生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_DOSY法を用いるNMR測定方法
出願番号:2012213279
年次:2014
IPC分類:G01N 24/12,G01R 33/31,G01R 33/32,G01N 24/08


特許情報キャッシュ

松原 康史 森岡 哲哉 JP 2014066650 公開特許公報(A) 20140417 2012213279 20120926 DOSY法を用いるNMR測定方法 日本ポリプロ株式会社 596133485 日本ポリエチレン株式会社 303060664 小島 隆 100123227 松原 康史 森岡 哲哉 G01N 24/12 20060101AFI20140320BHJP G01R 33/31 20060101ALI20140320BHJP G01R 33/32 20060101ALI20140320BHJP G01N 24/08 20060101ALI20140320BHJP JPG01N24/12 510LG01N24/02 510FG01N24/02 530KG01N24/08 510D 7 3 OL 12 本発明は、DOSY法を用いるNMR測定方法に関し、詳しくは、複数の成分を含む混合試料を分離することなく、各成分の自己拡散係数の差を利用してスペクトル分離を行う手法として知られているDOSY(Diffusion Ordered SpectroscopY)法を用いた、試料の分析に有用なNMR測定方法の改良に係わるものである。 NMRスペクトロスコピイ法(核磁気共鳴分光分析法)は、1H、13C、31Pなどの原子の核磁気共鳴を利用する機器分析法として、以前から有機化合物の構造決定及び有機反応の追跡或いは高分子化合物のポリマー構造の解析などに広く汎用されている。 そのNMR分析法も、測定技術や分析機器及び解析ソフトや測定対象などにおいて改良と進歩が続けられているが、例えば、近年においては、NMR測定方法においてより高度な分析と解析を行うために、拡散整列(DiffusionOrdered)分光法として知られている、いわゆるDOSY法、が利用されるようになっている。 そして、DOSY法は近年のNMR装置の精度向上及び処理ソフトの改良により、広い分野で利用されるようになってきた。 その利用態様の例としては、高分子由来のピークを低減させることで、より正確なDOSY測定を行えるNMR測定法が開示され、また、拡散係数に基づいて混合物中のNMRシグナルの分離を可能にするために、DOSY双極パルス対励起エコー(BipolarPulse Pair Stimulated Echo)パルスシーケンスを用いた、共重合の解析と重合反応の追跡法が提示されている(特許文献1,2)。 DOSY法では複数の磁場勾配パルスを使用することにより試料からの信号を減衰させるが、その際、拡散係数の大きい低分子量物質からの信号ほど信号の減衰度合いが激しくなる現象を利用して、拡散係数(即ち分子量)に応じてスペクトルを分離する。 DOSY法における最もシンプルなパルス系列は図1に示すPFG−SPIN−ECHO法であるが、この系列では磁化の緩和がXY平面内で起こるため、信号の強度がT2緩和時間に依存する。そのため、T2緩和時間の短い高分子などでは拡散が無視しえる程度の条件であっても時間とともに信号が消えてしまうという欠点がある。更に、最後の磁場勾配パルスによる渦電流の影響を受けるなど、開発の初期には正確なデータを得るための課題を持つものであった。 これらの課題を克服するための改良されたパルス系列として、STEと呼ばれる刺激エコー(stimulated echo)を用いるものや渦電流の影響を排除するためのBPP、LED系列、及びこれらを組み合わせた系列が提案されてきた(非特許文献1)。 一例として刺激エコーとBPPを組み合わせたSTE−BPPパルス系列を図2に示す。こうしたパルス系列の改良によりT2緩和による信号消失や渦電流の影響の排除に一定の効果が認められた。 一方、これらとは別の課題として試料管内に生じる温度むらによって試料溶液が対流を起こして信号が歪んでしまったり拡散とは無関係に減衰してしまったりして、正確なDOSYデータが得られないという大きな問題があった。 この課題を解消する目的で対流の発生を抑制するように形状を工夫した試料管を使用する方法が提案されている(非特許文献1,2)が、高価な特殊試料管を作製する必要がある上に、試料を封入する部分の体積が小さく、したがって、測定に供することのできる試料量に制限があり、微小な信号の検出が困難になるという欠点を呈していた。 他方、試料管内での対流による信号の歪や減衰を補償するために多数の磁場勾配パルスを組み込んだ二重刺激エコーパルス系列(double stimulated echo法;d−STE法、非特許文献1,3)が提案されている。 この手法によって対流による信号の歪や減衰はある程度は低減されるが、それでもなお十分に正確なDOSYデータを取得するには至っていない。とりわけ、ポリオレフィンなどの分析測定に必要な、80℃以上の高温で測定を行う場合や、感度の高いクライオプローブを用いて信号検出を行う場合には対流の影響は一層顕著になり、d−STE法やこれと前記した方法を組み合わせた方法を用いても正確なDOSYデータを取得することはできなかった。特開2009−085736号公報(要約及び段落0001を参照)特開2011−099112号公報(段落0106を参照)「Progress in Nuclear Magnetic Resonance spectroscopy」,1999年、34巻、p203〜256「Journal of Magnetic Resonance」,2004年、167巻、 p328〜333「Journal of Magnetic Resonance」, 1997年、125巻、p372〜375 背景技術において概述したように、DOSY法は近年の装置の精度向上や処理ソフトの改良、パルスプログラムの開発などによって、広い分野で利用されるようになったが、T2緩和による信号消失や渦電流の影響の問題は一応解決されたとしても、試料管内で生じる温度むらによる試料の対流の影響を完全には抑止できないため、公知の方法では十分に正確な測定を行うことができない。とりわけ、80℃を超える高温での測定や、室温付近での測定であってもクライオプローブを用いて測定を行う場合には採取されるデータの歪は著しく、正確なDOSY測定を行う方法の開発が望まれていた。 そこで、本発明は、温度むらによる試料の対流の影響を排除して、かつ測定温度やプローブの種類によらず、正確なDOSY測定を行えるようなNMR測定方法を提供することを目的(発明の課題)とする。 本発明者らはDOSY測定を行うに際し、いまだ不十分である試料の対流の影響によるデータの歪や減衰をより完全に抑止するべく、また、測定温度やプローブの種類によらずに正確なDOSY測定を行えるように、パルス系列、試料管形状、濃度、温度制御方法など、種々の因子のデータに及ぼす影響について、多面的に考察し測定データの検案などを行った結果、二重刺激エコーパルス系列を用いると同時に試料の温度制御に用いる気体の流量を特定範囲にすることでにより、データの歪や減衰を抑えて、かつ測定温度やプローブの種類によらずに、十分に正確なDOSYYデータが得られることを見い出し、本発明を創作するに至った。 すなわち、本発明は、DOSY測定を行うに際して、二重刺激エコーパルス系列を用い、かつ、試料の温度制御に用いる気体の流量を800L/Hr以上1,400L/Hr以下とすることを特徴とする、DOSY法を用いるNMR測定方法であり、この測定方法が本発明における基本発明を構成する。 このDOSY測定法は、とりわけ室温では溶媒への溶解性に乏しく、高温での測定が不可避な、ポリオレフィンなどの試料の高精度かつ高感度なDOSY測定として広く利用できる。 本発明においては、基本発明における実施の態様の発明として、1HのDOSY信号を生成した後に、INEPTもしくはDEPTパルス系列を加えて1Hに結合した13Cに占有数移動又は磁化移動させる態様、80℃以上130℃以下の温度でポリオレフィンのDOSY測定を行う態様、クライオプローブを用いて信号を検出する態様、DOSY測定により、重合した樹脂中の副生成物及び不純物を分離せずに検出する態様、樹脂の品質管理方法及び該品質管理方法を用いる樹脂の製造方法の態様、が挙げられる。 以上においては、本発明が創作される経緯と、本発明の基本的な構成要素と特徴について概観的に記述したので、ここで本発明の全体を俯瞰すると、本発明は次の発明の単位群から構成されるものであって、[1]の発明を基本発明とし、それ以下は、基本発明を実施態様化するものである。なお、発明群の全体をまとめて、「本発明」という。 [1]試料温度の制御に用いる気体の流量を800L/Hr以上1,400L/Hr以下とし、かつ、二重刺激エコーパルス系列を用いてDOSY測定を行うことを特徴とするNMR測定方法。 [2]二重刺激エコーパルス系列が1H核を励起するものであり、かつ、1HのDOSY信号を生成した後に、INEPTもしくはDEPTパルス系列を加えて1Hに結合した13Cに占有数移動又は磁化移動させて、13Cからの信号を観測することを特徴とする、[1]におけるNMR測定方法。 [3]80℃以上130℃以下の温度でポリオレフィンのDOSY測定を行うことを特徴とする、[1]又は[2]におけるNMR測定方法。 [4]クライオプローブを用いて信号を検出することを特徴とする、[1]〜[3]のいずれかにおけるNMR測定方法。 [5]DOSY測定により、重合した樹脂中の副生成物及び不純物を分離せずに検出することを特徴とする、[1]〜[4]のいずれかにおけるNMR測定方法。 [6][1]〜[5]のいずれかにおけるNMR測定方法を用いることを特徴とする、樹脂の品質管理方法。 [7][6]における品質管理方法を用いることを特徴とする、重合による樹脂の製造方法。 本発明によれば、試料管内で生じる温度むらによる試料の対流の影響を充分に排除して、また、測定温度やプローブの種類によらず、80℃を超える高温での測定や、室温付近での測定でクライオプローブを用いて測定を行う場合にも、正確なDOSY測定を行うことができる。 特に、このDOSY測定法は、とりわけ室温では溶媒への溶解性に乏しく、高温での測定が不可避な、ポリオレフィンなどの試料の高精度かつ高感度なDOSY測定として広く利用できる。PFG−SPIN−ECHOパルス系列を示すイメージ図である。STE−BPPパルス系列の例を示すイメージ図である。二重刺激エコーパルス系列の例を示すイメージ図である。BPP機能を組み込んだ二重刺激エコーパルス系列の例を示すイメージ図である。実施例1で得られたDOSY法スペクトルを示すスぺクトル図である。実施例1で得られたDOSY法スペクトルの積分強度を磁場勾配強度に対してプロットしたDOSY法解析プロットを示す、グラフ図である。比較例1で得られたDOSY法スペクトルを示すスぺクトル図である。比較例2で得られたDOSY法スペクトルの積分強度を磁場勾配強度に対してプロットした図を示す、グラフ図である。実施例2で用いたパルス系列を示すイメージ図である。実施例2で得られたDOSY法スペクトルを示すスぺクトル図である。実施例2のDOSY法解析プロットを示すグラフ図である。比較例3で得られたDOSY法スペクトルを示すスぺクトル図である。比較例3のDOSY法解析プロットを示すグラフ図である。参考例1で得られたDOSY法スペクトルを示すスぺクトル図である。参考例1のDOSY法解析プロットを示すグラフ図である。 以下においては、本発明を実施する態様において、本発明におけるDOSY測定を用いるNMR測定方法について、具体的かつ詳細に記述する。 1.基本発明について 本発明に必須の構成要件(発明の特定事項)は、DOSY測定を行うに際して、(1)二重刺激エコーパルス系列を用いることと同時に、(2)試料温度の制御に用いる気体の流量を800L/Hr以上1,400L/Hr以下にすることである。(i)二重刺激エコーパルス系列 本発明に必須の構成要素の二重刺激エコーパルス系列の例を図3に示す。この他に、更に渦電流を消去するBPP機能を付加した、図4に示す二重刺激エコーパルス系列も例示することができる。 二重刺激エコー法は対流によって試料管内を一定の速度で上下する成分の信号減衰や歪を補償するために必要なパルス系列であり、本発明に必須の構成要素である。二重刺激エコーパルス系列を用いないと対流によって一定速度で移動する成分の信号減衰や歪を補償することができず、得られるDOSYデータは不正確なものとなる。(ii)温度制御の気体の流量 本発明に必須の第二の構成要素は、試料温度の制御に用いる気体の流量を800L/Hr以上1,400L/Hrとすること、より好ましくは1,000L/Hr以上1,200L/Hr以下とすることである。 温度制御に用いる気体流量は400〜600L/Hr程度に設定するのが通常であるが、意外なことに、この範囲を大きく逸脱した高い流量とした時に限って良好なDOSYデータが得られることを見い出した。 気体流量が800L/Hr未満の場合には対流による信号の歪や減衰を十分に抑制することができない。また、流量が1,400L/Hrを越えると、試料管をプローブ内に安定して保持することが困難となり、信号が歪んだり拡散とは無関係に減衰したりする現象を引き起こす。 この理由は明らかではないが、流量が少な過ぎる場合には試料管の上下で温度差が大きくて対流の抑止が不十分となり、また、流量が多過ぎる場合には試料管が気体の流れに負けて不安定に動くことになるため、いずれも正確な測定が阻害されているものと推測される。(iii)測定試料 本発明の方法によってDOSY法測定を行う試料は液状である限りにおいて制限はなく、固体の試料であってもこれを溶解させる適当な溶媒を用いて溶液状態となっていれば測定が可能である。 本発明の方法によれば高温でも正確な測定が可能であるため、室温では溶解性に乏しく、溶解させるためには高温にする必要のあるポリオレフィンが測定に供する試料として例示される。本発明で効果を発現できるポリオレフィンとは、より具体的にはポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン−1やこれらと少量の他のα−オレフィンとの共重合体、例えば、プロピレン/エチレン共重合体、プロピレン/ブテン−1共重合体、エチレン/ブテン−1共重合体、エチレン/ヘキセン−1共重合体、エチレン/オクテン−1共重合体、エチレン/プロピレン/ブテン−1三元共重合体などがある。これらの中でも結晶性を持ち、融点が80℃以上であるものが好適である。 試料を溶解させる重溶媒としては重水素化溶媒を用いるか、もしくはこれを併用することが好ましい。試料の濃度は適宜調整すればよいが、1mg/mL以上300mg/mL以下とすることが好ましく、5mg/mL以上250mg/mL以下とすることがより好ましい。濃度が低過ぎる場合には信号強度が低下するために多数回の積算を行う必要が生じる可能性があり、濃度が高過ぎる場合にはスペクトルの分解能が低下する可能性がある。(iv)測定試料管 試料を封入する試料管の形状や太さには制限はなく、対流の発生を抑止するために設計された特殊な試料管を用いても良いが、通常のNMR測定に用いられる5mmφ、10mmφなどの一般的な試料管を用いても十分に正確なデータが取得可能である上、十分な量の試料を封入できるため、高い強度の信号が得られ、好ましい。(v)DOSY測定 観測核種は、試料を構成する原子のうち核スピン量子数が0でない核種とするかぎり制限は無く、1H、2D、13C、15N、19F、29Si、31Pなどが例示される。 観測を行うプローブはz軸方向に磁場勾配パルスを照射する機能を有し、かつ、試料温度を制御する機能を有しているものを用いる。これらの機能を有している限りにおいて、その他の機能に制限は無く、測定に供する試料管の形状や観測する核種に応じて適宜選択すればよい。1H、13C核が観測可能な温度可変デュアルプローブやクライオプローブが例示される。 特に、拡散に伴ってピーク強度が減衰・低下するDOSY法測定においては減衰した後の微小なピークを検出するため、検出部の回路全体を極低温状態に保つことで感度の高い測定ができるクライオプローブの使用が好適である。回路を極低温状態に保つために使用される冷媒として極低温のヘリウムガスを用いるクライオプローブや液体窒素を用いるクライオプローブが例示されるが、とりわけ、ヘリウムガスを使用するクライオプローブが好ましい。 本発明の測定方法で測定する試料の温度は試料が液体状態を保てる範囲であれば制限は無い。ポリオレフィンを試料とする場合には80℃を越え130℃以下、好ましくは100℃以上130℃以下で測定することが好ましい。80℃以下では試料の溶媒に対する溶解性が乏しいために十分な信号強度を得られなくなることがあり、130℃を超えると対流の影響が顕著となり信号が歪んだり減衰したりすることがある。 2.INEPTもしくはDEPTパルス系列の付加 本発明の測定方法で用いる二重刺激エコーパルス系列は単独で用いても良いし、その前、及び/又はその後にこれとは異なるパルス系列を加えて組み合わせて用いても良い。とりわけ、13Cのような磁気回転比の小さい核種を観測する場合には、まず磁気回転比の大きい1Hを励起する二重刺激パルスエコー系列を用いて1HのDOSY法信号を生成した後に、INEPTもしくはDEPTパルス系列を加えて1Hに結合した13Cに占有数移動させて13C核からの信号を観測すると、13Cを直接励起して観測する二重刺激パルスエコー系列単独での測定に比べてより高感度で信頼性の高いデータが得られるので好ましい。 このようにして得られたDOSYデータは、NMR装置に付属するデータ解析ソフトウエアや市販のソフトウエアによって処理、解析を行うことができる。 3.本発明のNMR測定の利用 一般に樹脂の製造において、副生物や未反応のモノマー類や溶媒などの混入物の量の変化を管理することは品質管理上重要である。 DOSY測定により、重合した樹脂中の副生成物及び不純物を分離せずに検出することにより、重合反応を追跡或いは解析することができる。 また、本発明の方法は樹脂の品質管理に好適に用いることができる。本発明の方法を用いて品質管理を行うには、生産された樹脂のロットから無作為にサンプリングし、本発明の方法によりDOSY測定を行い、管理すべき副生物や混入物のピーク強度から統計的品質管理の手法を用いて平均からの偏差を調べたり、以前に製造した製品との差の検定を行ったり、更には工程の振れを管理したりすることが可能である。 以下に、本発明を実施例及び比較例によって、更に具体的に説明し、各実施例のデータ及び各実施例と各比較例の対照により、本発明の構成の合理性と有意性及び従来技術に対する卓越性を実証する。本発明におけるDOSY測定方法は以下に示す。 [実施例1及び比較例1,2] 重量平均分子量25,000のポリプロピレンを200mg/2.5mlの濃度となるようにテトラクロルエタン−d2に130℃で溶解させて調製した試料溶液を用いて、1−HNMR・DOSY測定を行った。 装置:ブルカーバイオスピン AV400M : 10mmφクライオプローブ装着 拡散時間 Δ : 200msec 磁場勾配パルス幅 δ : 1,000μsec 磁場勾配強度 : 0.7〜32.4 G/cm 測定温度 : 85℃[実施例1」 図3に示した二重刺激エコーパルス系列を用い、試料の温度制御に用いる気体(乾燥空気)流量を1,070L/HrとしてDOSY測定を行った。 磁場勾配強度を変化させた時のスペクトル変化を図5に、また磁場勾配に対するポリプロピレンピーク積分強度の変化を図6に示す。磁場勾配強度の増加に伴って信号は理論曲線どおりの変化を示し、正確なDOSY測定が行われていることが示される。[比較例1」 図3に示した二重刺激エコーパルス系列に代えて、図2に示したSTE−BPPパルス系列を用いた他は、実施例1と同様の方法でDOSY測定を行った。 磁場勾配強度を変化させた時のスペクトル変化を図7に示す。磁場勾配強度の少しの増加によって信号が大幅に減衰してしまう上に信号の位相が歪んで信号の正負が逆転して生じるなど、正確なDOSY測定が行われていないことが示される。[比較例2」 試料温度制御に用いる気体(乾燥空気)流量を540L/Hrとした他は、実施例1と同様の方法でDOSY測定を行った。 磁場勾配に対するポリプロピレンピーク積分強度の変化を図8に示す。磁場勾配強度の低い段階で急激に信号強度が減衰し、ピーク積分強度は理論曲線どおりの変化を示さず、正確なDOSY測定が行われていないことが示される。[実施例2,比較例3,及び参考例1] 重量平均分子量102,000のポリプロピレンを500mg/2.5mlの濃度となるように、オルトジクロロベンゼン/臭化ベンゼン−d5(体積比4/1)混合溶媒に130℃で溶解させて調製した試料溶液を用いて、1−HNMR・DOSY測定を行った。 装置 : ブルカーバイオスピンAV400M :10mmφクライオプローブ装着 拡散時間 Δ : 300msec 磁場勾配パルス幅 δ : 3,500μsec 磁場勾配強度 : 0.7〜32.4 G/cm 測定温度 : 120℃[実施例2」 図9に示したパルス系列を用い、試料の温度制御に用いる気体(乾燥空気)流量を1,070L/HrとしてDOSY測定を行った。 磁場勾配強度を変化させた時のスペクトル変化を図10に、また磁場勾配強度に対するポリプロピレンのメチン炭素信号強度の変化を図11に示す。磁場勾配強度の増加に伴って信号は理論どおりの変化を示し、正確なDOSY測定が行われていることが示される。[比較例3] 図9に示したパルス系列前半の二重刺激エコーパルス系列に代えて図2に示したSTE−BPPパルス系列を用いた他は、実施例2と同様の方法でDOSY測定を行った。 磁場勾配強度を変化させた時のスペクトル変化を図12に、また磁場勾配強度に対するポリプロピレンのメチン炭素の信号強度の変化を図13に示す。磁場勾配強度の増加に伴って信号強度が増減するなど、正確なDOSY測定が行われていないことが示される。[参考例1] 1H核でなく、13C核に二重刺激エコーパルス系列を適用し、INEPTを使わず直接13Cシグナルを観測した他は、実施例2と同様の方法でDOSY測定を行った。 磁場勾配強度を変化させた時のスペクトル変化を図14に、また、磁場勾配強度に対するポリプロピレンのメチン炭素信号強度の変化を図15に示す。磁場勾配強度の増加に伴って信号は理論どおりの変化を示したが、13C核の磁気回転比が1H核の約1/4であるために、信号強度は初期の8割程度までしか減少していない。[実施例と比較例の結果の考察] 以上の結果から明らかなように、二重刺激エコーパルス系列を用い、気体の流量が800〜1,400L/Hrの範囲内であって、請求項1の本発明の要件を満たす、実施例1、2では、正確なDOSY測定が行われている。 比較例1では、二重刺激エコーパルス系列が用いられず、比較例2では気体の流量が540L/Hrで少な過ぎ、比較例3では、二重刺激エコーパルス系列が用いられていないので、各比較例は正確なDOSY測定が行われていない。 よって、各実施例及び各実施例と各比較例の対照は、本発明の構成の合理性と有意性及び従来技術に対する卓越性を明示しているといえる。 本発明におけるDOSY測定を用いるNMR測定方法は、改良された分析測定法として広い分野に利用でき、とりわけ室温では溶媒への溶解性に乏しく、高温での測定が不可避な、ポリオレフィンなどの試料の高精度かつ高感度なDOSY測定に広く利用できる。π;180°パルス長 t;エコータイム δ;磁場勾配パルス幅 Δ;拡散時間 J;1H−13Cスピン結合定数試料温度の制御に用いる気体の流量を800L/Hr以上1,400L/Hr以下とし、かつ、二重刺激エコーパルス系列を用いてDOSY測定を行うことを特徴とするNMR測定方法。二重刺激エコーパルス系列が1H核を励起するものであり、かつ、1HのDOSY信号を生成した後に、INEPTもしくはDEPTパルス系列を加えて1Hに結合した13Cに占有数移動又は磁化移動させて、13Cからの信号を観測することを特徴とする、請求項1に記載のNMR測定方法。80℃以上130℃以下の温度でポリオレフィンのDOSY測定を行うことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のNMR測定方法。クライオプローブを用いて信号を検出することを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれかに記載のNMR測定方法。DOSY測定により、重合した樹脂中の副生成物及び不純物を分離せずに検出することを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれかに記載のNMR測定方法。請求項1〜請求項5のいずれかに記載のNMR測定方法を用いることを特徴とする、樹脂の品質管理方法。請求項6に記載の品質管理方法を用いることを特徴とする、重合による樹脂の製造方法。 【課題】複数の成分を含む混合試料を分離することなく、各成分の自己拡散係数の差を利用してスペクトル分離を行う手法として知られているDOSY測定において、温度むらによる試料の対流の影響を排除して、かつ測定温度やプローブの種類によらず、正確なDOSY測定を行えるようなNMR測定方法を開発する。【解決手段】試料温度の制御に用いる気体の流量を800L/Hr以上1,400L/Hr以下とし、かつ、二重刺激エコーパルス系列を用いてDOSY測定を行う、NMR測定方法。【選択図】図3


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