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タイトル:公開特許公報(A)_糖カルボン酸エステルの製造方法
出願番号:2012208728
年次:2014
IPC分類:C07H 13/06


特許情報キャッシュ

松尾 陽 泉野 諭 安田 正史 新多 一毅 畑 俊一郎 前多 一大 JP 2014062073 公開特許公報(A) 20140410 2012208728 20120921 糖カルボン酸エステルの製造方法 第一工業製薬株式会社 000003506 河村 洌 100098464 藤森 洋介 100149630 加藤 敬子 100110984 三嶋 眞弘 100111279 松尾 陽 泉野 諭 安田 正史 新多 一毅 畑 俊一郎 前多 一大 C07H 13/06 20060101AFI20140314BHJP JPC07H13/06 8 OL 17 4C057 4C057AA18 4C057AA19 4C057BB01 4C057DD03 4C057HH03 本発明は、任意の平均エステル化度の糖カルボン酸エステルを高収率に得ることができる糖カルボン酸エステルの製造方法に関する。 糖カルボン酸エステルは、様々な産業分野で使用される有用な化合物であり、非晶性樹脂、例えば、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などの成形加工性、物性を向上させたり、結晶性ポリエステル樹脂の柔軟性、耐衝撃性を向上させることが知られている。糖カルボン酸エステルは、糖と、脂肪族または芳香族カルボン酸等とのエステル化反応の後、所定の精製工程を行い、さらに、反応・精製に用いた溶媒を除去することにより得ることができる。 しかし、エステル化反応を、トルエンのような水と相溶しない溶媒を用いて行うと、平均エステル化度の高いエステル体しか得られないという問題があった。例えば、トルエンと水を用いたショ糖ベンゾエートの製造においては、得られるショ糖ベンゾエートの平均エステル化度は6.5〜8であった(特許文献1)。一方、アセトンのような水と相溶する溶媒を用いてエステル化反応を行う場合には、低置換〜高置換度のショ糖ベンゾエートを得ることができるものの(特許文献2)、この場合には、目的物単離の過程で、使用した溶媒を水から分離することが困難となるために、廃水処理への負荷や溶媒の回収・再利用の面で非常に不利となるという問題があった。そのため、水から分離することが容易な水と相溶しない溶媒(水不混和性溶媒)を用いて、任意の平均エステル化度の糖カルボン酸エステル(例えば、平均エステル化度4.0〜6.5未満のショ糖カルボン酸エステル)を製造することが求められている。特公昭40−5688号公報特開昭52−95625号公報 本発明は、水と相溶しない溶媒を用いても、任意の平均エステル化度の糖カルボン酸エステルを高収率に得ることができる糖カルボン酸エステルの製造方法を提供しようとするものである。 本発明者らは、上記課題の解決に向けて鋭意研究を進めた結果、糖、アシル化剤、水および水不混和性溶媒を、反応系内における含有量をそれぞれ所定の範囲内の含有比率に維持しながら、接触させることにより、任意の平均エステル化度の糖カルボン酸エステルを高収率に得ることができることを見出し、さらに検討を重ねて本発明を完成した。 すなわち、本発明は、糖とアシル化剤を反応させることにより、任意の平均エステル化度の糖カルボン酸エステルを製造する方法であって、糖、アシル化剤、水および水不混和性溶媒を、反応系内において所定の範囲内の含有比率の下接触させるものであり、反応系内におけるアシル化剤の該含有比率が0.1〜35重量%、水の該含有比率が30〜99重量%、および、水不混和性溶媒の該含有比率が0.5〜50重量%であり、かつ、該反応系内における糖の含有比率が、希望する平均エステル化度に相当する、アシル化剤に対する当量として定まる比率である、糖カルボン酸エステルの製造方法に関する。 前記反応は、原料を継続して供給する原料供給手段、および、反応後、生成物たる糖カルボン酸エステルを含む反応混合物を継続して回収する生成物回収手段を備えて構成される反応装置内で実施することが好ましい。 前記反応は、水に可溶な触媒の共存下に実施することが好ましい。 前記糖は、ショ糖であることが好ましい。 前記アシル化剤は、カルボン酸塩化物であることが好ましい。 前記反応装置は、攪拌機構を備えるものであることが好ましい。 前記任意の平均エステル化度は、平均エステル化度4.0以上の範囲における任意の平均エステル化度であることが好ましい。 また、本発明は、前記糖カルボン酸エステルの製造方法により製造される、平均エステル化度が4.0以上の範囲におけるいずれかの値である糖カルボン酸エステルに関する。 本発明の糖カルボン酸エステルの製造方法によれば、任意の平均エステル化度の糖カルボン酸エステルを、高収率で製造することができる。また、該製造方法は、溶媒として、水と水不混和性溶媒を用いるものであるため、目的物単離の過程で、水不混和性溶媒を水から分離することが容易である。したがって、本発明の製造方法は、廃水処理への負荷や溶媒の回収・再利用の面で非常に有利であり、工業的に非常に優れている。 また、本発明の製造方法において、エステル化反応を、原料を継続して供給する原料供給手段、および、反応後、生成物たる糖カルボン酸エステルを含む反応混合物を継続して回収する生成物回収手段を備えて構成される反応装置内で実施する場合には、目的物たる糖カルボン酸エステルを継続的かつ効率的に得ることができるという特長を有する。本発明のエステル化反応を実施するための反応装置の一態様である、原料供給手段および生成物回収手段を備えた連続式横型反応機である。本発明のエステル化反応を実施するための反応装置の一態様である、原料供給手段および生成物回収手段を備えた循環式静止型混合器充填管である。本発明のエステル化反応を実施するための反応装置の一態様である、原料供給手段および生成物回収手段を備えた連続式縦型反応槽である。本発明のエステル化反応を実施するための反応装置の一態様である、原料供給手段および生成物回収手段を備えた連続式管型反応機である。 本発明を構成する各要素について、以下説明する。(目的物) 本発明において、糖カルボン酸エステルとは、糖とアシル化剤とを反応して得られる化合物をいう。 ここで、糖とは、グルコース、ガラクトース等の単糖、ショ糖(スクロース)、トレハロース、イソトレハロース、ネオトレハロース、ガラクトスクロース、マルチトール、ラクチトールなどの二糖、ラフィノースなどの三糖、あるいは、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン等のオリゴ糖などが挙げられる。このうち、好ましい糖の例としては、例えば、グルコース、ショ糖またはマルチトールである。 糖は、1種または2種以上を使用することができる。 アシル化剤とは、カルボン酸化合物またはその反応性誘導体をいう。ここで、カルボン酸化合物とは、分子内に少なくとも一つのカルボキシル基を有する化合物をいい、例えば、芳香族カルボン酸、脂肪族カルボン酸などが挙げられる。このうち、カルボキシル基の数が一つであるモノカルボン酸が好ましい。 芳香族モノカルボン酸としては、例えば、一般式(I)(式中、R1〜R5は、独立に、水素原子、アルキル基およびアルコキシ基からなる群から選択される基である。)で示される芳香族モノカルボン酸が挙げられる。 ここで、R1〜R5は、それぞれ、独立に水素原子またはアルキル基であるものが好ましく、全てが水素原子である安息香酸またはその一つ(好ましくは、R3)がアルキル基で残りが水素原子であるものがより好ましい。 脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、一般式(II) R6−COOH (II)(式中、R6は、水素原子、アルキル基およびアルコキシ基からなる群から選択される基である。)で示される脂肪族モノカルボン酸が挙げられる。 ここで、R6は、水素原子またはアルキル基であるものが好ましい。 本明細書において、アルキル基としては、炭素数1〜20のものが挙げられ、このうち、炭素数1〜5のものが好ましく、より好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基またはイソプロピル基である。アルコキシ基としては、炭素数1〜20のものが挙げられ、このうち、炭素数1〜5のものが好ましく、より好ましくは、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基またはイソプロピルオキシ基である。 カルボン酸化合物の反応性誘導体としては、対応する酸ハロゲン化物、酸無水物などが挙げられ、このうち、酸ハロゲン化物(フッ化物、塩化物、臭化物またはヨウ化物)、なかでも、酸塩化物が好ましい。 アシル化剤は、1種または2種以上を使用することができる。 本発明に係わる糖カルボン酸エステルにおいて、平均エステル化度とは、1分子の糖における、エステル化されたアルコールの数の平均値をいう。エステル化度は、低い場合には親水性基であるヒドロキシ基の数が増えるため、水相に存在する糖カルボン酸エステルの割合が増加し、糖カルボン酸エステルを、水不混和性溶媒相(油相)のみならず、水相からも回収することが必要となるので、本発明において、該平均エステル化度は、所定の値以上であることが好ましく、そのような値としては、例えば、4.0が挙げられる。一方、平均エステル化度の上限値について特に限定はない。例えば、糖がショ糖である場合の平均エステル化度としては、4.0〜7.9が好ましい。7.9超のものは工業的生産が困難となる傾向がある。以上のとおりであるので、本発明の製造方法は、特許文献1の方法では製造が困難な、平均エステル化度6.5未満のショ糖ベンゾエートの製造にも有用である。(エステル合成) 本発明のエステル化反応は、常法により、上述した反応原料のうち、糖、アシル化剤、水および水不混和性溶媒を、反応系内において、所定の範囲内の含有比率の下、接触させることにより実施できる。 本発明において、エステル化反応に使用する溶媒は、水と水不混和性溶媒との混合溶媒である。ここで、水不混和性溶媒とは、少なくとも実用に供する程度には水と混和しないか、あるいは、全く水と混和しない、水との相溶性の低い溶媒であって、かつ、エステル化反応の結果生成する糖カルボン酸エステルを溶解することのできる溶媒である。そのような溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クロロベンゼンなどの芳香族炭化水素、二塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、テトラクロロエチレンなどの塩素化脂肪族炭化水素、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどの低級脂肪族エーテル(ここで、「低級」とは、例えば、1つのアルキル基の炭素数が1〜4である。)などが挙げられる。 これら水不混和性溶媒は、単独で、または、2種以上を用いることができる。 反応系内における水の含有量は、30〜99重量%である。30重量%未満では、高置換度体が優先的に生成し易くなり、反応の進行に伴い平均エステル化度が高くなり、高収率の条件では高置換度体のみが得られ易くなる傾向がある。一方、99重量%超では、生成する糖カルボン酸エステルの濃度が極めて低くなるため、生産性が著しく低下する傾向がある。水の含有量の下限値は、70重量%以上が好ましい。 反応系内におけるアシル化剤の含有量は、0.1〜35重量%である。0.1重量%未満では、糖の含有量も希望する平均エステル化度に相当する程度に低下させねばならないため、生成する糖カルボン酸エステルの濃度が低下し、生産性が著しく低下する傾向がある。一方、35重量%超では、相対的に水の含有量が低下するため、上記と同様の傾向がある。 反応系内における水不混和性溶媒の含有量は、0.5〜50重量%である。0.5重量%未満では、生成した糖カルボン酸エステルが溶解せず、粘着性固体として析出し易くなる傾向がある。一方、50重量%超では、相対的に水の含有量が低下するため、上記と同様の傾向がある。 反応系内における糖の含有量は、希望する平均エステル化度に相当する、アシル化剤に対する当量として定まる量である。本発明は、糖の含有量をこのように予め調節することで、対応する任意の平均エステル化度の糖カルボン酸エステルを得ることができるという特長を有するが、この場合において、糖およびアシル化剤の仕込量から計算される平均エステル化度と、実際に得られる目的物の平均エステル化度の間には、概ね±0.5程度の差異が生じうるものである。これは、糖とアシル化剤の反応率(収率)がそれぞれ独立に決定されるためであり、両者の反応率の差異が大きくなるほど、仕込量から計算される平均エステル化度と実際に得られる目的物の平均エステル化度の間の差異は大きくなる。 反応温度は、20℃以下が好ましい。20℃を超えると収率が著しく低下する傾向がある。また、反応温度は、0℃以上が好ましい。0℃未満では反応系内の水が凝固し易くなる傾向がある。 反応時間は、エステル化が十分に進行する時間以上である限り特に制限はなく、そのような反応時間は、原料の種類、反応温度、反応装置の種類などの、反応を実施する際の条件により異なる。一方、反応時間は、できるだけ短時間である方が、製法として効率的であることはいうまでもない。具体的な製造条件における反応時間は実施例の項に示されている。このような状況下、当業者であれば、具体的なエステル化反応の実施にあたり、適当な反応時間を見出すことは容易である。 本発明のエステル化反応は、触媒の存在下、実施することができる。かかる触媒としては、通常、エステル化反応に使用される塩基または酸触媒を同様に使用することができる。塩基触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどの塩基性化合物が挙げられる。酸触媒としては、例えば、硫酸、塩化水素などの酸性化合物が挙げられる。 触媒を添加する場合、反応系内における触媒の含有率の適当な量は、反応を実施する際の条件により異なるが、好ましい範囲としては、例えば、0.1〜10重量%である。0.1重量%未満では、反応速度が著しく低下する傾向がある一方、10重量%超では、高置換度体が優先的に生成し易くなり、平均エステル化度が高くなる傾向がある。 触媒は、単独で、または、2種以上を用いることができる。 本発明のエステル化反応は、常法により、上述した反応原料のうち、糖、アシル化剤、水および水不混和性溶媒を、反応系内において、所定の範囲内の含有比率の下、接触させることにより実施できる。したがって、例えば、上記反応原料を一括で混合し、所望により、攪拌することで実施可能である。あるいは、何れかの反応原料については、分割で仕込むことも可能である。例えば、触媒を使用する場合において、他の反応原料の全量と触媒の半量のみを仕込んだ横型反応槽へ、残りの触媒を3等分し、該反応槽側面の3ヶ所から投入すること等ができる。 アシル化剤として、酸ハロゲン化物を用いる場合、強アルカリ性下(例えば、反応温度等にもよるが、pH13以上など)では、アシル化剤の加水分解の副反応が著しいため、たとえば、pH5〜13程度で行うことが好ましい。 反応後、反応混合物を静置した後、分離した水層を除去することにより、糖カルボン酸エステルとそのエステル合成に使用した溶媒との混合物を得ることができる。また、該混合物は、所望により、水またはその他の精製用の溶媒によって、単回もしくは複数回さらに洗浄して、精製することができる。このような精製に使用することができる溶媒としては、トルエン、o−キシレン、m−キシレンなどの有機溶媒が挙げられる。これら精製用の溶媒は、単独で、または、2種以上を混合して用いることができる。(反応装置) 本発明のエステル化反応は、各反応原料を所定の範囲内の含有比率の下接触させるものであるため、原料を継続して供給する原料供給手段、および、反応後、生成物たる糖カルボン酸エステルを含む反応混合物を継続して回収する生成物回収手段を備えて構成される反応装置を用いることにより、好適に実施することができる。また、このような反応装置の利用は、生成物を継続的かつ効率的に得ることができるという面からも有利である。 原料供給手段としては、各反応原料を、あるいは、各反応原料のうち少なくとも糖、アシル化剤、水および水不混和性溶媒を、反応系内における含有比率を所定の範囲内に保つべく継続的に供給できる限り、如何なる手段であっても好適に使用することができるが、さらに、各原料の供給量を、適宜調節できる手段を備えるものが好ましい。また、生成物回収手段としては、反応後、生成物たる糖カルボン酸エステルを含む反応混合物を継続して回収できるものであれば、如何なる手段であっても好適に使用することができるが、さらに、回収した反応混合物から水を分離できる手段を備えるものが好ましい。また、反応装置としては、供給された反応原料から生成物に至るエステル化反応を好適に実施できるものであれば特に限定はないが、エステル化反応を効率よく進行させる観点からは、攪拌機構を備えたものであることが好ましく、反応温度を所定の範囲内に管理する観点からは、反応温度をモニター(温度計)および調節(冷却機構)する装置を備えたものであることが好ましい。 本発明における反応装置の具体例としては、例えば、図1〜図4に示す反応装置が挙げられる。 図1は、モーター付き攪拌翼11(攪拌翼については、例えば、「十字型攪拌翼」など)および温度指示調節計12を供えた横型反応機13である反応装置1と、糖溶解槽21、糖水溶液用タンク22、触媒用タンク23、アシル化剤用タンク24、水不混和性溶媒用タンク25、ポンプ26、調節弁27、および流量指示調節計28を備えた原料供給手段2と、油水分離槽31および糖カルボン酸エステル用タンク32を備えた生成物回収手段3とからなる反応装置を表す。 該反応装置においては、原料である糖が、糖溶解槽21において溶解され、糖水溶液用タンクにて、糖水溶液とされる。「糖水溶液」、「触媒」、「アシル化剤」および「水不混和性溶媒」の各原料は、まず、「糖水溶液」と「触媒」とが混合されかつ「アシル化剤」と「水不混和性溶媒」とが混合された上で、これら両混合液が合わされた後、反応装置へと供給される。各原料の供給速度は、流量指示調節計28でモニターしながら、ポンプ26および調節弁27によって適当な速度に調節される。なお、触媒が固体の場合、予め水に溶解して液体とされる。あるいは、触媒が液体であっても、濃度もしくは粘ちょう性の調節のため、予め水で希釈して液体とされる。 こうして供給された原料により、反応装置1内でエステル化反応が進行する。図1ではモーターを備えた攪拌翼11が装備されているため、反応が効率的に進行する。反応温度は温度指示調節計12によりモニターできる。反応装置は、その周囲に冷却水を循環させることにより、反応液が所定の温度を維持するように管理することができる。 反応が終了した反応混合物は、生成物回収手段3により回収される。回収された反応混合物は、油水分離槽31で、常法により、水層と油層とに分離して水および水に含まれる不純物を除去したのち、糖カルボン酸エステル用タンク32に回収され、さらに、所望により精製した後、溶媒を留去することにより、糖カルボン酸エステルが得られる。 図2は、図1において、反応装置1を、温度指示調節計12、反応混合物槽14、三方弁15および水浴16を備えた静止型混合器充填管17とした反応装置である。該反応装置においては、攪拌機構として、静止型混合器が充填されており、流体たる原料化合物を効率的に攪拌・混合することができる。また、該反応装置は、三方弁を備えていることから、静止型混合器充填管17を通過した反応混合物を反応混合物槽14へ導くことにより、再度、静止型混合器充填管17に通してエステル化反応を繰り返すことができる。水浴16は、反応温度を所定の範囲内に管理するのに有用である。温度指示調節計12の役割は上述のとおりである。 図3は、図1において、反応装置1を、温度指示調節計12およびモーター付きミキサー18を備えた連続式攪拌槽19とした反応装置である。モーター付きミキサー18(具体的には、ホモミキサなど)は攪拌機構として機能する。温度指示調節計12の役割は上述のとおりである。 図4は、図1において、反応装置1を、温度指示調節計12および水浴16を備えた管型反応機111とした反応装置である。温度指示調節計12および水浴16の役割は上述のとおりである。 一方、本発明のエステル化反応は、バッチ式の反応に付すことによっても、好適に実施することができる。そのような反応装置としては、攪拌槽や、各種循環型の反応装置などが挙げられる。(樹脂改質剤) 本発明に係わる糖カルボン酸エステルは、樹脂改質剤として有用であり、非晶性樹脂、例えば、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などの成形加工性、物性を向上させたり、結晶性ポリエステルの柔軟性、耐衝撃性を向上させるのに有用である。 ABS樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリルニトリル−ブタジエン共重合体、塩素化ポリエチレン、アクリル系ゴム(例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等)と、アクリルニトリル、スチレン、アクリル酸、アクリル酸アマイド、2−クロロエチルビニルエーテル等との共重合体等ゴム状重合体に、アクリルニトリル、スチレン、α−メチルスチレン、メタアクリル酸メチル等をグラフト重合させて得られるものが挙げられ、さらには、アクリルニトリル−ポリブタジエン−スチレン系のグラフト共重合体などが挙げられる。ABS樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。 ポリ塩化ビニル樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、塩化ビニル単独重合樹脂、塩素化塩化ビニル樹脂、塩化ビニル単量体と共重合し得るすべての単量体のうち1つ以上とランダム共重合あるいはブロック共重合して得られる塩化ビニル共重合樹脂(例えば酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体等)、また上記の樹脂に水酸基などの官能基をグラフトさせて得られる樹脂やこうした官能基と反応性化合物を反応せしめグラフト結合させたものを挙げることができる。ポリ塩化ビニル樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。 エポキシ樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールビフェニルアラルキルエポキシ樹脂等のアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物、トリグリシジルイソシアヌレート、脂環式エポキシ樹脂等を挙げることができる。エポキシ樹脂は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。 不飽和ポリエステル樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、α,β−オレフィン系不飽和ジカルボン酸またはその無水物とグリコールの付加反応または脱水縮合反応によって合成されるものである。また飽和ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸またはその無水物あるいはカルボン酸と反応するジシクロペンタジエンなども併用することができる。α,β−オレフィン系不飽和ジカルボン酸の例としては、例えばマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸およびこれらジカルボン酸の無水物が挙げられる。これらα,β−オレフィン系不飽和ジカルボン酸と併用されるジカルボン酸の例としては、例えば、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、フタル酸無水物、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、テトラクロロフタル酸などが挙げられる。これらの中で、α,β−オレフィン系不飽和ジカルボン酸としてフマル酸、及びジカルボン酸としてイソフタル酸を併用することが好ましい。不飽和ポリエステル樹脂は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。 結晶性ポリエステル樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリ−1,4−ブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレート、ポリ−1,4−ブチレンジフェニル−4,4’−ジカルボキシレート、ポリエチレンオキシベンゾエート、ポリ−1,3−プロピレンテレフタレート、ポリ−1,6−ヘキシレンテレフタレートなどの結晶性ポリエステルが挙げられ、このうち、ポリエチレンテレフタレート、ポリ−1,4−ブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナノフタレートが好ましい。結晶性ポリエステル樹脂は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。 なお、これら樹脂には、必要に応じて、衝撃強度改質剤、安定剤、滑剤、充填剤、顔料、発泡剤、紫外線安定剤等の各種添加剤を添加することができる。 本発明の糖カルボン酸エステルを樹脂改質剤として使用する場合の、樹脂への配合割合は、樹脂100部に対して、1〜40部が好ましく、1〜30部がさらに好ましい。1部未満では、目的とする性能が得られない傾向があり、40部より多い場合には、長期保存などによるブリードアウトの可能性が高くなる。 本明細書において、単に「部」というときは、「重量部」を意味する。糖カルボン酸エステルにおける「平均エステル化度」は、プロトン核磁気共鳴(1H−NMR)によって求めた値である。 実施例にもとづいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。(使用した原料等)糖(1):スクロース(ナカライテスク株式会社製)糖(2):D−(+)−グルコース(ナカライテスク株式会社製)アシル化剤(1):塩化ベンゾイル(ナカライテスク株式会社製)アシル化剤(2):安息香酸(ナカライテスク株式会社製)水不混和性溶媒(1):トルエン(ナカライテスク株式会社製)水不混和性溶媒(2):ジエチルエーテル(ナカライテスク株式会社製)触媒(1):水酸化ナトリウム(ナカライテスク株式会社製)触媒(2):硫酸(ナカライテスク株式会社製)(使用した反応装置)反応装置(1):図1の連続式横型反応機(攪拌機構:攪拌機構(1)(十字攪拌翼))反応装置(2):図2の循環式静止型混合器充填管(攪拌機構:攪拌機構(2)(スタティックミキサー、株式会社ノリタケカンパニーリミテド製)反応装置(3):図3の連続式縦型反応槽(攪拌機構:攪拌機構(3)(ミキサー:「連続式ホモミックラインフロー」、プライミクス株式会社製))反応装置(4):図4の連続式管型反応機(攪拌機構:なし)反応装置(5):バッチ式攪拌槽(攪拌機構:攪拌機構(4)(アンカー))反応装置(6):バッチ式攪拌槽(攪拌機構:攪拌機構(5)(ミキサー:「ホモミクサMarkII」、プライミクス株式会社製))実施例1 表1に記載のとおり、各原料を反応装置(1)に供して、エステル化反応を実施した。すなわち、各原料は、反応装置(1)の原料供給手段2により、反応系内における含有率が表1記載のとおりとなるように供給され、反応装置(1)を通過する間に、表1記載の反応条件下、エステル化反応に供された。ここにおいて、反応時間とは、各原料が所定の流入速度の下反応装置(1)に流入してから反応混合液として流出するまでの時間(滞留時間)として計算される時間である(特にことわりのない限り、以下の連続式の装置においても同様)。こうして得た反応混合液を、生成物回収手段3により回収し、油水分離槽31で水層を除去した後、糖カルボン酸エステル用タンク32に回収した。ロータリーエバポレータを用いて回収された反応混合液から溶媒を留去することにより、目的物たるショ糖ベンゾエートを得た。結果を表1に示す。実施例2〜11 対応原料化合物を、表1の記載に従い、実施例1と同様に処理して、それぞれ、目的物たるショ糖ベンゾエートを得た。結果を表1に示す。実施例12 対応原料化合物を、表1の記載に従い、実施例1と同様に処理して、目的物たるショ糖ベンゾエートを得た。但し、反応装置は、反応装置(1)に代えて反応装置(2)(循環式静止型混合器充填管)を使用した。なお、反応装置(2)において、循環を開始する際には、原料供給を停止して行った。原料供給を再循環させる回数は17回とした。ここに、反応時間とは、原料が静止型混合器充填管(17)により攪拌されている時間である。結果を表1に示す。実施例13 対応原料化合物を、表1の記載に従い、実施例1と同様に処理して、目的物たるショ糖ベンゾエートを得た。但し、反応装置は、反応装置(1)に代えて反応装置(3)を使用した。結果を表1に示す。実施例14 対応原料化合物を、表1の記載に従い、実施例1と同様に処理して、目的物たるショ糖ベンゾエートを得た。但し、反応装置は、反応装置(1)に代えて反応装置(4)を使用した。結果を表1に示す。実施例15 表1記載の原料化合物を、アンカーによる攪拌機構を備えた攪拌槽(反応装置(5))に仕込み、表1記載の条件下、エステル化反応を実施した。その後、静置分離により水層と油層に分離し、水層を除去することによりショ糖ベンゾエートを含む油層を得た。ロータリーエバポレータを用いて該油層からトルエンを留去して、目的物たるショ糖ベンゾエート327.2gを得た。結果を表1に示す。実施例16 対応原料化合物を、表1の記載に従い、実施例15と同様に処理して、目的物たるショ糖ベンゾエート71.4gを得た。但し、反応装置は、反応装置(5)に代えて反応装置(6)(攪拌槽の攪拌機構が、ミキサー(ホモミクサMarkII、プライミクス株式会社製)によるもの)とした。結果を表1に示す。実施例17〜19 対応原料化合物を、表1の記載に従い、実施例1と同様に処理して、それぞれ、目的物たるショ糖ベンゾエートまたはグルコースベンゾエートを得た。結果を表1に示す。比較例1および2 対応原料化合物を、表2の記載に従い、実施例1と同様に処理して、それぞれ、目的物たるショ糖ベンゾエートを得た。結果を表2に示す。 上記のとおり、本発明の実施例1〜19においては、エステル反応の際の反応系における所定の原料の含有比率を所定の範囲内とすることで、意図したエステル化度(仕込量における当量比)との差異が小さいエステル化度である糖エステルを、高収率で得ることができたのに対し、反応系内における水の含有比率が本願所定の範囲外(23重量%)である比較例1および2においては、意図したエステル化度との差異が大きくかつ収率も低いものしか得られなかった。そして、比較例1および2の対比から明らかなとおり、収率を高くすべく反応時間を延長した場合には、意図したエステル化度との差異がより大きくなった。 本発明によれば、任意の平均エステル化度の糖カルボン酸エステルを高収率で製造することができ、加えて、廃水処理への負荷や溶媒の回収・再利用の面で非常に有利な、工業的に優れた糖カルボン酸エステルの製造方法を提供することができる。1 反応装置11 モーター付き攪拌翼12 温度指示調節計13 横型反応機14 反応混合物槽15 三方弁16 水浴17 静止型混合器充填管18 モーター付きミキサー19 連続式攪拌槽111 管型反応機2 原料供給手段21 糖溶解槽22 糖水溶液用タンク23 触媒溶液用タンク24 アシル化剤用タンク25 水不混和性溶媒用タンク26 ポンプ27 調節弁28 流量指示調節計29 モーター付き攪拌翼3 生成物回収手段31 油水分離槽32 糖カルボン酸エステル用タンク糖とアシル化剤を反応させることにより、任意の平均エステル化度の糖カルボン酸エステルを製造する方法であって、糖、アシル化剤、水および水不混和性溶媒を、反応系内においてそれぞれ所定の範囲内の含有比率の下接触させるものであり、反応系内におけるアシル化剤の該含有比率が0.1〜35重量%、水の該含有比率が30〜99重量%、および、水不混和性溶媒の該含有比率が0.5〜50重量%であり、かつ、該反応系内における糖の含有比率が、希望する平均エステル化度に相当する、アシル化剤に対する当量として定まる比率である、糖カルボン酸エステルの製造方法。前記反応を、原料を継続して供給する原料供給手段、および、反応後、生成物たる糖カルボン酸エステルを含む反応混合物を継続して回収する生成物回収手段を備えて構成される反応装置内で実施する、請求項1記載の糖カルボン酸エステルの製造方法。前記反応を、水に可溶な触媒の共存下に実施する、請求項1または2記載の糖カルボン酸エステルの製造方法。前記糖がショ糖である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の糖カルボン酸エステルの製造方法。前記アシル化剤がカルボン酸塩化物である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の糖カルボン酸エステルの製造方法。前記反応装置が攪拌機構を備えるものである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の糖カルボン酸エステルの製造方法。前記任意の平均エステル化度が、平均エステル化度4.0以上の範囲における任意の平均エステル化度である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の糖カルボン酸エステルの製造方法。請求項7記載の糖カルボン酸エステルの製造方法により製造される、平均エステル化度が4.0以上の範囲におけるいずれかの値である糖カルボン酸エステル。 【課題】水と相溶しない溶媒を用いても、任意の平均エステル化度の糖カルボン酸エステルを高収率に得ることができる糖カルボン酸エステルの製造方法を提供すること。【解決手段】糖とアシル化剤を反応させることにより、任意の平均エステル化度の糖カルボン酸エステルを製造する方法であって、糖、アシル化剤、水および水不混和性溶媒を、反応系内においてそれぞれ所定の範囲内の含有比率の下接触させるものであり、反応系内におけるアシル化剤の該含有比率が0.1〜35重量%、水の該含有比率が30〜99重量%、および、水不混和性溶媒の該含有比率が0.5〜50重量%であり、かつ、該反応系内における糖の含有比率が、希望する平均エステル化度に相当する、アシル化剤に対する当量として定まる比率である、糖カルボン酸エステルの製造方法。【選択図】なし


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