生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_細胞膜強化剤
出願番号:2012193515
年次:2014
IPC分類:A61K 35/20,A61P 39/00,A61P 7/06,A61P 7/04,A23L 1/30


特許情報キャッシュ

曽我 聡子 太田 宣康 原水 聡史 JP 2014047195 公開特許公報(A) 20140317 2012193515 20120903 細胞膜強化剤 花王株式会社 000000918 特許業務法人アルガ特許事務所 110000084 高野 登志雄 100077562 中嶋 俊夫 100096736 村田 正樹 100117156 山本 博人 100111028 曽我 聡子 太田 宣康 原水 聡史 A61K 35/20 20060101AFI20140218BHJP A61P 39/00 20060101ALI20140218BHJP A61P 7/06 20060101ALI20140218BHJP A61P 7/04 20060101ALI20140218BHJP A23L 1/30 20060101ALN20140218BHJP JPA61K35/20A61P39/00A61P7/06A61P7/04A23L1/30 A 6 OL 11 4B018 4C087 4B018MD71 4B018ME14 4C087AA01 4C087AA02 4C087BB39 4C087MA52 4C087NA14 4C087ZA55 4C087ZB22 本発明は細胞膜を強化し、貧血や溶血症に有効な細胞膜強化剤、貧血又は溶血抑制剤等に関する。 赤血球は骨髄で作られ、末梢血液中に送り出され、主に、肺から得た酸素を取り込んで末梢組織に運搬供給し、末梢組織で発生した二酸化炭素を捉えて肺胞にそれを放出する役割を担う。赤血球は、表面の赤血球膜と内部の細胞質からなる、中央が凹んだ円盤状の変形能に富んだ細胞であり、末梢の毛細血管を形態を変えながら通過する。通常、赤血球は血管を移動する際に物理的な力を繰り返し受けて細胞は傷つき、脾臓の網内系細胞に捕らえられ循環系から除去される。しかしながら、何らかの異常によって赤血球の破壊、すなわち溶血が起こりその程度が亢進すると、赤血球数の減少やヘモグロビン濃度が低下し、貧血(溶血性貧血)症状が生ずる。 代表的な貧血の原因として、以下が知られている。(1)出血性貧血:体から血液そのものが失われることによる。(2)溶血性貧血:体内で赤血球が破壊されることによる。(3)鉄欠乏性貧血:酸素を運搬するヘモグロビンの働きに必要な鉄分の不足による。(4)再生不良性貧血:赤血球を造る能力が低下することによる。これらの内、(2)については、加齢等による赤血球膜の脆弱性の亢進、或いはスポーツ等において血管が踏みつけ圧を受けたり血液の流速が急激/長時間増すことによって引き起こされる。また、加齢時には赤血球の再生も滞る((4))為、溶血により一旦減少した赤血球数の回復も遅延すると考えられる。 したがって、赤血球膜を強化し、血管内での血流等による物理的剪断力に対する抵抗性を高めることにより、溶血、更には貧血を抑制することができると考えられる。 また、前述したように、赤血球は全身組織への酸素運搬を担っていることから、細胞膜強化を図って溶血を防ぐことで、筋肉等の酸素を要求する組織への酸素運搬を改善することができる。 従来、溶血性貧血の治療には、脾臓摘出やステロイドホルモン療法等の侵襲度や副作用の強い方法がとられてきた。より生理的と考えられる赤血球膜の安定化によって溶血を防止する方法について幾つか知られている(特許文献1及び2)が、一般的な食品由来の成分で副作用なく溶血を予防/改善できる技術が望まれる。 一方、脂肪球皮膜成分は、乳腺より分泌される乳脂肪球を被覆している膜であって、脂肪を乳汁中に分散させる機能を有するのみならず、新生動物の食物として多くの生理的機能を有している。例えば、血中アディポネクチン増加及び/又は減少抑制効果(特許文献3)、学習能向上効果(特許文献4)、シアロムチンの分泌促進効果等(特許文献5)の生理機能を有することが知られている。 しかしながら、脂肪球皮膜成分が、細胞膜強化作用があること、溶血や貧血を抑制する作用があることは、これまで全く知られていない。特開昭63−107939号公報国際公開第2002/028416号パンフレット特開2007−320901号公報特開2007−246404公報特開2007−112793公報 本発明は、食経験が豊富で安全性が高い、細胞膜強化剤、貧血又は溶血抑制剤、及び組織への酸素運搬改善剤を提供することに関する。 本発明者らは、細胞膜の強化に関して有効な成分の探索を行った結果、脂肪球皮膜成分に、細胞膜強化作用、貧血又は溶血抑制作用及び組織への酸素運搬改善作用があることを見出した。 すなわち、本発明は、脂肪球皮膜成分を有効成分とする細胞膜強化剤に係るものである。 また、本発明は、脂肪球皮膜成分を有効成分とする溶血又は貧血抑制剤に係るものである。 また、本発明は、脂肪球皮膜成分を有効成分とする組織への酸素運搬改善剤に係るものである。 また、本発明は、脂肪球皮膜成分を有効量投与する又は摂取することによる非治療的な細胞膜強化方法に係るものである。 また、本発明は、脂肪球皮膜成分を有効量投与する又は摂取することによる非治療的な溶血又は貧血抑制方法に係るものである。 また、本発明は、脂肪球皮膜成分を有効量投与する又は摂取することによる非治療的な組織への酸素運搬改善方法に係るものである。 本発明の細胞膜強化剤、溶血又は貧血抑制剤、及び組織への酸素運搬改善剤は、安全性が高く、赤血球膜等の細胞膜の強化、溶血又は貧血の抑制、又は組織への酸素運搬改善のための、飲食品、医薬品、医薬部外品又は飼料として、或いはこれらに配合するための素材として有用である。MGMの赤血球抵抗性を示す図。MGMのオキシヘモグロビン回復速度を示す図。 本発明において、「脂肪球皮膜成分」又は略して「MGM」とは、乳中の脂肪球を被膜する膜及びそれを構成する膜成分混合物を意味する。当該脂肪球皮膜成分は、バターミルクやバターセーラム等の乳複合脂質高含有画分に多く含まれることが知られている。乳脂肪球皮膜は、一般的に、乳脂肪球皮膜の約40〜45%はタンパク質から、また約50〜55%は脂質から構成されており、当該タンパク質としては、ミルクムチンと呼ばれる糖蛋白質(Mather IH、Biochim Biophys Acta.(1978) 514:25-36.)等を含むことが知られ、また、当該脂質としては、トリグリセライドやリン脂質(例えば、スフィンゴリン脂質、グリセロリン脂質等)が多く含まれ、これ以外にスフィンゴ糖脂質(例えば、グルコシルセラミド、ガングリオシド等)が含まれることが知られている(Keenan TW、Applied Science Publishers.(1983) pp89-pp130.)。 脂肪球皮膜成分に含まれるリン脂質としては、スフィンゴミエリン等のスフィンゴリン脂質の他、ホスファチジルコリンやホスファチジルエタノールアミン等のグリセロリン脂質が挙げられる。この中で、乳由来の特徴的なリン脂質であるスフィンゴミエリンが脂肪球皮膜成分に含まれることが好ましい。 本発明における脂肪球皮膜成分中の脂質の含有量は、特に限定されないが、乾燥物換算で、20質量%以上、好ましくは35質量%以上、より好ましくは50質量%以上であり、そして100質量%以下、好ましくは90質量%以下である。例えば20〜100質量%、より35〜90質量%、更に50〜90質量%が挙げられる。 本発明における脂肪球皮膜成分中のリン脂質の含有量は、特に限定されないが、乾燥物換算で、3質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上であり、そして100質量%以下、好ましくは85質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。例えば3〜100質量%、より10〜100質量%、更に15〜85質量%、より更に20〜70質量%が挙げられる。 脂肪球皮膜成分中の各リン脂質の含有量は、特に限定されないが、例えば、スフィンゴミエリンの含有量は、脂肪球皮膜成分中、乾燥物換算で、1質量%以上、好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上、より好ましくは4質量%以上であり、そして50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。例えば、1〜50質量%、より2〜30質量%、更に3〜25質量%、より更に4〜20質量%が挙げられる。 本発明の脂肪球皮膜成分は、乳原料等から遠心分離法や有機溶剤抽出法等、公知の脂肪球皮膜成分調製法により調製されたものを用いることができる。さらに適宜、透析、硫安分画、ゲルろ過、等電点沈殿、イオン交換クロマトグラフィー、溶媒分画等の手法により精製し、純度を高めたものを使用することもできる。 ここで、乳原料としては、牛乳やヤギ乳等が挙げられるが、乳の中でも牛乳由来の脂肪球皮膜成分は、食経験が豊富であり、高純度かつ安価なものも上市されており、特に好ましい。 また、乳原料には、生乳、脱脂乳や加工乳等の乳の他、乳製品も含まれるが、乳製品としては、バターミルク、バターオイル、バターセーラム、ホエータンパク質濃縮物(WPC)等が挙げられる。 当該脂肪球皮膜成分の調製は、例えば、乳やホエータンパク質濃縮物(WPC)等の乳製品をエーテルやアセトンで抽出する方法(特開平3−47192号公報)、バターミルクを酸性域に調整、等電点沈殿を行うことにより生じたタンパク質を除去し、上清を精密濾過膜処理して得られる濃縮液を乾燥する方法(特許第3103218号公報)により行うことができる。 また、バターセーラム中よりタンパク質を凝集除去後に濾過濃縮し乾燥する方法(特開2007−89535)等も使用することができる。本製法によると、例えば、乳由来の複合脂質を乾燥物中20重量%以上含有する脂肪球皮膜成分を調製することができる。なお、脂肪球皮膜成分の形態は、特に限定されず、液状、半固体状や個体状、粉状等の何れでもよく、これらを単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。 また、脂肪球皮膜成分として、市販品を用いることもできる。斯かる市販品としては、メグレジャパン(株)「BSCP」、雪印メグミルク(株)「ミルクセラミドMC−5」、(株)ニュージーランドミルクプロダクツ「Phospholipid Concentrate」等が挙げられる。 また、脂肪球皮膜成分は牛乳等を遠心分離して得られるクリームからバター粒を製造する際に得られるバターミルク中に多く含まれているので、バターミルクをそのまま使用してもよい。同様に、脂肪球皮膜成分はバターオイルを製造する際に生じるバターセーラム中に多く含まれているので、バターセーラムをそのまま使用してもよい。 後記実施例に示すように、脂肪球皮膜成分は、赤血球膜の浸透圧抵抗性を高める作用(試験例1)、すなわち細胞膜強化作用を有する。したがって、脂肪球皮膜成分は、赤血球膜を強化し、血管内での抵抗性を高めることにより、溶血、更には貧血を抑制することができると云える。実際、脂肪球皮膜成分には、溶血又は貧血の抑制作用が認められ、更には組織への酸素運搬改善作用(試験例2)を有する。よって、細胞膜は、赤血球膜であることが好ましい。 したがって、本発明の脂肪球皮膜成分は、赤血球膜等の細胞膜の強化のため、溶血又は貧血の抑制のため、又は組織への酸素運搬改善のために使用することができる。当該使用は、ヒト若しくは非ヒト動物、又はそれらに由来する検体における使用であり得、また治療的使用であっても非治療的使用であってもよい。ここで、「非治療的」とは、医療行為を含まない概念、すなわち人間を手術、治療又は診断する方法を含まない概念、より具体的には医師又は医師の指示を受けた者が人間に対して手術、治療又は診断を実施する方法を含まない概念である。 また、本発明の脂肪球皮膜成分は、細胞膜強化剤、溶血又は貧血抑制剤、組織への酸素運搬改善剤(以下、細胞膜強化剤等という)として使用することができ、さらにこれらの剤を製造するために使用することができる。このとき、当該細胞膜強化剤等には、本発明の脂肪球皮膜成分を単独で、又はこれ以外に、必要に応じて適宜選択した担体等の、配合すべき後述の対象物において許容されるものを使用してもよい。なお、当該製剤は配合すべき対象物に応じて常法により製造することができる。細胞膜強化剤は、好ましくは赤血球膜強化剤である。 当該細胞膜強化剤等は、それ自体、細胞膜強化作用、溶血又は貧血抑制作用、組織への酸素運搬改善作用を発揮する、ヒト若しくは動物用の医薬品、医薬部外品、食品又は飼料であってもよく、又は当該医薬品、医薬部外品等に配合して使用される素材又は製剤であってもよい。食品としては、細胞膜強化、溶血又は貧血の抑制、組織への酸素運搬改善等の生理機能をコンセプトとし、必要に応じてその旨を表示した飲食品、機能性飲食品、病者用飲食品、特定保健用食品、機能強調表示をした飲食品、健康強調表示をした飲食品、保健食品等の機能性食品を包含する。 なお、本発明において、「細胞膜」とは、生体を構成する細胞の内外を隔てる生体膜のことを指し、好適には赤血球膜が挙げられる。また「細胞膜の強化」とは、膜の流動性や変形能を改善して損傷耐性を高めることを意味し、例えば、浸透圧抵抗性を高めることを意味する。 「溶血」とは、赤血球の細胞膜が様々な要因によって損傷を受け、原形質が細胞外に漏出して、赤血球が死に至る現象を意味する。「貧血」とは、赤血球が減少してヘモグロビンが減少した状態を意味し、主として溶血性貧血を意味する。 「組織への酸素運搬改善」とは、溶血改善により酸素運搬を担うヘモグロビンを増加あるいは低下を抑制し、筋肉等の末梢組織への酸素供給を高めることを意味する。 上記医薬品(医薬部外品も含む)の剤形は、例えば注射剤、坐剤、吸入薬、経皮吸収剤、各種外用剤、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤等の何れでもよい。また投与形態も、経口投与(内用)、非経口投与(外用、注射)の何れであってもよいが、経口投与が好ましい。このような種々の剤型の医薬製剤を調製するには、脂肪球皮膜成分を単独で、又は他の薬学的に許容される賦形剤、結合剤、増量剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、嬌味剤、香料、被膜剤、担体、希釈剤等を適宜組み合わせて用いることができる。 上記食品の形態は、固形、半固形又は液状であり得、例えば、パン類、ケーキ類、麺類、菓子類、ゼリー類、冷凍食品、アイスクリーム類、乳製品、飲料(例えば、乳飲料、清涼飲料水、茶系飲料)等の各種食品の他、上述した内用薬剤と同様の形態(錠剤、カプセル剤、シロップ等)が挙げられる。 該種々の形態の食品を調製するには、脂肪球皮膜成分を単独で、又は他の食品材料や、溶剤、軟化剤、油、乳化剤、防腐剤、香科、安定剤、着色剤、酸化防止剤、保湿剤、増粘剤等を適宜組み合わせて用いることができる。 上記医薬品及び食品のうち、内用薬剤又はこれと同様の形態の飲食品中の脂肪球皮膜成分の含有量(乾燥物換算)は、一般的に0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは2質量%であり、そして100質量%以下、好ましくは90質量%である。例えば、0.01質量%〜100質量%、好ましくは0.1質量%〜100質量%、より好ましくは2〜90質量%が挙げられる。 また、上記固形又は半固形食品中の脂肪球皮膜成分の含有量(乾燥物換算)は、一般的に0.02質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上であり、そして80質量%以下、好ましくは75質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。例えば、0.02〜80質量%、好ましくは0.1〜80質量%、より好ましくは0.2〜75質量%、さらに好ましくは2〜50質量%が挙げられる。また、飲料中の脂肪球皮膜成分(乾燥物換算)の含有量は、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、そして3.0質量%以下、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下である。例えば、0.001〜3.0質量%、好ましくは0.01〜2.0質量%、より好ましくは0.1〜1.0質量%が挙げられる。 また、上記飼料としては、例えば牛、豚、鶏、羊、馬等に用いる家畜用飼料、犬、猫等に用いるペットフード等が挙げられる。 尚、飼料を製造する場合には、脂肪球皮膜成分の他に、牛、豚、羊等の肉類、蛋白質、穀物類、ぬか類、粕類、糖類、野菜、ビタミン類、ミネラル類等一般に用いられる飼料原料、更に一般的に飼料に使用されるゲル化剤、保型剤、pH調整剤、調味料、防腐剤、栄養補強剤等を組み合わせて用いることができる。 また、飼料中の脂肪球皮膜成分の含有量(乾燥物換算)は、その使用形態により異なるが、0.02質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上であり、そして80質量%以下、好ましくは75質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。例えば、0.02〜80質量%、好ましくは0.1〜80質量%、より好ましくは0.2〜75質量%、さらに好ましくは2〜50質量%が挙げられる。 本発明の細胞膜強化剤等の投与量又は摂取量は、対象動物の状態、体重、性別、年齢又はその他の要因に従って変動し得るが、経口投与又は摂取の場合体重当たり、本発明の脂肪球皮膜成分として、1日あたり10mg以上/60kg体重、好ましくは100mg以上/60kg体重であり、10000mg以下/60kg体重、好ましくは5000mg以下/60kg体重である。例えば、10〜10000mg/60kg体重、好ましくは100〜5000mg/60kg体重が挙げられる。また、上記製剤は、任意の投与計画に従って投与又は摂取され得るが、1日1回〜数回に分けて投与又は摂取することが好ましい。 従って上記各種形態又は摂取形態における脂肪球皮膜成分の含有量は、該1日あたりの脂肪球皮膜成分の投与量又は摂取量と各種投与又は摂取形態の1日あたりの投与又は摂取量等より決定すれば良い。 投与又は摂取対象動物としては、それを必要としている動物であれば特に限定されないが、本発明の細胞膜強化剤等は細胞膜の強化、溶血又は貧血の抑制、組織への酸素運搬改善を図ることができることから、細胞膜の強化、溶血又は貧血の抑制、組織への酸素運搬改善を必要とする又は希望する動物又は人、特に人であれば、貧血患者、初潮から閉経までの女性、高齢者、運動愛好者、アスリートにおける投与又は摂取が有効である。 上述した実施形態に関し、本発明においてはさらに以下の態様が開示される。<1>脂肪球皮膜成分を有効成分とする細胞膜強化剤。<2>脂肪球皮膜成分を有効成分とする溶血又は貧血抑制剤。<3>脂肪球皮膜成分を有効成分とする組織への酸素運搬改善剤。<4>細胞膜強化剤を製造するための脂肪球皮膜成分の使用。<5>貧血抑制剤を製造するための脂肪球皮膜成分の使用。<6>組織への酸素運搬改善剤を製造するための脂肪球皮膜成分の使用。<7>細胞膜強化における使用のための脂肪球皮膜成分。<8>貧血抑制における使用のための脂肪球皮膜成分。<9>組織への酸素運搬改善における使用のための脂肪球皮膜成分。<10>脂肪球皮膜成分を有効量投与する又は摂取することによる細胞膜強化方法。<11>脂肪球皮膜成分を有効量投与する又は摂取することによる溶血又は貧血抑制方法。<12>脂肪球皮膜成分を有効量投与する又は摂取することによる組織への酸素運搬改善方法。<13>脂肪球皮膜成分を有効量投与する又は摂取することによる非治療的な細胞膜強化方法。<14>脂肪球皮膜成分を有効量投与する又は摂取することによる非治療的な溶血又は貧血抑制方法。<15>脂肪球皮膜成分を有効量投与する又は摂取することによる非治療的な組織への酸素運搬改善方法。<16>細胞膜強化における使用のための脂肪球皮膜成分を有効成分とする機能性食品。<17>貧血抑制における使用のための脂肪球皮膜成分を有効成分とする機能性食品。<18>組織への酸素運搬改善における使用のための脂肪球皮膜成分を有効成分とする機能性食品。<19>細胞膜の強化を必要とする又は希望する動物又は人を対象とした、脂肪球皮膜成分を有効量投与する又は摂取することによる細胞膜強化方法。<20>溶血又は貧血の抑制を必要とする又は希望する動物又は人を対象とした、脂肪球皮膜成分を有効量投与する又は摂取することによる溶血又は貧血抑制方法。<21>組織への酸素運搬改善を必要とする又は希望する動物又は人を対象とした、脂肪球皮膜成分を有効量投与する又は摂取することによる組織への酸素運搬改善方法。<22>細胞膜を強化するための脂肪球皮膜成分の用途。<23>貧血を抑制するための脂肪球皮膜成分の用途。<24>組織への酸素運搬を改善するための脂肪球皮膜成分の用途。<25><4>記載の細胞膜強化剤が機能性食品である、脂肪球皮膜成分の使用。<26><5>記載の貧血抑制剤が機能性食品である、脂肪球皮膜成分の使用。<27><6>記載の組織への酸素運搬改善剤が機能性食品である、脂肪球皮膜成分の使用。<28>細胞膜が赤血球膜である、<1>記載の細胞膜強化剤、<4>記載の使用、<7>記載の細胞膜強化における使用のための脂肪球皮膜成分、<10>記載の細胞膜強化方法、<13>記載の非治療的な細胞膜強化方法、<16>記載の機能性食品、<19>記載の細胞膜強化方法、<22>記載の脂肪球皮膜成分の用途、<25>記載の脂肪球皮膜成分の使用。 以下、本発明の代表的な試験例と実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。試験例1 被験者(60-70歳代女性12名)を2群に分け、試験群(MGM群)では脂肪球皮膜成分(MGM;1g/日、雪印メグミルク社製 ミルクセラミドMC−5)を、プラセボ群では全脂粉乳(明治乳業社製 明治全粉乳)を同量、10週間毎日摂取するとともに、週2回の自転車漕ぎ及び歩行トレーニングを行った(各15分間)。0週及び10週時に採血を行い、定法(Parpart法)に従い赤血球抵抗性試験(浸透圧;溶液濃度の異なる溶媒中に血液を加え、溶血度を計測)を行った。結果を図1に示す。 図1より、MGM群では、プラセボ群に比べてより低浸透圧の状態まで溶血しないことが示された。このことは、赤血球の細胞膜が浸透圧ストレスに対して強化されたことを示しており、MGMには、細胞膜強化作用、赤血球の脆弱性の改善作用が有るといえる。試験例2 被験者(20−40歳代男性14名)を2群に分け、試験例1と同様にして、試験群(MGM群)では脂肪球皮膜成分(MGM;1g/日、メグレジャパン社製 BSCP)を、プラセボ群では全脂粉乳(明治乳業社製 明治全粉乳)を同量、4週間毎日摂取するとともに、週2回(約10分間/日)の自転車漕ぎトレーニングを行った(試験期間4週間のクロスオーバー試験)。0週及び4週時に身体機能評価を行い、血液分析(赤血球数、ヘモグロビン濃度)及び70%最大予想心拍までの漸増運動度の大腿部の酸素回復状態(DynaSense社製PocketNIRSにて計測した1分間当りのオキシヘモグロビン回復速度)を計測した。結果を表1及び図2に示す。 表1より、リン脂質濃度、赤血球数及びヘモグロビン濃度においては、いずれもMGM群が、試験開始時に比較し4週時に有意に高い値を示した。MGMには、乳リン脂質が豊富に含まれていることから、リン脂質の上昇はMGM成分によるものと考えられる。また、MGM摂取による赤血球数とヘモグロビン濃度の変化については、リン脂質濃度が上昇していることから、赤血球膜のリン脂質組成が変化して膜の粘弾性が向上し、溶血し難くなっていたことが原因の一つであると考えられる。以上の結果より、MGM(乳脂肪球皮膜)は、溶血又は貧血抑制剤として有用と考えられる。 また、図2より、MGM群ではプラセボ群で認められた、強運動後のオキシヘモグロビン回復の遅延が認められなかった。この結果には、上述した赤血球やヘモグロビンの増加が寄与していると考えられる。強運動等で血流が制限された後のオキシヘモグロビンの回復は組織への酸素運搬能を反映すると考えられていることから、本結果より、MGMは、組織への酸素運搬改善剤として有用と考えられる。処方例1 ゼリー食品 カラギーナンとローカストビーンガムの混合ゲル化剤0.65%、グレープフルーツの50%の濃縮果汁5.0%、クエン酸0.05%、ビタミンC0.05%、および脂肪球皮膜(ニュージーランドミルクプロダクツ社製 Phospholipid Concentrate 700:脂質85%,スフィンゴミエリン16.5%)を2.0%混合し、これに水を加えて100%に調整し、65℃で溶解する。更に少量のグレープフルーツフレーバーを添加して85℃で5分間保持して殺菌処理後、100mLの容器に分注する。8時間静置して徐冷しながら5℃に冷却して、ゲル化させ、口に含んだ時に口溶け性が良好で、果実風味を有し食感良好な脂肪球皮膜を含有するゼリー食品を得る。処方例2 錠剤 アスコルビン酸180mg、クエン酸50mg、アスパルテーム12mg、ステアリン酸マグネシウム24mg、結晶セルロース120mg、乳糖274mg、および脂肪球皮膜成分(メグレ社製 BSCP:蛋白質49%,脂質39%,スフィンゴミエリン 3.7%,グルコシルセラミド2.4%,ガングリオシド0.4%)440mgからなる処方(1日量2200mg)で、日本薬局方(製剤総則「錠剤」)に準じて錠剤を製造し、脂肪球皮膜成分を含有する錠剤を得る。処方例3 内服液 タウリン800mg、ショ糖2000mg、カラメル50mg、安息香酸ナトリウム30mg、ビタミンB1硝酸塩5mg、ビタミンB220mg、ビタミンB620mg、ビタミンC2000mg、ビタミンE100mg、ビタミンD32000IU、ニコチン酸アミド20mg、脂肪球皮膜(雪印乳業社製 ミルクセラミドMC−5:蛋白質21.2%,脂質59.3%,スフィンゴミエリン6.9%)1000mg、ロイシン200mg、イソロイシン100mg、バリン100mgを適量の精製水に加えて溶解し、リン酸水溶液でpH3に調節した後、更に精製水を加えて全量を50mLとする。これを80℃で30分滅菌して、脂肪球皮膜及びアミノ酸類を含有する運動機能向上用飲料を得る。処方例4 乳系飲料 乳カゼイン3.4g、分離大豆タンパク質1.67g、デキストリン14.86g、ショ糖1.3g、大豆油1.75g、シソ油0.18g、大豆リン脂質0.14g、グリセリン脂肪酸エステル0.07g、ミネラル類0.60g、ビタミン類0.06g、脂肪球皮膜(ニュージーランドミルクプロダクツ社製 Phospholipid Concentrate 500:脂質89%,スフィンゴミエリン7.8%)1.0gに精製水を加え、常法に従い、レトルト殺菌し、脂肪球皮膜を含有する運動機能向上用飲料(100mL)を得る。 脂肪球皮膜成分を有効成分とする細胞膜強化剤。 脂肪球皮膜成分を有効成分とする溶血又は貧血抑制剤。 脂肪球皮膜成分を有効成分とする組織への酸素運搬改善剤。 脂肪球皮膜成分を有効量投与する又は摂取することによる非治療的な細胞膜強化方法。 脂肪球皮膜成分を有効量投与する又は摂取することによる非治療的な溶血又は貧血抑制方法。 脂肪球皮膜成分を有効量投与する又は摂取することによる非治療的な組織への酸素運搬改善方法。 【課題】安全性が高く、赤血球膜等の細胞膜の強化、溶血又は貧血の抑制、又は組織への酸素運搬改善のための、飲食品、医薬品、医薬部外品又は飼料として、或いはこれらに配合するための素材として有用な、細胞膜強化剤、溶血又は貧血抑制剤、及び組織への酸素運搬改善剤の提供。【解決手段】バターミルクやバターセーラム等の乳複合脂質高含有画分に多く含まれることが知られている、乳中の脂肪球を被膜する膜及びそれを構成する膜成分混合物を意味する脂肪球皮膜成分を有効成分とする細胞膜強化剤。【選択図】なし


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