タイトル: | 公開特許公報(A)_有機酸分析法 |
出願番号: | 2012190710 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | G01N 30/88,G01N 30/46,G01N 30/54 |
渡邊 京子 坂井 健朗 JP 2014048137 公開特許公報(A) 20140317 2012190710 20120830 有機酸分析法 株式会社島津製作所 000001993 岡田 正広 100100561 渡邊 京子 坂井 健朗 G01N 30/88 20060101AFI20140218BHJP G01N 30/46 20060101ALI20140218BHJP G01N 30/54 20060101ALI20140218BHJP JPG01N30/88 CG01N30/46 AG01N30/54 D 3 2 OL 9 本発明は、カラムクロマトグラフィを用いた有機酸分析法に関する。本発明は、分析化学、環境化学、食品化学及び生化学の分野において用いられうる。 蟻酸、酢酸、クエン酸及び乳酸等の有機酸はイオン性化合物である。HPLCではODSカラムによる逆相クロマトグラフィーが広く用いられているが、有機酸の分離には適用が困難である。有機酸の分離には、一般的にはイオン排除クロマトグラフィーが用いられ、専用のカラムが開発又は販売されている。例えば、有機酸分析専用カラムとしてSCR-102H(島津製作所製)が販売されている。SCR-102Hカラムは、移動相にp-トルエンスルホン酸を用いる。非特許文献1(“HPLC Application Report No. 25−Prominence有機酸分析システムの原理と応用−”)には、SCR-102Hカラムを用いて多成分を分離する場合、1台のカラムオーブン中でSCR-102Hカラムを2本直列に接続して分離能を上げることが記載されている。 非特許文献2(“Agilent 1290 Infinity LC”)には、2つの独立した温度ゾーンを有するカラムコンパートメントを備えた分析装置が開示されている。“HPLC Application Report No. 25−Prominence有機酸分析システムの原理と応用−”、株式会社島津製作所、2006年8月25日“Agilent 1290 Infinity LC”[online]、アジレントテクノロジーズ、[平成24年6月22日検索]、インターネット<URL:http://www.chem-agilent.com/pdf/low_5990-5062JAJP.pdf> 非特許文献1には、1台のカラムオーブン中で2本直列に接続されたSCR-102Hカラムで、11種の有機酸を全て分離したことが記載されている。しかしながら、カラムはロット間で品質のばらつきがあり、ロットの異なるカラムを用いた場合に、同じ分析条件下で同11種の有機酸の高分離が達成できない場合がある。 特定の分析条件下で分離できなかった有機酸を分離するためには、分析条件を変更することで分離を調整する必要が生じる。変更されうる分析条件は、移動相濃度、移動相種類(例えばp-トルエンスルホン酸から過塩素酸へ)、及びカラム温度に限定されている。これら分析条件のうち移動相の変更は、煩雑であること及びカラムの再平衡化に時間を要することから採用されにくい。一方、カラム温度の変更は簡便であるため比較的よく採用される。しかしながら、温度の変更を行っても、2本のカラムを1台のカラムオーブンで温度調節を行うため、温度調節に限界があり、所望の有機酸の組み合わせの分離ができなかった場合がある。このように、従来の有機酸分析法においては、分離能の改善に限界がある。 非特許文献2の分析装置には、2つの独立した温度ゾーンを有するカラムコンパートメントを備えていることが記載されているが、それぞれの温度ゾーンが装置に備えられているカラムに構造上どのように関わっているかが不明である。 本発明の目的は、分離の調整をより幅広く且つ簡便に行うことで安定的且つ効率的に有機酸の分離を行うことができる有機酸分析法を提供することにある。 本発明者らは、上流側及び下流側に直列に配置された2本のカラムを互いに異なる特定の温度に設定することによって、上記本発明の目的が達成されることを見出し、本発明を完成するに至った。 本発明は、以下の発明を含む。(1)複数の有機酸を含む試料を、直列に配列した2本のイオン排除クロマトグラフィーカラムに順次供することによって、前記複数の有機酸を分離する工程を含み、前記2本のカラムの一方が20℃以上28℃以下の温度に調整されており、他方が40℃以上50℃以下の温度に調整されている、有機酸の分析方法。(2)前記複数の有機酸が、リン酸、α−ケトグルタル酸、クエン酸、ピルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、蟻酸、フマル酸、酢酸、レブリン酸及びL−ピログルタミン酸からなる群から選ばれる少なくとも2種の有機酸である、(1)の方法。(3)前記試料がリン酸をさらに含み、前記分離する工程において、リン酸と前記複数の有機酸とも分離される、(1)又は(2)の方法。 従来の2本のカラムを用いる有機酸分析法では、2本のカラムが1台のカラムオーブンにより温度調節されるため、2本のカラム温度が常に同じであり、1回の分析で設定可能なカラム温度条件はただ一つである。さらに、温度条件を変更する必要が生じた場合であっても、2本のカラム両方の温度を同じ温度へ変更することしかできなかった。 これに対し、本発明の方法では2本のカラム温度を常に異ならしめるため、1回の分析で設定可能なカラム温度条件が2条件(従来法の倍)になる。さらに、温度条件を変更する必要が生じた場合に、2本のカラム両方の温度を別々に変更することができるため、従来法に比べて設定可能な温度条件の組合せが格段に増加する。このように、本発明の方法では、分離の調整手段として簡便な手段である温度の変更を採用しつつも、分離の調整をより幅広く行うことができる。このため、従来法では安定的な分離が困難であった組み合わせの有機酸であっても、安定的に分離することが可能になる。 従って、本発明により、分離の調整をより幅広く且つ簡便に行うことで安定的且つ効率的に有機酸の分離を行うことができる有機酸分析法が可能になる。本発明の分析方法を実施する装置の一例の概念図である。本発明の分析方法の例によって有機酸混合物を分離して得られたクロマトグラム(i)及び(ii)である。本発明の分析方法の例によって有機酸混合物を分離して得られたクロマトグラム(iii)〜(v)である。本発明の分析方法の例によって有機酸混合物を分離して得られたクロマトグラム(vi)、及び比較用の分析方法の例によって有機酸混合物を分離して得られたクロマトグラム(vii)〜(xi)である。比較用の分析方法の例によって有機酸混合物を分離して得られたクロマトグラム(xii)及び(xiii)である。 本発明の分析方法に供される試料は、分離されるべき複数の有機酸を含む。有機酸としては、カルボキシル基を有するものであれば特に限定されない。好ましくは、炭素数1〜5の低級脂肪酸である。有機酸は、例えば、α−ケトグルタル酸、クエン酸、ピルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、蟻酸、フマル酸、酢酸、レブリン酸及びL−ピログルタミン酸からなる群から選ばれる。有機酸の種類の数は、例えば2〜12、好ましくは2〜10、さらに好ましくは2〜8である。本発明における試料には、有機酸の他に、分離されるべき無機酸が含まれていてよい。無機酸は、例えばリン酸である。 上述の分離されるべき成分1種あたりの試料中濃度は、例えば3×10−11〜1×10−6当量、好ましくは1×10−9〜1×10−6当量である。(当量:それぞれの酸のモル数に、イオン化数を乗じた値) 本発明における試料は、上記の有機酸を含んでいるものであればよい。本発明は、夾雑物(例えば、食品、環境又は生物由来の夾雑物)が多く含まれている複雑な組成の試料に対して有用である。本発明における試料の例としては、食品試料、環境試料及び生物試料が挙げられる。食品試料の具体例としては、酢及び醤油等の調味料類、日本酒、ワイン及びビール等の酒類、発酵食品、並びに果汁及び野菜汁等の植物組織由来液体が挙げられる。環境試料の具体例としては、水質試料及び地質試料が挙げられる。生物試料の具体例としては、体液、分泌液及び排泄物が挙げられる。これら試料は、当業者によって適宜希釈及び/又はフィルタリング等の処理が行われたものであってよい。 試料は、移動相と共に、流路を介して互いに上流側及び下流側に直列に配列した2本のイオン排除クロマトグラフィーカラムに順次供される。前記2本のイオン排除クロマトグラフィーカラムはそれぞれ異なる特定の温度に設定され、低温側カラム及び高温側カラムを構成する。 2本のカラムの一方すなわち低温側カラムは、20℃以上28℃以下の温度範囲内に設定されている。低温側カラムの温度範囲に含まれる上限値は、27℃、26℃、25℃、24℃、23℃、22℃又は21℃であってもよく、下限値は、21℃、22℃、23℃、24℃、25℃、26℃又は27℃であってもよい。 2本のカラムの他方すなわち高温側カラムは、40℃以上50℃以下の温度範囲内に設定されている。高温側カラムの温度範囲に含まれる上限値は、49℃、48℃、47℃、46℃、45℃、44℃、43℃、42℃又は41℃であってもよく、下限値は、41℃、42℃、43℃、44℃、45℃、46℃、47℃、48℃又は49℃であってもよい。 本発明において、試料が供される2本のイオン排除クロマトグラフィーカラムのうちの上流側又は下流側に配置されているカラムのいずれが、低温側カラム又は高温側カラムとされているかは問わない。従って、試料は先に低温側カラム、その後に高温側カラムに順次供されてもよいし、その逆に、先に高温側カラム、その後に低温側カラムに順次供されてもよい。 2本のカラムの温度以外の条件としては、例えば、固定相種類、移動相濃度、及び移動相種類が挙げられる。 固定相としては、イオン排除クロマトグラフィーで用いられる充填剤が用いられることができる。より具体的には、H+型陽イオン交換樹脂が用いられることができる。 移動相としては、強酸水溶液(例えばpH3以下、好ましくはpH2以下)であり且つ当量電気伝導度が小さい酸を用いることができる。このような酸としては、p-トルエンスルホン酸、過塩素酸が挙げられる。 移動相の酸の濃度は、例えば1〜10mmol/Lでありうる。 カラム溶出液は、ポストカラム緩衝化のため、緩衝液と混合される。緩衝液には、移動相と同一の酸と塩基とが含まれる。塩基としては、酸と同様の小さい当量電気伝導度を有し且つpKaが6〜8、好ましくは6.4〜7.8である塩基を用いることができる。このような塩基としては、ビス(2−ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)メタンが挙げられる。塩基の濃度は、例えば4〜40mmol/Lでありうる。さらに、緩衝液には、配位性がある有機酸(例えばクエン酸)のピーク形状の崩れを防ぐ目的で、キレート物質(例えばエチレンジアミン四酢酸)を含ませることができる。キレート物質濃度は、例えば10〜200μmol/Lでありうる。 ポストカラム緩衝化後、カラム溶出液を電気伝導度検出器に供することによって、イオン成分を検出することができる。この際、分離されるべき複数の有機酸の全てが互いに分離された状態で検出される。 図1に、本発明の分析方法を実施する分析装置の一例の概念図を示す。 分析装置1は、移動相m及び緩衝液bそれぞれのボトルを収容するリザーバトレイ11、並びに移動相m及び緩衝液bを脱気するためのオンライン脱気ユニット12を備えることができる。オンライン脱気ユニット12は、移動相及び緩衝液のそれぞれのボトル内から通じるチューブが接続された流路121及び122が形成されていることにより、1台で移動相及び緩衝液の両方の脱気を行うことができる。 オンライン脱気ユニット12は、脱気された緩衝液及び移動相がそれぞれ輸送されるチューブにより、緩衝液用送液ユニット13及び移動相用送液ユニット14それぞれと接続されている。 緩衝液用送液ユニット13及び移動相用送液ユニット14においては、オンライン脱気ユニット12で脱気された緩衝液及び移動相それぞれをダブルプランジャ方式で送液することができる。 移動相用送液ユニット14は、送液ユニット14から送液された移動相が輸送されるチューブでオートサンプラ15と接続されている。 オートサンプラ15は、試料バイアル151、シリンジ152、サンプリングニードル、及びインジェクションポートを収容することができる。また、オートサンプラ15は、クーラーを収容することもでき、所望の一定温度で試料を保存することができる。オートサンプラ15においては、送液ユニット14から送液されたチューブ内の移動相に、試料バイアル151からシリンジ152により計量した試料の全量を、サンプリングニードルを介してインジェクションポートから注入(すなわち全量注入方式による注入)することができる。 オートサンプラ15は、オートサンプラ15で注入された試料が輸送されるチューブで上流側イオン排除クロマトグラフィーカラム2Aと接続されている。 上流側カラム2Aは、さらにその下流側にチューブを介して直列に配置されているイオン排除クロマトグラフィーカラム2Bに接続されている。それぞれのカラムのサイズは、例えば、内径がφ4.6〜8.0mm、好ましくは7.6〜8.0mm、長さが150〜300mm、好ましくは250〜300mmである。カラム2A及びカラム2Bは、それぞれ別々のカラムオーブン3A及び3Bに内蔵されていて、各カラムオーブンは所望の温度範囲内で温調される。カラム2Aには、保護のためガードカラムを併用することができる。カラムオーブン3Bには、加温用又は冷却用コイル31(例えばポリエーテルエーテルケトン樹脂製、φ0.25mm×2m)を収容することができ、これにより移動相の温度を加温又は冷却することによってカラムオーブン3Aとカラムオーブン3Bの温度差を緩和する。さらに、カラムオーブン3Bには、カラム2Bとチューブで接続された、ポストカラム緩衝化のための反応管32、及び反応管32とチューブで接続された電気伝導度検出器のセルブロック33を収容することができる。 カラム2Bから溶出した試料中のイオン成分の検出は、電気伝導度検出器16によって行われることができる。検出に供された後の試料は廃棄物(waste)として装置外に破棄される。さらに、分析装置1は、データ処理及び装置制御を行うことができるワークステーションと接続するためのインターフェースの役割を果たすシステムコントローラ17を備えることができる。システムコントローラ17は、データバッファリングを行うことができる。オンライン脱気ユニット12、緩衝液用送液ユニット13、移動相用送液ユニット14、オートサンプラ15等の動作、カラムオーブン3A,3Bの温度調節などは、図示しない装置制御により各々制御される。 以下に実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。 図1に記載の分析装置を用い、リン酸、α−ケトグルタル酸、クエン酸、ピルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、ギ酸、フマル酸、酢酸、レブリン酸及びL−ピログルタミン酸をそれぞれ5mmol/Lを含む試料10μLの分析を行った。 1本目の上流側カラム(カラム2Aとする)及び2本目の下流側カラム(カラム2Bとする)の具体的な温度は、以下の通りに設定した。 (i) 2A:48℃, 2B:25℃ (ii) 2A:25℃, 2B:48℃ (iii) 2A:25℃, 2B:40℃ (iv) 2A:25℃, 2B:45℃ (v) 2A:25℃, 2B:50℃ (vi) 2A:25℃, 2B:48℃ (vii) 2A:30℃, 2B:48℃ (viii) 2A:35℃, 2B:48℃ (ix) 2A:40℃, 2B:48℃ (x) 2A:45℃, 2B:48℃ (xi) 2A:50℃, 2B:48℃ (xii) 2A:48℃, 2B:48℃ (xiii) 2A:25℃, 2B:25℃ その他の具体的な条件は、島津製作所製Prominence有機酸分析システムを構成する下記条件に従った。 カラム2A及び2B:Shim-pack SCR-102H(300 mm L.× 8.0 mm I.D.) 移動相: 5 mmol/L p−トルエンスルホン酸水溶液 移動相流速: 0.8 mL/分 試料注入量: 10 μL 緩衝液: 100 μmol/L EDTA・4H及び20 mmol/L Bis-Tris を含む5 mmol/L p−トルエンスルホン酸水溶液 緩衝液流速: 0.8 mL/分 ミキシング部: 配管部品J 検出器: 島津電気伝導度検出器 CDD-10A VP セル温度:[2本目のカラム温度+3]℃ 上記(i)〜(ii)、(iii)〜(v)、(vi)〜(xi)、及び(xii)〜(xiii)の温度条件で分析を行った結果を示すクロマトグラムを、それぞれ、図2、図3、図4及び図5に示す。本発明の例である(i)〜(vi)では、リン酸及び11種の有機酸全てが分離できたことに対し、比較用の例である(viii)〜(xiii)では、リン酸及び11種の有機酸全ての分離を達成することができなかった。 複数の有機酸を含む試料を、直列に配列した2本のイオン排除クロマトグラフィーカラムに順次供することによって、前記複数の有機酸を分離する工程を含み、前記2本のカラムの一方が20℃以上28℃以下の温度に調整されており、他方が40℃以上50℃以下の温度に調整されている、有機酸の分析方法。 前記複数の有機酸が、α−ケトグルタル酸、クエン酸、ピルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、蟻酸、フマル酸、酢酸、レブリン酸及びL−ピログルタミン酸からなる群から選ばれる少なくとも2種の有機酸である、請求項1の方法。 前記試料がリン酸をさらに含み、前記分離する工程において、リン酸と前記複数の有機酸とも分離される、請求項1又は2の方法。 【課題】分離の調整をより幅広く且つ簡便に行うことで安定的且つ効率的に有機酸の分離を行うことができる有機酸分析法を提供する。【解決手段】複数の有機酸を含む試料を、直列に配列した2本のイオン排除クロマトグラフィーカラムに順次供することによって、前記複数の有機酸を分離する工程を含み、前記2本のカラムの一方が20℃以上28℃以下の温度に調整されており、他方が40℃以上50℃以下の温度に調整されている、有機酸の分析方法。【選択図】図2