生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_真正担子菌のラッカーゼ産生能を増加させる方法
出願番号:2012265662
年次:2014
IPC分類:C12N 1/15,C12N 1/14,C12N 9/02,C12N 15/09


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入江 俊一 矢尾 祐樹 阪本 鷹行 鈴木 一実 JP 2014108103 公開特許公報(A) 20140612 2012265662 20121204 真正担子菌のラッカーゼ産生能を増加させる方法 公立大学法人 滋賀県立大学 506158197 特許業務法人 ユニアス国際特許事務所 110000729 入江 俊一 矢尾 祐樹 阪本 鷹行 鈴木 一実 C12N 1/15 20060101AFI20140516BHJP C12N 1/14 20060101ALI20140516BHJP C12N 9/02 20060101ALI20140516BHJP C12N 15/09 20060101ALN20140516BHJP JPC12N1/15C12N1/14 EC12N9/02C12N15/00 A 9 OL 11 4B024 4B050 4B065 4B024AA01 4B024AA03 4B024AA05 4B024BA08 4B024CA20 4B024DA11 4B024EA04 4B024FA20 4B024GA11 4B024GA19 4B024GA25 4B050CC03 4B050CC10 4B050DD05 4B050LL01 4B050LL02 4B050LL05 4B050LL10 4B065AA71X 4B065AA71Y 4B065AB01 4B065AC14 4B065BA01 4B065BA16 4B065CA44 4B065CA50 4B065CA57 4B065CA60 本発明は、真正担子菌のラッカーゼ産生能を増加させる方法に関する。さらには、本発明は、そのようなラッカーゼ産生能が高まった真正担子菌、そのような真正担子菌を用いたラッカーゼの製造方法に関する。 ラッカーゼは、フェノール類を酸化する能力を持つ酸化酵素である。ウルシなどの植物、細菌類、担子菌、および動物などにみられる。 特に、ヒラタケやシイタケなどの真正担子菌類が産生するラッカーゼは、強力な酸化能力を持ち、リグニンをはじめとするポリフェノール類を分解することができることが知られており、広い基質特異性と相俟って、高分子を合成する際の重合化促進剤、パルプ漂白剤、人工色素の脱色反応剤、口臭予防剤、ジュース混濁防止剤、および染髪料、としてなど、様々な用途が考えられる。 その有用性に鑑み、真正担子菌由来のラッカーゼ遺伝子の上流に、別の真正担子菌由来のプロモーター領域やターミネーター領域を結合させて、発現ベクターを構築し、大腸菌、酵母、または真正担子菌を宿主として用いることによりラッカーゼ高生産株を作成して、ラッカーゼを得る試みもされている(例えば特許文献1)。特開2000−342275号公報 しかしながら、真正担子菌類由来ラッカーゼが分泌タンパク質の場合、宿主の選択によって、タンパク質の分泌が困難となることもあり、普遍的な手法として機能するとは限らない。 さらに、近年、組換え体による生産物を特に食品に加えることに抵抗がある消費者の為に、組換え体材料を含まないことが好まれる傾向にある。 本発明の目的は、真正担子菌由来のラッカーゼ高生産菌株を得る方法を提供することにある。 本発明の目的はまた、このようにラッカーゼ産生能が高まった真正担子菌株を提供することにある。そこで、本発明者らは、鋭意検討を行い、真正担子菌のラッカーゼ発現調節系を解析し、アデニル酸シクラーゼを活性化する作用を持つ三量体Gタンパク質αサブユニットに変異を加えることで、高ラッカーゼ発現を達成することができることを見出し、本発明に至った。 本発明は、真正担子菌においてラッカーゼの産生能を増加させる方法であって、該担子菌のアデニル酸シクラーゼ相互作用性の三量体Gタンパク質αサブユニットのGTP加水分解機能を破壊することを含む、方法に関する。 上記真正担子菌は、白色腐朽菌であることが好ましい。 上記アデニル酸シクラーゼ相互作用性の三量体Gタンパク質のαサブユニットのGTP加水分解機能を破壊することは、タンパク質ID65367および130194のうちの少なくとも1種のタンパク質における少なくとも1個のグルタミンを他のアミノ酸に置換することでなされ得る。 本発明はまた、上記いずれかの方法によってラッカーゼ産生能が高められた真正担子菌に関する。 本発明はまた、三量体Gタンパク質のαサブユニットのGTP加水分解機能が破壊されたことにより、ラッカーゼ産生能が、野生型よりも少なくとも2倍以上に増加した真正担子菌に関する。 上記真正担子菌は、配列表の配列番号1または2に記載の配列で表わされるアミノ酸配列をコードする塩基配列を含み得る。 上記真正担子菌は、配列表の配列番号1または2に記載の配列で表わされるアミノ酸配列をコードする塩基配列を含むベクターで形質転換された真正担子菌であり得る。 上記真正担子菌は、白色腐朽菌であり得る。 本発明はまた、上記いずれかの真正担子菌を培地に培養し、産生されるラッカーゼを回収する工程を含む、ラッカーゼの製造方法に関する。 本発明によれば、ラッカーゼ高生産株を、簡易に再現性よく得ることができる。さらに、本発明を用いて、組換え手法によらずにラッカーゼ産生を高めることも可能となる。そして、本発明を用いることで、組換え体を含まない食品等の提供も可能となる。ヒラタケにおけるアデニル酸シクラーゼを活性化する作用を持つ三量体Gタンパク質αサブユニット遺伝子配列である。ヒラタケにおけるアデニル酸シクラーゼを活性化する作用を持つ三量体Gタンパク質αサブユニット遺伝子配列である。変異導入した三量体Gタンパク質αサブユニットを含むベクターを表わす図である。本発明の変異導入真正担子菌のラッカーゼ活性の値を示すグラフである。 本明細書でいうラッカーゼは、ポリフェノールオキシダーゼ、ウルシオールオキシダーゼとも称されるフェノールオキシダーゼの一種であり、基質酸化活性を有し、o-, p-ジフェノール、p-フェニレンジアミン、アスコルビン酸などを酸化する反応を触媒するマルチ銅酵素である。ラッカーゼの触媒能力は、種々の化学反応に応用可能である。例えば、毒性の強いフェノール性化合物や芳香族アミンを含む廃液の処理、パルプ製造処理等におけるリグリンの除去、電極触媒、人口漆の製造、有機化合物の合成、紅茶の褐変処理、化粧品用メラニン製造、食品のゲル化剤、臨床検査試薬、漂白剤としての利用等である。さらには、電極を電子供与体とすることも知られており、適当な炭素電極との組合せにより、バイオ電池やバイオセンサー用の電極触媒としての産業利用も考えられる。 本発明のラッカーゼは、真正担子菌由来であることが好ましい。さらには、本発明のラッカーゼは、白色腐朽菌由来であることがより好ましい。ここで、白色腐朽菌とは、木材中のリグニンを二酸化炭素と水にまで分解する能力を有するものを指す。白色腐朽菌は、セルロースとリグニンを同時に分解する非選択的白色腐朽菌と、セルロースはあまり分解せずリグニンを優先的に分解する選択的白色腐朽菌に分けられる。本発明で、白色腐朽菌というときは、非選択的白色腐朽菌も選択的白色腐朽菌もどちらも含む。 白色腐朽菌としては、シイタケ、ナメコ、アラゲカワラタケ、エノキタケ、ヒラタケ、マイタケ、タモギタケ、カワラタケ、ヒイロタケ、ベッコウタケ、スギヒラタケ、スエヒロタケ、シュタケ、ホシゲタケ、ヤケイロタケ、Phanerochaete chrysosporium、Ceriporiopsis subvermisporaなどが含まれるが、限定はされない。 本発明者らは、初めて、GPCR(Gタンパク質共役受容体)からのシグナルを中継する三量体Gタンパク質のうち、αサブユニットの遺伝子の特定箇所に変異を起こさせることで、そのような遺伝子を有する細胞において、ラッカーゼの産生が飛躍的に高まることを発見した。本発明におけるGタンパク質のαサブユニットの遺伝子とは、特には、アデニル酸シクラーゼを活性化する作用を持つGタンパク質のαサブユニットの遺伝子であることが好ましい。すなわち、アデニル酸シクラーゼ相互作用性の三量体Gタンパク質αサブユニット遺伝子である。限定はされないが、特に、ヒラタケを例に挙げた場合には、米国DOE Joint Genome InstituteにおけるヒラタケPC9株全ゲノム解析(バージョン1.0)におけるタンパク質のID番号で表すと、65367、および130194の2種の配列をコードする遺伝子が例示される。さらには、他の白色腐朽菌において、これら2種の配列に対応する、アデニル酸シクラーゼ相互作用性の三量体Gタンパク質αサブユニットはそれぞれ知られており、同様の変異導入を応用することが可能である。これらの対応するタンパク質は、識別番号65367、および130194のタンパク質とそれぞれBLOSUM62スコア表に基づく動的計画法によるアミノ酸配列比較において35%以上、好ましくは、50%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは85%以上の相同性を有するタンパク質である。 三量体Gタンパク質のαサブユニットには、通常刺激を受けていない状態では、GDPが結合し、不活性状態にあるが、活性化されることによって、GDPを遊離し、代わりにGTPを結合させる。本発明において、Gタンパク質のαサブユニットに加えられる変異とは、特には、Gタンパク質のαサブユニット中のGTP加水分解に重要なアミノ酸を変更して、GTP加水分解能を破壊することをいう。このような目的が達成できれば、特に破壊する手段としてのアミノ酸の変更位置は限定はされない。αサブユニット中のGTP加水分解に重要なアミノ酸の変更として、限定はされないが、例えば、そのような機能を有する領域に含まれるグルタミンを他のアミノ酸に変更することが含まれる。グルタミンをアルギニンに変更することができるが、これには限定はされない。すなわち、タンパク質のID番号65367を例に挙げると、218番目のグルタミンの他のアミノ酸への変更することが例示されるがこれに限定はされない。例えば218番目のグルタミンをアルギニンへ1アミノ酸変更することであり得る。最低限度として、この1つのアミノ酸が変更している変異であることが好ましく(図1a)、他の箇所のアミノ酸については変更していてもしていなくてもよい。変更した結果として、GTP加水分解機能が破壊されていることが重要である。また、他のアミノ酸は保存的変更を行うことも可能である。アミノ酸の保存的変更は、当業者に公知である。同様に、タンパク質のID番号130194を例に挙げると、207番目のグルタミンの変更が例示される(図1b)。 Gタンパク質のαサブユニットの遺伝子に、このような変異を起こさせる方法としては、部位特異的変異導入方法を用いた組換え遺伝子の作成と宿主細胞への導入が挙げられる。あるいは、UV照射、放射線照射、および各種の変異原性剤を用いて、遺伝子の様々な箇所にランダムに変異を起こさせた後に、最適な手法で、目的の箇所が変異した遺伝子を取得することも可能である。さらには、相同組換えにより、目的の部位のアミノ酸置換を行うこともできる。 変異原性剤としては、限定はされないが、ニトロアミン、ニトロソグアニジンなどのニトロソ化合物;BrdUなどの塩基類似化合物;エチル化剤、N-エチル-N-ニトロソウレア(ENU)、メタンスルホン酸メチル (EMS)などのアルキル化剤;ベンゾピレン、クリセンなどの多環芳香族炭化水素;ベンゾビレン、臭化エチジウムなどのDNAインターカレーター;シスプラチン、マイトマイシンCなどのDNA架橋剤;活性酸素;放射線;および紫外線などの公知の変異原性剤が含まれる。 このような変異原性剤を、公知の方法により、対象の例えば真正担子菌株に暴露することができる。 ランダムな変異体群から目的の箇所が変異した遺伝子を選抜する方法としては、限定はされないが、TILLING(Targeting Induced Local Lesions In Genomesゲノム中の標的化誘発局所的損傷McCallum et al., 2000, Nat Biotechnol 18:455-457)法やHRM(高感度融解温度曲線解析(High Resolution Melting analysis))法などが挙げられる。 このようにして得られたラッカーゼ高生産株を用いて、ラッカーゼを大量に得ることができる。組換えによらないラッカーゼ高生産株から得られるラッカーゼは、特に食品等の応用に好都合に用いられる。 本明細書で、「ラッカーゼ高生産株」という時には、野生型と比較して、同条件、同量の培養上清液で比較した場合に、酵素活性が少なくとも2倍、好ましくは3倍以上、より好ましくは6倍以上増加している株を指す。活性は、培養開始後6日から12日の間のいずれかに行い、例えば、6日後に行う。<Gタンパク質αサブユニットの変異体の入手> アデニル酸シクラーゼ相互作用性の三量体Gタンパク質αサブユニット遺伝子に変異を加えることでGTP(グアノシン三リン酸)分解能力を失わせることができる。例えば、ヒラタケPC9株においては図1aから図1bに示すアデニル酸シクラーゼ相互作用性の三量体Gタンパク質αサブユニット遺伝子(米国DOE Joint Genome Instituteにおける全ゲノム解析において付けられた識別番号では、タンパク質ID 65367、および130194)を対象とする。変異導入部位としては、例えば、図1aから図1bにおいて四角で囲まれた部分、グルタミン(Q)をコードするコドン(CAG)に置換を加えて、他のアミノ酸をコードするコドンへと変化させる。この置換は、一塩基置換でも、それ以上でもよい。このような変異を導入したアミノ酸配列を配列表の配列番号1〜2に示す。 GTP(グアノシン三リン酸)分解能力を失った、アデニル酸相互作用性の三量体Gタンパク質αサブユニット遺伝子に変異が存在する真正担子菌類は過剰にラッカーゼを生産する。このような変異遺伝子は、プロモーター、およびターミネーターを付加した後に外来遺伝子として真正担子菌類の細胞内に導入しても良いし、UV照射、放射線照射、変異原性剤などによる突然変異により内在性遺伝子に当該の変異を生じさせても良い。または、部位特異的変異導入により、内在性遺伝子に当該の変異を生じさせても良い。<組換えによらないラッカーゼ高生産株の入手>野生の真正担子菌に各種処理を施して変異を誘導し、誘導した変異体の中から所望の性質を有する真正担子菌を選択することで、組換えによらないラッカーゼ高生産株を入手することが可能である。具体的には、UV照射、放射線照射、および各種の変異原性剤を用いて、野生の真正担子菌の遺伝子の様々な箇所にランダムに突然変異を起こさせる。その後に、GTP(グアノシン三リン酸)分解能力を失った変異三量体Gタンパク質αサブユニット遺伝子が存在する、変異導入株を、TILLING法やHRM法などにより、選抜する。あるいは、Zing Finger nuclease、TAL effector nucleaseなどを用いた部位を特定した相同組換えにより、目的の突然変異と同様の変異を導入し、ラッカーゼ高生産株を入手することができる。直接的に変異した配列を確認する場合には、Sangerらの方法(Proc. Natl.Acad. Sci. USA, 74, 5463 (1977))によって行うことができる。このようにして得られるラッカーゼ高生産株を最適な培地で培養し、細胞外に分泌されるラッカーゼを常法により回収することができる。 真正担子菌が生産するラッカーゼの回収は、培地の上清などを回収することで効率的に行うことができる為に非常に好都合である。 また、本発明で開発された方法によりラッカーゼ高生産株を簡易に育種することができるので、自然界から単離されたラッカーゼ高生産菌に本発明を適用して更にラッカーゼ生産能能力を向上させることも可能である。また、銅イオンやフェルラ酸などのラッカーゼ遺伝子発現誘導剤を加えた培養条件など、従来の真正担子菌の培養方法による酵素増産と組み合わせることができる。さらに、シイタケ、ナメコ、エノキタケ、ヒラタケ、マイタケ、タモギタケなど、食用の栽培きのこには白色腐朽菌が多く含まれているが、これらのきのこに本発明を適用することで、きのこ栽培時にラッカーゼも高生産することが可能となる。 あるいは、得られるラッカーゼ高生産株を、直接リグニンなどと共に培養し、リグニンの分解を行うこともできる。以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。しかしながら、本実施例は、本発明の具体例を示すのみで、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。<Gタンパク質αサブユニットの変異体の入手> タンパク質ID65367由来の変異遺伝子を得るため、以下の操作を行った。まず、ヒラタケPC9株のゲノムを鋳型として、PCRによるオープンリーディングフレームのクローン化を行った。プライマーとしてはPI_65367_F_Gateway(配列表の配列番号3:5'-CACC ATG GGC GGA TGT TTG TCG ACG ACT GGA TA-3')およびPI_65367_R_Gateway(配列表の配列番号4:5'-TTA GCC ATC GTG GAG CAG GCG AGA CAT GTG GT-3')を用いた。得られたPCR産物をpENTER D TOPO(ライフテクノロジーズジャパン株式会社)にクローン化した。pENTER D TOPOのattL1とattL2の間にクローン化された断片はゲートウェイシステム(ライフテクノロジーズジャパン株式会社)を利用することで任意のディスティネーションベクター上のattR1とattR2で挟まれる領域と置き換えることが出来る。ディスティネーションベクターとしてpIp_DEST_GFPを用い、オープンリーディングフレーム部分をsdi1プロモーターの下流に挿入した。得られたプラスミドDNAを鋳型として用いて、変異導入用プライマー378 PI_65367_F(配列表の配列番号5:5'-GGG CgG AAG AGC GAG CGG AGG AAA TGG-3')および379 PI_65367_R(配列表の配列番号6:5'-CTC GCT CTT CcG CCC GCC CAC GTC TAC CAT -3' )とPrimSTAR Mutagenesis Basal Kit(タカラバイオ)を用いた変異導入を行った。このDNAをpTM1と共に用いてヒラタケPC9株を共形質転換することにより、タンパク質ID117454由来の変異遺伝子を構成的に過剰発現する変異株を得た。すなわち、得られた株は、配列表の配列番号1のアミノ酸をコードする遺伝子(配列表の配列番号11)を含む。 タンパク質ID130194由来の変異遺伝子を得るために、クローニング用プライマーとしてPI_130194_F_gateway(配列表の配列番号7:5'- CACC ATG GGC GGT TGC ATG TCG GCA CC AGG TGT T-3')およびPI_130194_R_Gateway(配列表の配列番号8:5'-TTA GTC AGG ATC AAC TTT GAG AGA GAC GAA ATG C-3')を、変異導入用プライマーとしては、378 PI_65367_F(配列表の配列番号9:5'-GGG CgG AAG AGC GAG CGG AGG AAA TGG-3')および379 PI_65367_R(配列表の配列番号10:5'-CTC GCT CTT CcG CCC GCC CAC GTC TAC CAT -3' )を用いて、同様の操作を行った。得られた株は、配列表の配列番号2のアミノ酸をコードする遺伝子(配列表の配列番号12)を含む。<Gタンパク質αサブユニットの変異体とラッカーゼ高生産株の検証> 変異タンパク質ID65367遺伝子を導入した変異株、および変異タンパク質ID130194遺伝子を導入した変異株をGP培地(1リッターあたりブドウ糖20 g、ポリペプトン5 g、酵母エキス2 g、リン酸2水素カリウム1 g、硫酸マグネシウム7水和物0.5 g)で培養し、培養ろ液から得られた酵素活性を図3に示す。変異株は最大で野生型の9倍以上の酵素活性を示した(図3)。 変異株は、タンパク質ID65367における当該アミノ酸、つまり218番目のアミノ酸であるグルタミンのコドンCAGをアルギニンのコドンCGGに置換し、構成的プロモーターであるsdi1プロモーターをつないだ変異遺伝子をヒラタケPC9株細胞へ導入したものである。または、変異株は、タンパク質ID130194における当該アミノ酸、つまり207番目のアミノ酸であるグルタミンのコドンCAGをアルギニンのコドンCGGに置換し、構成的プロモーターであるsdi1プロモーターをつないだ変異遺伝子をヒラタケPC9株細胞へ導入したものである(変異体)。 酵素活性の測定は、以下のようにして行った。すなわち、変異体を、300ml容の三角フラスコに入れた20mlのグルコース・ペプトン液体培地(グルコース20g/l、イースト 2g/l、ペプトン5g/l、KH2PO4 1g/l、MgSO4・7H2O 0.5g/l、MnSO4 0.065g/l)に接種し、28℃、暗黒条件で培養した。その後、6、8、10、12日後に得られる菌培養液を遠心分離した。その上清を酵素液とし、酵素活性測定に用いた。 酵素活性は1Mクエン酸ナトリウム緩衝液(pH 3.0)50μl、5mM 2,2'-azino-bis(3-ethilbenzthiazoline-6-sulfonate)(ABTS)50μl、上記得られた上清400μlを加え、反応の結果生じるABTSの酸化物を420nmの吸光度増加を時間を追って記録することにより行った。1分間に1μmolのABTSを酸化できる酵素量を1ユニットとした。上記培養上清中に酵素活性が野生型のヒラタケの場合には培養開始12日目で12ユニット/Lしか認められなかった。変異タンパク質ID65367遺伝子を導入した変異株の場合において培養開始12日目で112ユニット/Lで認められた。すなわち、変異体で野生型の9倍もの活性が見出された。変異タンパク質ID130194遺伝子を導入した変異株の場合においては、培養開始12日目で47ユニット/Lで認められた。すなわち、変異体で野生型の4倍の活性が見出された。 本発明のラッカーゼ産生能を増加させる方法により、真正担子菌、特には白色腐朽菌を利用したラッカーゼ産生が効率的にできるようになる。本発明の方法により、木質をラッカーゼ産生の原料として有効に利用することが可能となる。 真正担子菌においてラッカーゼの産生能を増加させる方法であって、該真正担子菌のアデニル酸シクラーゼ相互作用性の三量体Gタンパク質αサブユニットのGTP加水分解機能を破壊することを含む、方法。 前記真正担子菌が、白色腐朽菌である、請求項1記載の方法。 前記アデニル酸シクラーゼ相互作用性の三量体Gタンパク質αサブユニットのGTP加水分解機能を破壊することが、タンパク質ID65367、または130194のうちの少なくとも1種のタンパク質における少なくとも1個のグルタミンを他のアミノ酸に置換することでなされる、請求項1または2記載の方法。 請求項1から3までのいずれか1項記載の方法によってラッカーゼ産生能が高められた真正担子菌。 三量体Gタンパク質のαサブユニットのGTP加水分解機能が破壊されたことにより、ラッカーゼ産生能が、野生型の少なくとも2倍以上に増加した真正担子菌。 配列表の配列番号1または2に記載の配列で表わされるアミノ酸配列をコードする塩基配列を含む、請求項4または5記載の真正担子菌。 配列表の配列番号1または2に記載の配列で表わされるアミノ酸配列をコードする塩基配列を含むベクターで形質転換された請求項4または5記載の真正担子菌。 前記真正担子菌が、白色腐朽菌である、請求項4から7までのいずれか1項記載の真正担子菌。 請求項4から8までのいずれか1項記載の真正担子菌を培地に培養し、産生されるラッカーゼを回収する工程を含む、ラッカーゼの製造方法。 【課題】真正担子菌において、ラッカーゼの産生能を増加させる方法およびラッカーゼ高生産菌を提供する。【解決手段】真正担子菌において、アデニル酸シクラーゼ相互作用性の三量体Gタンパク質αサブユニットのGTP加水分解機能を破壊する工程を含む方法により、ラッカーゼ産生能を高める。さらにそのようなGTP加水分解機能が破壊されたラッカーゼ高生産株を調製する。【選択図】なし配列表


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