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タイトル:公開特許公報(A)_吠えるイヌ、吠えないイヌの選別方法
出願番号:2012210097
年次:2014
IPC分類:C12Q 1/68,C12N 15/09


特許情報キャッシュ

鈴木 宏志 JP 2014064478 公開特許公報(A) 20140417 2012210097 20120924 吠えるイヌ、吠えないイヌの選別方法 国立大学法人帯広畜産大学 504300088 公益財団法人北海道盲導犬協会 512247946 特許業務法人特許事務所サイクス 110000109 鈴木 宏志 C12Q 1/68 20060101AFI20140320BHJP C12N 15/09 20060101ALI20140320BHJP JPC12Q1/68 AC12N15/00 A 10 OL 24 1.WINDOWS 4B024 4B063 4B024AA11 4B024CA01 4B024CA09 4B024CA11 4B024CA20 4B024HA11 4B063QA01 4B063QA13 4B063QA18 4B063QA20 4B063QQ02 4B063QQ08 4B063QQ42 4B063QQ52 4B063QR32 4B063QR35 4B063QR55 4B063QR62 4B063QS25 4B063QS32 4B063QX01 本発明は、吠えるイヌ、吠えないイヌを選別する方法に関する。本発明の方法は、セロトニン受容体1B(5-HTR1B)遺伝子および/またはモノアミン酸化酵素B(MAOB)遺伝子の特定の一塩基多型を調べることに基づく。本発明は、行動気質の遺伝学的背景に関する研究、生理学的機能と遺伝子多型との関連性に関する研究、イヌの育種、コンパニオンアニマル分野等で有用である。 イヌは、狩猟や警護などの目的に応じて育種選抜が行われた結果、様々な体型や行動気質を特徴とする犬種に分化し、イヌの行動気質は高い遺伝性を示すことが報告されている。一方、ヒトにおいて情動に深く関わっているとされる脳内モノアミン類やアミノ酸代謝に関係する物質をコードする遺伝子の多型と性格・気質との関連性が数多く報告されている。イヌにおいても、ドーパミン受容体D4(DRD4)遺伝子の多型と攻撃性との関連性が報告されている。 イヌの吠え行動に関しては、雄犬の方が雌犬よりも吠え行動を起こすイヌが多い傾向がみられたとの報告がある(非特許文献1)。イヌの吠え行動以外の攻撃性や服従訓練のしやすさなどの行動気質や性格の雌雄差については複数の報告がある(非特許文献2〜3)。テストステロンのようなアンドロジェンは男性の性的特徴を発育および維持するだけでなく、行動の調節にも関わっていることが知られており、多くの研究報告で、男性の方が女性と比較するとアンドロジェンの神経内分泌活動に、より敏感であるとされている(非特許文献5)。イヌにおいても、雄犬でアンドロジェン受容体遺伝子の多型が攻撃性と関連性があることが報告されている(非特許文献6)。ヒトの攻撃性にはセロトニンシステムが関連し、テストステロンとセロトニンとの相互作用が攻撃行動に影響を与えたという報告もある(非特許文献7)。 一方、セロトニン受容体1B(5-HTR1B)遺伝子に関しては、G57AおよびA157C、G246A、C660G、T955C、G1146C多型(非特許文献8)が知られており、またモノアミン酸化酵素B(MAOB)遺伝子に関しては、T199C多型が知られている(非特許文献9)。Takeuchi Y. and Mori Y. (2006) A comparison of the behavioral profiles of purebred dogs in Japan to profiles of those in the United States and the United Kingdom. Journal of Veterinary Medical Science. 68, 789-796Svartberg K. (2002) Shyness-boldness predicts performance in working dogs. Applied Animal Behaviour Science. 79, 157-174.Courreau JF. and Langlois B. (2005) Genetic parameters and environmental effects which characterise the defence ability of the Belgian shepherd dog. Applied Animal Behaviour Science . 91, 233-245.van der Waaij EH., and Wilsson E and Strandberg E. (2008) Genetic analysis of results of a Swedish behavior test on German Shepherd Dogs and Labrador Retrievers. Journal of Animal Science. 86, 2853-2861.Collaer ML. and Hines M. (1995) Human behavioral sex-differences - a role for gonadal-hormones during early development. 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Journal of Veterinary Medical Science. 67, 199-201. イヌの行動気質の一つである「吠え行動」は番犬として有益である反面、騒音として問題となることから、イヌの吠え行動の遺伝学的背景を明らかにすることで、適切な交配や飼育を行うことに繋がることが期待できる。 また、イヌは、ヒトと比較して複雑な認知システムを持たず、ある程度一定の環境で飼育されていることから、行動気質の遺伝学的背景を解明する上で非常に適していると考えられる。 イヌにおいて、ドーパミン受容体D4(DRD4)遺伝子の多型と攻撃性との関連性が報告されていることから、吠えという行動気質も、遺伝子多型の影響を受けている可能性が考えられる。本発明者らは、イヌの吠え行動を把握するためのマーカーとなり得る遺伝子探索を目的とし、イヌの吠え行動と遺伝子多型との関連性について解析を行った。その結果、ラブラドール・レトリバー(LR)の雄(n=136)で、セロトニン受容体1B(5-HTR1B)遺伝子 T955C多型およびモノアミン酸化酵素B(MAOB)遺伝子T199C多型において、遺伝子型頻度と吠え行動の有無に有意差がみられた(P<0.05)。更に、LRの雄において、5-HTR1B遺伝子T955C多型およびMAOB遺伝子T199C多型の遺伝子型の組み合わせと吠え行動を示すイヌの割合を解析した結果、5-HTR1B遺伝子T955C多型のT/T型かつMAOB遺伝子T199C多型のC型をもつイヌのうち(n=46)、吠えるイヌの割合は56.3%であったのに対し、5-HTR1B遺伝子T955C多型のT/C型かつMAOB遺伝子T199C多型のT型をもつイヌのうち(n=18)、吠えるイヌの割合は94.4.%と高い結果であった。イヌの吠え行動には、5-HTR1B遺伝子およびMAOB遺伝子を指標とすることが最適であることを見出し、本発明を完成した。 本発明は、以下を提供する。[1] イヌの選別方法であって:被検査イヌの、セロトニン受容体1B(5-HTR1B)遺伝子の955番目の塩基および/またはモノアミン酸化酵素B(MAOB)遺伝子の199番目の塩基を分析し、分析した結果があらかじめ選択した型であるか否かにより、イヌを選別する工程を含む、方法。[2] イヌを、吠えるイヌと吠えないイヌとを選別するための、[1]に記載の方法。[3] 雌雄を判定する工程をさらに含む、[1]または[2]に記載の方法。[4] あらかじめ選択した型が、下記からなる群より選択されるいずれかである、[1]〜[3]のいずれか一に記載の方法:(1) 5-HTR1B遺伝子の955番目の塩基が、T/T型であること;(2) 5-HTR1B遺伝子の955番目の塩基が、T/T型またはT/C型であること;(3) 5-HTR1B遺伝子の955番目の塩基が、C/C型またはT/C型であること;(4) MAOB遺伝子の199番目の塩基が、C/C型またはT/C型であること;(5) MAOB遺伝子の199番目の塩基が、T/T型またはT/C型であること。[5] あらかじめ選択した型が、(1)、(2)および(4)からなる群より選択されるいずれかであり、いずれかである場合に、吠えないイヌと判断し、選択または除外するための、[1]〜[4]のいずれか一に記載の方法。[6] あらかじめ選択した型が、(3)および(5)からなる群より選択されるいずれかであり、いずれかである場合に、吠えるイヌと判断し、選択または除外するための、[1]〜[4]のいずれか一に記載の方法。[7] あらかじめ選択した型が、(2') 5-HTR1B遺伝子の955番目の塩基が、T/C型であること;および(5)であるか、または(3') 5-HTR1B遺伝子の955番目の塩基が、C/C型であること;および(4)である、[6]に記載の方法。[8] 番犬、コンパニオンアニマルとしてのイヌ、または盲導犬候補となるイヌを選択するための、[1]〜[7]のいずれか一に記載の方法。[9] 被検査イヌが、ラブラドール・レトリバー、チワワ、ポメラニアン、ヨークシャーテリア、シーズー、パピヨン、マルチーズ、ミニチュアピンシャー、ウエルシュコーギー、スピッツ、ダックスフント、パグ、フレンチブルドッグ、シェットランドシープドッグ、テリア、アメリカンコッカースパニエル、柴犬、プードル、イングリッシュコッカースパニエル、ブルドッグ、ビーグル、バセンジ、ピンシャー、ボーダーコリー、日本犬、チャウチャウ、サモエド、シベリアンハスキー、スタンダードプードル、ダルメシアン、ゴールデンリトリバー、コリー、ジャーマンシェパードドッグ、ボクサー、秋田犬、イングリッシュセッター、ドーベルマン、グレートスイスマウンテンドッグ、セントバーナード、マスティフ、ボルゾイ等および雑種からなる群より選択されるいずれかである、[1]〜[8]のいずれか一に記載の方法。[10] [1]〜[9]のいずれか一の方法により犬を選別し、選択されたイヌを用いて実施する、イヌの育種方法。 本発明で初めて、神経伝達物質関連遺伝子の多型と吠え行動との関連性が示唆された。本発明の方法によれば、番犬、伴侶犬あるいは盲導犬に適した犬の選抜が可能である。 本発明は、イヌの選別方法に関する。 本発明において「選別方法」というときは、特に記載した場合を除き、特定の基準に合致しているか否かを基準に、対象を選択または除外することのみならず、対象を分類または対象について判断することを含む。より具体的には、本発明のイヌの選別(方法)には、イヌの性質の判断(方法)、例えば、被検査イヌ(対象となるイヌ)が、吠えるイヌであるか吠えないイヌであるかを判断することを含む。 本発明の方法は、被検査イヌの、セロトニン受容体1B(5-HTR1B)遺伝子の955番目の塩基および/またはモノアミン酸化酵素B(MAOB)遺伝子の199番目の塩基を分析する工程を含む。セロトニンは哺乳類にとって重要な神経伝達物質の一つであり、ヒトでは、中枢神経系、不安、物質依存の調節に関わっている。セロトニン受容体(5-HTR)は11個あり、その中の5-HTR1Bは7つの膜貫通領域をもつGタンパク結合受容体であり、脳でのセロトニン代謝に関わっている。本明細書の配列表に、配列番号1として、イヌ属動物由来の5-HTR1BのcDNA塩基配列を示した。 これまで、5-HTR1B遺伝子に関しては、当該遺伝子をノックアウトしたマウスが野生型と比較して高い攻撃性(Saudou et al., 1994)、敏感、不安傾向の低さを示したこと(Zhuang et al., 1999)、ヒトでの5-HTR1B遺伝子の多型とアルコール依存症(Fehr et al., 2000)および反社会的物質依存症(Kranzler et al., 2002)との関連性が報告されている。しかしながら、イヌの性質や行動特性と5-HTR1B遺伝子多型との関係は報告されていない。 モノアミン酸化酵素(MAO)は、脳内と末梢組織の両方に存在するモノアミンを、触媒的に酸化するのにきわめて重要な酵素である。本明細書の配列表に、配列番号2として、イヌ属動物由来のMAOBのcDNA塩基配列を示した。 MAOは、攻撃性などの感情状態に関わるとされている(Brunner et al., 1993)。MAOはMAOAとMAOBの2種類が存在し、MAOAはセロトニン、ノルアドレナリンを、MAOBはドーパミンを代謝する役割をもち、セロトニンとMAOAが攻撃行動に関連性があるとの報告がある(Pavlov et al., 2012)。しかしながら、イヌの性質や行動特性との関係は報告されていない。 本発明は、セロトニン受容体遺伝子および/またはMAOB遺伝子がイヌの性質に関連していることを初めて示すものである。 本発明の方法は特に、イヌを、吠えるイヌと吠えないイヌとを選別するために用いることができる。本発明において「吠えるイヌ」というときは、特に記載した場合を除き、そのイヌが比較的吠え行動をおこしやすい性質を有していることをいう。「吠えるイヌ」には、吠え傾向にあるイヌ、または吠えるイヌ候補も含まれる。本発明において「吠えないイヌ」というときは、特に記載した場合を除き、そのイヌが比較的吠え行動をおこしにくい性質を有していることをいう。「吠えないイヌ」には、吠えない傾向にあるイヌ、または吠えないイヌ候補も含まれる。 本発明の方法は、被検査イヌの、セロトニン受容体1B(5-HTR1B)遺伝子の955番目の塩基および/またはモノアミン酸化酵素B(MAOB)遺伝子の199番目の塩基を分析し、分析した結果があらかじめ選択した型であるか否かにより、イヌを選別する工程を含む。 本発明におけるセロトニン受容体1B(5-HTR1B)遺伝子の955番目の塩基の分析、および/またはモノアミン酸化酵素B(MAOB)遺伝子の199番目の塩基の分析は、検査イヌの個体から被検体を採取し、この被検体に含まれる特定の箇所における遺伝子型(一塩基多型のタイプ)を特定することにより実施することができる。被検体は、上記遺伝子とともにその対立遺伝子を含んでいることが必要であり、例えば、検査イヌの個体から採取した血液であることができる。 上記遺伝子における一塩基多型の検出は、一塩基多型部分の塩基配列を決定することによって行うことができる。一塩基多型部分の塩基配列の決定には、例えば、TaqMan法、ダイレクトシークエンス法、PCR-制限酵素切断断片長多型による方法(PCR-RFLP解析)、MALDI-TOF/MSによるSNPタイピング法、DNAチップを用いた方法を用いることができる。これらの方法は、当業者にはよく知られており、また具体的な条件等は、本明細書の実施例の項を参考にすることができる。 各方法に用いるプローブやプライマーは、当業者であれば、イヌ属動物由来の5-HTR1BのcDNAヌクレオチド配列(配列番号1)、またはイヌ属動物由来のMAOBのcDNAヌクレオチド配列(配列番号2)に基づいて適宜調製できる。 5-HTR1B遺伝子の955番目の塩基の分析は、例えば、TaqMan法を用いて実施することができる。この場合のPCRプライマーおよびTaqManプローブの例は、下記である:Forward primer (5' to 3'): GCGCAAAGCCACCAAGAC(配列番号31)Reverse primer (5' to 3'): CAGCCAGCACACGATAAAGG(配列番号32)VIC -labeled probe (5' to 3'): CTCCCAAGATGATTC(配列番号33)FAM-labeled probe (5' to 3'): TCCCAGGATGATTC(配列番号34) MAOB遺伝子の119番目の塩基の分析は、例えば、PCR-RFLP法を用いて実施することができる。この場合のPCRプライマーの例は、下記である:Forward primer (5' to 3'): TCCATGGATACACCTCAAGG(配列番号97)Reverse primer (5' to 3'): TGATGGATGAGACGCTCTAC(配列番号98) このプライマーセットを用いる場合、アニーリング温度は、58℃とすることができる。また、制限酵素としてHinf I を用いることができ、このとき、得られるフラグメントのサイズは、雄でTアレルを有する場合は、257bpであり、Cアレルを有する場合は、77bpおよび/または180bpでありうる。 本発明の方法においては、あらかじめ選択した型に該当するか否かにより、選別を行うが、あらかじめ選択した型とは、下記からなる群より選択されるいずれかである:(1) 5-HTR1B遺伝子の955番目の塩基が、T/T型であること;(2) 5-HTR1B遺伝子の955番目の塩基が、T/T型またはT/C型であること;(3) 5-HTR1B遺伝子の955番目の塩基が、C/C型またはT/C型であること;(4) MAOB遺伝子の199番目の塩基が、C/C型またはT/C型であること;(5) MAOB遺伝子の199番目の塩基が、T/T型またはT/C型であること。 なお、本発明において「いずれか」というときは、特に記載した場合を除き、いずれか一である場合と、任意に選択したものの組み合わせである場合とを含む。また本発明で遺伝子型を、例えば「T/T型」と表す場合、一つの個体に存在する二つの対立遺伝子において、その位置における塩基の組合せを示したものである。「T/T型またはT/C型であること」は、Tアレルを有する(Tアレルを持つ)と言い換えることもでき、同様に「C/C型またはT/C型であること」は、Cアレルを有する(Cアレルを持つ)と言い換えることもできる。 本発明の一態様においては、あらかじめ選択した型は、上記(1)、(2)および(4)からなる群より選択されるいずれかであり、いずれかに該当する場合(例えば、上記(1)、(2)および(4)からなる群より選択される、少なくとも一つに該当する場合)に、吠えないイヌと判断することができる。判断の結果、目的に応じ、吠えないイヌを選択してもよく、また選択から除外してもよい。 本発明の一態様においては、あらかじめ選択した型は、上記(3)および(5)からなる群より選択されるいずれかであり、いずれかに該当する場合(例えば、上記(3)および(5)からなる群より選択される、少なくとも一つに該当する場合)に、吠えるイヌと判断することができる。判断の結果、目的に応じ、吠えるイヌを選択してもよく、また吠えるイヌを除外してもよい。 吠えるイヌの選別に際しては、好ましくは、あらかじめ選択した型は、(2') 5-HTR1B遺伝子の955番目の塩基が、T/C型であり、かつ(5)であることが好ましい。あるいは、吠えるイヌの選別に際しては、(3') 5-HTR1B遺伝子の955番目の塩基が、C/C型であり、かつ(4)であることが、好ましい。 本発明の方法は、雌雄を判定する工程をさらに含むことができる。本発明者らの検討によると、雄を対象として吠え行動の有無とMAOB遺伝子T199C多型との相関を解析した結果、5-HTR1B遺伝子T955C多型のT/T型かつMAOB遺伝子T199C多型のC型をもつ46頭のうち、吠えるイヌの割合は56.3%であったのに対し、5-HTR1B遺伝子T955C多型のT/C型かつMAOB遺伝子T199C多型のT型をもつ18頭のうち、吠えるイヌの割合は94.4%と高い結果であった。5-HTR1B遺伝子T955C多型のC/C型かつMAOB遺伝子T199C多型のC型をもつイヌのうち、吠えるイヌの割合は100.0%であった。 本発明の方法は、番犬、コンパニオンアニマルとしてのイヌ、または盲導犬候補となるイヌを選択するために実施することができる。 本発明の方法は、既存の方法と組み合わせて実施することができる。例えば、本発明の方法を、盲導犬として有益な遺伝的資質を備えたイヌを選別するために実施する場合、既存の盲導犬のための選抜方法、例えば、特開2007-330207(特許4839439号)に記載されている、被検査イヌの個体のカテコール-O-メチル基転移酵素遺伝子の216番目の塩基および/または482番目の塩基に存在する一塩基多型を調べ、該遺伝子に存在する一塩基多型に基づいて盲導犬に適した犬を選別する方法と組み合わせて、用いてもよい。この方法は、より具体的には、前記216番目の塩基の遺伝子型がG/Gである被検査イヌの個体を盲導犬に適した犬であると判定することができるものであり、さらに、本発明の方法では、前記482番目の塩基の遺伝子型がG/Gである被検査イヌの個体を盲導犬に適した犬であると判定することができるものである。 本発明はまた、上述した本発明の方法により犬を選別し、そして選別したイヌを用いて育種する方法、すなわち選別したイヌの遺伝的形質を利用して、新たなイヌ品種を育成する方法をも提供する。また、本発明は、本発明の方法により犬を選別し、イヌの吠え行動特性を考慮し、飼育を行う方法も提供する。 本発明は、あらゆる品種のイヌを対象として用いることができる。本発明を用いるのに適したイヌ品種は、例えば、ラブラドール・レトリバー、チワワ、ポメラニアン、ヨークシャーテリア、シーズー、パピヨン、マルチーズ、ミニチュアピンシャー、ウエルシュコーギー、スピッツ、ダックスフント、パグ、フレンチブルドッグ、シェットランドシープドッグ、テリア、アメリカンコッカースパニエル、柴犬、プードル、イングリッシュコッカースパニエル、ブルドッグ、ビーグル、バセンジ、ピンシャー、ボーダーコリー、日本犬、チャウチャウ、サモエド、シベリアンハスキー、スタンダードプードル、ダルメシアン、ゴールデン・レトリバー、コリー、ジャーマンシェパードドッグ、ボクサー、秋田犬、イングリッシュセッター、ドーベルマン、グレートスイスマウンテンドッグ、セントバーナード、マスティフ、ボルゾイ、雑種である。本発明の方法は、特にラブラドール・レトリバーに対して、有効に実施することができる。 材料と方法 〔動物〕 本研究では270頭のラブラドール・レトリバー(LR)を用いて解析を行った。雌雄の内訳は雄が136頭、雌は134頭であった。全てのイヌが北海道盲導犬協会で1988年から2009年までに生まれ、約1年間一般家庭のパピーウォーカーのもとで育成された。12ヶ月〜16か月齢で北海道盲導犬協会に戻り、盲導犬候補犬となる適性試験を受けた。 〔「吠えるイヌ」群と「吠えないイヌ」群の分類〕 吠えるイヌと吠えないイヌの分類は、盲導犬候補犬となる適性試験の際に実施した。適性試験では、約1か月間にわたり、犬舎の内外でみられた行動を1頭につき平均6.6±2.3人の盲導犬訓練士が評価を行った。盲導犬訓練士はそれぞれのイヌに対して吠え、攻撃性、落着き、活発性、感受性、注意散漫力などの行動について評価を行い、記録した。少なくとも一人の訓練士がヒトおよびイヌ、他の動物、動物の置物、階段に対して警戒および要求、興奮、猜疑心による「吠え行動がみられた」と記録したイヌを「吠えるイヌ」とした。また、吠え行動がみられたという評価がないイヌを「吠えないイヌ」として分類した。その結果、吠えるイヌは180頭、および吠えないイヌは90頭であった。 〔遺伝子多型の遺伝子型判定〕 それぞれのイヌから血液を採取し、DNA抽出を行うまでマイナス30℃で保管した。ProteinaseK(Takara Bio Inc,Shiga,Japan)およびプロテアーゼ溶解試薬(KURABO,Osaka,Japan)、組織用懸濁液(KURABO)、フェノール/クロロフォルム(SIGMA-ALDRICH,MO,USA)を用いて血液中のタンパク質を分解および分離除去した。精製されたDNAはイソプロパノールを用いて沈殿させた。DNAの純度と濃度は分光光度計によって測定し、DNA抽出液はDNA増幅を行うまでマイナス30度で保管した。 遺伝子多型は以下の17遺伝子36多型について解析した;セロトニン輸送体(SLC6A4)遺伝子C411T多型(van den Berg et al., 2005);セロトニン受容体1A(5-HTR1A)遺伝子T65GおよびC808A多型(van den Berg et al., 2005);セロトニン受容体1B(5-HTR1B)遺伝子G57AおよびA157C、G246A、C660G、T955C、G1146C多型(前掲非特許文献8);セロトニン受容体1D(5-HTR1D)遺伝子C290TおよびA788G多型(Vage and Lingaas, 2008);セロトニン受容体2B(5-HTR2B)遺伝子C263TおよびC1292T多型(Vage and Lingaas, 2008);セロトニン受容体3A(5-HTR3A)遺伝子C191T多型(Vage and Lingaas, 2008);トリプトファン水酸化酵素2(TPH2)遺伝子G149AおよびT543C、C612T、C1245A多型(Kaneko et al., 2008);ドーパミン輸送体(SLC6A3)遺伝子A1269G多型(Arata et al., 2008a);ドーパミン受容体D1(DRD1)遺伝子C1061T多型(Vage and Lingaas, 2008);ドーパミン受容体D3(DRD3)遺伝子C1021T多型(Vage and Lingaas, 2008); ドーパミン受容体D4(DRD4)遺伝子exon1(挿入/欠失)多型およびexon3(配列および繰り返し数の違い)多型(Niimi et al., 1999; Ito et al., 2004);チロシン水酸化酵素(TH)遺伝子C97TおよびG168A、G180A、C264T多型(Takeuchi et al., 2005);ドーパミン-B-水酸化酵素(DBH)遺伝子C789AおよびA1819G多型(Takeuchi et al., 2005);グルタミン酸輸送体(GLT-1)遺伝子C129TおよびT471C多型(Ogata et al., 2006);グルタミン脱炭酸酵素1(GAD1)遺伝子A339C多型(Arata et al., 2008b);カテコール-O-メチル基転移酵素(COMT)遺伝子G39AおよびG216A、G482A多型(Masuda et al., 2004a);モノアミン酸化酵素B(MAOB)遺伝子T199C多型(前掲非特許文献9)。 それぞれの遺伝子型はTaqMan法、PCR-RFLP法、フラグメント解析、あるいはシークエンス解析によって同定した。5-HTR1A遺伝子T65G多型およびTPH2遺伝子G149AおよびT543C多型においてはTaqMan法およびシークエンス解析によって同定した。その他は一遺伝子多型につき一つの解析法で行った。 〔TaqMan法〕 SLC6A4遺伝子C411T多型および5-HTR1A遺伝子T65GおよびC808A多型、5-HTR1B遺伝子G57AおよびA157C、G246A、C660G、T955C多型、5-HTR1D遺伝子C290TおよびA788G多型、5-HTR2B遺伝子C263TおよびC1292T多型、5-HTR3A遺伝子C191T多型、TPH2遺伝子G149AおよびT543C、C612T、C1245A多型、DRD1遺伝子C1061T多型、DRD3遺伝子C1021T多型、DBH遺伝子C789AおよびA1819G多型、GLT-1遺伝子T471C多型はTaqMan法によって遺伝子型判定を行った。v 20μlのPCR反応液に50ngのDNAを使用し、0.9μMのフォワードおよびリバースプライマーおよびTaqManプローブ(4μM of VIC-labeled probe and FAM-labeled probe)(下表参照)、2 x TaqMan universal PCR master mix(Applied Biosystems,CA,USA)を使用した。プライマーおよびプローブはCustom TaqMan SNP genotyping Assay protocol(Applied Biosystems)によって作成された。95度10分間のインキュベーション後、92度15秒間の変性、60度1分間のアニーリングおよび伸長を45サイクル行った。PCRプレートはABI PRISM 7900HT sequence detector のthe Allelic Discrimination Sequence Detection System Software (Applied Biosystems)を用いて遺伝子型判定を行った。 〔PCR Restriction Fragment Length Polymorphism(PCR−PFLP)法〕 COMT遺伝子G39AおよびG216A、G482A多型およびMAOB遺伝子T199C多型はPCR-RFLP法によって遺伝子型判定を行った。 20μlのPCR反応液に50ngのDNAを使用し、0.2μMのフォワードおよびリバースプライマー(TableS2)および2 x GC Buffer I 、dNTP mixture、LA Taq(Takara Bio Inc)を使用した。95度5分間のインキュベーション後、95度30秒間の変性および各遺伝子多型のアニーリング温度(TableS2)で30秒間、72度30秒間の伸長を50サイクル行った。最後に72度5分間で伸長を行った。PCR産物はそれぞれ20Uの制限酵素(下表参照)で12時間反応させて切断され、3%アガロースゲルによって遺伝子型ごとに異なる様々な長さの断片に分けられた。 〔フラグメント解析〕 DRD4遺伝子exon1およびexon3多型はフラグメント解析によって遺伝子型判定を行った。DRD4遺伝子exon1多型は、20μlのPCR反応液に50ngのDNAを使用し、0.2μlのフォワードおよびリバースプライマー(forward:5’-CGCCATGGGGAACCGCAG-3’(配列番号99), reverse:5'-CGGCTCACCTCGGAGTAGA-3’(配列番号100))および 2 x GC BufferII、dNTP mixture、LA Taq(Takara Bio Inc)を使用した。95度5分間のインキュベーション後、95度30秒間の変性、60度30秒間のアニーリング、72度30秒間の伸長を40サイクル行った。最後に72度5分間で伸長を行った。PCR産物は、3.5%アガロースゲルによって遺伝子型ごとに異なる長さの断片に分けられた。断片の長さはそれぞれS/S型は255bp、S/L型は255bpおよび279bp、L/L型は279bpであった。 DRD4 遺伝子exonIII多型は、20μlのPCR反応液に0.5μMの蛍光標識されたフォワードおよびリバースプライマー(forward:5'-TTCTTCCTACCCTGCCCGCTCATG-3'(配列番号101), reverse 5'-CCGCGGGGGCTCTGCAGGGTCG-3'(配列番号102))、250μMのdATPおよびdCTP、dTTP、125μMのdGTP、125μMの7-Deaza-z'-Deoxyguanosine 5'-triphosphate(GE Healthcare,NJ,USA)、5 % dimethyl sulfoxide、10 x cloned Pfu DNA Polymerase Reaction buffer、PfuTurbo DNA Polymerase(STRATAGENE,CA,USA)を使用した。98度2分間のインキュベーション後、98度30秒間の変性、65度1分間のアニーリング、74度1分間の伸長を35サイクル行った。最後に74度10分間の伸長を行った。PCR産物の大きさはABI 3730 DNA analyzer(Applied Biosystems)によって推定された。ここで、447bpには同じ長さで配列が異なる遺伝子型があり、この分類のために一度目のPCR反応で用いたフォワードプライマーと、リバースプライマー(reverse:5'-TGGGCTGGGGGTGCCGTCC-3'(配列番号103))を使用してPCR反応をもう一度かけた。98度2分間間のインキュベーション後、98度30秒間の変性、65度1分のアニーリング、74度1分間の伸長を35サイクル行った。最後に74度10分間の伸長を行った。イヌのDRD4遺伝子exon3多型では8つのアレル(396、435、447a、447b、486、498、549、576)が存在するが、ラブラドールおよびゴールデンでは3つのアレルのみ(435、447a、447b)みられた。 〔シークエンス解析〕 5-HTR1A遺伝子T65G多型および5-HTR1B 遺伝子G1146C多型、TPH2遺伝子G149AおよびT543C多型、TH遺伝子C97TおよびG168A, G180A, C264T多型、GLT-1遺伝子C129T多型、GAD1遺伝子A339C多型、SLC6A3遺伝子A1269G多型はシークエンス解析によって遺伝子型判定を行った。 20μlのPCR反応液に50ngのDNAを使用し、0.2μMのフォワードおよびリバースプライマー(下表参照)、10 x Ex Taq Buffer、dNTP mixture、Ex Taq (Takara Bio Inc)を使用した。95度5分間のインキュベーション後、95度30秒の変性、各遺伝子多型のアニーリング温度(TableS3)30秒、72度30秒間の伸長を35サイクル(5-HTR1A遺伝子T65G多型およびTPH2遺伝子G149AおよびT543C多型、TH遺伝子C97TおよびG168A, G180A, C264T多型、GLT-1遺伝子C129T多型、GAD1遺伝子A339C多型)、45サイクル(SLC6A3遺伝子A1269G多型)、30サイクル(5-HTR1B遺伝子G1146C多型)行った。PCR産物はプライマーを除くためにMICROCON YM−30 or Amicon Ultra 0.5 mL Centrifugal Filters (MILLIPORE,MA,USA)(GAD1遺伝子A339C多型)またはMagExtractor (TOYOBO,Osaka,Japan)(SLC6A3遺伝子A1269G多型)、DNA Cleaner(Wako,Osaka,Japan)(5-HTR1A遺伝子T65G多型、5-HTR1B遺伝子G1146C多型、TPH2遺伝子G149AおよびT543C多型、TH遺伝子C97TおよびG168A, G180A, C264T多型、GLT-1遺伝子C129T多型)を用いて精製を行い、DNA濃度を10ng /μlに調整した。シークエンス反応はBig Dye Terminator v3.1 cycle sequencing kit(Applied Biosystems)を用いてABI 3730 DNA analyzer(Applied Biosystems)によって解析を行った。 〔統計解析〕 全ての遺伝子多型データはSAS for Windows(SAS 9.2 institute Inc., Cary, NC, USA, 2002-2008)を用いて統計解析をした。カイ二乗検定およびフィッシャーの正確検定を用いて吠え行動の有無と遺伝子型頻度との関連解析を行った。P<0.05のときに有意に差があったとした。更に、どの遺伝子型において、吠え行動の有無に違いがあったのかを、残差分析を用いて調べ、P<0.05のときに有意差があったとした。吠え行動の有無と各遺伝子多型の遺伝子型頻度の関連性の検討に加え、吠え行動の有無と雌雄との関連性についても検討を行った。 結果〔吠え行動における雌雄の違い〕 吠え行動の有無と雌雄差を解析した結果、有意な差は認められなかったが、吠えるイヌの割合は、雄および雌で、それぞれ71.3%および61.9%であり、雄犬の方が雌犬よりも吠える傾向がみられた(下表)。 〔吠え行動と神経伝達物質関連遺伝子多型の相関〕 吠え行動の有無と5-HTR1B遺伝子T955C多型およびMAOB遺伝子T199C多型との間に有意な相関がみられた(下表)。 17遺伝子36多型のうち、5-HTR1B遺伝子G57A多型および5-HTR1D遺伝子C290TおよびA788G多型、5-HTR3A遺伝子C191T多型、DBH遺伝子A1819G多型、TPH2遺伝子C612T多型およびC1245A多型、TH遺伝子C97T多型、SLC6A4遺伝子C411T多型、5-HTR1B遺伝子A157C多型のマイナーアレルはみられず、雄においてのみ、5-HTR1B遺伝子G246A多型のマイナーアレルはみられなかった。 吠え行動の有無と5-HTR1B遺伝子T955C多型の遺伝子型頻度およびアレル頻度の解析結果を下表に示した。 吠え行動の有無と5-HTR1B遺伝子T955C多型との相関を解析した結果、吠え行動を示すイヌの割合は、T/T型またはTアレルを持つ個体では有意に少なく、Cアレルでは有意に多かった。雌雄別で検討し、雄を対象として検証した場合は全体と同様に吠え行動と関連性がみられたが、雌を対象とした場合、吠え行動の有無と5-HTR1B遺伝子T955C多型の遺伝子型頻度に相関はみられなかった。 吠え行動の有無とMAOB遺伝子T199C多型の遺伝子型頻度およびアレル頻度の解析結果を下表に示した。 雄を対象として吠え行動の有無とMAOB遺伝子T199C多型との相関を解析した結果、吠え行動を示すイヌの割合は、Cアレルを持つ個体では有意に少なく、Tアレルを持つ個体では有意に多かった。雌雄別で検討し、雌を対象とした場合、吠え行動の有無とMAOB遺伝子T199C多型の遺伝子型頻度とに相関はみられなかった。更に、雄の5-HTR1B遺伝子T955C多型およびMAOB遺伝子T199C多型において、遺伝子型の組み合わせと吠え行動を示すイヌの割合との関連解析結果を下表に示した。 5-HTR1B遺伝子T955C多型のT/T型かつMAOB遺伝子T199C多型のC型をもつ46頭のうち、吠えるイヌの割合は56.3%であったのに対し、5-HTR1B遺伝子T955C多型のT/C型かつMAOB遺伝子T199C多型のT型をもつ18頭のうち、吠えるイヌの割合は94.4%と高い結果であった。5-HTR1B遺伝子T955C多型のC/C型かつMAOB遺伝子T199C多型のC型をもつイヌのうち、吠えるイヌの割合は100.0%であったが、3頭のみであった。 〔考察〕 本研究において、吠え行動にセロトニン系が関連していることが示唆され、5HTR1B遺伝子T955C多型およびMAOB遺伝子T199C多型と吠え行動との関連性が認められた。セロトニン系の働きの違いが吠え行動の有無に重要な役割をもち、遺伝子多型が吠え行動の選抜マーカーとして使用できる可能性が示唆された。 セロトニンは哺乳類にとって重要な神経伝達物質の一つである。ヒトでの中枢神経系、不安、物質依存の調節に関わっている。セロトニン受容体(5-HTR)は11個あり、その中の5-HTR1Bは7つの膜貫通領域をもつGタンパク結合受容体であり、脳でのセロトニン代謝に関わっている(Roth et al., 2000)。5-HTR1B遺伝子ノックアウトマウスは野生型と比較して高い攻撃性(Saudou et al., 1994)、敏感、不安傾向の低さを示した(Zhuang et al., 1999)。また、ヒトにおいて5-HTR1B遺伝子の多型とアルコール依存症(Fehr et al., 2000)、反社会的物質依存症(Kranzler et al., 2002)との関連性が報告されている。モノアミン酸化酵素(MAO)は脳内と末梢組織の両方に存在するモノアミンを、触媒的に酸化するのにきわめて重要な酵素であり、攻撃性などの感情状態に関わるとされている(Brunner et al., 1993)。MAOはMAOAとMAOBの2種類が存在し、MAOAはセロトニン、ノルアドレナリンを、MAOBはドーパミンを代謝する役割をもち、セロトニンとMAOAが攻撃行動に関連性があるとの報告がある(Pavlov et al., 2011)。本研究においては、セロトニン受容体遺伝子とMAOB遺伝子が間接的に影響を受け合い、吠え行動に関連していることが示唆された。 本研究で得られた結果から、「吠え」に関する選抜には5-HTR1B遺伝子およびMAOB遺伝子を指標とすることが最適だと考えられた。 5-HTR1B遺伝子T955C多型およびMAOB遺伝子T199C多型が遺伝子多型マーカーとして有効利用できることが示唆され、更にMAOB遺伝子T199C多型はアミノ酸置換を伴うことから、直接的に吠え行動の有無に関与する可能性が考えられた。しかし、雌においては関連性がみられた遺伝子多型がなかったことから、さらにセロトニン関連遺伝子を中心とした解析を増やす必要性があると考えられる。 吠え行動において雄犬の方が雌犬よりも吠え行動を起こすイヌが多い傾向がみられたことは、以前の報告と同様の結果であった(前掲非特許文献1)。イヌの吠え行動以外の攻撃性や服従訓練のしやすさなどの行動気質や性格の雌雄差は数多く報告されており(前掲非特許文献2; 前掲非特許文献3;前掲非特許文献4)、性ホルモンの影響が推定される。テストステロンのようなアンドロジェンは男性の性的特徴を発育および維持するだけでなく行動の調節にも関わっている。多くの研究報告で、男性の方が女性と比較するとアンドロジェンの神経内分泌活動に、より敏感であるとされている(前掲非特許文献5)。イヌにおいても、雄犬でアンドロジェン受容体遺伝子の多型が攻撃性と関連性があることが報告されている(前掲非特許文献6)。ヒトの攻撃性にはセロトニンシステムが関連し、テストステロンとセロトニンとの相互作用が攻撃行動に影響を与えたという報告もある(前掲非特許文献7)。したがってアンドロジェン関連遺伝子とセロトニン関連遺伝子の相互作用による影響が、雌雄の吠え行動の違いに繋がったと考えられた。また、LRで有意に関連性がみられたMAOB遺伝子はアンドロジェン遺伝子と同じX染色体に存在していることから、吠え行動にはX染色体またはY染色体の他の遺伝子が関与している可能性も考えられた。 イヌの遺伝子多型が実際に遺伝子の機能や転写等に影響を与えているかどうかは、今のところ実証されていない。これらの研究は今後解明されていくことが期待されているが、ヒトの研究において実際に遺伝子産物の結果となる生理学的機能と遺伝子多型との関連性が明らかになってきた。5-HTR1A遺伝子の多型が転写調節因子の活動に影響を与え、脳内での5-HTR1Aの発現量にも影響があったことが報告されている(Le Francois et al., 2008)。また、SLC6A4遺伝子制御領域の多型はSLC6A4遺伝子プロモーターの転写効率やセロトニン輸送体の発現量、リンパ芽球(成熟リンパ球に分化する未成熟な細胞)でのセロトニンの摂取に関連していた(Lesch et al., 1996)。DRD2遺伝子の多型は遺伝子発現量やスプライシング、神経活動に影響を与えていた(Zhang et al., 2007)。最近の報告ではイヌ脳内の遺伝子発現量と攻撃性との関連性が報告された(Vage et al., 2010)。また、神経活動とイヌの行動気質との関連性では、イヌ脳内での神経イメージングによるセロトニン受容体結合指数が、衝動的な攻撃性を示すイヌと不安傾向を示すイヌで異なる結果となった(Vermeire et al., 2010)。これらの報告から、今後遺伝子レベルから生理学的機能に繋がるメカニズムが解明されれば、吠え行動を起こすまでの段階的反応を推定するために有効であると考えられた。 吠え行動との関連性はみられなかった神経伝達関連物質は以下のような役割をもつ。ドーパミンは哺乳類の脳内において重要なカテコールアミンの神経伝達物質であり自発活動や認知、感情を含めた様々な機能をコントロールしている。イヌにおいて、以前の報告では、ドーパミン関連遺伝子の多型と行動気質として攻撃性との関連性が示唆された(Ito et al., 2004)。ノルアドレナリンは病態生理学や抑鬱障害において重要な神経伝達物質である。脳内の青斑核と呼ばれる部位から伸びたノルアドレナリン作動性神経の樹状突起から辺縁系に刺激を与えており、感情や認知の制御に関わっている。DBHはドーパミンを前駆物質としてノルアドレナリンを生合成する役割をもつ。グルタミン酸は脳内の主要な神経伝達物質であり、学習や記憶に重要な役割をもち(Pines et al., 1992)、シナプス可塑性や痛覚、認知、神経内分泌機能の制御に関わっており、中枢神経系において重要なアミノ酸であり、ヒトにおいて不安症との関連性が報告されている(Bergink et al., 2004)。GADは脳内で中枢神経系での主要な抑制性の神経伝達物質であるGABAの生合成に触媒作用を及ぼす主要酵素である。COMTはカテコールアミンやL-DOPAのようなカテコール含有薬を不活性化する。本研究では吠え行動との関連性はみられなかったが、解析を行った遺伝子多型の以前の研究において、他の行動気質との関連性が報告されている。例えば、LRにおいてはGLT-1遺伝子T471C多型およびCOMT遺伝子G216A多型と活発性との関連性が報告されている(Takeuchi et al.,2009a)。従って、本研究で吠え行動と関連性がみられなかった遺伝子多型は別の行動気質に関連していることが考えられた。 結論として、セロトニン関連遺伝子の多型が吠え行動に有意に関連性を示した。イヌの行動と遺伝子多型との関連解析において、衝動性や攻撃性などの行動気質との報告は今までにあるが、衝動性や攻撃性、あるいは興奮など様々な気質や情動から生じて起こる吠え行動との関連性をみた報告は今までにはなく、本研究が最初である。今回解析した遺伝子が行動遺伝学研究の発展に貢献できる可能性が考えられた。将来的に、盲導犬等の使役犬の適性を判定項目として個体を選抜する際に、様々な遺伝子多型を組み合わせることで、より正確な遺伝子多型マーカーを用いた選抜方法の開発や、コンパニオンアニマルに適したイヌを、遺伝子多型マーカーを用いて好みに応じた選択をすることが期待できる。 〔本明細書での引用文献〕 1. 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Journal of Animal Science. 86, 2853-2861.(前掲非特許文献4)配列番号1:セロトニン受容体1B(5-HTR1B)cDNAの塩基配列配列番号2:モノアミン酸化酵素B(MAOB)cDNAの塩基配列配列番号3〜119プライマーまたはプローブの塩基配列 イヌの選別方法であって:被検査イヌの、セロトニン受容体1B(5-HTR1B)遺伝子の955番目の塩基および/またはモノアミン酸化酵素B(MAOB)遺伝子の199番目の塩基を分析し、分析した結果があらかじめ選択した型であるか否かにより、イヌを選別する工程を含む、方法。 イヌを、吠えるイヌと吠えないイヌとを選別するための、請求項1に記載の方法。 雌雄を判定する工程をさらに含む、請求項1または2に記載の方法。 あらかじめ選択した型が、下記からなる群より選択されるいずれかである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法:(1) 5-HTR1B遺伝子の955番目の塩基が、T/T型であること;(2) 5-HTR1B遺伝子の955番目の塩基が、T/T型またはT/C型であること;(3) 5-HTR1B遺伝子の955番目の塩基が、C/C型またはT/C型であること;(4) MAOB遺伝子の199番目の塩基が、C/C型またはT/C型であること;(5) MAOB遺伝子の199番目の塩基が、T/T型またはT/C型であること。 あらかじめ選択した型が、(1)、(2)および(4)からなる群より選択されるいずれかであり、いずれかである場合に、吠えないイヌと判断し、選択または除外するための、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。 あらかじめ選択した型が、(3)および(5)からなる群より選択されるいずれかであり、いずれかである場合に、吠えるイヌと判断し、選択または除外するための、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。 あらかじめ選択した型が、(2') 5-HTR1B遺伝子の955番目の塩基が、T/C型であること;および(5)であるか、または(3') 5-HTR1B遺伝子の955番目の塩基が、C/C型であること;および(4)である、請求項6に記載の方法。 番犬、コンパニオンアニマルとしてのイヌ、または盲導犬候補となるイヌを選択するための、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。 被検査イヌが、ラブラドール・レトリバー、チワワ、ポメラニアン、ヨークシャーテリア、シーズー、パピヨン、マルチーズ、ミニチュアピンシャー、ウエルシュコーギー、スピッツ、ダックスフント、パグ、フレンチブルドッグ、シェットランドシープドッグ、テリア、アメリカンコッカースパニエル、柴犬、プードル、イングリッシュコッカースパニエル、ブルドッグ、ビーグル、バセンジ、ピンシャー、ボーダーコリー、日本犬、チャウチャウ、サモエド、シベリアンハスキー、スタンダードプードル、ダルメシアン、ゴールデンリトリバー、コリー、ジャーマンシェパードドッグ、ボクサー、秋田犬、イングリッシュセッター、ドーベルマン、グレートスイスマウンテンドッグ、セントバーナード、マスティフ、ボルゾイおよび雑種からなる群より選択されるいずれかである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。 請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法により犬を選別し、選択したイヌを用いて実施する、イヌの育種方法。 【課題】イヌの吠え行動の遺伝学的背景を明らかにし、それに基づくイヌの選別方法を提供する。【解決手段】被検査イヌの、セロトニン受容体1B(5-HTR1B)遺伝子の955番目の塩基および/またはモノアミン酸化酵素B(MAOB)遺伝子の199番目の塩基を分析し、分析した結果があらかじめ選択した、下記からなる群より選択されるいずれかの型であるか否かにより、イヌを選別する。(1) 5-HTR1B遺伝子の955番目の塩基が、T/T型であること;(2) 5-HTR1B遺伝子の955番目の塩基が、T/T型またはT/C型であること;(3) 5-HTR1B遺伝子の955番目の塩基が、C/C型またはT/C型であること;(4) MAOB遺伝子の199番目の塩基が、C/C型またはT/C型であること;(5) MAOB遺伝子の199番目の塩基が、T/T型またはT/C型であること。【選択図】なし配列表


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