タイトル: | 公開特許公報(A)_ヒアルロニダーゼ阻害剤 |
出願番号: | 2012160782 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | A61K 36/02,A61P 37/08,A61P 29/00,A61P 17/16,A61K 8/97,A61Q 19/00,A23L 1/30 |
榊 節子 山口 裕司 竹中 裕行 JP 2014019668 公開特許公報(A) 20140203 2012160782 20120719 ヒアルロニダーゼ阻害剤 マイクロアルジェコーポレーション株式会社 593206964 恩田 博宣 100068755 恩田 誠 100105957 榊 節子 山口 裕司 竹中 裕行 A61K 36/02 20060101AFI20140107BHJP A61P 37/08 20060101ALI20140107BHJP A61P 29/00 20060101ALI20140107BHJP A61P 17/16 20060101ALI20140107BHJP A61K 8/97 20060101ALI20140107BHJP A61Q 19/00 20060101ALI20140107BHJP A23L 1/30 20060101ALN20140107BHJP JPA61K35/80A61P37/08A61P29/00A61P17/16A61K8/97A61Q19/00A23L1/30 B 2 OL 8 4B018 4C083 4C088 4B018MD89 4B018ME10 4B018ME14 4B018MF02 4C083AA111 4C083EE12 4C088AA12 4C088AC15 4C088CA05 4C088CA30 4C088ZA89 4C088ZB11 4C088ZB13 本発明は、特定の藻体由来の成分を有効成分として含有するヒアルロニダーゼ阻害剤に関する。 ヒアルロニダーゼは、ヒアルロン酸を加水分解する酵素であって、動物組織に広く分布している。ヒアルロニダーゼの基質となるヒアルロン酸は、皮膚や関節液等の組織に多く存在するムコ多糖の一種であり、細胞の保護、栄養の運搬、組織水分の保持、柔軟性の維持、潤滑性の保持等において重要な役割を担っている。 生体中のヒアルロン酸量は老化や病的状態等により減少する。生体中におけるヒアルロン酸量の減少は、細胞の保湿力を低下させて乾燥、肌荒れ、シミ、皺等の症状を引き起こす原因となる。そのため、ヒアルロニダーゼによるヒアルロン酸の分解を抑制するヒアルロニダーゼ阻害剤には、生体内のヒアルロン酸量を維持して上記症状を予防・改善する効果が期待できる。 また、ヒアルロニダーゼは炎症やアレルギー反応にも関与していることが知られている。具体的には、炎症時において、ヒアルロニダーゼは蛋白質−ヒアルロン酸複合組織の破壊による血管の透過性の亢進に関与しているものと考えられている。また、I型アレルギーにおいて、ヒアルロニダーゼは肥満細胞からのヒスタミン遊離の過程に関与しているものと考えられている。そのため、ヒアルロニダーゼ阻害剤には、抗炎症剤や抗アレルギー剤としての効果も期待できる。実際、抗炎症剤・抗アレルギー剤であるアスピリン、インドメタシン、クロモグリク酸ナトリウム等には高いヒアルロニダーゼ阻害活性が認められている。 近年、生体に対する安全性の観点から、天然物由来のヒアルロニダーゼ阻害剤が注目されている。例えば、特許文献1には、藍藻綱ネンジュモ目ノストック属、藍藻綱ユレモ目スピルリナ属、紅藻綱チノリモ目ポルフィリディウム属及びロデラ属、緑藻綱オオヒゲマワリ目デュナリエラ属、ハプト藻綱イソクリシス目プリュウロクリシス属に属する微細藻類の抽出物を有効成分とするヒアルロニダーゼ阻害剤が記載されている。特開平11−228437号公報 本発明者らは、鋭意研究の結果、藍藻綱スチゴネマ目ノストコプシス科ノストコプシス属に属する藻体に含まれる成分に、特許文献1に記載されるヒアルロニダーゼ阻害剤よりも顕著に高いヒアルロニダーゼ阻害活性があることを見出した。 この発明は、上記の知見に基づいてなされたものであり、本発明の目的は、ヒアルロニダーゼ阻害活性に優れたヒアルロニダーゼ阻害剤を提供することにある。 上記の目的を達成するために請求項1に記載のヒアルロニダーゼ阻害剤は、藍藻綱スチゴネマ目ノストコプシス科ノストコプシス属に属する藻体の水抽出物中に含まれるエタノール不溶性成分を有効成分として含有する。 請求項2に記載のヒアルロニダーゼ阻害剤は、藍藻綱スチゴネマ目ノストコプシス科ノストコプシス属に属する藻体の水抽出物を有効成分として含有する。 本発明によれば、ヒアルロニダーゼ阻害活性に優れたヒアルロニダーゼ阻害剤を提供することができる。 以下、本発明を具体化した実施形態のヒアルロニダーゼ阻害剤を詳細に説明する。 本実施形態のヒアルロニダーゼ阻害剤は、藍藻綱(Cyanophyceae)スチゴネマ目(Stigonematales)ノストコプシス科(Nostochopsidaceae)ノストコプシス属(Nostochopsis)に属する藻体の水抽出物、又は上記水抽出物中に含まれるエタノール不溶性成分を有効成分として含有する。 有効成分としての上記水抽出物は、例えば、上記藻体を原料として抽出操作を行う抽出処理を行うことによって得ることができる。また、有効成分としての上記エタノール不溶性成分は、例えば、上記藻体を原料として抽出操作を行う抽出処理、及び抽出処理にて得られた水抽出物からエタノール可溶性成分を分画するエタノール分画処理を行うことによって得ることができる。 [原料] 原料となる藍藻綱スチゴネマ目ノストコプシス科ノストコプシス属に属する藻体としては、例えば、「Nostochopsis lobatus」や、「Nostochpsis wichmannii」が挙げられる。上記藻体は天然に自生する藻体であってもよいし、人工的に培養した藻体であってもよい。なお、安定供給が可能である点や品質保持が容易である点から、人工的に培養した藻体を用いることが工業的に好適である。また、上記藻体は、採取したままの状態、採取後に破砕処理した状態、採取後に乾燥処理した状態、又は採取後に破砕処理及び乾燥処理した状態としもよい。抽出処理時における効率化の観点から、上記藻体を破砕したものを原料として用いることが好ましい。 [抽出処理] 抽出処理では、抽出溶媒として水を用いる。抽出方法としては、例えば冷水抽出、温水抽出、熱水抽出、及び蒸気抽出等の公知の抽出方法のいずれの方法も用いることができるが、抽出効率の観点から温水抽出や熱水抽出を用いることが好ましい。具体的な方法としては、抽出溶媒中に原料である藻体を所定時間浸漬させた後、固液分離操作を行うことにより抽出液(水抽出物)と残渣とに分離する。そして、必要に応じて得られた抽出液(水抽出物)の濃縮を行う。 なお、抽出溶媒中における原料の濃度や抽出温度は適宜設定することができる。更に、抽出効率を高めるために、抽出時に攪拌処理、加圧処理、及び超音波処理等の処理を行ってもよい。また、抽出溶媒中には、水以外の溶媒や添加剤が少量含有されていてもよい。添加剤としては、例えば、有機塩、無機塩、緩衝剤、及び乳化剤等が挙げられる。また、固液分離処理の方法としては、ろ過や遠心分離等の公知の分離法を用いることができる。また、上記抽出処理は同一の原料に対して一回のみ行なってもよいし、複数回繰り返して行なってもよい。 [エタノール分画処理] エタノール分画処理では、上記抽出処理にて得られた水抽出物にエタノールを添加して、水抽出物に含まれるエタノール可溶性成分を溶解させた後、固液分離操作を行うことによりエタノール溶液(エタノール可溶性成分)と、残渣(エタノール不溶性成分)とに分画する。 なお、分画処理時における水抽出物の濃度や処理温度は適宜設定することができる。更に、エタノール可溶性成分の除去効率を高めるために、処理時に攪拌処理、加圧処理、及び超音波処理等の処理を行ってもよい。また、上記エタノール中にはエタノール以外の溶媒や添加剤が少量含有されていてもよい。また、固液分離処理の方法としては、ろ過や遠心分離等の公知の分離法を用いることができる。また、分画処理は同一の水抽出物に対して一回のみ行なってもよいし、複数回繰り返して行なってもよい。 次に、本実施形態のヒアルロニダーゼ阻害剤の配合形態について記載する。 本実施形態のヒアルロニダーゼ阻害剤に含有される上記水抽出物、及び上記エタノール不溶性成分は高いヒアルロニダーゼ阻害活性を有する。したがって、本実施形態のヒアルロニダーゼ阻害剤は、ヒアルロニダーゼ阻害効果を得ることを目的とした医薬品、実験用・研究用試薬、化粧料及び飲食品等として適用することができる。 本実施形態のヒアルロニダーゼ阻害剤を医薬品として適用する場合は、目的等に応じ公知の投与方法を適宜採用することができる。例えば、患部への塗布、服用(経口摂取)により投与する場合の他、血管内投与、経皮投与等のあらゆる投与方法を採用することが可能である。剤形としては、阻害剤の目的等に応じ公知の剤形を適宜採用することができる。例えば、軟膏、液剤、スプレー剤、シート剤、散剤、粉剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、丸剤、坐剤、注射剤等が挙げられる。また、添加剤として賦形剤、基剤、乳化剤、溶剤、安定剤等を配合してもよい。 本実施形態のヒアルロニダーゼ阻害剤を阻害試薬の形態で実験用・研究用試薬として適用してもよい。上記ヒアルロニダーゼが関係する生理作用のメカニズムの解明又は各種症状の治療法等の研究・開発等の分野において、好適に用いられる。 本実施形態のヒアルロニダーゼ阻害剤を化粧料に適用する場合、化粧料基材に配合することにより製造することができる。化粧料の形態は、乳液状、クリーム状、粉末状などのいずれであってもよい。このような化粧料を肌に適用することにより、ヒアルロン酸の保持作用等の効果を得ることができる。化粧料基剤は、一般に化粧料に共通して配合されるものであって、例えば、油分、精製水及びアルコールを主要成分として、界面活性剤、保湿剤、酸化防止剤、増粘剤、抗脂漏剤、血行促進剤、美白剤、pH調整剤、色素顔料、防腐剤及び香料から選択される少なくとも一種が適宜配合される。 本実施形態のヒアルロニダーゼ阻害剤を飲食品に適用する場合、種々の食品素材又は飲料品素材に添加することによって使用することができる。飲食品の形態としては、特に限定されず、液状、粉末状、ゲル状、固形状のいずれであってもよく、また剤形としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、ドリンク剤のいずれであってもよい。飲食品としては、その他の成分として、糖類、香料、甘味料、油脂、基材、賦形剤、食品添加剤、副素材、増量剤等を適宜配合してもよい。 次に、本実施形態の作用及び効果について記載する。 本実施形態のヒアルロニダーゼ阻害剤は、高いヒアルロニダーゼ阻害活性を有する。ヒアルロニダーゼにより分解されるヒアルロン酸は、細胞の保護、栄養の運搬、組織水分の保持、柔軟性の維持、潤滑性の保持等において重要な役割を担う物質である。そして、生体中におけるヒアルロン酸量の減少は、細胞の保湿力を低下させて乾燥、肌荒れ、シミ、皺等の症状を引き起こす原因となる。そのため、本実施形態のヒアルロニダーゼ阻害剤には、生体内のヒアルロン酸量を維持して上記の症状を予防・改善する効果が期待できる。 また、ヒアルロニダーゼの活性化は、炎症やアレルギー反応にも関与していることが知られている。例えば、抗炎症剤・抗アレルギー剤であるアスピリン、インドメタシン、クロモグリク酸ナトリウム等には高いヒアルロニダーゼ阻害活性が認められている。そのため、本実施形態のヒアルロニダーゼ阻害剤には、抗炎症剤や抗アレルギー剤としての効果も期待できる。 次に、本実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。 (1)本実施形態のヒアルロニダーゼ阻害剤は、藍藻綱スチゴネマ目ノストコプシス科ノストコプシス属に属する藻体の水抽出物、又は上記水抽出物中に含まれるエタノール不溶性成分を有効成分として含有する。上記構成によれば、ヒアルロニダーゼによるヒアルロン酸の分解を阻害することができる。 (2)本実施形態のヒアルロニダーゼ阻害剤の有効成分は、特定の藻体に含まれる天然成分であることから、生体に対してより安全に適用することができる。 なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。 ・有効成分である上記水抽出物及び上記エタノール不溶性成分は、ヒアルロニダーゼ阻害剤中に上記藻体の状態で含有されていてもよい。 ・上記実施形態のヒアルロニダーゼ阻害剤は、ヒトに対して適用することができるのみならず、ペット、家畜等の飼養動物に対して適用してもよい。 次に、上記実施形態から把握できる技術的思想について記載する。 (イ)藍藻綱スチゴネマ目ノストコプシス科ノストコプシス属に属する藻体を有効成分として含有するヒアルロニダーゼ阻害剤。 (ロ)抗炎症剤又は抗アレルギー剤として用いられる前記ヒアルロニダーゼ阻害剤。 (ハ)前記ヒアルロニダーゼ阻害剤を含有する医薬品、研究用試薬、化粧料、及び飲食品。 次に、試験例を挙げて上記実施形態をさらに具体的に説明する。 <試験サンプルの調製> タイのナーン川で採取した藻体(Nostochopsis lobatus)をフラスコ内で培養した。フラスコ内のコロニーをろ過処理により採取するとともに、これを真水にて洗浄した。その後すぐに凍結乾燥させることにより藻体の乾燥粉体を得た。 得られた乾燥粉体(3g)に水(300mL)を加えて、90℃にて180分間攪拌した。冷却後、ろ紙を用いてろ過処理を行うとともに得られたろ液を濃縮することにより藻体の水抽出物を得た。上記水抽出物(50mL)にエタノール(200mL)を加えて、5℃にて1夜、静置した。その後、上記水抽出物をエタノール不溶性画分とエタノール可溶性画分とに分画し、それぞれを濃縮乾固させた。水抽出物、エタノール不溶性画分、及びエタノール可溶性画分の各収率(質量%)を表1に示す。なお、原料である藻体の乾燥粉体を2ロット用意し、各ロットについて上記処理をそれぞれ行った。 <ヒアルロニダーゼ阻害試験> 上記水抽出物、上記エタノール不溶性画分、及び上記エタノール可溶性画分を試験サンプルとして、それらのヒアルロニダーゼ阻害活性を評価した。ここでは、ヒアルロニダーゼに対する各試験サンプルの50%阻害濃度(IC50)を求めた。 0.1M酢酸緩衝液(pH4.0)中にて、上記試験サンプルと牛の睾丸由来のヒアルロニダーゼとを37℃で20分間インキュベートした後、更にコンパウンド48/80、塩化カルシウム、塩化ナトリウムを添加して、更に37℃で20分間インキュベートした。ここで、コントロールとして上記試験サンプルを含まないものを用意するとともに、コントロールブランクとして上記試験サンプル及びヒアルロニダーゼを含まないものを用意した。また、反応液ブランクとしてヒアルロニダーゼを含まないものを用意した。 その後、ヒアルロン酸ナトリウム塩を添加し、この反応液を37℃で40分間インキュベートした。なお、反応液中における上記試験サンプルの終濃度は、水抽出物及びエタノール不溶性画分については0.01,0.02,0.04,0.08mg/mLとするとともに、エタノール可溶性画分については0.01,0.05,0.2mg/mLとした。また、ヒアルロニダーゼの終濃度は400unit/mLであり、コンパウンド48/80の終濃度は0.1mg/mLであり、塩化カルシウムの終濃度は2.5mMであり、塩化ナトリウムの終濃度は0.15Mである。 インキュベート後、反応液に0.4N−NaOH(0.2mL)を添加して反応を停止させた。10分間の氷冷後、硼酸溶液(pH9.1)(0.2mL)を添加し、3分間煮沸した。再び10分間の氷冷後、p−ジメチルアミノベンズアルデヒド試薬(6mL)を添加し、37℃で20分間インキュベートした。得られた反応液について585nmにおける吸光度を測定した。そして、下記式にしたがってヒアルロニダーゼ阻害率(%)及び50%阻害濃度を求めた。 阻害率(%)=[(A−B)−(C−D)]/(A−B)×100 A:コントロールの585nmにおける吸光度 B:コントロールブランクの585nmにおける吸光度 C:反応液の585nmにおける吸光度 D:反応液ブランクの585nmにおける吸光度 また、参考例として、ヒアルロニダーゼ阻害剤であるクロモグリク酸ナトリウムを試験サンプルとして同様の試験を行い、その50%阻害濃度を求めた。それらの結果を表2に示す。 表2に示すように、上記水抽出物及び上記エタノール不溶性画分について、ほぼ同等のヒアルロニダーゼ阻害活性を確認することができた。また、その阻害活性は、50%阻害濃度の比較において、クロモグリク酸ナトリウムよりも約4倍も高い結果であった。一方、上記エタノール可溶性画分については、ヒアルロニダーゼ阻害活性を確認することはできなかった。 藍藻綱スチゴネマ目ノストコプシス科ノストコプシス属に属する藻体の水抽出物中に含まれるエタノール不溶性成分を有効成分として含有することを特徴とするヒアルロニダーゼ阻害剤。 藍藻綱スチゴネマ目ノストコプシス科ノストコプシス属に属する藻体の水抽出物を有効成分として含有することを特徴とするヒアルロニダーゼ阻害剤。 【課題】ヒアルロニダーゼ阻害活性に優れたヒアルロニダーゼ阻害剤を提供する。【解決手段】ヒアルロニダーゼ阻害剤は、藍藻綱スチゴネマ目ノストコプシス科ノストコプシス属に属する藻体の水抽出物中に含まれるエタノール不溶性成分、又は藻体の水抽出物を有効成分として含有する。【選択図】なし