生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_石膏溶解剤及びその製造方法
出願番号:2012209812
年次:2014
IPC分類:A61K 6/10


特許情報キャッシュ

福井裕幸 藤田友則 JP 2014065663 公開特許公報(A) 20140417 2012209812 20120924 石膏溶解剤及びその製造方法 アムテック株式会社 594109705 松村 信夫 100116056 永田 貴久 100174816 福井裕幸 藤田友則 A61K 6/10 20060101AFI20140320BHJP JPA61K6/10 4 1 OL 7 4C089 4C089AA14 4C089BA02 4C089BA08 4C089BA16 4C089BC05 4C089BC09 4C089CA03 4C089CA06 4C089CA07 本発明は、工作・美術用、歯科用途において、混練、塗布、加工する容器、器具類に付着する石膏を溶解するための石膏溶解剤およびその製造方法に関するものである。 石膏は、工作・美術用、歯科用途において「型どり」を行う際、安価でしかも硬化が早く、硬さが維持できるため、過去から多く利用されてきた。だが、混練、塗布、加工する容器、器具類に付着する石膏は、硬化が早く硬度が大きいため剥離しにくく、削る等物理的に除去すると容器、器具類を傷める恐れがある。 石膏の組成は硫酸カルシウムであるため、塩酸や過塩素酸等の強酸を用いて加温すると簡単に石膏は溶解するが、塩酸、過塩素酸は発生するガスが作業者の安全面で危険を伴うこと、また多くの器具類に使用されるステンレス材は塩酸、過塩素酸で腐食が発生するため使用できない。そのため、キレート剤を主成分とし、石膏中に含まれるカルシウムイオンを抜き取って石膏を溶解させる機構が報告され(例えば特許文献1)、この機構を用いた溶解液が販売されている。 しかし、市場に販売される石膏溶解液剤の多くは、pH8以上のアルカリ性溶液であり、一部の除去剤はpH13を超えるものもある、作業者の安全面は強酸類よりも優れ、ステンレス材の腐食の危険は少なくなるものの、アルカリに弱いアルミニウム等の非鉄金属製の容器、器具類を腐食する恐れがある。 また、カルシウムイオンキレート剤としてエチレンジアミン四酢酸が多く利用されるが、キレート効果の高い(CV(ChelationValue)が大きい)酸タイプは水溶解性が低いため、アルカリにて中和してナトリウム塩タイプに変換する必要が生じる。実際の商品ではエチレンジアミン四酢酸一水素三ナトリウムが多く使用されているとの情報があるが、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩タイプを使用すると、水溶解性は向上するもののCVが小さくなり、キレート効果が低い(CVは酸タイプの0.65倍)ため、石膏溶解効果を期待すると約1.5倍量配合する必要が生じる。 キレート剤の水に対する溶解度はおおよそ0.1wt%(pH7)、25wt%(pH9)となっており、pHの低下と共に減少することが判っている。そのため、pH8前後の水溶液では配合量に制限がかかるため、高価な酸タイプを配合せざるを得ない。特許文献1参照。特開2006−292407 そこで、混練、塗布、加工する容器、器具類を傷めずに、付着する石膏を溶解できる、安価な石膏溶解剤及びその製造方法を提供するものである。 以上の現状に鑑み本発明者は鋭意研究の結果、本発明石膏溶解剤およびその製造方法を完成したものであり、その特徴とするところは、溶解剤にあっては、キレート剤、有機酸、アルカリ剤、水を有し、pHが7.5〜8.0である点にあり、製造方法にあっては、pH8〜9に調整した水に、キレート剤、有機酸を混合し、最後にpHを7.5〜8.0に調整する点にある。 ここで用いるキレート剤は、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩およびそれらの水和物が好適である。安価なナトリウム塩タイプを使用することも特徴の1つである。 本発明に用いるキレート剤(カルシウムイオンキレート剤)は、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸一水素三ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸三水素一ナトリウムのようなエチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩およびそれらの水和物である。特にエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム、例えばキレスト400(商品名、キレスト社製)、TrilonB(商品名、BASF・JAPAN社)は水への溶解性に優れており扱い易い。 これらのキレート剤の混合量(溶解剤中の濃度)は、10〜25wt%、好ましくは15〜20wt%である。 本発明に使用する有機酸とは、カルボン酸基を末端に有するもので、一般的に洗浄剤に配合されるものであれば制限はないが、例えばリンゴ酸、クエン酸、乳酸、シュウ酸、酒石酸、安息香酸等が挙げられる。特にキレート効果の高いリンゴ酸、クエン酸がエチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩との併用で石膏溶解に相乗的な効果を発揮する。 これらの有機酸の混合量(溶解剤中の濃度)は、1wt%〜5wt%が好適であり、なかでも2〜3.5wt%がより好適である。これは、キレート剤量の10wt%〜20wt%含有することが望ましいためである。10%未満であると石膏溶解力は含有量に比例して低下する。20%を超えて配合するとキレート剤との水溶解度に上限があり、未溶解もしくは低温域で共沈する危険が生じるため、好ましくない。 アルカリ剤は、通常のものでよい。例えば、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等である。混合割合は、最終pH等で決めればよいが、通常は1〜5wt%である。 これに水を加えたものが本発明溶解剤の必要成分であるが、これに本発明の趣旨を逸脱しない限り、他の成分、例えば、香料や着色剤その他を混合してもよい。更に、本発明の必要成分はどのように混合してもよく、アルカリ剤や有機酸も何回かに分けて添加してもよい。 本発明に係る石膏溶解剤は、最終的にpH7.5〜8.0に調整する。これは、各成分の混合割合で調整すればよい。 溶解剤自体のpHが8.0を超えると石膏溶解性が低下し始め、pH9.0を超えるとほとんど石膏は溶解しなくなる。これはキレート生成反応がpHに影響を受けるためで、pHが高くなると金属イオンに対してOH基の配位結合が優勢になり、しかも生成した水酸化物は重合する傾向があるので、キレート剤がOH基をおしのけて金属イオンと結合し難くなるためであると推測される。 また、pHが7.5を下回ると、添加した炭酸水素ナトリウムが反応し始めて炭酸ガス発生が生じてしまう。 次に本発明製造方法について説明する。 前記したとおり、本発明の成分はどの順序でどのように混合してもよいが、最初に水を準備し、それに順次成分を加えていく方法もある。そして、この最初の水を、pHを8〜9に調整したものを使用するのである。これが請求項4の発明である。 このpH8〜9に調整した水とは、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリを添加してpH8〜9となるよう調整した水である。イオン交換水、逆浸透膜水(RO水)、蒸留水、水道水のいずれも対象となる。 本発明により、安価なキレート剤と有機酸を使用し、さらにpHを中性域にすることで金属器具の腐食を抑えることを特徴とする石膏溶解液を提供することが可能となった。 さらに、美術用、歯科用に使用される石膏の除去、溶解剤として使用されるものであるが、石膏を使用する用途や化学反応で副次的に石膏が生産されるプラント等においても、器具類、配管、装置類の腐食の懸念がないため、広く使用することができる。pHと溶解度の関係を示すグラフである。 以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。キレート剤、有機酸さらにアルカリ剤を任意の割合で配合し、石膏を溶解させて溶解性能を評価した。 配合割合は表1の通りである。 表1について詳細に説明する。 実施例1は、pH8.8に調整したイオン交換水を74wt%、キレート剤としてキレスト400を20wt%、有機酸としてリンゴ酸(試薬特級、関東化学社製)を3wt%、炭酸水素ナトリウム(試薬特級、関東化学社製)を3wt%準備し、それぞれこの順番で混合撹拌を行ったものである。 撹拌とは一般に溶液を混合する際に用いられる方法で、磁力を用いて撹拌子を回転させて混合する方法、撹拌ペラを液中に投入して撹拌する方法等いずれも可能で、特に特殊な方法を用いる必要はない。 pH調整したイオン交換水とは、pHが8.8になるようあらかじめ水酸化ナトリウム(試薬特級、関東化学社製)にて調整したイオン交換水のことである。なお、混合撹拌後の溶液のpHは7.7であった。 実施例2は、pH8.8に調整したイオン交換水を73wt%、キレート剤としてTrilonBを20wt%、有機酸としてクエン酸(試薬特級、関東化学社製)を3.5wt%、炭酸水素ナトリウムを3.5wt%準備し、それぞれこの順番で混合撹拌を行ったものである。なお、混合撹拌後の溶液のpHは7.6であった。 比較例1は、pH6.7に調整した逆浸透膜水を60wt%、48%水酸化ナトリウムを15wt%、キレート剤としてキレスト110(商品名、キレスト社製:エチレンジアミン四酢酸酸タイプ)を20wt%、炭酸水素ナトリウムを5wt%準備し、それぞれこの順番で混合撹拌を行ったものである。なお、混合撹拌後の溶液のpHは8.7であった。 比較例2は、pH8.8に調整したイオン交換水を75wt%、キレート剤としてキレスト400を20wt%、有機酸としてリンゴ酸を1.5wt%、炭酸水素ナトリウムを3.5wt%準備し、それぞれこの順番で混合撹拌を行った。なお、混合撹拌後の溶液のpHは8.5であった。 比較例3は、pH8.8に調整したイオン交換水を71wt%、キレート剤としてキレスト400を20wt%、実施例1との比較のためリンゴ酸に代えてリン酸(試薬特級、関東化学社製)を6wt%、炭酸水素ナトリウムを3wt%準備し、それぞれこの順番で混合撹拌を行ったものである。なお、混合撹拌後の溶液のpHは7.7であった。 比較例4は、pH8.8に調整したイオン交換水を75wt%、キレート剤としてキレスト400を25wt%、炭酸水素ナトリウムを5wt%準備し、それぞれこの順番で混合撹拌を行ったものである。なお、混合撹拌後の溶液のpHは9.5であった。 これらの溶液を用いて石膏溶解試験を実施した結果は表2に示した。この石膏溶解試験とは、市販される焼石膏(歯科用焼石膏、吉野石膏販売社)10に対して水6(重量比)を混合し、よく練り合わせ、1gとなるよう容器に取分け、充分に乾燥・固化させた後に溶液を20g容器に投入し、1時間後、6時間後、12時間後の石膏溶解度を測定する試験である。溶解度は初期の石膏重量を100とし、その重量の減少率を溶解度として示すものである。 表2から実施例では、石膏が迅速によく溶解することがわかり、比較例では比較例1以外は溶解性が低く、比較例3、4ではとても使用できない。 次に、試験溶液の腐食性を評価するため、実施例1、2、比較例1、2、3、4をそれぞれ20g、使い捨てアルミニウム箔製カップに採取し、経時で状態を確認した。この結果は表3に示した。ここで、○:カップに腐蝕等の異常は見られない、△:カップの一部に損傷が発生(泡立ち等の溶解が見られる)、×:カップが損傷し、溶液がこぼれる等の不具合発生を表す。 この表から実施例では腐蝕性がほとんどなく、比較例ではすべて腐食性があることがわかる。 最後に、本発明の溶解能とpHとの関係を調べた。実施例2の溶解剤を用いて、最後のpHを種々に変化させて溶解能を測定した。この結果を図1に示す。浸漬後3時間のデータである。この図から、pHは7.5〜8.0がよいことがわかる。 キレート剤、有機酸、アルカリ剤、水を有し、pHが7.5〜8.0であることを特徴とする石膏溶解剤。 各成分の含有割合は、水60〜80wt%、キレート剤10〜30wt%、有機酸1〜5wt%、アルカリ剤1〜10wt%である請求項1記載の石膏溶解液。 キレート剤は、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩である請求項1又は2記載の石膏溶解液。 pH8〜9に調整した水に、キレート剤、有機酸を混合し、最後にpHを7.5〜8.0に調整することを特徴とする石膏溶解剤の製造方法。 【課題】 従来の石膏溶解液剤の多くは、pH8以上のアルカリ性溶液であり、一部の除去剤はpH13を超えるものもある、作業者の安全面は強酸類よりも優れ、ステンレス材の腐食の危険は少なくなるものの、アルカリに弱いアルミニウム等の非鉄金属製の容器、器具類を腐食する恐れがある。そこで混練、塗布、加工する容器、器具類を傷めずに、付着する石膏を溶解できる、安価な石膏溶解液を提供する。【解決手段】 キレート剤、有機酸、アルカリ剤、水を有し、pHが7.5〜8.0であるもの。【選択図】 図1


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