生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_有機酸の製造方法
出願番号:2012184260
年次:2014
IPC分類:C12P 7/56


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竹中 敦義 JP 2014039505 公開特許公報(A) 20140306 2012184260 20120823 有機酸の製造方法 旭硝子株式会社 000000044 三好 秀和 100083806 高橋 俊一 100101247 伊藤 正和 100095500 高松 俊雄 100098327 鈴木 壯兵衞 100108914 竹中 敦義 C12P 7/56 20060101AFI20140207BHJP JPC12P7/56 6 1 OL 11 4B064 4B064AD09 4B064AD30 4B064AD33 4B064CA06 4B064CA19 4B064CE09 4B064CE11 4B064DA01 4B064DA16 4B064DA20 本発明は、有機酸の製造方法に関し、詳細には、II型の強塩基性イオン交換樹脂を用いることにより、濃縮された有機酸水性溶液を効率よく得る工程を含む方法に関する。 有機酸、例えば乳酸、コハク酸等は、医薬、農薬、化粧品等の種々の用途において使用されている。有機酸の製造方法としては、発酵法が古くから用いられている。一般に、有機酸生産菌は生産される有機酸による発酵阻害があるので、発酵液にアルカリを加えてpHを中性付近に調整しながら発酵を行うことが多い。この場合、有機酸は、発酵液中に有機酸塩の形態で得られる。 一方、pHの調整を行わずに、酸性条件下で発酵を行うことができる耐酸性を付与された菌、例えば耐酸性微生物を宿主とした形質転換体、を用いて発酵を行うことが提案されている。この場合、有機酸は、発酵液中に酸の形態で得られる。 上記いずれの場合においても、目的とする有機酸を得るためには、発酵液中に存在する菌体、無機塩類及び炭素源等を除くための、予備的精製工程を経なければならない。該予備的精製工程、特に分離工程では、大量の水もしくは有機溶媒(以下、溶媒等という)が使用されるので、得られる有機酸もしくはその塩等の誘導体の濃度は、一般に、かなり希薄なものとなっており、溶媒等を除去するための負荷が大きい。そこで、溶媒等を蒸留等に付する前に、有機酸を濃縮することが望まれる。 濃縮の方法の一法として、有機酸を陰イオン交換樹脂に吸着して濃縮する方法がある。例えば、乳酸を弱イオン交換樹脂に吸着させた後、水酸化ナトリウムで樹脂を再生して乳酸を溶出させる方法(特許文献1)、乳酸を弱塩基性陰イオン交換樹脂に吸着させた後、塩酸等で溶離して回収する方法(特許文献2)が知られている。特開2003−61695号公報特開平3−183487号公報 しかし、水酸化ナトリウムで溶出させる方法では、有機酸ナトリウム塩のナトリウムを水素に置換するための追加工程を要し、濃縮率が低下する。塩酸で溶離する場合には、そのような追加工程は不要であるが、その濃縮効率は満足の行くものではない。 そこで、本発明は、上記の問題が無く有機酸を高い効率で濃縮し、且つ、該濃縮された有機酸を高い効率で回収して、濃縮された有機酸水性溶液を得る方法を提供する。 即ち本発明は、下記[1]〜[6]に記載する有機酸を製造する方法である。 [1]有機酸の製造方法であって、発酵により生産された後に予備的精製に付された有機酸を含む、有機酸水性粗溶液を濃縮する工程を含み、該工程が、 1.該有機酸水性粗溶液をII型強塩基性イオン交換樹脂と接触させて、有機酸イオンを該II型強塩基性イオン交換樹脂に吸着させる工程、 2.吸着された該有機酸イオンを、鉱酸水溶液を含む溶離液によって溶出させる工程、 を含む方法。[2]該有機酸が乳酸、コハク酸、又はグリコール酸である、上記[1]記載の方法。[3]該鉱酸が塩酸である、上記[1]又は[2]記載の方法。[4]該溶離液が、大気圧下で120℃以下の沸点を有する水溶性有機溶剤、但し、アルコールを除く、を10〜70体積%で含む、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。[5]該水溶性有機溶剤が、アセトニトリル、アセトン、及びテトラヒドロフランからなる群より選ばれる少なくとも1種である、上記[4]記載の方法。[6]該予備的精製が、発酵により生産された有機酸を、該有機酸を含む有機酸含有粗液からイオン交換クロマトグラフィー法により分離する工程を含み、該イオン交換クロマトグラフィー法におけるイオン交換樹脂が両性イオン交換樹脂であり、且つ、溶離液が水である、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の方法。 II型強塩基性イオン交換樹脂によって、弱陰イオン交換樹脂よりも高い有機酸濃縮効率を達成することができる。また、溶離液に有機溶剤を配合すると、回収された有機酸水性溶液からの溶離液の除去が、より容易となる。図1は、本発明の方法により、II型強塩基性イオン交換樹脂に吸着させた乳酸の溶出曲線の一例である。図2は、従来の方法により、弱塩基性イオン交換樹脂に吸着させた乳酸の溶出曲線の一例である。図3は、本発明の方法により、II型強塩基性イオン交換樹脂に吸着させたコハク酸及びグリコール酸の溶出曲線の一例である。 本発明において、有機酸はカルボキシル基を有する有機化合物であればよく、例えば乳酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、ピルビン酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、フマル酸、マレイン酸、グルタル酸、および、アジピン酸等が挙げられる。好ましくは乳酸、コハク酸、又はグリコール酸であり、広い用途を有する点で、乳酸が最も好ましい。これらの有機酸は、D体、L体、DL体のいずれであってもよく、また、オリゴマー、即ち、重合度2〜15程度のポリマー、を形成していても良い。 本発明の方法は低濃度の有機酸水性粗溶液から、有機酸を高濃度の水性溶液として簡便に得られることから、微生物を利用した生物化学工業的手法を用いて、すなわち発酵により、生産された有機酸の濃縮に有効な方法である。なお本明細書において、「発酵」とは、微生物に目的化合物(有機酸)を生産させることを意味する。 微生物は、野生型及び遺伝子組み換え型のいずれのものであってもよい。野生型微生物としては、例えば、ストレプトコッカス属、ペディオコッカス属、ロイコノストック属、及びラクトバチルス属等の乳酸発酵菌;アネロビオスピリリウム属、及びコリネバクテリウム属等のコハク酸発酵菌が挙げられる。 遺伝子組換え型微生物としては、遺伝子組換え乳酸生産酵母が挙げられ、例えば、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)を宿主とし、乳酸脱水素酵素遺伝子が組み込まれ、かつ該宿主のピルビン酸脱炭酸酵素をコードする遺伝子群の一部が欠失または失活している、形質転換体(特許文献2)、サッカロミセス属の酵母等の耐酸性微生物を宿主とし、該耐酸性微生物に乳酸脱水素酵素をコードする遺伝子を導入した形質転換体(特開2001−204464号公報)、及び乳酸脱水素酵素をコードする遺伝子が導入され、かつピルビン酸脱炭酸酵素1をコードする遺伝子を欠失または失活させたサッカロミセス・セレビシエ(出芽酵母)(特開2008−48726号公報)等が挙げられる。これらのうち、pHを中性付近に調整することを必要とせずに高い生産性で乳酸を生産できる点で、シゾサッカロミセス・ポンベを宿主とし、乳酸脱水素酵素遺伝子が組み込まれ、かつ該宿主のピルビン酸脱炭酸酵素をコードする遺伝子群の一部が欠失または失活している、形質転換体が好ましい。 発酵に用いる発酵液は、特に限定されず、目的とする有機酸の生産に適するNa、K等の基本的無機塩類、及び炭素源を含めばよい。また必要に応じて、窒素源、及びアミノ酸等の成分を含んでいてもよい。発酵液は、天然、合成または半合成発酵液のいずれであってもよい。炭素源としては、例えば、グルコース、フルクトース、スクロース、マルトース等の糖が挙げられる。窒素源としては、例えば、アンモニア、塩化アンモニウム、酢酸アンモニウム等の無機酸または有機酸のアンモニウム塩、ペプトン、カザミノ酸、イーストエキス等が挙げられる。無機塩類としては、例えば、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、リン酸二水素カリウム等が挙げられる。さらには、プロテオリピドなどの発酵促進因子などを配合することができる。 好ましくは、糖としてグルコースを用いる。発酵初期の発酵液(100質量%)中のグルコース濃度は1質量%以上が好ましく、1〜25質量%がより好ましく、2〜16質量%がさらに好ましい。発酵によりグルコース濃度が低下するため、必要によりグルコースを添加して発酵を継続することが好ましい。発酵終期のグルコース濃度は1質量%以下となってもよい。また、有機酸を分離しながら発酵液を循環させて連続的に発酵を行う場合には上記グルコース濃度を維持することが好ましい。グルコース濃度を2質量%以上とすることにより、有機酸の生産性がより向上する。また、発酵液中のグルコースを16質量%以下とすることにより、有機酸の生産効率がより向上する。 発酵には公知の酵母発酵方法を用いることができ、例えば循環発酵、攪拌発酵等により行うことができる。発酵温度は、23〜37℃であることが好ましい。また、発酵時間は適宜決定することができる。発酵は、回分発酵であってもよく、連続発酵であってもよい。例えば、回分発酵で発酵を行った後、菌体を発酵液から分離して、有機酸を含む発酵液を取得することができる。また、連続発酵法では、例えば、発酵中の発酵槽から発酵液の一部を抜き出し、抜き出した発酵液から有機酸を分離するとともに、有機酸を分離した残りの発酵液にグルコースや新たな発酵液を加えて発酵槽に戻すことを繰り返して、連続的に発酵する方法が挙げられる。連続発酵を行うことにより、有機酸の生産性がより向上する。 好ましくは、上記シゾサッカロミセス・ポンベを宿主とし、乳酸脱水素酵素遺伝子が組み込まれ、かつ該宿主のピルビン酸脱炭酸酵素をコードする遺伝子群の一部が欠失または失活している、形質転換体が使用され、生産された有機酸を含む有機酸含有粗液は、pHが1〜5であり、より好ましくは1.5〜4、特に好ましくは1.5〜3.5である。該形質転換体は、耐酸性が優れているため、生産された有機酸を含む発酵液のpHを調整することなく発酵を継続することができる。 本発明において、予備的精製は、発酵で得られる有機酸を含む有機酸含有粗液から、固形分、無機塩類、及び炭素源等を除去し、これらの不純物の有機酸に対するモル比を好ましくは約1/100以下、より好ましくは1/300以下とすることを意味する。該予備的精製法としては、遠心分離、ろ過等による菌体等固形分の分離、有機酸又はその誘導体の分離、例えば溶媒抽出(特開昭49−63659、特表2003−511360)、クロマトグラフィー分離(特開2009−101353号公報、特開2011−139701号公報)、有機酸塩の電気透析(特開平10−36310号公報)等が挙げられる。好ましくは、固形分の分離後、クロマトグラフィー分離が使用され、特に、固定相として両性イオン交換樹脂を用い、溶離液として水を用いるイオン交換クロマトグラフィー法が用いられる。両性イオン交換樹脂は、架橋共重合体、例えばスチレン/ジビニルベンゼン樹脂母体、に結合されたアニオン交換基とカチオン交換基とを有する。樹脂母体は、ゲル型であってもマクロポーラス型であってもよい。アニオン交換基としては、トリメチルアミノ基、ジメチルヒドロキシエチルアミノ基、ジメチルアミノ基が、カチオン基としては、有機酸イオンよりも弱酸であるカルボキシル基、及びこれらが組み合わされたベタイン構造を形成している基が挙げられる。或いは、強塩基性イオン交換体に、アクリル酸を含浸させて重合させた、スネークケイジ型と呼ばれる樹脂であってもよい。また、溶離液として用いる水は、脱イオン水、蒸留水、純水のいずれであってもよい。 クロマトグラフィーは、回分固定層方式、移動層方式、擬似移動層方式のいずれであってもよい。回分固定層方式では、イオン交換樹脂を充填したカラムに、有機酸含有粗液を供給した後、溶離液を適切な速度で供給して、成分を分離する。移動層方式では、イオン交換樹脂を、有機酸含有粗液中の有機酸及び不純物成分、夫々、の移動速度の中間の速度で、溶離液の流れと逆の方向に移動させて行う。擬似移動層方式は、複数のカラムを円環状に接続したものを用い、有機酸粗液の供給、有機酸の取り出し口を所定の周期で、溶離液の流れ方向に一カラム分移動することにより行う。溶離液を追加することなく、連続的に分離を行うことができる点で、擬似移動層方式が好ましい。 本発明の方法では、上述のようにして得られた有機酸水性粗溶液を、II型強塩基性イオン交換樹脂と接触させて、有機酸イオンを該II型強塩基性イオン交換樹脂に吸着させて濃縮する。II型強塩基性イオン交換樹脂は、架橋共重合体、例えばスチレン/ジビニルベンゼン樹脂母体にアルキレン基を介して結合された−N+(CH3)2C2H5OH基を有するもので、例えばダイヤイオンSA20A、ダイヤイオンPA408、ダイヤイオンPA412、ダイヤイオンPA418(いずれも三菱化学社製)、ダウエックスマラソンA2、アンバーライトIRA410J、アンバーライトIRA411、アンバーライトIRA910CT(いずれもダウエックス社製)、ピュロライトA200,ピュロライトA300,ピュロライトA510(いずれもピュロライト社製),レバチットM610、レバチットMP600(いずれもランクセス社製)、デュオライトA116(住化ケムテック社製)を使用することができる。 同じ強塩基性イオン交換樹脂であるI型を用いた場合は、有機酸の吸着と鉱酸による溶出のそれぞれの過程における挙動に、II型と多少の差は認められるが大きな差異は無い。しかし再生過程において、I型は鉱酸が樹脂に強く吸着しているため、樹脂の再生に多量の再生液が必要となり、II型と比較して好ましくない。 該イオン交換樹脂の粒径は、好ましくは100〜1000μm、より好ましくは200〜700μmであり、特に好ましくは300〜500μmである。また、該イオン交換樹脂の中性塩分解容量は、好ましくは1〜10meq/g樹脂である。 吸着は、イオン交換樹脂をカラムに充填して、有機酸水性粗溶液を通液する固定床式であっても、イオン交換樹脂を有機酸水性粗溶液中に分散させて、攪拌するバッチ式のいずれで行ってもよい。好ましくは、前者の方法で行う。イオン交換樹脂はOH−型またはHCO3−型にコンディショニングしておくと有機酸の吸着効率が高い。好ましくはOH−型で行う。 固定床式で行う場合の、イオン交換樹脂カラムへの有機酸水性粗溶液の負荷は、空塔速度(SV:Superficial Velocity)0.1〜10hr−1で、イオン交換樹脂の総イオン交換容量に対して、有機酸量が0.95〜0.98倍量となる量を通液することにより行うことが好ましい。また、カラムからの流出液中の有機酸濃度をモニタしながら、吸着を確認することが好ましい。 次いで、吸着された有機酸を、鉱酸水溶液を含む溶離液によって溶出させて回収する。鉱酸としては、塩酸、硝酸、硫酸が挙げられ、蒸留等で除去し易い点で塩酸が好ましい。鉱酸の濃度は、好ましくは0.2〜2N、より好ましくは0.8〜1.2Nである。鉱酸の添加量はイオン交換樹脂の総イオン交換容量の0.95〜1.05倍量となる量とし、該量を通液した後に純水に切り替えて通液することが好ましい。この量の範囲にすることで鉱酸は陰イオン交換樹脂に吸着されて有機酸への混入を最小限にすることができる。 好ましくは、該溶離液は大気圧下で120℃以下の沸点を有する水溶性有機溶剤、但し、アルコールを除く、を10〜70体積%、好ましくは20〜60体積%で含む。該水溶性有機溶剤としては、アセトニトリル、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン等が挙げられ、これらのうちアセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフランが好ましく、アセトニトリルが最も好ましい。また、これらの2種以上の溶剤を混合して用いてもよい。 固定床式で行う場合の、溶離液の空塔速度(SV)は、好ましくは0.1〜10hr−1 である。また、送液圧力は0.1〜2MPaが好ましい。カラム溶出液を分取して、酵素センサー、イオンクロマトグラフィー、分光光度計等の分析手段で溶出成分をモニタしながら、有機酸を回収することが好ましい。 本発明の方法によれば、固定床式の場合、吸着させる有機酸水性粗溶液の濃度にもよるが、濃縮率、即ち、溶出液中の有機酸濃度/有機酸水性粗溶液中の有機酸濃度は、例えば3〜5g/L程度の粗液を吸着させた場合には、好ましくは6倍以上、より好ましくは10倍以上を達成することができる。吸着させる有機酸水性粗溶液の濃度が薄くなれば、濃縮率は高くなる。最終的に本発明の方法で得られる有機酸水性溶液の濃度は、例えばモノカルボン酸の場合には、溶出曲線における最高濃度として、好ましくは50g/L以上、より好ましくは70g/L以上の濃度で回収できる。 また、固定床式の場合、図1及び3に示すように、溶出曲線がシャープなので、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上の回収率で、投入された有機酸を回収できる。また、擬似移動床式の場合は、目的とする有機酸を適宜抜き取れるので、より効果的に濃縮でき、かつ、より回収率を高めることができる。得られた有機酸水性溶液を、定法に従い、減圧蒸留等に付することによって、鉱酸及び有機溶剤を除去し、目的とする有機酸の高濃度水性溶液を得ることができる。本発明の方法によれば、予備的精製を経た薄い有機酸水性粗溶液を直接減圧蒸留等に付するよりも、はるかに少ない蒸留エネルギーにより、目的とする有機酸の高濃度水溶液を、高い回収率で得ることができる。 以下、実施例および比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。<発酵工程> 特許文献2(WO2011/021629)に記載された方法で、形質転換体(ASP2782)を得た。該形質転換体をD12液体培地(グルコース12%)に植菌して、温度32℃、振盪速度100rpmの条件下で20時間発酵させたところ、乳酸濃度85.7g/Lの発酵液(pH2.3)が得られた。該発酵液を、遠心分離(12000 G、5 分間)に付し、上澄み(「乳酸含有粗液」とする)を得た。<予備的精製工程> 直径10mmのクロマト用カラムに純水を入れ、予め純水に浸漬して膨潤させた両性イオン交換樹脂(ダイアニオンAMP03、三菱化学社製)10mlを該カラムに充填して樹脂ベッドを作り、純水の液面を樹脂ベッドの上端に合わせた。該樹脂ベッドの上部に、乳酸含有粗液1mlを添加した後、SV1hr−1で、純水を通液し、流出液量(B.V.1.1〜3.5の画分を採取して、乳酸濃度が4.88g/Lの乳酸水性粗溶液を得た。<吸着工程> 直径10mmのクロマト用カラムに純水を入れ、予め1N−NaOHで膨潤させたダイヤイオンSA20A(三菱化学社製)6gを、カラムに充填して樹脂ベッドを作り、純水で洗浄後、純水の液面を樹脂ベッドの上端に合わせた。該樹脂ベッドの上部に、乳酸水性粗溶液200mlを、SV 1hr−1で通液し、カラムからの流出液中の乳酸濃度を電導度計によりモニタし吸着漏れがないことを確認しながら、乳酸を吸着させた。<溶出工程> 乳酸が吸着された樹脂ベッドに、1N−HClを12mL、引き続き純水を18mLを、SV1hr−1で通液し、溶出液を2mLずつ分取した。2mLずつの各画分の乳酸濃度を、イオンクロマト法で定量した。得られた溶出曲線を図1に示す。<濃縮率及び回収率> 得られた溶出データを用いて、複数の画分を連続的に回収した場合の(1)濃縮率(倍)及び(2)回収率(%)を、以下の方法により算出した。(1)回収液に最も多くの乳酸が含まれる様に、最高溶出濃度(ピークトップ)の画分を含む、連続した複数の画分、例えば5画分、を選び、該複数画分を合わせた回収液(以下「仮想的回収液」という)中の乳酸濃度(g/L)を、該複数画分の乳酸濃度の平均値を求めることによって算出し、該仮想的回収液の乳酸濃度を、投入した乳酸水性粗溶液の濃度(4.88g/L)で除して、濃縮率(倍)を求め、表1の上段に示した。(2)また、この仮想的回収液に含まれる乳酸の合計量を算出し、投入した乳酸の量0.976g(=4.88g/L×200mL)で除して回収率(%)を求め、表1の下段に示した。例えば、実施例1において、5分画仮想的回収液(10mL)の濃度が59.1g/Lなので、乳酸量は0.591gであるから、回収率は60.5%(=0.591/0.976×100)となる。 溶出液として、1N−HCl(アクリロニトリル20%(V/V)水溶液)を用いたことを除き、実施例1と同様に濃縮を行った。結果を表1に示す。 溶出液として、1N−HCl(アクリロニトリル40%(V/V)水溶液)を用いたことを除き、実施例1と同様に濃縮を行った。結果を表1に示す。 溶出液として、1N−HCl(アクリロニトリル60%(V/V)水溶液)を用いたことを除き、実施例1と同様に濃縮を行った。結果を表1に示す。 溶出液として、1N−HCl(アクリロニトリル80%(V/V)水溶液)を用いたことを除き、実施例1と同様に濃縮を行った。結果を表1に示す。<比較例1> 吸着工程において、イオン交換樹脂として、弱塩基性の樹脂であるダイヤイオンWA20(三菱化学社製)を用いたことを除き、実施例1と同様に濃縮を行った。溶出曲線を図2に示す。また実施例と同様に濃縮率及び回収率を計算した結果を表1に示す。<吸着工程> 実施例1と同様に準備した樹脂ベッドの上部に、コハク酸水溶液(模擬液、濃度:3.25g/L)の200mlを、SV1hr−1で通液し、カラムからの流出液中のコハク酸濃度を電導度計によりモニタしながら、コハク酸を吸着させた。<溶出工程> 実施例1の場合と同様に、溶出を行った。各画分のコハク酸濃度を、イオンクロマト法で定量した。得られた溶出曲線を図3に示す。また、実施例1と同様に、投入したコハク酸に対する濃縮率(倍)及び回収率(%)を求め表2に示した。<吸着工程> 実施例1と同様に準備した樹脂ベッドの上部に、グリコール酸水溶液(模擬液、濃度:3.5g/L)の200mlを、SV1hr−1で通液し、カラムからの流出液中のグリコール酸濃度を電導度計によりモニタしながら、グリコール酸を吸着させた。<溶出工程> 実施例1の場合と同様に、溶出を行った。各画分のグリコール酸濃度を、イオンクロマト法で定量した。得られた溶出曲線を図3に示す。また実施例1と同様に、投入したグリコール酸に対する濃縮率(倍)及び回収率(%)を求め表2に示した。 表1、2から分かるように、本発明の方法によれば10倍超の濃縮及び80%超の回収率を達成できた。また溶出曲線における最高濃度として、50g/Lを超える濃度の乳酸水性溶液が得られた。特に、アセトニトリル量が40〜60体積%の場合に、濃縮率が高く、また、90%を超える回収率を達成することができた。これに対して、従来使用されている弱塩基性イオン交換樹脂を用いた比較例では、吸着率が低く、溶出ピークもブロードであり、濃縮率、および回収率ともに劣った。 有機酸の製造方法であって、発酵により生産された後に予備的精製に付された有機酸を含む、有機酸水性粗溶液を濃縮する工程を含み、該工程が、 1.該有機酸水性粗溶液をII型強塩基性イオン交換樹脂と接触させて、有機酸イオンを該II型強塩基性イオン交換樹脂に吸着させる工程、 2.吸着された該有機酸イオンを、鉱酸水溶液を含む溶離液によって溶出させる工程、 を含む方法。 該有機酸が乳酸、コハク酸、又はグリコール酸である、請求項1記載の方法。 該鉱酸が塩酸である、請求項1又は2記載の方法。 該溶離液が、大気圧下で120℃以下の沸点を有する水溶性有機溶剤、但し、アルコールを除く、を10〜70体積%で含む、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。 該水溶性有機溶剤が、アセトニトリル、アセトン、及びテトラヒドロフランからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項4記載の方法。該予備的精製が、発酵により生産された有機酸を、該有機酸を含む有機酸含有粗液からイオン交換クロマトグラフィー法により分離する工程を含み、該イオン交換クロマトグラフィー法におけるイオン交換樹脂が両性イオン交換樹脂であり、且つ、溶離液が水である、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。 【課題】有機酸を高い効率で濃縮し、且つ、該濃縮された有機酸を高い効率で回収して、濃縮された有機酸水性溶液を得る方法を提供する。 【解決手段】有機酸の製造方法であって、発酵により生産された後に予備的精製に付された有機酸を含む、有機酸水性粗溶液を濃縮する工程を含み、該工程が、 1.該有機酸水性粗溶液をII型強塩基性イオン交換樹脂と接触させて、有機酸イオンを該II型強塩基性イオン交換樹脂に吸着させる工程、 2.吸着された該有機酸イオンを、鉱酸水溶液を含む溶離液によって溶出させる工程、 を含む方法。【選択図】図1


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