生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_リグニン分解物の製造方法
出願番号:2012258389
年次:2013
IPC分類:C07G 1/00,C08H 7/00,C12P 7/22


特許情報キャッシュ

吉川 隼史 丸野 裕司 JP 2013241391 公開特許公報(A) 20131205 2012258389 20121127 リグニン分解物の製造方法 花王株式会社 000000918 大谷 保 100078732 片岡 誠 100089185 吉川 隼史 丸野 裕司 JP 2011278202 20111220 JP 2012102972 20120427 C07G 1/00 20110101AFI20131108BHJP C08H 7/00 20110101ALI20131108BHJP C12P 7/22 20060101ALN20131108BHJP JPC07G1/00C12P7/22 17 OL 28 4B064 4H055 4B064AC17 4B064AF02 4B064AF03 4B064AF04 4B064BE08 4B064BE11 4B064BE18 4B064CA21 4B064CB07 4B064CC03 4B064CD22 4B064CD24 4B064DA11 4B064DA20 4H055AA01 4H055AA02 4H055AC11 4H055AC13 4H055AC14 4H055AC50 4H055AD22 4H055BA01 4H055CA60 本発明は、低変性で、かつ溶媒溶解性を有する、汎用性の高いリグニン分解物の製造方法に関する。 リグニンは、樹木やイネ科植物等をはじめとする多くの植物に含まれる芳香族高分子であり、植物中にセルロースおよびヘミセルロースとともに含まれる。これら3つの成分は、植物細胞壁中では相互に複雑に結合した形でリグノセルロースとして存在しているため、それらを分離することは容易ではない。またリグニンはセルロースに比べて反応性が高く、加熱により容易に縮合反応を起こし、不活性で溶媒溶解性に乏しい塊状物質に変化してしまう。 リグノセルロース原料から高収率でリグニンを分離する方法として、一般に、製紙会社などで主に使用されているクラフト蒸解法が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、酸化剤として過酸化水素を用いた処理(例えば、特許文献2参照)や高温高圧下で有機溶媒に浸漬する方法(例えば、特許文献3参照)等により、セルロースとリグニンの交絡を解く方法も検討されている。他にも、酵素を用いて多糖類を除去し、酵素糖化残渣を利用する方法(例えば、特許文献4参照)も検討もされている。特開2004−190150号公報特開2009−114181号公報特開昭62−111700号公報特開2011−92151号公報 しかしながら、特許文献1に記載のクラフト蒸解法では、水酸化ナトリウムや亜硫酸ナトリウム混液中での加熱により、リグニンは多大な化学変性を受けてしまう。このため、植物中に存在するリグニンをそのままの形で取り出すことは困難であり、バイオマス活用の観点で、リグニンの具体的な利用対象を見出すことが難しい。 特許文献2に記載の方法でも、多量の過酸化水素を高温化で処理することによるリグニンの過分解と変性が進み、過分解物は糖液との分離が難しく、また変性物はパルプ内に残存するおそれがある。 特許文献3に記載の方法では、リグニンとセルロース及びヘミセルロースとの交絡を十分に解くことは困難である。 特許文献4に記載の方法では、得られるリグニンを含む固形分中にセルロースとヘミセルロースが残存しているため、その固形分が水や有機溶媒に不溶であり、高分子芳香族ポリマーとしての利用やさらなる修飾・機能化が困難である。 そこで、本発明は、低変性で、かつ溶媒溶解性を有する、汎用性の高いリグニン分解物を、高収率で製造することができるリグニン分解物の製造方法を提供することを課題とする。 本発明者は、リグノセルロース原料を酵素糖化し、得られた糖化残渣を特定の条件下で処理することにより、前記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明は、以下[1]〜[2]に関する。[1]下記工程(1)〜(3)を有する、リグニン分解物の製造方法。 工程(1):リグノセルロース原料を酵素により糖化処理して糖化残渣を得る工程 工程(2):工程(1)で得られた糖化残渣を、20℃の水に対する溶解度が90g/L以上の有機溶媒と水とを含む混合溶媒中で加熱処理して、リグニン分解物を含有する加熱処理液を得る工程 工程(3):工程(2)で得られた加熱処理液を固液分離して、不溶分を除去し、リグニン分解物を得る工程[2]前記[1]の方法により得られたリグニン分解物。 本発明の製造方法によれば、リグノセルロース原料から、低変性で溶媒溶解性に富むリグニン分解物を高収率で得ることができる。本発明の製造方法により得られたリグニン分解物は、低変性で溶媒溶解性を有するため、低分子芳香族化合物への変換や使用目的に応じた化学修飾・誘導体化を有利に行うことができる。〔リグニン分解物の製造方法〕 本発明のリグニン分解物の製造方法は、下記工程(1)〜(3)を有する。 工程(1):リグノセルロース原料を酵素により糖化処理して糖化残渣を得る工程 工程(2):工程(1)で得られた糖化残渣を、20℃の水に対する溶解度が90g/L以上の有機溶媒と水とを含む混合溶媒中で加熱処理して、リグニン分解物を含有する加熱処理液を得る工程 工程(3):工程(2)で得られた加熱処理液を固液分離して、不溶分を除去し、リグニン分解物を得る工程 本発明の製造方法により、低変性で、溶媒溶解性を有する、汎用性の高いリグニン分解物が高収率で得られる理由は明らかではないが、以下のように推測される。 すなわち、前記工程(1)においてリグノセルロース原料を酵素糖化することにより、多糖類が分解されて、リグニンと多糖類の絡み合いが緩和されて、リグニンの自由度が大幅に向上した糖化残渣が得られる。次に前記工程(2)においてこの糖化残渣をリグニンと親和性の高い溶媒に浸漬することで、リグニンが膨潤し、溶媒中の水分子がリグニン分子内部まで浸潤する。この状態で加熱すると、リグニンが変性を受けない比較的穏和な条件でリグニン分子が縮合することなく切断され、溶媒溶解性を有し、低変性のリグニン分解物を高収率で得られる。〔工程(1)〕 工程(1)は、リグノセルロース原料を酵素により糖化処理して糖化残渣を得る工程である。(リグノセルロース原料) 工程(1)において使用されるリグノセルロース原料とは、セルロース、ヘミセルロース及びリグニンを含む植物系のバイオマスをいう。 リグノセルロース原料としては、カラマツやヌクスギなどの針葉樹、アブラヤシ、ヒノキなどの広葉樹から得られる木材チップなどの各種木材;木材から製造されるウッドパルプ、綿の種子の周囲の繊維から得られるコットンリンターパルプなどのパルプ類;バガス(サトウキビの搾りかす)、稲わら、とうもろこし茎・葉、パーム空果房(Empty Fruit Bunch、以下「EFB」という)などの植物茎・葉・果房類;籾殻、パーム殻、ココナッツ殻などの植物殻類;新聞紙、ダンボール、雑誌、上質紙などの紙類;ジャイアントケルプ、コンブ、ワカメ、ノリ、マクサ、スピリルナ、ドナリエラ、クロレラ、セネデスムスなどの藻類などが挙げられる。これらのリグノセルロース原料は、1種単独でも、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。 これらのうち、リグニン分解物の収率向上、及び糖化効率の向上の観点、入手容易性及び原料コストの観点から、木材、紙類、植物茎・葉・果房類、植物殻類及び藻類が好ましく、針葉樹チップ、広葉樹チップ、バガス、稲わら、とうもろこし茎・葉、EFB、籾殻、パーム殻、ココナッツ殻、紙類及び藻類がより好ましく、バガス、EFB、アブラヤシの幹から得られる木材チップが更に好ましく、バガスがより更に好ましい。 リグノセルロース原料は、リグニン分解物の収率向上の観点から、リグニン含有量が、原料に対して5質量%以上であることが好ましく、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上である。リグニン含有量は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。(前処理) リグノセルロース原料は、糖化効率の向上、リグニン分解物の収率向上及びリグニンの変性抑制の観点から、酵素で糖化処理する前に、前処理されていることが好ましい。好ましい前処理としては、粉砕処理又は水熱処理が挙げられる。前処理としては、リグニンの変性抑制の観点からは、粉砕処理が好ましく、前処理時間の短縮、及びリグニン分解物の収率向上の観点からは、水熱処理が好ましい。(粉砕処理) リグノセルロース原料の前処理として粉砕処理することにより、リグノセルロース原料を小粒子化し、リグノセルロース原料に含まれるセルロースの結晶構造が破壊されるので、糖化効率が向上する。 粉砕処理を行う場合、リグノセルロース原料中の水分量は、リグノセルロース原料の粉砕効率、及びリグニン分解物の収率向上の観点から、リグノセルロース原料の乾燥質量に対して40質量%以下であることが好ましく、より好ましくは35質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、より更に好ましくは20質量%以下である。なお、リグノセルロース原料中の水分量を0質量%にすることは困難であるため、該水分量はリグノセルロース原料の乾燥質量に対して0.01〜40質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜35質量%、更に好ましくは1〜30質量%、より更に好ましくは1〜20質量%である。 リグノセルロース原料中の水分量は、市販の赤外線水分計などを用いて測定することができ、具体的には実施例に記載の方法により測定することができる。 なお、粉砕処理に用いるリグノセルロース原料中の水分量が40質量%を超える場合には、該リグノセルロース原料を公知の方法で乾燥させ(以下、「乾燥処理」と称する場合がある。)、その水分量がリグノセルロース原料の乾燥質量に対し40質量%以下となるように調整することが好ましい。乾燥方法としては、例えば、熱風受熱乾燥法、伝導受熱乾燥法、除湿空気乾燥法、冷風乾燥法、マイクロ波乾燥法、赤外線乾燥法、天日乾燥法、真空乾燥法、凍結乾燥法などが挙げられる。乾燥処理に用いる乾燥機は、公知のもの適宜選択して使用することができる。乾燥処理はバッチ処理、連続処理のいずれでも可能である。 粉砕処理は、公知の粉砕機を用いて行うことができる。用いられる粉砕機に特に制限はなく、リグノセルロース原料を小粒子化することができ、セルロースの結晶化度を低減できる装置であればよい。 粉砕機の具体例としては、高圧圧縮ロールミルや、ロール回転ミルなどのロールミル、リングローラーミル、ローラーレースミル又はボールレースミルなどの竪型ローラーミル、転動ボールミル、振動ボールミル、振動ロッドミル、振動チューブミル、遊星ボールミル又は遠心流動化ミルなどの容器駆動式媒体ミル、塔式粉砕機、攪拌槽式ミル、流通槽式ミル又はアニュラー式ミルなどの媒体攪拌式ミル、高速遠心ローラーミルやオングミルなどの圧密せん断ミル、乳鉢、石臼、マスコロイダー、フレットミル、エッジランナーミル、ナイフミル、ピンミル、カッターミルなどが挙げられる。これらの中では、リグノセルロース原料の粉砕効率、及び生産性の観点から、容器駆動式媒体ミル又は媒体攪拌式ミルが好ましく、容器駆動式媒体ミルがより好ましく、振動ボールミル、振動ロッドミル又は振動チューブミルなどの振動ミルが更に好ましく、振動ロッドミルがより更に好ましい。 粉砕方法としては、バッチ式、連続式のどちらでもよい。粉砕に用いる装置及び/又は媒体の材質としては特に制限はなく、例えば、鉄、ステンレス、アルミナ、ジルコニア、炭化珪素、チッ化珪素、ガラスなどが挙げられる。これらの中では、セルロースの結晶構造を効率的に破壊させる観点から、鉄、ステンレス、ジルコニア、炭化珪素、窒化珪素が好ましく、更に工業的利用の観点から、鉄又はステンレスが好ましい。 用いる装置が振動ミルであって、媒体がロッドの場合には、リグノセルロース原料の粉砕効率の観点から、ロッドの外径は好ましくは0.1〜100mm、より好ましくは0.5〜50mmの範囲である。ロッドの大きさが上記の範囲であれば、リグノセルロース原料を効率的に小粒子化させることができるとともに、ロッドのかけらなどが混入してリグノセルロース原料が汚染されるおそれが少ない。 ロッドの充填率は、振動ミルの機種により好適な範囲が異なるが、好ましくは10〜97%、より好ましくは15〜95%、更に好ましくは20〜80%である。充填率がこの範囲内であれば、リグノセルロース原料とロッドとの接触頻度が向上するとともに、媒体の動きを妨げずに、リグノセルロース原料の粉砕効率を向上させることができる。ここで充填率とは、振動ミルの攪拌部の容積に対するロッドの見かけの体積をいう。 粉砕処理時の温度に特に限定はないが、操作コスト及びリグノセルロース原料の劣化抑制の観点から、−100〜200℃が好ましく、0〜150℃がより好ましく、5〜100℃が更に好ましい。 粉砕時間は、粉砕後のリグノセルロース原料が小粒子化されるよう適宜調整すればよい。用いる粉砕機や使用するエネルギー量などによって変わるが、通常1分〜12時間であり、リグノセルロース原料の粒子径の低下の観点、及びエネルギーコストの観点から、2分〜6時間が好ましく、5分〜3時間がより好ましく、5分〜2時間が更に好ましい。 また、リグノセルロース原料の粉砕効率向上、糖化率向上、及び生産効率向上(生産時間の短縮)の観点から、リグノセルロース原料を、塩基性化合物の存在下で粉砕処理することが好ましい。(塩基性化合物) 粉砕処理に用いられる塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属水酸化物、酸化ナトリウム、酸化カリウムなどのアルカリ金属酸化物、酸化マグネシウム、酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属酸化物、硫化ナトリウム、硫化カリウムなどのアルカリ金属硫化物、硫化マグネシウム、硫化カルシウムなどのアルカリ土類金属硫化物などが挙げられる。これらのうち、酵素糖化率向上の観点から、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物を用いることがより好ましく、アルカリ金属水酸化物を用いることが更に好ましく、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを用いることがより更に好ましい。これらの塩基性化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。 粉砕処理で用いられる塩基性化合物の量は、リグノセルロース原料中のホロセルロースをすべてセルロースとして仮定した場合に、該セルロースを構成するアンヒドログルコース単位(以下「AGU」と称する場合がある。)1モルあたり0.01〜10倍モルであることが好ましく、0.05〜8倍モルであることがより好ましく、0.1〜5倍モルであることが更に好ましく、0.1〜1.5倍モルであることがより更に好ましい。塩基性化合物の使用量が0.01倍モル以上であれば、後述する工程(2)において糖化効率が向上する。また、該使用量が10倍モル以下であれば、塩基性化合物の中和及び/又は洗浄容易性の観点、及び塩基性化合物のコストの観点から好ましい。 塩基性化合物の存在下で粉砕処理する場合、粉砕処理時の水分量は、リグノセルロース原料の乾燥質量に対して0.1〜40質量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜35質量%、更に好ましくは1〜30質量%、更に好ましくは1〜25質量%、更に好ましくは2〜20質量%である。粉砕処理時の水分量が前記範囲内であれば、リグノセルロース原料の粉砕効率、及びリグノセルロース原料と塩基性化合物との混合・浸透・拡散性が向上し、工程(1)の糖化処理が効率よく進行する。 粉砕処理時の水分量は、セルロース原料の乾燥質量に対する水分量を意味し、乾燥処理などによりセルロース原料、塩基性化合物に含まれる水分量を低減することや、粉砕処理時に水を添加して水分量を上げることなどにより、適宜調整することができる。 粉砕処理後に得られるリグノセルロース原料の平均粒径は、リグニン分解物の収率向上、及び糖化効率向上の観点から、好ましくは1〜150μm、より好ましくは5〜100μmである。なお、粉砕処理後に得られるリグノセルロース原料の平均粒径は、実施例に記載の方法により測定される。 粉砕処理後に得られるリグノセルロース原料のセルロースI型結晶化度は、リグニン分解物の収率向上及び糖化効率向上の観点から、好ましくは0〜40%、より好ましくは0〜30%、更に好ましくは0〜20%、更に好ましくは0〜10%である。なお、粉砕処理後に得られるリグノセルロース原料のセルロースI型結晶化度は、実施例に記載の方法により測定される。(水熱処理) 水熱処理とは、加圧条件下で高温の水溶液をリグノセルロース原料に作用させる処理である。水熱処理は、公知の反応装置機を用いて行うことができ、用いられる反応装置機に特に制限はない。水熱処理では、リグノセルロース原料をスラリー状にして用いるのが好ましい。そこで、糖化効率向上の観点から、粗粉砕を行ってから水熱処理を行うことが好ましい。スラリー中のリグノセルロース原料の含有量は、流動性向上の観点から、好ましくは1〜500g/L、より好ましくは1〜200g/L、更に好ましくは5〜150g/L、より更に好ましくは8〜100g/Lである。スラリーとしては、水、各種緩衝液等が挙げられる。 水熱処理は、生産効率の向上及び糖化効率の向上の観点から、酸性条件下で行うことが好ましい。スラリーのpHは、生産効率の向上、糖化効率の向上及びリグニンの変性抑制の観点から、pH3〜7が好ましく、pH4〜6がより好ましい。また、生産効率や糖化効率をさらに向上させる観点から、スラリーのpHは、pH1.5〜3が好ましい。スラリーのpHは、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸、酢酸、クエン酸等の有機酸を用いることにより適宜調整することができる。 水熱処理の処理条件としては、温度100〜400℃が好ましい。 水熱処理時の反応温度は、生産効率向上、及びセルロース糖化効率向上の観点から、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、更に好ましくは130℃以上、より更に好ましくは140℃以上であり、好ましくは400℃以下、より好ましくは300℃以下、更に好ましくは220℃以下、より更に好ましくは200℃以下である。また、水熱処理時の反応温度は、生産効率向上、セルロース糖化効率向上の観点から、100〜400℃、より好ましくは120〜300℃、更に好ましくは130〜220℃、より更に好ましくは140〜200℃である。 水熱処理時の反応圧力は、生産効率向上、セルロース糖化効率向上の観点から、好ましくは0MPa以上、より好ましくは0.01MPa以上、更に好ましくは0.1MPa以上、より更に好ましくは0.5MPa以上であり、好ましくは50MPa以下、より好ましくは40MPa以下、更に好ましくは20MPa以下である。また、水熱処理時の反応圧力は、生産効率向上、セルロース糖化効率向上の観点から、好ましくは0〜50MPa、より好ましくは0.01〜40MPa、更に好ましくは0.1〜20MPa、より更に好ましくは0.5〜20MPaである。 水熱処理の時間は、生産効率向上、セルロース糖化効率向上、及びリグニンの変性抑制の観点から、好ましくは0.0001時間以上であり、好ましくは24時間以下であり、より好ましくは18時間以下、更に好ましくは12時間以下である。また、水熱処理の時間は、生産効率向上、セルロース糖化効率向上の観点から、好ましくは0.0001〜24時間、より好ましくは0.005〜18時間、更に好ましくは0.01〜12時間、更に好ましくは0.02〜6時間、更に好ましくは0.02〜3時間、更に好ましくは0.02〜1時間である。 水熱処理方法としては、バッチ式、連続式のどちらでもよい。 なお、水熱処理で得られたリグノセルロース原料は、湿潤状態のものでもよく、さらに乾燥処理して得られたものでもよいが、糖化効率向上の観点から、湿潤状態のものが好ましい。(糖化処理) 工程(1)の糖化処理に用いられる酵素としては、糖化効率の向上、及びリグニン分解物の収率向上、及びリグニンの変性抑制の観点から、セルラーゼやヘミセルラーゼが挙げられる。これらの酵素は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。 ここで、セルラーゼとは、セルロースのβ−1,4−グルカンのグリコシド結合を加水分解する酵素を指し、エンドグルカナーゼ、エクソグルカナーゼまたはセロビオハイドロラーゼ、及びβ−グルコシダーゼなどと称される酵素の総称である。本発明に使用されるセルラーゼとしては、市販のセルラーゼ製剤や、動物、植物、微生物由来のものが含まれる。 セルラーゼの具体例としては、セルクラスト1.5L(ノボザイムズ社製、商品名)、CellicCTec2(ノボザイムズ社製、商品名)などのトリコデルマ リーゼ(Trichoderma reesei)由来のセルラーゼ製剤やバチルス エスピー(Bacillus sp.) KSM−N145(FERM P−19727)株由来のセルラーゼ、またはバチルス エスピー (Bacillus sp.) KSM−N252(FERM P−17474)、バチルス エスピー(Bacillus sp.)KSM−N115(FERM P−19726)、バチルス エスピー(Bacillus sp.)KSM−N440(FERM P−19728)、バチルス エスピー(Bacillus sp.) KSM−N659 (FERM P−19730)などの各株由来のセルラーゼ、更には、トリコデルマ ビリデ(Trichoderma viride)、アスペルギルス アクレアタス(Aspergillus acleatus)、クロストリジウム サーモセラム(Clostridium thermocellum)、クロストリジウム ステルコラリウム(Clostridium stercorarium)、クロストリジウム ジョスイ(Clostridium josui)セルロモナス フィミ(Cellulomonas fimi)、アクレモニウム セルロリティクス(Acremonium celluloriticus)、イルペックス ラクテウス(Irpex lacteus)、アスペルギルス ニガー(Aspergillus niger)、フミコーラ インソレンス(Humicola insolens)由来のセルラーゼ混合物やパイロコッカス ホリコシ(Pyrococcus horikoshii)由来の耐熱性セルラーゼなどが挙げられる。 これらの中で、糖化効率の向上、及びリグニン分解物の収率向上の観点から、好ましくはトリコデルマ リーゼ(Trichoderma reesei)、トリコデルマ ビリデ(Trichoderma viride)、あるいはフミコーラ インソレンス(Humicola insolens)由来のセルラーゼ、例えばセルクラスト1.5L(ノボザイムズ社製、商品名)、TP−60(Meiji Seika ファルマ株式会社製、商品名)、CellicCTec2(ノボザイムズ社製、商品名)、Accellerase DUET(ジェネンコア社製、商品名)、あるいはウルトラフロL(ノボザイムズ社製、商品名)が挙げられる。 また、セルラーゼの1種であるβ−グルコシダーゼの具体例としては、アスペルギルス ニガー(Aspergillus niger)由来の酵素(例えば、ノボザイムズ社製ノボザイム188(商品名)やメガザイム社製β-グルコシダーゼ)やトリコデルマ リーゼ(Trichoderma reesei)、ペニシリウム エメルソニイ(Penicillium emersonii)由来の酵素などが挙げられる。 また、ヘミセルラーゼの具体例としては、CellicHTec2(ノボザイムズ社製、商品名)などのトリコデルマ リーゼ(Trichoderma reesei)由来のヘミセルラーゼ製剤やバチルス エスピー(Bacillus sp.)KSM−N546(FERM P−19729)由来のキシナラーゼのほか、アスペルギルス ニガー(Aspergillus niger)、トリコデルマ ビリデ(Trichoderma viride)、フミコーラ インソレンス(Humicola insolens)、バチルス アルカロフィルス(Bacillus alcalophilus)由来のキシラナーゼ、更には、サーモマイセス(Thermomyces)、オウレオバシジウム(Aureobasidium)、ストレプトマイセス(Streptomyces)、クロストリジウム(Clostridium)、サーモトガ(Thermotoga)、サーモアスクス(Thermoascus)、カルドセラム(Caldocellum)、サーモモノスポラ(Thermomonospora)属由来のキシラナーゼなどが挙げられる。 工程(1)において用いられる酵素は、糖化効率の向上及びリグニンの変性抑制の観点から、上記セルラーゼ及びヘミセルラーゼからなる群から選ばれる1種又は2種以上であることが好ましく、セロビオハイドロラーゼ、β−グルコシダーゼ、エンドグルカナーゼ及びヘミセルラーゼからなる群から選ばれる1種又は2種以上であることがより好ましく、セロビオハイドロラーゼ、及びエンドグルカナーゼからなる群から選ばれる1種又は2種以上であることが更に好ましい。 工程(1)において、リグノセルロース原料を酵素で糖化処理する場合の処理条件は、該リグノセルロース原料中のリグニン含有量、セルロースI型結晶化度、使用する酵素の種類により適宜選択することができる。 例えば、前記酵素を使用し、リグノセルロース原料を基質とする場合は、0.5〜20%(w/v)の基質懸濁液に対して前記酵素を0.001〜15%(v/v)となるように添加し、pH2〜10の緩衝液中、反応温度10〜90℃で、反応時間30分〜5日間で反応させることにより糖化処理を行うことができる。 上記緩衝液のpHは、用いる酵素の種類により適宜選択することが好ましく、好ましくはpH3〜7、より好ましくはpH4〜6である。 また、上記反応温度は、用いる酵素の種類により適宜選択することが好ましく、好ましくは20〜70℃、より好ましくは40〜60℃である。 さらに、上記反応時間は、用いる酵素の種類により適宜選択することが好ましく、好ましくは0.5〜3日間、より好ましくは0.5〜2日間である。(糖化残渣) リグノセルロース原料を酵素により糖化処理することにより、糖化残渣が得られる。ここで糖化残渣とは、酵素糖化処理後の混合物を遠心分離等の固液分離手段により分離した、固形成分のことである。この固形成分は、水で数回洗浄することで水溶性の多糖類を除去できる。その後、湿潤状態で次の工程(2)を行ってもよいし、乾燥させることで、糖化残渣を粉末化してもよい。生産効率向上の観点からは、湿潤状態で次の工程(2)を行うことが好ましい。また、乾燥処理を行う場合は、リグニンの変性抑制の観点から、100℃以下で乾燥することが好ましく、凍結乾燥することがより好ましい。〔工程(2)〕 工程(2)は、前述の糖化残渣を、20℃の水に対する溶解度(以下、単に「溶解度」ともいう)が90g/L以上の有機溶媒と水とを含む混合溶媒中で加熱処理して、リグニン分解物を含有する加熱処理液を得る工程である。(有機溶媒) 工程(2)で水と共に用いる有機溶媒は、糖化残渣に含まれるセルロース及びヘミセルロースからリグニンを容易に分離し(以下、単に「リグニン分離性」ともいう。)、リグニン分解物の抽出効率を向上させる観点から、20℃の水に対する溶解度が90g/L以上であり、好ましくは100g/L以上、より好ましくは120g/L以上である。20℃の水に対する溶解度が90g/L以上の有機溶媒を用いることにより、混合溶媒とリグニンとの親和性が向上し、リグニンとセルロース及びヘミセルロースとの交絡を容易に解くことができ、リグニン分解物の抽出効率を向上させることができる。 前記有機溶媒としては、リグニン分離性及びリグニン分解物の抽出効率向上の観点から、アルコール類、ニトリル類、エーテル類及びケトン類からなる群から選ばれる1種又は2種以上が好ましい。 前記有機溶媒は、リグニン分解物の抽出効率向上の観点から、SP値が8〜23であることが好ましく、より好ましくは8〜16、更に好ましくは9〜13である。 ここで、「SP値」とは、溶解性パラメーター(Solubility Parameter;SP値)を意味し、Fedorsの方法〔Robert F.Fedors, Polymer Engineering and Science, 14, 147-154 (1974)〕により、下記のFedorsの式に基づいて求められた値δ[(cal/cm3)1/2]であり、化合物の化学構造の原子または原子団の蒸発エネルギーの総和(Δei)とモル体積の総和(Δvi)の比の平方根から求められる。 Fedorsの式: δ=(ΣΔei/ΣΔvi)1/2 前記有機溶媒の具体例を以下に示す。 前記アルコール類としては、メタノール、エタノール、ジエチレングリコール、n−プロパノール、イソプロパノール、2−ブタノール、イソブタノール、t−ブチルアルコールなどが挙げられる。 前記ニトリル類としては、アセトニトリルなどが挙げられる。 前記エーテル類としては、ジオキサンなどが挙げられる。 前記ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトンなどが挙げられる。 上記で例示した有機溶媒は、いずれも20℃の水に対する溶解度が90g/L以上である。これらの有機溶媒は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。 これらの有機溶媒のうち、リグニン分離性及びリグニン分解物の抽出効率向上、安全性の観点から、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、ジオキサン、アセトン及びメチルエチルケトンからなる群から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、より好ましくはエタノール、イソプロパノール、アセトンであり、更に好ましくはアセトンである。 工程(2)における前記有機溶媒と水との混合溶媒中の比率〔有機溶媒/水〕(質量比)は、リグニン分離性及びリグニン分解物の抽出率向上の観点から、90/10〜10/90が好ましく、より好ましくは70/30〜30/70、更に好ましくは、60/40〜40/60である。 また、前記混合溶媒は、リグニン分解物の収率向上及び生成するリグニン分解物の分子量制御の観点から、さらに酸又は塩基を含有することが好ましい。 用いられる酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸等の無機酸、パラトルエンスルホン酸(PTSA)、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、ギ酸、酢酸、クエン酸等の有機酸、塩化アルミニウム、金属トリフラート類などのルイス酸、カプリル酸、ベラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸などの脂肪酸、ヘテロポリ酸などが挙げられる。これらのうち、リグニン分解物の収率向上及び低分子量のリグニン分解物を得る観点から、塩酸、硫酸、PTSA、及び塩化アルミニウムからなる群から選ばれる1種又は2種以上が好ましい。 塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物、酸化ナトリウム、酸化カリウム等のアルカリ金属酸化物、酸化マグネシウム、酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属酸化物、硫化ナトリウム、硫化カリウムなどのアルカリ金属硫化物、硫化マグネシウム、硫化カルシウム等のアルカリ土類金属硫化物などが挙げられる。これらのうち、リグニン分解物の収率向上及び高分子量のリグニン分解物を得る観点から、アルカリ金属水酸化物及びアルカリ土類金属水酸化物からなる群から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、アルカリ金属水酸化物がより好ましく、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムからなる群から選ばれる1種又は2種以上がより更に好ましい。 なお、前記酸や塩基は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。 また、前記混合溶媒は、リグニン分解物の収率向上の観点から、さらにラジカル捕捉剤を含有することが好ましい。 用いられるラジカル捕捉剤としては、芳香族系ラジカル捕捉剤、アミン系ラジカル捕捉剤、安定化フリーラジカル系ラジカル捕捉剤、有機酸系ラジカル捕捉剤、カテキン系ラジカル捕捉剤、及び分子状水素などが挙げられる。 前記芳香族系ラジカル捕捉剤としては、例えば、ヒドロキノン、ベンゾキノン、メトキノン、フェノール、カテコール、ピロガロール、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、フロログルシノール、レゾルシノール、ホモカテコール、p−クレゾール、2−メトキシフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、2,6−ジメトキシフェノール、2−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、4−ヒドロキシメチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、ブチルヒドロキシアニソール、n−オクタデシル−3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)プロピオネート、ジステアリル−(4−ヒドロキシ−3−メチル−5−−tert−ブチル)ベンジルマロネート、没食子酸プロピル、没食子酸オクチル、没食子酸ドデシル、トコフェロール、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4'−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4'−ブチリデンビス(6−tert−ブチル−m−クレゾール)、4,4'−チオビス(6−tert−ブチル−m−クレゾール)、スチレン化フェノール、N,N'−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナミド)、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチルエステル)カルシウム、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,6−ヘキサンジオール・ビス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,2'−メチレンビス〔6−(1−メチルシクロヘキシル)−p−クレゾール〕、1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌル酸、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌル酸、トリエチレングリコール・ビス〔3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート〕、2,2'−オキザミドビス〔エチル・3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−2,4−ジオクチルチオ−1,3,5−トリアジン、ビス〔2−tert−ブチル−4−メチル−6−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルベンジル)フェニル〕テレフタレート、3,9−ビス〔2−〔3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕−1,1−ジメチルエチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカンおよび3,9−ビス〔2−〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕−1,1−ジメチルエチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカンなどが挙げられる。 前記アミン系ラジカル捕捉剤としては、例えば、トリブチルアミン、ジフェニルアミン、フェノチアジンおよびフェニル−α−ナフチルアミンなどが挙げられる。 前記安定化フリーラジカル系ラジカル捕捉剤としては、例えば、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルなどが挙げられる。 前記有機酸系ラジカル捕捉剤としては、例えば、L−アスコルビン酸、エリソルビン酸、α−トコフェロールおよびクロロゲン酸などが挙げられる。 前記カテキン系ラジカル捕捉剤としては、例えば、(+)−カテキン、エピカテキン、エピガロカテキン、エピガロカテキンガラートおよびエピガロカテキンガラートなどが挙げられる。 これらのうち、リグニン分解物の収率向上の観点から、ラジカル捕捉剤は、芳香族系ラジカル捕捉剤、アミン系ラジカル捕捉剤、有機酸系ラジカル捕捉剤、カテキン系ラジカル捕捉剤及び分子状水素からなる群から選ばれる1種又は2種以上であることが好ましく、芳香族系ラジカル捕捉剤、及び有機酸系ラジカル捕捉剤から選ばれる1種又は2種以上であることがより好ましく、芳香族系ラジカル捕捉剤であることが更に好ましい。 芳香族系ラジカル捕捉剤としては、具体的には、ヒドロキノン、ベンゾキノン、メトキノン、フェノール、カテコール、ピロガロール、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、フロログルシノール、レゾルシノール、ホモカテコール、p−クレゾール、2−メトキシフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、2,6−ジメトキシフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、ブチルヒドロキシアニソールからなる群から選ばれる1種又は2種以上であることが好ましく、ヒドロキノン、ベンゾキノン、メトキノン、フェノール、カテコール、ピロガロール、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、フロログルシノール、p−クレゾール、2−メトキシフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールからなる群から選ばれる1種又は2種以上であることがより好ましく、ヒドロキノン、ベンゾキノン、メトキノン、フェノールからなる群から選ばれる1種又は2種以上であることが更に好ましい。 工程(2)で用いる混合溶媒の使用量は、生産性の向上及びリグニンの分解性を高める観点から、糖化残渣の固形分に対し2〜40質量倍であることが好ましく、より好ましくは2〜30質量倍、更に好ましくは3〜30質量倍、より更に好ましくは5〜30質量倍である。 酸又は塩基の含有量は、リグニン分解物の収率向上及び生成するリグニン分解物の分子量制御の観点から、工程(2)で用いる混合溶媒に対して、0.001〜1.0質量%が好ましく、0.01〜0.5質量%がより好ましい。 混合溶媒中におけるラジカル捕捉剤の含有量は、リグニン分解物の収率向上の観点から、工程(2)で用いる糖化残渣中のリグニンのモル数に対して、5〜1000mol%が好ましく、6〜500mol%がより好ましく、8〜200mol%が更に好ましく、10〜100mol%がより更に好ましい。ここで、糖化残渣中のリグニンのモル数は、リグニンの構成モノマーをコニフェリルアルコールと仮定し、糖化残渣中のリグニン含有量をコニフェリルアルコールの分子量180.22で除して算出される値である。 工程(2)における加熱処理温度は、リグニンの変性抑制及びリグニン分解物の収率向上の観点から、40〜300℃が好ましく、より好ましくは80〜280℃、更に好ましくは100〜250℃、更に好ましくは120〜200℃である。 工程(2)で用いられる加熱装置としては、リグニンの変性抑制及びリグニン分解物の収率向上の観点から、オートクレーブ又はマイクロ波加熱装置が好ましい。 工程(2)における加熱処理時の反応圧力は、リグニンの変性抑制及びリグニン分解物の収率向上の観点から、0.1〜30MPaが好ましく、より好ましくは0.1〜20MPa、更に好ましくは0.1〜15MPaである。 工程(2)における加熱処理の時間は、特に制限されず、糖化残渣量に応じて適宜選択されるが、リグニンの変性抑制及びリグニン分解物の収率向上の観点から、1分〜5時間が好ましく、より好ましくは1分〜3時間、更に好ましくは2分〜2時間である。 (工程(3)) 工程(3)は、前記工程(2)で得られたリグニン分解物を含有する加熱処理液を固液分離して、不溶分を除去し、リグニン分解物を得る工程である。 リグニン分解物を得る方法としては、工程(2)で得られた加熱処理液を固液分離し、不溶分を除去し、液体分に含まれるリグニン分解物を得る工程を少なくとも含む方法であれば、特に限定されない。リグニン分解物を得る方法としては、ろ過、遠心分離などの固液分離の他に、溶媒留去、洗浄、乾燥等の工程を適宜組み合わせることができる。また前記工程(2)で酸又は塩基を添加した場合は、中和する工程を含む。これらの工程は、常法により行うことができる。例えば、前記工程(2)で得られた加熱処理液の固液分離により不溶分を除去し、液体分に含まれる前記有機溶媒及び水を減圧留去し、得られた残渣を水洗し、リグニン分解物を得る方法が挙げられる。溶媒留去後の残渣を水洗することで、水溶性の多糖類等を除去することができ、リグニン分解物のリグニン純度を高めることができる。〔リグニン分解物〕 本発明の製造方法により得られるリグニン分解物は、低変性で、かつ溶媒溶解性を有する。このため、バニリンやシリンガアルデヒド、パラヒドロキシベンズアルデヒド、バニリン酸、シリンガ酸、4-ヒドロキシ安息香酸などの低分子芳香族化合物への変換材料として有利に利用することができる。また、そのまま、抗菌剤、農薬、及び熱硬化性樹脂、セメント分散剤、蓄電池用分散剤、香粧品用途の添加剤、その他の機能性材料として利用することができる。 本発明の製造方法により得られるリグニン分解物の重量平均分子量は、例えば、2,000〜40,000の範囲であり、リグニン分解物の用途に応じて、適宜分子量を選択して使用することができる。 また、本発明の製造方法により得られるリグニン分解物の変性度の指標であるアルデヒド収率は、低分子芳香族化合物への変換の観点から、好ましくは10%以上、より好ましくは12.5%以上、更に好ましくは15%以上、より更に好ましくは20%以上である。なお、前記アルデヒド収率は、実施例に記載のアルカリニトロベンゼン酸化法により測定される値であり、アルデヒド収率の値が高いほど、リグニン分解物の変性度が低いことを示す。 上述した実施形態に関し、本発明は以下のリグニン分解物の製造方法及びリグニン分解物を開示する。[1]下記工程(1)〜(3)を有する、リグニン分解物の製造方法。 工程(1):リグノセルロース原料を酵素により糖化処理して糖化残渣を得る工程 工程(2):工程(1)で得られた糖化残渣を、20℃の水に対する溶解度が90g/L以上、好ましくは100g/L以上、より好ましくは120g/L以上の有機溶媒と水とを含む混合溶媒中で加熱処理して、リグニン分解物を含有する加熱処理液を得る工程 工程(3):工程(2)で得られた加熱処理液を固液分離して、不溶分を除去し、リグニン分解物を得る工程[2]前記混合溶媒における前記有機溶媒と水の比率〔有機溶媒/水〕(質量比)が、90/10〜10/90、好ましくは70/30〜30/70、より好ましくは、60/40〜40/60である、上記[1]に記載のリグニン分解物の製造方法。[3]前記有機溶媒のSP値が、8〜23、好ましくは8〜16、より好ましくは9〜13である、上記[1]又は[2]に記載のリグニン分解物の製造方法。[4]前記有機溶媒が、アルコール類、ニトリル類、エーテル類及びケトン類からなる群から選ばれる1種又は2種以上である、上記[1]〜[3]のいずれかに記載のリグニン分解物の製造方法。[5]前記有機溶媒が、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、ジオキサン、アセトン及びメチルエチルケトンからなる群から選ばれる1種又は2種以上、好ましくはエタノール、イソプロパノール、アセトン、より好ましくはアセトンである、上記[1]〜[4]のいずれかに記載のリグニン分解物の製造方法。[6]前記混合溶媒が、さらに酸又は塩基を含む、上記[1]〜[5]のいずれかに記載のリグニン分解物の製造方法。[7]酸又は塩基の含有量が、工程(2)で用いる混合溶媒に対して、0.001〜1.0質量%、好ましくは0.01〜0.5質量%である、上記[6]に記載のリグニン分解物の製造方法。[8]前記混合溶媒が、さらにラジカル捕捉剤、好ましくは芳香族系ラジカル捕捉剤、アミン系ラジカル捕捉剤、安定化フリーラジカル系ラジカル捕捉剤、有機酸系ラジカル捕捉剤、カテキン系ラジカル捕捉剤、及び分子状水素からなる群から選ばれる1種又は2種以上、より好ましくは芳香族系ラジカル捕捉剤、アミン系ラジカル捕捉剤、有機酸系ラジカル捕捉剤、カテキン系ラジカル捕捉剤、及び分子状水素からなる群から選ばれる1種又は2種以上、更に好ましくは芳香族系ラジカル捕捉剤、及び有機酸系ラジカル捕捉剤から選ばれる1種又は2種以上、より更に好ましくは芳香族系ラジカル捕捉剤を含む、上記[1]〜[7]のいずれかに記載のリグニン分解物の製造方法。[9]混合溶媒中におけるラジカル捕捉剤の含有量が、工程(2)で用いる糖化残渣中のリグニンのモル数に対して、5〜1000mol%、好ましくは6〜500mol%、より好ましくは8〜200mol%、更に好ましくは10〜100mol%である、上記[8]に記載のリグニン分解物の製造方法。[10]前記混合溶媒の使用量が、糖化残渣の固形分に対し、2〜40質量倍、好ましくは2〜30質量倍、より好ましくは3〜30質量倍、更に好ましくは5〜30質量倍である、上記[1]〜[9]のいずれかに記載のリグニン分解物の製造方法。[11]工程(2)の加熱処理温度が、40〜300℃、好ましくは80〜280℃、より好ましくは100〜250℃、更に好ましくは120〜200℃である、上記[1]〜[10]のいずれかに記載の製造方法。[12]リグノセルロース原料を、酵素で糖化処理する前に、粉砕処理又は水熱処理する、上記[1]〜[11]のいずれかに記載のリグニン分解物の製造方法。[13]リグノセルロース原料を、酵素で糖化処理する前に粉砕処理する、上記[1]〜[11]のいずれかに記載のリグニン分解物の製造方法。[14]粉砕処理における、リグノセルロース原料中の水分量が、リグノセルロース原料の乾燥質量に対して40質量%以下、好ましくは0.01〜40質量%、より好ましくは0.1〜35質量%、更に好ましくは1〜30質量%、更に好ましくは1〜20質量%である、上記[12]又は[13]に記載のリグニン分解物の製造方法。[15]粉砕時間が、1分〜12時間であり、好ましくは2分〜6時間、より好ましくは5分〜3時間、更に好ましくは5分〜2時間である、上記[12]〜[14]のいずれかに記載のリグニン分解物の製造方法。[16]塩基性化合物の存在下で粉砕処理する、上記[12]〜[15]のいずれかに記載のリグニン分解物の製造方法。[17]粉砕処理時の水分量が、リグノセルロース原料の乾燥質量に対して0.1〜40質量%、好ましくは0.5〜35質量%、より好ましくは1〜30質量%、更に好ましくは1〜25質量%、更に好ましくは2〜20質量%である、上記[16]に記載のリグニン分解物の製造方法。[18]粉砕処理時の塩基性化合物の使用量が、セルロースを構成するアンヒドログルコース単位1モルあたり0.01〜10倍モル、好ましくは0.05〜8倍モル、より好ましくは0.1〜5倍モル、更に好ましくは0.1〜1.5倍モルである、上記[16]又は[17]に記載のリグニン分解物の製造方法。[19]リグノセルロース原料を、酵素で糖化処理する前に水熱処理する、上記[1]〜[11]のいずれかに記載のリグニン分解物の製造方法。[20]水熱処理における反応温度が100〜400℃、好ましくは120〜300℃、より好ましくは130〜220℃、更に好ましくは140〜200℃である、上記[12]又は[19]に記載のリグニン分解物の製造方法。[21]水熱処理における反応圧力が、0〜50MPa、好ましくは0.01〜40MPa、より好ましくは0.1〜20MPa、更に好ましくは0.5〜20MPaである上記[12]、[19]及び[20]のいずれかに記載のリグニン分解物の製造方法。[22]水熱処理における、反応時間が、0.0001〜24時間、好ましくは0.0001〜18時間、より好ましくは0.0001〜12時間である上記[12]及び[19]〜[21]のいずれかに記載のリグニン分解物の製造方法。[23]酵素が、セルラーゼ及びヘミセルラーゼからなる群から選ばれる1種又は2種以上、好ましくはセロビオハイドロラーゼ、β−グルコシダーゼ、エンドグルカナーゼ及びヘミセルラーゼからなる群から選ばれる1種又は2種以上、より好ましくはセロビオハイドロラーゼ、及びエンドグルカナーゼからなる群から選ばれる1種又は2種以上である、上記[1]〜[22]のいずれかに記載のリグニン分解物の製造方法。[24]リグノセルロース原料が、針葉樹チップ、広葉樹チップ、バガス、稲わら、とうもろこし茎・葉、パーム空果房(EFB)、籾殻、パーム殻、ココナッツ殻、紙類及び藻類からなる群から選ばれる1種又は2種以上、好ましくは、バガス、EFB、又はアブラヤシの幹から得られる木材チップ、より好ましはバガスである、上記[1]〜[23]のいずれかに記載のリグニン分解物の製造方法。[25]上記[1]〜[24]のいずれかに記載の製造方法により得られたリグニン分解物。[26]アルカリニトロベンゼン酸化法により測定されるアルデヒド収率が10%以上、好ましくは12.5%以上、より好ましくは15%以上、更に好ましくは20%以上である、上記[25]に記載のリグニン分解物。 以下の実施例及び比較例において、特記しない限り、「%」は「質量%」を意味する。また、各種物性の測定法及び評価方法は以下のとおりである。(1)リグノセルロース原料中のホロセルロース含有量の算出 粉砕したリグノセルロース原料を、エタノール−ジクロロエタン混合溶剤(1:1、質量比)で6時間ソックスレー抽出を行い、抽出後のサンプルを60℃で真空乾燥した。得られた試料2.5gに水150mL、亜塩素酸ナトリウム1.0g及び酢酸0.2mLを添加し、70〜80℃で1時間加温した。引き続き亜塩素酸ナトリウム及び酢酸を添加して加温する操作を、試料が白く脱色するまで3〜4回繰り返し行った。白色の残渣をグラスフィルター(1G−3)でろ過し、冷水及びアセトンで洗浄した後、105℃で恒量になるまで乾燥し、残渣質量を求めた。下記式によりホロセルロース含有量を算出し、これをセルロース含有量とした。 セルロース含有量(質量%)=[残渣質量(g)/リグノセルロース原料の採取量(g:乾燥原料換算)]×100(2)アンヒドログルコース単位(AGU)モル数の算出 AGUモル数は、リグノセルロース原料中のホロセルロースをすべてセルロースと仮定して、以下の式に基づき算出した。 AGUモル数=ホロセルロース質量(g)/162(3)リグノセルロース原料の水分量の測定 リグノセルロース原料の水分量の測定には、赤外線水分計(株式会社ケット科学研究所製、製品名「FD−610」)を使用した。150℃にて測定を行い、30秒間の質量変化率が0.1%以下となる点を測定の終点とした。測定された水分量の値を、リグノセルロース原料の乾燥質量に対する質量%に換算した。(4)リグノセルロース原料粉砕物の結晶化度の測定方法 X線回折強度は、株式会社リガク製の「Rigaku RINT 2500VC X-RAY diffractometer」を用いて以下の条件で測定し、以下計算式(1)に基づいてセルロースI型結晶化度を算出した。 測定条件は、X線源:Cu/Kα−radiation,管電圧:40kv,管電流:120mA,測定範囲:2θ=5〜45°で測定した。測定用サンプルは面積320mm2×厚さ1mmのペレットを圧縮し作製した。X線のスキャンスピードは10°/minで測定した。〔セルロースI型結晶化度〕 セルロースI型結晶化度は、X線回折法による回折強度値からSegal法により算出したもので、下記計算式(1)により定義される。 セルロースI型結晶化度(%)=〔(I22.6−I18.5)/I22.6〕×100 (1)〔I22.6は、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度、I18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す〕(5)リグノセルロース原料粉砕物の平均粒径の測定方法 平均粒径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置「LA−950」(株式会社堀場製作所製)を用いて測定した。測定条件は、粒径測定前に超音波で1分間処理し、測定時の分散媒体として水を用い、体積基準のメジアン径を、室温にて測定した。(6)リグノセルロース原料中のリグニン含有量の算出 リグノセルロース原料中のリグニン含有量は、下記式により算出した。なお、工程(2)の初期基質である酵素糖化残渣、および工程(2)の最終残渣についても、リグニン含有量の測定方法は同様である。 リグニン含有量(g)=〔真の酸不溶性リグニン含率(%)+酸可溶性リグニン含率(%)〕×試料採取量(乾基準)(g)/100 ここで、真の酸不溶性リグニン含率及び酸可溶性リグニン含率は、以下に示す方法により算出した。(真の酸不溶性リグニン含率の算出) 真の酸不溶性リグニン含率は、下記式により、粗酸不溶性リグニン中の灰分率を差し引いて算出した。 真の酸不溶性リグニン含率(%)=粗酸不溶性リグニン含率(%)×〔100−灰分率(%)〕/100(粗酸不溶性リグニン含率の算出) 粉砕したリグノセルロース原料を、60℃で真空乾燥した。この乾燥試料300mgをバイアルに入れ、72%硫酸を3ml加えて30℃の水浴中で1時間適宜撹拌した。その後、水84mlを加えて耐圧瓶に移し、オートクレーブを用いて120℃で1時間処理を行った。その後、試料が70℃以下にならないうちに取り出し、予め恒量を測定しておいた1G−3のガラスフィルターを用いて吸引ろ過を行った。ろ液(A)は保管し、残渣が付着したガラスフィルターはよく水洗した後、105℃で乾燥して、恒量を測定し、粗酸不溶性リグニン採取量(乾基準)を求めた。 粗酸不溶性リグニン含率(%)=〔リグニン残査質量(g)/試料採取量(乾基準)(g)〕×100(灰分率の算出) 粗酸不溶性リグニンを予め恒量を測定したるつぼに移し、575℃で12時間保持し、その後冷却して、るつぼの恒量を測定し、灰化後試料質量を求め、下記式により灰分率を求めた。 灰分率(%)=〔灰化後試料質量(g)/粗酸不溶性リグニン採取量(乾基準)(g)〕×100(酸可溶性リグニン含率の算出) 酸可溶性リグニンの測定は以下の方法により行った。 ろ液(A)を100mlに定容し、UV−Vis吸光光度計を用いて、205nmにおける吸光度を測定した。この時、吸光度が0.3〜0.8になるように適宜希釈した。 酸可溶性リグニン含率(%)=d×v×(As−Ab)/(a×w)×100 d:希釈倍率、v:ろ液定容量(L)、As:試料溶液の吸光度、Ab:ブランク溶液の吸光度、a:リグニンの吸光係数、w:試料採取量(乾基準)(g) リグニンの吸光係数(a)は、参考資料(「リグニン化学研究法」、ユニ出版株式会社発行)において、既報の平均値として記載されている値110L/g/cmを用いた。(7)リグニン抽出率の測定方法 リグニン抽出率は下記のように算出した。(酵素糖化残渣の場合) リグニン抽出率(質量%)=〔(酵素糖化残渣の仕込み質量(g)×酵素糖化残渣中のリグニン含量(%))―(工程(2)で得られた最終残渣の質量(g)×工程(2)で得られた最終残渣のリグニン含率(%))〕/〔酵素糖化残渣の仕込み質量(g)×酵素糖化残渣中のリグニン含量(%)〕×100×K K(%)=〔酵素糖化残渣の回収量(g)×酵素糖化残渣中のリグニン含量(%)〕/〔リグノセルロース原料の仕込み質量(g)×リグノセルロース原料中のリグニン含量(%)〕 なお、工程(2)で得られた最終残渣とは、工程(2)で得られる加熱処理液中の不溶分のことである。(クラフト蒸解法の場合) リグニン抽出率(質量%)=〔クラフト蒸解リグニンの回収量(g)×クラフト蒸解リグニン中のリグニン含量(%)〕/〔リグノセルロース原料の仕込み質量(g)×リグノセルロース原料中のリグニン含量(%)〕(8)リグニンの重量平均分子量の測定方法 本方法で製造したリグニンの分子量を、ゲルクロマトグラフィー法により下記条件で測定した。 東ソー株式会社製GPC装置(HLC−8120GPC)に、東ソー株式会社製カラム(TSK−GEL、α−M)2本とガードカラムを連結した。溶離液として60mmol/LのH3PO4と50mmol/LのLiBrを添加したN,N−ジメチルホルムアミドを、毎分1mlの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させた。そこに試料溶液100μlを注入して測定を行った。試料の分子量は、あらかじめ作成した検量線に基づき算出した。このときの検量線には、数種類の単分散ポリスチレン〔東ソー株式会社製のA−500(分子量5.0×102)、F−10(分子量9.64×104)、F−850(分子量8.42×106)、Pressure Chemical社製(分子量4.0×103、3.0×104、9.29×105)〕を標準試料として作成したものを用いた。(9)リグニン変性度の測定方法 リグニンの変性度は、参考資料(「リグニン化学研究法」、ユニ出版株式会社発行)に記載のアルカリニトロベンゼン酸化法を用いて、アルデヒド収率を指標に評価した。具体的には下記の方法により測定した。 リグノセルロース原料(40〜60メッシュ)約200mg、または、精製リグニン50mgを秤量した。試料、2M 水酸化ナトリウム水溶液7ml、ニトロベンゼン0.4mlを20mlのバイアルに入れ、900rpmで撹拌しながら170℃で2.5時間加熱した。反応終了後冷却し、10mlのジエチルエーテルで3回抽出し、ニトロベンゼン還元物と余分なニトロベンゼンを除去した。残った水層側に濃塩酸を加えてpH1に調整し、さらに10mlのジエチルエーテルで3回抽出した。このジエチルエーテル抽出液を減圧下で留去し、酸化混合物を得た。この混合物をジクロロメタン20mLでメスアップした。うち2mlをミリポアHVHP膜(日本ミリポア株式会社製、孔径0.45μm)でろ過し、ガスクロマトグラフィ(GC)に供した。 ガスクロマトグラフィの条件は、AgilentJ&W GCカラム DB−5(アジレント・テクノロジー株式会社製)を装着したGC装置(アジレント・テクノロジー株式会社製)を用いた。試料量は1.0μL、ヘリウム流速は10ml/分、抽入口温度200℃、スプリット比10:1とした。温度条件は、60℃で1分間保持した後、60〜250℃まで5℃/分で昇温し、250℃で10分保持した。定量は、バニリン、シリンガアルデヒド、パラヒドロキシベンズアルデヒドの試薬を用い、濃度に対するピーク面積で検量線を作成し、サンプル中の各アルデヒド収量を求めた。 3つのアルデヒド量を合算し、アルデヒド収量とした。仕込み試料中のリグニン質量でアルデヒド収量を割ることで、アルデヒド収率(%)を算出し、リグニン変性度の指標とした。 アルデヒド収率が高いほど、低変性なリグニン分解物であることを示している。(10)リグニン分解物の溶媒溶解性の評価 得られたリグニン分解物1mgをバイアルに採取し、溶媒を1ml添加し、撹拌してリグニンの溶媒溶解性を目視で評価した。溶媒としてジメチルスルホキシド(DMSO)、又はジメチルホルムアミド(DMF)を用いた。実施例1(前処理) リグノセルロース原料として、バガス(サトウキビの搾りかす、水分量7.0%)を減圧乾燥機(アドバンテック東洋株式会社製、商品名「VO−320」)の中に入れ、窒素流通下の条件で2時間減圧乾燥し、水分量2.0%、ホロセルロース含有量71.3質量%、リグニン含有量22.8%の乾燥バガスを得た。 得られた乾燥バガス100gを、バッチ式振動ミル(中央化工機株式会社製、商品名「MB−1」:容器全容積3.5L、ロッドとして、φ30mm、長さ218mm、断面形状が円形のSUS304製ロッド、ロッド充填率57%)に投入し、10時間粉砕処理して粉砕バガスを得た(セルロースI型結晶化度0%、平均粒径68.0μm)。〔工程(1)〕 粉砕バガス100gを2.0Lの100mM酢酸緩衝液(pH5.0)に投入し、ノボザイム社製のセルラーゼ・ヘミセルラーゼ製剤(Cellic CTec 2)を20ml添加し、50℃に保ちながら600rpmで撹拌し酵素糖化を行った。24時間後に反応を終了させ、遠心分離により上清と糖化残渣に分離した。糖化残渣は洗浄・遠心分離を繰り返し行い、凍結乾燥させた。上述の方法により糖化残渣のリグニン含有量を測定した。〔工程(2)〕 糖化残渣(絶乾質量250mg)を反応容器(容量5ml)に取り、アセトン/水(50/50,質量比)の混合溶媒を4.8g加えて密閉した後、160℃、1.6MPaで30分間、900rpmで撹拌しながらマイクロ波加熱装置Initiator 60(バイオタージ・ジャパン株式会社製)を用いてマイクロ波加熱を行い、加熱処理液を得た。〔工程(3)〕 工程(2)で得られた加熱処理液は、遠心分離により抽出液と残渣に分離され、残渣をアセトン、水、及びアセトン/水混合溶媒で抽出液が透明になるまで洗浄した。遠心分離及び洗浄により得られた抽出液を集め、抽出液に含まれる溶媒を減圧留去した。得られた固形分を再度水で洗浄し、水不溶分を室温で減圧乾燥してリグニン分解物94mgを得た。結果を表1及び2に示す。実施例2 工程(2)で、溶媒中に塩酸(濃度1.0M)を240μL添加し、工程(3)で集めた抽出液に1.0M 水酸化ナトリウムを240μL添加して中和した以外は、実施例1と同様の条件で行った。結果を表1及び2に示す。実施例3 以下の手順で前処理を行い、得られた粉砕バガスを工程(1)に供した以外は、実施例2と同様の条件で行った。結果を表1及び2に示す。(前処理) 実施例1と同様の手順により得た乾燥バガス100gと、粒径0.7mmの粒状の水酸化ナトリウム(東ソー株式会社製、商品名「トーソーパール」)4.4g(ホロセルロースを構成するAGU1モルに対し0.25モル相当量)とを、バッチ式振動ミルに投入し、2時間粉砕処理して粉砕バガス(セルロースI型結晶化度14%、平均粒径56.6μm)を得た。得られた粉砕バガス100g(塩基性化合物を除いた乾燥原料換算)を、1.0M 塩酸で中和した。比較例1 原料バガスに対して、NaOH/Na2S/Na2CO3=103.7/41.4/32.7(Na2O換算、質量比)、活性アルカリ添加率16.5%(対絶乾バガス; Na2O換算)、アントラキノン0.05%、固液比5L/kg−バガスとなるように混合し、170℃、90分加熱撹拌した。反応終了後、固液分離し、ろ液を塩酸で中和し沈殿した画分を固液分離し、クラフト蒸解リグニンを得た。結果を表1に示す。比較例2 実施例1と同様の手順により得た乾燥バガス100gを、バッチ式振動ミル(中央化工機株式会社製、商品名「MB−1」:容器全容積3.5L、ロッドとして、φ30mm、長さ218mm、断面形状が円形のSUS304製ロッド、ロッド充填率57%)に投入し、2時間粉砕処理して粉砕バガス(結晶化度0%、平均粒径55.4μm)を得た。次に工程(1)を行わず、工程(2)の原料として粉砕バガスを用いた以外は、実施例1と同様の条件で行った。結果を表1に示す。比較例3 工程(2)で、反応容器を常温(25℃)、常圧で30分撹拌した以外は、実施例1と同様の条件で行った。結果を表1に示す。実施例4〜6 工程(2)で、アセトン/水の混合比率を、それぞれ33/67、67/33及び90/10(質量比)とし、反応圧力は成り行きとした以外は、実施例1と同様の条件で行った。結果を表2に示す。実施例7 工程(2)で、アセトンの代わりにエタノールを用い、反応圧力は成り行きとした以外は、実施例1と同様の条件で行った。結果を表2に示す。実施例8 工程(2)で、アセトンの代わりにエタノールを用い、反応圧力は成り行きとした以外は、実施例5と同様の条件で行った。結果を表2に示す。実施例9〜12 工程(2)で、アセトンの代わりに、アセトニトリル(実施例9)、メチルエチルケトン(実施例10)、ジオキサン(実施例11)又はイソプロパノール(実施例12)を用い、反応圧力は成り行きとした以外は、実施例1と同様の条件で行った。結果を表2に示す。実施例13〜15 工程(2)で、溶媒中に、硫酸(濃度1.0M)60μL(実施例13)、塩酸(濃度1.0M)120μL(実施例14)、又はパラトルエンスルホン酸1水和物21mg(実施例15)を添加し、反応温度を140℃、反応圧力を1.0MPaとし、工程(3)で集めた抽出液を1.0M 水酸化ナトリウムで中和した以外は、実施例1と同様の条件で行った。結果を表2に示す。実施例16 工程(2)で、溶媒中にリノール酸を10mg添加した以外は、実施例1と同様の条件で行った。結果を表2に示す。実施例17〜19 工程(2)で、溶媒中に、塩化アルミニウム15mg(実施例17)、水酸化ナトリウム4mg(実施例18)又は水酸化ナトリウム25mg(実施例19)を添加して、反応温度を140℃、反応圧力を1.0MPaとし、工程(3)で集めた抽出液を1.0M 塩酸で中和した以外は、実施例1と同様の条件で行った。結果を表2に示す。比較例4 実施例1の工程(2)で用いたアセトン/水の混合溶媒を、アセトンに代え(〔有機溶媒/水〕(質量比):100/0)、反応圧力は成り行きとし、工程(3)で、アセトン、水で残渣を洗浄した以外は、実施例1と同様の条件で行った。結果を表2に示す。比較例5 実施例1の工程(2)で用いたアセトン/水の混合溶媒を、エタノールに代え(〔有機溶媒/水〕(質量比):100/0)、反応圧力は成り行きとし、工程(3)で、エタノール、水で残渣を洗浄した以外は、実施例1と同様の条件で行った。結果を表2に示す。比較例6 実施例1の工程(2)で用いたアセトン/水の混合溶媒を、水に代えて(〔有機溶媒/水〕(質量比):0/100)、反応圧力は成り行きとし、工程(3)で、アセトン、水で残渣を洗浄した以外は、実施例1と同様の条件で行った。結果を表2に示す。比較例7〜8 実施例1の工程(2)で用いたアセトンの代わりに、20℃の水に対する溶解度が90g/L未満の溶媒である、1,2−ジクロロエタン(比較例7)又は酢酸エチル(比較例8)を用い、反応圧力は成り行きとした以外は、実施例1と同様とした。結果を表2に示す。 表1から、本発明に属する実施例1〜3は、従来のクラフト蒸解法による比較例1、工程(1)を行わなかった比較例2、及び工程(2)で加熱処理をしなかった比較例3で得られたリグニン分解物と比べて、変性度が低いリグニン分解物を高収率で得られることが分かる。 表2から、本発明に属する実施例1〜19は、工程(2)で溶媒に水又は有機溶媒のみを用いた比較例4〜6、及び溶解度の低い有機溶媒を用いた比較例7〜8と比べて、リグニン分解物を高収率で得られることが分かる。 また、実施例1〜19で得られたリグニン分解物の溶媒溶解性評価の結果、実施例1〜17に関しては、リグニン分解物が溶媒に均一に溶解することを確認した。実施例18〜19に関しては、一部不溶分が存在するものの、大部分のリグニン分解物が溶媒に溶解することを確認した。実施例20 工程(2)で、溶媒中にラジカル捕捉剤としてヒドロキノンを20mol%(基質中のリグニン含有量を構成モノマー分子量182で割り、求めたリグニンモル数に対する添加量、以下同じ)添加した以外は、実施例3と同様の条件で行った。結果を表3に示す。実施例21 工程(2)で、溶媒中にラジカル捕捉剤としてヒドロキノンを40mol%添加した以外は、実施例3と同様の条件で行った。結果を表3に示す。実施例22〜26 工程(2)で、溶媒中にラジカル捕捉剤としてベンゾキノン(実施例22)、メトキノン(実施例23)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(実施例24)、フェノール(実施例25)、アスコルビン酸(実施例26)をそれぞれ20mol%添加した以外は、実施例3と同様の条件で行った。結果を表3に示す。 表3から、実施例20〜26は、工程(2)でラジカル捕捉剤を用いることにより、ラジカル捕捉剤を用いない実施例3と比べて、リグニン分解物がより高収率で得られることが分かる。実施例27 以下の手順で前処理と工程(1)を行い、得られた糖化残渣を工程(2)に供した以外は、実施例2と同様の条件で行った。結果を表4に示す。(前処理) リグノセルロース原料として、バガスを、一軸粉砕機(近畿工業株式会社製、型式「SSC−12040」)に投入して粉砕し、粉砕バガスを得た。これをふるい(目の開き1.18mm)にかけて、パスした画分を以下の水熱処理に用いた。 前記粉砕バガス(絶乾質量1000mg)を反応容器(容量20ml)に取り、水を加えて水分量19gとした後に密閉し、反応温度140℃、反応圧力0.5MPa、反応時間2分、900rpmで撹拌しながらマイクロ波加熱装置Initiator 60(バイオタージ・ジャパン株式会社製)を用いてマイクロ波加熱(水熱処理)を行い、水熱処理液を得た。〔工程(1)〕 上記水熱処理液を50℃まで冷却後、その反応容器内に、1.0M酢酸緩衝液(pH5.0)を2.25ml投入し、セルラーゼ・ヘミセルラーゼ製剤Cellic CTec 2(ノボザイム社製)を270μL添加し、50℃に保ちながら150rpmで撹拌し酵素糖化を行った。48時間後に反応を終了させ、遠心分離により上清と糖化残渣に分離した。糖化残渣は洗浄・遠心分離を繰り返し行い、凍結乾燥させた。上述の方法により糖化残渣のリグニン含有量を測定した。実施例28 前処理で、水熱処理時の反応温度を180℃、反応圧力1.7MPaとした以外は、実施例27と同様の条件で行った。結果を表4に示す。実施例29 前処理で、水熱処理時の反応時間を20分とした以外は、実施例28と同様の条件で行った。結果を表4に示す。実施例30 前処理で、水熱処理時の溶媒中に、塩酸(濃度1.0M)53μLを添加し、反応温度180℃、反応圧力1.7MPa、反応時間2分とし、水熱処理を行った。工程1で冷却後に、1.0M水酸化ナトリウムで中和してから、1.0M酢酸緩衝液とセルラーゼ・ヘミセルラーゼ製剤を添加した以外は、実施例28と同様の条件で行った。結果を表4に示す。 表4から、実施例27〜30は、前処理に水熱処理を行うことにより、水熱処理を行わない実施例3と比べて、リグニン分解物がより高収率で得られることが分かる。 本発明の製造方法によれば、リグノセルロース原料から、低変性で溶媒溶解性に富むリグニン分解物を高収率で得ることができる。このリグニン分解物は、低分子芳香族化合物への変換が容易なため、例えば農業、香粧品用途、機能性樹脂、セメント分散剤、電池等の分野で好適に利用することができる。 下記工程(1)〜(3)を有する、リグニン分解物の製造方法。 工程(1):リグノセルロース原料を酵素により糖化処理して糖化残渣を得る工程 工程(2):工程(1)で得られた糖化残渣を、20℃の水に対する溶解度が90g/L以上の有機溶媒と水とを含む混合溶媒中で加熱処理して、リグニン分解物を含有する加熱処理液を得る工程 工程(3):工程(2)で得られた加熱処理液を固液分離して、不溶分を除去し、リグニン分解物を得る工程 前記混合溶媒における前記有機溶媒と水の比率〔有機溶媒/水〕(質量比)が、90/10〜10/90である、請求項1に記載のリグニン分解物の製造方法。 前記有機溶媒のSP値が、8〜23である、請求項1又は2に記載のリグニン分解物の製造方法。 前記有機溶媒が、アルコール類、ニトリル類、エーテル類及びケトン類からなる群から選ばれる1種又は2種以上である、請求項1〜3のいずれかに記載のリグニン分解物の製造方法。 前記混合溶媒が、さらに酸又は塩基を含む、請求項1〜4のいずれかに記載のリグニン分解物の製造方法。 前記混合溶媒が、さらにラジカル捕捉剤を含む、請求項1〜5のいずれかに記載のリグニン分解物の製造方法。 前記ラジカル捕捉剤が、芳香族系ラジカル捕捉剤、アミン系ラジカル捕捉剤、安定化フリーラジカル系ラジカル捕捉剤、有機酸系ラジカル捕捉剤、カテキン系ラジカル捕捉剤、及び分子状水素からなる群から選ばれる1種又は2種以上である、請求項6に記載のリグニン分解物の製造方法。 混合溶媒中における前記ラジカル捕捉剤の含有量が、糖化残渣中のリグニンのモル数に対して、5〜1000mol%である、請求項6又は7に記載のリグニン分解物の製造方法。 前記混合溶媒の使用量が、糖化残渣の固形分に対し、2〜40質量倍である、請求項1〜8のいずれかに記載のリグニン分解物の製造方法。 工程(2)の加熱処理温度が、40〜300℃である、請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法。 リグノセルロース原料を、酵素で糖化処理する前に、粉砕処理又は水熱処理によって前処理する、請求項1〜10のいずれかに記載のリグニン分解物の製造方法。 前記粉砕処理が、塩基性化合物の存在下で行われる、請求項11に記載のリグニン分解物の製造方法。 前記水熱処理時の反応温度が、100〜400℃である、請求項11に記載のリグニン分解物の製造方法。 酵素が、セロビオハイドロラーゼ、β−グルコシダーゼ、エンドグルカナーゼ及びヘミセルラーゼからなる群から選ばれる1種又は2種以上である、請求項1〜13のいずれかに記載のリグニン分解物の製造方法。 リグノセルロース原料が、針葉樹チップ、広葉樹チップ、バガス、稲わら、とうもろこし茎・葉、パーム空果房(EFB)、籾殻、パーム殻、ココナッツ殻、紙類及び藻類からなる群から選ばれる1種又は2種以上である、請求項1〜14のいずれかに記載のリグニン分解物の製造方法。 請求項1〜15のいずれかに記載の製造方法により得られたリグニン分解物。 アルカリニトロベンゼン酸化法により測定されるアルデヒド収率が10%以上である、請求項16に記載のリグニン分解物。 【課題】低変性で、かつ溶媒溶解性を有する、汎用性の高い新規なリグニン分解物を、高収率で製造することができるリグニン分解物の製造方法を提供する。【解決手段】[1]下記工程(1)〜(3)を有する、リグニン分解物の製造方法、及び[2]前記[1]の方法により得られたリグニン分解物である。 工程(1):リグノセルロース原料を酵素により糖化処理して糖化残渣を得る工程 工程(2):工程(1)で得られた糖化残渣を、20℃の水に対する溶解度が90g/L以上の有機溶媒と水とを含む混合溶媒中で加熱処理して、リグニン分解物を含有する加熱処理液を得る工程 工程(3):工程(2)で得られた加熱処理液を固液分離して、不溶分を除去し、リグニン分解物を得る工程【選択図】なし


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る