タイトル: | 公開特許公報(A)_セロトニン分泌促進剤 |
出願番号: | 2012203208 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | A61K 35/74,A61P 43/00,A61P 25/02,A61P 9/00,A61P 17/16,A61P 1/00,A61P 1/10,A23L 1/30 |
中北 保一 金田 弘挙 JP 2013224287 公開特許公報(A) 20131031 2012203208 20120914 セロトニン分泌促進剤 サッポロビール株式会社 303040183 サッポロホールディングス株式会社 000002196 長谷川 芳樹 100088155 清水 義憲 100128381 坂西 俊明 100176773 中北 保一 金田 弘挙 JP 2012062127 20120319 A61K 35/74 20060101AFI20131004BHJP A61P 43/00 20060101ALI20131004BHJP A61P 25/02 20060101ALI20131004BHJP A61P 9/00 20060101ALI20131004BHJP A61P 17/16 20060101ALI20131004BHJP A61P 1/00 20060101ALI20131004BHJP A61P 1/10 20060101ALI20131004BHJP A23L 1/30 20060101ALI20131004BHJP JPA61K35/74 AA61P43/00 111A61P25/02 103A61P9/00A61P17/16A61P1/00A61P1/10A23L1/30 Z 11 OL 19 4B018 4C087 4B018MD86 4B018ME04 4C087AA01 4C087AA02 4C087BC55 4C087BC56 4C087CA09 4C087NA14 4C087ZA24 4C087ZA36 4C087ZA66 4C087ZA72 4C087ZA89 4C087ZC41 本発明は、セロトニン分泌促進剤に関する。 ラクトバチラス・ブレビス(Lactobacillus brevis)SBC8803(以下、「SBL88」とも称する。)は、抗アレルギー作用を有すること(特許文献1)、アルコール性肝障害抑制作用を有すること(特許文献2)、腸管保護作用を有すること(特許文献3)が知られている。国際公開第2008/023663号国際公開第2009/090961号特開2010−83881号公報 本発明は、ラクトバチラス・ブレビスSBC8803の新規な用途を提供することを課題とする。 本発明は、ラクトバチラス・デルブリッキィー(Lactobacillus delbrueckii)グループに属する乳酸菌以外のラクトバチラス属に属する乳酸菌、及びペディオコッカス(Pediococcus)属に属する乳酸菌からなる群より選ばれる菌株の菌体又はその処理物を有効成分として含有するセロトニン分泌促進剤を提供する。 本発明者らは、上記乳酸菌群から選択される菌株の菌体又は菌体処理物は、モノアミン神経伝達物質であるセロトニンの細胞からの分泌を促進する作用を有する、との新規な知見を得た。本発明はこの知見に基づいており、ラクトバチラス・ブレビスSBC8803を含む上記菌株の新規な用途を提供するものである。 セロトニンは人の精神面に大きな影響を与える神経伝達物質で、不足すると「うつ病」などの精神疾患に陥り易いといわれている。また、体内セロトニンの約90%は、腸管に存在している腸クロム親和性細胞(Enterochromaffin(EC)細胞)により産生されおり、腸の蠕動運動等に重要な役割を果たしていると考えられている。従って、セロトニン産生を制御することは、ストレス社会における健康感(生活リズム改善)において、極めて重要である。 上記セロトニン分泌促進剤は、ラクトバチラス・ブレビスに属する菌株の菌体又は菌体処理物を有効成分として含有することが好ましく、ラクトバチラス・ブレビスSBC8803の菌体又は菌体処理物を有効成分として含有することがより好ましい。これにより、より一層優れたセロトニン分泌促進作用を奏する。 なお、ラクトバチラス・ブレビスSBC8803は、2006年6月28日に独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305−8566))に寄託された、受託番号がFERM BP−10632の菌株である。 上記セロトニン分泌促進剤は、セロトニンの分泌を介して自律神経に作用し、例えば、胃迷走神経亢進作用、皮膚動脈交感神経抑制作用及び褐色脂肪組織交感神経亢進作用を発揮する。したがって、上記セロトニン分泌促進剤は、自律神経調節剤として使用することもできる。 上記セロトニン分泌促進剤は、血流量増加作用(血流促進作用)及び経皮水分蒸散量低下作用(経皮水分蒸散抑制作用)を有しているため、皮膚の保湿度を高めることができ、保湿剤として使用することもできる。また、上記セロトニン分泌促進剤は、血流促進剤として使用することもできる。 上記セロトニン分泌促進剤による血流促進効果及び保湿効果は、少なくともその一部はセロトニン分泌促進作用に基づいており、セロトニンの分泌を介して皮膚動脈交感神経が抑制されることにより生じる。 上記菌株は、古くから発酵食品に利用されており、生体への安全性が確立されている。したがって、上記セロトニン分泌促進剤、上記自律神経調節剤、上記保湿剤又は上記血流促進剤は、生体への安全性が高く、長期間継続的に摂取することができるため、医薬品成分、飲食品成分、飲食品添加物、飼料成分、飼料添加物等として使用することができる。また、医薬品、飲食品又は飼料に添加して使用(摂取)することもできる。 本発明はまた、飲食品の製造における上記セロトニン分泌促進剤、上記自律神経調節剤、上記保湿剤又は上記血流促進剤の使用ということもできる。 本発明によれば、生体への安全性が高く、飲食品の成分としても使用可能な新規のセロトニン分泌促進剤が提供される。また、当該セロトニン分泌促進剤を含有する医薬品、飲食品、飲食品添加物等が提供される。 現在のストレス社会においては、生活リズムが乱れ易い状況下にあり、これが体調不良、睡眠障害、疲労、生活習慣病等々に導く要因の1つとなっている。ストレスが続くと交感神経が強く刺激され、血流循環障害が起こり皮膚の状態が悪くなったり、睡眠不足になったりすると言われている。一方、副交感神経活動が抑えられるため、副交感神経の支配下にある消化管では、消化液の分泌が抑制され、蠕動運動も抑制されるので、食欲不振、便秘などの症状が起きる。本発明のセロトニン分泌促進剤は、胃迷走神経の活動を亢進する作用を有するため、整腸効果、並びに便通及び食欲を促進する効果が期待できる。 また、本発明のセロトニン分泌促進剤は、皮膚動脈交感神経の活動を抑制する作用を有しており、皮膚動脈を弛緩させて血流を促進し(血流量増加作用)、皮膚細胞への酸素及び栄養素の供給を高め、経皮水分蒸散量を低下させ(経皮水分蒸散量低下作用)、皮膚の保湿度を高めることができる。これにより、美容効果が期待できる。また、入眠を促進する効果も期待できる。 また、本発明の自律神経調節剤によれば、神経伝達物質であるセロトニンを介して、少なくとも胃迷走神経亢進作用、皮膚動脈交感神経抑制作用及び褐色脂肪組織交感神経亢進作用が奏される。セロトニンによる各臓器の自律神経活動への更なる影響を勘案すれば、健康的な生活リズムの基本となる内臓活動のリズムを維持する効果が期待できる。ラクトバチラス属及びペディオコッカス属に属する乳酸菌の16S rDNA配列に基づく系統的位置関係を示す図である。SBL88株のセロトニン分泌促進作用を示すグラフである。SBL88株の胃迷走神経活動への作用を示すグラフである。SBL88株の皮膚動脈交感神経活動への作用を示すグラフである。SBL88株の褐色脂肪組織交感神経活動への作用を示すグラフである。SBL88株の胃迷走神経亢進作用に対するセロトニン受容体阻害剤の影響を示すグラフである。各種乳酸菌及びビフィズス菌のセロトニン分泌促進作用を示すグラフである。各種乳酸菌及びビフィズス菌のセロトニン分泌促進作用を示すグラフである。SBL88株の血流量への作用を示すグラフである。SBL88株の経皮水分蒸散量への作用を示すグラフである。SBL88株の皮膚動脈交感神経抑制作用に対するセロトニン受容体阻害剤の影響を示すグラフである。 本実施形態に係るセロトニン分泌促進剤は、ラクトバチラス・デルブリッキィー(Lactobacillus delbrueckii)グループに属する乳酸菌以外のラクトバチラス属に属する乳酸菌、及びペディオコッカス(Pediococcus)属に属する乳酸菌からなる群(以下、「本実施形態に係る乳酸菌群」ともいう。)より選ばれる菌株の菌体又はその処理物を有効成分として含有する。 ラクトバチラス・デルブリッキィーグループに属する乳酸菌とは、ラクトバチラス属に属する乳酸菌、及びペディオコッカス属に属する乳酸菌を16S rDNAの塩基配列に基づいて近隣結合(Neighbor-joining)法により系統樹を作成したときに、ラクトバチラス・デルブリッキィーが含まれる系統群に分類される乳酸菌である(図1参照。出典:Japanese Journal of Lactic Acid Bacteria,2008年,Vol.19,No.3,pp.154)。本実施形態に係る乳酸菌群は、図1に示すラクトバチラス属及びペディオコッカス属に属する乳酸菌から、図1に示すラクトバチラス・デルブリッキィーグループに属する乳酸菌を除いた乳酸菌からなる群である。 本実施形態に係る乳酸菌群としては、具体的には例えば、ラクトバチラス・ブッヒネリ(buchneri)グループに属する乳酸菌、ペディオコッカスグループに属する乳酸菌、ラクトバチラス・アリメンタリウス(alimentarius)−ラクトバチラス・ファルシミニス(farciminis)グループに属する乳酸菌、ラクトバチラス・プランタルム(plantarum)グループに属する乳酸菌、ラクトバチラス・ロイテリ(reuteri)グループに属する乳酸菌、ラクトバチラス・カゼイ(casei)グループに属する乳酸菌、ラクトバチラス・サケイ(sakei)グループに属する乳酸菌、ラクトバチラス・サリヴァリゥス(salivarius)グループに属する乳酸菌が挙げられる。 本実施形態に係る乳酸菌群から選択される菌株としては、セロトニンの分泌がより一層促進されることから、ラクトバチラス・ブッヒネリグループに属する菌株が好ましく、ラクトバチラス・ブレビスに属する菌株がより好ましく、ラクトバチラス・ブレビスSBC8803が更に好ましい。 本実施形態に係るセロトニン分泌促進剤における菌株は、例えば、自然界から分離可能なもの、又はATCC等の細胞バンクから入手可能なものであってもよい。本実施形態に係るセロトニン分泌促進剤は、本実施形態に係る乳酸菌群より選ばれる菌株の菌体又はその処理物を有効成分とする。上記菌株は1種単独であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。 菌株の菌体は、生菌体及び死菌体のいずれであってもよい。菌体は、生菌体を培養することにより大量に生産することができる。培地は、液体培地及び固体培地のいずれでもよいが、窒素源及び炭素源を含有するものが好ましい。窒素源としては、肉エキス、ペプトン、グルテン、カゼイン、酵母エキス、アミノ酸等を、また、炭素源としては、グルコース、キシロース、フルクトース、イノシトール、マルトース、水アメ、麹汁、デンプン、バカス、フスマ、糖蜜、グリセリン等を用いることができる。また、無機質として、硫酸アンモニウム、リン酸カリウム、塩化マグネシウム、食塩、鉄、マンガン、モリブデン等を添加することができ、更にビタミン等を添加することができる。好適な培地としては、MRS培地、LBS培地、Rogosa培地、WYP培地、GYP培地等が挙げられる。 生菌体の培養条件は、各乳酸菌に適した条件を採用すればよいが、例えば、培養温度は通常20〜50℃、好ましくは25〜40℃、より好ましくは30℃である。培養時間は通常6〜62時間であり、好ましくは12〜48時間であり、より好ましくは15〜30時間である。培地のpHは通常3〜8、好ましくは4〜7であり、より好ましくは6〜7である。培養はインキュベーター中で行ってもよく、また、培養の際は通気振とうしてもよい。 菌体の処理物としては、上記菌体(生菌体又は死菌体)に、加熱、加圧、乾燥、粉砕、破壊又は自己溶解等の処理を行って得られる処理物が挙げられる。これらの処理は2種以上を組み合わせてもよい。菌体の処理物としては、例えば、菌体を100℃以上で数分以上加熱して得られる処理物(例えば、菌体に、105〜125℃の温度で10分以上、オートクレーブ処理を施して得られる処理物)、菌体に対して凍結乾燥、噴霧乾燥等を行って得られる処理物、菌体を有機溶媒(アセトン、エタノール等)に接触させて得られる処理物、菌体を酸若しくはアルカリ溶液に接触させて得られる処理物、菌体を酵素的に破砕して得られる処理物、又は菌体を超音波、フレンチプレス等で物理的に破壊して得られる処理物が挙げられる。このような菌体処理物は、未処理菌体(特に生菌体)と比較して、取り扱いが容易な点で好適である。 セロトニンは、5−ヒドロキシトリプタミン(5−hydroxytryptamine)とも呼ばれ、モノアミン神経伝達物質の一つである。本実施形態に係るセロトニン分泌促進剤は、セロトニンの分泌を介して自律神経(特に、脳から各臓器へ向かう神経である遠心枝)に作用し、例えば、胃迷走神経亢進作用、皮膚動脈交感神経抑制作用及び褐色脂肪組織交感神経亢進作用を発揮することができるため、自律神経調節剤として使用してもよい。また、本実施形態に係る自律神経調節剤は、生活リズム改善剤として使用することもできる。 本実施形態に係るセロトニン分泌促進剤は、皮膚動脈交感神経抑制作用を介して、皮膚動脈を弛緩させて血流を促進することができるため、血流促進剤として使用することもできる。またこのような作用に基づいているため、本実施形態に係る血流促進剤は、手足の冷え、肩凝り及び糖尿病性血管障害等の血管狭窄症状に対して有効である。 本実施形態に係るセロトニン分泌促進剤は、血流促進作用により、皮膚細胞への酸素及び栄養素の供給を高め、経皮水分蒸散量を低下させ(経皮水分蒸散量低下作用)、皮膚の保湿度を高めることができるため、保湿剤として使用することもできる。 本実施形態に係るセロトニン分泌促進剤は、固体(例えば、凍結乾燥させて得られる粉末)、液体(水溶性又は脂溶性の溶液又は懸濁液)、ペースト等のいずれの形状であってもよく、また、散剤、丸剤、顆粒剤、錠剤、シロップ剤、トローチ剤、カプセル剤等のいずれの剤形であってもよい。 上述の各種製剤は、有効成分である上記菌株の菌体又はその処理物のみからなるものであってもよく、例えば、当該菌株の菌体又はその処理物を上記剤形に成形することによって調製することができる。上述の各種製剤はまた、上記有効成分と、薬学的に許容される添加剤(賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、乳化剤、界面活性剤、基剤、溶解補助剤、懸濁化剤等)とを混和し、成形することによって調製することもできる。この場合の上記有効成分の含有量は、製剤全量を基準として、0.5〜50質量%である。 例えば、賦形剤としては、ラクトース、スクロース、デンプン、デキストリン等が挙げられる。結合剤としては、ポリビニルアルコール、アラビアゴム、トラガント、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク等が挙げられる。崩壊剤としては、結晶セルロース、寒天、ゼラチン、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、デキストリン等が挙げられる。乳化剤又は界面活性剤としては、Tween60、Tween80、Span80、モノステアリン酸グリセリン等が挙げられる。基剤としては、セトステアリルアルコール、ラノリン、ポリエチレングリコール、米糠油、魚油(DHA、EPA等)、オリーブ油等が挙げられる。溶解補助剤としては、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、Tween80等が挙げられる。懸濁化剤としては、Tween60、Tween80、Span80、モノステアリン酸グリセリン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。 本実施形態に係るセロトニン分泌促進剤は、ヒトに投与しても、非ヒト哺乳動物に投与してもよい。投与量及び投与方法は、投与される個体の状態、年齢等に応じて適宜決定することができる。投与方法(投与経路)としては、例えば、注腸投与、経口投与、経管栄養、経静脈投与が挙げられる。好適な投与方法としては、例えば、経口投与が挙げられる。投与量及び投与方法の一例として、本実施形態に係るセロトニン分泌促進剤を有効成分量が0.5mg〜500mgとなる量を1日1回経口で投与する方法を挙げることができる。 本実施形態に係るセロトニン分泌促進剤は、医薬品成分、飲食品成分、飲食品添加物、飼料成分、飼料添加物等として使用することができる。 例えば、本実施形態に係るセロトニン分泌促進剤は、水、清涼飲料水、果汁飲料、乳飲料、アルコール飲料、パン類、麺類、米類、豆腐、乳製品、醗酵食品、発酵乳、醤油、味噌、菓子類等の飲食品への添加物として使用することができる。これらの飲食品は、当分野で通常使用される他の添加物を更に含有してもよく、そのような添加物としては、例えば、苦味料、香料、リンゴファイバー、大豆ファイバー、肉エキス、黒酢エキス、ゼラチン、コーンスターチ、蜂蜜、動植物油脂;グルコース、フルクトース等の単糖類;スクロース等の二糖類;デキストロース、デンプン等の多糖類;エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール等の糖アルコール類;ビタミンC等のビタミン類、が挙げられる。本実施形態に係るセロトニン分泌促進剤はまた、特定保健用食品、特別用途食品、栄養補助食品、健康食品、機能性食品、病者用食品等の成分として使用することもできる。本実施形態に係るセロトニン分泌促進剤を含有する飲食品は、本実施形態に係る乳酸菌群より選択される菌株で牛乳、脱脂乳、豆乳等を発酵させて得られる発酵物であってもよい。 以下、実施例等に基づいて本発明をより具体的に説明する。〔実施例1:SBL88株のセロトニン分泌促進作用〕<菌体処理物の調製> SBL88株をMRS液体培地10mL中で、1〜2日間、30℃、静置培養した。培養液を10,000rpmで10分間遠心分離し、菌体の沈殿を滅菌生理食塩水(10mL)で2回洗浄した。得られた菌体は、5mLの滅菌水に懸濁し、凍結乾燥させた。凍結乾燥した菌体を10mg/mLになるように滅菌水に懸濁した後、105℃で10分間加熱処理し、菌体溶液を得た。<大腸細胞COLO−320DMの培養> COLO−320DM(JCRB0225)は(財)ヒューマンサイエンス振興財団より購入した。10%FBS含有D’MEM培地を使用し、5%CO2インキュベーター内で、COLO−320DMを3日おきに継代しながら培養した。<COLO−320DMのセロトニン分泌促進アッセイ> 10%FBS含有D’MEM培地で3日間培養したCOLO−320DM培養液を、1,000rpmで5分間遠心分離して細胞を回収した。回収した細胞を、約2×105cells/mLとなるように無血清RPMI1640培地に懸濁して24穴マイクロプレートに播種した後(0.5mL/ウェル)、菌体の濃度が100質量ppmとなるように菌体溶液を添加した(1%添加)。5%CO2インキュベーター内で2時間培養した後、培養液を遠心分離して菌体及び細胞を除去した。得られた上清中のセロトニン濃度を、セロトニンEIAキット(品番900−175、コスモバイオ)を使用して測定した。菌体を添加せずに同様の操作を行った対照(菌体非添加)との比較から、SBL88株のセロトニン分泌促進作用を評価した。 図2に、セロトニン分泌促進アッセイの結果を示す。図2中、Blankは、菌体非添加のウェル中のセロトニン濃度(nM/ウェル)の測定結果を示す。図2から明らかなように、SBL88株の菌体を添加することによって、COLO−320DMのセロトニン分泌が強く促進された(図2)。すなわち、SBL88株は、セロトニン分泌を促進する作用を有する。〔実施例2:SBL88株の自律神経への作用〕 SBL88株の胃迷走(副交感)神経活動、皮膚動脈交感神経活動及び褐色脂肪組織交感神経活動への作用を解析した。<菌体処理物の調製> SBL88株を培地(マルトース2質量%,酵母エキス1.4質量%,酢酸ナトリウム0.5質量%,硫酸マンガン0.005質量%,pH6.5〜7.0)に植菌し、30℃で1日間静置培養した。得られた培養液(約8×108cfu/mL)を、8,000rpmで10分間遠心分離して菌体を回収した。回収した菌体を蒸留水に懸濁し、8,000rpmで10分遠心分離して菌体を回収した。この操作を2度繰り返した後、蒸留水に懸濁した菌体を105℃で10分間加熱処理した後、凍結乾燥して加熱処理菌体粉末を得た。<胃迷走神経活動、皮膚動脈交感神経活動及び褐色脂肪組織交感神経活動の測定> 12時間毎の明暗周期(8時〜20時まで点灯)下で、24℃の恒温動物室にて1週間以上飼育した体重約300gのWistar系雄ラット(約9週齢)を試験に使用した。試験当日は3時間絶食させた後、ウレタン麻酔し、十二指腸に菌体投与用のカニューレを挿入した。その後、胃迷走神経の遠心枝、右大腿部の皮膚動脈交感神経の遠心枝、又は背甲間の褐色脂肪組織交感神経の遠心枝を銀電極で吊り上げて、これらの神経の電気活動を測定した。測定値が落ち着いた段階(13時頃)でカニューレを使用して、加熱処理菌体粉末の懸濁液1mL(8×107cfu/mL)を十二指腸に投与し、胃迷走神経活動、皮膚動脈交感神経活動又は褐色脂肪組織交感神経活動の変化を測定した。対照として、加熱処理菌体粉末の懸濁液1mLに代えて水1mLを十二指腸に投与し、これらの神経活動の変化を測定した。測定の間、体温維持装置で体温(ラット直腸温)を35.0±0.5℃に保った。神経活動の測定データは、5分間毎の5秒あたりの発火頻度(pulse/5秒)の平均値をとり、菌体(又は水)投与前5分間の平均値(0分値)を100%とした百分率で表した。なお、測定データから平均値±標準誤差を計算すると共に、群としての統計学的有意差の検定を、反復測定分散分析(ANOVA with repeated measures)により行った。また、菌体(又は水)投与前(0分)の電気活動の測定値(絶対値)間の統計学的有意差の検定は、マン・ホイットニーのU検定(Mann−Whitney U−test)により行った。なお、各群それぞれ3匹のラットを用いた。 図3に、胃迷走神経活動(gastric vagal nerve acitivity:GVNA)の測定結果を示す。SBL88株の菌体を投与した群(以下「SBL88群」という。)では、投与直後からGVNAが上昇し続け、投与60分後には325.8%に達した(図3)。一方、対照として水を投与した群(以下「対照群」という。)では、GVNAはほとんど変化せず、最低値97.6%(投与15分後)及び最高値111.8%(投与55分後)の間でほぼ一定の値を維持した(図3)。 投与5分後から90分後までの間のGVNAを、対照群及びSBL88群の2群間で分散分析(ANOVA)法により統計学的に検討した結果、SBL88群のGVNAは対照群のGVNAより有意に(P<0.0005,F=31.0(反復測定分散分析))高かった。また、これら2群の菌体(又は水)投与前(0分)の電気活動は、対照群が130±18、SBL88群が253±32であった。マン・ホイットニーのU検定の結果、これら2群の菌体(又は水)投与前(0分)の電気活動には、有意差は認められなかった。 すなわち、SBL88株は胃迷走(副交感)神経の活動を亢進する作用を有する。この胃迷走神経亢進作用により、整腸効果、並びに便通及び食欲を促進する効果が期待できる。 図4に、皮膚動脈交感神経活動(cutaneous arteral sympathetic nerve acitivity:CASNA)の測定結果を示す。SBL88群は、投与直後CASNAがやや上昇し、投与5分後に最高値124.4%に達したものの、その後はCASNAが低下し続け、投与60分後には63.3%に達した(図4)。一方、対照群では、投与25分後以降CASNAが徐々に上昇し、投与60分後には122.4%に達した(図4)。 投与5分後から90分後までの間のCASNAを、対照群及びSBL88群の2群間で、ANOVA法により統計学的に検討した結果、SBL88群のCASNAは対照群のCASNAより有意に(P<0.0005,F=29.0(反復測定分散分析))低かった。また、これら2群の菌体(又は水)投与前(0分)の電気活動は、対照群が316±70、SBL88群が250±4であった。マン・ホイットニーのU検定の結果、これら2群の菌体(又は水)投与前(0分)の電気活動には、有意差は認められなかった。 すなわち、SBL88株は皮膚動脈交感神経の活動を抑制する作用を有する(投与60分後において、投与前の約60%にまで神経活動を抑制した)。この皮膚動脈交感神経抑制作用により、皮膚への血流を増加させて皮膚の保湿度を高めるという美容効果、及び入眠を促進する効果が期待できる。 図5に、褐色脂肪組織交感神経活動(brown adipose tissue sympathetic nerve acitivity:BAT−SNA)の測定結果を示す。SBL88群は、投与直後からBAT−SNAが上昇し続け、投与55分後には167.2%に達した(図5)。一方、対照群では、BAT−SNAはほとんど変化せず、最低値91.0%(投与15分後)及び最高値101.1%(投与55分後)の間でほぼ一定の値を維持した(図5)。 投与5分後から90分後までの間のBAT−SNAを、対照群及びSBL88群の2群間で、ANOVA法により統計学的に検討した結果、SBL88群のBAT−SNAは対照群のBAT−SNAより有意に(P<0.0005,F=48.6(反復測定分散分析))高かった。また、これら2群の菌体(又は水)投与前(0分)の電気活動は、対照群が183±19、SBL88群が243±9であった。マン・ホイットニーのU検定の結果、これら2群の菌体(又は水)投与前(0分)の電気活動には、有意差は認められなかった。 すなわち、SBL88株は褐色脂肪組織交感神経の活動を亢進する作用を有する。この褐色脂肪組織交感神経亢進作用により、褐色脂肪組織でのエネルギー消費及び熱産生を高める効果が期待できる。〔参考例1:胃迷走神経亢進作用に対するセロトニン受容体阻害剤の影響〕 SBL88株の胃迷走神経亢進作用に関して、セロトニン受容体阻害剤による影響を解析した。<菌体処理物の調製> 実施例2と同様にして、SBL88株の加熱処理菌体粉末を得た。<セロトニン受容体阻害剤の影響> 12時間毎の明暗周期(8時〜20時まで点灯)下で、24℃の恒温動物室にて1週間以上飼育した体重約300gのWistar系雄ラット(約9週齢)を試験に使用した。試験当日は3時間絶食させた後、ウレタン麻酔し、十二指腸に菌体投与用のカニューレを挿入した。その後、胃迷走神経の遠心枝を銀電極で吊り上げて、胃迷走神経の電気活動を測定した。測定値が落ち着いた段階(13時頃)でカニューレを使用して、加熱処理菌体粉末の懸濁液1mL(8×107cfu/mL)を十二指腸に投与した。なお、菌体投与の5分前に、ウレタン麻酔下で、頚静脈にカニューレを挿入し、0.1mLのセロトニン受容体阻害剤(後述のセロトニン受容体アンタゴニスト)溶液、又は当該溶液の溶媒を静脈内に投与した。なお、各群それぞれ1匹のラットを用いた。 セロトニン受容体阻害剤: Ketanserine(シグマ社製,5−HT2Aアンタゴニスト:生理食塩水に溶解させ、10μg/kgを静脈投与) Granisetron(シグマ社製,5−HT3アンタゴニスト:生理食塩水に溶解させ、10μg/kgを静脈投与) GR113808(シグマ社製,5−HT4アンタゴニスト:ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解させ、10μg/kg及び100μg/kgを静脈投与) 測定の間、体温維持装置で体温(ラット直腸温)を35.0±0.5℃に保った。神経活動の測定データは、5分間毎の5秒あたりの発火頻度(pulse/5秒)の平均値をとり、菌体投与前5分間の平均値(0分値)を100%とした百分率で表した。 図6に、胃迷走神経活動(GVNA)の測定結果を示す。セロトニン受容体5−HT3に対するアンタゴニストであるGranisetronを直前に投与することで、SBL88株の胃迷走神経亢進作用が顕著に阻害された(図6(A))。また、セロトニン受容体5−HT4に対するアンタゴニストであるGR113808を高濃度(100μg/kg)で投与した場合にも同様に、胃迷走神経亢進作用が阻害された(図6(B))。この結果は、SBL88株の胃迷走神経亢進作用は、セロトニンを介した作用であることを示している。 また、5−HT3受容体は抹消神経及び最終野で、5−HT4受容体は海馬及び胃腸管で、5−HT2A受容体は血小板、平滑筋及び小脳皮質で発現していることが知られている。これらセロトニン受容体の発現部位と、セロトニン受容体阻害剤による胃迷走神経亢進作用の阻害(図6)との関係から、SBL88株の投与により腸管上皮細胞(例:EC細胞等)がセロトニンを分泌し(SBL88株のセロトニン分泌促進作用)、分泌されたセロトニンにより腸管の末梢神経(5−HT3受容体)が興奮して脳が刺激を受け、脳から各臓器に繋がる自律神経系へ指令が出されるものと考えられる。〔実施例3:他の乳酸菌株によるセロトニン分泌促進作用〕 各種乳酸菌及びビフィズス菌の菌体調製は、実施例1の<菌体処理物の調製>と同様に行った。また、それら菌体調製液について、<COLO−320DMのセロトニン分泌促進アッセイ>を実施例1と同様に行った。その結果を図7及び8並びに表1及び2に示した。表1及び2中、セロトニン濃度が0.0のものは、測定値が検出限界(3nM/ウェル以下)以下であったことを意味する。 図7及び8中の略号と乳酸菌及びビフィズス菌との対応を表1及び2に示す。 ラクトバチラス・デルブリッキィー、ラクトバチラス・アシドフィルス(acidophilus)、ラクトバチラス・ガセリ(gasseri)、ラクトバチラス・ジョンソニー(johnsonii)等のラクトバチラス・デルブリッキィーグループに属する乳酸菌等には、セロトニン分泌促進作用は認められなかった(図7)。 一方、ラクトバチラス・デルブリッキィーグループに属する乳酸菌以外のラクトバチラス属に属する乳酸菌には、セロトニン分泌促進作用が認められた(図8)。特に、SBL88株は、強いセロトニン分泌促進作用を有していた(図8)。〔実施例4:SBL88株の血流量への作用〕<菌体処理物の調製> 実施例2と同様にして、SBL88株の加熱処理菌体粉末を得た。<血流量の測定> 12時間毎の明暗周期(8時〜20時まで点灯)下で、24℃の恒温動物室にて1週間飼育した体重約300gのWistar系雄ラット(約9週齢)を試験に使用した。試験当日は3時間絶食させた後、ウレタン麻酔し、十二指腸に菌体投与用のカニューレを挿入した。その後、ラットの尾の背部表面の起始部に近い所にレーザー血流計(ALF21、アドバンス社製)のプローブ(径1cm)を外科用テープで固定し、血流の測定を開始した。測定値が安定した段階でカニューレを使用して、加熱処理菌体粉末の懸濁液1mL(8×107cfu/mL)又は水1mLを十二指腸に投与した。なお、各群それぞれ4匹のラットを用いた。 血流量のデータはPower−Lab analog−to−digital converterを用いて採取した。得られたデータから5分間毎の血流量(mL/分/組織100g)の平均値をとり、加熱処理菌体粉末の投与前5分間の平均値(0分値)を100%とした百分率で表した。なお、測定データから平均値±標準誤差を計算すると共に、群としての統計学的有意差の検定を、反復測定分散分析により行った。また、菌体(又は水)投与前(0分)の血流量の測定値(絶対値)間の統計学的有意差の検定は、マン・ホイットニーのU検定により行った。 図9に、血流量(ラットの尾の皮膚血流量)の測定結果を示す。SBL88株の菌体を投与した群(以下「SBL88群」という。)では、投与直後に血流量がやや上昇し、投与10分後には最高値の114.0%に達した(図9)。その後、血流量は徐々に低下したが、投与60分後の血流量は94.8%であった(図9)。一方、対照として水を投与した群(以下「対照群」という。)では、投与直後から血流量が徐々に低下し、投与30分後には71.7%にまで減少した。その後、血流量はゆっくりと低下し、投与55分後には、67.7%の最低値に達した(図9)。 投与5分後から60分後までの間の血流量を、対照群及びSBL88群の2群間で分散分析(ANOVA)法により統計学的に検討した結果、SBL88群の血流量は対照群の血流量より有意に(P<0.0005,F=191(反復測定分散分析))高かった。また、これら2群の菌体(又は水)投与前(0分)の血流量は、対照群が4.52±0.7[mL/分/組織100g]、SBL88群が3.62±0.5[mL/分/組織100g]であった。マン・ホイットニーのU検定の結果、これら2群の菌体(又は水)投与前(0分)の血流量には、有意差は認められなかった。 実施例4の結果により、SBL88株による血流量増加作用(血流促進作用)が確認された。〔実施例5:SBL88株の経皮水分蒸散量への作用〕<菌体処理物の調製> 実施例2と同様にして、SBL88株の加熱処理菌体粉末を得た。<経皮水分蒸散量の測定> 12時間毎の明暗周期(8時〜20時まで点灯)下で、24℃の恒温動物室にて1週間飼育した体重約300gの雄性HWYヘアレスラットを試験に使用した。試験期間中、ラットには、加熱処理菌体粉末の懸濁液(8×107cfu/mL)又は水を自由摂取させた。毎日13時に、背中の部位における経皮水分蒸散量(transepidermal water loss:TEWL)を、ケタミン麻酔下で、VapoMeter Delfine,Finland)を用いて測定した。なお、各群それぞれ5匹のラットを用いた。 得られたデータから経皮水分蒸散量の平均値をとり、加熱処理菌体粉末の懸濁液、又は水の自由摂取開始前(0日目)の平均値を100%とした百分率で表した。なお、測定データから平均値±標準誤差を計算すると共に、群としての統計学的有意差の検定を、反復測定分散分析により行った。また、自由摂取開始前(0日目)の経皮水分蒸散量の測定値(絶対値)間の統計学的有意差の検定は、マン・ホイットニーのU検定により行った。 図10に、経皮水分蒸散量の測定結果を示す。対照として水を自由摂取させた群(以下「対照群」という。)では、TEWL値はわずかに低下したもののほとんど変化せず、試験開始から3日目の値が97.3%であった(図10)。これに対し、SBL88株の菌体懸濁液を自由摂取させた群(以下「SBL88群」という。)では、TEWL値が徐々に低下していき、試験開始から3日目には、76.4%にまで低下した(図10)。 自由摂取開後1日目から3日目までの間のTEWL値を、対照群及びSBL88群の2群間で分散分析(ANOVA)法により統計学的に検討した結果、SBL88群のTEWL値は対照群のTEWLの値より有意に(P<0.0005,F=46.1(反復測定分散分析))低かった。また、これら2群の自由摂取開始前(0日目)の経皮水分蒸散量は、対照群が11.1±0.2[g/m2/時間]、SBL88群が11.7±0.4[g/m2/時間]であった。マン・ホイットニーのU検定の結果、これら2群の自由摂取開始前(0日目)の経皮水分蒸散量には、有意差は認められなかった。 実施例5の結果により、SBL88株による経皮水分蒸散量低下作用(経皮水分蒸散抑制作用)が確認された。〔参考例2:皮膚動脈交感神経抑制作用に対するセロトニン受容体阻害剤の影響〕 SBL88株の皮膚動脈交感神経抑制作用に関して、セロトニン受容体阻害剤による影響を解析した。<菌体処理物の調製> 実施例2と同様にして、SBL88株の加熱処理菌体粉末を得た。<セロトニン受容体阻害剤の影響> 12時間毎の明暗周期(8時〜20時まで点灯)下で、24℃の恒温動物室にて1週間以上飼育した体重約300gのWistar系雄ラット(約9週齢)を試験に使用した。試験当日は3時間絶食させた後、ウレタン麻酔し、頚静脈及び十二指腸に菌体投与用のカニーレを挿入した。その後、左大腿部の皮膚動脈交感神経の遠心枝を銀電極で吊り上げて、皮膚動脈交感神経の電気活動を測定した。測定値が落ち着いた段階(13時頃)で、0.1mLのセロトニン受容体阻害剤(上述のGranisetron)又は0.1mLの生理食塩水を静脈内に投与した。投与から5分後に加熱処理菌体粉末の懸濁液(8×107cfu/ml)を十二指腸に投与した。なお、各群それぞれ3匹のラットを用いた。 測定の間、体温維持装置で体温(ラット直腸温)を35.0±0.5℃に保った。神経活動のデータは、5分間毎の5秒あたりの発火頻度(pulse/5秒)の平均値をとり、菌体投与前5分間の平均値(0分値)を100%とした百分率で表した。なお、測定データから平均値±標準誤差を計算すると共に、群としての統計学的有意差の検定を、反復測定分散分析により行った。また、菌体投与前(0分)の電気活動の絶対値の統計学的有意差の検定は、マン・ホイットニーのU検定により行った。 図11に、皮膚動脈交感神経活動(cutaneous arterial sympathetic nerve activity:CASNA)の測定結果を示す。生理食塩水のみを直前に投与した群(以下、「生理食塩水+SBL88群」という。)では、菌体投与直後からCASNAは徐々に減少していき、菌体投与55分後には最低値の53.5%に達した(図11)。一方、セロトニン受容体5−HT3に対するアンタゴニストであるGranisetronを直前に投与した群(以下、「Granisetron+SBL88群」という。)では、CASNAは、菌体投与10分後に一時的に95.8%まで減少したものの、その後は徐々に上昇し、菌体投与60分後には128.1%に達し、SBL88株の皮膚動脈交感神経抑制作用が顕著に阻害された(図11)。 菌体投与5分後から60分後までの間のCASNAを、生理食塩水+SBL88群及びGranisetron+SBL88群の2群間で分散分析法により統計学的に検討した結果、Granisetron+SBL88群のCASNAは、生理食塩水+SBL88群のCASNAより有意に(P<0.0005,F=45.8(反復測定分散分析))高かった。また、これら2群の菌体投与前の電気活動(0分値)は、生理食塩水+SBL88群が211±53(spikes/5秒)、Granisetron+SBL88群が259±11(spikes/5秒)であった。マン・ホイットニーのU検定の結果、これら2群の菌体投与前の電気活動(0分値)には、有意差は認められなかった。 この結果は、SBL88株の皮膚動脈交感神経抑制作用は、セロトニンを介した作用であることを示している。 ラクトバチラス・デルブリッキィー(Lactobacillus delbrueckii)グループに属する乳酸菌以外のラクトバチラス属に属する乳酸菌、及びペディオコッカス(Pediococcus)属に属する乳酸菌からなる群より選ばれる菌株の菌体又はその処理物を有効成分として含有するセロトニン分泌促進剤。 前記菌株が、ラクトバチラス・ブレビス(Lactobacillus brevis)に属する菌株である、請求項1に記載のセロトニン分泌促進剤。 前記菌株が、ラクトバチラス・ブレビス(Lactobacillus brevis)SBC8803(受託番号:FERM BP−10632)である、請求項1又は2に記載のセロトニン分泌促進剤。 自律神経調節剤である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のセロトニン分泌促進剤。 保湿剤である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のセロトニン分泌促進剤。 血流促進剤である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のセロトニン分泌促進剤。 セロトニン分泌促進作用に基づくものである、請求項4〜6のいずれか一項に記載のセロトニン分泌促進剤。 飲食品の製造における、請求項1〜7のいずれか一項に記載のセロトニン分泌促進剤の使用。 請求項1〜7のいずれか一項に記載のセロトニン分泌促進剤を含有する医薬品。 請求項1〜7のいずれか一項に記載のセロトニン分泌促進剤を含有する飲食品。 請求項1〜7のいずれか一項に記載のセロトニン分泌促進剤を含有する飲食品添加物。 【課題】ラクトバチラス・ブレビスSBC8803菌株の新規な用途を提供すること。【解決手段】ラクトバチラス・デルブリッキィー(Lactobacillus delbrueckii)グループに属する乳酸菌以外のラクトバチラス属に属する乳酸菌、及びペディオコッカス(Pediococcus)属に属する乳酸菌からなる群より選ばれる菌株の菌体又はその処理物を有効成分として含有するセロトニン分泌促進剤。【選択図】なし