生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_繊維の抽出方法
出願番号:2012177566
年次:2014
IPC分類:C08B 15/08,C12N 1/20,C12N 9/16,C12N 9/88


特許情報キャッシュ

赤井 政郎 田畑 和文 JP 2014034664 公開特許公報(A) 20140224 2012177566 20120809 繊維の抽出方法 トヨタ紡織株式会社 000241500 小島 清路 100094190 萩野 義昇 100117134 平岩 康幸 100151644 赤井 政郎 田畑 和文 C08B 15/08 20060101AFI20140128BHJP C12N 1/20 20060101ALN20140128BHJP C12N 9/16 20060101ALN20140128BHJP C12N 9/88 20060101ALN20140128BHJP JPC08B15/08C12N1/20 DC12N1/20 FC12N1/20 ZC12N9/16C12N9/88 3 OL 15 4B050 4B065 4C090 4B050CC01 4B050DD02 4B050LL10 4B065AA01X 4B065CA27 4B065CA31 4B065CA54 4B065CA60 4C090AA04 4C090AA07 4C090BC01 4C090CA42 本発明は、繊維の抽出方法に関する。更に詳しくは、本発明は、環境負荷が少なく、短時間で植物から繊維を抽出することができる繊維の抽出方法に関する。 従来より、植物から得られる天然繊維は、様々な分野において利用されており、環境保護の観点からも注目されている。そして、植物からの効率の良い繊維の抽出方法が検討されている。 具体的な繊維の抽出方法としては、例えば、採取した植物を、池や川に浸漬し、繊維を結合するペクチン等の物質を分解させる、いわゆるレッティング処理(解繊処理)によって繊維を抽出する伝統的な技法が知られている。更には、採取した植物を、特定の酵素液に浸漬し、繊維を結合するペクチン等の物質を分解させる方法が知られている。尚、ペクチン等を分解する酵素としては、特定のポリガラクツロナーゼをコードする遺伝子を含有する組換えベクターを含む形質転換体等が知られている(特許文献1)。特開2001−258577号公報 上述のように、池や川においてレッティング処理を行う場合には、繊維の抽出に3〜4週間程度の時間を要する。そのため、更なる時間効率の向上が求められているのが現状である。 また、特許文献1を利用してレッティング処理を行う場合には、環境負荷が大きく、排水処理に多大なコストを要するという問題がある。 本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、環境負荷が少なく、短時間で植物から繊維を抽出することができる繊維の抽出方法を提供することを目的とする。 上記問題を解決するために、請求項1に記載の発明は、植物から繊維を抽出するための繊維の抽出方法であって、 植物に対して、微生物の培養液又は微生物の培養液由来の液による処理を行う工程を備えており、 前記微生物は、クレブシエラ属及びエンテロバクター属からなる群より選ばれた少なくとも1種であることを要旨とする。 請求項2に記載の発明は、請求項1記載において、前記植物が、靱皮植物であることを要旨とする。 請求項3に記載の発明は、請求項1又は2記載において、前記微生物は、前記クレブシエラ属及び前記エンテロバクター属からなる群より選ばれた少なくとも2種以上であることを要旨とする。 本発明の繊維の抽出方法によれば、植物に、特定の微生物の培養液又は微生物の培養液由来の液による処理を行う工程を備えているため、環境負荷が少なく、短時間で植物から繊維を抽出することができる。 また、植物が、靱皮植物である場合には、効率よく靱皮繊維を抽出することができる。 更に、微生物が、クレブシエラ属及びエンテロバクター属からなる群より選ばれた少なくとも2種以上である場合には、植物から繊維をより短時間で抽出することができる。各処理液と、試験片の残存率との関係を表すグラフである。浸漬処理を行った期間と、試験片の残存率との関係を表すグラフである。 以下、本発明を詳細に説明する。 本発明の繊維の抽出方法は、植物から繊維を抽出するための繊維の抽出方法であって、植物に対して、微生物の培養液又は微生物の培養液由来の液による処理を行う工程を備えている。 本発明において、繊維の抽出に用いられる植物は特に限定されないが、例えば、ケナフ、ジュート、雁皮、三椏、及び楮等の靱皮植物、マニラ麻、サイザル麻、パイナップル、バナナ、ココヤシ、トウモロコシ、サトウキビ、バガス、ヤシ、パピルス、葦、エスパルト、サバイグラス、麦、稲、竹、ひょうたん、へちま、トチュウ、各種針葉樹(スギ及びヒノキ等)、広葉樹及び綿花等を挙げることができる。特に、本発明においては、この植物を、靱皮繊維の得られる靱皮植物(ケナフ、ジュート、雁皮、三椏、及び楮等)とすることができる。尚、これらの植物は、1種のみ用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。 また、上記ケナフは、木質茎を有し、アオイ科に分類される植物である。このケナフには、学名におけるhibiscus cannabinus及びhibiscus sabdariffa等が含まれ、通称名における紅麻、キューバケナフ、洋麻、タイケナフ、メスタ、ビムリ、アンバリ麻及びボンベイ麻等が含まれる。 更に、上記ジュートには、黄麻(コウマ、Corchorus capsularis L.)、及び、綱麻(ツナソ)、シマツナソ並びにモロヘイヤ、を含む麻及びシナノキ科の植物を含むものとする。 また、繊維を抽出する際に用いる植物の部位は特に限定されず、木質部、非木質部、葉部、茎部及び根部等の植物体を構成するいずれの部位であってもよい。特に、繊維を多く含む部位を選択して用いることが好ましい。尚、用いられる部位は、特定の部位のみであってもよいし、2ヶ所以上の異なる部位の組み合わせであってもよい。 本発明における繊維の抽出方法では、上述の植物に対して、微生物の培養液又は微生物の培養液由来の液による処理が行われる。 具体的には、微生物の培養液又は微生物の培養液由来の液に、植物を浸漬し、繊維を結合するペクチン等の物質を分解させるレッティング処理(解繊処理)が行われる。この処理において、植物は、培養液等に含まれる、微生物を培養した際に生じた酵素を含む分泌液等の作用によって、ペクチン等で結着されている繊維同士が解されると考えられる。 尚、この工程においては、必ずしも繊維同士が完全にばらばらに解された状態に至る必要はなく、繊維同士の結合が緩み容易に分離可能な状態となればよい。 上記培養液由来の液としては、例えば、(1)微生物の培養液の希釈物、(2)微生物の培養液に対して遠心分離や濾過を行い、微生物を分離除去して得られる培養上清液、(3)培養上清液の希釈物等が挙げられる。 また、本発明に用いられる微生物の培養液及びその培養液由来の液のなかでも、植物から繊維をより短時間で抽出することができるという観点から、上記培養上清液やその希釈物が好ましく、培養上清液の希釈物が特に好ましい。 尚、培養液や培養上清液を希釈する際の濃度は特に限定されないが、具体的には、例えば、原液(希釈前)の濃度を100体積%とした場合に、希釈後の濃度が5〜50体積%となるように希釈することが好ましい。 上記微生物は、クレブシエラ属(Klebsiella)及びエンテロバクター属(Enterobacter)からなる群より選ばれた少なくとも1種である。特に、植物から繊維をより短時間で抽出することができるという観点から、上記微生物が、クレブシエラ属及びエンテロバクター属からなる群より選ばれた少なくとも2種以上であることが好ましく、3種以上であることがより好ましい。この際、2種以上の微生物は、クレブシエラ属のみから選ばれてもよいし、エンテロバクター属のみから選ばれてもよいし、クレブシエラ属及びエンテロバクター属の両者から選ばれてもよい。 尚、2種以上の微生物が用いられる場合には、微生物の培養液又は微生物の培養液由来の液として、通常、1種の微生物ごとに培養を行い、それぞれの培養液や培養液由来の液を混合したものが用いられる。 上記エンテロバクター属の微生物としては、例えば、 配列番号1で示されるEnterobacter sp.、 配列番号2で示されるEnterobacter sp.、 Enterobacter cloacae、 Enterobacter cowanii、 Enterobacter sp. MTQ8、 Enterobacter sp. 343(2010)、 Enterobacter sp. 266(2010)、 Enterobacter sp. 597(2010)、 Enterobacter sp. NSJ−4、 Enterobacter sp. 2J−3、 Enterobacter sp. CTSP29、 Enterobacter sp. G−2−10−2、 Enterobacter sp. FMB−1、 Enterobacter sp. JS−1、 Enterobacter sp. MZ_1、 Enterobacter sp. AIMST 4 P6.1、 Enterobacter sp. s172、 Enterobacter sp. s232、 Enterobacter sp. 1360、 Enterobacter sp. N−5−10、 Enterobacter endosymbiont of Metaseiulus occidentalis、 Enterobacter sp. F4−1、 Enterobacter sp. ATCC 29918、 Enterobacter sp. DRSBII7、 Enterobacter pyrinus、 Enterobacter sp. M.D.NA5−6、 Enterobacter sp. M.D.NA5−2、 Enterobacter sp. M.D.NA3−3、 Enterobacter sp. 247BMC、 Enterobacter sp. INBio3010B、 Enterobacter cancerogenus、 Enterobacter sp. WR35、 Enterobacter sp. JDM−19、 Enterobacter sp. dB(2011)、 Enterobacter sp. INBio2959B、 Enterobacter sp. PR5、 Enterobacter sp. PR4、 Enterobacter sp. PR3、 Enterobacter sp. PR2、 Enterobacter sp. PR1、 Enterobacter sp. V16、 Enterobacter sp. V15、 Enterobacter aerogenes、 Enterobacter amnigenus、 Enterobacter gergoviae、 Enterobacter hormaechei等が挙げられる。 これらのなかでも、配列番号1で示されるEnterobacter sp.、配列番号2で示されるEnterobacter sp.、Enterobacter cloacae、Enterobacter cowanii、Enterobacter sp. MTQ8、Enterobacter sp. 343(2010)、Enterobacter sp. 266(2010)、Enterobacter sp. 597(2010)、Enterobacter sp. NSJ−4、Enterobacter sp. 2J−3、Enterobacter sp. CTSP29、Enterobacter sp. G−2−10−2、Enterobacter sp. FMB−1、Enterobacter sp. JS−1が好ましい。 また、上記クレブシエラ属の微生物としては、例えば、 配列番号3で示されるKlebsiella sp.、 Klebsiella sp. BR3357、 Klebsiella sp. SHN−1、 Klebsiella sp. ST9B、 Klebsiella sp. ICBR 046、 Klebsiella pneumoniae、 Klebsiella sp. B12、 Klebsiella sp. III、 Klebsiella sp. IX、 Klebsiella sp. pneumoniae 342、 Klebsiella sp. ICB572、 Klebsiella variicola、 Klebsiella sp. INBio3016D、 Klebsiella sp. ICB390、 Klebsiella sp. VITPGP5AA、 Klebsiella sp. VITPGP4A、 Klebsiella sp. 2009I3、 Klebsiella sp. 2009I2、 Klebsiella sp. TD IW 18、 Klebsiella sp. BJQ−A4、 Klebsiella sp. Gc−7−c、 Klebsiella sp. FeL29、 Klebsiella sp. p4h−3−u8f、 Klebsiella sp. p4h−2−u8f、 Klebsiella sp. s30−5−u8f、 Klebsiella sp. variicola At−22、 Klebsiella sp. 8.1T、 Klebsiella sp. I−F7、 Klebsiella sp. YHB、 Klebsiella sp. pt5、 Klebsiella sp. A18−1、 Klebsiella sp. P4、 Klebsiella sp. P3、 Klebsiella sp. P2、 Klebsiella sp. HL1、 Klebsiella sp. TS27N1、 Klebsiella sp. AL050511_01、 Klebsiella sp. AL060224_03、 Klebsiella sp. CRLS061a、 Klebsiella sp. CRPV0610、 Klebsiella sp. CRLS064、 Klebsiella sp. CRLS0622、 Klebsiella sp. P0643、 Klebsiella sp. CRLS069a、 Klebsiella sp. CRLS066、 Klebsiella sp. P0640、 Klebsiella sp. P0638、 Klebsiella sp. PV069b、 Klebsiella sp. CRLS0620a、 Klebsiella sp. TS14N1、 Klebsiella sp. GYPB15、 Klebsiella sp. 2009I10、 Klebsiella sp. D3S、 Klebsiella sp. D1、 Klebsiella sp. pneumoniae subsp. pneumoniae MGH 78578、 Klebsiella sp. pneumoniae subsp. pneumoniae NTUH―K204、 Klebsiella oxytoca等が挙げられる。 これらのなかでも、配列番号3で示されるKlebsiella sp.、Klebsiella sp. BR3357、Klebsiella sp. SHN−1、Klebsiella sp. ST9B、Klebsiella sp. ICBR 046、Klebsiella pneumoniae、Klebsiella sp. B12、Klebsiella sp. III、Klebsiella sp. IX、Klebsiella sp. pneumoniae 342が好ましい。 尚、上記各微生物の同定は、下記の16SrDNA解析によるものである。 <16SrDNA解析> 10F(5’−GTTTGATCCTGGCTCA−3’)と800R (5’−TACCAGGGTATCTAATCC−3’)のプライマーセットを用い、コロニーダイレクトPCRにより16SrDNAを増幅する。そして、増幅したcDNA断片の塩基配列解析後、DNA Data Bank of Japan(DDBJ, Mishima, Japan)のFASTAによる相同性解析から微生物種を同定する。 上記微生物の培養方法は特に限定されない。例えば、クレブシエラ属やエンテロバクター属の微生物に一般的に適用されている方法によって培養することができる。 培養の際に用いられる培地は特に限定されず、例えば、ペクチンを加えたM9培地、マッコンキー寒天培地、LB培地等を用いることができる。 また、培養温度は特に限定されないが、20〜40℃が好ましく、より好ましくは25〜35℃である。 更に、培養時間は特に限定されないが、6〜48時間が好ましく、より好ましくは8〜24時間である。 また、培養の際のpHは、pH5〜9が好ましく、より好ましくはpH6.5〜7.5である。 尚、微生物の増殖性は、分光光度計等により測定される吸光度によって確認することができる。本発明においては、この分光光度計による測定値(OD600)が、0.4以上の培養液を用いるものとすることができる。 また、この工程において、植物を、微生物の培養液又は微生物の培養液由来の液に浸漬処理する時間は特に限定されず、植物の種類や、微生物の種類等によって適宜調整される。 通常、この浸漬処理時間は、7〜14日間(特に7〜10日間)とすることができる。 また、浸漬処理を行う際における、微生物の培養液又は微生物の培養液由来の液の使用量は、この処理に用いる植物の重量により適宜選択される。具体的には、植物の重量(g)に対して、1〜500倍(特に5〜100倍)の液量(ml)とすることが好ましい。 更に、浸漬処理を行う際における微生物の培養液又は微生物の培養液由来の液の温度は特に限定されないが、20〜45℃が好ましく、より好ましくは25〜35℃である。 本発明の抽出方法は、上記微生物の培養液又は微生物の培養液由来の液による処理を行う工程以外にも他の工程を備えていてもよい。 上記他の工程としては、例えば、上記微生物の培養液又は微生物の培養液由来の液による処理が行われた植物の繊維(レッティング処理された植物の繊維)を回収する工程、回収された植物の繊維を水等により洗浄する工程、回収又は洗浄された植物の繊維を乾燥する工程等が挙げられる。 以下、実施例により本発明を具体的に説明する。[1]微生物の培養 (1−1)エンテロバクター属(Enterobacter sp.)の培養 配列番号1(表1参照)に示す微生物(Enterobacter sp.)を、以下の基本培地(200ml)により、24時間、30℃で培養を行い、培養液Aを得た。尚、この培養液Aにおける微生物の増殖性を分光光度計(株式会社島津製作所製、型名「BioSpec−mini」)で解析したところ、OD600:0.4以上であった。 <基本培地> 最少培地(M9 Minimal Medium)にペクチンを加えたPectin−M9培地(0.6%Na2HPO4、0.3%KH2PO4、0.05%NaCl、0.1%NH4Cl、0.2%Pectin、0.00147%CaCl2・2H2O、0.05%MgSO4・7H2O)を基本培地とした。 (1−2)エンテロバクター属(Enterobacter sp.)の培養 配列番号2(表2参照)に示す微生物(Enterobacter sp.)を、上記(1−1)と同様の基本培地により、24時間、30℃で培養を行い、培養液Bを得た。尚、この培養液Bにおける微生物の増殖性を、上記(1−1)と同様にして解析したところ、OD600:0.4以上であった。 (1−3)クレブシエラ属(Klebsiella sp.)の培養 配列番号3(表3参照)に示す微生物(Klebsiella sp.)を、上記(1−1)と同様の基本培地により、24時間、30℃で培養を行い、培養液Cを得た。尚、この培養液Cにおける微生物の増殖性を、上記(1−1)と同様にして解析したところ、OD600:0.4以上であった。 尚、上記の各微生物(配列表参照)は、下記に示す16SrDNA解析により行われたものである。 <16SrDNA解析> 10F(5’−GTTTGATCCTGGCTCA−3’)と800R (5’−TACCAGGGTATCTAATCC−3’)のプライマーセットを用い、コロニーダイレクトPCRにより16SrDNAを増幅した。そして、増幅したcDNA断片の塩基配列解析後、DNA Data Bank of Japan(DDBJ, Mishima, Japan)のFASTAによる相同性解析から微生物種を同定した。[2]レッティング処理試験(1) まず、下記の処理液a〜dを用意した。 処理液a:上記(1−1)の培養液A(菌体+分泌酵素) 処理液b;上記(1−1)の培養液Aを遠心分離して、微生物を分離除去した培養上清液(分泌酵素のみ) 処理液c;上記(1−1)の培養液Aを遠心分離して微生物のみを回収し、回収した微生物を上記(1−1)において用いたM9培地に新たに懸濁した液(菌体のみ) 処理液d;水道水 次いで、上記の処理液a〜dを用いて、植物材料[ケナフ(Hibiscus cannabinus cv. EV41)]に対して、下記の条件にて浸漬処理(レッティング処理)を行い、繊維の解れ具合を目視にて評価した。その結果を表4に示す。 <処理条件> 処理液(温度;25℃)が100ml入ったガラス管に、試験片[ケナフのコアと靭皮部を分離し、70×20mmに裁断したケナフ靱皮(1枚の重量;0.9〜1.0g)]を2枚入れて、10日間浸漬させる(外温;25℃)。 <判断基準> 各試験区から試験片を取り出し、繊維の解れ具合を目視と触診にて確認し、以下の基準で判断した。 ◎;十分に解れている ○;解れている △;わずかに解れている ×:解れていない 表4の結果によれば、上記(1−1)の培養液からなる処理液a(実施例1)を用いた場合、及び、その上清液である処理液b(実施例2)を用いた場合においては、十分なレッティング処理効果が得られた。特に、処理液b(実施例2)を用いた場合においては、その効果がより顕著であった。[3]レッティング処理試験(2) まず、下記の処理液e及びfを用意した。 処理液e;上記(1−1)の培養液Aを遠心分離して、微生物を分離除去した培養上清液 処理液f;上記(1−1)の培養液Aを遠心分離して、微生物を分離除去した培養上清液を、水で10倍希釈した液(濃度;10体積%) 次いで、上記の処理液e及びfを用いて、植物材料[ケナフ(Hibiscus cannabinus cv. EV41)]に対して、下記の条件にて浸漬処理(レッティング処理)を行い、処理後における試験片の残存率[(処理後の試験片重量)/(処理前の試験片重量)×100(%)]を測定した。その結果を表5に示す。 <処理条件> 処理液(温度;25℃)が100ml入ったガラス管に、試験片[ケナフのコアと靭皮部を分離し、70×20mmに裁断したケナフ靱皮(1枚の重量;0.9〜1.0g)]を2枚入れて、7日間浸漬させる(外温;25℃)。 表5の結果によれば、培養上清液を10倍希釈して得られた処理液f(実施例4)を用いた場合の方が、培養上清液を希釈していない処理液e(実施例3)を用いた場合よりも試験片の残存率が低くなっており、培養上清液を希釈して用いた方がレッティング処理をより促進させることができることが確認できた。[4]レッティング処理試験(3) まず、下記の処理液g〜nを用意した。 処理液g;上記(1−1)の培養液Aを遠心分離して、微生物を分離除去した培養上清液を、水で10倍希釈した液(培養液Aの濃度;10体積%) 処理液h;上記(1−2)の培養液Bを遠心分離して、微生物を分離除去した培養上清液を、水で10倍希釈した液(培養液Bの濃度;10体積%) 処理液i;上記(1−3)の培養液Cを遠心分離して、微生物を分離除去した培養上清液を、水で10倍希釈した液(培養液Cの濃度;10体積%) 処理液j;上記(1−1)の培養液Aから微生物を除去した培養上清液と、上記(1−2)の培養液Bから微生物を分離した培養上清液を混合して、水で10倍希釈した液(培養液Aの濃度;5体積%、培養液Bの濃度;5体積%) 処理液k;上記(1−1)の培養液Aから微生物を除去した培養上清液と、上記(1−3)の培養液Cから微生物を分離した培養上清液を混合して、水で10倍希釈した液(培養液Aの濃度;5体積%、培養液Cの濃度;5体積%) 処理液l;上記(1−2)の培養液Bから微生物を除去した培養上清液と、上記(1−3)の培養液Cから微生物を分離した培養上清液を混合して、水で10倍希釈した液(培養液Bの濃度;5体積%、培養液Cの濃度;5体積%) 処理液m;上記(1−1)の培養液Aから微生物を除去した培養上清液と、上記(1−2)の培養液Bから微生物を分離した培養上清液と、上記(1−3)の培養液Cから微生物を除去した培養上清液を混合して、水で約10倍に希釈した液(培養液Aの濃度;3.33体積%、培養液Bの濃度;3.33体積%、培養液Cの濃度;3.33体積%) 処理液n;水道水 次いで、上記の処理液g〜nを用いて、植物材料[ケナフ(Hibiscus cannabinus cv. EV41)]に対して、下記の条件にてレッティング処理(浸漬処理)を行い、処理後における試験片の残存率[(処理後の試験片重量)/(処理前の試験片重量)×100(%)]を測定した。尚、この評価試験は、それぞれ、3回ずつ行い、その平均値により評価を行った。その結果を表6、図1及び図2に示す。 また、図1は、処理液g〜nを用いた際における、各処理液と、4日間の浸漬処理が行われた試験片の残存率との関係を表すグラフである。図2は、処理液g、m及びnを用いた際における、浸漬処理を行った期間と、試験片の残存率との関係を表すグラフである。 <処理条件> 処理液(温度;25℃)が100ml入ったガラス管に、試験片[ケナフのコアと靭皮部を分離し、70×20mmに裁断したケナフ靱皮(1枚の重量;0.9〜1.0g)]を2枚入れて、10日間浸漬させる(外温;25℃)。 表6、図1及び図2の結果によれば、2種類の微生物の各培養液の混合液に由来する処理液j、k及びl(実施例8〜10)を用いた場合の方が、1種類の微生物の培養液に由来する処理液g、h及びi(実施例5〜7)を用いた場合よりも試験片の残存率が低くなっており、2種類の微生物の各培養液の混合液に由来する処理液を用いた方がレッティング処理を促進させることができることが確認できた。 更に、3種類の微生物の各培養液の混合液に由来する処理液m(実施例11)を用いた場合の方が、2種類の微生物の各培養液の混合液に由来する処理液j、k及びl(実施例8〜10)を用いた場合よりも試験片の残存率が低くなっており、3種類の微生物の各培養液の混合液に由来する処理液を用いた方がレッティング処理をより促進させることができることが確認できた。 前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述及び図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的及び例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲又は精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料及び実施例を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。 本発明は前述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形又は変更が可能である。 本発明の繊維の抽出方法は、自動車等の車両関連分野、船舶関連分野、航空機関連分野、建築関連分野等において広く利用される。 植物から繊維を抽出するための繊維の抽出方法であって、 植物に対して、微生物の培養液又は微生物の培養液由来の液による処理を行う工程を備えており、 前記微生物は、クレブシエラ属及びエンテロバクター属からなる群より選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする繊維の抽出方法。 前記植物が、靱皮植物である請求項1に記載の繊維の抽出方法。 前記微生物は、前記クレブシエラ属及び前記エンテロバクター属からなる群より選ばれた少なくとも2種以上である請求項1又は2に記載の繊維の抽出方法。 【課題】環境負荷が少なく、短時間で植物から繊維を抽出することができる繊維の抽出方法を提供する。【解決手段】本発明は、植物から繊維を抽出するための繊維の抽出方法であって、植物(例えば、靱皮植物等)に対して、微生物の培養液又は微生物の培養液由来の液による処理を行う工程を備えており、微生物は、クレブシエラ属及びエンテロバクター属からなる群より選ばれた少なくとも1種である。【選択図】なし配列表


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