タイトル: | 公開特許公報(A)_エチレン尿素の製造方法 |
出願番号: | 2012156091 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | C07D 233/34,C07B 61/00,C07C 271/20,C07C 269/04 |
堀 公二 中川 和城 松井 英雄 JP 2014019644 公開特許公報(A) 20140203 2012156091 20120712 エチレン尿素の製造方法 三木理研工業株式会社 000177014 間瀬 ▲けい▼一郎 100117503 山田 稔 100121784 堀 公二 中川 和城 松井 英雄 C07D 233/34 20060101AFI20140107BHJP C07B 61/00 20060101ALN20140107BHJP C07C 271/20 20060101ALN20140107BHJP C07C 269/04 20060101ALN20140107BHJP JPC07D233/34C07B61/00 300C07C271/20C07C269/04 7 OL 19 4H006 4H039 4H006AA02 4H006AB84 4H006AC56 4H006RA06 4H006RB04 4H039CA42 4H039CA71 4H039CD40 4H039CH20 本発明は、エチレン尿素の製造方法に関するものであって、特に従来よりも反応温度を下げることのできると共に収率の良いエチレン尿素の製造方法に関するものである。 エチレン尿素(2−イミダゾリジノン、2−イミダゾリドン)は、従来からエチレン尿素系樹脂としてテキスタイルや皮革、或いは木材の加工助剤など様々な用途に使用されている。また、近年において、エチレン尿素は製薬工業における中間体として重要である。このエチレン尿素は、工業的に様々な方法で製造することができる。 例えば、下記特許文献1に示すエチレンジアミン‐炭酸ガス法においては、約1MPa(10kgf/cm2)の高圧下において、エチレンジアミンと二酸化炭素を300℃で反応させる。この方法においては、高圧反応容器を必要とし、且つ、300℃という高温反応を行わなければならない。 また、下記特許文献2に示すエチレンジアミン‐尿素法においては、約0.1MPa(1kgf/cm2)の大気圧下において、エチレンジアミンと尿素を235℃で反応させる。この方法においては、エチレンジアミン‐炭酸ガス法と異なり大気圧下の反応が可能で高圧反応容器を必要としない。そこで、現在においては、大気圧下での反応が可能なエチレンジアミン‐尿素法が最も多く使用されている。US2497309US2504431 ところで、上記特許文献2のエチレンジアミン‐尿素法においても、250℃近い高温下での反応が必要とされる。このような高温化においては、エチレンジアミンが尿素と反応する前に酸化されることにより、また、未反応のエチレンジアミンが酸化されることによりエチレン尿素を含む反応物の黄褐変が激しくなるという問題があった。 エチレン尿素を含む反応物の黄褐変が激しい場合には、エチレン尿素の精製に大きなコストを必要とすると共に、精製後の着色度によっては、エチレン尿素樹脂を合成しても白色建材など白度を要求される用途に使用できないこととなる。 そこで、本発明においては、大気圧下の反応が可能で高圧反応容器を必要とせず、従来の方法よりも反応温度を下げることができるので反応物の黄褐変が抑えられ、且つ、工業的に適用可能なエチレン尿素の製造方法を提供することを目的とする。 上記課題の解決にあたり、本発明者らは、鋭意研究の結果、エチレンジアミンとジアルキルカーボネートとの反応に特定の無機固体塩基触媒を作用させることにより、大気圧下で且つ従来よりも低い温度でエチレン尿素を合成できることを見出し本発明の完成に至った。 即ち、本発明に係るエチレン尿素の製造方法は、請求項1の記載によると、 エチレンジアミンと一般式(1)(式中、R1及びR2は炭化水素基を示し、R1とR2は同一であってもよく異なっていてもよい。)に示すジアルキルカーボネートとの混合物に無機固体塩基触媒を作用させてエチレン尿素を合成することを特徴とする。 また、本発明に係るエチレン尿素の製造方法は、請求項2の記載によると、 エチレンジアミンと一般式(1)(式中、R1及びR2は炭化水素基を示し、R1とR2は同一であってもよく異なっていてもよい。)に示すジアルキルカーボネートとの反応により合成される一般式(2)(式中、Rmは前記一般式(1)におけるR1又はR2の炭化水素基を示す。)に示すエチレンジアミンのモノカルボアルコキシ体に、無機固体塩基触媒を作用させて、当該モノカルボアルコキシ体を閉環反応させることを特徴とする。 また、本発明に係るエチレン尿素の製造方法は、請求項3の記載によると、 エチレンジアミンと一般式(1)(式中、R1及びR2は炭化水素基を示し、R1とR2は同一であってもよく異なっていてもよい。)に示すジアルキルカーボネートとを反応させる第1工程と、 前記第1工程における反応物から一般式(2)(式中、Rmは前記一般式(1)におけるR1又はR2の炭化水素基を示す。)に示すエチレンジアミンのモノカルボアルコキシ体を単離する第2工程と、 前記第2工程で単離した前記モノカルボアルコキシ体に無機固体塩基触媒を作用させて、当該モノカルボアルコキシ体の閉環反応を行う第3工程とを有することを特徴とする。 また、本発明は、請求項4の記載によると、請求項3に記載のエチレン尿素の製造方法であって、 前記第1工程における反応物は、前記一般式(2)に示すエチレンジアミンのモノカルボアルコキシ体と、一般式(3)(式中、Rm及びRnは前記一般式(1)におけるR1又はR2の炭化水素基を示し、RmとRnは同一であってもよく異なっていてもよい。)に示すエチレンジアミンのジカルボアルコキシ体を含有し、モノカルボアルコキシ体とジカルボアルコキシ体の総モル数に対してモノカルボアルコキシ体のモル数が70モル%以上であることを特徴とする。 また、本発明は、請求項5の記載によると、請求項1〜4のいずれか1つに記載のエチレン尿素の製造方法であって、 前記無機固体塩基触媒は、アルカリ土類金属の酸化物からなることを特徴とする。 また、本発明は、請求項6の記載によると、請求項1〜4のいずれか1つに記載のエチレン尿素の製造方法であって、 前記無機固体塩基触媒は、アルカリ土類金属の酸化物を主体とし、当該アルカリ土類金属の一部をアルカリ金属で置換してなる酸化物であることを特徴とする。 また、本発明は、請求項7の記載によると、請求項5又は6に記載のエチレン尿素の製造方法であって、 前記閉環反応において、前記一般式(2)に示す前記モノカルボアルコキシ体からの環化率が60%以上であることを特徴とする。 上記構成によれば、エチレンジアミンと上記一般式(1)に示すジアルキルカーボネートとの反応によりエチレン尿素を合成する。この反応において無機固体塩基触媒を作用させることにより、大気圧下で反応が進行し、且つ、従来のエチレン尿素の製造法であるエチレンジアミン‐尿素法に比べ、かなり低い温度で反応が進行する。従って、この反応において、未反応のエチレンジアミンが極度に酸化されることがない。 また、上記請求項2の構成によれば、エチレン尿素を製造するにあたり、まず、エチレンジアミンと上記一般式(1)に示すジアルキルカーボネートとの反応により、上記一般式(2)に示すエチレンジアミンのモノカルボアルコキシ体を合成する。この段階の反応においては、大気圧下で行うことが可能で、且つ、従来のエチレン尿素の製造法であるエチレンジアミン‐尿素法に比べ、かなり低い温度で反応が進行する。従って、この段階において、未反応のエチレンジアミンは極度に酸化されることがない。 次に、上記反応で合成したモノカルボアルコキシ体に無機固体塩基触媒を作用させて、モノカルボアルコキシ体を閉環反応させエチレン尿素を合成する。この段階の反応においても、大気圧下で行うことが可能で、且つ、無機固体塩基触媒を作用させることにより、従来のエチレン尿素の製造法であるエチレンジアミン‐尿素法に比べ、かなり低い温度で反応が進行する。従って、この段階においても、未反応のエチレンジアミン及びモノカルボアルコキシ体の末端アミノ基が極度に酸化されることがない。 また、上記請求項3の構成によれば、第1工程で合成したモノカルボアルコキシ体は、第2工程で単離される。この単離により、第1工程における反応物から未反応のエチレンジアミンが除去される。従って、モノカルボアルコキシ体を閉環反応する第3工程において、反応系のエチレンジアミンの含有量が少なく酸化されることも少ない。 このように、上記構成によれば、各反応段階におけるエチレンジアミン或いはモノカルボアルコキシ体の末端アミノ基の酸化が抑えられ、閉環反応後の反応物の黄褐変は、従来法に比べ大幅に軽減される。 また、上記請求項4の構成によれば、上記第1工程における反応物には、エチレン尿素合成の中間体として一般式(2)に示すモノカルボアルコキシ体の他に、副生物として一般式(3)に示すジカルボアルコキシ体が併存することがある。この反応物中のモノカルボアルコキシ体とジカルボアルコキシ体とのモル比において、モノカルボアルコキシ体の比率が70モル%以上であることが好ましい。このことにより、モノカルボアルコキシ体の閉環反応を経て得られるエチレン尿素の収率が向上すると共に、未反応のエチレンジアミンの酸化による反応物の黄褐変が更に抑えられる。 また、上記請求項5の構成によれば、エチレンジアミンと上記一般式(1)に示すジアルキルカーボネートとの直接反応、又は、モノカルボアルコキシ体を経由する閉環反応に使用する無機固体塩基触媒は、アルカリ土類金属の酸化物であることが好ましい。このことにより、無機固体塩基触媒の触媒活性が向上し、エチレンジアミンとジアルキルカーボネートとの直接反応、又は、モノカルボアルコキシ体の閉環反応における反応温度を従来のエチレン尿素の製造法であるエチレンジアミン‐尿素法の反応温度に比べ、かなり低い温度にすることができる。また、反応温度が低い場合においても、エチレン尿素の収率を高く維持することができ、工業的に適用可能な製造方法を提供することができる。 また、上記請求項6の構成によれば、エチレンジアミンとジアルキルカーボネートとの直接反応、又は、モノカルボアルコキシ体の閉環反応に使用する無機固体塩基触媒は、アルカリ土類金属の酸化物を主体とし、当該アルカリ土類金属の一部をアルカリ金属で置換してなる酸化物であることが更に好ましい。このことにより、無機固体塩基触媒の触媒活性が更に向上し、エチレン尿素の収率を高く維持することができ、工業的に適用可能な製造方法を提供することができる。 また、上記請求項7の構成によれば、一般式(2)に示すモノカルボアルコキシ体からエチレン尿素への環化率が60%以上であることが好ましい。このことにより、エチレン尿素の収率を高く維持することができ、工業的に適用可能な製造方法を提供することができる。 よって、本発明は、大気圧下の反応が可能で高圧反応容器を必要とせず、従来の方法よりも反応温度を下げることができるので反応物の黄褐変が抑えられ、且つ、工業的に適用可能なエチレン尿素の製造方法を提供することができる。 本発明の反応において使用するエチレンジアミン(EDA)は、反応性が高く工業化学原料として大量に使用される汎用薬品である。従って、エチレンジアミン(EDA)は入手が容易で安価に使用することができ、エチレン尿素の工業的製造方法に適用が容易である。 一方、本発明の反応において使用するジアルキルカーボネート(DAC)は、下記一般式(1)に示される。 この一般式(1)において、R1及びR2は炭化水素基を示し、R1とR2は同一であってもよく異なっていてもよい。このR1及びR2の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などを挙げることができる。 このジアルキルカーボネート(DAC)の具体例としては、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)などを挙げることができる。本発明においては、これらのジアルキルカーボネート(DAC)の中でも、ジメチルカーボネート(DMC)を使用することが好ましい。ジメチルカーボネート(DMC)は、反応性が高く工業化学原料として大量に使用される汎用薬品である。従って、ジメチルカーボネート(DMC)は入手が容易で安価に使用することができ、エチレン尿素の工業的製造方法に適用が容易である。 また、本発明の反応においては、エチレンジアミン(EDA)とジアルキルカーボネート(DAC)との反応において、中間体を経由することができる。この中間体としては、下記一般式(2)に示すエチレンジアミン(EDA)のモノカルボアルコキシ体(MA体)が生成する。 この一般式(2)において、Rmは上記一般式(1)におけるR1又はR2の炭化水素基を示す。上述のように、このRmの炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などを挙げることができる。従って、ジアルキルカーボネート(DAC)としてジメチルカーボネート(DMC)を使用した場合には、上記一般式(2)に示す中間体としてエチレンジアミン(EDA)のモノカルボメトキシ体(MM体)が生成する。 また、本発明の反応においては、エチレンジアミン(EDA)とジアルキルカーボネート(DAC)との反応が更に進行すると、モノカルボアルコキシ体(MA体)とジアルキルカーボネート(DAC)との反応により、副生物として下記一般式(3)に示すエチレンジアミン(EDA)のジカルボアルコキシ体(DA体)が生成する。 この一般式(3)において、Rm及びRnは上記一般式(1)におけるR1又はR2の炭化水素基を示し、RmとRnは同一であってもよく異なっていてもよい。上述のように、これらRmとRnの炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などを挙げることができる。従って、ジアルキルカーボネート(DAC)としてジメチルカーボネート(DMC)を使用した場合には、上記一般式(3)に示す副生物としてエチレンジアミン(EDA)のジカルボメトキシ体(DM体)が生成する。 ここで示した生成物のうち、本発明においてエチレン尿素の合成に寄与するのは、中間体としてのモノカルボアルコキシ体(MA体)である。このモノカルボアルコキシ体(MA体)を閉環反応させることにより、本発明においてエチレン尿素を合成することができる。一方、副生物としてのジカルボアルコキシ体(DA体)を閉環反応させてエチレン尿素を合成することは難しい。従って、ジカルボアルコキシ体(DA体)は、本発明においてエチレン尿素の合成に寄与することができない。 また、本発明の反応においては、エチレンジアミン(EDA)とジアルキルカーボネート(DAC)との直接反応、又は、モノカルボアルコキシ体(MA体)を閉環反応させてエチレン尿素を合成する際の触媒として無機固体塩基触媒を使用する。これらの無機固体塩基触媒は不均一系触媒であって、活性点としての塩基点と酸点とが酸化物上で固定され同時に作用することができる。従って、本発明においては、塩基点によるアミノ基からのプロトン引き抜きと、酸点によるカルボニル酸素の活性化が同時に起こり、直接反応或いは閉環反応が促進されるものと考えられる。 本発明の反応において使用する無機固体塩基触媒は、アルカリ土類金属の酸化物からなることが好ましい。これらのアルカリ土類金属の酸化物が強塩基触媒として作用することにより、モノカルボアルコキシ体(MA体)の閉環反応を低い温度で効率よく行うことができる。 これらの酸化物には、例えば、酸化ベリリウム(BeO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化バリウム(BaO)などが挙げられる。これらの酸化物の中でも、本発明においては、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)を使用することが好ましい。 これらのアルカリ土類金属の酸化物は、通常、アルカリ土類金属の水酸化物或いは炭酸塩などを焼成して得ることができる。その際の焼成温度や焼成時間については、特に限定するものではなく、各物質の分解温度等を考慮して適宜選定すればよい。例えば、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)の水酸化物或いは炭酸塩から酸化物を得るには、通常、500℃〜1200℃程度の温度で焼成すればよい。得られたアルカリ土類金属の酸化物は、適宜粉砕されて無機固体塩基触媒として使用される。 また、本発明の反応において使用する無機固体塩基触媒は、アルカリ土類金属の酸化物を主体とし、当該アルカリ土類金属の一部をアルカリ金属で置換した酸化物からなることが好ましい。これは、酸化物中の2価のアルカリ土類金属が1価のアルカリ金属に置換されることにより、酸素原子の分極が増大し超強塩基触媒として作用するものと考えられる。これらのアルカリ土類金属の一部をアルカリ金属で置換した酸化物が超強塩基触媒として作用することにより、エチレンジアミン(EDA)とジアルキルカーボネート(DAC)との直接反応、又は、モノカルボアルコキシ体(MA体)の閉環反応を低い温度で更に効率よく行うことができる。 これらの酸化物には、例えば、酸化ベリリウム(BeO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化バリウム(BaO)などを主体とし、これらのアルカリ土類金属の一部をアルカリ金属で置換した酸化物が挙げられる。これらの酸化物の中でも、本発明においては、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)を主体とし、これらのアルカリ土類金属の一部をアルカリ金属で置換した酸化物を使用することが好ましい。 アルカリ土類金属の一部を置換するアルカリ金属としては、例えば、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)などを挙げることができ、特にナトリウム(Na)で置換することが好ましい。アルカリ土類金属とその一部を置換するアルカリ金属との配合比率は、特に限定するものではないが、通常、アルカリ土類金属に対して1モル%〜90モル%であることが好ましく、更に、5モル%〜50モル%であることがより好ましい。 これらのアルカリ土類金属の一部をアルカリ金属で置換した酸化物は、通常、アルカリ土類金属の水酸化物或いは炭酸塩などを焼成する際に、その一部にアルカリ金属の水酸化物或いは炭酸塩などを混合することにより得ることができる。その際の焼成温度や焼成時間については、特に限定するものではなく、各物質の分解温度等を考慮して適宜選定すればよく、通常、500℃〜1200℃程度の温度で焼成すればよい。得られたアルカリ土類金属の一部をアルカリ金属で置換した酸化物は、適宜粉砕されて無機固体塩基触媒として使用される。 次に、本発明に係るエチレン尿素の製造方法の1実施形態について説明するが、本発明に係るエチレン尿素の製造方法は、本実施形態のみに限るものではない。 本実施形態において、エチレン尿素の製造方法は、エチレンジアミン(EDA)とジアルキルカーボネート(DAC)とを反応させてモノカルボアルコキシ体(MA体)を合成する第1工程と、この第1工程の反応物からモノカルボアルコキシ体(MA体)を単離する第2工程と、この第2工程で単離したモノカルボアルコキシ体(MA体)に無機固体塩基触媒を作用させて閉環反応を行う第3工程とを有している。以下、本実施形態を各工程に沿って説明する。 第1工程: 本第1工程においては、エチレンジアミン(EDA)とジアルキルカーボネート(DAC)とを反応させてモノカルボアルコキシ体(MA体)を合成する。この反応には、特に触媒を添加することを要しない。エチレンジアミン(EDA)の自己触媒機能によるものと考えられる。 本第1工程においては、上述のように、エチレン尿素の合成に寄与する中間体としてのモノカルボアルコキシ体(MA体)の他にエチレン尿素の合成に寄与しない副生物としてのジカルボアルコキシ体(DA体)が生成する。そこで、本実施形態においては、モノカルボアルコキシ体(MA体)とジカルボアルコキシ体(DA体)の合成比率が問題となる。 本実施形態においては、第1工程で生成するモノカルボアルコキシ体(MA体)とジカルボアルコキシ体(DA体)の総モル数に対して、モノカルボアルコキシ体(MA体)のモル数が70モル%以上であることが好ましい。モノカルボアルコキシ体(MA体)の合成比率が70モル%以上であることにより、エチレン尿素の収率が向上し工業的に適用可能性が増大する。 本発明者らの検討によると、本第1工程の反応において、まず、モノカルボアルコキシ体(MA体)が生成し、このモノカルボアルコキシ体(MA体)の生成がある程度進んだ段階でモノカルボアルコキシ体(MA体)と反応浴中の未反応のジアルキルカーボネート(DAC)とが反応してジカルボアルコキシ体(DA体)が生成する。従って、本第1工程においては、モノカルボアルコキシ体(MA体)の生成を速やかに行い、長時間の反応を避けるようにすべきである。 エチレンジアミン(EDA)に対するジアルキルカーボネート(DAC)の配合量は化学量論的には等モル量であり、ジカルボアルコキシ体(DA体)の生成を抑制するには、これに近い配合比率であることが好ましい。本実施形態においては、エチレンジアミン(EDA)1モルに対して、0.7モル〜1.3モルのジアルキルカーボネート(DAC)を配合することが好ましく、更に、0.8モル〜1.2モルを配合することがより好ましい。ジアルキルカーボネート(DAC)の配合量がこの範囲より多くなると、ジカルボアルコキシ体(DA体)の生成量が多くなる。 また、反応当初に全量のエチレンジアミン(EDA)とジアルキルカーボネート(DAC)とを配合してから反応してもよいが、エチレンジアミン(EDA)の中にジアルキルカーボネート(DAC)を時間をかけて滴下しながら反応するか、逆に、ジアルキルカーボネート(DAC)の中にエチレンジアミン(EDA)を時間をかけて滴下しながら反応することが好ましい。 本第1工程の反応温度は、特に限定するものではないが、40℃〜130℃の範囲内であることが好ましく、更に、60℃〜120℃の範囲内であることがより好ましい。室温のような低い温度においてもモノカルボアルコキシ体(MA体)が生成するが、その反応時間が長くなり工業的に適用しにくい。一方、130℃を超えるような高い温度においては、エチレンジアミン(EDA)の酸化が進行し、また、反応時間が長くなるとジカルボアルコキシ体(DA体)が多く生成する。なお、この温度範囲は、従来のエチレンジアミン‐尿素法における250℃近い高温下での反応と大きく異なり、エチレンジアミン(EDA)の酸化が大きく抑制される。 また、本第1工程の反応時間は、特に限定するものではないが、通常、1時間〜48時間の範囲内であることが好ましく、更に、3時間〜24時間の範囲内であることがより好ましい。エチレンジアミン(EDA)と等モル量のジアルキルカーボネート(DAC)との反応を完結してモノカルボアルコキシ体(MA体)の収率を高くするためには反応時間を長くする必要があるが、この場合にはジカルボアルコキシ体(DA体)が生成する。逆に、ジカルボアルコキシ体(DA体)の生成を抑えるためには、反応時間を短くする必要があるが、この場合にはモノカルボアルコキシ体(MA体)の収率が低くなる。よって、上述の反応温度においては、上記範囲の反応時間が好ましい。 第2工程: 本第2工程においては、第1工程の反応物からモノカルボアルコキシ体(MA体)を単離する。この第1工程の反応物には、生成したモノカルボアルコキシ体(MA体)とジカルボアルコキシ体(DA体)、その反応の副生物であるアルカノール、更に微量の未反応のエチレンジアミン(EDA)とジアルキルカーボネート(DAC)とが含まれている。 ここで、室温において、モノカルボアルコキシ体(MA体)は液体であり、ジカルボアルコキシ体(DA体)は固体である。また、エチレンジアミン(EDA)の沸点は117℃であり、ジアルキルカーボネート(DAC)の沸点は90℃である。更に、副生物であるアルカノールの沸点はこれらより低い。そこで、第1工程の反応物を減圧蒸留することにより、モノカルボアルコキシ体(MA体)を単離することができる。この単離操作については後述する。 このように、本第2工程でモノカルボアルコキシ体(MA体)の純度を上げることにより、続く第3工程における閉環反応の効率が向上し、且つ、微量に残留するエチレンジアミン(EDA)及び閉環前のモノカルボアルコキシ体(MA体)の末端アミノ基の酸化が抑制される。 第3工程: 本第3工程においては、第2工程で単離したモノカルボアルコキシ体(MA体)に無機固体塩基触媒を作用させて閉環反応によりエチレン尿素を合成する。この反応に使用する無機固体塩基触媒としては、上述のアルカリ土類金属の酸化物、或いは、アルカリ土類金属の一部をアルカリ金属で置換した酸化物を使用することが好ましい。 この無機固体塩基触媒の使用量は、触媒の種類、塩基活性、粒度及び表面積などにより適宜選定すればよいが、通常、単離したモノカルボアルコキシ体(MA体)に対して3重量%〜20重量%が好ましく、更に、5重量%〜15重量%がより好ましい。 本第3工程においては、第2工程で単離したモノカルボアルコキシ体(MA体)を使用するが、その純度は90%以上であることが好ましく、更に、95%以上であることがより好ましい。モノカルボアルコキシ体(MA体)の純度が高いほど閉環反応の効率が向上し、且つ、微量に残留するエチレンジアミン(EDA)の酸化とモノカルボアルコキシ体(MA体)の末端アミノ基の酸化が抑えられるからである。 本実施形態においては、第3工程での閉環反応の環化率は、60%以上であることが好ましく、更に、80%以上であることがより好ましい。閉環反応の環化率が60%以上であることにより、エチレン尿素の収率が向上し工業的に適用可能性が増大する。 本第3工程の反応温度は、無機固体塩基触媒の種類と使用量などにより適宜選定すればよいが、通常、110℃〜140℃であることが好ましく、更に、120℃〜130℃であることがより好ましい。110℃より低い温度においては、閉環反応の効率が悪くなる。一方、140℃を超えるような高い温度においては、モノカルボアルコキシ体(MA体)の末端アミノ基の酸化が起こり反応物の黄褐変が激しくなるからである。 また、本第3工程の反応時間は、特に限定するものではないが、通常、1時間〜24時間の範囲内であることが好ましく、更に、3時間〜12時間の範囲内であることがより好ましい。モノカルボアルコキシ体(MA体)の閉環反応を完結してエチレン尿素の収率を高くするためには反応時間を長くする必要があるが、この場合には未閉環のモノカルボアルコキシ体(MA体)の末端アミノ基の酸化が起こり反応物の黄褐変が激しくなる。逆に、モノカルボアルコキシ体(MA体)の末端アミノ基の酸化を抑えるためには、反応時間を短くする必要があるが、この場合にはエチレン尿素の収率が低くなる。よって、上述の反応温度においては、上記範囲の反応時間が好ましい。 以下、本実施形態に係るエチレン尿素の製造方法を各実施例及び比較例により説明する。なお、下記に示す各実施例においては、いずれも、ジアルキルカーボネート(DAC)としてジメチルカーボネート(DMC)を使用し、エチレンジアミン(EDA)との反応により中間体としてのモノカルボメトキシ体(MM体)を合成した。この反応を下記式(4)に示す。 次に、単離したモノカルボメトキシ体(MM体)に無機固体塩基触媒を作用して閉環反応を行ってエチレン尿素を得た。この反応を下記式(5)に示す。 第1工程: 本実施例1においては、ジメチルカーボネート(DMC)100mmol(9.03g)に対して、エチレンジアミン(EDA)100mmol(6.0g)を120℃の条件下で1.5時間かけて滴下した後、120℃で24時間撹拌して、モノカルボメトキシ体(MM体)とジカルボメトキシ体(DM体)とを含有する反応物を得た。 この反応物は、薄黄色の懸濁液であった。また、この反応物中のモノカルボメトキシ体(MM体)とジカルボメトキシ体(DM体)の生成比は、MM体:DM体=76:24であった。なお、この生成比は1H−NMRの測定により定量した。 第2工程: 上記反応物からモノカルボメトキシ体(MM体)を単離した。単離操作は、系内の圧力を1333Pa(10mmHg)とした減圧蒸留により行った。この減圧蒸留において、90℃付近からモノカルボメトキシ体(MM体)の留出が認められ、定常的な留出温度は95℃であった。留出分の1H−NMRを測定したところ、モノカルボメトキシ体(MM体)の純度は、約98%であった。なお、不純物として痕跡量のエチレンジアミン(EDA)とメタノールを検出した。 第3工程: 本実施例1においては、無機固体塩基触媒として酸化カルシウム(CaO)を使用した。無機固体塩基触媒としての酸化カルシウム(CaO)の調整は、次のようにして行った。炭酸カルシウム(CaCO3)10gを乳鉢により十分に粉砕した後、空気雰囲気下550℃で4時間焼成して酸化カルシウム(CaO)を調整した。この酸化カルシウム(CaO)は、乳鉢により十分に粉砕した後、無機固体塩基触媒として使用した。 モノカルボメトキシ体(MM体)の閉環反応は、次のようにして行った。単離したモノカルボメトキシ体(MM体)20mmol(2.36g)に無機固体塩基触媒10重量%(0.24g)を加え、130℃で12時間加熱して反応物を得た。この反応物は、薄く褐色を帯びた懸濁液であった。また、この反応物の1H−NMRを測定し、生成したエチレン尿素と未反応のモノカルボメトキシ体(MM体)の混合比から、エチレン尿素への環化率を求めた。本実施例1における環化率は、62.6%であった。 一方、上記実施例1に対して、第2工程で単離したモノカルボメトキシ体(MM体)に無機固体塩基触媒を加えずに130℃で12時間加熱したものを比較例1とした。この比較例1で得られた反応物は、濃い褐色の液体であった。また、この比較例1における環化率は、30.2%であり低い値であった。 第1工程: 本実施例2においては、ジメチルカーボネート(DMC)に対するエチレンジアミン(EDA)の滴下時の温度、及び、その後の反応温度を80℃としたこと以外は、上記実施例1と同様の操作を行い、モノカルボメトキシ体(MM体)とジカルボメトキシ体(DM体)とを含有する反応物を得た。この反応物は、薄黄色の懸濁液であった。また、この反応物中のモノカルボメトキシ体(MM体)とジカルボメトキシ体(DM体)の生成比は、MM体:DM体=74:26であった。 第2工程: 上記実施例1と同様の操作を行い、上記反応物からモノカルボメトキシ体(MM体)を単離した。モノカルボメトキシ体(MM体)の純度は、上記実施例1と同様に約98%であった。 第3工程: 本実施例2においては、無機固体塩基触媒として酸化マグネシウム(MgO)を使用した。無機固体塩基触媒としての酸化マグネシウム(MgO)の調整は、次のようにして行った。炭酸マグネシウム(MgCO3)10gを乳鉢により十分に粉砕した後、空気雰囲気下900℃で4時間焼成して酸化マグネシウム(MgO)を調整した。この酸化マグネシウム(MgO)は、乳鉢により十分に粉砕した後、無機固体塩基触媒として使用した。 モノカルボメトキシ体(MM体)の閉環反応は、無機固体塩基触媒として酸化マグネシウム(MgO)を使用した以外は、上記実施例1と同様の操作により行った。得られた反応物は、薄く褐色を帯びた懸濁液であった。また、本実施例2における環化率は、62.9%であった。 第1工程: 本実施例3においては、上記実施例1と逆にエチレンジアミン(EDA)に対してジメチルカーボネート(DMC)を滴下した。具体的には、エチレンジアミン(EDA)100mmol(6.0g)に対して、ジメチルカーボネート(DMC)100mmol(9.03g)を120℃の条件下で1.5時間かけて滴下した後、120℃で24時間撹拌して、モノカルボメトキシ体(MM体)とジカルボメトキシ体(DM体)とを含有する反応物を得た。 この反応物は、薄黄色の懸濁液であった。また、この反応物中のモノカルボメトキシ体(MM体)とジカルボメトキシ体(DM体)の生成比は、MM体:DM体=76:24であった。 第2工程: 上記実施例1と同様の操作を行い、上記反応物からモノカルボメトキシ体(MM体)を単離した。モノカルボメトキシ体(MM体)の純度は、上記実施例1と同様に約98%であった。 第3工程: 本実施例3においては、無機固体塩基触媒として酸化ストロンチウム(SrO)を使用した。無機固体塩基触媒としての酸化ストロンチウム(SrO)の調整は、次のようにして行った。炭酸ストロンチウム(SrCO3)10gを乳鉢により十分に粉砕した後、空気雰囲気下900℃で4時間焼成して酸化ストロンチウム(SrO)を調整した。この酸化ストロンチウム(SrO)は、乳鉢により十分に粉砕した後、無機固体塩基触媒として使用した。 モノカルボメトキシ体(MM体)の閉環反応は、無機固体塩基触媒として酸化ストロンチウム(SrO)を使用した以外は、上記実施例1と同様の操作により行った。得られた反応物は、薄く褐色を帯びた懸濁液であった。また、本実施例3における環化率は、60.4%であった。 第1工程: 本実施例4においては、上記実施例3と同様の反応温度及び操作を行い、モノカルボメトキシ体(MM体)とジカルボメトキシ体(DM体)とを含有する反応物を得た。この反応物は、薄黄色の懸濁液であった。また、この反応物中のモノカルボメトキシ体(MM体)とジカルボメトキシ体(DM体)の生成比は、MM体:DM体=76:24であった。 第2工程: 上記実施例1と同様の操作を行い、上記反応物からモノカルボメトキシ体(MM体)を単離した。モノカルボメトキシ体(MM体)の純度は、上記実施例1と同様に約98%であった。 第3工程: 本実施例4においては、無機固体塩基触媒として酸化ストロンチウム(SrO)の一部をナトリウム(Na)で置換した酸化物(以下、「Na置換酸化ストロンチウム−1(Na−SrO−1)」という。)を使用した。無機固体塩基触媒としてのNa置換酸化ストロンチウム−1(Na−SrO−1)の調整は、次のようにして行った。 炭酸ストロンチウム(SrCO3)10gに、ストロンチウム(Sr)に対するナトリウム(Na)のモル比が50モル%になるように炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)を添加し、乳鉢により十分に混合した後、空気雰囲気下900℃で4時間焼成してNa置換酸化ストロンチウム−1(Na−SrO−1)を調整した。このNa置換酸化ストロンチウム−1(Na−SrO−1)は、乳鉢により十分に粉砕した後、無機固体塩基触媒として使用した。 モノカルボメトキシ体(MM体)の閉環反応は、無機固体塩基触媒としてNa置換酸化ストロンチウム−1(Na−SrO−1)を使用した以外は、上記実施例1と同様の操作により行った。得られた反応物は、薄く褐色を帯びた懸濁液であった。また、本実施例4における環化率は、66.4%であった。 第1工程: 本実施例5においては、エチレンジアミン(EDA)に対するジメチルカーボネート(DMC)の滴下時の温度、及び、その後の反応温度を80℃としたこと以外は、上記実施例3と同様の操作を行い、モノカルボメトキシ体(MM体)とジカルボメトキシ体(DM体)とを含有する反応物を得た。この反応物は、白色の懸濁液であった。また、この反応物中のモノカルボメトキシ体(MM体)とジカルボメトキシ体(DM体)の生成比は、MM体:DM体=73:27であった。 第2工程: 上記実施例1と同様の操作を行い、上記反応物からモノカルボメトキシ体(MM体)を単離した。モノカルボメトキシ体(MM体)の純度は、上記実施例1と同様に約98%であった。 第3工程: 本実施例5においては、無機固体塩基触媒として上記実施例4とは異なる調整法で得られた酸化ストロンチウム(SrO)の一部をナトリウム(Na)で置換した酸化物(以下、「Na置換酸化ストロンチウム−2(Na−SrO−2)」という。)を使用した。無機固体塩基触媒としてのNa置換酸化ストロンチウム−2(Na−SrO−2)の調整は、次のようにして行った。 水酸化ストロンチウム・8水和物(Sr(OH)2・8H2O)10gに、ストロンチウム(Sr)に対するナトリウム(Na)のモル比が10モル%になるように炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)を添加し、乳鉢により十分に混合した後、空気雰囲気下900℃で4時間焼成してNa置換酸化ストロンチウム−2(Na−SrO−2)を調整した。このNa置換酸化ストロンチウム−2(Na−SrO−2)は、乳鉢により十分に粉砕した後、無機固体塩基触媒として使用した。 モノカルボメトキシ体(MM体)の閉環反応は、無機固体塩基触媒としてNa置換酸化ストロンチウム−2(Na−SrO−2)を使用した以外は、上記実施例1と同様の操作により行った。得られた反応物は、白色の固体であった。また、本実施例5における環化率は、約100%であった。 第1工程: 本実施例6においては、上記実施例5と同様の反応温度及び操作を行い、モノカルボメトキシ体(MM体)とジカルボメトキシ体(DM体)とを含有する反応物を得た。この反応物は、白色の懸濁液であった。また、この反応物中のモノカルボメトキシ体(MM体)とジカルボメトキシ体(DM体)の生成比は、MM体:DM体=73:27であった。 第2工程: 上記実施例1と同様の操作を行い、上記反応物からモノカルボメトキシ体(MM体)を単離した。モノカルボメトキシ体(MM体)の純度は、上記実施例1と同様に約98%であった。 第3工程: 本実施例6においては、無機固体塩基触媒として酸化マグネシウム(MgO)の一部をナトリウム(Na)で置換した酸化物(以下、「Na置換酸化マグネシウム(Na−MgO)」という。)を使用した。無機固体塩基触媒としてのNa置換酸化マグネシウム(Na−MgO)の調整は、次のようにして行った。 水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)10gに、マグネシウム(Mg)に対するナトリウム(Na)のモル比が10モル%になるように炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)を添加し、乳鉢により十分に混合した後、空気雰囲気下900℃で4時間焼成してNa置換酸化マグネシウム(Na−MgO)を調整した。このNa置換酸化マグネシウム(Na−MgO)は、乳鉢により十分に粉砕した後、無機固体塩基触媒として使用した。 モノカルボメトキシ体(MM体)の閉環反応は、無機固体塩基触媒としてNa置換酸化マグネシウム(Na−MgO)を使用した。また、反応条件として上記実施例1〜実施例5に対して、反応温度は同じ130℃としたが、加熱時間を3時間と短縮して行った。得られた反応物は、白色のスラリ状であった。また、本実施例6における環化率は、90%であった。 上記実施例1〜実施例6では、エチレン尿素を製造するにあたり、まず、第1工程において、エチレンジアミン(EDA)とジメチルカーボネート(DMC)との反応により、エチレンジアミン(EDA)のモノカルボメトキシ体(MM体)を合成した。この段階の反応においては、大気圧下で行うことが可能で、且つ、従来のエチレン尿素の製造法であるエチレンジアミン‐尿素法に比べ、かなり低い温度である80℃或いは120℃で反応を行うことができた。従って、この段階において、未反応のエチレンジアミンは極度に酸化されることがない。 次に、第2工程において、第1工程で合成したモノカルボメトキシ体(MM体)を単離した。この単離操作によってモノカルボメトキシ体(MM体)の純度が向上し、且つ、第1工程における未反応のエチレンジアミン(EDA)が除去された。従って、続く第3工程における閉環反応の際に、反応系のエチレンジアミンの含有量が少なく酸化されることも少なかった。 更に、第3工程においては、単離したモノカルボメトキシ体(MM体)に無機固体塩基触媒を作用させて閉環反応させエチレン尿素を合成した。この段階の反応においても、大気圧下で行うことが可能で、且つ、無機固体塩基触媒を作用させることにより、従来のエチレン尿素の製造法であるエチレンジアミン‐尿素法に比べ、かなり低い温度である130℃で反応を行うことができた。従って、この段階においても、残留する未反応のエチレンジアミン及びモノカルボメトキシ体(MM体)の末端アミノ基が極度に酸化されることがなかった。 このように、上記各実施例においては、各工程におけるエチレンジアミンの酸化が抑えられ、閉環反応後の反応物の黄褐変は、従来法に比べ大幅に軽減された。実際には、実施例1〜実施例4の反応物は薄く褐色を帯びた懸濁液であり、実施例5及び実施例6の反応物は白色の固体或いはスラリ状であった。これらの反応物は、簡単な操作で白度の高いエチレン尿素に精製することができた。これに対して、比較例1の反応物は濃い褐色の液体であり、環化率が低いことから、エチレン尿素の精製にはかなりの労力を必要とし、精製後のエチレン尿素には未だ黄変がみられた。 また、上記各実施例において、第1工程の反応物中のモノカルボメトキシ体(MM体)とジカルボメトキシ体(DM体)とのモル比において、モノカルボメトキシ体(MM体)の比率が、いずれも70モル%以上であった。このことにより、モノカルボメトキシ体(MM体)の閉環反応を経て得られるエチレン尿素の収率が向上すると共に、エチレンジアミンの酸化による反応物の黄褐変が更に抑えられた。 このように、各実施例においては、モノカルボメトキシ体(MM体)からエチレン尿素への環化率が、いずれも60%以上であり、特に実施例5及び実施例6においては、90%以上の環化率を実現することができた。このことにより、本実施形態においては、エチレン尿素の収率を高く維持することができ、工業的に適用可能な製造方法を提供することができる。 以上のことから、本実施形態においては、大気圧下の反応が可能で高圧反応容器を必要とせず、従来の方法よりも反応温度を下げることができるので反応物の黄褐変が抑えられ、且つ、工業的に適用可能なエチレン尿素の製造方法を提供することができる。 なお、本発明の実施にあたり、上記各実施例に限ることなく、次のような種々の変形例が挙げられる。(1)上記各実施例においては、モノカルボメトキシ体(MM体)を合成する第1工程と、このモノカルボメトキシ体(MM体)を単離する第2工程と、単離したモノカルボメトキシ体(MM体)に無機固体塩基触媒を作用させて閉環反応を行う第3工程によりエチレン尿素を合成した。しかし、本発明に係るエチレン尿素の製造方法はこれに限るものではなく、第2工程の単離操作を必須の要件とするものではない。すなわち、第2工程の単離を行わずに、第1工程の反応物に直接、無機固体塩基触媒を作用させて閉環反応を行うようにしてもよい。(2)上記各実施例においては、モノカルボメトキシ体(MM体)を経由してエチレン尿素を合成した。しかし、本発明に係るエチレン尿素の製造方法はこれに限るものではなく、エチレンジアミン(EDA)とジアルキルカーボネート(DAC)との混合物に無機固体塩基触媒を作用させて、中間体を経由せず直接、エチレン尿素を合成するようにしてもよい。(3)上記各実施例においては、第1工程における反応温度を80℃或いは120℃とし、反応時間を24時間として実施した。しかし、第1工程の反応温度及び反応時間はこれに限定されるものではなく、更に低い温度、或いは、これより高い温度で反応するようにしてもよい。また、反応時間もこれより短い時間で反応させるようにしてもよい。但し、120℃を超える温度で反応する際には、エチレンジアミンの酸化を考慮して短時間で反応を終えるようにしなければならない。(4)上記各実施例においては、第3工程における反応温度を130℃とし、反応時間を12時間或いは3時間として実施した。しかし、第3工程の反応温度及び反応時間はこれに限定されるものではなく、使用する無機固体塩基触媒の触媒活性を考慮して適宜選定するようにしてもよい。但し、130℃を超える温度で反応する際には、モノカルボメトキシ体(MM体)の末端アミノ基の酸化を考慮して短時間で反応を終えるようにしなければならない。 エチレンジアミンと一般式(1)(式中、R1及びR2は炭化水素基を示し、R1とR2は同一であってもよく異なっていてもよい。)に示すジアルキルカーボネートとの混合物に無機固体塩基触媒を作用させてエチレン尿素を合成することを特徴とするエチレン尿素の製造方法。 エチレンジアミンと一般式(1)(式中、R1及びR2は炭化水素基を示し、R1とR2は同一であってもよく異なっていてもよい。)に示すジアルキルカーボネートとの反応により合成される一般式(2)(式中、Rmは前記一般式(1)におけるR1又はR2の炭化水素基を示す。)に示すエチレンジアミンのモノカルボアルコキシ体に、無機固体塩基触媒を作用させて、当該モノカルボアルコキシ体を閉環反応させることを特徴とするエチレン尿素の製造方法。 エチレンジアミンと一般式(1)(式中、R1及びR2は炭化水素基を示し、R1とR2は同一であってもよく異なっていてもよい。)に示すジアルキルカーボネートとを反応させる第1工程と、 前記第1工程における反応物から一般式(2)(式中、Rmは前記一般式(1)におけるR1又はR2の炭化水素基を示す。)に示すエチレンジアミンのモノカルボアルコキシ体を単離する第2工程と、 前記第2工程で単離した前記モノカルボアルコキシ体に無機固体塩基触媒を作用させて、当該モノカルボアルコキシ体の閉環反応を行う第3工程とを有することを特徴とするエチレン尿素の製造方法。 前記第1工程における反応物は、前記一般式(2)に示すエチレンジアミンのモノカルボアルコキシ体と、一般式(3)(式中、Rm及びRnは前記一般式(1)におけるR1又はR2の炭化水素基を示し、RmとRnは同一であってもよく異なっていてもよい。)に示すエチレンジアミンのジカルボアルコキシ体を含有し、モノカルボアルコキシ体とジカルボアルコキシ体の総モル数に対してモノカルボアルコキシ体のモル数が70モル%以上であることを特徴とする請求項3に記載のエチレン尿素の製造方法。 前記無機固体塩基触媒は、アルカリ土類金属の酸化物からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載のエチレン尿素の製造方法。 前記無機固体塩基触媒は、アルカリ土類金属の酸化物を主体とし、当該アルカリ土類金属の一部をアルカリ金属で置換してなる酸化物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載のエチレン尿素の製造方法。 前記閉環反応において、前記一般式(2)に示す前記モノカルボアルコキシ体からの環化率が60%以上であることを特徴とする請求項5又は6に記載のエチレン尿素の製造方法。 【課題】大気圧下の反応が可能で高圧反応容器を必要とせず、従来の方法よりも反応温度を下げることができるので反応物の黄褐変が抑えられ、且つ、工業的に適用可能なエチレン尿素の製造方法を提供する。【解決手段】 エチレンジアミンとジアルキルカーボネートとの反応により合成される一般式(2)【化1】(式中、Rmは炭化水素基を示す。)に示すエチレンジアミンのモノカルボアルコキシ体に、無機固体塩基触媒を作用させて、当該モノカルボアルコキシ体を閉環反応させる。【選択図】なし