油の投与によりマウスの腸内がより酸化的な環境になったことを表す。また、コーン油とtBHQを同時投与したtBHQ群や、コーン油とアスタキサンチンを同時投与したAX群では、コーン油単独投与のoil群のORP値とほとんど変わらず、平均値はむしろ若干上昇した。それに対して、コーン油とプロピルガレートを同時投与したPG群では、oil群に対してORP値が有意に低下し、コントロール群と同程度の値を示した。これらの結果から、プロピルガレート投与が、コーン油の投与によるORP値の上昇を抑制することが明らかとなった。なお、PG群のORP値(−424mV)は、oil群のORP値(−400mV)の絶対値に対して、割合として6%に相当する値(24mV)の分、oil群のORP値よりも低下していた。また、前述したようにtert−ブチルヒドロキノンやアスタキサンチンも、プロピルガレートと同様に抗酸化作用を有しているが、糞便のORP値の上昇抑制は確認されなかったことから、単に抗酸化剤であるからといって、糞便のORP値の上昇抑制作用が得られるわけではないことも分かった。[盲腸内の糞便中の大腸菌数の測定] 糞便中の大腸菌数の増加や、有機酸濃度の低下は、腸内細菌叢等の腸内環境の悪化の指標として知られている。プロピルガレート投与によるORP値の上昇抑制が、腸内環境の悪化抑制あるいは改善を示すかどうかを調べるために、以下のような、糞便中の大腸菌数の解析、及び、盲腸内糞便中の有機酸濃度の分析を行った。6週齢のC57BL/6Jマウスを購入後1週間順化させた。順化させたマウス15匹を、1群につき5匹ずつ、3群に分け、各群のマウスには以下のような強制経口投与を行った。・control群:200μLの水を経口投与。・oil群(被験物質非投与群):200μLのコーン油を経口投与。・PG群:プロピルガレート(2mg)を200μLのコーン油に懸濁し経口投与。 各群とも1日1回の投与を3週間継続し、投与終了後の各マウスの糞便中の大腸菌数の解析及び盲腸内糞便中の有機酸濃度の分析を行った。大腸菌数の解析には定量PCR法を用いた。糞便中の菌体からのDNA抽出は松木等の方法(Appl Environ Microbiol(2004) 70, 7220-8.)に準じて実施した。得られたDNA中の大腸菌由来DNAの定量には大腸菌特異的なプライマーセット(配列番号1のヌクレオチド配列からなるFwプライマー、及び、配列番号2のヌクレオチド配列からなるRvプライマー)及び市販のリアルタイムPCRキットであるSYBR(登録商標) Premix Ex TaqTM (タカラバイオ社)を用いて実施した。PCR反応はロシュ社のLight Cycler480を使用し、95℃5分間→(95℃10秒間、60℃30秒間)×45サイクルで反応を行った。定量のためのスタンダードにはEscherichia coli W3110培養菌体より抽出したDNAを使用し、糞便中の大腸菌数を算出した。各群における大腸菌数の平均±SD(標準偏差)を図2に示す。以下、各群の大腸菌数の平均値を単に「大腸菌数」と表示する。図2から分かるように、コーン油を投与したoil群では、水を投与したcontrol群と比較して大腸菌数が約35倍に増加した(p < 0.01)。それに対して、コーン油とプロピルガレートを同時投与したPG群では、oil群と比較して大腸菌数が少なかった。この結果から、プロピルガレート投与が、コーン油投与による大腸菌数の増加を抑制することが明らかとなった。 前述の有機酸濃度の分析はHPLCを用いて行った。盲腸内糞便を0.7規定の水酸化ナトリウム溶液に10%(w/v)となるように懸濁し、遠心後の上清を回収した。孔径0.22μmのPVDF膜を通して浮遊物を除去し、サンプル中の有機酸濃度を、HPLC(LC−20AD;株式会社島津製作所製)を用いて分析した。カラムはShim-pack SPR-102H column (7.8 mm i.d. × 250 mm long; 株式会社島津製作所製)を使用した。各群における有機酸濃度の平均±SD(標準偏差)を図3に示す。以下、各群の有機酸濃度の平均値を単に「有機酸濃度」と表示する。図3から分かるように、コーン油を投与したoil群では、水を投与したcontrol群と比較して有機酸濃度が低下傾向を示したのに対して、コーン油とプロピルガレートを同時投与したPG投与群ではその低下は緩やかであった。この結果から、プロピルガレート投与が、コーン油投与による有機酸濃度の低下を抑制する傾向が示された。 また、腸内の有機酸の中で特に有用かつ重要であると考えられている酢酸及び酪酸の濃度について、各群の平均±SD(標準偏差)を図4に示す。以下、各群の酢酸濃度の平均値、酪酸濃度の平均値をそれぞれ、単に「酢酸濃度」、「酪酸濃度」と表示する。図4から分かるように、コーン油を投与したoil群では、水を投与したcontrol群と比較して酢酸濃度(図4左)及び酪酸濃度(図4右)はいずれも有意に減少した。それに対して、コーン油とプロピルガレートを同時投与したPG群では、oil群と比較して酢酸濃度及び酪酸濃度のいずれも高かった。この結果から、プロピルガレート投与が、コーン油投与による酢酸濃度及び酪酸濃度の低下を抑制する傾向が示された。 以上の実施例1及び実施例2の実験の結果を総合すると、糞便のORP値の上昇抑制作用を有するプロピルガレートが、腸内細菌叢等の腸内環境の悪化を抑制あるいは改善する作用を有することが示された。また、これらの結果から、ある被験物質が、糞便のORP値の上昇抑制作用を有するかどうかを調べることによって、その被験物質が腸内環境改善候補物質であるかどうかを簡便かつ迅速に精度良く評価できることが示された。 なお、以上の実施例では、腸内の酸化還元電位を上昇させ得る物質としてコーン油を使用したが、腸炎惹起物質デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)や、酸化剤である臭素酸カリウムを投与しても、腸内の酸化還元電位が実際に上昇することを確認した。 本発明は、より簡便かつ迅速に実施することができ、加えて、より精度の良い、腸内環境改善候補物質の評価方法を提供する。本発明によれば、腸内環境改善候補物質をより簡便、迅速かつ精度良く評価し得るので、一定期間内により多くの被験物質をより低コストで効率良く評価することができる。少なくとも以下の工程A〜Eを有することを特徴とする腸内環境改善候補物質の評価方法:(A)腸内の酸化還元電位を上昇させる処置を非ヒト動物に施す工程A:(B)非ヒト動物に被験物質を投与する工程B:(C)前記工程A及び工程Bより後に、前記非ヒト動物の腸内又は体外の糞便の酸化還元電位を測定する工程C:(D)前記工程Cで測定した酸化還元電位の値を、基準値と比較する工程D:(E)前記工程Dにおける比較の結果、前記被験物質が工程Aにおける処置による酸化還元電位の上昇を抑制している場合に、前記被験物質を腸内環境改善候補物質と評価する工程E。 【課題】簡便かつ迅速に実施することができ、精度の良い、腸内環境改善候補物質の評価方法を提供する。【解決手段】少なくとも以下の工程A〜Eを有する。腸内の酸化還元電位を上昇させる処置を非ヒト動物に施す工程A、非ヒト動物に被験物質を投与する工程B、工程A及び工程Bより後に、非ヒト動物の腸内又は体外の糞便の酸化還元電位を測定する工程C、工程Cで測定した酸化還元電位の値を基準値と比較する工程D、工程Dにおける比較の結果、被験物質が工程Aにおける処置による酸化還元電位の上昇を抑制している場合に、被験物質を腸内環境改善候補物質と評価する工程E。【選択図】なし配列表


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