生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_ヒト抗ATL細胞表層O−結合型糖鎖抗体および抗体フラグメント
出願番号:2012255690
年次:2014
IPC分類:C12N 15/09,C07K 16/28,C12N 15/02,C12N 1/15,C12N 1/19,C12N 1/21,C12N 5/10,A61K 39/395,A61P 31/14,A61P 35/00,A61P 31/12,G01N 33/574,C12P 21/08


特許情報キャッシュ

隅田 泰生 伊東 祐二 有馬 直道 若尾 雅広 JP 2014100116 公開特許公報(A) 20140605 2012255690 20121121 ヒト抗ATL細胞表層O−結合型糖鎖抗体および抗体フラグメント 株式会社スディックスバイオテック 307011381 国立大学法人 鹿児島大学 504258527 隅田 泰生 伊東 祐二 有馬 直道 若尾 雅広 C12N 15/09 20060101AFI20140509BHJP C07K 16/28 20060101ALI20140509BHJP C12N 15/02 20060101ALI20140509BHJP C12N 1/15 20060101ALI20140509BHJP C12N 1/19 20060101ALI20140509BHJP C12N 1/21 20060101ALI20140509BHJP C12N 5/10 20060101ALI20140509BHJP A61K 39/395 20060101ALI20140509BHJP A61P 31/14 20060101ALI20140509BHJP A61P 35/00 20060101ALI20140509BHJP A61P 31/12 20060101ALI20140509BHJP G01N 33/574 20060101ALI20140509BHJP C12P 21/08 20060101ALN20140509BHJP JPC12N15/00 AC07K16/28C12N15/00 CC12N1/15C12N1/19C12N1/21C12N5/00 101A61K39/395 SA61K39/395 TA61P31/14A61P35/00A61P31/12G01N33/574 BC12P21/08 8 9 OL 17 4B024 4B064 4B065 4C085 4H045 4B024AA01 4B024AA12 4B024AA14 4B024BA46 4B024CA04 4B024DA06 4B024EA03 4B024GA11 4B024HA15 4B064AG27 4B064CA19 4B064DA01 4B064DA05 4B064DA14 4B064DA15 4B065AA26X 4B065AA94Y 4B065AA98X 4B065AB01 4B065AC14 4B065BA02 4B065CA25 4B065CA44 4B065CA46 4C085AA14 4C085BB36 4C085BB50 4C085EE01 4H045AA11 4H045AA20 4H045AA30 4H045BA10 4H045CA40 4H045DA76 4H045EA28 4H045EA29 4H045EA51 4H045EA53 4H045FA74 本発明は、成人T細胞白血病(ATL)細胞表層に特異的に発現している糖鎖を標的としたヒト抗体および該抗体フラグメントに関する。 ヒトレトロウイルスであるhuman T−lymphotropic virus type 1(HTLV−1)が原因となって発症する成人T細胞白血病(ATL)は、血液癌の1つである(非特許文献1)。HTLV−1の感染者は熱帯・亜熱帯地域を中心に分布している。ATLは一旦発症すると非常に予後の悪い白血病で、決定的な治療法は確立されていない。強力な、副作用も強い化学療法が試みられているが、治療開始後の50%、生存率は1年を少し超えた程度で、満足な結果にはほど遠い。また、骨髄移植や造血幹細胞移植も試みられているが、一部の症例にしか効果が期待できず、有効なワクチンも存在しない。海外では抗体医療の有効性が示唆されているが、抗体の標的分子について決定的なものはない。わが国においては、特に鹿児島などの南九州を中心として、約100万人ものHTLV−1感染者が存在し、毎年1000人以上のATL患者が死亡している。対策の1つとして、妊婦を対象とした無料の抗体検査が平成22年度から始められた。HTLV−1は、多くは母乳などの母子感染によって伝播される。ATLは、通常、長期の潜伏期間を経て発症するが、HTLV−1感染者(キャリア)のすべてが発症するわけではなく、その発症率は男性で7% 女性で2% 程度である。また、同じウイルスが原因となる神経変性疾患であるHAM(HTLV−1 Associated Myelopathy)を発症することもある。これらを一旦発症すると、その予後は悪く、現在有効な治療法も確立されていない(非特許文献2)。HTLV−1感染細胞に結合するモノクローナル抗体についての報告がなされているが(特許文献1)、HTLV−1感染細胞の糖鎖を標的として特異的に結合する抗体は報告されていない。 抗体医薬は、多くの疾患に対して有効な医薬品として認められつつある。抗体医薬は、生物由来の分子を医薬品とする生物医薬品であるため、毒性などの大きな副作用は少なく、抗体自身が免疫系のなかで異物の特異的な認識にかかわる最も重要な分子の一つであることから、それをもとに作られた抗体医薬も最も高度に分子認識を行う分子標的医薬の一つである。特に癌に対しては、すでに、B細胞リンパ腫に対する抗CD20抗体(リツキシマブ)や、乳癌に対する抗HER2抗体(ハーセプチン)などが先行して治療に用いられており、有効な治療効果が得られている。この治療効果は、癌に特異的な抗原(癌マーカー)に対する抗体を投与することで、抗体が結合集積した癌細胞に対し、NK(ナチュラルキラー)細胞などによる特異的な免疫誘導、すなわち抗体依存的細胞障害(Antibody−Dependent Cell−mediated Cytotoxicity;ADCC)や補体依存的細胞障害(Complement−Dependent Cytotoxicity;CDC)が起こり、癌細胞をアポトーシスに導くことが主要なメカニズムと考えられている(非特許文献3、4)。 現在、数多くの抗体医薬品が開発されているが、それらの抗体を作製する手法としては、大きく三つあげられる。一つは、従来のマウスハイブリドーマ法を用いてマウスモノクローナル抗体を作成しこれを抗体工学によってヒト化する方法である。しかし、ヒト化抗体は非ヒト由来の配列を一部含むため、反復投与や長期投与により、投与するヒト化抗体の活性を阻害するような抗体が作られ、その効果を著しく減弱するだけでなく、重篤な副作用を招く可能性がある。また、ヒト化により活性が低下することも多く、構築には多大な労力とコストを要する(非特許文献5)。 その他の抗体作製方法として、ヒト染色体の一部を組み込んだいわゆるトランスクロモマウスを用いたハイブリドーマ技術による方法と抗体ファージライブラリー法がある(非特許文献6)。これらの2つは直接ヒト抗体を獲得できるため、その利用が加速されると予想される。 抗体分子の型で分類すると2種類ある。その1つの完全分子型抗体については、長年の研究により抗体医薬としての実績は最も多い。半減期が数週間以上と長いことも長所の一つと考えられている(非特許文献7)。 もう1つの低分子化抗体については、タンパク質工学的手法による分子改変や修飾が容易であるという特徴を有する(非特許文献8)。一般的に、低分子化抗体そのものは血中半減期が非常に短いものの、ポリエチレングリコール(PEG)による修飾や、アルブミンとの融合、或いはアルブミンまたはIgG結合配列との融合等により、血中半減期を延長させることが可能であることが知られている(非特許文献9)。 また、完全分子型抗体はFc領域を介してADCC活性やCDC活性を発揮するが、それらの活性は標的細胞に対しては有効に働き得るが、標的細胞以外の細胞に抗体が作用してしまう場合には、有害な副反応を引き起こす可能性が懸念される。それに対して、Fc領域を有しない低分子化抗体であれば、可変領域のみの作用を想定すればよいため、ADCC活性やCDC活性等による副反応の可能性を否定できる。 また、低分子化抗体については、分子サイズの小ささから、生産性が高い点や組織浸透性に優れている点など、用途によっては完全分子型抗体よりも医薬品としての有用性が高いとも考えられている。 我々はこのような背景に立脚して研究を開始し、ATLに対し、「糖鎖」という新たな分子に標的を定め、「シュガーチップ」や「ファージ・ディスプレイ法」など、最新のナノテクノロジーを駆使してATLの抗体療法や早期発症診断に向けたアプローチを行ってきた。そして、以下の5つを明らかにした。即ち、(i)ライン化したATL細胞を直接抗原としたファージ・ディスプレイ法では、親和性の低い「糖鎖」に対する一本鎖抗体(scFv)を得ることは困難である(非特許文献10)。(ii)ATL細胞に発現量が多い蛋白質を標的としたscFvは健常人のT細胞にも細胞障害活性をもつ(特許文献1)。(iii)ライン化したATL細胞と非ATLのT細胞間では、発現しているN−およびO−型糖鎖にはそれぞれ違いがある(非特許文献11)。(iv)新しい蛍光性のリンカー化合物と光ファイバーの先端をシュガーチップ化した局在プラズモン共鳴(LPR)測定システムを開発し、細胞由来の微量の「糖鎖」を固定化してスクリーニングできるシステムを確立した(特許文献2、3)。(v)ライン化ATL細胞由来N−型糖鎖を固定化したシステムと合成ファージライブラリーを用いて、ライン化したATL細胞に特異性の高いscFvを3クローン得、そのうちの1つは細胞障害活性も有し、ATLの抗体療法に使用できる可能性を有した(非特許文献12)。国際公開第2009−066655号パンフレット特許第4802309号公報特開2009−256261号公報Yoshida,M.,et al.,Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:2534−2537(1984).Ohshima, K. et al., Cancer Science 98:772−778(2007).Suzuki, E., et al., Clinical Cancer Research, 13:1875−1882(2007).Teeling, J. L., et al., J. Immunol., 177:362−371(2006).Kostelny,S.A.et al.,Int.J.Cancer 93:556−565(2001).Nagy,Z.A.et al., Nature Medicine 8: 801−807(2002).Zalevsky,J.et al.,Nature Biotechnol. 28:157−159(2010).Holliger, P., Hudson, P. J., Nature Biotechnol. 23:1126−1136(2005).Chapman A. P. et al., Nature Biotechnol. 17:780−783 (1999)Muraoka S,et al., J. Biochem.145:799−810 (2009)HTLV−1関連疾患に対する発症予防と治療法確立に関する研究:文部科学省特別教育研究経費:研究推進(大学間連携推進経費、平成20−22年度):研究報告書第29回日本糖質学会年会要旨集、平成21年9月、高山、b2−11、p47 本発明は、ATL細胞株の細胞表層の糖鎖に対して特異的な反応性を有し、かつ安全性と検査診断及び治療効果を兼ね備えたヒト抗体及び該抗体フラグメントを提供するものである。 本発明では以上の知見にもとづき、ATLの新規検査診断法および新しい癌治療法確立のための抗体医薬の創製を目指し、ATL患者由来の細胞株であるS1Tに対する特異的なヒト抗体を、あらたに構築した一本鎖Fv(scFv)ヒト抗体ファージライブラリーからのスクリーニングによって単離することに成功した。 本発明は、医学上または産業上有用な方法・物質として下記1)〜4)の発明を含むものである。1)添付図8に示した遺伝子の塩基配列を有するモノクローナルファージ2)添付図9に示したアミノ酸配列を持つポリペプチドからなるH鎖およびL鎖の相補性決定領域(CDR)を含むヒト抗ATL細胞表層O−結合型糖鎖抗体または該抗体フラグメント3)添付図9に示したアミノ酸配列において、1またはそれ以上のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ATL細胞表層O−結合型糖鎖を認識するポリペプチド。4)添付図9に記載のポリペプチドが、アミノ酸の置換、欠失、挿入、及び/または付加される前のアミノ酸配列と約90%、より好ましくは約95%、最も好ましくは約97%、約98%または約99%以上のアミノ酸配列同一性を有する、上記1)に記載のヒト抗ATL細胞表層O−結合型糖鎖抗体または該抗体フラグメント。 本発明のヒトモノクローナル一本鎖抗体及び該抗体フラグメントは、ATLという腫瘍細胞に高発現している細胞表面分子であるO−結合型糖鎖を標的とし、ATL細胞への特異的結合作用を有する。 抗体医薬は、その標的化メカニズム、作用機序が明確であり、医薬品開発の実用化へのプロセスが比較的容易なため、実用化の可能性は極めて高い。本発明の抗体が認識するO−結合型糖鎖は、ATLの優れたマーカーである可能性は高く、比較的容易に治療法の確立を達成できる可能性があり、産業上の有用性は十分に大きいと言える。加えて、自己免疫疾患や移植片拒絶反応など、免疫系の異常が引き起こす免疫疾患や、各種感染症に対しても有効な治療薬となる可能性が考えられる。S1T細胞表層のO−結合型糖鎖リガンド複合体のHPLC分析を示す図ファイバー型シュガーチップを用いたファージライブラリーのバイオパニングの流れを示す図。LPRによるscFv蛋白質を発現しているファージの相互作用解析の結果を示す図。scFv蛋白質の発現と抽出の流れを示す図。FACS解析のプロトコールを示す図。scFv抗体(S1TSCFR3−1)のHTLV−1感染ATL株(oh13T)の細胞に対する結合特性を比較したFACSの結果を示す図。PC(陽性コントロール)は非特許文献10のS1TA3抗体。scFv抗体(S1TSCFR3−1)のHTLV−1非感染の非ATL株(CEM)の細胞に対する結合特性を比較したFACSの結果を示す図。PC(陽性コントロール)は非特許文献10のS1TA3抗体。S1TSCFR3−1をコードする遺伝子の塩基配列。S1TSCFR3−1をコードする遺伝子の塩基配列から推定したアミノ酸配列。 以下に本発明について詳述する。scFvディスプレイファージライブラリーは、以下のようにして作製することができる。複数の健常者から採取した末梢血Bリンパ球より、RT−PCR法にて免疫グロブリン重(H)鎖、軽(L)鎖cDNAを合成する。次に各種プライマーを組み合わせて、H鎖可変領域(VH)とL鎖可変領域(VL)を増幅させ、両者をlinker DNAで結合させることにより、健常者リンパ球由来のVHとVLのランダムな組み合わせによるscFv遺伝子のライブラリーが作製される。このscFv遺伝子をファージミドベクターpCANTAB5Eに組込み、約108クローンからなる健常者由来scFvディスプレイファージライブラリーを構築することができる。 抗体ファージライブラリーを用いて特異的な抗体を単離する手法をパンニングと呼んでいるが、これにはさまざまな方法が報告されている。最も一般的なものは、標的とする抗原が明らかである場合、抗原を組み換えタンパクなどによって調製し、それをプラスチックプレートなどに固定化し、抗体ファージライブラリーを反応させ特異的に結合する抗体ファージを濃縮するという方法がとられる。しかしながら今回のように、標的とするO−結合型糖鎖抗原が明らかではない状態で、その糖鎖への特異的な抗体ファージを単離するためには、細胞表層の糖鎖を抽出、分画して、チップへ固定化し、そのチップを用いてパンニングを行う方法が有効である。 チップへの糖鎖の固定化については、例えば、標的細胞であるS1T細胞を界面活性剤であるTriton X−114で処理して膜画分を抽出する。その画分をトリプシンで処理して蛋白質を部分的に分解させたのち、糖タンパク質からN−結合型糖鎖を切り出す酵素であるEndo−Fで処理する。処理した残渣に、無水ヒドラジンを加えて、O−結合型糖鎖を蛋白質から切り出す。この溶液をBlotGlyco法の樹脂(住友ベークライト社製)で処理して、糖鎖画分を得る。さらに、金との結合性を有しかつ蛍光性のリンカー化合物を糖鎖の還元末端に反応させる。そして、リンカー化合物が固定化された糖鎖(以下、糖鎖リガンド複合体画分と称する)を逆相クロマトグラフィーを行って分画する。その分画した糖鎖リガンド複合体を、局在プラズモン共鳴測定装置のセンサーチップの金ナノ粒子で修飾した先端部位と反応させ、S1T細胞のO−結合型糖鎖が固定化されたチップを製造する。 チップを抗体ファージライブラリーの溶液に浸し、室温で1時間反応させる。チップをファージライブラリー溶液から離し、リン酸緩衝液で3回洗浄した後、100mMのトリエチルアミン溶液に室温5分間浸漬してチップ上の固定化されたO−結合型糖鎖に結合しているファージを溶出し、直ちにその溶液を氷冷下に酢酸で中和する。次いで、大腸菌(TG1)に感染させる。ヘルパーファージを用いて抗体ファージをレスキューし、特異クローンを濃縮することができる。 得られた抗体ファージについては、まず上記のO−結合型糖鎖が固定化されたチップとLPRを用いて結合活性を調べるとよい。 糖鎖への結合が確認されれば、その抗体ファージを大腸菌に感染後クローン化し、各ファージクローンとS1T細胞との結合活性をフローサイトメータを用いて解析するとよい。その結果、S1T細胞に対する特異的反応性が認められれば、それらのクローンについて、DNAシーケンス解析を行うことにより、DNA配列から翻訳される抗体のアミノ酸配列を同定することができる。 このようにして得られたクローンのscFvを調製し、種々のATL細胞や非ATL細胞との反応性を確認するとよい。scFvの発現方法としては、例えば大腸菌で発現させることができ、常用される有用なプロモーター、抗体分泌のためのシグナル配列等を機能的に結合させて発現させることができる。プロモーターとしては、lacZプロモーター、araBプロモーター等を用いることができる。scFvの分泌のためのシグナル配列としては、大腸菌のペリプラズムに発現させる場合、pelBシグナル配列(J.Bacterio R 1987,169:4379−4383)を用いるとよい。培養上清中に分泌させるにはM13ファージのg3タンパク質のシグナル配列を用いることもできる。 細胞内外に発現されたscFvは、宿主から分離し均一にまで精製することができる。scFvのC末端にHis−tag配列が付加されている場合には、NTAカラムを用いたアフィニティークロマトグラフィーによって、容易に短時間で精製することができる。その他、通常のタンパク質で使用されている分離、精製方法を組み合わせて精製することも可能である。例えば、限外濾過、塩析、ゲル濾過/イオン交換/疎水クロマト等のカラムクロマトグラフィーを組み合わせて抗体を分離・精製することができる。精製した標品については、HPLCゲルろ過分析等で分子形態を分析することができる。 得られたscFv精製品を用いて、種々のATL細胞や非ATL細胞との結合性をフローサイトメーター解析により確認することができる。 得られたscFv抗体の特異性については、種々のHTLV−1感染株のセルライン(例えばHTLV−1感染TリンフォーマであるS1T,MT−4,M8166及びMT−2)と非感染株のセルライン(例えば非HTLV−1感染リンフォーマであるMOLT−4,CEM,Jurkat及びDaugi)を用いて解析することが望ましい。HTLV−1感染株に対して非感染株より強く結合する傾向が見られれば、当該scFv抗体がHTLV−1感染T細胞リンフォーマに対する有効な標的抗体である可能性が示唆される。 上記の方法により、ATL細胞由来の細胞株であるS1T細胞表層糖鎖に対する特異的なヒト抗体をヒトscFv抗体ファージライブラリーからスクリーニングした結果、特異クローンの取得に成功した。この抗体は、S1T細胞に特異的に結合するだけでなく、他のATL関連細胞株にも結合するが、ATL非関連の細胞株にはほとんど結合しなかった。このことから、この抗体の認識する抗原は、ATLの優れた癌マーカーになる可能性が大きい。さらに得られた抗体を完全抗体(IgG)へ誘導することは、技術的に確立されているため、ATL癌細胞の治療薬としての利用可能性が期待される。 上記結合活性を有するscFv(クローンS1TSCFR−3)をコードする塩基配列およびそのアミノ酸配列は、それぞれ図8に示す配列と図9に示す配列のとおりである。 本発明の抗体およびその抗体フラグメントは、上記配列番号に示される配列に限定されるものではなく、それらの一部が改変された変異ポリペプチドであってもよい。すなわち、図9に示す配列に記載されたアミノ酸配列において、1またはそれ以上のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつATL細胞表層のO−結合型糖鎖を認識する抗体のH鎖またはL鎖の相補性決定領域、H鎖またはL鎖の可変領域となるポリペプチドも含まれる。置換、欠失、挿入、および/または付加される1またはそれ以上のアミノ酸としては、例えば1〜12個、好ましくは1〜6個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸が挙げられる。 アミノ酸配列に変異を導入して機能的に同等なタンパク質を取得する方法は、当業者に公知である。例えば、変異の導入方法としては部位特異的変異誘発法(Current Protocols in Molecular Biology edt. 1987,5:Section8,18)や、抗体の可変領域にランダムに変異を導入する方法(PCR methods and Applications, 1992,2:28−33)、その他、抗体の親和性を試験管内で向上させる方法(Nature medicine, 1996, 2:100−102)が挙げられる。これらの方法によって取得した抗体から、本発明の特性を有する抗ATL細胞O−結合型糖鎖抗体を選択することが可能である。 このように、「変異」としては、主として、公知の変異タンパク質作製法により人為的に導入された変異を意味するが、天然(例えばヒト)に存在する同様の変異ポリペプチドを単離精製したものであってもよい。 別の好ましい実施形態においては、本発明の抗ATL細胞O−結合型糖鎖抗体は、該抗体のVH鎖が、図8に示す配列に記載のアミノ酸配列と90%以上のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。 別の好ましい実施形態においては、本発明の抗ATL細胞O−結合型糖鎖抗体は、該抗体のVL鎖が、配列番号6に記載のアミノ酸配列と90%以上のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。 さらに、別の好ましい実施形態においては、本発明の抗体は、(a)該抗体のVH鎖が、図8に示す配列に記載のアミノ酸配列と90%以上のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつ、(b)該抗体のVL鎖が、配列番号6に記載のアミノ酸配列と90%以上のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。 アミノ酸配列同一性の程度は、例えば約90%、より好ましくは約95%、最も好ましくは約97%、約98%または約99%以上であり得る。アミノ酸配列同一性は自体公知の方法により決定できる。例えば、アミノ酸配列同一性(%)は、当該分野で慣用のプログラム(例えば、BLAST,FASTA等)を初期設定で用いて決定することができる。 本発明で開示される一本鎖抗体は、ファージ抗体法を用いてscFvの形で得られたものであり、その評価もscFvの分子形態で行ったが、原則としてその適用はそれらの分子形態に限定されることはない。例えば、開示したVH鎖及び/またはVL鎖をヒト免疫グロブリンの定常領域と連結した完全分子型、またヒト免疫グロブリンの定常領域の一部と組み合わせたFab,Fab‘,またはF(ab’)2、さらにscFvをヒト免疫グロブリンのL鎖の定常領域と結合させた一本鎖抗体(scAb)やscFvを2個連結して一本鎖化した分子である(scFv)2などの他の抗体フラグメントもその適用範囲に含まれる。 また、本発明の抗体またはそのフラグメントは、当該抗体またはフラグメントにペプチド或いは他のタンパク質と融合させた融合抗体であってもよい。 また、これらの抗体及び抗体フラグメントタンパク質分子に、ポリエチレングリコールなどの高分子修飾剤を結合させた修飾タンパク質分子も同様に本発明に包含される。 本発明の抗体または抗体フラグメントは、図8に示す配列及び2に示した本発明により得られた各クローンのVH鎖及びVL鎖をコードする遺伝子配列情報をもとに、適当な宿主(例えば、細菌、酵母)に導入して、本発明の抗体またはそのフラグメントを発現させることができる。 本発明の抗体、その抗体フラグメント、またはそれらの誘導体は、ATLの検出試薬及び診断薬として利用可能である。さらに、本発明の抗体、その抗体フラグメント、またはそれらの誘導体は、ATLをはじめ各種癌の治療薬として利用可能である。 以下、本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。《実施例1:健常者からのファージライブラリーの構築》J. D. Marks ら(J. Mol. Biol., 222: 581−597, 1991)により報告されている方法を参考にし、健常者20名由来末梢血由来リンパ球を出発材料とし、ファージライブラリーを構築した。構築したVH(γ)−Vκ、VH(γ)−Vλの各サブライブラリーはともに1.0×108クローンの多様性を有すると評価された。《実施例2:S1T細胞表層のO−結合型糖鎖の抽出》S1T細胞7.6x108個をエッペンチューブに移した後、遠心(800rpm,5分間)上清を除去した後、HEPESバッファー(1ml)を加え、超音波で破砕(5分間)した。次に調製した溶液を超遠心(40000rpm、60分間)し上清を回収後 、TX−114溶液を50μl加え、テルモシリンジ(1ml)に針(22G)を付け細胞が破砕するまでピストンさせた。細胞破砕を、トリパンブルー染色によって確認した。確認後、超遠心(40000rpm、60分間)して上清を回収した。その後、上清を遠心濃縮し、凍結乾燥し、S1T細胞の膜画分を抽出した。まず、膜画分からN−型糖鎖を以下の方法で切り出した。膜画分を、1M重炭酸アンモニウム水溶液(10μl)、120mMジチオスレイトール(DTT、10μl)、純水(100μl)に溶解させ、60℃で30分間静置した。その後、123mMヨードアセトアミド(IAA、20μl)を加え、遮光下室温で1時間静置した。続いてトリプシン(20μl)を加え37℃で1時間静置した。90℃で5分間加温しトリプシンを失活させ、PNGase(5μl)を加えて12時間撹拌した後、90℃で5分間加温し、遠心濃縮した。残渣を20μlの水に溶解し、BlotGlycoビーズに加え、糖鎖を捕捉した。その後、2% 酢酸/アセトニトリル180μlを添加し、80℃で1時間加熱した。続いて、2Mグアニジン溶液を加え遠心し、O型糖鎖を含む糖タンパク質を分離した。このO型糖鎖を含む糖タンパク質をヒドラジン分解し、得られたO−型糖鎖をBlot Glycoビーズに捕捉し、2%酢酸/アセトニトリル180μlを添加し、80℃で1時間加熱した。続いて、2Mグアニジン溶液を、1% トリエチルアミン/メタノール200μl、メタノール200μlで洗浄し、10% 無水酢酸溶液100μlを加え30分間静置し、ビーズの残った官能機をアセチル基でキャッピングし、メタノール200μl、10mM塩酸200μl、純水200μlで再度洗浄し、O−結合型糖鎖を精製した。《実施例3:S1T細胞表層のO−結合型糖鎖のリガンド複合体化と分画》得られたO−型糖鎖を含んでいるカラムに水(20μl)加え、その後、2%酢酸/アセト二トリル溶液(180μl)に溶解させ、70℃で1分間加熱した。次にf−mono リンカー(特許文献3、10mg)を、30%酢酸/DMSO(100μl)で溶解させた溶液をカラムに加えた。その後、60℃で12時間静置した後、遠心して溶液を回収した。さらにBlotGlycoに付随してある過剰試薬除去カラムを使って過剰な試薬を取り除き、f−mono化O−型糖鎖を調製した。続いて、f−mono化糖鎖のHPLCによる分離を以下のように行った。HPLCのモニタリングは蛍光検出器(FP2020plus、JASCO社製)を用い、カラムにはSP−120−5−ODS BP 250mm×4.6(DAISO社製)を使用した。また、測定溶媒はメタノール/水=1:1とし、サンプルを10μlインジェクトした後、流速0.5ml/minでモニターし、3つの画分に分取し、遠心濃縮し凍結乾燥した。《実施例4:S1T細胞表層のO−結合型糖鎖を固定化したファイバー型シュガーチップ》 光ファイバー(内径約50μm)を8本束ねた8チャンネルファイバー端面をエタノールに浸し超音波洗浄した後、エタノール1.5ml、酢酸75μl、TED16.8μlを混合した溶液に10分間浸漬させ、120℃で30分間加熱することで、末端のアミノシリル化を行った。その後、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF、1.5ml)に3H−1,2,3−トリアゾロ−[4,5−b]ピリジン−3−オール(HoAt、3.96mg、24.2μmol)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド・モノハイドクロリド(EDC・HCl、5.56mg、24.2μmol)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIEA、11.4μl、24.2μmol)、チオクト酸(6.00mg、24.2μmol)を加えた溶液にファイバー端面を18時間浸漬させ、チオクト酸をアミノ基に縮合させた。エタノールで洗浄したのち、NaBH4で還元処理をして、ジスルフィド結合を切断し、末端にチオール基をもつファイバーを調製した。そのチオール基に対し金ナノ粒子(φ:〜40nm、田中金属工業社製)を固定化し、さらに10μMに調整した10μlのf−mono化糖鎖リガンド複合体溶液に浸漬させ、ファイバー型シュガーチップを作製した。8チャンネルのファイバーにはHPLCフラクション1〜3をそれぞれ2本ずつと、コントロールとしてGalβ1−3Glc−monoを2本ずつ固定化した。《実施例5:S1T細胞表層のO−結合型糖鎖を固定化したシュガーチップを用いたバイオパンニング》S1T細胞由来O−型糖鎖を固定化したファイバー型のシュガーチップを用いて、ファージライブラリーより糖鎖に特異的に結合するファージのパニングを行った。チップ端面をファージ溶液100μl(1.0×1011/ml)に20分間浸漬させ、LPRセンサーでモニタリングしながら、各画分の糖鎖に結合するファージをパニングした。次いで、PBS/T溶液100μlに5分間浸漬させ、非特異的に結合したファージを除去した。このPBS/Tによる洗浄を3回繰り返した。その後100mM TEA 50μlに浸漬させることで糖鎖に結合したファージを溶出させた。得られた溶出液を氷冷した後、1 M Tris−HCl 100μlを加え中和(pH 7.4)してファージ溶液を調製した。《実施例6:大腸菌TG−1株(サプレッサー変異株)を用いたファージの調製》 TG−1シングルコロニーを2TY液体培地中(5ml)37℃で一晩振とう培養し、オーバーナイトカルチャーを調製した。そのオーバーナイトカルチャー500μlにファージ溶液30μlを加え、37℃で1時間培養することで、大腸菌にファージを感染させた。その後、2TYAGアガロースプレートで、37℃一晩培養することでファージを感染させたTG−1シングルコロニーを得た。得られたシングルコロニーを2TYAG液体培地中37℃で一晩振とう培養させたのち、このオーバーナイトカルチャー(100μl)を2TYAG液体培地(1ml)に加え、OD600=0.5になるまで培養した。次いで、培養液にM13KO7ヘルパーファージ(20μl,moi=5)を重感染させた。遠心後(3000g,10分間)上清を除去し2TYAK(1ml)を加え培地を交換し、37℃で一晩振とう培養した。培養液を遠心(3000g,15分間,4℃)し、上清をPEG/NaCl溶液(300μl)に加えよく攪拌させた後、4 ℃で4時間静置した。遠心(10000g,20分間,4℃)後、上清を除去し、PBS溶液(300μl)に溶出させることでファージ溶液を調製した。 《実施例7: LPRによるS1T細胞由来糖鎖とのファージ結合特性解析》 S1T細胞由来糖鎖とのファージ結合活性解析は、LPRを用いて実験例5と同様の操作手順で行った。即ち、PBS/Tでシグナルの安定化を確認した後、ファージ溶液を加え糖鎖との結合挙動を観測した。その後、PBS/Tで置換し、解離挙動を観測した。その後、SDS溶液によりファイバーを洗浄し、再びPBS/Tに置換した。以上を一連の操作として測定を行った。《実施例8:PCRによるファージDNAの増幅とアガロース電気泳動による確認》 ファージcDNAをPCRにより増幅させ、アガロースゲル電気泳動により分析した。プライマー(つくばオリゴサービス社製)には以下の配列を用いた。forward primer (107) : CAA CGT GAA AAA ATT ATT ATT CGCreverse primer (108) : GTA AAT GAA TTT TCT GTA TGA GG《実施例9:ファージcDNAのシークエンス解析》 実験例8により得られたcDNAをGel/PCR DNA Isolation system(VIOGENE)により精製し、Big Dye Terminator v.3.1を用いて、以下に示した配列のプライマー(つくばオリゴサービス社製)をもちいたPCRにより、プラスミドDNAを増幅させた。primer (KSB−1) : ATG CAG CTG GCA CGA CAG GTTその後、エタノール沈殿により精製しシークエンス解析を行った。その結果、すべてのクローンが図8にしめす単一の配列を有していることがわかった。またその塩基配列から推定される抗体のアミノ酸配列を図9に示した。《実施例10:大腸菌非サプレッサー変異株HB2151を用いた可溶性タンパク質(scFv)の調製と精製》 HB2151 シングルコロニーを2TY液体培地中(5ml)37℃で一晩振とう培養し、オーバーナイトカルチャーを調製した。オーバーナイトカルチャー(0.5ml)を2TY液体培地(5ml)に加え、OD600=0.5になるまで培養した。次いで、培養液にファージ溶液(30μl)を加え、HB2151 へ感染させた後、SOBAG−Nプレートで37℃ 一晩培養し、ファージを感染させたHB2151シングルコロニーを得た。得られたシングルコロニーを2TYAG液体培地中(5ml)37℃で一晩振とう培養した。培養液(5ml)を2TYAG液体培地(50ml)に加え、1時間培養した。次いで、培養液を遠心(3000g、10min)後、上清をすて2TYAI 50mlを加え培地交換し、30℃で一晩振とう培養した。培養液を遠心(3000g、20min 4℃)し、沈殿物を回収した。次に、沈殿物に1×TES(2ml)を加えて懸濁し、氷冷下、5分間静置した。つぎに、1/5×TES(750μl)加え、氷冷、30分間静置した。その後、超音波処理(10秒間×10、氷冷)後、遠心(15000g,5分間,4℃)し、上清を回収した。回収した上清を、0.45μmフィルターに通し、可溶性タンパク質(scFv)を調製した。可溶性タンパク質はSDS−PAGE、CBB染色により可視化しタンパク質バンドと、抗ヒスチジンタグ抗体をもちいたウェスタンブロッティングにより確認した。その後、Ni−columnを用いてscFvの精製をした。即ち、アフィニティーカラムにはHis−Accept Batch 2ml(ナカライテスク社)を用い、パスツールに加え、カラムを作成した。まず、カラムを水(1ml) ×3回と−結合型緩衝液(50mM リン酸緩衝液,300mM NaCl,pH 8.0)1ml×3回洗浄した。次に、タンパク質(1ml)添加し、カラムに充填した。洗浄緩衝液(50mM リン酸緩衝液,300mM NaCl,20mM Imidazole,pH 8.0)1ml×5回で、余計なタンパク質を除去し、溶出緩衝液(50mM リン酸緩衝液,300mM NaCl,500 mM Imidazole,pH 8.0)1ml×3回で、scFvを溶出させた。scFvの存在は、SDS−PAGE、CBB染色により可視化しタンパク質バンドと、抗ヒスチジンタグ抗体をもちいたウェスタンブロッティングにより確認した。《実施例11:FACSによるscFv結合活性解析》 細胞を1×106/mlに調整し、遠心(1500rpm、 5min)上清を捨てた後、scFv溶液10μlを加え、細胞と30分間反応させた。PBS 1mlを加え、遠心後(1500rpm、5min)上清を捨てた。次いで1次抗体としてHis−tagと特異的に結合するAnti−His Antibody(GE Healthcare社製)2μlを加え、細胞と30分間反応させた。PBS 1mlを加え、遠心後(1500rpm、5min)上清を捨てた。続いて二次抗体であるAnti Mouse IgG−FITC(BECKMAN)2μlを加え、細胞と30分間反応させた。PBS 1mlを加え、遠心(1500rpm、5min)上清を捨てた後、FACSバッファー(PBS 0.05% NaN3と10%FBSを含む)1mlを加え、細胞を分散させた後、フローサイトメーター(BECKMAN)で測定した。得られたscFv抗体(S1TSCFR3−1)の結合を、種々のHTLV−1感染株と非感染株のセルラインで比較した結果の一部を図6と図7に示す。HTLV−1感染のT細胞株であるS1Tやoh13Tには強く結合した。これに対しCEM細胞などT細胞由来の非感染株に対しては、いずれもほとんど結合が見られなかった。これらのことは、本scFv抗体がHTLV−1感染T細胞癌細胞(ATL)に対する有効な特異抗体である可能性を示している。 以上の結果より、成人T細胞白血病(ATL)に高発現している細胞表面O−結合型糖鎖を標的としたヒト抗体である当該抗体及び抗体フラグメントについては、ATLの早期診断ならびに治療への利用可能性が大いに期待される。図8に示す遺伝子の塩基配列から生成され、図9に示すアミノ酸配列からのポリペプチドからなりH鎖の相補性決定領域(CDR)とL鎖の相補性決定領域(CDR)とを含むヒト抗ATL細胞表層O−結合型糖鎖抗体。請求項1に示すアミノ酸配列のポリペプチドが、アミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/または付加される前のアミノ酸配列と約90%、より好ましくは約95%、最も好ましくは約97%、約98%または約99%以上のアミノ酸配列同一性を有する、請求項1に記載のヒト抗ATL細胞表層O−結合型糖鎖抗体。請求項1に示す遺伝子の塩基配列から生成され、または請求項1に示すアミノ酸配列からのポリペプチドからなりH鎖の相補性決定領域(CDR)とL鎖の相補性決定領域(CDR)とを含むヒト抗ATL細胞表層O−結合型糖鎖抗体フラグメント。請求項1に示すアミノ酸配列が記載のポリペプチドが、アミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/または付加される前のアミノ酸配列と約90%、より好ましくは約95%、最も好ましくは約97%、約98%または約99%以上のアミノ酸配列同一性を有する、請求項1に記載のヒト抗ATL細胞表層O−結合型糖鎖抗体フラグメント。請求項1に記載の遺伝子を含む組換え発現ベクター。請求項1に記載の遺伝子が導入された形質転換体。請求項1から4のいずれかに記載の抗体または該抗体フラグメントを含む、ATLをはじめとした癌またはウイルス感染症の検出試薬または診断薬。請求項1から4のいずれかに記載の抗体または該抗体フラグメントを含む、ATLをはじめとした癌またはウイルス感染症の予防または治療剤。 【課題】成人T細胞白血病細胞表層の糖鎖に特異的に結合するヒト抗体のVHペプチドとVLペプチド、及びそれらのリンカーペプチドを有する一本鎖抗体S1TSCFR3−1を提供すること。【解決手段】成人T細胞白血病細胞から確立した培養細胞S1Tの細胞表層のO−結合型糖鎖を独自開発したリンカー化合物を用いて分画し、それらを固定化したファイバー型のシュガーチップを用いて、ヒトB細胞から誘導した抗体のVHペプチドとVLペプチドとそれらのリンカーペプチドをコードする遺伝子を組み込んだ108の多様性を持ったファージをスクリーニングし、選択したファージから一本鎖抗体S1TSCFR3−1を産生させた。【選択図】図9


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