タイトル: | 公開特許公報(A)_ビワ茶の抗腫瘍作用と肝機能改善作用 |
出願番号: | 2012252497 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | A61K 36/73,A61P 1/16,A61P 35/00,A61P 37/04,A23L 1/30 |
中野 隆之 藤井 信 侯 徳興 橋本 文雄 玉置 博祥 JP 2014101286 公開特許公報(A) 20140605 2012252497 20121116 ビワ茶の抗腫瘍作用と肝機能改善作用 農業生産法人 有限会社十津川農場 505243696 平木 祐輔 100091096 藤田 節 100118773 村林 望 100169579 江島 孝毅 100182992 中野 隆之 藤井 信 侯 徳興 橋本 文雄 玉置 博祥 A61K 36/73 20060101AFI20140509BHJP A61P 1/16 20060101ALI20140509BHJP A61P 35/00 20060101ALI20140509BHJP A61P 37/04 20060101ALI20140509BHJP A23L 1/30 20060101ALI20140509BHJP JPA61K35/78 HA61P1/16A61P35/00A61P37/04A23L1/30 B 7 8 OL 17 4B018 4C088 4B018LB01 4B018LB08 4B018LB10 4B018MD61 4B018ME14 4B018MF01 4C088AB51 4C088AC05 4C088BA09 4C088BA12 4C088CA14 4C088MA52 4C088NA14 4C088ZA75 4C088ZB09 4C088ZB26 本発明は、癌細胞に対する免疫賦活化作用及びその結果としての癌細胞増殖抑制作用を含む抗腫瘍作用並びに/又は肝機能改善作用を有する抽出物、飲食品及び/又は医薬並びにその製造方法に関する。より詳細には本発明は癌細胞に対する免疫賦活化作用及びその結果としての癌細胞増殖抑制作用を含む抗腫瘍作用並びに/又は肝機能改善作用を有するビワ茶抽出物及びその製造方法に関する。 ビワ葉は、ビワ茶の嗜好飲料に利用され、ビワ茶として親しまれているのみならず、古くから漢方に配合される薬として用いられている。 特許文献1には、ビワ葉を利用して風味のあるビワ茶を多量に製造する方法及び製造設備が開示されている。該方法ではトルマリン石焙煎によりねじめびわ茶を製造する。 一方、特許文献1の段落番号[0004]に「従来のビワ茶製造の材料となるビワの葉は、果実の収穫を目的とした果実栽培種が利用されているため、栄養分は果実に集まり、ビワの葉に栄養分が十分に行き渡らないため、薬用として利用しても本来の効果は得られないという欠点がある」という記載があるように、従来では、ビワ葉は薬用として十分に効果を発揮していなかった。 しかしながら近年、ビワ葉の有する機能性が明らかにされつつある。例えば、ビワ葉に含まれているポリフェノール成分のヒト口腔癌細胞に対する細胞傷害活性(非特許文献1)、ビワ葉に含まれるメガスチグマン配糖体の抗発癌プロモーション作用(非特許文献2)、ビワ葉の抗腫瘍活性作用(非特許文献3)及び抗酸化作用(非特許文献4)などが報告されている。 また、従来において、ビワには以下のような活性又は利用方法があることが開示されている。 特許文献2には、ビワ又はその抽出物がマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP-1)阻害活性を有することが開示されている。 特許文献3には、ビワの木の葉を焼いて炭にして粉末状食品素材とすることが開示されている。 特許文献4には、ビワの生葉を切断し、蒸気で蒸し、熱風を送りつつ揉み、乾燥させ、整形した後、再度乾燥させることにより香気と旨味とを増すように仕上げることを特徴とした漢方茶の製造方法が開示されている。 特許文献5には、ビワ葉又はビワ茶の抽出物又は精製物を有効成分として含有し、且つ抗高脂血症作用、高血圧抑制作用、癌細胞増殖抑制作用、癌細胞アポトーシス誘導作用、活性酸素種産生作用、高血糖降下作用及び抗酸化作用から成る群から選択される1以上の作用を有する飲食品又は医薬品が開示されている。 一方で、肝臓は生体内の代謝の中心器官であり、あらゆる物質の解毒、無毒化、水溶化など多くの化学反応の場であり、ヒトの健康維持の中心的器官である。肝機能を高く維持することにより健康な生活が可能である。 また、癌細胞の増殖抑制剤は、一般に、細胞毒性があり、副作用の発生が懸念され、製品を得るまでに多く製造工程を必要とする、あるいは抑制作用が充分でない、などの問題がある。こうした問題のない、効果的な癌細胞の増殖抑制剤が望まれている。特許第3452351号公報特開2005−008539号公報特開2004−154108号公報特開2004−105036号公報特許第4974116号(特願2007−524050)Ito, H.ら,「Chem. Pharm. Bull.」,2000年,第48巻,p.687-693Ito, H.ら,「J. Agric. Food Chem.」,2002年,第50巻,p.2400-2403吉田隆志ら,「Bio Industry」,2003年,第20巻,p.27-33Jung, H.ら,「Arch. Pharm. Res.」,1999年,第22巻,p.213-218 上述したように、従来ではビワ葉に含まれる種々の生物学的活性や活性化合物の存在が明らかにされたものの、ビワ葉及びビワ茶が肝機能改善作用を有することは知られていなかった。また、ビワ茶抽出物を疎水性物質を吸着する樹脂を用いたカラムクロマトグラフィーに供したときに得られる非吸着画分が癌細胞増殖抑制作用や癌に対する免疫賦活化作用を有することは知られていなかった。こうした作用が確認できれば、ビワ葉及び/又はビワ茶抽出物を肝疾患、肝臓病、癌等の疾患の予防又は治療に使用できると考えられる。 そこで、本発明は、上述した実情に鑑み、ビワ葉を用いた、癌細胞増殖抑制作用及び癌細胞に対する免疫賦活化作用を含む抗腫瘍作用並びに/又は肝機能改善作用を有する抽出物、飲食品又は医薬及びその製造方法を提供することを目的とする。 本発明者らは、食品成分により肝機能を高く維持できるか鋭意検討した結果、ビワ茶を熱水抽出に供して抽出物を取得し、該抽出物を減圧乾燥、及び凍結乾燥に供することにより得られたビワ茶抽出物の濃縮物又は乾燥粉末をモデルマウスに給餌することで、肝機能を改善できることを見出し、本発明を完成するに至った。 また、本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、ビワ茶を熱水抽出に供して抽出物を取得し、該抽出物を減圧乾燥、及び凍結乾燥に供することにより得られたビワ茶抽出物の濃縮物又は乾燥粉末を疎水性物質を吸着する樹脂を用いたカラムクロマトグラフィーに供したときに得られる非吸着画分をモデルマウスの移植癌細胞に作用させることで、癌細胞に対する免疫を賦活化し、その結果として癌細胞の増殖を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明は以下を包含する。[1] ねじめびわ茶を熱水抽出に供して抽出物を取得し、該抽出物を減圧乾燥、及び凍結乾燥に供することによりねじめびわ茶抽出物の濃縮物又は乾燥粉末を得る工程を含む、肝機能改善剤の製造方法。[2] [1]に記載の方法により得られた濃縮物又は乾燥粉末を有効成分として含有する肝機能改善剤。[3] 肝機能改善のための、[1]に記載の方法により得られた飲食品用分画物。[4] (a)ねじめびわ茶を熱水抽出に供して抽出物を取得し、該抽出物を減圧乾燥、及び凍結乾燥に供することによりねじめびわ茶抽出物の濃縮物又は乾燥粉末を得る工程、 (b)工程(a)のねじめびわ茶抽出物の濃縮物又は乾燥粉末を疎水性物質を吸着する樹脂を用いたカラムクロマトグラフィーに供し、溶離液として水を使用し、非吸着画分を得る工程、を含む、癌細胞に対する免疫賦活化剤の製造方法。[5] さらに、(c)前記工程(b)で得られた非吸着画分をゲルろ過クロマトグラフィーに供して多糖類又はオリゴ糖を含む分画物を得る工程を含む、[4]に記載の方法。[6] [4]又は[5]に記載の方法により得られた非吸着画分又はその分画物を有効成分として含有する、癌細胞に対する免疫賦活化剤。[7] 癌細胞に対する免疫賦活化のための、[4]又は[5]に記載の方法により得られた飲食品用画分又は分画物。 本発明に係るねじめビワ茶抽出物、飲食品又は医薬を用いることで肝機能を高く維持することができる。また、本発明に係るねじめびわ茶抽出物、飲食品又は医薬を用いて癌細胞に対する免疫を賦活化する及び/又は癌細胞の増殖を抑制することができる。血清中のAST(GOT)活性を測定した結果を示す。血清中のALT(GPT)活性を測定した結果を示す。肝臓中のTBARS濃度を測定した結果を示す。血清中のSOD活性を測定した結果を示す。HP-20カラムを用いてビワ茶抽出物を分画した結果を示す。ビワ茶画分の抗腫瘍作用を調べた結果を示す。ビワ茶H-1画分をSephadex G-25ゲルろ過した結果を示す。ゲルろ過した画分の抗腫瘍作用を比較した結果を示す。 以下、本発明を詳細に説明する。 本発明に係る抽出物、飲食品又は医薬は、ビワ葉又はビワ茶の抽出物又は精製物を有効成分として含有し、且つ癌細胞増殖抑制作用又は免疫賦活化作用を含む抗腫瘍作用及び/又は肝機能改善作用を有する。本発明に係る抽出物、精製物、飲食品又は医薬品をヒト等の動物に摂取又は投与することにより、肝疾患を予防又は治療することができる。また、本発明に係る抽出物、精製物、飲食品又は医薬品をヒト等の動物に摂取又は投与することにより、癌細胞に対する免疫を賦活化する及び/又は癌細胞の増殖を抑制することができる。1. 用語の定義 ここで、肝機能改善は、肝臓の代謝機能を高めること、低下した肝機能を正常又はそれに近い状態に回復させること、肝機能低下を抑制すること、肝臓を機能低下から防御すること、肝障害を防止すること、1以上の肝疾患を予防又は治療することを含む。肝疾患としては、慢性肝疾患及び急性肝疾患が挙げられ、これらには慢性又は急性の肝炎、肝硬変、肝臓癌、肝機能障害、肝機能不全、肝機能低下などが含まれる。こうした疾患の原因としては、ウイルス、薬物、アルコール、免疫、自己免疫、代謝異常、代謝不全、癌、遺伝的要因などが挙げられる。 また、抗腫瘍作用とは、腫瘍の増殖を停止又は抑制すること、腫瘍組織を縮小させること、腫瘍細胞を死滅させること、癌細胞の増殖を抑制すること、癌細胞に対する免疫賦活化作用等を含む。また、癌細胞に対する免疫の賦活化は、免疫系を強化することにより、腫瘍組織を減少させること、腫瘍組織の発達を抑制すること、癌細胞を死滅させること、又は癌細胞の増殖を抑えることを包含する。2. ビワ茶 本発明においては、ビワ葉又はビワ茶を用いる。ビワ葉としては、新鮮葉又は乾燥葉をそのまま使用することができる。ビワ(枇杷、学名: Eriobotrya japonica)は、バラ科の常緑高木である。ビワ茶としては、いずれのビワ茶であってもよいが、例えばねじめびわ茶(商品名)が挙げられる。ねじめびわ茶は、トルマリン石による高温加熱により焦がしたもので、上述した特許文献1に記載の方法によって調製することができる。なお、ねじめびわ茶(ネジメビワ茶、根占枇杷茶とも標記される)は、鹿児島県農業生産法人有限会社十津川農場から市販されている。2.1 ビワ茶抽出物の調製 本発明に係る飲食品又は医薬品に使用する抽出物又は精製物は、ビワ葉又はビワ茶を熱水抽出に供することで得ることができる。例えば、ビワ葉又はビワ茶を、熱水を用いた抽出に供し、抽出を1回又は数回(例えば3回)繰り返すことでビワ葉又はビワ茶抽出物を得ることができる。なお、本発明においては、ビワ葉又はビワ茶抽出物とは、上記抽出方法で得られた抽出液、その希釈液、その濃縮液、その濃縮物又はその乾燥粉末を意味する。本発明に係るビワ茶抽出物は減圧濃縮し、凍結乾燥して保存することができる。このようにして得られた本発明に係るビワ茶抽出物は、乾燥粉末であってもよいが、必ずしも粉末状である必要はなく、その場合は、便宜上、本発明に係るビワ茶抽出物の濃縮物と呼ぶ。 このような本発明に係るビワ茶抽出物、濃縮物又は乾燥粉末は、肝機能改善作用を有する飲食品又は医薬品として使用することができる。2.2 ビワ茶抽出物の分離 また、本発明においては、上述したビワ葉又はビワ茶抽出物をろ過、遠心分離又は精製処理等の分離手段に供することで、当該抽出物から夾雑物を除去した物を得ることができる。分離手段としては、各種クロマトグラフィーを用いることができ、疎水性物質を吸着する樹脂を用いたカラムクロマトグラフィー(吸着クロマトグラフィー)や、分子篩クロマトグラフィーなどが挙げられるがこれらに限定されない。吸着とは原子、分子、イオンなどが物体(樹脂等)の表面(界面)に付着又は結合することをいう。疎水性物質を吸着する樹脂としては、疎水性の残基を担持した樹脂であればどのようなものでもよいが、例示するならばダイヤイオン(登録商標)HP-20、ダイヤイオン(登録商標)HP21、セパビーズ(登録商標)SP850、セパビーズ(登録商標)SP825L、セパビーズ(登録商標)SP700などを使用することができる。分子篩クロマトグラフィーのための樹脂としては、ゲルろ過用の樹脂であればどのようなものでもよいが、例えばSephadex G-10、G-15、G-25、G-50等の各種Sephadexゲルを使用することができる。また、アクリルアミドを使用するbiorad社製のPシリーズの商品、例えばP-4ゲル等を使用することもできる。2.2.1 カラムクロマトグラフィー 例えば、ビワ葉又はビワ茶の水抽出溶液を直接、或いは、ビワ茶抽出物を減圧乾燥、凍結乾燥させた濃縮物又は乾燥粉末を適当な水溶液に再溶解させて、カラムクロマトグラフィーに供することができる。溶出物の検出法としては、タンパク質、ポリフェノールなどはA280 nm測定により検出でき、また、糖はフェノール硫酸法などにより定量できる(A490 nm測定)。疎水性物質を吸着する樹脂を用いたカラムクロマトグラフィーでは、最初に移動相として水のみ(又は疎水性の低い水溶液)を一定時間流し、非吸着画分を溶出させる。この非吸着画分には、強い抗腫瘍作用(癌細胞に対する免疫賦活化作用、及びその結果としての癌細胞増殖抑制作用)が見られる。該非吸着画分のことを、本明細書において、親水性画分、素通り画分、又は水溶性画分と呼ぶことがある。次いで例えばグラジエントエリューション法によりA液として水、B液として20〜70%エタノールを用い、A液とB液との比率を100:0から0:100へと変化させてクロマトグラフィーを行うことができる。別の方法としてステップワイズエリューション法を行うこともでき、この場合にはA液を一定期間流した後に、B液を流す。B液を用いたときに溶出する吸着画分を、本明細書において、疎水性画分と呼ぶことがある。例えばゲルとしてHP-20カラム(三菱化学)を特定の条件下で使用したオープンカラムクロマトグラフィーにより得られた非吸着画分を、便宜上、非吸着画分H-1と呼ぶ。また、HP-20カラム(三菱化学)を特定の条件下で使用しA液として水、B液として50%エタノールを用い、A液を一定期間流した後、B液を流したときに溶出する吸着画分を便宜上、吸着画分H-2と呼ぶ。この非吸着画分はビワ葉又はビワ茶の精製物として好適に本発明に係る抽出物、精製物、飲食品又は医薬品に使用することができる。非吸着画分は必要に応じてさらに濃縮及び/又は精製して食品又は医薬品に添加して使用することができる。本明細書では、クロマトグラフィーによる分画物を回収し、減圧濃縮し、凍結乾燥したものを、便宜上、粗製濃縮物と呼ぶことがある。2.2.2 ゲルろ過クロマトグラフィー 別の例として、上記2.2.1の疎水性物質を吸着する樹脂を用いたカラムクロマトグラフィーにより得られた非吸着画分(例えば画分H-1)を回収し、濃縮し、ゲルろ過に供することができる。樹脂としては、例えばセファデックスG-25カラムを用いることができるがこれに限られない。ゲルろ過した分画物を検出するには、A280 nm測定によりタンパク質、ポリフェノールなどが測定できる。また、糖はフェノール硫酸法などにより定量できる(A490 nm測定)。例えば、HP-20カラムクロマトグラフィーにより得られた非吸着画分を、直径3cm×長さ50cmのセファデックスG-25カラムを使用し、1時間当たり150〜200ml、好ましくは160〜170mlという流速でゲルろ過すると、最初に多糖類を含む画分が溶出し、ついでオリゴ糖を含む画分が溶出し、ついでタンパク質やフェノールを含む画分が溶出する。ゲル濾過では分子量が大きい分子が早く溶出することから、最初に溶出し糖を含む画分が多糖類画分であり、次に溶出し糖を含む画分がオリゴ糖画分である。ゲルろ過により得られる多糖類を含む分画物及びオリゴ糖を含む分画物はビワ葉又はビワ茶の精製物として好適に本発明に係る抽出物、精製物、飲食品又は医薬品に使用することができる。本明細書では、ゲルろ過による分画物を回収し、減圧濃縮し、凍結乾燥したものを、便宜上、粗製濃縮物と呼ぶことがある。多糖類を含む分画物及びオリゴ糖を含む分画物は、必要に応じてさらに濃縮及び/又は精製して食品又は医薬品に添加して使用することができる。また、本明細書において画分と分画物という用語は相互に置き換え可能とする。 一例として、2.2.1に記載の手順を用いて吸着クロマトグラフィーにより得られた非吸着画分H-1を、直径3cm×長さ50cmのセファデックスG-25カラムを使用し、1時間あたり、160〜170mlという流速でゲルろ過を行い、10 mlずつに分画したときに得られる画分番号20〜50を便宜上、多糖類画分G-1と呼び、画分番号50〜80を便宜上、画分G-2と呼び、画分番号80〜120を便宜上オリゴ糖画分G-3と呼び、画分番号120〜160を便宜上画分G-4と呼ぶ(タンパク質やフェノールを含む)。多糖類を含む分画物G-1とオリゴ糖を含む分画物G-3には強い抗腫瘍作用が見出された。 また、先にゲルろ過を行い、その後、疎水性物質を吸着する樹脂を用いたカラムクロマトグラフィーを行うこともできる。さらに、上記2.2.1の非吸着画分の濃縮物を、ゲルろ過により得られる多糖類を含む分画物及び/又はオリゴ糖を含む分画物の濃縮物と適宜、組み合わせて本発明に係る食品又は医薬品に添加して使用することもできる。2.2.3 本発明に係るビワ茶抽出精製物の作用機序 本発明に係るビワ茶抽出物を含む非吸着画分は、疎水性物質を吸着する樹脂を用いたカラムクロマトグラフィーに供したときの非吸着画分、又はそれをさらにゲルろ過クロマトグラフィーに供した画分である。該非吸着画分は糖を含む画分であり、実施例2に記載のとおり、抗腫瘍作用がある。一般に知られている、糖が癌細胞に作用するメカニズムは、糖を摂取すると免疫が賦活化又は強化され、それに起因して癌細胞が減少する、というものである(例えば特開2001−181393、特開2003−342188等を参照されたい)。よって本発明の非吸着画分も糖を含み、抗腫瘍作用を示すことから、上記メカニズムにより癌細胞に作用する、と当業者であれば理解する。3. 本発明に係るビワ茶抽出物又は精製物の使用方法 以上のように説明したビワ葉又はビワ茶抽出物、該抽出物の分画物又は精製物、該分画物又は精製物の濃縮物又は乾燥粉末(以下、本発明に係るビワ茶抽出物又は精製物と呼ぶことがある)を有効成分として用いることで、本発明に係る抽出物、精製物、飲食品又は医薬品を製造することができる。また、癌細胞に対する免疫を賦活化するための医薬の製造において、本発明に係るビワ茶抽出物、該抽出物の分画物又は精製物、該分画物又は精製物の濃縮物又は乾燥粉末を使用することもできる。3.1 食品としての使用 本発明に係るビワ茶抽出物又は精製物の有効量を、錠剤、カプセル、顆粒、ドリンク、ペットボトルなどの任意の形態に添加又は封入するか、あるいは任意の食品に添加することで、本発明に係る飲食品を得ることができる。本発明に係る飲食品は、癌細胞増殖抑制作用及び癌細胞に対する免疫賦活化作用を含む抗腫瘍作用並びに/又は肝機能改善作用を有する飲食品、特に、健康補助食品又は特定保健用食品として使用することができる。好ましくは、錠剤、カプセル、顆粒、ドリンク、ペットボトルなどの形態の健康補助食品又は特定保健用食品とする。 飲食品には、例えば、菓子類、レトルト食品、ジュース類、お茶類、乳製品などが含まれるが、これらに限定されない。また、飲食品には、必要に応じて甘味剤、調味料、乳化剤、懸濁化剤、防腐剤などを添加してもよく、あるいはビタミン類、栄養剤、免疫増強剤などを添加してもよい。 本発明に係る飲食品に対するビワ葉又はビワ茶の抽出物又は精製物の添加量は、摂取する成人体重1 kgあたり例えば0.1〜200 mgに相当する範囲内の量又は1製品あたり例えば50 mg〜1gであってもよいが、この範囲に限定されない。3.2 医薬品としての使用 本発明に係る医薬品は、ビワ葉又はビワ茶の抽出物又は精製物の有効量を含む。本発明に係る医薬品は、癌細胞に対する免疫賦活化剤、癌細胞増殖抑制剤、抗腫瘍剤、又は肝機能改善剤として使用することができる。 本発明に係る医薬品には、ビワ葉又はビワ茶の抽出物又は精製物以外に、さらに製薬上許容可能な担体(賦形剤若しくは希釈剤)並びに結合剤、増量剤、滑沢剤、崩壊剤、湿潤剤、乳化剤、緩衝剤、懸濁化剤、保存剤、着色剤、風味剤及び甘味剤などから適宜選択される添加剤を含有させることができる。担体及び添加剤は、製剤化のために一般的に使用されるものを、本発明に係る医薬品の製造に使用することができる。例えば、結合剤の例としては、デンプン、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどが挙げられる。増量剤の例としては、ラクトース、微結晶セルロースなどが挙げられる。滑沢剤の例としては、タルク、シリカ、ステアリン酸マグネシウムなどが挙げられる。崩壊剤の例としては、デンプン、デンプングリコール酸ナトリウムなどが挙げられる。湿潤剤の例としては、ラウリル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。乳化剤の例としては、セルロース誘導体、ソルビトールなどが挙げられる。また、保存剤の例としては、メチル−p−ヒドロキシベンゾエート、ソルビン酸などが挙げられる。ただし、本発明に使用できる添加剤は、これら添加剤の例に限定されない。 本発明に係る医薬品は、例えば経口投与又は非経口投与(静脈内、動脈内、腹腔内、経直腸内、皮下、筋肉内、舌下、経鼻腔内、経膣内など)用に製剤化され得る。製剤の形態としては、特に限定されないが、例えば溶液剤、錠剤、粉末剤、顆粒剤、カプセル剤、座剤、噴霧剤、制御放出剤、懸濁剤及びドリンク剤などが挙げられる。 本発明に係る医薬品に含まれるビワ葉又はビワ茶の抽出物又は精製物の用量は、患者の年齢、体重、性別、状態、重篤度などの要因によって変化しうる。患者に投与されるビワ葉又はビワ茶の抽出物又は精製物の1日用量は、例えば患者の体重1 kgあたり0.1〜200 mg、好ましくは1〜100 mgの範囲であるが、この範囲に限定されない。必要に応じて、用量を数回、例えば2〜3回に分けて分割投与してもよい。また、本発明に係る医薬品は治療用途の同一又は異なる他の抗腫瘍剤、癌細胞増殖抑制剤、癌細胞に対する免疫賦活化剤及び/又は肝機能改善剤と併用して患者に投与することもできる。3.3 本発明に係る飲食品又は医薬品等の薬理評価 本発明に係る抽出物、精製物、飲食品又は医薬品は、例えば、以下のように薬理評価を行うことができる。3.3.1 肝機能改善作用の薬理評価 本発明に係る抽出物、精製物、飲食品又は医薬品の肝機能改善作用の薬理評価としては、例えば、四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン等の有機化合物を投与し、肝炎を誘発させたモデル実験動物の肝機能を評価する方法が挙げられる。1つの方法としては、四塩化炭素等の有機化合物を動物に投与して肝炎を誘発させた後に本発明に係る抽出物、精製物、飲食品又は医薬品を該動物に給餌し、飼育終了後、各動物の肝機能を測定することができる。該測定値を、本発明に係る抽出物、精製物、飲食品又は医薬品を該動物に給餌しなかった動物群の肝機能測定値と比較して、肝機能の回復を測定することができる。別の方法として、本発明に係る抽出物、精製物、飲食品又は医薬品を該動物に給餌し、飼育終了後、各動物に四塩化炭素等の有機化合物を動物に投与して肝炎を誘発させ、一定時間経過後に各動物の肝機能を測定することができる。該測定値を本発明に係る抽出物、精製物、飲食品又は医薬品を該動物に給餌しなかった動物群の肝機能測定値と比較して、肝機能が低下した、又はしなかった程度を測定することができる。上記比較により肝機能が回復した場合、又は肝機能が対照と比較してさほど低下しなかった場合には、本発明に係る抽出物、精製物、飲食品又は医薬品が肝機能改善作用を有すると判断できる。 肝機能の評価は、例えば血清中のアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST、別名グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(GOT)ともいう)活性測定、血清中のアラニントランスアミナーゼ(ALT、別名グルタミン酸ピルビン酸転移酵素(GPT)ともいう)活性測定、血清中の過酸化物の定量、例えばTBARS検査(チオバルビツール酸反応性物質検査)による定量、及び/又は血清中のスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)活性測定等により行うことができる。AST及びALTは肝細胞に多く分布していることから、肝細胞の破壊の際に血中濃度が上昇する。したがって血清中のAST及びALT濃度の上昇は肝細胞の変性壊死の指標となる。SOD活性は活性酸素を消去するスーパーオキシドディスムターゼ活性のことで、この活性が高いと生体内の活性酸素を消去する作用が高く、生体が酸化的ストレスから保護され、健全に保たれる。したがってSOD活性が高いと肝機能は高く、SOD活性低下に伴い肝機能の低下が見られる。チオバルビツール酸反応性物質は、脂質の過酸化に伴って生じる副産物である。こうした物質はチオバルビツール酸を試薬とするTBARS法でのアッセイにより検出できる。したがってTBARS法により、過酸化物の定量が可能となる。他には肝機能評価のために、胆汁うっ滞の指標となるT-Bil、ALP、γGTや、肝合成能の指標であるアルブミン、PT、コリンエステラーゼ、肝炎の指標となるγグロブリンを測定することも可能である。こうした肝機能評価のための各種測定法や原理は当業者に知られている。3.3.2 癌細胞に対する免疫賦活化作用の薬理評価 本発明に係る抽出物、精製物、飲食品又は医薬品の癌細胞増殖抑制作用及び/又は癌細胞に対する免疫賦活化作用の薬理評価としては、例えば腫瘍又は癌細胞を移植したモデル動物に本発明に係る抽出物、精製物、飲食品又は医薬品を摂取させ、飼育中又は飼育後に、腫瘍マーカーの血液分析又は腫瘍組織の重量測定を行う方法が挙げられる。本発明に係る抽出物、精製物、飲食品又は医薬品を摂取していない腫瘍又は癌細胞を移植したモデル動物と比較して、本発明に係る抽出物、精製物、飲食品又は医薬品を摂取した腫瘍又は癌細胞を移植したモデル動物において、血中の腫瘍マーカー量が有意に低下した場合には、本発明に係る抽出物、精製物、飲食品又は医薬品が良好に癌細胞増殖抑制作用及び/又は癌細胞に対する免疫賦活化作用を有すると判断することができる。また同様に、前記比較により腫瘍組織の重量が有意に低下した場合には、本発明に係る抽出物、精製物、飲食品又は医薬品が良好に癌細胞増殖抑制作用及び/又は癌細胞に対する免疫賦活化作用を有すると判断することができる。癌細胞増殖抑制作用及び癌細胞に対する免疫賦活化作用は上記定義のとおり抗腫瘍作用に包含されるため、癌細胞増殖抑制作用又は癌細胞に対する免疫賦活化作用が示されれば、抗腫瘍作用が示されたこととなる。癌の評価指標となる血中の腫瘍マーカーとしては、公知のどのようなマーカーを用いてもよく、例示するとα-フェトプロテイン、塩基性フェトプロテイン、癌胎児性抗原CEA、BCA225、CA 15-3、CA 19-9、CA 50、膵癌関連糖蛋白抗原DUPAN-2、KMO-1、NCC-ST-439、シアリルTn抗原STN、SCC抗原(扁平上皮癌関連抗原)、組織ポリペプチド抗原TPA、免疫抑制酸性蛋白IAP、PIVKA-II、前立腺特異抗原PSA、γ-セミノプロテイン、ヒト絨毛性ゴナドトロピンhCG、カルシトニン(CT)、癌関連ガラクトース転移酵素GATなどが挙げられるが、これに限られない。こうしたマーカーの測定及び評価方法は当業者に知られている。4.本発明に係るビワ茶抽出物又は精製物の用途 本発明においては、ビワ葉又はビワ茶の抽出物又は精製物を用いることで、抗腫瘍作用、癌細胞増殖抑制作用、癌細胞に対する免疫賦活化作用及び/又は肝機能改善作用を有する抽出物、精製物、飲食品又は医薬品を製造できる。こうした本発明に係るビワ茶抽出物、精製物、飲食品又は医薬品は、肝疾患や癌等の疾患の予防又は治療に有用である。 以下の実施例は、例示のみを意図したものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。 下記の実施例で使用するねじめびわ茶は、鹿児島県農業生産法人有限会社十津川農場から市販されているものである。また、特に断らない限り、試薬は、市販されているか、又は当技術分野で慣用の手法、公知文献の手順に従って入手又は調製する。各実施例に伴う図中の結果は、各群の平均値又は平均値±標準誤差で示す。[実施例1]ビワ茶の肝機能改善作用(肝障害防止作用)(1)ねじめびわ茶の抽出 この実験ではビワ茶の抽出物として十津川農場(製)のねじめびわ茶を約20倍量の熱水に加え、1時間程度煮沸抽出した。該抽出物をさらに東京理化機器株式会社製のロータリーエバポレーターを用いて減圧濃縮し、続いて東京理化機器株式会社製の凍結乾燥機を用いて凍結乾燥し、抽出物を得た。 実験動物としてはddY(雄)、6週齢マウスを日本SLC社より購入した。飼育はプラスチックケージでの個別飼育(個飼)とし、12/12h(明7:00〜19:00)明暗サイクル 室温23±2℃の条件下で行い、水と飼料は自由摂取させた。 1週間予備飼育する。その期間の飼料は、マウスラット用固形飼料(ラボMRストック、日本農産工業(株))を与えた。飼料の組成を下記の表1に示す。 上記表1に示す組成で飼料材料を混合し、同量の蒸留水を混ぜ、適度な大きさに切り、凍結乾燥し、飼料として与えた。表1のコントロール飼料を与えたマウスを本実施例では「コントロール群」という。また、上記(1)ねじめびわ茶の抽出法により得られた抽出物の乾燥粉末を2%(w/w)又は5%(w/w)となるようにコントロール飼料に加え、これをねじめびわ茶群用餌として用いた(当該餌を給餌したマウスを本実施例では「ビワ茶群」という)。さらに、コントロール飼料にグリチルリチンを3%(w/w)添加した飼料を用意した。3%グリチルリチンを与えたマウスを本実施例ではGL群という。(2)動物実験法 マウスを1週間予備飼育した後、各実験飼料を3日間与え、各マウス腹腔に1 mL四塩化炭素を投与し、又は投与せず、24時間後に麻酔下で心臓採血し、血清を得て、血清中のGOT、GPT、SOD活性を測定した。得られた測定値は、四塩化炭素を投与しなかったコントロール群(コントロール)、四塩化炭素を投与した陽性対照群(肝炎誘発群)の値と比較した。得た血清は測定時まで-20℃で保存した。なお、動物実験は鹿児島純心女子大学動物実験指針に従って行った。 血清中のAST(GOT)活性を測定した結果を図1に示す。また、血清中のALT(GPT)活性を測定した結果を図2に示す。なお、血清中のGOT、GPT活性はそれぞれ、和光純薬工業株式会社製測定キット、トランスアミナーゼCII-テストワコーを使用した。図1及び2では、四塩化炭素を投与しなかったコントロール群(コントロール)では、AST、ALTはほとんど検出されなかった。四塩化炭素のみを投与した陽性対照群(肝炎誘発群)では、AST及びALTの値は大幅に上昇した。ビワ茶群では、肝炎誘発群と比較して、AST及びALTの値は低かった。図1及び図2の結果から、肝機能低下抑制剤として使用されるグリチルリチン(GL)よりもビワ茶抽出物を与えたマウスの方が肝細胞からのAST(GOT)の血中への流失は強く抑えられていることが認められた。またビワ茶抽出物2%と比較して抽出物5%を添加した飼料で飼育した動物で肝機能改善がより強く見られたことから、本発明に係るビワ茶抽出物の肝機能改善作用はビワ茶抽出物の投与量に依存的であることが分かった。より投与量を高めると、肝機能改善作用はさらに高まる(肝機能防御作用が高まる)と考えられる。 次に、肝臓中の過酸化物量を定量した結果を図3に示す。なお、過酸化物量はTBARS法で定量した。マウスの肝臓サンプルは、飼養試験の終わった各動物をペントバルビタール麻酔を行い、開腹し瀉血後、肝臓を摘出し、HEPES Bufferとともにガラスホモジナイザーにて磨砕し、遠心分離により調製した。TBARS法の原理は、簡単に説明すると次のとおりである。生体内での脂質はストレス等による作用を受けると過酸化を生じる。この脂質の過酸化によって生じるマロンジアルデヒド(Malon Di-Aldehyde:MDA)は高温・酸性条件下でチオバルビツール酸(TBA)と反応し、530〜540 nm の吸光度測定で検出が可能な MDA-TBA 付加物を生じる。これを比色測定することにより試料中の過酸化物量を測定することが出来る。図3のグラフに示すように、四塩化炭素を投与しなかったコントロール群(コントロール)よりも四塩化炭素を投与した肝炎誘発群の方が肝臓中TBARS濃度が高く、四塩化炭素投与により肝炎が誘導されるが、これは生体・肝臓に活性酸素が誘導され、そのために肝細胞がダメージを受け、破壊されて内容物が血中に遊離するためとされている。肝機能低下抑制作用を有することが知られているGL投与によりTBARS濃度は有意に減少した(GL群)。また、ビワ茶抽出物で飼育したマウスの肝臓でも有意のTBARS濃度の減少が見られた(ビワ茶群)。ビワ茶抽出物を2%添加した飼料で飼育したマウスの場合と比較してビワ茶抽出物を5%添加した飼料で飼育したマウスはより低めの値を示し、過酸化物量がより強く抑制されていることが認められた。すなわち、本発明に係るビワ茶抽出物の肝機能改善作用はやはりビワ茶抽出物の投与量に依存的であった。この知見は、上記AST及びALT測定の結果とも一致する。 次に、血清中のSOD活性を測定した結果を図4に示す。なお、血清中のSOD活性は和光純薬工業株式会社製測定キットを使用した。SOD活性の測定原理は、簡単に説明すると、次のとおりである。キサンチンにキサンチンオキシダーゼが作用すると活性酸素種のO2−・が生成する。生成したO2−・は共存するNO2-TBを還元し、ジホルマザンを形成するが、反応液中にSODが存在するとO2−・の一部はH2O2とO2に不均化され、ジホルマザンの形成が減少する。この減少の程度を阻害率として表すことで試料中のSOD活性を数値で示すことが出来る。SOD活性は活性酸素を消去するスーパーオキシドディスムターゼ活性のことで、この活性が高い方が生体内の活性酸素を消去する作用が高く、生体を健全に保つ。四塩化炭素投与で肝炎を誘発すると活性酸素を生じ、その消去のために生体内のSOD活性は低下する(肝炎誘発群)。しかし、肝機能低下抑制作用を有することが知られているGLを投与すると有意にSOD活性は高い数値を維持できる(GL群)。図4の結果より、ビワ茶抽出物の投与でも同様に高い数値を示し、肝機能低下が抑制されたことがわかる(ビワ茶群)。すなわち本発明に係るビワ茶抽出物は強い肝機能改善作用を有しており、体の健康状態を良好に保つ作用がとても高いと認められる。また、本発明に係るビワ茶抽出物を2%添加した飼料で飼育したマウスの場合と比較して本発明に係るビワ茶抽出物を5%添加した飼料で飼育したマウスではより高いSOD値が測定され、より肝機能が改善されていた。言い換えると、本発明に係るビワ茶抽出物の肝機能改善作用はやはりビワ茶投与量依存的であった。この知見は、上記AST及びALT測定の結果とも一致する。[実施例2]ビワ茶経口投与による癌細胞の増殖抑制又は癌細胞に対する免疫賦活化(1)ねじめびわ茶の抽出物の調製 市販のねじめびわ茶約100gを熱水2リットル(L)に加え、1時間程度沸騰させながら抽出した。抽出液をろ過して集め、ロータリーエバポレーターで減圧下で濃縮した。これを凍結乾燥機で凍結乾燥し、抽出物を粉末化した。この粉末を水に溶解させたものを、ビワ茶抽出液原液とした。 実験動物としては、Balb/c、雄、5週齢マウスを日本SLC社より購入した。動物実験は鹿児島純心女子大学の動物実験指針に従って行った。 飼育はプラスチックケージでの個飼とし、12/12h明暗サイクル 室温23±2℃ 水と飼料は自由摂取させた。約1週間予備飼育した。その期間の飼料は、マウスラット用固形飼料(ラボMRストック、日本農産工業(株))を与えた。飼料の組成を下記の表2に示す。 上記表2に示す組成で飼料材料を混合し、同量の蒸留水を混ぜ、適度な大きさに切り、凍結乾燥し、飼料として与えた。表2のコントロール飼料を与えたマウスを本実施例では「コントロール群」という。また、上記(1)ねじめびわ茶の抽出物の調製法により得られた抽出物の乾燥粉末を2%(w/w)又は0.5%(w/w)となるようにコントロール飼料に加え、これをねじめびわ茶群用餌として用いた(当該餌を給餌したマウスを本実施例では「ビワ茶群」という)。(2)動物実験法(i)すべてのマウスの足の腰部(足の付け根)の皮下にマウス腹水腫瘍細胞サルコーマ180 (5.0×105 細胞/0.2 ml生理食塩水)を皮下注射した。用いたSarcoma 180(マウス腹水腫瘍細胞)は東北大学加齢医学研究所より入手した。これをマウス腹腔内で培養、継代した。腹水中のサルコーマ180癌細胞を血液と共に取り出し、低張液で3回程度洗浄し、赤血球を除去した。サルコーマ180細胞数を計測し、全てのマウスの腰部皮下に注入した。(ii) 皮下注射した日を0日目とし、この日から各群へ各実験飼料を与えた。 (iii) 11日目にエーテル麻酔下で解剖し、脾臓と腫瘍を摘出して脾臓重量と腫瘍重量を測定した。 この方法では、腫瘍の重量差から、抗腫瘍作用(免疫賦活化作用又は癌細胞増殖抑制作用)の評価を行った。(3)ビワ茶抽出物の分画(3−1)HP-20カラムによる分画 HP-20樹脂は水溶液からポリフェノール類などの疎水性成分を吸着除去する樹脂である。はじめにこの樹脂でビワ茶抽出液の分画を行った。使用したカラムのサイズは直径8cm×長さ25cmであり、流速は1時間当たり1Lであった。溶出液を20mlずつに分画した。 分画の際には、最初に上記の(1)ねじめびわ茶の抽出物の調製の手順により得られたビワ茶抽出液をカラムに適用し、まず水を流して非吸着画分を取得し、次に50%エタノールを流して、吸着されているポリフェノール等を含む成分(吸着画分)を溶出回収した。結果を図5に示す。 溶出液中の糖(多糖類、オリゴ糖など)はフェノール硫酸法で定量した(A490 nm)。検出された糖を図5中の四角印で示す。画分番号が小さく、図5中の左側に現れる画分が糖を含む非吸着画分である。本明細書では、この画分を便宜上、親水性画分H-1、素通り画分H-1、水溶性画分H-1、又は非吸着画分H-1と呼ぶことがある。また、溶出液の、タンパク質、ペプチド、ポリフェノールなどをA280 nmで測定した。これを図5中のダイヤ印で示す。画分番号が大きく、図5中の右側に現れる画分がタンパク質やポリフェノールなどを含む吸着画分である。本明細書では、この画分を便宜上、疎水性画分H-2、又は吸着画分H-2と呼ぶことがある。 HP-20カラムにより、ビワ茶原液を親水性画分(H-1)と疎水性画分(H-2)の2画分に分けた。それぞれの画分を集め、ロータリーエバポレーターで減圧下で濃縮し、凍結乾燥により抽出物を得た。 このようにして得られた抽出物を使用し、画分H-1の抗腫瘍効果をマウスを用いて検定した。その結果を図6に示す。図6中の**印は1%の有意差を示す。検定の結果、ビワ茶抽出液原液はコントロール(図6中のCont)と比較して、強い抗腫瘍能を示すことが明らかとなった(図6中の原液)。また、ビワ茶抽出物をHP-20カラムで分画して得られた水溶性画分(H-1、糖を多く含む画分)にも癌細胞に対する強い免疫賦活化作用(腫瘍癌細胞増殖抑制効果)が見られた。このように、図6より、マウスを用いたIn vivo実験においてH-1画分は腫瘍癌細胞の増殖を有意に阻害し、コントロールのみならずビワ茶抽出液原液と比較しても親水性画分(H-1)には癌細胞に対する強い免疫賦活化作用があることが分かった。(3−2)Sephadex G-25カラムによる分画 次に、非吸着画分(H-1、糖を含む画分)を濃縮し、セファデックスG-25カラムゲルろ過法を用いて分画を行った。使用したカラムのサイズは直径3cm、長さ50cmであり、1時間当たり160〜170mlという流速でゲルろ過を行い、10 mlずつに分画した。 ゲルろ過の結果を図7に示す。図7を見ると、糖を含む画分H-1のゲルろ過クロマトグラフィーにより、初めの大きな画分(G-1、分子量の大きな多糖類、画分番号20〜50)と分子量の小さな画分(G-3、オリゴ糖、画分番号80〜120)という2つの画分が得られた。これらの画分の抗腫瘍能をマウスを用いて計測した。 ゲルろ過分画G-1〜G-4の抗腫瘍能を計測した結果を図8に示す。図中の**印は1%の有意差を示す。ビワ茶画分H-1のSephadex G-25ゲルろ過分画物の抗腫瘍能を調べたところ、G-1(多糖類)とG-3(オリゴ糖)の2画分に強い抗腫瘍能(癌細胞に対する免疫賦活化作用)が見出された。この抗腫瘍作用の実験では飼料中へのビワ茶抽出物の添加は0.5%(w/w)とした。 まとめると、図8から分かるように、ビワ茶抽出物の抗腫瘍能は多糖類を含む画分G-1とオリゴ糖を含む画分G-3でほぼ同程度であることが認められた。つまりビワ茶中の抗腫瘍能は水溶性画分中ではビワ葉中の多糖類とオリゴ糖の2画分に認められた。 本発明によれば、癌細胞の増殖抑制作用、癌細胞に対する免疫賦活化作用及び/又は肝機能改善作用を有し、ビワ葉又はビワ茶の抽出物又は精製物を含有する飲食品又は医薬品が提供される。本発明に係る飲食品(特に、健康補助食品若しくは特定保健用食品)又は医薬品は、癌細胞の増殖抑制作用、癌細胞に対する免疫賦活化作用及び/又は肝機能改善作用を有することから、癌細胞の増殖抑制剤、癌細胞に対する免疫賦活化剤及び/又は肝機能改善剤として使用できる。 本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願の全内容をそのまま参考として本明細書に組み入れるものとする。 ねじめびわ茶を熱水抽出に供して抽出物を取得し、該抽出物を減圧乾燥、及び凍結乾燥に供することによりねじめびわ茶抽出物の濃縮物又は乾燥粉末を得る工程を含む、肝機能改善剤の製造方法。 請求項1に記載の方法により得られた濃縮物又は乾燥粉末を有効成分として含有する肝機能改善剤。 肝機能改善のための、請求項1に記載の方法により得られた飲食品用分画物。 (a)ねじめびわ茶を熱水抽出に供して抽出物を取得し、該抽出物を減圧乾燥、及び凍結乾燥に供することによりねじめびわ茶抽出物の濃縮物又は乾燥粉末を得る工程、 (b)工程(a)のねじめびわ茶抽出物の濃縮物又は乾燥粉末を疎水性物質を吸着する樹脂を用いたカラムクロマトグラフィーに供し、溶離液として水を使用し、非吸着画分を得る工程、を含む、癌細胞に対する免疫賦活化剤の製造方法。 さらに、(c)前記工程(b)で得られた非吸着画分をゲルろ過クロマトグラフィーに供して多糖類又はオリゴ糖を含む分画物を得る工程を含む、請求項4に記載の方法。 請求項4又は5に記載の方法により得られた非吸着画分又はその分画物を有効成分として含有する、癌細胞に対する免疫賦活化剤。 癌細胞に対する免疫賦活化のための、請求項4又は5に記載の方法により得られた飲食品用画分又は分画物。 【課題】癌細胞に対する免疫賦活化作用、及びその結果としての癌細胞増殖抑制作用を含む抗腫瘍作用並びに/又は肝機能改善作用を有する抽出物、精製物、飲食品又は医薬及びその製造方法の提供。【解決手段】ビワ茶を熱水抽出に供して抽出物を取得し、該抽出物を減圧乾燥、及び凍結乾燥に供することによりビワ茶抽出物の濃縮物又は乾燥粉末を得ることを含む肝機能改善剤の製造方法、並びにこの方法により得られる肝機能改善剤又は肝機能改善のための飲食品用分画物、ビワ茶抽出物の濃縮物又は乾燥粉末を疎水性物質を吸着する樹脂を用いたカラムクロマトグラフィーにより分画することを含む癌細胞増殖抑制剤又は癌細胞に対する免疫賦活化剤の製造方法、および、この方法により得られる癌細胞増殖抑制剤又は癌細胞に対する免疫賦活化剤或いは癌細胞に対する免疫賦活化のための飲食品用分画物の提供。【選択図】図8