タイトル: | 公開特許公報(A)_有機EL素子 |
出願番号: | 2012148587 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | H01L 51/50,C09K 11/06,C07D 403/10,C07D 249/08 |
齋藤 健 大塚 岳夫 JP 2014011387 公開特許公報(A) 20140120 2012148587 20120702 有機EL素子 株式会社カネカ 000000941 齋藤 健 大塚 岳夫 H01L 51/50 20060101AFI20131217BHJP C09K 11/06 20060101ALI20131217BHJP C07D 403/10 20060101ALI20131217BHJP C07D 249/08 20060101ALI20131217BHJP JPH05B33/14 BC09K11/06 690C07D403/10C07D249/08 527 5 OL 13 3K107 4C063 3K107AA01 3K107BB01 3K107BB02 3K107CC02 3K107CC12 3K107CC33 3K107DD53 3K107DD59 3K107DD67 3K107DD68 3K107DD69 3K107FF14 3K107FF15 3K107FF20 4C063AA01 4C063BB06 4C063CC42 4C063DD08 4C063EE10 本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子に関し、特に、N−カルバゾリル基を含む発光層の改善に関する。なお、以下において、有機エレクトロルミネッセンス素子を「有機EL素子」と称することがある。 有機EL素子は、発光層を有し、この発光層は、通常、ホスト材料とドーパント材料で構成される。ここで、ホスト材料は、それ自身の発光能力は低いが、成膜性の高い材料であり、発光能力の高い他の材料を混合して用いられる。ドーパント材料は、それ自身の発光能力は高いが、単独での成膜が困難な発光材料である。ドーパント材料としては、蛍光材料もしくは燐光材料が一般的に知られている。 蛍光材料を使用した場合、内部量子効率の上限は25%であるが、燐光材料を使用すると内部量子効率の上限は100%になる。このため、燐光材料を用いた有機EL素子は、照明やディスプレイなど様々な分野で注目されている。 燐光材料を用いた有機EL素子を作製する場合、ホスト材料のS0−T1ギャップがドーパント材料のS0−T1ギャップよりも高い必要がある。(ここで、S0−T1ギャップとは一重項基底状態と三重項最低励起状態の断熱遷移エネルギーを意味する。)このため、青色のような高エネルギーの光を放出する有機EL素子を作製する場合、ホスト材料に要求されるS0−T1ギャップは高いものとなる。例えば、ドーパント材料としてFIrpic(非特許文献1)を用いた場合、FIrpicのS0−T1ギャップは2.6eVであるため、S0−T1ギャップが2.7eV程度以上のホスト材料が必要となる。 燐光材料用のホスト材料の性能を決める因子としては、S0−T1ギャップに加え、キャリア移動度、すなわち、ホール移動度と電子移動度も重要である。キャリア移動度は、発光層内の電流密度を決める因子の1つであり、一般的に、キャリア移動度の高いホスト材料を使用した有機EL素子は、低い駆動電圧においても高い電流密度が実現し、高輝度の光を放出する。 燐光材料用のホスト材料としては4、4’−ビス(N−カルバゾリル)ビフェニル(CBP)が有名である。CBPのキャリア移動度は、ホール移動度が10-3cm2/Vsオーダー、電子移動度が10-4cm2/Vsオーダーと報告されている(非特許文献2)。また、CBPは、S0−T1ギャップが2.6eVと報告されており(非特許文献3)、赤色燐光ドーパントや緑色燐光ドーパントのホスト材料としては高い性能を発揮するものの青色燐光ドーパント用のホスト材料としての性能は不十分である。 この問題を解決したのが特許文献1及び特許文献2に記載されているCDBPであり、この文献には、CDBPのS0−T1ギャップが2.7eV以上である旨が記載されている。また、CDBPは、N−カルバゾリル基を含む故にアモルファス状態が安定することが知られている。 CDBPの分子構造はCBPの分子構造に類似している。例えば、どちらの化合物も、分子内に2つのN−カルバゾリル基を有している。このため、CDBPは、CBPと同様に、ホール移動度に比べて電子移動度が非常に遅いと考えられる。 燐光用のホスト材料は、発光層内でドーパント材料を均一に発光させるという観点から、ホール移動度と電子移動度が同程度であるほうが望ましい。このため、ホストとしてCDBPのみを使用した有機EL発光素子の発光層には、電子移動度を向上させ、ホール移動度と電子移動度を同程度とすることが求められている。特許第4103491号公報特開2004−273128号公報Applied Physics Letters,79、2082(2001)Current Applied Physics,5、305(2005)Applied Physics Letters,83、569(2003) 本発明者らは、CDBPのホール移動度と電子移動度を測定し、電界強度の平方根が600から900V1/2/cm1/2の範囲において、ホール移動度が10-4cm2/Vsオーダー、電子移動度が10-6cm2/Vsオーダーであり、電子移動度のほうが100倍以上小さいことを見出した。このような電子移動度がホール移動度と比べて非常に小さいCDBPを使用した有機EL素子の発光層では、発光が陰極側の表面付近で優先的に起こり、発光層全体での均一な発光が起こりにくいと考えられる。そこで、本発明の課題は、CDBPと共に発光層に導入することによって発光層の電子移動度が向上し、発光層全体の均一な発光を実現する青色燐光用ホスト材料を提供することである。 上記課題に鑑み、本発明者らは、発光層に導入することで電子移動度が向上し、かつ、CDBPと共蒸着可能なホスト材料を見出した。 すなわち、本発明の有機EL素子は、発光層として、一重項基底状態と三重項最低励起状態の断熱遷移エネルギーであるS0−T1ギャップが2.7eV以上3.5eV以下の下記一般式(1)と(2)の双方の化合物を含むことを特徴とする厚さ10から100nmのアモルファス膜層を備える。(式中、Aはベンゾトリアゾリル基またはAが結合するベンゼン環と共にベンゾトリアゾールを形成するのに必要な原子群を表し、BはN−カルバゾリル基またはBが結合するベンゼン環と共にカルバゾールを形成するのに必要な原子群を表す。R1からR4はそれぞれ独立しており、水素、ハロゲン原子、置換または無置換アリール基。置換または無置換アルキル基のいずれかから選択される。) 好ましい実施形態としては、前記R1からR4の全てが無置換アルキル基となることである。 さらに好ましい実施形態としては、前記発光層が、一般式(1):一般式(2)=3:7から7:3の範囲のモル数比で構成されることである。 特に好ましい実施形態としては、前記発光層において、「陰極側の界面が前記一般式(1)の化合物のみで構成されること」と「陽極側の界面が前記一般式(2)の化合物のみで構成されること」の両方、あるいは、いずれか一方を満たすことである。 本発明は、CDBPと共蒸着可能な青色燐光用ホスト材料を発光層に含み、また、その発光層は高いホール移動度と電子移動度を有するので、有機EL素子として優れる。本発明の実施形態に係る有機EL素子の略示断面構成である。実施例3に記した化合物(3)のキャリア移動度測定の結果である。実施例4に記したCDBPのキャリア移動度測定の結果である。 以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係る有機EL素子の略示断面構成を示している。この図に示す素子は、基板1、陽極2、発光ユニット3(3−1から3−5)、陰極4を備えている。 有機EL素子に設けられる基板1については特に制限はなく、公知の基板が使用可能であり、例えば、ガラスのような透明基板、シリコン基板、フレキシブルなフィルム基板などから適宜選択され、用いられる。基板側から光を取り出すボトムエミッション型の有機EL素子の場合、基板1は、発光する光のロスを減少する観点から、可視光域における透過率が80%以上であることが好ましく、95%以上であることがさらに好ましい。 基板1上に設けられる陽極2についても特に制限はなく、公知のものが使用できる。例えば、インジウム・スズ酸化物(ITO)、インジウム・亜鉛酸化物(IZO)、SnO2、ZnOなどがあげられる。中でも、発光層から発生した光の取り出し効率やパターニングの容易性の観点から、透明性が高いITOあるいはIZOを好ましく使用することができる。また、陽極中には、必要に応じて、例えばアルミニウム、ガリウム、ケイ素、ホウ素、二オブなどの1種以上のドーパントがドーピングされていてもよい。 陽極2は、透明性の観点から、可視光域における透過率が70%以上であることが好ましく、80%以上であることがさらに好ましく、90%以上であることが特に好ましい。基板1上に陽極2を形成する方法については特に制限されず、例えば、スパッタ法や熱CVD法等により形成することができる。 次に発光ユニット3について説明する。発光ユニット3は、有機化合物、高分子化合物、遷移金属錯体を含んだ少なくとも1層のアモルファス膜で構成される発光層3−3を有している。発光ユニット3は、積層構造を有しても良く、例えば、発光層の陽極側にホール注入層3−1やホール輸送層3−2を有し、発光層の陰極側に電子輸送層3−4や電子注入層3−5を有する構造が採用される。 発光ユニット3を構成する各層の成膜方法については特に制限はなく、真空蒸着法やスピンコート法などの方法によって形成することができる。また、前記のホール注入層3−1、ホール輸送層3−2、発光層3−3、電子輸送層3−4、電子注入層3−5などに用いられる物質についても特に制限がなく、公知の任意の物質を適宜用いることができる。 発光ユニット3は、ホール輸送層3−2を有していることが好ましい。ホール輸送層に含まれる物質の例としては、特に制限されるものではなく、ホール輸送物質として公知の物質、例えば、アリールアミン系化合物、イミダゾール系化合物、オキサジアゾール系化合物、オキサゾール系化合物、トリアゾール系化合物、カルコン系化合物、スチリルアントラセン系化合物、スチルベン系化合物、テトラアリールエテン系化合物、トリアリールアミン系化合物、トリアリールエテン系化合物、トリアリールメタン系化合物、フタロシアニン系化合物、フルオレノン系化合物、ヒドラジン系化合物、カルバゾール系化合物、N−ビニルカルバゾール系化合物、ピラゾリン系化合物、ピラゾロン系化合物、フェニルアントラセン系化合物、フェニレンジアミン系化合物、ポリアリールアルカン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリフェニレンビニレン系化合物から選ばれる1種類以上を挙げることができる。特に、アリールアミン化合物を含有するホール輸送層は、アリールアミン化合物がラジカルカチオン化し易いため、ホール輸送層から発光層へのホール輸送効率が上昇する。 アリールアミン化合物を含有するホール輸送層の中でも特に好ましいのは、トリアリールアミン誘導体を含有するホール輸送層であり、さらに好ましいのは、4、4‘−ビス[N−(2−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(「α―NPD」、または「NPB」と称される場合がある)を含有するホール輸送層である。 発光ユニット3は、電子輸送層3−4を有していることも好ましい。電子輸送層に含まれる物質の例としては、特に制限されるものではなく、電子輸送物質として公知の物質、例えば、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(「BCP」と称される場合がある)、トリス[(8−ハイドロキシキノリナート)]アルミニウム(III)(「Alq3」と称される場合がある)やその誘導体が挙げられる。中でも、汎用性の観点から、Alq3が好適に用いられる。 発光ユニット3に含まれる発光層3−3は、本発明の特徴的な部分であり、以下に詳細を説明する。 本発明における発光層3−3は、一般的な有機EL素子の発光層と同様に、ホスト材料とドーパント材料で構成される。ここで、ホスト材料は、それ自身の発光能力は低いが、成膜性の高い材料であり、発光能力の高い他の材料を混合して用いられる。ドーパント材料は、それ自身の発光能力は高いが、単独での成膜が困難な発光材料である。 ドーパント材料としては、通常、蛍光あるいは燐光を放出する有機分子、高分子、遷移金属錯体が使われる。特に、高い発光効率を示す有機EL素子の発光層には、燐光を放出する化合物を使用することが望ましい。 燐光を放出するドーパント材料としては、イリジウム錯体が有名である。特に、緑色燐光を放出するドーパント材料としてはIr(ppy)3が有名であり、青色燐光を放出するドーパント材料としてはFIrpic、FIr6が有名である。 ホスト材料としては、良好な成膜性を示し、かつ、ドーパント材料の良好な分散性を確保する化合物が望まれる。加えて、青色燐光ドーパントに対して使用するホストとしては、これらの条件に加え、S0−T1ギャップが2.7eV以上となる化合物を使用するのが好ましい。 上記の観点から、青色燐光用ホスト材料の例としては、CDBPのようなカルバゾール基を含む化合物が好ましい。 さらに、高効率の有機EL素子を実現するホスト材料としては、ホスト材料のホール移動度と電子移動度が共に高く、かつ、これら2種類の移動度が同程度となることが好ましい。ただし、この条件は、単一の化合物のみで実現する必要はない。つまり、複数の化合物をホスト材料として使用し、ホール移動度と電子移動度を共に高く、かつ、同程度にしても良い。 複数の化合物を使用する例としては、一般式(1)で示したカルバゾリル基を含む化合物と一般式(2)で示したベンゾトリアゾリル基を含む化合物の双方をホスト化合物として使用することが挙げられる。この例では、「ホール移動度が高い一方で電子移動度が低いカルバゾリル基を含む化合物」と「電子移動度が高い一方でホール移動度が低いベンゾトリアゾリル基を含む化合物」の双方を使用することにより、ホール移動度と電子移動度が共に高く、かつ、同程度となることを実現する。 この一般式(1)と(2)の双方の化合物を含む発光層において、好ましい実施形態は、一般式(1)及び(2)のR1からR4の全てが無置換アルキル基となることである。 さらに好ましい実施形態としては、一般式(1)と(2)のモル数の比が、一般式(1):一般式(2)=3:7から7:3の範囲に含まれることである。 加えて、特に好ましい実施形態としては、「陰極側の界面が一般式(1)の化合物のみで構成されること」と「陽極側の界面が一般式(2)の化合物のみで構成されること」の両方、あるいは、いずれか一方を満たすことである。 次に、陰極4について説明する。陰極4に用いられる材料は、好ましくは仕事関数の小さい金属、または、その合金や金属酸化物等が用いられる。仕事関数の小さい金属としては、アルカリ金属ではLi等、アルカリ土類金属ではMg、Ca等が例示される。また、希土類金属等からなる金属単体、あるいは、これらの金属とAl、In、Ag等の合金等が用いられることもある。さらに、特開2001−102175号公報等に開示されているように、陰極に接する有機層として、アルカリ土類金属イオン、アルカリ金属イオンからなる群から選択される少なくとも1種を含む有機金属錯体化合物を用いることもできる。この場合、陰極として、当該錯体化合物中の金属イオンを真空中で金属に還元し得る金属、例えばAl、Zr、Ti、Si等もしくはこれらの金属を含有する合金を用いることが好ましい。 本発明による有機EL素子は、使用環境における劣化を最小限に抑えるべきである。このためには、素子の一部または全体を、不活性ガス雰囲気下で封止ガラスや金属キャップを用いて封止する、あるいは、紫外線硬化樹脂などによる保護層で被覆するのが好ましい。 本発明の有機EL素子は、発光層内のホール移動度と電子移動度が共に高い値をとり、かつ、双方の移動度が同程度の値をとるため、高い発光効率を示す。この結果、本発明の有機EL素子は、消費電力の少ない省エネルギーの光源になり、ディスプレイ装置や照明装置などに有効に適用できる。 一般式(1)において、Aをベンゾトリアゾリル基、BをN−カルバゾリル基、R1とR2の双方をメチル基とした以下に示す化合物を化合物(3)とする。 以下に化合物(3)の合成方法、S0−T1ギャップの測定方法とその結果、キャリア移動度の測定方法とその結果、化合物(3)を用いた有機EL素子について記す。 <実施例1:化合物(3)の合成> 窒素雰囲気下、2,2’−ジメチル−4,4’−ジヨードビフェニル(以下、化合物(4)と称する)(2.00g)、カルバゾール(617mg)、ビス(トリ−tert−ブチルホスフィン)パラジウム(0)(118mg)、tert−ブトキシドナトリウム(886mg)、無水キシレン(25ml)の混合溶液を加熱還流下で3時間撹拌した後、室温まで放冷した。得られた混合物を酢酸エチルで希釈し、水と飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去して、さらにシリカゲルクロマトグラフィー(n−ヘキサン、n−ヘキサン/塩化メチレン=10/1)により精製した。以下に示すこの手順により、白色個体の化合物(5)を529mg(収率24%)得た。 化合物(5)について1H−NMRを測定したところ、次の結果が得られた。1H−NMR(400MHz、CDCl3);δ=8.14(d、2H)、7.69(s、1H)、7.61(d、1H)、7.49−7.40(m、6H)、7.30−7.25(m、3H)、6.94(d、1H)、2.13(s、3H)、2.12(s、3H)。 次に、窒素雰囲気下で化合物(5)(509mg)、ベンゾトリアゾール(386mg)、(1S,2S)−(+)−N,N’−ジメチルシクロヘキサンー1,2−ジアミン(46mg)、ヨウ化銅(1)(31mg)、リン酸カリウム(917mg)、無水ジメチルスルホキシド(5ml)の混合溶液を150℃で11時間撹拌した後、室温まで放冷した。得られた混合物を塩化メチレンで希釈し、1%塩酸水溶液、水、飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去して、さらにシリカゲルクロマトグラフィー(n−ヘキサン/塩化メチレン=1/2、n−ヘキサン/酢酸エチル=10/1、5/1)により精製した。以下に示すこの手順により白色個体の化合物(3)331mg(収率66%)を得た。 化合物(3)について1H−NMRを測定したところ、次の結果が得られた。1H−NMR(400MHz、CDCl3);δ=8.22−8.18(m、3H)、7.89(d、1H)、7.82(d、1H)、7.73(dd、1H)、7.62(ddd、1H)、7.56−7.45(m、8H)、7.42(d、1H)、7.35−7.31(m、2H)、2.34(s、3H)、2.26(s、3H)。 <実施例2:化合物(3)のSO−T1ギャップの測定> 化合物(3)を77Kの2−MeTHF溶媒中に分散させた。この化合物の燐光スペクトルを測定したところ、T1状態の零点振動準位からS0状態の零点振動準位への遷移と帰属されるピークが3.0eV(410nm)の位置に現われた。この3.0eVをS0−T1断熱遷移エネルギーであるS0−T1ギャップとした。 <実施例3:化合物(3)のキャリア移動度の測定> 本稿に示されたキャリア移動度はOrganic Photorecepters for Imagong Systems(P.M.Borsenberg、D.S.Weiss著、Marcel Dekker社、1993年)に記載されているようなTime of Flightキャリア移動度測定法により測定した。測定の詳細は下記の通りである。 ITOガラス基板上に化合物(3)を真空蒸着法により3.5μm厚(蒸着速度:1nm/sec)で形成した。次に化合物(3)の上に金を9nm厚だけ真空蒸着し(蒸着速度:0.02nm/sec)、電極を形成した。この手順により得られたITO/化合物(3)/Au素子をTOF測定用素子とした。 TOF測定用素子の金電極側に波長337nmのパルスレーザーを照射し、キャリア、すなわち、ホールと電子を金電極側界面に発生させた。 次に、TOF測定素子の金電極とITO電極の間に強度Fの電界を印加した。すると、印加された電界に誘起され、キャリアが金電極側からITO電極側へ移動した。ここで、金電極を陽極、ITO電極を陰極とした場合はホールが移動し、金電極を陰極、ITO電極を陽極とした場合は電子が移動した。 このキャリア移動(ホール移動あるいは電子移動)によって生じた電流、いわゆる光誘起電流の時間変化をオシロスコープで測定した 光誘起電流が急激に低下するまでの時間に着目し、これを移動時間τとした。 印加した電界強度F、移動時間τ、化合物(3)の膜厚d(本実施例では3.5μm)を次の式に代入し、キャリア移動度μを評価した。μ=d/(Fτ)。 測定結果を図2に示した。この図は、横軸を電界強度F、縦軸を移動度μとして測定結果をプロットしたものである。 電界強度Fが630(V/cm)1/2=396900V/cmから1080(V/cm)1/2=1166400V/cmの全ての領域において、電子移動度のほうがホール移動度よりも30倍以上大きかった。電界強度Fが900(V/cm)1/2=810000V/cmの場合のキャリア移動度は、ホール移動度が1.2×10-6cm2/Vs、電子移動度が1.0×10-4cm2/Vsであった。 <実施例4:CDBPのキャリア移動度測定> 実施例3と同じ方法で、ITO/CDBP(1.6μm)/Au(90nm)のTOF測定用素子を作製した。 このTOF測定用素子を使用し、実施例3と同じ方法によってキャリア移動度を測定した。その結果を示したものが図3である。 電界強度Fが610(V/cm)1/2=372100V/cmから930(V/cm)1/2=864900V/cmの全ての領域において、ホール移動度のほうが電子移動度よりも10倍以上大きかった。電界強度Fが900(V/cm)1/2=810000V/cmの場合のキャリア移動度は、ホール移動度が1.6×10-4cm2/Vs、電子移動度が2.8×10-6cm2/Vsであった。 <実施例5:化合物(6)のキャリア移動度測定> 実施例1と同様の方法により、下記の化合物(6)を合成した。 実施例3と同じ方法で、ITO/化合物(6)(2.5μm)/Au(90nm)のTOF測定用素子を作製した。 このTOF測定用素子を使用し、実施例3と同じ方法によってキャリア移動度の測定を試みた。しかし、測定の最中に、アモルファス膜の大部分に黄白色の結晶が現れてしまい、光誘起電流を測定することができなかった。つまり、キャリア移動度を求めることもできなかった。 <実施例6:アモルファス膜の安定性> 実施例3に記した化合物(3)のキャリア移動度測定において、測定終了後に化合物(3)のアモルファス膜を肉眼で観察したところ、結晶化された部位は見られなかった。したがって、化合物(3)は、アモルファス膜としての安定性が高いと考えられる。 さらに、実施例4に記したCDBPのキャリア移動度測定においても、測定終了後にCDBPのアモルファス膜を肉眼で観察したところ、結晶化された部位は見られなかった。したがって、CDBPは、アモルファス膜としての安定性が高いと言え、これは特許文献1及び特許文献2の記載事項に一致する。 一方、実施例5に記した化合物(6)のキャリア移動度測定においては、既に述べたように、測定の最中にアモルファス膜の大部分に黄白色の結晶が現れてしまった。 以上の結果から、化合物(3)は、ベンゾトリアゾリル基に加えてカルバゾリル基も含む故にアモルファス膜としての安定性が高いと考えられる。 <実施例7:化合物(3)を使用した有機EL素子> 陽極ITO上にホール輸送層として前記のα―NPDのアモルファス膜を真空蒸着法により形成した(膜厚:25nm)。 次いで発光層として前記の化合物(3)とFIr6を真空中で共蒸着し、35nmのアモルファス膜を形成した。このアモルファス膜において、化合物(3)とFIr6の割合は、質量比で化合物(3):FIr6=9:1となるようにした。 この発光層の上に正孔阻止層として前記のBCPのアモルファス膜を真空蒸着法により形成した(膜厚:10nm)。 この正孔阻止層の上に電子輸送層として前記のAlq3のアモルファス膜を真空蒸着法により形成した(膜厚:40nm)。 この電子輸送層の上に陰極としてLiFとMg:Agをそれぞれ1nm、100nm真空蒸着した。 上記の手順で作製された有機EL素子は、青色の燐光を放出した。この素子の電界発光スペクトルを測定したところ、FIr6の光励起発光スペクトルと同じ形状のスペクトルが得られた。電流発光効率は、電流密度が0.005mA/cm2の時に0.67cd/Aであった。 <実施例8:CDBPを使用した有機EL素子> 実施例7と同じ方法により発光層のホスト材料としてCDBPを使用した有機EL素子を作製した。すなわち、CDBPとFIr6の共蒸着によって作られた厚さ35nmのアモルファス膜を発光層として有する有機EL素子を作製した。この有機EL素子の発光層において、CDBPとFIr6の割合は、質量比でCDBP:FIr6=9:1となるようにした。 この有機EL素子は、青色の燐光を放出した。この素子の電界発光スペクトルを測定したところ、FIr6の光励起発光スペクトルと同じ形状のスペクトルが得られた。 <実施例9:CDBPを使用し、かつ、正孔阻止層を含まない有機EL素子> 実施例8に記されたCDBPを有する有機EL素子の作製において、正孔阻止層であるBCPの真空蒸着の手順を省き、新たな有機EL素子を作製した。 この有機EL素子を電界駆動させたところ、発光はほとんど観測されなかった。 <参考例10:化合物(3)とCDBPの双方を使用した有機EL素子> 実施例4、実施例8、実施例9の結果より、発光層のホスト材料としてCDBPのみを使用した有機EL素子は、CDBPのホール移動度が電子移動度よりも10倍以上大きいため、発光層内の陰極側の界面付近にあるドーパント材料(本稿の例ではFIr6)のみが発光しており、発光層全体での発光は起こっていないと考えられる。 一方、実施例3と実施例7の結果から、発光層のホスト材料として化合物(3)のみを使用した有機EL素子は、化合物(3)の電子移動度がホール移動度よりも30倍以上大きいため、発光層内の陽極側の界面付近にあるドーパント材料のみが発光し、発光層全体での発光は起きていないと推測される。 したがって、発光層のホスト材料として化合物(3)とCDBPの双方を使用した有機EL素子は、発光層の全領域でドーパント材料の発光が起きると考えられ、高効率の発光素子として期待できる。 同様に、発光層のホスト材料として一般式(1)の化合物と一般式(2)の化合物の双方を使用した有機EL素子は、発光層の全領域でドーパント分子の発光が起きると考えられ、高効率の発光素子として期待できる。 一重項基底状態と三重項最低励起状態の断熱遷移エネルギーであるS0−T1ギャップが2.7eV以上3.7eV以下の下記一般式(1)と(2)の化合物の双方を含むことを特徴とする厚さ10から1000nmのアモルファス膜層を備えた有機エレクトロルミネッセンス素子。(式中、Aはベンゾトリアゾリル基またはAが結合するベンゼン環と共にベンゾトリアゾールを形成するのに必要な原子群を表し、BはN−カルバゾリル基またはBが結合するベンゼン環と共にカルバゾールを形成するのに必要な原子群を表す。R1からR4はそれぞれ独立しており、水素原子、ハロゲン原子、置換または無置換アリール基、置換または無置換アルキル基のいずれかから選択される。) 前記R1からR4の全てが無置換アルキル基であることを特徴とする請求項1の有機エレクトロルミネッセント素子。 前記アモルファス膜層が、一般式(1):一般式(2)=3:7から7:3の範囲のモル数の比で構成される、請求項1から2のいずれかの有機エレクトロルミネッセント素子。 前記アモルファス膜層において、陰極側の界面が前記一般式(1)の化合物のみで構成される、請求項1から3のいずれかの有機エレクトロルミネッセント素子。 前記アモルファス膜層において、陽極側の界面が前記一般式(2)の化合物のみで構成される、請求項1から4のいずれかの有機エレクトロルミネッセント素子。 【課題】発光層に導入することで電子輸送性を向上させ、その結果、発光層全体が均一に発光し、かつ、CDBPと共蒸着可能な青色燐光用ホスト材料を提供する。【解決手段】有機EL素子は、一重項基底状態と三重項最低励起状態の断熱遷移エネルギーであるS0−T1ギャップが2.7eV以上の下記一般式(1)と(2)の双方の化合物を含むアモルファス膜層を備える。(式中、Aはベンゾトリアゾリル基またはAが結合するベンゼン環と共にベンゾトリアゾールを形成するのに必要な原子群を表し、BはN−カルバゾリル基またはBが結合するベンゼン環と共にカルバゾールを形成するのに必要な原子群を表す。)【選択図】なし