生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_ビフィズス菌の検出方法
出願番号:2012214615
年次:2014
IPC分類:C12N 15/09,C12Q 1/68,C12Q 1/04


特許情報キャッシュ

利光 孝之 中村 真梨枝 寺原 正樹 JP 2014068545 公開特許公報(A) 20140421 2012214615 20120927 ビフィズス菌の検出方法 株式会社明治 000006138 志村 尚司 100104307 利光 孝之 中村 真梨枝 寺原 正樹 C12N 15/09 20060101AFI20140325BHJP C12Q 1/68 20060101ALI20140325BHJP C12Q 1/04 20060101ALI20140325BHJP JPC12N15/00 AC12Q1/68 AC12Q1/04 3 5 OL 12 4B024 4B063 4B024AA11 4B024CA01 4B024CA09 4B024DA05 4B024HA14 4B063QA18 4B063QQ03 4B063QQ06 4B063QQ42 4B063QR32 4B063QR62 4B063QR72 4B063QR75 4B063QS34 4B063QX01 本発明は、ビフィズス菌の検出方法に関する。 Bifidobacterium bifidum OLB6378(ビフィズス菌OLB6378)は、乳幼児に由来するビフィズス菌の中から、IgA産生刺激活性を指標に選抜された菌株であり(特許文献1)、乳幼児用プロバイオティクスとしての利用が期待されている。当該ビフィズス菌OLB6378は、腸管上皮細胞などの粘膜上皮細胞からの分泌成分の産生を誘導し、かつ、パイエル板細胞をはじめとする粘膜関連リンパ組織におけるIgA産生を高レベルに誘導することが知られている(特許文献1)。また、ビフィズス菌OLB6378は、腸管における主要な抗菌物質であるβ-ディフェンシンの発現を増強し、腸管上皮細胞からのIgA分泌促進因子であるpIgRの産生促進作用も有する(非特許文献1、2)ことから、腸管の感染防御に有効であり、極めて安全性が高いことも確認されている。そこで、当該菌株を用いた乳幼児への介入試験が実施されており、被験者の糞便中に存在するビフィズス菌OLB6378の菌数を測定することが求められている。 ビフィズス菌OLB6378の菌数測定方法として、例えば、特許文献2には、凍結乾燥菌末中の生菌数を測定した試験例が記載されている。当該方法は、ビフィズス菌培養に通常用いられる培地であるBL寒天培地で培養する方法である。 しかしながら、例えば糞便中にはビフィズス菌OLB6378以外のビフィズス菌も含まれているので、前記BL寒天培地はもとより、Bifidobacterium属の細菌を選択的に培養し得る選択培地、例えばTOSプロピオン酸寒天培地を用いたとしても、ビフィズス菌OLB6378のみを選択的に培養できず、また、コロニーの形状や色などの形態を加味したとしてもビフィズス菌OLB6378のみの菌数を測定することができない。 特許文献3や特許文献4には、RAPD-PCR(Random Amplified Polymorphic DNA-PCR)により、目的とする菌種の乳酸菌であるかどうかを判別する方法が開示されている。しかしながら、当該方法は定量的な方法とは言えず、菌数の検出には適切な方法とは言えない。また、当該方法はPCRによる増幅と増幅産物の電気泳動による確認という2工程が必要であり、簡便な方法であるとは言えなかった。そして、特許文献3や特許文献4に記載の方法はそれぞれビフィズス菌OLB6378以外の細菌を対象とするものであり、ビフィズス菌OLB6378を選択的に検出する方法ではない。国際公開WO2006/087913号公報特開2011−201840号公報特開2008−054556号公報特開2004−097222号公報Nakamura Y, et al., Digestive Organs Immunol., 42, 53-6 (2005)Nakamura Y,et al., Scandinavian Journal of Immunology, 75(2), 176-183 (2012) 本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、簡便な方法により、糞便など種々のビフィズス菌が存在することが想定される検体からビフィズス菌OLB6378を選択的に検出し、また定量的に把握する方法を提供することにある。 本発明の検出方法は、配列番号1に記載された塩基配列からなる核酸及び配列番号2に記載された塩基配列からなる核酸をプライマーセットとしてPCR法を適用して、ビフィズス菌OLB6378を選択的に検出し、又は定量的PCR法を適用して検体中のビフィズス菌OLB6378の菌数を測定する方法である。 本発明によると、糞便など種々のビフィズス菌が存在することが想定される検体からでもビフィズス菌OLB6378の存否を確実に把握し、又は検体に存在する菌数を迅速かつ正確に把握できる。図1はC89プライマーセットを用いたRAPD-PCRによる増幅産物の電気泳動画像である。図2はC89プライマーセットにより増幅された1074bpのバンドの塩基配列を示す図である。N末端及びC末端の枠囲みはC89プライマーの結合部位を、2つの矢印はIB-3プライマーセットを用いて増幅される核酸部分(483bps)を示す。図3はIB-3プライマーセットを用いたPCRによる増幅産物の電気泳動画像Aである。図4はIB-3プライマーセットを用いたPCRによる増幅産物の電気泳動画像Bである。図5はCt値と菌数の関係を示すグラフである。 本発明に係る検出方法は、配列番号1に記載の塩基配列からなる核酸と配列番号2に記載の塩基配列からなる核酸をプライマー(プライマーセット)としてPCR法を適用し、検体(被験物質)中のビフィズス菌OLB6378を選択的に検出し、又は検体中のビフィズス菌OLB6378の菌数を測定する方法である。 本発明において「PCR」とは当業者に通常用いられる意味で用いられ、目的とする核酸を増幅する手段である。本発明においては、配列番号1に記載の塩基配列からなる核酸と配列番号2に記載の塩基配列からなる核酸がプライマーセットとして用いられる。両プライマーを用いてPCRを適用すると、ビフィズス菌OLB6378が存在した場合にはビフィズス菌OLB6378に特有の約480bpsのDNA断片が増幅される。このDNA断片は、ビフィズス菌OLB6378が存在した場合にのみ増幅され、ビフィズス菌OLB6378が存在しない場合にはその他のビフィズス菌やその他の乳酸菌、その他の菌が存在しているとしても、この約480bpsのDNA断片は増幅されず検出されない。 すなわち、本発明の検出方法は、配列番号1に記載の塩基配列からなる核酸と配列番号2に記載の塩基配列からなる核酸をプライマーとして前記約480bpsのDNA断片をPCRにより増幅させ、増幅された該DNA断片を検出することによって、ビフィズス菌OLB6378の存否及びビフィズス菌OLB6378の存在量を検出する方法である。 本発明における検出対象であるビフィズス菌OLB6378は、例えば特許文献1に開示された方法により取得される菌株であり、独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に受託番号NITE P-31として寄託されている菌株又はこれに分類されるビフィズス菌である。 本発明において、「選択的に検出する」とは、検体中にビフィズス菌OLB6378が存在するかどうかを検出することを意味し、「選択的に検出する」場合として、ビフィズス菌OLB6378のみが存在することが既知である検体中からビフィズス菌OLB6378を検出する場合だけでなく、ビフィズス菌OLB6378の他に、ビフィズス菌OLB6378以外のビフィズス菌が存在することが既知である検体中から、ビフィズス菌OLB6378を検出する場合や、ビフィズス菌の存否や存在するビフィズス菌の種類が不明であるが、ビフィズス菌OLB6378をはじめとするビフィズス菌の存在が想定される検体中から、ビフィズス菌OLB6378を検出する場合があり得る。 本発明において、定量的に測定するとは、検体中に存在するビフィズス菌OLB6378の存在量を測定することを意味し、「選択的かつ定量的に測定する」場合として、ビフィズス菌OLB6378のみが存在することが既知である検体中からビフィズス菌OLB6378の存在量を測定する場合だけでなく、ビフィズス菌OLB6378の他に、ビフィズス菌OLB6378以外のビフィズス菌が存在することが既知である検体中から、ビフィズス菌OLB6378の存在量を検出する場合や、ビフィズス菌の存否や存在するビフィズス菌の種類が不明であるが、ビフィズス菌OLB6378をはじめとするビフィズス菌の存在が想定される検体中における、ビフィズス菌OLB6378の存在量を測定する場合があり得る。 本発明において対象となる検体は、特に制約されるものではないが、好ましくはビフィズス菌、特にビフィズス菌OLB6378の存在が想定される検体である。当該検体は、例えば、ヨーグルトやチーズなどの乳製品であり、乳酸菌飲料であり、乳酸菌タブレットのような乳酸菌を含む飲食品であり得る。また、抗アレルギー剤や乳酸菌製剤のような乳酸菌を含む医薬品であり、さらには前記のようにビフィズス菌、特にビフィズス菌OLB6378を摂取した動物(ヒトを含む)などの糞便などの排泄物でもあり得る。 検体によってはそのままPCRを適用することが可能な場合もあるが、多くの場合、これらの検体には、PCRを適用するために必要な前処理が施される。前処理は、通例、検体中に存在する細菌から核酸、特にDNAを抽出する工程を含み、場合によっては検体中から細菌を取り出す工程や細菌から抽出したDNAを精製する工程を含む。これらの前処理には、当業者により検体に適切な方法が適宜選択され得る。 PCRは前処理して得られたサンプル(または検体)中の核酸を増幅する方法であって、PCRの条件は適宜当業者により決定され得る。PCRにより増幅された増幅産物中に前記約480bpの核酸が検出されると、ビフィズス菌OLB6378が存在していると判断し得る。また、増幅された前記約480bpの核酸を定量することで、検体中に存在するビフィズス菌OLB6378の菌数を測定し得る。 増幅産物中に存在する約480bpの核酸を検出する方法は公知であり、その方法は特に制約されるものではない。例えば、PCR適用後の増幅産物を電気泳動することにより検出する方法が例示される。また、前処理して得られたサンプルに定量的PCR法を適用して、その増幅曲線のカーブから検出する方法が例示される。また、前処理して得られたサンプルに定量的PCR法を適用してCt値(Threshold Cycle)を求め、菌数が既知である検体から測定されたCt値との対比を行うことによって検体中に存在するビフィズス菌OLB6378の存在量(菌数)を測定する方法が例示される。 定量的PCR法はPCRの一方法であり、PCRによる核酸の増幅と増幅された核酸の検出を同時に行う方法であって、公知の方法である。当該方法は迅速に測定できる点から好ましい方法である。定量的PCR法における増幅条件や、増幅された核酸の検出方法や検出条件は適宜当業者により決定され得る。 本発明ではビフィズス菌OLB6378に特有の核酸を増幅させることができるプライマーセットが用いられるので、簡単な手法であるPCR、特に定量的PCR法を適用することによって、多種類のビフィズス菌を含む検体中におけるビフィズス菌OLB6378の存否を検出し、また、その存在量を検出することができる。特に定量的PCR法は短時間で結果が判明するので、治療等の目的で乳幼児に投与した場合には、ビフィズス菌OLB6378の投与による効果をほぼリアルタイムに近い状況で把握することができる。 次に本発明について下記の実施例に基づいてさらに詳細に説明する。なお、下記の実施例はあくまでも実施例にすぎず、本発明は以下の実施例に限定されないのは言うまでもない。 (プライマーセットの決定) まず、RAPD-PCRによりB. bifidum OLB6378において特異的に増幅されるDNA産物について検討した。43株のB. bifidum(表1参照)をGAM培地に接種し、37℃で18時間嫌気培養した。DNAの抽出には、QIAamp DNA stool Mini Kit(Qiagen)を用いた。抽出方法は、ジルコニアビーズを用いた以外は付属のプロトコルに従った。集菌した菌にASL溶解バッファー及びジルコニアビーズを添加し、TissueLyser(Qiagen)で細胞を破砕した。また、抽出したDNAを、QIAcube(Qiagen)を用い付属のプロトコルに従って精製した。抽出したDNAは水に懸濁し、NanoDrop 1000 (Thermo Fisher Scientific Inc.)によってDNA濃度を測定した。 12塩基長の57種のRAPDプライマー(BEX common primers)と10塩基長の40種のRAPDプライマー(ツクバカスタムオリゴサービス)をRAPD-PCRに供した。10ngの上記精製したDNA(テンプレートDNA)、10pmolのRAPDプライマー、250μMのdNTP、1unitのEx Taq DNAポリメラーゼ(タカラ)を混合し、GeneAmp PCR system 9700(ABI)を用いて増幅を行った。PCRプログラムは、95℃で5分、(95℃で30秒+35℃で30秒+72℃で30秒)を40サイクル、72℃で7分の最終伸長反応とした。増幅したPCR産物は1.5%のアガロースゲルで電気泳動し、エチジウムブロマイド染色によりバンドを検出した。その結果を図1に示す。 この結果、BEX common primerの中のC89 (5′-TCC CAC GTT TGG-3′)を用いた場合に、43株のB. bifidumの中でOLB6378に特異的な1074bpのバンドが検出された(図1のLane1)。このバンドのRAPD断片を、GFX PCR DNA and Gel Band Purification Kit(GE Healthcare)を用いて精製し、pGEM-TとpGEM-T Easy Vector Systems(Promega)を用いてクローニングした。リコンビナントのベクターはDH5ocに形質転換し、plasmidPrep Mini Spin Kit(GE healthcare)を用いてプラスミドの抽出を行い、BigDye Terminator vl.1Cycle Sequencing Kit(ABI)とABI 3100 DNA Analyzer(ABI)を用いてシークエンスした。得られた配列情報(配列番号3)を基に、Primer3 software(Whitehead Institute)を用いて13種のプライマーセットの設計を行った。当該13種のプライマーセットを表2に示す。 次に設計した13種のプライマーセットを用いたPCRを行い、OLB6378に特有なバンドを検出した。OLB6378を含む10株のB.bifidumを用いて、上記方法によりテンプレートDNAを得た。10ngのテンプレートDNA、0.08μMのプライマーセット、0.01unitのMightyAmp DNA ポリメラーゼ(タカラ)を混合し、GeneAmp PCR system 9700(ABI)を用いて増幅を行った。PCRプログラムは、95℃で5分、(98℃で10秒+68℃で55秒)を40サイクルとした。増幅したPCR産物は1.5%のアガロースゲルで電気泳動し、エチジウムブロマイド染色によりバンドを検出した(図示せず)。 この結果、IB-3プライマーセット(IB-F1: 5′-TCC CAC GTT TGG GTA AAG GAT-3′ and IB-R3: 5′-TCA ATT CTG GAG GTT CCT TGT TAT-3′)を用いた場合にOLB6378に特異的な約480bpのバンドが検出され、図2に示す矢印の部分(483bp)が増幅されることが明らかとなった。 (プライマーセットによる検出特異性の確認) 次に、得られたIB-3プライマーセットを用いてその検出特異性を確認した。1株のOLB6378を含む47株のB.bifidum(表3)と20株のBifidobacterium種細菌(表4)から、上記13種のプライマーセットを用いた場合と同様にしてDNAの抽出及びPCRを行ったところ、OLB6378のみから上記約480bpの核酸増幅が検出され、他のB.bifidumからはその増幅が認められず、IB-3プライマーセットはOLB6378のみを検出することが確認された(図3及び図4)。これにより、IB-3プライマーセットを用いてPCRを適用すればOLB6378を特異的に検出できることが示された。 (定量的PCR法による定量性の確認) IB-3プライマーセットを用いて定量的PCR法を行い、定量性を確認した。20ngのテンプレートDNA、0.1μMのプライマーセット、1XのMighty Amp for Real-time(SYBR Plus)、1XRox Reference Dye(Invitorogen)を含む50μlのサンプルを定量的PCR法に適用し、ABI 7300 real-time PCR system (Applied Biosystems)を用いて増幅を行った。PCRプログラムは、98℃で2分、(98℃で10秒+68℃で55秒)を40サイクルとした。 菌数が既知であるOLB6378を含むヒト糞便を用いて定量的PCR法を適用したところ、図5に示すようにCt値と菌数との間に良好な直線関係が得られ、1gの糞便中107〜1011CellsのOLB6378を検出できることが確認された。また、OLB6378から得られた溶融曲線は安定した温度(Tm)を示したが、その他の菌株は溶融曲線が得られず、定量的PCR法の溶融曲線のみからもOLB6378のみを検出できることが確認された(図示せず)。なお、ヒト糞便からのテンプレートDNAは、実施例1に記載された方法に順じて調製した。すなわち、糞便にASL溶解バッファー及びジルコニアビーズを添加し、TissueLyser(Qiagen)で細胞を破砕した。その後、QIAamp DNA stool Mini Kit(Qiagen)を用いてDNAを抽出し、抽出したDNAを、QIAcube(Qiagen)を用い付属のプロトコルに従って精製した。 本発明によると、複数種のビフィズス菌の存在が想定される検体、例えば糞便等において、ビフィズス菌OLB6378を特異的に検出し、かつ定量的に測定できる。 配列番号1に記載の塩基配列からなる核酸及び配列番号2に記載の塩基配列からなる核酸を用いたPCR法により、検体中のビフィズス菌OLB6378を選択的に検出する方法。 配列番号1に記載の塩基配列からなる核酸及び配列番号2に記載の塩基配列からなる核酸を用いた定量的PCR法により、検体中のビフィズス菌OLB6378を選択的かつ定量的に測定する方法。 配列番号1に記載の塩基配列からなる核酸及び配列番号2に記載の塩基配列からなる核酸とからなるプライマーセット。 【課題】簡便な方法により、糞便など種々のビフィズス菌が存在することが想定される検体からOLB6378を選択的に検出し、また定量的に把握する方法を提供する。【解決手段】OLB6378が存在すると考えられるヒト糞便などの検体を前処理して得られた試料を、特定の塩基配列からなる核酸と他の特定の塩基配列からなる核酸からなるプライマーセットを用いてPCRを適用し、OLB6378が存在する場合に特異的に観察される約480の塩基配列からなる核酸の増幅の有無を検出する。また、定量的PCR法を適用して検体中に存在するOLB6378の菌数を測定する。【選択図】図5配列表


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