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タイトル:特許公報(B1)_マイボーム腺機能不全またはマイボーム腺梗塞の治療または予防剤
出願番号:2012215348
年次:2013
IPC分類:A61K 31/7048,A61K 9/06,A61P 9/08,A61P 27/02


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木戸 一貴 長野 敬 JP 5373167 特許公報(B1) 20130927 2012215348 20120928 マイボーム腺機能不全またはマイボーム腺梗塞の治療または予防剤 参天製薬株式会社 000177634 正林 真之 100106002 林 一好 100120891 新山 雄一 100131705 木戸 一貴 長野 敬 20131218 A61K 31/7048 20060101AFI20131128BHJP A61K 9/06 20060101ALI20131128BHJP A61P 9/08 20060101ALI20131128BHJP A61P 27/02 20060101ALI20131128BHJP JPA61K31/7048A61K9/06A61P9/08A61P27/02 A61K 31/00−33/00 CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII) 眼科プラクティス,2009年,Vol.28,p.72-73 週刊日本医事新報,2004年,No.4166 ,p.33-36 眼科臨床医報,2005年,Vol.99, No.6,p.514 眼科臨床医報,2005年,Vol.99, No.8,p.682 Chemotherapy,1988年,Vol.36, No.SUPPL,p.1101-1108 Cornea,2009年,Vol.28, No.SUPPL,p.S3-S6 AN:1999268588,1999年 あたらしい眼科,2010年,Vol.27, No.5,p.627-631 後藤英樹, 山下章子,Q&A20 眼の痒みの原因にマイボーム腺炎もあると聞きましたが本当ですか? ,Q&Aでわかるアレルギー疾患,2009年,Vol.5, No.1,p.84-86 天野史郎,マイボーム腺機能不全の考え方 1.定義・診断基準とMGDの最近の考え方,眼科,2010年,ol.52, No.12 ,P.1751-1756 島崎潤,マイボーム腺のすべて マイボーム腺機能不全とドライアイ,あたらしい眼科,2001年,Vol.18, No.3, ,p.311-315 ASBELL,P.A. et al,The International Workshop on Meibomian Gland Dysfunction: Report of the Clinical Trials Subcommittee,IOVS,2011年,Vol.52, No.4,p.2065-2085 Mathers W,Dry Eye and Ocular Surface Disorders,Marcel Dekker,Inc,2004年,p.247-267 NELSON,J.D. et al,The international workshop on meibomian gland dysfunction: report of the definition and classification subcommittee,Invest Ophthalmol Vis Sci,2011年,Vol.52, No.4,p.1930-7 FOULKS,G.N. et al,Meibomian gland dysfunction: a clinical scheme for description, diagnosis, classification, and grading,Ocul Surf,2003年,Vol.1, No.3,p.107-26 Rolando M,Diagnosis and management of the lid and ocular surface disorders,The Clinician's Guide to Diagnosis and Treatment ,2006年,p.63-83 GOTO,E. et al,Low-concentration homogenized castor oil eye drops for noninflamed obstructive meibomian gland dysfunction,Ophthalmology,2002年,Vol.109, No.11,p.2030-5 KORB,D.R. et al,Meibomian gland dysfunction and contact lens intolerance,J Am Optom Assoc,1980年,Vol.51, No.3,p.243-51 OBATA,H.,Anatomy and histopathology of human meibomian gland,Cornea,2002年,Vol.21, No.7 Suppl,p.S70-4 4 8 20120928 小堀 麻子 本発明は、マイボーム腺機能不全またはマイボーム腺梗塞の治療または予防剤に関する。 ヒトの眼の上眼瞼には約25個のマイボーム腺があり、また、下眼瞼には約20個のマイボーム腺があり、マイボーム腺開口部から脂質が分泌される。マイボーム腺機能不全(meibomian gland dysfunction、MGD)は、さまざまな原因によってマイボーム腺の機能が瀰漫性に異常をきたした状態であり、慢性の眼不快感を伴うものである。また、マイボーム腺梗塞は、マイボーム腺の機能が低下し、その分泌管の中に白色透明な油状の固まりが生じ、マイボーム腺が詰まった状態をいう。 一方、クラリスロマイシンはマクロライド系抗生物質のひとつであり、その抗菌作用に基づき咽頭炎、扁桃炎、肺炎、皮膚感染症、慢性気管支炎の急性増悪等の治療に用いられている。近年、クラリスロマイシンは抗菌作用以外に抗炎症作用、免疫調整作用、細菌バイオフィルムに対する作用等を有することが知られ、これらの新たな作用に基づき、子宮内膜症または子宮筋腫、胃腸障害、そう痒の治療をはじめ、慢性気管支炎の急性増悪、気管支喘息、インフルエンザウイルス感染症、アトピー性皮膚炎、関節リウマチ等への適用が提案されている(特許文献1、2、3)。特開2006−241172号公報特開平6−92850号公報特開平11−147827号公報 そこで、クラリスロマイシンの新たな医薬用途を探索することは、非常に興味のある課題である。 本発明者らは、クラリスロマイシンの新たな医薬用途を探索すべく鋭意研究を行ったところ、(1)ラットを用いた完全フロイントアジュバントの投与によるマイボーム腺周辺毛細血管拡張試験において、クラリスロマイシンが毛細血管拡張スコアを顕著に改善すること、および(2)ヘアレスマウスを用いたHR−AD飼料の給餌によるマイボーム腺開口部の閉塞試験において、クラリスロマイシンがマイボーム腺開口部の閉塞数を顕著に減少させ、閉塞を改善することを見出し、本発明に至った。 すなわち、本発明は、クラリスロマイシンを有効成分として含有するマイボーム腺機能不全またはマイボーム腺梗塞の治療剤または予防剤である。 クラリスロマイシンを有効成分として含有する製剤は、マイボーム腺機能不全およびマイボーム腺梗塞の治療または予防に有効であることが期待される。 以下、本発明の実施形態を説明する。 本発明におけるクラリスロマイシンは、常法で容易に製造することができ、または市販品を入手することもできる。 マイボーム腺機能不全(meibomian gland dysfunction、MGD)は、さまざまな原因によってマイボーム腺の機能が瀰漫性に異常をきたした状態であり、慢性の眼不快感を伴うものである。マイボーム腺機能不全は、マイボーム腺脂の分泌の状態から、分泌減少型と分泌増加型とに分けられ、臨床における頻度は分泌減少型のほうが分泌増加型よりも高い傾向にある。 分泌減少型マイボーム腺機能不全は、マイボーム腺の導管内での過剰角化物の蓄積、または、さまざまな原因で引き起こされるマイボーム腺開口部の閉塞によってマイボーム腺脂の分泌が減少した状態である。分泌減少型MGDの特徴的な所見としては、マイボーム腺開口部閉塞所見やマイボーム腺開口部周囲異常所見(血管拡張、粘膜皮膚移行部の移動、眼瞼縁不整等)が認められる。 分泌増加型マイボーム腺機能不全は、マイボーム腺からの油脂分泌が過剰になっており、瞼板への圧迫に反応して大量のマイボーム腺脂質が眼瞼縁に圧出される特徴を有する疾患である。 マイボーム腺梗塞は、マイボーム腺の導管内で角化物と油脂の混合物が固まっている状態であり、特徴的な所見として、マイボーム腺開口部の閉塞が認められる。 マイボーム腺機能不全またはマイボーム腺梗塞を伴うことにより引き起こされる症状としては、眼不快感、灼熱感、かゆみ等の多様な症状がある。 本発明のマイボーム腺機能不全またはマイボーム腺梗塞の治療剤または予防剤は、経口でも、非経口でも投与することができる。剤型としては、点眼剤、眼軟膏、注射剤等の非経口用の剤型、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤等の経口投与用の剤型が挙げられ、特に点眼剤が好ましい。 これらへの製剤化は、汎用されている技術を用いて行うことができる。例えば、点眼剤の場合、塩化ナトリウム、濃グリセリン等の等張化剤、リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等の緩衝化剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等の界面活性剤、クエン酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム等の安定化剤、塩化ベンザルコニウム、パラベン等の防腐剤等を必要に応じて用い、製剤化を行うことができる。pHは、眼科製剤において許容される範囲内にあればよく、4〜8の範囲であることが好ましい。 眼軟膏の場合、白色ワセリン、流動パラフィン等の汎用される基剤を用いて、製剤化を行うことができる。 錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤等の経口剤の場合、乳糖、結晶セルロース、デンプン、植物油等の増量剤、ステアリン酸マグネシウム、タルク等の滑沢剤、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン等の結合剤、カルボキシメチルセルロース・カルシウム、低置換ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の崩壊剤、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マクロゴール、シリコン樹脂等のコーティング剤、ゼラチン皮膜等の皮膜剤等を必要に応じて用い、製剤化を行うことができる。 クラリスロマイシンの投与量は、症状、年令、剤型等に応じて適宜選択でき、点眼剤の場合、0.0001〜5%(w/v)、好ましくは0.01〜3%(w/v)の製剤を1日1〜6回程度点眼すればよい。経口剤の場合、通常、1日当たり0.1〜5000mg、好ましくは1〜1000mgのクラリスロマイシンを1回または数回に分けて投与すればよい。 本発明は、以下の発明も包含するものである。 (1) マイボーム腺機能不全またはマイボーム腺梗塞の治療または予防に用いられるためのクラリスロマイシン。 (2) 点眼剤または眼軟膏の剤型に製剤化される(1)記載のクラリスロマイシン。 (3) マイボーム腺機能不全またはマイボーム腺梗塞の治療または予防用医薬品の製造における、クラリスロマイシンの使用。 (4) 前記医薬品の剤型が、点眼剤または眼軟膏である(3)記載の使用。 以下に、製剤例および薬理試験の結果を示すが、これらは本発明をより良く理解するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。 製剤例1 100ml中 クラリスロマイシン 1g 濃グリセリン 2g リン酸水素ナトリウム水和物 0.1g ステアリン酸ポリオキシル40 0.1g 希塩酸/水酸化ナトリウム 適量 滅菌精製水 適量 pH 7.0 クラリスロマイシンの添加量を変えることにより、濃度0.01%(w/v)、0.1%(w/v)、1.0%(w/v)の溶解型点眼剤を調製できる。 製剤例2 100ml中 クラリスロマイシン 1g 塩化ナトリウム 0.75g リン酸水素二ナトリウム 0.06g リン酸二水素ナトリウム 0.6g ポリソルベート80 0.005g ヒプロメロース 0.001g エデト酸ナトリウム水和物 0.01g 希塩酸/水酸化ナトリウム 適量 滅菌精製水 適量 pH 7.0 クラリスロマイシンの添加量を変えることにより、濃度0.1%(w/v)、0.5%(w/v)の懸濁型点眼剤を調製できる。 製剤例3 100ml中 クラリスロマイシン 2g 流動パラフィン 30g 白色ワセリン 適量 クラリスロマイシンの添加量を変えることにより、濃度1%(w/w)、5%(w/w)の眼軟膏を調製できる。 [薬理試験] 1.ラットを用いた完全フロイントアジュバントの投与によるマイボーム腺周辺毛細血管拡張試験 (被験液調製方法) クラリスロマイシン(LKT laboratories, Inc.)、濃グリセリン、リン酸水素ナトリウム水和物およびステアリン酸ポリオキシル40を精製水に加えて溶解させ、クラリスロマイシン最終濃度1%(w/v)、pH7の被験液を調製した。 (実験方法) 5週齢の雌性Lewisラットに完全フロイントアジュバント25μLを右上眼瞼に1箇所投与した。惹起7日目に、スリットランプを用いて右上眼瞼のマイボーム腺開口部周辺を観察し、毛細血管拡張スコア判定を行った。表1の基準に従って、上眼瞼の眼瞼縁を耳側、中央部、鼻側の3分画に等分し、それぞれの分画についてマイボーム腺開口部周辺の毛細血管拡張スコアを判定し、3分画のスコアの和を1眼あたりのスコアとして算出した。なお、毛細血管の拡張の有無は、血管径が拡大した結果、通常視認できない毛細血管が確認できる状態にあるか否かで判定した。 生理食塩液投与群と1%(w/v)クラリスロマイシン水溶液投与群とに群分けし、各スコアの平均値のばらつきが小さくなるように各群6眼で試験し、惹起後8日目より、生理食塩液(5μL/眼、1日6回)、1%クラリスロマイシン水溶液(5μL/眼、1日3回または6回)を21日間にわたり右眼に点眼した。惹起後28日目にスリットランプを用いて、右上眼瞼のマイボーム腺開口部周辺を観察し、スコア判定を行った。 (結果) 結果(毛細血管拡張スコアの平均値)を表2に示す。 (考察) 惹起7日目(投与開始0日目)では、各群の毛細血管拡張スコアの平均値に差は認められなかったが、惹起後28日目(投与開始21日目)では、1%(w/v)クラリスロマイシン水溶液投与群(1日3回点眼または6回点眼)は生理食塩液投与群に比べ、マイボーム腺開口部付近の毛細血管拡張スコアを顕著に低下させた。 2.ヘアレスマウスを用いたHR−AD飼料の給餌によるマイボーム腺開口部の閉塞試験 (被験液調製方法) 薬理試験1と同様の操作をして、1%(w/v)クラリスロマイシン被験液を調製した。 (実験方法) 5週齢の雄性Hos:HR−1系ヘアレスマウスを、通常飼料給餌群6匹(CRF−1飼料、オリエンタル酵母工業株式会社製)、HR−AD飼料給餌群12匹(日本農産工業株式会社製)に群分けし、それぞれに通常飼料またはHR−AD飼料を給餌し、自発的に摂取させた。給餌開始後28日目に、スリットランプを用いて、マイボーム腺開口部を観察し、上眼瞼の中央8個のマイボーム腺開口部の中で、閉塞している開口部の数を計測した。なお、マイボーム腺開口部の閉塞の有無は、マイボーム腺開口部が白濁して盛り上がった状態にあるか否かで判定した。 HR−AD飼料給餌群12匹を、生理食塩液投与群と1%クラリスロマイシン水溶液投与群とに群分して、計測したマイボーム腺開口部の閉塞数の平均値のばらつきが小さくなるように各群6匹で試験を行い、給餌開始後29日目より、生理食塩液(2μL/眼、1日3回)、1%(w/v)クラリスロマイシン水溶液(2μL/眼、1日3回)を14日間点眼した。給餌開始後42日目に、スリットランプを用いて、マイボーム腺開口部を観察し、上眼瞼の中央8個のマイボーム腺開口部の中で、閉塞している開口部の数を計測した。 (結果) 結果(開口部閉塞数の平均値)を表3に示す。 (考察) 給餌開始28日目(投与開始0日目)では、生理食塩液投与群(HR−AD飼料給餌)と1%(w/v)クラリスロマイシン水溶液投与群(HR−AD飼料給餌)のマイボーム腺開口部の閉塞数の間に差がほとんどなかったが、給餌開始後42日目(投与開始14日目)では、1%(w/v)クラリスロマイシン水溶液投与群は、マイボーム腺開口部の閉塞数を顕著に減少させ、マイボーム腺梗塞を改善した。 本発明により、クラリスロマイシンを有効成分として用いることで、マイボーム腺機能不全およびマイボーム腺梗塞の治療または予防が可能である。 クラリスロマイシンを有効成分として含有する、マイボーム腺の機能が瀰漫性に異常をきたした状態であるマイボーム腺機能不全またはマイボーム腺梗塞の治療剤または予防剤。 マイボーム腺機能不全の治療剤または予防剤である請求項1記載の治療剤または予防剤。 マイボーム腺梗塞の治療剤または予防剤である請求項1記載の治療剤または予防剤。 剤型が、点眼剤または眼軟膏である請求項1〜3いずれか記載の治療剤または予防剤。【課題】クラリスロマイシンの新たな医薬用途を提供すること。【解決手段】本発明は、クラリスロマイシンを有効成分として含有するマイボーム腺機能不全またはマイボーム腺梗塞の治療剤または予防剤である。剤型は、点眼剤または眼軟膏であることが好ましい。【選択図】なし


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公開特許公報(A)_マイボーム腺機能不全またはマイボーム腺梗塞の治療または予防剤

生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_マイボーム腺機能不全またはマイボーム腺梗塞の治療または予防剤
出願番号:2012215348
年次:2014
IPC分類:A61K 31/7048,A61P 27/02,A61P 9/08


特許情報キャッシュ

木戸 一貴 長野 敬 JP 2014070027 公開特許公報(A) 20140421 2012215348 20120928 マイボーム腺機能不全またはマイボーム腺梗塞の治療または予防剤 参天製薬株式会社 000177634 正林 真之 100106002 林 一好 100120891 新山 雄一 100131705 木戸 一貴 長野 敬 5373167 20131218 A61K 31/7048 20060101AFI20140325BHJP A61P 27/02 20060101ALI20140325BHJP A61P 9/08 20060101ALI20140325BHJP JPA61K31/7048A61P27/02A61P9/08 4 OL 8 4C086 4C086AA01 4C086AA02 4C086EA13 4C086MA01 4C086MA04 4C086NA14 4C086ZA33 4C086ZA39 4C086ZC33 本発明は、マイボーム腺機能不全またはマイボーム腺梗塞の治療または予防剤に関する。 ヒトの眼の上眼瞼には約25個のマイボーム腺があり、また、下眼瞼には約20個のマイボーム腺があり、マイボーム腺開口部から脂質が分泌される。マイボーム腺機能不全(meibomian gland dysfunction、MGD)は、さまざまな原因によってマイボーム腺の機能が瀰漫性に異常をきたした状態であり、慢性の眼不快感を伴うものである。また、マイボーム腺梗塞は、マイボーム腺の機能が低下し、その分泌管の中に白色透明な油状の固まりが生じ、マイボーム腺が詰まった状態をいう。 一方、クラリスロマイシンはマクロライド系抗生物質のひとつであり、その抗菌作用に基づき咽頭炎、扁桃炎、肺炎、皮膚感染症、慢性気管支炎の急性増悪等の治療に用いられている。近年、クラリスロマイシンは抗菌作用以外に抗炎症作用、免疫調整作用、細菌バイオフィルムに対する作用等を有することが知られ、これらの新たな作用に基づき、子宮内膜症または子宮筋腫、胃腸障害、そう痒の治療をはじめ、慢性気管支炎の急性増悪、気管支喘息、インフルエンザウイルス感染症、アトピー性皮膚炎、関節リウマチ等への適用が提案されている(特許文献1、2、3)。特開2006−241172号公報特開平6−92850号公報特開平11−147827号公報 そこで、クラリスロマイシンの新たな医薬用途を探索することは、非常に興味のある課題である。 本発明者らは、クラリスロマイシンの新たな医薬用途を探索すべく鋭意研究を行ったところ、(1)ラットを用いた完全フロイントアジュバントの投与によるマイボーム腺周辺毛細血管拡張試験において、クラリスロマイシンが毛細血管拡張スコアを顕著に改善すること、および(2)ヘアレスマウスを用いたHR−AD飼料の給餌によるマイボーム腺開口部の閉塞試験において、クラリスロマイシンがマイボーム腺開口部の閉塞数を顕著に減少させ、閉塞を改善することを見出し、本発明に至った。 すなわち、本発明は、クラリスロマイシンを有効成分として含有するマイボーム腺機能不全またはマイボーム腺梗塞の治療剤または予防剤である。 クラリスロマイシンを有効成分として含有する製剤は、マイボーム腺機能不全およびマイボーム腺梗塞の治療または予防に有効であることが期待される。 以下、本発明の実施形態を説明する。 本発明におけるクラリスロマイシンは、常法で容易に製造することができ、または市販品を入手することもできる。 マイボーム腺機能不全(meibomian gland dysfunction、MGD)は、さまざまな原因によってマイボーム腺の機能が瀰漫性に異常をきたした状態であり、慢性の眼不快感を伴うものである。マイボーム腺機能不全は、マイボーム腺脂の分泌の状態から、分泌減少型と分泌増加型とに分けられ、臨床における頻度は分泌減少型のほうが分泌増加型よりも高い傾向にある。 分泌減少型マイボーム腺機能不全は、マイボーム腺の導管内での過剰角化物の蓄積、または、さまざまな原因で引き起こされるマイボーム腺開口部の閉塞によってマイボーム腺脂の分泌が減少した状態である。分泌減少型MGDの特徴的な所見としては、マイボーム腺開口部閉塞所見やマイボーム腺開口部周囲異常所見(血管拡張、粘膜皮膚移行部の移動、眼瞼縁不整等)が認められる。 分泌増加型マイボーム腺機能不全は、マイボーム腺からの油脂分泌が過剰になっており、瞼板への圧迫に反応して大量のマイボーム腺脂質が眼瞼縁に圧出される特徴を有する疾患である。 マイボーム腺梗塞は、マイボーム腺の導管内で角化物と油脂の混合物が固まっている状態であり、特徴的な所見として、マイボーム腺開口部の閉塞が認められる。 マイボーム腺機能不全またはマイボーム腺梗塞を伴うことにより引き起こされる症状としては、眼不快感、灼熱感、かゆみ等の多様な症状がある。 本発明のマイボーム腺機能不全またはマイボーム腺梗塞の治療剤または予防剤は、経口でも、非経口でも投与することができる。剤型としては、点眼剤、眼軟膏、注射剤等の非経口用の剤型、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤等の経口投与用の剤型が挙げられ、特に点眼剤が好ましい。 これらへの製剤化は、汎用されている技術を用いて行うことができる。例えば、点眼剤の場合、塩化ナトリウム、濃グリセリン等の等張化剤、リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等の緩衝化剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等の界面活性剤、クエン酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム等の安定化剤、塩化ベンザルコニウム、パラベン等の防腐剤等を必要に応じて用い、製剤化を行うことができる。pHは、眼科製剤において許容される範囲内にあればよく、4〜8の範囲であることが好ましい。 眼軟膏の場合、白色ワセリン、流動パラフィン等の汎用される基剤を用いて、製剤化を行うことができる。 錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤等の経口剤の場合、乳糖、結晶セルロース、デンプン、植物油等の増量剤、ステアリン酸マグネシウム、タルク等の滑沢剤、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン等の結合剤、カルボキシメチルセルロース・カルシウム、低置換ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の崩壊剤、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マクロゴール、シリコン樹脂等のコーティング剤、ゼラチン皮膜等の皮膜剤等を必要に応じて用い、製剤化を行うことができる。 クラリスロマイシンの投与量は、症状、年令、剤型等に応じて適宜選択でき、点眼剤の場合、0.0001〜5%(w/v)、好ましくは0.01〜3%(w/v)の製剤を1日1〜6回程度点眼すればよい。経口剤の場合、通常、1日当たり0.1〜5000mg、好ましくは1〜1000mgのクラリスロマイシンを1回または数回に分けて投与すればよい。 本発明は、以下の発明も包含するものである。 (1) マイボーム腺機能不全またはマイボーム腺梗塞の治療または予防に用いられるためのクラリスロマイシン。 (2) 点眼剤または眼軟膏の剤型に製剤化される(1)記載のクラリスロマイシン。 (3) マイボーム腺機能不全またはマイボーム腺梗塞の治療または予防用医薬品の製造における、クラリスロマイシンの使用。 (4) 前記医薬品の剤型が、点眼剤または眼軟膏である(3)記載の使用。 以下に、製剤例および薬理試験の結果を示すが、これらは本発明をより良く理解するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。 製剤例1 100ml中 クラリスロマイシン 1g 濃グリセリン 2g リン酸水素ナトリウム水和物 0.1g ステアリン酸ポリオキシル40 0.1g 希塩酸/水酸化ナトリウム 適量 滅菌精製水 適量 pH 7.0 クラリスロマイシンの添加量を変えることにより、濃度0.01%(w/v)、0.1%(w/v)、1.0%(w/v)の溶解型点眼剤を調製できる。 製剤例2 100ml中 クラリスロマイシン 1g 塩化ナトリウム 0.75g リン酸水素二ナトリウム 0.06g リン酸二水素ナトリウム 0.6g ポリソルベート80 0.005g ヒプロメロース 0.001g エデト酸ナトリウム水和物 0.01g 希塩酸/水酸化ナトリウム 適量 滅菌精製水 適量 pH 7.0 クラリスロマイシンの添加量を変えることにより、濃度0.1%(w/v)、0.5%(w/v)の懸濁型点眼剤を調製できる。 製剤例3 100ml中 クラリスロマイシン 2g 流動パラフィン 30g 白色ワセリン 適量 クラリスロマイシンの添加量を変えることにより、濃度1%(w/w)、5%(w/w)の眼軟膏を調製できる。 [薬理試験] 1.ラットを用いた完全フロイントアジュバントの投与によるマイボーム腺周辺毛細血管拡張試験 (被験液調製方法) クラリスロマイシン(LKT laboratories, Inc.)、濃グリセリン、リン酸水素ナトリウム水和物およびステアリン酸ポリオキシル40を精製水に加えて溶解させ、クラリスロマイシン最終濃度1%(w/v)、pH7の被験液を調製した。 (実験方法) 5週齢の雌性Lewisラットに完全フロイントアジュバント25μLを右上眼瞼に1箇所投与した。惹起7日目に、スリットランプを用いて右上眼瞼のマイボーム腺開口部周辺を観察し、毛細血管拡張スコア判定を行った。表1の基準に従って、上眼瞼の眼瞼縁を耳側、中央部、鼻側の3分画に等分し、それぞれの分画についてマイボーム腺開口部周辺の毛細血管拡張スコアを判定し、3分画のスコアの和を1眼あたりのスコアとして算出した。なお、毛細血管の拡張の有無は、血管径が拡大した結果、通常視認できない毛細血管が確認できる状態にあるか否かで判定した。 生理食塩液投与群と1%(w/v)クラリスロマイシン水溶液投与群とに群分けし、各スコアの平均値のばらつきが小さくなるように各群6眼で試験し、惹起後8日目より、生理食塩液(5μL/眼、1日6回)、1%クラリスロマイシン水溶液(5μL/眼、1日3回または6回)を21日間にわたり右眼に点眼した。惹起後28日目にスリットランプを用いて、右上眼瞼のマイボーム腺開口部周辺を観察し、スコア判定を行った。 (結果) 結果(毛細血管拡張スコアの平均値)を表2に示す。 (考察) 惹起7日目(投与開始0日目)では、各群の毛細血管拡張スコアの平均値に差は認められなかったが、惹起後28日目(投与開始21日目)では、1%(w/v)クラリスロマイシン水溶液投与群(1日3回点眼または6回点眼)は生理食塩液投与群に比べ、マイボーム腺開口部付近の毛細血管拡張スコアを顕著に低下させた。 2.ヘアレスマウスを用いたHR−AD飼料の給餌によるマイボーム腺開口部の閉塞試験 (被験液調製方法) 薬理試験1と同様の操作をして、1%(w/v)クラリスロマイシン被験液を調製した。 (実験方法) 5週齢の雄性Hos:HR−1系ヘアレスマウスを、通常飼料給餌群6匹(CRF−1飼料、オリエンタル酵母工業株式会社製)、HR−AD飼料給餌群12匹(日本農産工業株式会社製)に群分けし、それぞれに通常飼料またはHR−AD飼料を給餌し、自発的に摂取させた。給餌開始後28日目に、スリットランプを用いて、マイボーム腺開口部を観察し、上眼瞼の中央8個のマイボーム腺開口部の中で、閉塞している開口部の数を計測した。なお、マイボーム腺開口部の閉塞の有無は、マイボーム腺開口部が白濁して盛り上がった状態にあるか否かで判定した。 HR−AD飼料給餌群12匹を、生理食塩液投与群と1%クラリスロマイシン水溶液投与群とに群分して、計測したマイボーム腺開口部の閉塞数の平均値のばらつきが小さくなるように各群6匹で試験を行い、給餌開始後29日目より、生理食塩液(2μL/眼、1日3回)、1%(w/v)クラリスロマイシン水溶液(2μL/眼、1日3回)を14日間点眼した。給餌開始後42日目に、スリットランプを用いて、マイボーム腺開口部を観察し、上眼瞼の中央8個のマイボーム腺開口部の中で、閉塞している開口部の数を計測した。 (結果) 結果(開口部閉塞数の平均値)を表3に示す。 (考察) 給餌開始28日目(投与開始0日目)では、生理食塩液投与群(HR−AD飼料給餌)と1%(w/v)クラリスロマイシン水溶液投与群(HR−AD飼料給餌)のマイボーム腺開口部の閉塞数の間に差がほとんどなかったが、給餌開始後42日目(投与開始14日目)では、1%(w/v)クラリスロマイシン水溶液投与群は、マイボーム腺開口部の閉塞数を顕著に減少させ、マイボーム腺梗塞を改善した。 本発明により、クラリスロマイシンを有効成分として用いることで、マイボーム腺機能不全およびマイボーム腺梗塞の治療または予防が可能である。 クラリスロマイシンを有効成分として含有するマイボーム腺機能不全またはマイボーム腺梗塞の治療剤または予防剤。 マイボーム腺機能不全の治療剤または予防剤である請求項1記載の治療剤または予防剤。 マイボーム腺梗塞の治療剤または予防剤である請求項1記載の治療剤または予防剤。 剤型が、点眼剤または眼軟膏である請求項1〜3いずれか記載の治療剤または予防剤。 【課題】クラリスロマイシンの新たな医薬用途を提供すること。【解決手段】本発明は、クラリスロマイシンを有効成分として含有するマイボーム腺機能不全またはマイボーム腺梗塞の治療剤または予防剤である。剤型は、点眼剤または眼軟膏であることが好ましい。【選択図】なし20130415A16333全文3 クラリスロマイシンを有効成分として含有する、マイボーム腺の機能が瀰漫性に異常をきたした状態であるマイボーム腺機能不全またはマイボーム腺梗塞の治療剤または予防剤。 マイボーム腺機能不全の治療剤または予防剤である請求項1記載の治療剤または予防剤。 マイボーム腺梗塞の治療剤または予防剤である請求項1記載の治療剤または予防剤。 剤型が、点眼剤または眼軟膏である請求項1〜3いずれか記載の治療剤または予防剤。


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