生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_皮膚状態の評価方法
出願番号:2012183108
年次:2014
IPC分類:G01N 33/50,G01N 33/53


特許情報キャッシュ

関井 由起子 木村 駿 岡野 由利 正木 仁 JP 2014041043 公開特許公報(A) 20140306 2012183108 20120822 皮膚状態の評価方法 ロート製薬株式会社 000115991 岩谷 龍 100077012 関井 由起子 木村 駿 岡野 由利 正木 仁 G01N 33/50 20060101AFI20140207BHJP G01N 33/53 20060101ALI20140207BHJP JPG01N33/50 QG01N33/53 D 12 1 OL 10 2G045 2G045AA24 2G045BA13 2G045BB02 2G045BB29 2G045CB09 2G045DA36 2G045FA29 2G045FB03 2G045FB15 2G045GC10 本発明は、肌質の評価方法に関する。詳しくは、被験者の肌質を標準的な肌質と比較したり、スキンケアによる肌質の変化を評価できる方法に関する。 健康的な皮膚を維持するには、皮膚の状態を的確に把握した上で、適切なスキンケアを実践することが何より重要である。そこで、従来、皮膚科医、又は美容専門家による問診等を通じて、皮膚の状態が評価されてきた。また、問診だけでは皮膚状態の客観的な評価が難しい場合もあることから、各種の分析機器を用いた測定により皮膚状態を示すパラメータを算出し、評価する手法も行われている。 このような皮膚状態を示すパラメータとしては、例えば、皮膚表面の鋳型(レプリカ)をとり、その表面形態をカメラで画像化して、皮膚表面形状パラメータを算出し、皮紋や皮丘の形態変化を定量的に算出する手法、角層の伝導度測定により角層水分量を測定する方法、経表皮水分蒸散量(TEWL)の測定により角層のバリア機能を評価する方法、不完全な角質細胞の存在比率を測定する方法などが知られている。 さらに、皮膚から採取した角層試料について、炎症性サイトカインとして知られているインターロイキン-1α(以下、「IL-1α」と略称する)の量、及びインターロイキン-1レセプターアンタゴニスト(以下、「IL-1RA」と略称する)の量を測定し、IL-1RA/IL-1αの値を、肌質を評価する指標とする方法も提案されている(特許文献1)。また、このIL-1RA/IL-1αの値を、皮膚疾患の程度を評価する指標とする方法も提案されている(特許文献2)。 このように角層試料中に含まれる因子を用いてパラメーターを算出する場合、採取される角層試料の量が評価対象部位や皮膚の状態等により変動することから、採取した角層量あたりの因子量となるように補正する必要がある。そこで、特許文献1及び2では、IL-1RA及びIL-1αを測定する角層抽出試料中の可溶性タンパク質濃度を、ブラッドフォード法で測定し、この可溶性タンパク質の量当たりのIL-1RA/IL-1αの値を、肌質や皮膚疾患の程度を評価する指標としている。 しかし、特許文献1及び2の方法では、IL-1RA、及びIL-1αの両方の存在量を測定しなければならず、手間がかかる。従って、より簡便で、かつより精度が高い肌質評価方法が求められている。特開平10−216106号公報特開平10−221340号公報 本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであり、簡便かつ精度よく肌質を評価できる方法を提供することを課題とする。 本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、肌質が低下している場合に、角層試料におけるタンパク質の量当たりのインターロイキン-1レセプターアンタゴニスト(IL-1RA)の量が多くなること、及びこのパラメーターを指標にすれば、皮膚の状態を非常に精度良く評価できることを見出した。 本発明は、この知見に基づき完成されたものであり、以下の方法を提供する。項1. 被験者から採取された角層試料におけるタンパク質の量に対するインターロイキン1レセプターアンタゴニストの量の比率を測定する工程を含む、肌質評価方法。項2. 肌質が炎症の程度である、項1に記載の方法。項3. 肌質が肌荒れの程度である、項1又は2に記載の方法。項4. 肌質が、肌老化の程度である、項1〜3のいずれかに記載の方法。項5. 肌質が、肌の光老化の程度である、項1〜4のいずれかに記載の方法。項6. タンパク質が分解されたタンパク質である、項1〜5のいずれかに記載の方法。項7. 分解されたタンパク質がアルカリで分解された分解物である、項6に記載の方法。項8. 角層試料におけるタンパク質の量を、オルトフタルアルデヒド法により測定する、項1〜7のいずれかに記載の方法。項9. 角層試料におけるインターロイキン1レセプターアンタゴニストの量を、エンザイムイムノアッセイ法により測定する、項1〜8のいずれかに記載の方法。項10. 角層試料におけるタンパク質の量の測定を、インターロイキン1レセプターアンタゴニストの量の測定を終えた角層試料を用いて行う、項1〜9のいずれかに記載の方法。項11. 被験者から採取された角層試料におけるタンパク質の量に対するインターロイキン1レセプターアンタゴニストの量の比率を肌質の指標とする、肌質評価方法。項12. 被験者から採取された角層試料におけるタンパク質の量に対するインターロイキン1レセプターアンタゴニストの量の比率を測定する工程を含む、肌質試験方法。 本発明方法は、角層試料のIL-1RAの量、及び角質のタンパク質の量の各測定値を利用するだけの簡便な方法でありながら、高精度で皮膚の状態を評価することができる。従って、本発明により、皮膚の状態を非常に的確に把握することができるようになり、適切なスキンケア方法の選択にも寄与し得る。角層試料中の角層タンパク質分解物の存在量に対するIL-1RAの存在量の比率と、経表皮水分蒸散量(TEWL)の値との相関を示す図である。 以下、本発明を詳細に説明する。 本発明の方法は、角層試料におけるタンパク質の量当たりのIL-1RA量、即ち、角層試料におけるタンパク質の量に対するIL-1RA量の比率を測定する工程を含む肌質(皮膚状態)評価方法、又は肌質(皮膚状態)試験方法である。角層試料 角層試料は、表皮角層を含む皮膚組織であればよい。皮膚の部位は特に限定されず、肌質評価が求められる部位(肌質評価対象部位)であればよい。例えば、顔(頬や口唇等)、手、腕、足などの角層試料が好適である。肌の露光部(例えば、顔面の頬部や手の甲)の角層試料は、後述する肌の光老化の程度を評価するのに適している。 角層試料は、例えば、テープストリッピング法、擦過法などの公知の角層採取方法で採取できる。採取した角層試料の水可溶性画分を、IL-1RAの量の測定に供するのが好ましい。 テープストリッピング法は周知の方法であるが、1例を説明すれば、粘着テープの粘着剤層を皮膚の表面に載せ、通常、軽く押さえた後、テープを剥がせばよい。粘着テープの種類は特に限定されず、市販のものを利用すればよい。剥がしたテープには角層組織が付着しているので、テープを細断した後、必要に応じて、水性液に約1〜120分間浸漬して、皮膚組織から水可溶性画分を抽出するのが好ましい。 水性液の種類は特に限定されず、水、生理食塩水、リン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、PBS緩衝液、TRIS緩衝液、HEPES緩衝液、CHAPS緩衝液のような緩衝液を使用できる。緩衝液はpH約3〜10のものを使用すればよい。 水性液には、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、硬化ヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンモノヤシ油脂肪酸グリセリル、エトキシ化アルキルフェノール(ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(10)イソオクチルシクロヘキシルエーテル、ポリオキシエチレン(9)ノニルフェニルエーテル等)のような非イオン性界面活性剤等の界面活性剤を添加してもよく、これにより、一層効率よく水可溶性画分を抽出できる。 また、浸漬と共に、水性液を撹拌してもよい。また、浸漬、又は撹拌に加えて、約1〜30分間の超音波処理をすることもできる。これらにより、一層効率よく水可溶性画分を抽出できる。 水可溶性画分抽出時の水性液の温度は常温ないしは室温とすることができるが、それより低温(例えば、約0〜5℃)で行えば、水可溶性画分中のタンパク質などの成分の変性を抑えることができる。 また、擦過法などの他の方法により皮膚から採取した角層試料についても、上記と同様にして、水可溶性画分を抽出することができる。IL-1RAの量 インターロイキン-1(IL-1)は、主として単球・マクロファージが産生するサイトカインで、等電点の違いによりIL-1αとIL-1βに分類される。生体中のヒトIL-1の約90%はβである。IL-1αとIL-1βの一次構造上の同一性は約26%に過ぎないが、その特異的レセプターは共通であることから、生理機能上の役割は同じと考えられている。なお、生体内では、それぞれ前駆体proIL-1α、proIL-1βとして遺伝子発現し、プロセッシングを受けて活性型IL-1α、IL-1βとなる。これまで、皮膚においても表皮ケラチノサイトでproIL-1α、proIL-1βの発現が確認されているが、α型はproIL-1αからIL-1αに変換されるものの、β型はproIL-1βから活性型IL-1βへと変換する酵素が欠損しているために、プロセッシングを受けずproIL-1βのまま存在するとされてきた。しかし、近年の報告で、角層キモトリプシン様プロテアーゼにより活性型IL-1βへの変換が起こるとも言われているが、テープストリップ法を用いたIL-1関連サイトカインの検出においては、IL-1αが検出可能であったのに対しIL-1βは検出限界以下であったとの報告もなされている。そして、IL-1の最も重要な働きはヘルパーT細胞のIL-2産生を誘導し、IL-2を介してT細胞の分化及び増殖を促進し、生体防御に寄与することである。また、IL-1の発熱作用や滑膜細胞におけるPGE2およびコラゲナーゼの産生誘導、線維芽細胞増殖作用は、生体の炎症過程と密接に関連している。 IL-1レセプターに対するアンタゴニスト(即ち、IL-1RA)の量は、リンパ球増殖反応の阻害等を指標としたバイオアッセイ法、IL-1RAに対する抗体との反応性に基づくエンザイムイムノアッセイ法、ラジオイムノアッセイ法、ウエスタンブロッティング法等の方法を用いて測定できる。操作が簡便で、かつ感度が高い点で、抗体を用いるエンザイムイムノアッセイ法が好ましい。エンザイムイムノアッセイ法は、例えば、市販のキットであるIL-1 Receptor Antagonist, Human, Duoset Kit, DY280(R&D SYSTEMS)などを用いて行うことができる。 IL-1RAの測定値は、通常、測定に供した水可溶性画分に含まれるIL-1RAの存在量に換算したものであるが、濃度であってもよい。即ち、本発明における「IL-1RA量」は、測定に供した水可溶性画分に含まれるIL-1RAの存在量(重量など)、及びIL-1RAの濃度の何れであってもよい。タンパク質の量 角層試料に含まれるタンパク質の量は、公知の方法で測定できる。このような公知の方法として、例えば、波長280nmにおけるタンパク質中の芳香族アミノ酸に由来する吸収を測定する紫外線吸収法、色素クーマシーブルーがタンパク質と結合する際の吸光度の変化を測定するブラッドフォード法、フェノール試薬とタンパク質が結合する際の吸光度の変化を測定するローリー法、ビシンコニン酸と銅の錯体がタンパク質と結合する際の吸光度の変化を測定するビシンコニン酸(BCA)法、ペプチド結合と2価銅イオンとの錯体の吸収ピークの吸光度を測定するビューレット法、電気泳動バンドのシグナル強度を測定する電気泳動法、タンパク質と銅イオンとの結合に基づく吸光度を測定する2-D Quant Kitを用いる方法、タンパク質の(又はタンパク質の分解により生成する)第1級アミンとO-フタルアルデヒド(OPA)との結合による蛍光強度を測定するオルトフタルアルデヒド(OPA)法、タンパク質を硫酸で分解することにより窒素をアンモニウムイオンとして定量するケルダール法、タンパク質のジスルフィド結合を還元し、次いで塩酸でアミド結合を加水分解して得られる遊離アミノ酸をニンヒドリンと反応させるニンヒドリン法、タンパク質を燃焼させて得られる窒素ガスをガスクロマトグラフィーにより定量するデュマ法などが挙げられる。 本発明方法では、肌質と、角層試料におけるタンパク質の量に対するIL-1RAの量の比率との相関が良好になる点で、角層試料におけるタンパク質の分解物を定量することが好ましい。例えば、OPA法、ケルダール法、ニンヒドリン法、デュマ法などがタンパク質分解物を定量できる方法であり、OPA法が特に好ましい。タンパク質分解物は、アルカリ又は酸で分解されたものであってもよく、タンパク質分解酵素(例えば、ケラチナーゼ)で分解されたものであってもよく、破砕機等で物理的に分解されたもの等であってもよいが、肌質と、角層試料におけるタンパク質の量に対するIL-1RAの量の比率との相関が一層良好になる点で、アルカリ又は酸で分解されたタンパク質が好ましく、水酸化カリウムなどのアルカリで加水分解した後、塩酸などの酸で中和されたタンパク質分解物がより好ましい。 また、タンパク質、及びタンパク質分解物の何れを定量する場合も、角層試料をそのまま定量に供してもよく、一旦乾燥させた後に定量に供してもよい。好ましくは、角層試料におけるタンパク質又はタンパク質分解物の量の測定は、インターロイキン1レセプターアンタゴニストの量の測定を終えた角層試料(好ましくは、一旦乾燥させた角層試料)を用いて行うのがよい。 本発明における「タンパク質の量」は、測定に供した角層試料に含まれるタンパク質又はタンパク質分解物の存在量(重量など)、及びタンパク質又はタンパク質分解物の濃度の何れであってもよい。測定法によって使用し易い値を用いればよい。肌質 本発明において「肌質」は、安定肌又は肌荒れの程度を指す。肌荒れは一般に炎症により生じるので、「肌質」は炎症の程度と捉えることもできる。 また、表皮の最外層を構成する角質層は、角質細胞が層をなし、それらの細胞間に細胞間脂質や天然保湿成分が存在している。これにより、外部からの異物の進入を防ぎ、かつ水分の蒸発を防いでいる(バリア機能)。健常な肌(安定肌)では、角質細胞が整然と並び、細胞間に細胞間脂質及び天然保湿物質が存在して、キメが整った状態であるが、肌荒れないしは炎症が起こると、角質細胞間の細胞間脂質の量が少なくなり、肌のキメが乱れて、バリア機能が低下する。後述する実施例に示す通り、角層試料におけるタンパク質の量当たりのIL-1RAの量は、肌のバリア機能の指標となる経表皮水分蒸散量(TEWL)とよく相関する。従って、「肌質」は、皮膚のバリア機能の程度、肌のキメの整い方の程度も包含する。 また、いわゆる敏感肌では、安定肌より、角質間の細胞間脂質の量が少なくなり、肌のキメが乱れて、バリア機能が低下し、刺激の閾値が下がり刺激を感じやすい肌になっている。従って、「肌質」は、敏感肌の程度も包含する。 また、「肌質」は肌の老化の程度も包含し、原因別にみれば、光老化、乾燥老化、酸化老化、皮膚のタンパク質の糖化による老化などが挙げられる。これらは、皮膚内部の微弱炎症の蓄積により進行すると考えられる。 本発明における「肌質」は、皮膚医学における「正常」又は「異常」の程度を除く概念である。工程 本発明の肌質評価方法は、角層試料におけるタンパク質の量に対するIL-1RA量の比率を測定する工程を含む。通常、角層試料におけるタンパク質の量、及びIL-1RAの量をそれぞれ測定すればよいが、タンパク質の量当たりのIL-1RAの量を直接求めてもよい。 本発明方法では、角層試料におけるタンパク質の量に対するIL-1RA量の比率を肌質の指標にする。タンパク質の量当たりのIL-1RAの量の値が高値であることは、肌質が悪いことを意味する。 本発明方法は、被験角層試料におけるタンパク質の量に対するIL-1RA量の比率が基準値と比べて高い場合に、基準よりも肌質が悪い(肌荒れの程度が大きい、炎症の程度が大きい、肌のキメが乱れている、肌のバリア機能が低下している、老化の程度が大きい等)と評価、判定、又は判断する工程を含むことができる。 基準値は、被験者の角層試料採取部位と同じ部位から採取した、被験者以外の角層試料の測定値とすることができる。被験者以外の測定値は、被験者について測定するより前に測定した値であってもよく、後に測定した値であってもよい。基準値は、複数人の測定値の平均とするのが好ましく、これにより、被験者の肌質を客観的に評価できる。また、被験者と同年代(好ましくは同性)の複数人の測定値の平均値と、被験者の測定値とを比較することにより、被験者の肌年齢を評価、判定、又は判断することができる。 また、本発明方法では、被験者にスキンケアを施す前の測定値を基準値とし、スキンケアを施した後の測定値をこの基準値と比較することにより、スキンケアが有効であったか否かを評価、判定、又は判断することもできる。具体的には、スキンケアを施す前に角層試料を採取した部位と同一部位又は近傍部位から、スキンケアを施した後に角層試料を採取し、タンパク質量当たりのIL-1RA量の値を測定すればよい。また、皮膚にレーザー治療等を施した被験者において、治療直後の測定値を基準値とし、それから一定期間後の測定値をこの基準値と比較することにより、肌状態の回復度を評価、判定、又は判断することもできる。 以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。(1)角層試料の採取 被験者(20代〜60代の男性43名)の顔面の頬部から、市販のセロハンテープ(登録商標)(ニチバン製)を用いて、角層テープストリッピング法により角層試料を採取した。角層採取面に触れないように細心の注意を払いながら、各テープの大きさが15mm×20mmとなるように余分な幅をカットし、粘着剤層が内側を向くように丸めてマイクロチューブに入れ、角層抽出液(0.05%TritonX−100を含むPBS(-)溶液)400μlに、テープ全体が浸るようにして浸漬した。 次いで、氷上にて、Twin Mixer TM-282(アズワン製)を用いて2時間アジテーションを行った。その後、各サンプルを遠心分離にかけ(10,000 rpm、5分間)、上清を採取して、角層抽出サンプルとした。この角層抽出サンプルを前述の角層抽出液で3倍に希釈したものを、後述のエンザイムイムノアッセイ法(ELISA法)によるIL-1RAの測定に供した。また、IL-1RA測定後に、角層抽出液で抽出した後のテープに付着した角層サンプルをタンパク質加水分解物の定量に供した。 また、ブランクとして、角層を付着させる前のテープについても同様の操作を行い、ブランクサンプルを得た。(2)角層試料におけるIL-1RAの存在量の測定 IL-1RAの測定には、IL-1 Receptor Antagonist, Human, Duoset Kit, DY280(R&D SYSTEMS)を用いた。先ず、コーティング処理として、ELISAプレート(H Type)の各ウェルに10μg/mLの捕捉抗体(マウス抗ヒトIL-1RAをPBS(-)を用いて希釈)を100μLずつ加えて、一晩常温にてインキュベートした。翌日、捕捉抗体を捨て、キット付属のWash bufferを1ウェルあたり200μL加え、3回洗浄した。次いで、各ウェルに、キット付属の希釈用試薬(1%BSAを含むPBS)を150μLずつ添加し、室温で1時間インキュベートしてブロッキングを行ない、その後、前記と同様にしてWash bufferで洗浄した。 次いで、ブランクサンプル及び角層抽出サンプルを、別々のウェルに100μLずつ加え、室温で2時間インキュベートして、1次反応を行った後、再度Wash bufferで3回洗浄を行った。続いて、各ウェルに100ng/mLの検出用抗体(ビオチン標識ヤギ抗ヒトIL-1RAを希釈用試薬を用いて希釈)を100μLずつ添加し、室温で2時間インキュベートして2次反応を行い、再度Wash bufferで3回洗浄を行った。続いて、キットに付属のストレプトアビジン-HRP溶液を希釈用溶液を用いて200倍希釈し、各ウェルに100μLずつ添加し、室温にて遮光下で20分間インキュベートを行い、3次反応を行った後に、再度Wash bufferで3回洗浄を行った。 酵素反応として、各ウェルに100μLの基質溶液(Color Reagent AとColor Regent Bを1:1の割合で混合したもの。いずれもR&D SYSTEMS製)を加え、室温にて遮光下で20分間インキュベートを行った。その後、各ウェルに50μLの反応停止液(2N H2SO4)を加えた。最後に、450nmで吸光度の測定を行い、IL-1RAの存在量を算出した。角層抽出サンプルの吸光度からブランクサンプルの吸光度を差し引くことで、補正を行った(3)角層試料におけるタンパク質分解物の存在量の測定 前述のIL-1RA量の測定を終えた角層サンプルを、乾燥させ、タンパク質分解物の定量に供した。 先ず、検量線作成用にタンパク質分解物の存在量を測定したいテープと同じ大きさのテープを1.5mLエッペンチューブに入れた。10mg/mLのBSA水溶液を、8M KOHを用いて0、100、200μg/mLに希釈調製し、このBSA溶液を各々400μLずつエッペンチューブに添加した。 続いて、IL-1RA量の測定を終えた角層サンプルの乾燥物にも、各々400μLの8M KOHを添加した。 検量線作成用の各濃度のBSA溶液及び角層サンプル溶液を、100℃で8時間にわたり加水分解した。この際、エッペンチューブの蓋が飛ぶ恐れがあったため、エッペンチューブの蓋と加熱機の蓋をしっかりと閉じるように注意を払った。加熱後、各エッペンチューブを氷上に移し、サンプルが十分に冷えたことを確認してから、遠心分離(10,000rpm、5min)にかけた。続いて5M HClを600μLずつ加え、Voltexにより十分に攪拌を行って中和させた。その後、遠心分離(10,000rpm、5min)を行った。 角層サンプル溶液、及び検量線作成用BSA溶液サンプルより採取した上清を96ウェルプレートの各ウェルに100μLずつ入れ、それにオルトフタルアルデヒド(OPA)試薬を50μLずつ加えて、各タンパク質分解物のアミノ基を検出した。その後、励起波長:365nm、蛍光波長:450nmで蛍光の測定を行い、角層試料におけるタンパク質分解物の存在量を算出した。(4)経表皮水分蒸散量(TEWL)の測定 上記のようにして角層試料を採取した各被験者の角層採取部位の付近について、経表皮水分蒸散量の測定を行った。具体的には、被験者の顔面(頬部)のTEWLを測定した。TEWLは、Vapo Scan AS-VT100RS(株式会社アサヒテクノラボ製)を、添付の取扱説明書に順じて使用することで測定を行った。(5)角層試料におけるIL−1RA/角層タンパク質分解物の値と、TEWL値との相関評価 被験者(43名)について、角層試料中タンパク質の量当りのIL-1RAの量を横軸に、そしてTEWLの値を縦軸にとり、プロットしたグラフを図1に示す。このグラフから、相関係数のt検定で有意性の検定を行ったところ、p<0.01で有意であることが判明した(y=0.2153x-10.441、r=0.405)。 TEWLは、肌荒れ時のバリア機能を表す皮膚生理パラメーターであり、TEWL値が高いことは表皮からの水分蒸散量が多く、角層のバリア機能が低下していることを示す。即ち、老化や紫外線等の原因により皮膚が炎症を起こし、肌が荒れてバリア機能が低下していることを、このTEWL値から読み取ることができる。本試験例では露光部である顔面の頬部からの角層試料を採取して試験を行っており、本実施例で測定されたTEWL値は光老化を一因とした皮膚の炎症症状を示していると考えられる。 図1から明らかなように、角層試料におけるタンパク質の量に対するIL-1RAの量の比率は、TEWL値と高い正の相関関係を示した。このことは、角層試料におけるタンパク質の量に対するIL-1RAの量の比率を指標とする本発明の肌質評価方法が、皮膚の状態(肌質)を非常に高い精度で評価できる方法であることを示している。 本発明方法は、簡便な方法でありながら、高精度で皮膚の状態を評価して適切なスキンケア方法の選択にも寄与し得るため、実用性の高い方法である。 被験者から採取された角層試料におけるタンパク質の量に対するインターロイキン1レセプターアンタゴニストの量の比率を測定する工程を含む、肌質評価方法。 肌質が炎症の程度である、請求項1に記載の方法。 肌質が肌荒れの程度である、請求項1又は2に記載の方法。 肌質が、肌老化の程度である、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。 肌質が、肌の光老化の程度である、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。 タンパク質が分解されたタンパク質である、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。 分解されたタンパク質がアルカリで分解された分解物である、請求項6に記載の方法。 角層試料におけるタンパク質の量を、オルトフタルアルデヒド法により測定する、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。 角層試料におけるインターロイキン1レセプターアンタゴニストの量を、エンザイムイムノアッセイ法により測定する、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。 角層試料におけるタンパク質の量の測定を、インターロイキン1レセプターアンタゴニストの量の測定を終えた角層試料を用いて行う、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。 被験者から採取された角層試料におけるタンパク質の量に対するインターロイキン1レセプターアンタゴニストの量の比率を肌質の指標とする、肌質評価方法。 被験者から採取された角層試料におけるタンパク質の量に対するインターロイキン1レセプターアンタゴニストの量の比率を測定する工程を含む、肌質試験方法。 【課題】簡便かつ精度よく肌質を評価できる方法を提供する。【解決手段】被験者から採取された角層試料におけるタンパク質の量に対するインターロイキン1レセプターアンタゴニストの量の比率を測定する工程を含む、肌質評価方法。【選択図】図1


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