タイトル: | 公開特許公報(A)_シリカ配合におけるシランカップリング剤の反応評価方法 |
出願番号: | 2012233117 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | G01N 33/00,C08L 21/00,C08K 3/36,G01N 33/44 |
宇川 仁太 JP 2014085179 公開特許公報(A) 20140512 2012233117 20121022 シリカ配合におけるシランカップリング剤の反応評価方法 東洋ゴム工業株式会社 000003148 蔦田 璋子 100059225 蔦田 正人 100076314 中村 哲士 100112612 富田 克幸 100112623 夫 世進 100124707 有近 康臣 100163393 宇川 仁太 G01N 33/00 20060101AFI20140415BHJP C08L 21/00 20060101ALI20140415BHJP C08K 3/36 20060101ALI20140415BHJP G01N 33/44 20060101ALI20140415BHJP JPG01N33/00 DC08L21/00C08K3/36G01N33/44 3 2 OL 20 4J002 4J002AC011 4J002AC031 4J002AC061 4J002AC071 4J002AC081 4J002AC091 4J002BB151 4J002BB181 4J002CD181 4J002DA048 4J002DJ016 4J002ER029 4J002EV169 4J002EV279 4J002EV329 4J002EV349 4J002EX007 4J002EX087 4J002FD016 4J002FD148 4J002FD159 4J002GN01 本発明は、シリカ配合におけるシランカップリング剤の反応評価方法に関し、より詳細には、シリカ配合のゴム組成物においてシリカに対するシランカップリング剤の反応形態を評価する方法に関するものである。 ゴム組成物の低発熱化などを図るために、補強性充填剤としてシリカを配合することが知られている。しかしながら、シリカは、表面に存するシラノール基の影響により凝集しやすく、分散性に劣ることから、その性能を十分に発揮させることは難しい。そのため、シリカの分散性を改良するために、シランカップリング剤が併用されている。 シランカップリング剤は、シリカとともにゴム成分に添加し混合することにより、シリカ表面のシラノール基と反応するとともに、ゴム成分のポリマーと反応することで、両者の間を連結して、シリカの分散性を向上させる。シリカの分散性、補強性を向上するためには、かかるシランカップリング剤の反応量を高める必要がある。そのため、混合したゴム組成物中におけるシランカップリング剤の反応量を知ることが求められ、下記特許文献1には、シランカップリング剤の反応率を求める技術が開示されており、反応率と物性の相関が高いことを見出している。 ところで、シランカップリング剤の反応は、シランカップリング剤がシリカのシラノール基と結合する縮合反応(以下、結合反応という。)だけでなく、シランカップリング剤同士が反応する自己縮合反応も起きると考えられている。シランカップリング剤の反応率が高くても、該自己縮合反応が多いと、シリカ表面と効果的に反応しているとは言えず、シリカの分散性や補強性の改良には結びつきにくい。しかるに、下記特許文献1により求められるシランカップリング剤の反応率には、上記結合反応と自己縮合反応の両方の反応が含まれており、区別することができない。 一方、下記特許文献2には、シリカとシランカップリング剤との反応について、固体高分解能29Si−NMR(CP/MAS)測定によって得られるゴム組成物中のシリカのスペクトルの帰属から、−85〜−95ppm付近にピークをもつQ2構造、−96〜−105ppm付近にピークをもつQ3構造及び−106〜−115ppm付近にピークをもつQ4構造のピーク面積を、それぞれSQ2,SQ3及びSQ4として、反応量=[SQ4/(SQ2+SQ3)]×100より、シリカとシランカップリング剤との反応量を求める方法が開示されている。この方法では、反応量の相対比較は可能であるが、配合したシランカップリング剤のうち何%が反応したのかを求めることは不可能である。また、この文献には、上記のようなNMRスペクトルの帰属を、シリカの自己縮合反応量の指標として用いる点は開示されていない。 なお、29Si−固体NMR測定によるシリカのスペクトルの帰属については、上記特許文献2の他、下記非特許文献1にも開示されており、それ自体は公知である。特開2010−216952号公報特開2006−337342号公報Udo Goerl他, “Investigations Into The Silica/Silane Reaction System”, Rubber Chemistry And Technology, Vol.70, p.608-623, 1997 本発明は、上記の点に鑑み、シリカ配合において添加されるシランカップリング剤について、自己縮合反応の影響を加味した反応形態の評価を行うことができる方法を提供することを目的とする。 本発明に係るシランカップリング剤の反応評価方法は、ゴム成分にシリカと硫黄含有シランカップリング剤を混合した未加硫のゴム組成物について、シランカップリング剤の反応率を求めるとともに、シラノール残存量を求め、これらシランカップリング剤の反応率とシラノール残存量に基づきシランカップリング剤の反応形態を評価するものである。前記反応率は、未加硫のゴム組成物に対し前記ゴム成分が溶解しない溶媒を用いて抽出処理を行うことにより、前記ゴム組成物中に含まれる未反応の前記シランカップリング剤を抽出し、抽出後のゴム組成物に含まれる硫黄量を定量することで反応済みのシランカップリング剤の含有量を求めるか、又は、抽出液に含まれる硫黄量を定量することで未反応のシランカップリング剤の含有量を求め、求めた反応済み又は未反応のシランカップリング剤の含有量を、前記シランカップリング剤の配合量と比較することにより求めることができる。また、前記シラノール残存量は、29Si−DD/MAS−NMR測定により前記ゴム組成物中のシリカのスペクトルを得て、該スペクトルの帰属から−85〜−95ppm付近にピークをもつQ2構造、−96〜−105ppm付近にピークをもつQ3構造及び−106〜−115ppm付近にピークをもつQ4構造のピーク面積を、それぞれSQ2,SQ3及びSQ4として、シラノール残存量B=(SQ2+SQ3)/SQ4により求めることができる。 前記反応評価方法においては、下記式(1)から前記シランカップリング剤の反応率Aを求め、該反応率Aと前記シラノール残存量Bから前記シランカップリング剤の有効反応指数C=A/Bを求めることが好ましい。 反応率A(%)={(S−S0)/Sr}×(m/m0)×100 …(1) 式中、Sは、抽出後のゴム組成物に含まれる硫黄分(質量%)であり、S0は、前記シランカップリング剤を除いて同配合のゴム組成物について測定した抽出後のゴム組成物に含まれる硫黄分(質量%)であり、Srは、前記シランカップリング剤の配合量から算出される抽出前のゴム組成物中に含まれるシランカップリング剤による硫黄分(質量%)である。また、m0は抽出前のゴム組成物の質量であり、mは抽出後のゴム組成物の質量である。 本発明に係るゴム組成物の製造方法は、ゴム成分にシリカと硫黄含有シランカップリング剤を添加し、加硫促進剤と加硫剤を添加せずに混合して、上記反応評価方法で測定した前記シランカップリング剤の反応率Aが75%以上であり、かつ前記有効反応指数Cが350〜500であるゴム組成物を調製し、得られたゴム組成物に加硫促進剤と加硫剤を添加して混合することで、加硫剤を含むゴム組成物を調製するものである。 本発明によれば、ゴム組成物中におけるシランカップリング剤の反応率を求めるとともに、シラノール残存量を求めている。シラノール残存量はこの値が大きいと、シリカのシラノール基とシランカップリング剤との反応が少ないことを意味し、すなわち自己縮合反応が多いことを示す。シランカップリング剤が反応しても、かかる自己縮合反応が多ければ、シリカの分散性や補強性の改良に寄与することはできず、特性は改良されない。そのため、シランカップリング剤の反応率とともにシラノール残存量を求めることにより、自己縮合反応を加味した反応形態を評価することができ、すなわち、分散性や補強性の改良に寄与するシランカップリング剤の有効な反応が得られているかどうかを評価することができる。また、シラノール残存量を測定する29Si−固体NMRとして、29Si−DD/MAS−NMRを用いるので、より測定精度の高い測定が可能である。シリカ−シランカップリング剤の反応量を求めるゴム中のシリカの29Si−DD/MAS−NMRのスペクトルを示す説明図である。実施例3及び比較例5の29Si−DD/MAS−NMRのスペクトル図である。 以下、本発明の実施に関連する事項について詳細に説明する。 本実施形態では、ゴム成分にシリカと硫黄含有シランカップリング剤を混合した未加硫のゴム組成物を試験対象として、該ゴム組成物について、シランカップリング剤の反応率を求めるとともに、シラノール残存量を求め、求めた反応率とシラノール残存量に基づいてシランカップリング剤の反応形態を評価する。 まず、試験対象としてのゴム組成物について説明する。 一般に、シリカ配合のゴム組成物の製造方法は、ゴム成分にシリカとシランカップリング剤を添加し混合することでノンプロゴム混合物を得るノンプロ混合工程と、該ノンプロゴム混合物に加硫剤と加硫促進剤を添加し混合するファイナル混合工程(プロ混合工程)とを含む。本実施形態では、該ノンプロゴム混合物を、試験対象としての未加硫のゴム組成物として用いる。 上記ゴム成分としては、特に限定されず、例えば、天然ゴム(NR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、ポリイソプレンゴム(IR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)及びブチルゴム(IIR)などの各種ジエン系ゴムが挙げられる。これらのゴムは、単独又は2種類以上ブレンドして用いることができる。 上記シリカとしては、特に限定されず、例えば、湿式シリカ(含水ケイ酸),乾式シリカ(無水ケイ酸),ケイ酸カルシウム,ケイ酸アルミニウム等が挙げられるが、中でも湿式シリカが好ましい。シリカのコロイダル特性は、特に限定されず、例えば、BET法による窒素吸着比表面積(BET)80〜300m2/gであるものが好ましく用いられ、より好ましくは100〜250m2/gであり、更に好ましくは150〜230m2/gである。なお、シリカのBET比表面積はISO 5794に記載のBET法の一点値により測定される。シリカの配合量は、特に限定されず、好ましくはゴム成分100質量部に対して5〜150質量部であり、より好ましくは10〜120質量部であり、更に好ましくは30〜100質量部である。 上記シランカップリング剤としては、分子中に硫黄を含むものであれば特に限定されず、ゴム組成物においてシリカとともに配合される各種の硫黄含有シランカップリング剤を用いることができる。例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4−トリエキトシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)ジスルフィドなどのスルフィドシラン; 3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルジメチルメトキシシラン、メルカプトエチルトリエトキシシラン、式:HS−(CH2)3−Si(OC2H5)i(O(C2H4O)k−C13H27)jで表されるエボニック・デグサ社製「VP Si363」(式中、i=平均1、j=平均2、k=平均5)などのメルカプトシラン; 3−オクタノイルチオ−1−プロピルトリエトキシシラン(式:CH3(CH2)6C(=O)S−(CH2)3−Si(OC2H5)3)、3−プロピオニルチオプロピルトリメトキシシランなどの保護化メルカプトシラン(即ち、メルカプト基がアシル基で保護されたチオールエステル構造を持つシラン化合物)などが挙げられ、これらはいずれか1種単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。シランカップリング剤の配合量は、シリカ100質量部に対して2〜25質量部であることが好ましく、より好ましくは4〜15質量部である。 上記加硫剤としては、特に限定するものではないが、通常は硫黄が用いられる。加硫剤としての硫黄としては、例えば、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、オイル処理硫黄などが挙げられる。これらはそれぞれ単独で、又は2種以上混合して用いることができる。加硫剤の配合量は、特に限定されないが、上記ゴム成分100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5質量部である。 上記加硫促進剤としては、特に限定されず、例えば、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(BBS)、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(OBS)、N,N−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DPBS)などのスルフェンアミド系、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラブチルチウラムジスルフィド(TBTD)などのチウラム系、1,3−ジフェニルグアニジン(DPG)、1,3−ジ−O−トリルグアニジン(DOTG)などのグアニジン系、ジベンゾチアゾリルジスルフィド(MBTS)、2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT)などのチアゾール系などが挙げられる。これらはそれぞれ単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。加硫促進剤の配合量としては、特に限定するものではないが、上記ゴム成分100質量部に対して0.1〜7質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5質量部である。 上記ゴム組成物には、その他の成分として、カーボンブラックなどの他の補強性充填剤、プロセスオイルなどの軟化剤、可塑剤、老化防止剤、亜鉛華、ステアリン酸、ワックス、樹脂類など、通常ゴム工業で使用される各種添加剤を配合することができる。 上記ノンプロ混合工程では、ゴム成分に、シリカ、シランカップリング剤、及び、その他の添加剤を添加して混合することにより、未加硫のゴム組成物としてのノンプロゴム混合物を得る。混合は、ゴム分野において一般に使用される各種混合機、例えば、バンバリーミキサーやロール、ニーダーなどを用いて行うことができ、好ましくはバンバリーミキサー等の密閉式混練機を用いることである。かかる混合によりゴム組成物は加熱され、これにより、液体のシランカップリング剤はシリカ表面のシラノール基と反応して固体となる。 上記ノンプロ混合工程で添加するその他の添加剤には、加硫剤と加硫促進剤を含まないことが好ましい。この段階で加硫剤や加硫促進剤を配合すると、混合時の熱により硫黄や加硫促進剤がゴム成分と結合してしまい、後記の反応率を測定する際に、抽出後もゴム組成物にこれらに由来する硫黄分が残ってしまうため、シランカップリング剤の硫黄分のみを定量することが困難になるためである。なお、加硫剤と加硫促進剤を除くその他の添加剤については、ノンプロゴム混合段階で全て配合してもよい。 次に、シランカップリング剤の反応率を求める方法について説明する。 シランカップリング剤の反応率は、上記特許文献1(特開2010−216952号公報)に記載の方法により測定することができる。すなわち、(a1)上記未加硫のゴム組成物に対し、ゴム成分が溶解しない溶媒を用いて抽出処理を行うことにより、ゴム組成物中に含まれる未反応のシランカップリング剤を抽出し、(a2)抽出後のゴム組成物に含まれる硫黄量を定量することで反応済みのシランカップリング剤の含有量を求めるか、又は、抽出液に含まれる硫黄量を定量することで未反応のシランカップリング剤の含有量を求め、(a3)求めた反応済み又は未反応のシランカップリング剤の含有量を、前記シランカップリング剤の配合量と比較することによりシランカップリング剤の反応率を求める。 上記(a1)の抽出処理を行う際には、シランカップリング剤が抽出しやすいように、未加硫のゴム組成物を例えば1mm以下のシート状としておくことが好ましい。抽出溶媒としては、ゴム成分のポリマーは溶解しないが、未反応のシランカップリング剤を含む薬品が溶解する各種有機溶媒、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、アセトニトリルなどを用いることができる。抽出処理により、未反応のシランカップリング剤と反応済みのシランカップリング剤を分離することができる。なお、抽出処理方法としては、ソックスレー抽出によることが好ましい。 上記(a2)の硫黄量の定量は、公知の種々の硫黄分析装置を用いて行うことができ、例えば、イオンクロマトグラフ法(日本ダイオネクス株式会社製「ICS−1500」)や、酸素気流燃焼−赤外線吸収法(LECOジャパン株式会社製硫黄炭素分析装置「SC−632」)などが挙げられる。その際、抽出後のゴム組成物に含まれる硫黄量を定量してもよく、あるいはまた、抽出液に含まれる硫黄量を定量してもよいが、測定精度の点から前者の方が好ましい。 上記(a3)において、シランカップリング剤の反応率Aは、下記式(1)により求めることができる。 反応率A(%)={(S−S0)/Sr}×(m/m0)×100 …(1) 式中、Sは、抽出後のゴム組成物に含まれる硫黄分(質量%)である。S0は、前記シランカップリング剤を除いて同配合のゴム組成物について測定した抽出後のゴム組成物に含まれる硫黄分(質量%)である。Srは、前記シランカップリング剤の配合量から算出される抽出前のゴム組成物中に含まれるシランカップリング剤による硫黄分(質量%)である。また、m0は抽出前のゴム組成物の質量であり、mは抽出後のゴム組成物(好ましくは、抽出後、真空乾燥等により乾燥したゴム組成物)の質量である。 次に、シラノール残存量を求める方法について説明する。 シラノール残存量は、29Si−固体NMR測定により、上記未加硫のゴム組成物中のシリカのスペクトルを得て、該スペクトルの帰属から求めることができる。その際、測定対象としてのゴム組成物としては、上記未加硫のゴム組成物そのものでもよく、あるいはまた、バウンドラバー状態のものでもよい。ここで、バウンドラバー状態のものとは、上記未加硫のゴム組成物をトルエンなどの溶剤で溶かし、これにより得られたバウンドラバーを表層部に有するシリカのことである。 29Si−固体NMR測定(固体高分解能29Si−NMR測定)としては、29Si−CP/MAS−NMR測定(CP/MAS法)もあるが、本実施形態では、29Si−DD/MAS−NMR測定(DD/MAS法)を用いる。ここで、CP/MAS法は、交差分極−マジック角回転法(Cross Polarization - Magic Angle Spinning)であり、DD/MAS法は、双極子デカップリング−マジック角回転法(Dipolar Decoupling - Magic Angle Spinning)である。 上記未加硫のゴム組成物に対し、29Si−DD/MAS−NMR測定を行うことにより、図1に示すようなシリカのスペクトルが得られる。各スペクトルの帰属については、上記特許文献2や非特許文献1に記載された通りであり、−85〜−95ppm付近にピークをもつのがQ2構造(Si原子に2個のOH基が結合)、−96〜−105ppm付近にピークをもつのがQ3構造(Si原子に1個のOH基が結合)、及び、−106〜−115ppm付近にピークをもつのがQ4構造(Si原子にOH基が結合していない)をそれぞれ示す。そして、上記Q2、Q3及びQ4の各構造につき、ピーク面積(積分強度)SQ2,SQ3及びSQ4をそれぞれ求め、下記式(2)によりシラノール残存量Bを算出する。 シラノール残存量B=(SQ2+SQ3)/SQ4 …(2) シリカとシランカップリング剤との反応が多いほど、シリカ表面のシラノール基が少なくなり、即ちQ2及びQ3構造が少なくなって、Q4構造が多くなる。そのため、Q4構造のピーク面積SQ4に対するQ2及びQ3構造のピーク面積の和(SQ2+SQ3)の比は、シリカ表面に存在するシラノール基の量、即ちシラノール残存量Bを示す指標となり、この値が大きいほどシラノール基の残存量が多く、小さいほどシラノール基の残存量が少ないことを示す。 ここで、本実施形態において、CP/MAS法ではなく、DD/MAS法を用いるのは、次の理由による。すなわち、CP/MAS法は、プロトンを介して磁化しながら測定するため、プロトン近傍にあるケイ素(即ち、Si−OHのケイ素)が強調されやすいという特徴がある。そのため、CP/MAS法よりもDD/MAS法の方が、より実際の形態に即したシラノール基の残存量を測定することができ、より精度の高い測定が可能である。なお、CP/MAS法とDD/MAS法とでは、得られるスペクトルが異なり、DD/MAS法の方が、Q2及びQ3構造のピーク面積の和(SQ2+SQ3)が小さく、シラノール残存量Bが小さい値となる。 次に、上記で求めたシランカップリング剤の反応率Aとシラノール残存量Bに基づいてシランカップリング剤の反応形態を評価する方法について説明する。 上記のように、シランカップリング剤の反応は、シリカのシラノール基との結合反応だけでなく、シランカップリング剤同士が反応する自己縮合反応もあるが、上記反応率Aには、両反応が含まれており区別できない。そのため、シラノール残存量Bを参照して反応形態を評価する。シラノール残存量Bが多いということは、上記結合反応が少ないことを意味し、自己縮合反応が多いことを示す。すなわち、シラノール残存量Bは自己縮合の相対的大小を示す指標となる。反応率Aが同じであっても、シラノール残存量Bの値が大きければ、自己縮合反応が多く、シリカの分散性や補強性の改良に有効な上記結合反応が少ないことを意味する。一方、反応率Aが高く、かつシラノール残存量Bの値が小さければ、シリカの分散性や補強性の改良に有効な上記結合反応が多いことを意味する。そのため、反応率Aとともにシラノール残存量Bを求めることにより、自己縮合反応を加味した反応形態を評価することができ、分散性や補強性の改良に寄与するシランカップリング剤の有効な反応が得られているかどうかを評価することができる。 具体的な評価方法としては、反応率Aとシラノール残存量Bから、下記式(3)によりシランカップリング剤の有効反応指数Cを算出することである。 有効反応指数C=(反応率A[%])/(シラノール残存量B) …(3) 有効反応指数Cの値が大きいほど、自己縮合反応が少なく、結合反応が多いことを示しており、すなわちシランカップリング剤の自己縮合が少なく、シリカ表面と効果的に反応していることを示す。逆に、有効反応指数Cの値が小さいということは、シランカップリング剤の反応量自体が少ないか(すなわち、反応率Aが低い)、又は、反応量自体は多いものの、自己縮合反応が多く、シリカ表面と効果的に反応していないことを示す。 そのため、有効反応指数Cが所定の値以上か否かに基づいてシリカの反応形態を評価することができる。かかる所定の値として、有効反応指数Cの値は350以上であることが好ましく、シリカ表面との有効な反応量を確保して、シリカの分散性や補強性の改良効果を高めることができる。より好ましくは370以上である。有効反応指数Cの上限値は、ゴム組成物の物性の点からは特に限定されないが、未加硫段階でのムーニー粘度の上昇を抑えることができるという点で、500以下であることが好ましい。 シランカップリング剤の反応形態を評価する際には、上記有効反応指数Cとともに、反応率Aが所定の値以上か否か基づいて評価することが好ましい。有効反応指数C及び反応率Aがともにそれぞれ所定の値以上であれば、自己縮合反応が少なく、シリカ表面との有効な反応量が多い反応形態であると評価することができ、シリカの分散性や補強性の改良効果に優れた結果が得られる。かかる所定の値として、反応率Aは75%以上であることが好ましく、より好ましくは80%以上であり、更に好ましくは90%以上である。 このように有効反応指数Cで評価する代わりに、シランカップリング剤の反応率Aとシラノール残存量Bのそれぞれの値に基づいて、シランカップリング剤の反応形態を評価してもよい。すなわち、反応率Aが所定の値以上か否かと、シラノール残存量Bが所定の値以下か否かとに基づいて反応形態を評価してもよい。この場合、反応率Aの値が高く、かつシラノール残存量Bの値が低いほど、シランカップリング剤の自己縮合が少なく、シリカ表面と効果的に反応していることを示す。そのため、反応率Aが所定の値以上かつシラノール残存量Bが所定の値以下であれば、シリカ表面との有効な反応量が多い反応形態であると評価することができる。この場合の所定の値として、反応率Aは、75%以上であることが好ましく、より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上である。また、シラノール残存量Bの値は、0.30以下であることが好ましく、より好ましくは0.27以下であり、下限は特に限定されないが、通常は0.10以上である。 次に、本実施形態に係るゴム組成物の製造方法について説明する。 該製造方法としては、ゴム成分にシリカと硫黄含有シランカップリング剤を添加し、加硫促進剤と加硫剤を添加せずに混合して、前記シランカップリング剤の反応率Aが75%以上であり、かつ前記有効反応指数Cが350〜500であるゴム組成物(ノンプロゴム混合物)を調製し、次いで、得られたゴム組成物に加硫促進剤と加硫剤を添加して混合(ファイナル混合)することで、加硫剤を含むゴム組成物を調製することができる。 このような反応率Aと有効反応指数Cを有するノンプロゴム混合物を得るための具体的な方法としては、特に限定されないが、ゴム成分にシリカとシランカップリング剤を添加し最高混合温度を120〜150℃として混合することでノンプロゴム混合物を得た後、該ノンプロゴム混合物を常温域(15〜30℃)で熟成させることが好ましい。 このようにノンプロ混合時における最高混合温度を通常よりもやや低く設定することにより、ノンプロ混合時に高温で排出することにより進行量が多くなるシランカップリング剤の自己縮合反応を抑えることができる。該最高混合温度は、より好ましくは120〜140℃である。 また、このようにして得られたノンプロゴム混合物を常温域で一定時間熟成させることにより、シリカとシランカップリング剤との結合反応を有利に進行させて、反応率Aと有効反応指数Cの値を高めることができ、補強性と低発熱性を向上することができる。熟成温度は20〜30℃であることがより好ましい。また、ノンプロゴム混合物を熟成される熟成時間は、80〜300時間であることが好ましく、より好ましくは100〜250時間である。 本実施形態では、常温域で熟成した後に、熟成したゴム混合物に加硫剤と加硫促進剤を添加し混合するファイナル混合工程を行う。ファイナル混合工程での混合も、ゴム分野において一般に使用される各種混合機、例えば、バンバリーミキサーやロール、ニーダーなどを用いて行うことができる。ファイナル混合は、比較的低温(100℃以下)で行うことが好ましく、これにより、架橋の進行による未加硫ゴム組成物のムーニー粘度の上昇を抑えることができる。 なお、上記実施形態では、ノンプロ混合工程として1回の混合工程の場合について説明したが、ノンプロ混合工程を複数回に分けて複数回の混合工程の後に、熟成工程を行ってもよい。また、ノンプロ混合工程の後に、添加剤を添加せずに再練りを行うリミル工程を実施し、その後、上記熟成工程を行うようにしてもよい。また、熟成工程の後に、追加のノンプロ混合工程を実施し、その後ファイナル混合工程を行うようにしてもよい。 この例では、上記のようにノンプロゴム混合物(特には熟成後)について上記所定の反応率A及び有効反応指数Cのものを得るが、これらの特性を測定すること自体はゴム組成物の製造方法において必須ではない。すなわち、ゴム組成物の製造工程を定める際に上記ノンプロゴム混合物での反応率A及び有効反応指数Cを測定して、これらが上記所定範囲内に入るように排出温度や熟成条件などを決定しておけば、実際のゴム組成物の製造に際しては反応率を測定する必要はない。もちろん、ゴム組成物の製造方法として、上記反応率の測定ステップを含むものであってもよい。 このようにして得られるゴム組成物の用途は、特に限定されず、タイヤ(例えば、トレッドやサイドウォール、ビード部などの各部位)、防振ゴム(例えば、エンジンマウント、ストラットマウント、ボディマウント、サスペンションブッシュなど)、免震ゴム(建築用免震ゴムなど)、コンベアベルトなどのベルトなど、各種ゴム製品に用いることができる。好ましくは、タイヤに用いることであり、常法に従い、例えば140〜200℃で加硫成形することにより、各種空気入りタイヤのゴム部分(トレッドゴムやサイドウォールゴムなど)を構成することができる。 以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。[第1実施例] ゴム組成物の配合は下記表1に示す通りであり、実施例及び比較例ともに共通の配合とした。 ゴム組成物の調製に際しては、まず、ノンプロ混合工程において、硫黄と加硫促進剤を除く成分をバンバリーミキサーで混合し、表2に示す排出温度にて排出して、ノンプロゴム混合物を得た。得られたノンプロゴム混合物は、ロールを用いて厚さ=2mmのシート状に形成した。次いで、比較例1,3,4,5,6及び8では、常温熟成せずに、ノンプロ混合後、直ちにファイナル混合工程を行うことでゴム組成物を調製した。ファイナル混合は、ノンプロゴム混合物に硫黄及び加硫促進剤を加えて、オープンロールにより60℃で5分間練り込んで行った。これに対し、実施例1〜3及び比較例2,7及び9では、上記シート状のノンプロゴム混合物を常温(25℃)で168時間熟成させた後、比較例1と同様にファイナル混合工程を行うことでゴム組成物を調製した。 上記ゴム組成物の調製過程において、ファイナル混合前のノンプロゴム混合物(常温熟成なしの例についてはノンプロ混合直後のもの、常温熟成した例については常温熟成直後のもの)について、シランカップリング剤の反応率A、シラノール残存量B、及び有効反応指数Cを求めた。シラノール残存量Bは、CP/MAS法とDD/MAS法の双方の測定を行った。 ファイナル混合後の各ゴム組成物について、未加硫状態でのムーニー粘度を測定するとともに、160℃×30分間で加硫した所定形状の試験サンプルについて、300%モジュラスを測定した。また、該ゴム組成物を用いて、キャップ/ベース構造のトレッドを有するタイヤのキャップトレッドに適用し、205/65R15 94Hの空気入りラジアルタイヤを常法に従い製造し、転がり抵抗を評価した。各測定・評価方法は以下の通りである。(シランカップリング剤の反応率A) 質量m0=1.00gに調整した厚み1mm以下のシート状の試料を、アセトンで8時間ソックスレー抽出を行い、抽出後のゴム組成物を30℃で5時間真空乾燥して質量mを測定した。次いで、日本ダイオネクス株式会社製イオンクロマトグラフ「ICS−1500」により、抽出後のゴム組成物に含まれる硫黄分S(硫黄濃度:質量%)を求めた。また、表1に示す配合においてシランカップリング剤を配合しない以外は同一のゴム組成物を同様の操作により作製し、抽出後のゴム組成物に含まれる硫黄分S0(質量%)を求め、上記式(1)によりシランカップリング剤の反応率Aを求めた。なお、シランカップリング剤の配合量から算出される抽出前のゴム組成物中に含まれるシランカップリング剤による硫黄分Sr(質量%)は0.587である。(シラノール残存量B:CP/MAS法) ノンプロゴム混合物をトルエンに浸けて室温で24時間放置した後、更にトルエンを交換して24時間浸けることでゴムポリマーを溶出させ、その後、50℃で2時間真空乾燥することにより、バウンドラバー状態のシリカを得た。これを測定試料として、29Si−CP/MAS−NMR測定を行った。詳細には、NMR装置としてBruker社製のAVANCE400を用い、測定モードは29Si−NMR,CP−MAS法とし、測定温度:25℃、マジック角回転数:4000Hz、コンタクトタイム:5msec、積算回数:2048回、及び、遅延時間:5secとして、シリカのスペクトルを求めた。そして、該スペクトルから上記Q2、Q3及びQ4構造の各ピーク面積SQ2,SQ3,SQ4を、Bruker社製の標準ソフトTopspinによりデコンヴォルーション(Deconvolution)を行い算出し、上記式(2)によりシラノール残存量Bを求めた。(シラノール残存量B:DD/MAS法) 上記CP/MAS法と同様にして作製した測定試料を用いて、29Si−DD/MAS−NMR測定を行った。詳細には、NMR装置としてBruker社製のAVANCE400を用い、測定モードは29Si−NMR,DD−MAS法とし、測定温度:25℃、マジック角回転数:4000Hz、積算回数:256回、及び、遅延時間:60secとして、シリカのスペクトルを求めた。そして、該スペクトルから上記Q2、Q3及びQ4構造の各ピーク面積SQ2,SQ3,SQ4を、Bruker社製の標準ソフトTopspinによりデコンヴォルーション(Deconvolution)を行い算出し、上記式(2)によりシラノール残存量Bを求めた。(有効反応指数C) 上記で求めたシランカップリング剤の反応率Aとシラノール残存量Bから、上記式(3)により有効反応指数Cを算出した。(ムーニー粘度) JIS K6300に準拠して東洋精機(株)製ロータレスムーニー測定機を用い、未加硫ゴムを100℃で1分間余熱後、4分後のトルク値をムーニー単位で測定した値であり、比較例5の値を100とした指数で表示した。指数が小さいほど粘度が低く、加工性に優れることを示す。(300%モジュラス) JIS K6251に準じて引張試験(ダンベル3号形)を実施し、300%伸長時のモジュラス値を比較例5の数値を100とした指数で表示した。300%モジュラスは値が大きいほどシランカップリング剤がシリカ補強に対して効果があることを示しており、従って、上記指数が大きい程、補強性に優れ、望ましいことを示す。(転がり抵抗) 使用リムを15×6.5JJとしてタイヤを装着し、空気圧230kPa、荷重4.4kNとして、転がり抵抗測定用の1軸ドラム試験機にて23℃で80km/hで走行させたときの転がり抵抗を測定した。結果は、比較例5の値を100とした指数で表示した。指数が小さいほど、転がり抵抗が小さく(低発熱性に優れ)、従って燃費性に優れることを示す。 図2は、実施例3と比較例5について、DD/MAS法によるシリカのスペクトル図である。図示されたように、常温熟成していない比較例5に対し、常温熟成した実施例3では、−85〜−95ppmにおけるQ2構造のピークと−96〜−105ppmにおけるQ3構造のピークが下がっており、すなわち、シリカ表面に残存するシラノール基の比率が下がっており、シラノール残存量Bの値が小さくなっていた。 表2に示すように、シランカップリング剤の反応率Aが高いほど、各物性値が概ね良好となる傾向が見られたが、例えば、比較例6〜9のように、反応率Aが高くても、有効反応指数Cが低い場合は、ムーニー粘度が高く、性能に劣っていた。これに対し、反応率Aが75%以上かつ有効反応指数C(DD/MAS法)が350以上であり、反応率Aと有効反応指数Cがともに高い実施例1〜3では、ムーニー粘度は低く、300%モジュラスは高く、転がり抵抗は低くなっており、いずれも特性として優れていた。このように反応率Aだけでなく、有効反応指数C(DD/MAS法)も加味することにより、シランカップリング剤の反応形態をより正確に評価することができる。 また、ノンプロ混合後に常温熟成することにより、反応率Aを高めるとともに、シラノール残存量Bの値を効果的に下げることができ、有効反応指数Cを高めることができた。これは、シランカップリング剤が常温で穏やかにシリカ粒子表面と反応することにより理想的に働いており、すなわち、自己縮合反応を抑えながら、結合反応が進行しているためと考えられる。この点、物性データについても、各排出温度において常温熟成の有無で対比すれば明らかなように、常温熟成により反応率A及び有効反応指数Cが高くなることで、物性値も良好となっている。なお、排出温度が高い場合(比較例6〜9)、シランカップリング剤の反応がノンプロ混合排出の段階でかなり進んでしまっているため、自己縮合反応を抑えるという常温熟成による効果代が小さく、ムーニー粘度も増加していた。 また、CC/MAS法とDD/MAS法を対比した場合、DD/MAS法の方が、測定時の条件調整が容易であり、また再現性が高く、精度の高い測定が可能であった。[第2実施例] ゴム組成物の配合は、シランカップリング剤(デグサ社製「Si69」)の配合量を、第1実施形態の6質量部から12質量部に変更し、その他は第1実施例と同様とした。下記表3に示す条件に従い、比較例10〜12では、常温熟成せずに、ノンプロ混合後、直ちにファイナル混合工程を行うことでゴム組成物を調製した。また、実施例4,5及び比較例13では、上記シート状のノンプロゴム混合物を常温(25℃)で168時間熟成させた後、ファイナル混合工程を行うことでゴム組成物を調製した。その他の調製方法は第1実施例と同様である。 各実施例及び比較例について、第1実施例と同様に、ファイナル混合前のノンプロゴム混合物につき、シランカップリング剤の反応率A、シラノール残存量B(DD/MAS法)、及び有効反応指数Cを求めた。また、ファイナル混合後の各ゴム組成物について、第1実施例と同様に、ムーニー粘度、300%モジュラス及び転がり抵抗を測定・評価した(但し、比較例10をコントロールとして、その値を100とした指数で表示した)。 結果は、表3に示す通りであり、第1実施例と同様に、反応率Aと有効反応指数Cがともに高い実施例4,5では、ムーニー粘度の上昇を抑えながら、300%モジュラスが高く、転がり抵抗が低くなっており、特性として優れていた。なお、比較例13では、反応率Aが高く、かつ有効反応指数Cも高いため、300%モジュラスと転がり抵抗性には優れていたが、有効反応指数Cが高すぎて、未加硫段階でのムーニー粘度が高く、加工性に劣っていた。[第3実施例] ゴム組成物の配合は、シランカップリング剤として、3−オクタノイルチオ−1−プロピルトリエトキシシラン(GEシリコーンズ社製「NXT」)6質量部を用い、その他は第1実施例と同様とした。下記表4に示す条件に従い、第1実施例と同様にして、比較例14及び実施例6のゴム組成物を調製した。詳細には、比較例14では、常温熟成せずに、ノンプロ混合後、直ちにファイナル混合工程を行うことでゴム組成物を調製した。実施例6では、シート状のノンプロゴム混合物を常温(25℃)で168時間熟成させた後、ファイナル混合工程を行うことでゴム組成物を調製した。その他の調製方法は第1実施例と同様である。 比較例14及び実施例6について、ファイナル混合前のノンプロゴム混合物につき、シランカップリング剤の反応率A、シラノール残存量B(DD/MAS法)、及び有効反応指数Cを、第1実施例と同様にして求めた。なお、この場合、Sr(質量%)=0.224である。 また、ファイナル混合後の各ゴム組成物について、ムーニー粘度、300%モジュラス、及び転がり抵抗を、第1実施例と同様に測定評価した(但し、比較例14をコントロールとして、その値を100とした指数で表示した)。 結果は、表4に示す通りであり、シランカップリング剤として保護化メルカプトシランを用いた場合についても、スルフィドシランを用いた第1実施例と同様に、ノンプロ混合後に常温熟成を行った実施例6では、反応率Aが高く、シラノール残存量Bが低くなり、有効反応指数Cが高くなっていた。また、ムーニー粘度が低くなり、300%モジュラスは高くなり、転がり抵抗が低くなっており、すなわち、加工性と補強性、低燃費性のバランスに優れていた。[第4実施例] ゴム組成物の配合は、シランカップリング剤として、3−メルカプトプロピルトリエキシシラン(モメンティブパフォーマンスマテリアルズ社製「A−1891」)6質量部を用い、その他は第1実施例と同様とした。下記表5に示す条件に従い、第1実施例と同様にして、比較例15及び実施例7のゴム組成物を調製した。詳細には、比較例15では、常温熟成せずに、ノンプロ混合後、直ちにファイナル混合工程を行うことでゴム組成物を調製した。実施例7では、シート状のノンプロゴム混合物を常温(25℃)で168時間熟成させた後、ファイナル混合工程を行うことでゴム組成物を調製した。その他の調製方法は第1実施例と同様である。 比較例15及び実施例7について、ファイナル混合前のノンプロゴム混合物につき、シランカップリング剤の反応率A、シラノール残存量B(DD/MAS法)、及び有効反応指数Cを、第1実施例と同様にして求めた。なお、この場合、Sr(質量%)=0.343である。 また、ファイナル混合後の各ゴム組成物について、ムーニー粘度、300%モジュラス、及び転がり抵抗を、第1実施例と同様に測定評価した(但し、比較例15をコントロールとして、その値を100とした指数で表示した)。 結果は、表5に示す通りであり、シランカップリング剤としてメルカプトシランを用いた場合についても、スルフィドシランを用いた第1実施例と同様に、ノンプロ混合後に常温熟成を行った実施例7では、反応率Aが高く、シラノール残存量Bが低くなり、有効反応指数Cが高くなっていた。また、ムーニー粘度が低くなり、300%モジュラスは高くなり、転がり抵抗が低くなっており、すなわち、加工性と補強性、低燃費性のバランスに優れていた。 以上のように、本実施形態によれば、シランカップリング剤の反応率Aだけでなく、自己縮合反応の相対的大小を表す指標としての有効反応指数Cも加味することにより、シランカップリング剤の反応形態をより正確に評価することができる。そのため、自己縮合反応量を制御し、これが少なくなるようなゴム組成物の開発が容易となり、優れた特性を持つシリカ配合のゴム組成物を得ることができる。 また、上記実施例のように、シランカップリング剤の反応率Aが75%以上かつ有効反応指数C(DD/MAS法)が350〜500であれば、ムーニー粘度が低く、300%モジュラスが高く、更に転がり抵抗が低く、そのため、加工性と補強性、低燃費性のバランスに優れたゴム組成物が得られる。 ゴム成分にシリカと硫黄含有シランカップリング剤を混合した未加硫のゴム組成物に対し、前記ゴム成分が溶解しない溶媒を用いて抽出処理を行うことにより、前記ゴム組成物中に含まれる未反応の前記シランカップリング剤を抽出し、抽出後のゴム組成物に含まれる硫黄量を定量することで反応済みのシランカップリング剤の含有量を求めるか、又は、抽出液に含まれる硫黄量を定量することで未反応のシランカップリング剤の含有量を求め、求めた反応済み又は未反応のシランカップリング剤の含有量を、前記シランカップリング剤の配合量と比較することによりシランカップリング剤の反応率を求め、 29Si−DD/MAS−NMR測定により前記ゴム組成物中のシリカのスペクトルを得て、該スペクトルの帰属から−85〜−95ppm付近にピークをもつQ2構造、−96〜−105ppm付近にピークをもつQ3構造及び−106〜−115ppm付近にピークをもつQ4構造のピーク面積を、それぞれSQ2,SQ3及びSQ4として、シラノール残存量B=(SQ2+SQ3)/SQ4を求め、 前記シランカップリング剤の反応率と前記シラノール残存量に基づき前記シランカップリング剤の反応形態を評価する ことを特徴とするシランカップリング剤の反応評価方法。 下記式(1)から前記シランカップリング剤の反応率Aを求め、該反応率Aと前記シラノール残存量Bから前記シランカップリング剤の有効反応指数C=A/Bを求めることを特徴とする請求項1記載のシランカップリング剤の反応評価方法。 反応率A(%)={(S−S0)/Sr}×(m/m0)×100 …(1)(式中、Sは、抽出後のゴム組成物に含まれる硫黄分(質量%)であり、S0は、前記シランカップリング剤を除いて同配合のゴム組成物について測定した抽出後のゴム組成物に含まれる硫黄分(質量%)であり、Srは、前記シランカップリング剤の配合量から算出される抽出前のゴム組成物中に含まれるシランカップリング剤による硫黄分(質量%)である。また、m0は抽出前のゴム組成物の質量であり、mは抽出後のゴム組成物の質量である。) ゴム成分にシリカと硫黄含有シランカップリング剤を添加し、加硫促進剤と加硫剤を添加せずに混合して、請求項2記載の方法で測定した前記シランカップリング剤の反応率Aが75%以上であり、かつ前記有効反応指数Cが350〜500であるゴム組成物を調製し、 得られたゴム組成物に加硫促進剤と加硫剤を添加して混合することで、加硫剤を含むゴム組成物を調製することを特徴とするゴム組成物の製造方法。 【課題】シリカ配合において添加されるシランカップリング剤について、自己縮合反応の影響を加味した反応形態の評価を行う。【解決手段】未加硫のシリカ配合のゴム組成物について、シランカップリング剤の反応率Aとシラノール残存量Bを求め、これら反応率Aとシラノール残存量Bに基づきシランカップリング剤の反応形態を評価する。反応率Aは、ゴム組成物中に含まれる未反応のシランカップリング剤を抽出し、抽出後のゴム組成物に含まれる硫黄量を定量することで反応済みのシランカップリング剤の含有量を求め、求めた反応済みのシランカップリング剤の含有量を、前記シランカップリング剤の配合量と比較することにより求める。シラノール残存量Bは、29Si−DD/MAS−NMR測定によりゴム中のシリカのスペクトルから、シラノール残存量B=(SQ2+SQ3)/SQ4により求める。【選択図】図2