タイトル: | 公開特許公報(A)_ラメラ構造を有する脂質成分のシリカマイクロカプセル及びその製造方法 |
出願番号: | 2012189893 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | A61K 8/25,A61K 8/68,A61K 8/34,A61K 8/36,A61K 8/63,A61Q 19/08,A61K 31/201,A61K 31/20,A61K 31/045,A61K 31/575,A61K 31/164,A61K 9/50,A61K 47/04,A61K 8/11,A61K 8/42 |
梁 天賜 小幡 誉子 ▲高▼山 幸三 JP 2014047145 公開特許公報(A) 20140317 2012189893 20120830 ラメラ構造を有する脂質成分のシリカマイクロカプセル及びその製造方法 本多 秀夫 512226055 特許業務法人 もえぎ特許事務所 110000774 梁 天賜 小幡 誉子 ▲高▼山 幸三 A61K 8/25 20060101AFI20140218BHJP A61K 8/68 20060101ALI20140218BHJP A61K 8/34 20060101ALI20140218BHJP A61K 8/36 20060101ALI20140218BHJP A61K 8/63 20060101ALI20140218BHJP A61Q 19/08 20060101ALI20140218BHJP A61K 31/201 20060101ALI20140218BHJP A61K 31/20 20060101ALI20140218BHJP A61K 31/045 20060101ALI20140218BHJP A61K 31/575 20060101ALI20140218BHJP A61K 31/164 20060101ALI20140218BHJP A61K 9/50 20060101ALI20140218BHJP A61K 47/04 20060101ALI20140218BHJP A61K 8/11 20060101ALI20140218BHJP A61K 8/42 20060101ALI20140218BHJP JPA61K8/25A61K8/68A61K8/34A61K8/36A61K8/63A61Q19/08A61K31/201A61K31/20A61K31/045A61K31/575A61K31/164A61K9/50A61K47/04A61K8/11A61K8/42 16 OL 18 4C076 4C083 4C086 4C206 4C076AA62 4C076AA64 4C076BB31 4C076DD08F 4C076DD09F 4C076DD29H 4C076DD64 4C076EE06 4C076FF36 4C076GG24 4C083AB171 4C083AC071 4C083AC241 4C083AC251 4C083AC641 4C083AD491 4C083CC02 4C083DD14 4C083EE01 4C083EE12 4C086AA10 4C086DA11 4C086MA03 4C086MA05 4C086MA38 4C086MA63 4C086NA03 4C086ZA89 4C206AA10 4C206CA07 4C206DA03 4C206DA04 4C206GA03 4C206GA25 4C206MA03 4C206MA05 4C206MA58 4C206MA83 4C206NA03 4C206ZA89 本発明は、ラメラ構造を有する脂質成分をシリカで被覆したシリカマクロカプセル及びその製造方法に関する。 皮膚表皮における角質細胞と角質細胞間脂質から構成された角質層は、皮膚のバリア機能を賦与する。この角質細胞間脂質は表皮の角化細胞(Keratinocyte)の角化の過程で作られ、「顆粒層」にある層板顆粒内に蓄積され、それが角層に移行するときに細胞外に分泌され、角質細胞間脂質へと変化する。角質細胞間脂質はセラミドの他、遊離脂肪、コレステロールエステル及びコレステロールから構成されている。正常の皮膚では、角質細胞間脂質はラメラ構造を構成している。 角質細胞間脂質のラメラ構造には、短周期構造(層間距離d=5.6nm)と長周期構造(d=12.8nm)があり、X線回折を利用して角層細胞間脂質の構造解析が行われている(非特許文献1、2参照)。また、ヒトの角質細胞間脂質は、表1(A)に示す組成からなることが知られている。そして、難溶性物質であるセラミドは、表1(B)に示す組成からなり、角質細胞間脂質の約5割を占め、その代謝は、皮膚のバリア機能や保湿機能の維持に重要とされている(非特許文献3参照)。各セラミドの構造式は化1、化2に示すとおりで、(1)はセラミド1、(9)はセラミド9、(4)はセラミド4、(2)はセラミド2、(3)はセラミド3、(5)はセラミド5、(6)はセラミド6、(7)はセラミド7、(8)はセラミド8である。 セラミドは表皮細胞の角化の過程で生成されるが、アトピー疾患のように正常な角化が行われないと、その生成量が減少することが知られている。アトピー性皮膚炎では、皮膚のセラミド含量が減少し、皮膚のバリア機能が低下する結果、抗原や病原体(黄色ブドウ球菌など)に対して、強いアレルギー反応を引き起こす。また、加齢とともに角層内のセラミド量は減少し、皮膚の乾燥・シワ・タルミなどが生じ易くなる。非特許文献4、5に記載のように、表皮に存在する角質細胞間脂質に由来するラメラ構造をもつ脂質成分は経皮浸透・吸収により、効率的に毀損欠陥性角質細胞間脂質を修復させる。 現在、脂質成分をカプセル化した商品が市販されている。例えば、ビーパンジョア株式会社の商品名「ビーパンジョア311」セラミドカプセルクリームはセラミドカプセルが含まれているが、これは単にセラミドを含有するシリカ多孔質微小粒子である。その粒子に含有したセラミド成分はラメラ構造を有するものではなかった。 皮膚表皮のバリア機能を健全・修復される治療剤として、脂質成分を含む乳化製品が提示されているが(例えば、特許文献1〜3)、ラメラ構造を有する脂質を大気中でも安定的に保存できるマイクロカプセル化した製品は得られていない。 また、特許文献4には、ラメラ構造を有するセラミド類、高級アルコール類、ステロール類及び油分を含むセラミド組成物を内包してなる微少カプセルが提示されている。しかし、このカプセルは、遊離脂肪酸を含んでいないため、欠陥性角質細胞間脂質を修復する機能がなく、また、カプセル材が水性コラーゲンであり、大気中で腐敗しやすいという問題があった。なお、カプセル材として、シリコーン(有機ポリシロキサン)が挙げられているが、実施例は示されておらず、シリコーンはファンデルワールス力による被膜形成のため、堅牢な皮膜は期待できない。さらに、セラミド組成物がラメラ型液晶構造を有することを確認したとの開示はあるが、カプセルにした状態でラメラ構造を保持していることは示されていない。 一方、特許文献5には、砂糖顆粒などの核剤上にセラミド含有擬似角質脂質ラメラ層、及び前記擬似角質脂質ラメラ層上の高分子層を含む、多層ラメラ顆粒が提案され、セラミドPC104、ステアリン酸、コレステロールの重量比が0.4:0.4:0.2の組成について、ラメラ構造のX線回折結果が示されている。これによると、広角域に2θ=22°と2θ=5°のピークが検出され、式d=λ/2sinθ(一般用X線源CuKα:λ=0.154nm)から、それぞれにd=0.41nm、d=1.7nmと換算される。これは、短周期ラメラ構造のd=5.6nm(小角域2θ=1.6°に換算される)或いは長周期ラメラ構造のd=12.8nm(小角域2θ=0.7°に換算される)に一致せず、2θ=5°(d=0.41nmに換算される)のピークは、むしろ、非特許文献5に記載された六方晶型(hexagonal)のラレラルパッキング(Lareral Packing)構造に一致するとみなされる。しかも、得られた粒子に天然高分子で被覆した脂質がラメラ構造を保持していることは示されていない。特開2012−001556号公報特表2010−505886号公報特開2010−018558号公報特開2010−047493号公報特表2011−529043号公報小幡誉子ら、“放射光X線回折を利用した角質細胞間脂質の構造解析に基づく医薬品・化粧品の開発”、平成20年度Spring-8重点産業利用課題成果報告書(2008A1784)Joke A. Bouwstra et al., "Phase Behavior of Stratum Corneum Lipid Mixtures Based on Human Ceramides: The Role of Natural and Synthetic Ceramide 1". THE JOURNAL OF INVESTIGATIVE DERMATOLOGY, 2002, 118(4 ), pp 606-617。Philip W. Wertz, et al., "Composition and Morphology of Epidermal Cyst Lipid", THE JOURNAL OF INVESTIGATIVE DERMATOLOGY, 1987, 89(4 ), pp 419-425。Ichiro Hatta, et al., "X-Ray diffraction study on ordered, disordered and reconstituted intercellular Lipid lamellar structure in stratum", Biophysical Chemistry, 2001, 89, pp.239-242.Joke A. Bouwstra and Gert S. Gooris, "The Lipid Organisation in Human Stratum Corneum and Model Systems", The Open Dermatology Journal, 2010, 4, pp.10-13。 本発明が解決しようとする課題は、経皮浸透・吸収により、効率的に毀損欠陥性角質細胞間脂質を修復させることができる、表皮に存在する角質細胞間脂質に由来するラメラ構造をもつ脂質成分を、ラメラ構造を保持した状態でマイクロカプセル化したシリカマクロカプセル及びその製造方法を提供することである。 本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、In Vitroで調製したセラミド、脂肪酸、コレステロール及び油分からなる不安定な脂質成分をシリカで被覆することにより、ラメラ構造を保持した状態で、マイクロカプセル化できることを見出した。 本発明は、かかる知見に基づき創出されたもので、次のものである。(1)ラメラ構造を有する脂質成分をシリカで被覆したシリカマイクロカプセル。(2)脂質成分が、セラミド類、遊離脂肪酸、コレステロール類、及び油分を含むものである上記(1)に記載のシリカマイクロカプセル。(3)セラミド類が、セラミド1〜9、スフィンゴシン誘導体、及びフィトスフィンゴシン誘導体から選択された少なくとも2種類の混合物である上記(2)に記載のシリカマイクロカプセル。(4)遊離脂肪酸が、オレイン酸、パルミチン酸、リノール酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、パルミトレイン酸から選択された少なくとも2種類の混合物である上記(2)に記載のシリカマイクロカプセル。(5)コレステロール類が、コレステロール単独、又はコレステロールとコレステロールエステル混合物である上記(2)に記載のシリカマイクロカプセル。(6)油分が、高級アルコール、または動植物油である上記(2)に記載のシリカマイクロカプセル。(7)ラメラ構造を有する脂質成分をテトラエトキシシラン含有水溶液で反応させ、シリカで被覆することを特徴とするシリカマイクロカプセルの製造方法。(8)脂質成分が、セラミド類、遊離脂肪酸、コレステロール類、及び油分を含むものである上記(7)に記載のシリカマイクロカプセルの製造方法。(9)セラミド類が、セラミド1〜9、スフィンゴシン誘導体、及びフィトスフィンゴシン誘導体から選択された少なくとも2種類の混合物である上記(8)に記載のシリカマイクロカプセルの製造方法。(10)遊離脂肪酸が、オレイン酸、パルミチン酸、リノール酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、パルミトレイン酸から選択された少なくとも2種類の混合物である上記(8)に記載のシリカマイクロカプセルの製造方法。(11)コレステロール類が、コレステロール単独、又はコレステロールとコレステロールエステル混合物である上記(2)に記載のシリカマイクロカプセルの製造方法。(12)油分が、高級アルコール、または動植物油である上記(8)に記載のシリカマイクロカプセルの製造方法。(13)テトラエトキシシラン含有水溶液が、テトラエトキシシラン、界面活性剤、及び水を含有し、pHを3〜6の範囲に調整したものである上記(7)〜(12)のいずれかに記載のシリカマイクロカプセルの製造方法。(14)界面活性剤が、ソルビタンオレイン酸モノエステル、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、及びポリビニルアルコールを含む混合物である上記(13)に記載のシリカマイクロカプセルの製造方法。(15)上記(1)〜(6)のいずれかに記載のマクロカプセルを含有するシワ改善用機能性化粧品。(16)上記(1)〜(6)のいずれかに記載のマクロカプセルを含有するアトピー疾患用経皮吸収治療剤。 本発明のマイクロカプセルは、シリカで被覆されているので、大気中に保存しでも、角質細胞間脂質由来のラメラ構造をもつ脂質成分が、長期にわたって安定的に保持されており、マクロカプセルを皮膚上で揉み潰し、放出した脂質成分を均一に塗布することにより、経皮浸透吸収されて、毀損欠陥性角質細胞間脂質を修復することができる。このため、本発明は、シワ改善用機能性化粧品、ないしはアトピー疾患用経皮吸収治療剤として利用することができる。角質細胞間脂質のラメラ構造の模式図とそのX線回折パターン図である。実施例で得られたマイクロカプセルの電子顕微鏡写真図である。ラメラ脂質を封入したシリカマイクロカプセルのX線回折パターン図である。ラメラ脂質封入シリカマイクロカプセルのシワ改善効果を示す写真図である。毀損欠陥的な角質細胞間脂質の修復機能を示すX線回折パターン図である。経皮吸収透過実験装置フランツセルの概略図である。フランツセル透過液のXPSスペクトル図である。 本発明のシリカマイクロカプセルに被覆された脂質成分は、図1に示すようなラメラ構造を有しており、この構造はX線回折法により確認することができる。すなわち、短周期ラメラ構造においては、d=5.6nm(小角域2θ=1.6°)、長周期ラメラ構造では、d=12.8(小角域2θ=0.7°)にメインピークが認められる。 かかるラメラ構造を有する脂質成分は、セラミド類/遊離脂肪酸/コレステロール/油分からなるものが好ましく、脂質成分を、テトラエトキシシラン(TEOS)水溶液に加えて反応させることにより、ラメラ構造を有する脂質成分を被覆したシリカマイクロカプセルを作成することができる。 また、本発明のシリカマイクロカプセルは、機能性化粧品や経皮吸収治療剤として用いるためには、平均粒径が0.1〜2.0μmのものが好ましく、より好ましくは、0.3〜1.2μmのものである。 本発明におけるセラミド類としては、ヒトの角質細胞間脂質に含まれ、化1及び化2で示した化学構造を有するセラミド1〜9やその誘導体、例えば、スフィンゴシン、ジヒドロスフィンゴシン、フィトスフィンゴシン、スフィンガジエニン、デヒドロスフィンゴシン、デヒドロフィトスフィンゴシン、及びこれらのN−アルキル体(例えばN−メチル体)、アセチル化体等の誘導体を用いることができる。このセラミド類は2種以上を混合して用いることが、特に好ましい。 遊離脂肪酸としては、炭素数12〜30、より好ましくは炭素数18から26の不飽和又は飽和脂肪酸を用いることが好ましく、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、バルミトレイン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、アラキドン酸、バヘン酸、テトラコサン酸などで、特には、オレイン酸、パルミチン酸、リノール酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、パルミトレイン酸から選択された2種以上の混合物を用いることが好適である。 本発明におけるコレステロール類としては、コレステロール、コレステロールエステル、フィトステロールなどを用いることができ、特には、コレステロールとコレステロールエステル油の混合物を用いることが好ましい。 また、油分としては、オクチルドデカノール等の高級アルコール、オリーブスクワラン、ローズピップオイル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル等の天然動植物油脂類、及び半合成油脂、α‐オレフィンオリゴマーなどの炭化水素油、高級脂肪酸、エステル油、シリコーン油、動植物や合成の精油成分、脂溶性ビタミン等を用いることができる。 特に好ましい脂質成分の組成は(1)セラミド3とセラミド6に他のセラミドまたはセラミド誘導体を加えた混合物、(2)オレイン酸とパルミチン酸に他の脂肪酸を加えた混合物、(3)コレステロール、及び(4)トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル(以下に「CCT」と称することもある)からなるものである。 上記脂質成分の含有量は、脂質成分全量基準で、セラミド類が2〜12重量%、より好ましくは、3〜9重量%、遊離脂肪酸が5〜28重量%、より好ましくは、10〜20重量%、コレステロールが0.7〜4重量%、より好ましくは、1〜3重量%、油分が60〜90重量%、より好ましくは、70〜85重量%である。この範囲を外れると、ラメラ構造を有することが困難になる。 本発明のラメラ構造を有する脂質成分をシリカで被覆したシリカマイクロカプセルは、上記脂質成分をテトラエトキシシラン(TEOS)含有水溶液で反応させることにより得ることができる。この水溶液中のTEOSの濃度は、4〜14重量%が好ましく、より好ましくは、6〜10重量である。この範囲を外れると堅牢なシリカマイクロカプセルを得ることが難しくなる。 また、前記TEOS含有水溶液中には界面活性剤を含ませることが好ましい。この界面活性剤の添加量は、1〜5重量%が好ましく、より好ましくは、2〜4重量%である。 用いることができる界面活性剤としては特に制限はなく、種々のものを用いることができるが、植物性界面活性剤が好ましく、特には、ソルビタンオレイン酸モノエステル、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、及びポリビニルアルコール(ポバール)からなる混合物が好ましい。なお、この水溶液は、酢酸などの酸により酸性状態(pH3〜6)にすることが好ましい。 上記脂質成分とTEOS含有水溶液との反応においては、脂質成分:TEOS含有水溶液を重量比で、1:20〜2:10の割合で混合、撹拌することにより行うことができる。この場合の反応条件は、常温、常圧で十分であるが、20〜70℃、0.8〜1.2kg/cm2の範囲で行うことができる。反応後、ロ過、乾燥することにより、本発明のシリカマイクロカプセルが得られる。 本発明のシリカマイクロカプセルは、シワ改善用機能性化粧品やアトピー疾患用経皮吸収治療剤に配合して用いることができる。 本発明のシワ改善用機能性化粧品やアトピー疾患用経皮吸収治療剤では、上記シリカマイクロカプセルと共に、本発明の効果を損なわない範囲において、通常の化粧品や経皮吸収治療剤で通常使用される成分を含有させることができる。 これらの化粧品や経皮吸収治療剤中の本発明のシリカマイクロカプセルの含有量は特に限定されず、剤形などに応じて適宜選定できるが、好ましくは、1〜40重量%、より好ましくは、5〜25重量%である。 以下に、本発明を実施例により具体的に説明する。但し、これらの実施例により本発明は何ら限定されるものではない。 表2に示す脂質成分とTEOS水溶液を1対10重量比で混合後、酢酸でpHを4.5に調整し、6時間撹拌反応後、濾過、乾燥して、脂質成分をシリカで被覆したマクロカプセルが得られた。 上記方法で得られたマイクロカプセルの電顕写真を図2に示しめした。 図2(A)は一個のカプセル一次粒子で、(B)は3〜4個カプセル一次粒子の凝集体である。一次粒子の平均粒径は、0.3μmであった。 また、上記方法で得られたマイクロカプセルのX線回折結果を図3に示した。この結果が示すように、シリカマイクロカプセルに含まれる脂質はラメラ構造を保持している。ピーク*1は散乱ペクトル絶対値S*1=0.17nm-1(d=5.8nm)で、ピーク*2はS*2=0.34nm-1=2S*1を示している。これは非特許文献2に示された角質細胞間脂質に由来する短周期ラメラ構造(d=5.6nm)と一致する。 上記で得られたマイクロカプセルを右手皮膚上で揉み潰して、放出した脂質を皮膚に均一に塗布したときの一連の状態を図4に示した。図4中、Aはマイクロカプセル塗布前の状態で、Bはマイクロカプセルを皮膚上に置いた状態、Cはマイクロカプセルを揉み潰して放出した脂質を皮膚に均一に塗布した状態、Dは塗布直後の状態で、皮膚のシワは放出した脂質成分の経皮浸透によって改善されたことが明らかに分かる。 次に、無毛マウスの皮膚をメタノールを用いて角質細胞間脂質を除去し、脱脂後の皮膚上で上記で得られたマイクロカプセルを揉み潰して、塗布処置した。このマウスの皮膚をX線回折により角層細胞間脂質の構造解析を行った。この結果を図5に示した。図5の(A)は脱脂後の無毛マウスの皮膚のX線回折パターンで、(B)はマイクロカプセルを揉み潰して塗布処理した後のX線回折パターンで、(B)では、皮膚由来ピークのショルダーに角質細胞間脂質由来する短周期ラメラ構造に対応するピークが現れ、マイクロカプセルから放出した脂質が毀損された角質細胞間脂質を修復する効果が認められた。 また、皮膚に揉み潰れた脂質封入シリカマクロカプセルにおいて、シリカ破片が表皮の角質層を透過し、真皮・皮下組織まで浸透し、未知の副作用が引き起こされるか否かの問題を検証した。 無毛マウス皮膚上で上記のマイクロカプセルを揉み潰し、これを、揉み潰した面を上にして、図6に示すような経皮吸収透過実験装置フランツセルに装着し、リン酸緩衝生理食塩水を上部より透過させた。透過液をステンレス・シャーレで回収・乾燥・水分除去後、残留物をXPS(X線光電子分光法)で測定した。 この結果、図7と表3に示すように、透過液の残留物に皮膚や脂質成分や生理食塩水に由来するナトリウムNa、酸素O、窒素N、炭素C、塩素Clなどのピークは検出されたが、ケイ素Siのピークは検出されず、シリカ破片は皮膚表皮の角質層を浸透しないことが確認された。なお、図7中、(A)はコントロール、(B)は8時間浸漬後の透過液、(C)は12時間浸漬後の透過液、(D)は24時間浸漬後の透過液のXPSスペクトルである。 本発明のシリカマイクロカプセルは、大気中に保存しでも、封入された脂質成分が角質細胞間脂質由来のラメラ構造を安定的に保持している。マクロカプセルを皮膚に揉め潰し、放出した脂質成分を塗布することにより、経皮浸透吸収により、毀損欠陥性角質細胞間脂質が修復されるので、本発明シリカマイクロカプセルは、シワ改善用化粧品、ないしはアトピー疾患用経皮吸収治療剤として利用することができる。 ラメラ構造を有する脂質成分をシリカで被覆したシリカマイクロカプセル。 脂質成分が、セラミド類、遊離脂肪酸、コレステロール類、及び油分を含むものである請求項1に記載のシリカマイクロカプセル。 セラミド類が、セラミド1〜9、スフィンゴシン誘導体、及びフィトスフィンゴシン誘導体から選択された少なくとも2種類の混合物である請求項2に記載のシリカマイクロカプセル。 遊離脂肪酸が、オレイン酸、パルミチン酸、リノール酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、パルミトレイン酸から選択された少なくとも2種類の混合物である請求項2に記載のシリカマイクロカプセル。 コレステロール類が、コレステロール単独、又はコレステロールとコレステロールエステル混合物である請求項2に記載のシリカマイクロカプセル。 油分が、高級アルコール、または動植物油である請求項2に記載のシリカマイクロカプセル。 ラメラ構造を有する脂質成分をテトラエトキシシラン含有水溶液で反応させ、シリカで被覆することを特徴とするシリカマイクロカプセルの製造方法。 脂質成分が、セラミド類、遊離脂肪酸、コレステロール類、及び油分を含むものである請求項7に記載のシリカマイクロカプセルの製造方法。 セラミド類が、セラミド1〜9、スフィンゴシン誘導体、及びフィトスフィンゴシン誘導体から選択された少なくとも2種類の混合物である請求項8に記載のシリカマイクロカプセルの製造方法。 遊離脂肪酸が、オレイン酸、パルミチン酸、リノール酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、パルミトレイン酸から選択された少なくとも2種類の混合物である請求項8に記載のシリカマイクロカプセルの製造方法。 コレステロール類が、コレステロール単独、又はコレステロールとコレステロールエステル混合物である請求項8に記載のシリカマイクロカプセルの製造方法。 油分が、高級アルコール、または動植物油である請求項8に記載のシリカマイクロカプセルの製造方法。 テトラエトキシシラン含有水溶液が、テトラエトキシシラン、界面活性剤、及び水を含有し、pHを3〜6の範囲に調整したものである請求項7〜12のいずれかに記載のシリカマイクロカプセルの製造方法。 界面活性剤が、ソルビタンオレイン酸モノエステル、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、及びポリビニルアルコールを含む混合物である請求項13に記載のシリカマイクロカプセルの製造方法。 請求項1〜6のいずれかに記載のマクロカプセルを含有するシワ改善用機能性化粧品。 請求項1〜6のいずれかに記載のマクロカプセルを含有するアトピー疾患用経皮吸収治療剤。 【課題】経皮浸透・吸収により、効率的に毀損欠陥性角質細胞間脂質を修復させることができる、表皮に存在する角質細胞間脂質に由来するラメラ構造をもつ脂質成分を、ラメラ構造を保持した状態でマイクロカプセル化したシリカマクロカプセル及びその製造方法を提供する。【解決手段】ラメラ構造を有する脂質成分、好ましくは、セラミド類、遊離脂肪酸、コレステロール類、及び油分を含む脂質成分をシリカで被覆したシリカマイクロカプセル、及び前記脂質成分をテトラエトキシシラン含有水溶液中で反応させ、シリカで被覆するシリカマイクロカプセルの製造方法。【選択図】なし20120926A16333請求項153 請求項1〜6のいずれかに記載のマイクロカプセルを含有するシワ改善用機能性化粧品。A16333請求項163 請求項1〜6のいずれかに記載のマイクロカプセルを含有するアトピー疾患用経皮吸収治療剤。A1633000013 本発明は、ラメラ構造を有する脂質成分をシリカで被覆したシリカマイクロカプセル及びその製造方法に関する。A1633000143 本発明が解決しようとする課題は、経皮浸透・吸収により、効率的に毀損欠陥性角質細胞間脂質を修復させることができる、表皮に存在する角質細胞間脂質に由来するラメラ構造をもつ脂質成分を、ラメラ構造を保持した状態でマイクロカプセル化したシリカマイクロカプセル及びその製造方法を提供することである。A1633000173(15)上記(1)〜(6)のいずれかに記載のマイクロカプセルを含有するシワ改善用機能性化粧品。(16)上記(1)〜(6)のいずれかに記載のマイクロカプセルを含有するアトピー疾患用経皮吸収治療剤。A1633000183 本発明のマイクロカプセルは、シリカで被覆されているので、大気中に保存しでも、角質細胞間脂質由来のラメラ構造をもつ脂質成分が、長期にわたって安定的に保持されており、マイクロカプセルを皮膚上で揉み潰し、放出した脂質成分を均一に塗布することにより、経皮浸透吸収されて、毀損欠陥性角質細胞間脂質を修復することができる。このため、本発明は、シワ改善用機能性化粧品、ないしはアトピー疾患用経皮吸収治療剤として利用することができる。A1633000303 表2に示す脂質成分とTEOS水溶液を1対10重量比で混合後、酢酸でpHを4.5に調整し、6時間撹拌反応後、濾過、乾燥して、脂質成分をシリカで被覆したマイクロカプセルが得られた。A1633000363 また、皮膚に揉み潰れた脂質封入シリカマイクロカプセルにおいて、シリカ破片が表皮の角質層を透過し、真皮・皮下組織まで浸透し、未知の副作用が引き起こされるか否かの問題を検証した。 無毛マウス皮膚上で上記のマイクロカプセルを揉み潰し、これを、揉み潰した面を上にして、図6に示すような経皮吸収透過実験装置フランツセルに装着し、リン酸緩衝生理食塩水を上部より透過させた。透過液をステンレス・シャーレで回収・乾燥・水分除去後、残留物をXPS(X線光電子分光法)で測定した。A1633000393 本発明のシリカマイクロカプセルは、大気中に保存しでも、封入された脂質成分が角質細胞間脂質由来のラメラ構造を安定的に保持している。マイクロカプセルを皮膚に揉め潰し、放出した脂質成分を塗布することにより、経皮浸透吸収により、毀損欠陥性角質細胞間脂質が修復されるので、本発明シリカマイクロカプセルは、シワ改善用化粧品、ないしはアトピー疾患用経皮吸収治療剤として利用することができる。