タイトル: | 公開特許公報(A)_乾燥酵母の製造方法 |
出願番号: | 2012274113 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | C12N 1/16 |
岡崎 直人 稲橋 正明 野呂 二三 中原 克己 蓮田 寛和 武藤 貴史 石川 雄章 JP 2014117213 公開特許公報(A) 20140630 2012274113 20121214 乾燥酵母の製造方法 公益財団法人 日本醸造協会 501084042 松本 久紀 100097825 松本 紀一郎 100137925 水野 基樹 100158698 岡崎 直人 稲橋 正明 野呂 二三 中原 克己 蓮田 寛和 武藤 貴史 石川 雄章 C12N 1/16 20060101AFI20140603BHJP JPC12N1/16 G 7 OL 6 4B065 4B065AA80X 4B065AC20 4B065BC03 4B065BD01 4B065BD05 4B065BD10 4B065BD15 4B065BD18 4B065CA41 4B065CA46 4B065CA60 本発明は、乾燥酵母の製造方法等に関する。詳細には、酵母生菌を生きたまま、また、その活性を保持したまま乾燥した、生存率及び活性の高い乾燥酵母を簡便且つ効率的に製造する方法等に関する。 清酒、ビール、焼酎、ワインなどの酒類、パン類、味噌・醤油などをはじめとして、酵母を用いて醸造・発酵により製造される食品は数多くある。これらの食品の製造においては、効率等の面から一定量の酵母生菌を外部から供給する場合が多くあるが、用いる酵母をその都度培養して調製することは非常に煩雑である。このような煩雑さの解消や製造時間のより一層の短縮目的のため、酵母生菌を生きたまま乾燥した乾燥酵母が多く用いられている。 しかし、乾燥酵母生菌の製造において、酵母を生きたまま、また、その有用活性を保ったまま水分8〜15%程度まで乾燥させることは困難を伴う。つまり、熱風などの高温に酵母をさらすとその多くは死滅あるいは衰弱してしまうため、例えば、30〜35℃程度の低温通気により長時間かけて乾燥させる方法(通気乾燥)などが採用されている。けれども、このような通気乾燥では処理時間が長時間になってしまうため、結局、生存率や活性を乾燥前の状態と同じように保つことはできず、生存率及び活性が高く保たれた乾燥酵母の製造は極めて難しい。 このような課題を解決するための乾燥酵母生菌の製造方法はいくつか開示されているが、最終的な乾燥方法はいずれも通気乾燥又はドラム乾燥であり、多くはトレハロースなどの糖類に代表される安定化剤等の副材を必要とする(例えば特許文献1)。また、培養した微生物をマイクロ波乾燥して乾燥微生物生菌を取得する方法も開示されてはいるが(特許文献2)、マイクロ波乾燥処理前に培養した微生物を吸湿性・耐熱性の多孔性材料で包む必要があり、煩雑である。 このような背景技術の中で、低温短時間で処理でき、簡便且つ効率的に生存率及び活性の高い乾燥酵母を取得できる方法等の開発が、乾燥酵母を使用する各種製造業界(醸造業界、発酵食品製造業界など)等から引き続き望まれていた。国際公開第2002/062966号国際公開第2004/048866号 本発明は、酵母生菌を生きたまま、また、その活性を保持したまま乾燥する方法、つまり、酵母生菌の生存率及び活性に負の影響を与えにくい条件で乾燥し、生存率及び活性の高い乾燥酵母を簡便且つ効率的に製造する方法等を提供することを目的とする。 上記目的を達成するため、本発明者らは鋭意研究を行い、酵母純粋培養液を遠心分離処理して菌体を分離し、これを圧搾処理し、圧搾酵母を押出造粒により顆粒化し、これにマイクロ波を照射して乾燥する酵母の温度を20〜40℃に保ちながら60〜180分間減圧乾燥することで、生存率及び活性の極めて高い(乾燥前の80%以上の生存率及び乾燥前と同等の活性である)乾燥酵母を短時間で簡便に取得することが可能となることを見出し、本発明に至った。 すなわち、本発明の実施形態は次のとおりである。(1)酵母純粋培養液を遠心分離処理して菌体を分離し、これを圧搾処理し、圧搾酵母を押出造粒により顆粒化し、これにマイクロ波を照射して乾燥する酵母の温度を20〜40℃に保ちながら60〜180分間(好ましくは100〜150分間)減圧乾燥すること、を特徴とする乾燥酵母の製造方法。(2)酵母培養を、培養温度30〜35℃、通気量1〜2VVM(volume/volume/min)の条件で行った酵母純粋培養液を用いること、を特徴とする(1)に記載の方法。(3)酵母培養の培養期間の後半にヒートショック処理を行った酵母純粋培養液を用いること、を特徴とする(1)又は(2)に記載の方法。(4)減圧乾燥が、顆粒化した圧搾酵母をチャンバー内に入れ、圧力3.0kPa以下とし、気流導入量2.0〜4.0L/minの条件で減圧状態を保ちながら気体を供給し、マイクロ波照射をオンオフ処理しながら乾燥を行うこと、を特徴とする(1)〜(3)のいずれか1つに記載の方法。(5)酵母が、サッカロマイセス(Saccharomyces)属に属するものであること、を特徴とする(1)〜(4)のいずれか1つに記載の方法。(6)酵母が、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)に属するものであること、を特徴とする(5)に記載の方法。(7)(1)〜(6)のいずれか1つに記載の方法により製造された、乾燥前の80%以上の生存率及び乾燥前と同等の活性を有する乾燥酵母。 本発明によれば、所定条件での乾燥処理により、短時間で、効率的に、乾燥前の80%以上という高い生存率を保持し、且つ、醸造・発酵食品製造に必要な活性(アルコール発酵能など)を充分に有する(同一菌数での比較で乾燥前の90〜100%の活性を保持する)乾燥酵母を簡便に取得できる。また、本発明によれば、その生存率や活性を保持するために、乾燥前の酵母菌体に糖類などの副材を添加したり、乾燥前の酵母菌体を包装体により包装したりして乾燥処理する必要がないことも大きな特徴である。 本発明においては、まず、乾燥酵母製造のスタート原料となる酵母純粋培養液を調製する。その培養条件は、酵母培養の一般的培地(例えばYPD培地など)を用い、培養温度30〜35℃(例えば30〜33℃)、通気量1〜2VVM(例えば1.5VVM)の条件で行う方法が示される。さらに、酵母の乾燥耐性を高める処理、例えば、培養期間の後半にヒートショック(35〜42℃程度での1〜10時間程度のインキュベートなど)を与えるヒートショック処理、細胞齢(cell age)を揃える同調培養を行う処理、培養期間の後半に供給糖源を増加させる処理等の1以上を行うことが好ましく、このうちヒートショック処理が最も好適である。酵母の培養条件が悪い場合、その後のマイクロ波乾燥処理後の生存率及び活性保持率が悪くなるため好ましくなく、前記条件の範囲内で培養を行って酵母純粋培養液を調製することが望ましい。 次に、得られた酵母純粋培養液から遠心分離処理により酵母菌体を回収する。遠心分離処理の条件は、酵母の種類や培養液の状態(濁度)などにより適宜設計すればよく、特段限定されるものではないが、例えば直径200mm程度のローターを用いる場合、回転数3000〜7000rpmで10〜20分間連続遠心分離する条件等が好適な例として示される。 さらに、遠心分離処理により回収した酵母菌体は、必要があれば滅菌水等による菌体洗浄を行い、これを圧搾処理により酵母ケーキ(圧搾酵母)とする。圧搾処理は定法により行うことができ、特段限定されるものではないが、サランネット等の酵母が付着しない素材に挟んで圧搾を行う方法が好ましい。これにより、酵母ケーキの水分量は60〜70%程度となる。 次いで、この酵母ケーキを押出造粒により顆粒化する。押出造粒も定法により行うことができ、特段限定されるものではない。酵母ケーキの状態等に応じて、適宜スクリーンサイズや処理スピードを設定して行えば良いが、好適例としては、処理スピード4〜6kg/hr、スクリーンサイズφ1〜5mmの範囲が示される。なお、この顆粒化の際、できるだけ酵母に熱がかからない状態となる設備、条件が好ましい。 このようにして得られた圧搾酵母顆粒を、マイクロ波(周波数が300MHzから300GHz(波長が1mから1mm)の電波)照射処理により水分8〜15%程度まで乾燥する。マイクロ波照射処理条件は、乾燥する酵母の温度を20〜40℃(好ましくは30〜35℃)に保ちながら60〜180分間(好ましくは100〜150分間)減圧乾燥することが必須である。また、減圧条件として圧力3.0kPa以下とし、気流導入量2.0〜4.0L/min(好ましくは2.5〜3.5L/min)の条件で減圧状態を保ちながら気体を供給して酵母の周囲に気流を発生させ、マイクロ波照射を予め決められた周期、あるいは、酵母の温度をセンサーで読み取り連動で反応するオンオフ処理(マイクロ波の出力(ワット数)を上げたり下げたりする処理)をすることで酵母の温度を保ち乾燥を行うことが好ましい。 マイクロ波乾燥処理により得られた乾燥酵母は、必要であれば篩別処理等により粒度を揃え、製品となる。なお、得られた乾燥酵母の生存率は乾燥前の酵母のそれの80%以上(例えば、80〜90%程度、あるいは85%前後)を保ち、且つ、その活性も充分に保持され(例えば、同一菌数での比較で乾燥前の酵母のそれの90〜100%程度)、従来の方法のように乾燥等によってその生存率や活性が乾燥前より大きく落ち込むことがないのが本発明の特徴である。 本発明の乾燥処理の対象となる酵母としては、好ましくは醸造食品、発酵食品に多く用いられているサッカロマイセス(Saccharomyces)属に属する酵母、特に、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)に属する酵母が好適である。例えば、清酒酵母、焼酎酵母、パン酵母などとして用いられているサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)に属する株などが例示される。けれども、味噌・醤油などの製造に関わる耐塩性酵母等(Zygosaccharomyces属、Candida属など)のような食品製造に用いることができる酵母は全て対象となり、除外されるものではない。 以下、本発明の実施例について述べるが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内においてこれらの様々な変形が可能である。 清酒酵母サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)きょうかい701号株について、酵母培養の一般的培地300Lを用いて、培養温度30℃、通気量1.5VVMの条件で48時間培養を行い、この培養期間の後半において、培養温度を35℃に上昇させて5時間培養を続けるヒートショック処理を行って酵母純粋培養液を得た。 この酵母純粋培養液100Lを、直径200mmのローターを用いた回転数5000rpm15分間の連続遠心分離処理によって菌体を回収し、滅菌水にて洗浄した。この回収・洗浄した菌体を酵母の付着しない素材を使用した圧搾機で圧搾し、水分68.0%の酵母ケーキ(圧搾酵母)1.5kgを作製した。更に、そのケーキを押出造粒機(処理スピード5kg/hr、スクリーンサイズφ2mm)により顆粒化した。この酵母顆粒を減圧ポンプが接続されたチャンバー内に入れ、チャンバー内の圧力を3.0kPa以下とし、気流導入量3.0L/minの条件でチャンバー内の減圧状態を保ちながら気体を供給し、マイクロ波照射を周期的にオンオフ処理して酵母の温度を30〜35℃に保ちながら120分間乾燥し、その後篩別処理をした。 この様にして、非常に簡便且つ短時間で調製できた乾燥清酒酵母生菌約500gは、含水率12.9%であり、その生菌率は84.4%であった。また、この乾燥清酒酵母生菌は、清酒醸造に必要なアルコール発酵能、低温増殖性、高アルコール耐性などの全ての活性を乾燥前のものと同等程度保持していることも確認された。 本発明を要約すれば、以下の通りである。 本発明は、酵母生菌を生きたまま、また、その活性を保持したまま乾燥する方法、つまり、酵母生菌の生存率及び活性に負の影響を与えにくい条件で乾燥し、生存率及び活性の高い乾燥酵母を簡便且つ効率的に製造する方法等を提供することを目的とする。 そして、酵母純粋培養液を遠心分離処理して菌体を分離し、これを圧搾処理し、圧搾酵母を押出造粒により顆粒化し、これにマイクロ波を照射して乾燥する酵母の温度を20〜40℃に保ちながら60〜180分間減圧乾燥することで、高い生存率及び活性を保持した乾燥酵母を短時間で簡便に取得することができ、上記課題を解決できる。 酵母純粋培養液を遠心分離処理して菌体を分離し、これを圧搾処理し、圧搾酵母を押出造粒により顆粒化し、これにマイクロ波を照射して乾燥する酵母の温度を20〜40℃に保ちながら60〜180分間減圧乾燥すること、を特徴とする乾燥酵母の製造方法。 酵母培養を、培養温度30〜35℃、通気量1〜2VVMの条件で行った酵母純粋培養液を用いること、を特徴とする請求項1に記載の方法。 酵母培養の培養期間の後半にヒートショック処理を行った酵母純粋培養液を用いること、を特徴とする請求項1又は2に記載の方法。 減圧乾燥が、顆粒化した圧搾酵母をチャンバー内に入れ、圧力3.0kPa以下とし、気流導入量2.0〜4.0L/minの条件で減圧状態を保ちながら気体を供給し、マイクロ波照射をオンオフ処理しながら乾燥を行うこと、を特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。 酵母が、サッカロマイセス(Saccharomyces)属に属するものであること、を特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。 酵母が、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)に属するものであること、を特徴とする請求項5に記載の方法。 請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法により製造された、乾燥前の80%以上の生存率及び乾燥前と同等の活性を有する乾燥酵母。 【課題】酵母生菌を生きたまま、また、その活性を保持したまま乾燥する方法、つまり、酵母生菌の生存率及び活性に負の影響を与えにくい条件で乾燥し、生存率及び活性の高い乾燥酵母を簡便且つ効率的に製造する方法等を提供する。【解決手段】酵母純粋培養液を遠心分離処理して菌体を分離し、これを圧搾処理し、圧搾酵母を押出造粒により顆粒化し、これにマイクロ波を照射して乾燥する酵母の温度を20〜40℃に保ちながら60〜180分間減圧乾燥することで、高い生存率及び活性を保持した乾燥酵母を短時間で簡便に取得することができる。【選択図】なし