タイトル: | 公開特許公報(A)_タンパク質のC末端ペプチドを濃縮する方法及びタンパク質のC末端配列解析法 |
出願番号: | 2012140782 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | C07K 1/22,C12Q 1/37,C07K 1/36,G01N 33/68,G01N 27/62 |
九山 浩樹 中島 ちひろ JP 2014005221 公開特許公報(A) 20140116 2012140782 20120622 タンパク質のC末端ペプチドを濃縮する方法及びタンパク質のC末端配列解析法 株式会社島津製作所 000001993 岡田 正広 100100561 九山 浩樹 中島 ちひろ C07K 1/22 20060101AFI20131213BHJP C12Q 1/37 20060101ALI20131213BHJP C07K 1/36 20060101ALI20131213BHJP G01N 33/68 20060101ALI20131213BHJP G01N 27/62 20060101ALI20131213BHJP JPC07K1/22C12Q1/37C07K1/36G01N33/68G01N27/62 V 9 1 OL 14 2G041 2G045 4B063 4H045 2G041CA01 2G041DA04 2G041DA05 2G041EA03 2G041FA12 2G041GA06 2G041GA09 2G041HA02 2G041KA01 2G041LA07 2G045AA34 2G045DA35 2G045DA36 4B063QA13 4B063QQ36 4B063QQ79 4B063QR16 4B063QR48 4B063QS02 4B063QS39 4B063QX01 4H045AA50 4H045EA50 4H045GA26 本発明は、ペプチド構造解析に関する。より具体的には、本発明はタンパク質からC末端ペプチド断片を分離することで濃縮する方法、及び濃縮したタンパク質C末端配列を解析する方法に関する。本発明は、医薬、食品及びタンパク質受託分析の分野で適用されうる。 タンパク質のC末端配列解析においては、タンパク質のC末端ペプチドの濃縮が行われることが多い。タンパク質のC末端ペプチドの濃縮方法は、一般的に、化学修飾、酵素消化及び分離の工程が組合せられている。濃縮されたC末端ペプチド断片は、質量分析等の分析に供される。例えば非特許文献1(Kuyama et al., Proteomics, 2008, 8, 1539-1550)においては、タンパク質を酵素消化(LysCを使用)及び化学修飾(スクシンイミジルオキシカルボニルメチルトリス(2,4,6−トリメトキシフェニル)ホスホニウムブロミドを使用)した後、C末端ペプチド断片を分離により濃縮し、質量分析に供している。 非特許文献2(Ishii, et al., Methods Enzymol., 1983, 91, 378-383)及び非特許文献3(Sechi et al., Anal.Biochem., 2000, 72, 3374-3378)においては、タンパク質を酵素消化した後、C末端ペプチド断片を分離(アンヒドロトリプシンを使用)により濃縮し、質量分析に供している。 非特許文献4(Shimizu, et al., Eur J Biochem., 2000, 267, 2380-2389)においては、タンパク質を消化し、C末端ペプチド断片を分離により濃縮した後、カルボキシペプチダーゼによる逐次分解法を用いたラダーシーケンシングに供している。 非特許文献5(Kosaka, et al., Anal Chem., 2000, 72, 1179-1185)においては、タンパク質を消化(50%18Oラベル化水を含むバッファ使用)し、その後、18O/16Oラベルされたペプチド断片を質量分析に供している。プロテオミクス(Proteomics)、2008年、第8巻、p.1539−1550メソッズ・イン・エンザイモロジー(Methods in Enzymology)、1983年、第91巻、p.378−383アナリティカル・バイオケミストリ(Analytical Biochemistry)、2000年、第72巻、p.3374−3378ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・バイオケミストリ(European Journal of Biochemistry)、2000年、第267巻、p.2380−2389アナリティカル・ケミストリ(Analytical Chemistry)、2000年、第72巻、p.1179−1185 非特許文献1の方法は、C末端がリジン残基であるタンパク質に適用することができない。また、化学修飾を行うことが必須であるため、サンプルロスの問題がある。 非特許文献2及び3の方法では、アンヒドロトリプシンを用いたC末端ペプチド断片捕捉の際の非特異吸着の問題がある。さらに、非特許文献2及び3の方法は、C末端がリジン残基であるタンパク質とC末端がアルギニン残基であるタンパク質との両方に適用できない。C末端がリジン残基であるタンパク質及びC末端がアルギニン残基であるタンパク質の総和が天然のタンパク質全体の23%(Methanococcus jannasciiの場合)〜13%(Homo sapiensの場合)を占めることを考慮すると、当該方法は、適用できないタンパク質がきわめて多い。 非特許文献4の方法においては、カルボキシペプチダーゼの基質特異性が非常に高いため、適用できないタンパク質がしばしばある。また、C末端からアミノ酸残基を1個ずつ開裂させることが必要になるが、アミノ酸残基の種類によって切断速度が異なるため、条件設定がきわめて難しい。 非特許文献5の方法によるPMFカバレッジは50%未満である。従って、目的とするC末端ペプチドがスペクトル上で見つからない場合が多い。また、当該方法においては、消化酵素に通常トリプシンが用いられるが、この場合において、C末端がリジン残基であるタンパク質とC末端がアルギニン残基であるタンパク質との両方に適用できない。すなわち、非特許文献3における場合と同様に、適用できないタンパク質がきわめて多い。 そこで本発明の目的は、多くのタンパク質に適用可能で、タンパク質のC末端修飾及びN末端修飾を必須としない、簡便なC末端ペプチド濃縮法を提供することにある。 本発明者らは、タンパク質の消化をアルギニン残基C末端側で行い、C末端ペプチド断片以外のペプチド断片を、アルギニンを認識する固相担体を用いて除去することによって、上記本発明の目的が達成されることを見出し、本発明を完成するに至った。 本発明は、以下の発明を含む。(1) タンパク質を、アルギニン残基のC末端切断能を有するエンドプロテイナーゼを用いた消化に供し、C末端ペプチド断片とその他のペプチド断片とを含む消化物を得る工程と、 前記消化物を、アルギニンへの結合能を有する固相担体への接触に供し、前記その他のペプチド断片を前記固相担体で捕捉することによって、前記C末端ペプチド断片を分離する工程とを含む、タンパク質のC末端ペプチドを濃縮する方法。 なお、本発明においては、「タンパク質のC末端ペプチド」と「タンパク質のC末端ペプチド断片」とは同じ意味で用いる。(2) 前記アルギニンへの結合能を有する固相担体が、一般式−R1−B(OH)2(R1は、二価の有機基である)で表される官能基を有するものであり、前記固相担体による前記ペプチド断片の捕捉を、一般式R2COCOR3(R2及びR3は、それぞれ、同一又は異なっていてよい炭素数1〜8のアルキル基である)で表されるジケトン存在下で行う、(1)のタンパク質のC末端ペプチドを濃縮する方法。(3) 前記−R1−B(OH)2基が、−NH−mC6H4−B(OH)2で表される基である、(2)のタンパク質のC末端ペプチドを濃縮する方法。(4) 前記エンドプロテイナーゼがArgCである、(1)〜(3)のいずれかのタンパク質のC末端ペプチドを濃縮する方法。(5) 前記ArgCがmouse submaxillary grand又はClostridium hystriticum由来の酵素である、(4)のタンパク質のC末端ペプチドを濃縮する方法。(6) 前記タンパク質のC末端がリジン残基である、(1)〜(5)のいずれかのタンパク質のC末端ペプチドを濃縮する方法。(7) 前記タンパク質のN末端アミノ基及び/又はC末端カルボキシル基がフリーであり、N末端修飾工程及びC末端修飾工程のいずれも行わない、(1)〜(6)のいずれかのタンパク質のC末端ペプチドを濃縮する方法。(8) (1)〜(7)のいずれかの方法によって、タンパク質からC末端ペプチド断片を濃縮する工程と、濃縮された前記C末端ペプチド断片を質量分析に供し、アミノ酸配列を決定する工程とを含む、タンパク質のC末端配列解析法。(9) 前記質量分析に供される前に、電荷を有する求核基を有する化合物を用いて、前記濃縮されたペプチドの末端アミノ基の修飾が行われる、(8)のタンパク質のC末端配列解析法。 本発明により、多くのタンパク質に適用可能で、タンパク質のC末端修飾及びN末端修飾を必須としない、簡便なC末端ペプチド濃縮法が可能になる。本発明の概念図である。superoxide dismutase(SODC)及びmyoglobin(MYG)からそれぞれ得られたC末端ペプチド断片(C-terminal peptide)のMSスペクトル(a)及び(b)である。carbonic anhydrase II(CAH2)及びbeta-lactalbumin(LACB)からそれぞれ得られたC末端ペプチド断片のMSスペクトル(c)及び(d)である。superoxide dismutase(SODC)及びmyoglobin(MYG)からそれぞれ得られたC末端ペプチド断片のMALDI−PSD解析結果(a)及び(b)である。carbonic anhydrase II(CAH2)及びbeta-lactalbumin(LACB)からそれぞれ得られたC末端ペプチド断片のMALDI−PSD解析結果(c)及び(d)である。 本発明の概要を図1に示す。図1中、ペプチド鎖部分は模式的に示し、アルギニン残基をイタリック体のRで示す。さらに、ペプチド鎖のN末端アミノ基及びC末端カルボキシル基を具体的に表示している。図1挿入図内(四角囲み内)においては、アルギニン残基の側鎖構造を具体的に表示している。以下、図1を参照して本発明を説明する。[1.タンパク質] 本発明におけるタンパク質(Protein)には、ポリペプチド全般が含まれ、具体的には、タンパク質(例えばアミノ酸残基数1,000超、1,000,000以下)だけでなく、それより短い鎖長を有するペプチド(例えばアミノ酸残基数30以上、1,000以下)も含まれる。 本発明の方法に供されるタンパク質は、C末端残基がアルギニン残基でない限り、どのようなタンパク質であってもよい。 例えば、本発明におけるタンパク質は、N末端アミノ基及びC末端カルボキシル基のいずれも、フリーであるか否かを問わない。 また、本発明におけるタンパク質は、C末端残基がリジン残基であるか否かを問わない。 さらに、本発明におけるタンパク質は、通常の前処理として還元アルキル化等の処理を経たものであってよい。[2.消化] 本発明におけるタンパク質は、消化工程に供される。タンパク質のN末端及びC末端の少なくともいずれかがフリーである場合であっても、そのようなフリーのN末端(NH2基)及び/又はC末端(CO2H基)を修飾しておく必要はない。しかしながら本発明は、そのような修飾を事前に行っておくことを特に除外するものではない。 消化においては、アルギニン残基のC末端側での切断能を有するエンドプロテイナーゼ条件下に供され、C末端ペプチド断片とその他のペプチド断片とを含む消化物が得られる。このようなエンドプロテイナーゼの具体例は、ArgCである。ArgCは、mouse submaxillary grand又はClostridium hystriticum由来の酵素であってよい。このようなエンドプロテイナーゼの使用により生じたC末端ペプチド断片とその他のペプチド断片とでは、前者がアルギニン残基を有さず、後者がアルギニン残基を有している点で構造上の相違がある。[3.分離] 消化工程で得られたC末端ペプチド断片とその他のペプチド断片との構造上の差は、分離工程における固相担体への結合能の有効な差として表れる。 分離工程においては、C末端ペプチド断片とその他のペプチド断片とを含む消化物をアルギニン残基への結合能を有する固相担体に接触させ、その他のペプチド断片を前記固相担体で捕捉すること、すなわちアルギニン残基含有ペプチドをスカベンジングすること(Scavenging of Arg-containing peptides)によって、C末端ペプチド断片(C-terminal peptide)を分離する。 アルギニン残基への結合能を有する固相担体は、特異的にアルギニン残基と共有結合可能な官能基と担体部とを有するもの、すなわち当該官能基が担体部に固定されているものであればよい。アルギニン残基と当該官能基との結合は、直接的結合であってもよいし、他の構造を介した間接的結合であってもよい。 固相担体におけるアルギニン残基と共有結合可能な官能基が例えば一般式−R1−B(OH)2で表される基である場合、当該官能基は、一般式R2COCOR3で表されるジケトン存在下及びアルカリ性条件下で、アルギニン残基と共有結合が可能である。上記官能基の一般式において、上記R1は、二価の有機基である。当該有機基は、例えば置換されていてもよいアリーレン基(好ましくはフェニレン基)を含有する基である。より具体的には、置換されていてもよいフェニレン基は、例えば一般式−X−C6H4−で表される基であってよい。この一般式において、Xは二価の連結基である。上記ジケトンの一般式において、R2及びR3は、それぞれ、同一又は異なっていてよい炭素数1〜20、好ましくは1〜3のアルキル基である。R2及びR3は同一であることが好ましい。 固相担体の担体部としては特に限定されないが、例えば、樹脂、多糖類及び二酸化ケイ素が挙げられる。樹脂の具体例としては、ポリ(メタ)アクリル酸及びポリスチレンが挙げられる。多糖類の具体例としてはアガロースが挙げられる。二酸化ケイ素の具体例としてはシリカゲル及び多孔質ガラスが挙げられる。 図1においては、アルギニン残基含有ペプチドのスカベンジング(Scavenging of Arg-containing peptides)をより具体的に説明するために、アルギニン捕捉反応(Arginine capture reaction)の機構(挿入図内)を例示する。この例示においては、ジケトンとして2,3−ブタンジオン(2,3-butanedione)、固相担体として固定化フェニルボロン酸(Immobilized phenylboronic acid)を用いている。C末端ペプチド断片以外のペプチド断片すなわちアルギニン残基含有ペプチド(Arg peptide)は、そのC末端にアルギニン残基を有する。アルギニン残基含有ペプチドにおけるアルギニン残基側鎖のグアニジノ基に、2,3−ブタンジオンをアルカリ性条件下で作用させることによって、イミダゾリン環中間体(a)が生じる。さらに、中間体(a)に、固定化フェニルボロン酸をアルカリ性条件下で作用させることによって、脱水縮合によりホウ酸エステル(b)が生じる。このように、固相担体である固定化フェニルボロン酸が、2,3−ブタンジオン由来構造を介して特異的にアルギニン残基に結合する。 アルギニン捕捉反応を進行させるためのアルカリ条件は、例えばpHが8以上、好ましくはpHが10以上である。使用するジケトンの量は、例えばペプチド50〜50000当量、好ましくは100〜5000当量である。また、反応温度条件は、例えば20℃〜80℃、好ましくは25℃〜60℃、反応時間は、例えば15分〜20時間、好ましくは30分〜2時間である。 上述のように消化物を固相担体へ接触させることにより、消化物中の、C末端以外のペプチド断片(すなわちアルギニン残基を有するペプチド断片)がアルギニン残基を介して固相担体に結合し、C末端ペプチド断片(すなわちアルギニン残基を有しないペプチド断片)は固相担体に結合することなく溶出する。このように、C末端ペプチド断片が分離により濃縮される。[4.濃縮されたC末端ペプチド断片の分析] 濃縮されたC末端ペプチド断片は、様々な分析に供されることができる。その際、C末端ペプチド断片がそのまま分析に供されてもよいし、分析に先立って、分析目的に適した処理に供されてもよい。 例えば、本発明で濃縮されたC末端ペプチド断片は、アミノ酸配列決定のために質量分析に供されることができる。この際、質量分析における感度向上の目的で、C末端ペプチド断片に修飾を行うことにより電荷を有する基を付与することがある。 例えば、C末端ペプチド断片のN末端が修飾されることがある(なお、この場合のN末端修飾は、C末端ペプチド断片濃縮のためにて行われる分離工程より後に行われるものであり、分離工程より前に行われることがある非必須の修飾とは異なる)。N末端修飾法としては、アミノ基を修飾可能な方法を特に限定されることなく、当業者によって適宜選択される。好ましくは、N末端のαアミノ基が選択的に修飾される一方で、側鎖に存在しうるεアミノ基は修飾を受けない方法が用いられる。 N末端修飾工程において用いられる修飾試薬は、電荷を有する求核基を有する化合物である。例えば、修飾試薬の例として、トリス(2,4,6−トリメトキシフェニル)ホスホニウム酢酸、及びその誘導体が挙げられる。トリス(2,4,6−トリメトキシフェニル)ホスホニウム酢酸の誘導体としては、トリス(2,4,6−トリメトキシフェニル)ホスホニウム酢酸のエステル、活性エステル、酸ハロゲン化物、酸無水物、及び酸アジドなどが挙げられる。トリス(2,4,6−トリメトキシフェニル)ホスホニウム酢酸の活性エステルとしては、トリス(2,4,6−トリメトキシフェニル)ホスホニウム酢酸のN−ヒドロキシスクシンイミドエステル(TMPP-Ac-OSu)、トリス(2,4,6−トリメトキシフェニル)ホスホニウム酢酸のスルホスクシンイミジルエステルなどが挙げられる。さらに具体的な修飾試薬の例として、(スクシンイミジルオキシカルボニルメチル)トリス(2,4,6−トリメトキシフェニル)ホスホニウムブロミドが挙げられる。 上記以外の修飾試薬の例として、5−ブロモニコチン酸のN−ヒドロキシスクシンイミドエステル(BrNANHS)及び4−スルホフェニルイソチオシアネート(SPITC)も挙げられる。 質量分析によるアミノ酸配列の同定を行うための解析の例としては、例えば、ESI(Electrospray Ionization)法を利用した質量分析装置によるMS/MS解析、MALDI(Matrix-Assisted Laser Desorption/Ionization)−TOF(Time-Of-Flight)型質量分析装置によるPSD(Post-Source Decay)解析又はCID(Collision-Induced Dissociation)解析、及びMALDI法を利用した質量分析装置によるMS/MS以上の多段階解析が挙げられる。 以下に実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。 実施例では、1D-PAGEにより精製した下記4種のタンパク質をそれぞれサンプルに用いた。 superoxide dismutase(SODC) myoglobin(MYG) carbonic anhydrase II(CAH2) beta-lactalbumin(LACB) 1レーンあたり10pmolのタンパク質を電気泳動した。切り取ったゲル片を定法により、塩酸トリス2−カルボキシエチルホスフィンを用いたSS結合の還元、及びヨードアセトアミドを用いたSH基のアルキル化を行った。その後、ゲル片を含水アセトニトリルで洗浄し、アセトニトリルで脱水した。SpeedVac(登録商標)でゲル片を乾燥させた後、ゲル片にArgC溶液(50mM NH4HCO3水溶液中100ng/mL)を加え(基質と酵素との重量比は10:1)、37℃で12時間消化した。消化ペプチドを回収し、SpeedVacで乾燥し、0.1v/v%TFA水溶液に溶かしてZipTipC18で脱塩した。得られた消化ペプチドを再びSpeedVacで乾燥した後、50mM NH4HCO3水溶液(pH10.5)10μLに溶解し、消化ペプチド溶液を得た。 別途、m−アミノフェニルボロン酸アガロースビーズ(Sigma)のサスペンジョン30μLをスピンダウンした後、上澄みを取り除き、水で洗浄を行った。 洗浄済みビーズに、上述の消化ペプチド溶液と、100mM2,3−ブタンジオン水溶液1μLとを加えて50℃で一時間反応させた。上澄みの反応液を回収し、ビーズを洗浄液(50mM NH4OAc水溶液(pH10.5)、H2O及びMeCNの251:650:100(体積比)混合液中、4mMブチルアミン及び10mM2,3−ブタンジオン含む)を用いて洗浄した(20μL×3回)。上澄みの反応液及びビーズ洗浄の溶出液を併せ、溶媒を除去し、C末端ペプチド断片を得た。得られたC末端ペプチド断片を質量分析装置AXIMA Performance(登録商標)(島津製作所製)を用いて測定した。 superoxide dismutase(SODC)及びmyoglobin(MYG)からそれぞれ得られたC末端ペプチド断片(C-terminal peptide)のスペクトルを、それぞれ図2(a)及び図2(b)に示す。Carbonic anhydrase II(CAH2)及びbeta-lactalbumin(LACB)からそれぞれ得られたC末端ペプチド断片のスペクトルを、それぞれ図3(c)及び図3(d)に示す。なお、CHA2(図3(c))のC末端ペプチド断片は、濃縮後スペクトル上でピークとして観測されなかったため、さらに、スクシンイミジルオキシカルボニルメチルトリス(2,4,6−トリメトキシフェニル)ホスホニウムブロミド(TMPP-Ac-OSu)によるTMPP化を行った後に測定した。 いずれの場合も、目的とするC末端ペプチドが好ましく濃縮されたことが確認された。 それぞれのC末端ペプチドの配列は、以下の通りである。 superoxide dismutase(SODC)由来:LACcamGVIGIAK(配列番号1;3番目のシステイン残基の側鎖はカルボキサミドメチル基を有する) myoglobin(MYG)由来:NDIAAKYKELGFQG(配列番号2) carbonic anhydrase II(CAH2)由来:TMPP-Ac-GFPK(配列番号3;1番目のグリシン残基のN末端は[トリス(2,4,6-トリメトキシフェニル)ホスホニオ]アセタト基を有する) beta-lactalbumin(LACB)由来:LSFNPTQLEEQCcamHI(配列番号4;12番目のシステイン残基の側鎖はカルボキサミドメチル基を有する) 上述の4種のC末端ペプチドをMALDI-PSDにより解析して得られたスペクトルを、それぞれ、図4(a)、図4(b)、図5(c)及び図5(d)に示す。これらのスペクトルから主なピークが帰属可能であり、アミノ酸配列を確認することができた。 タンパク質を、アルギニンのC末端切断能を有するエンドプロテイナーゼを用いた消化に供し、C末端ペプチド断片とその他のペプチド断片とを含む消化物を得る工程と、 前記消化物を、アルギニンへの結合能を有する固相担体への接触に供し、前記その他のペプチド断片を前記固相担体で捕捉することによって、前記C末端ペプチド断片を分離する工程とを含む、タンパク質のC末端ペプチドを濃縮する方法。 前記アルギニンへの結合能を有する固相担体が、一般式−R1−B(OH)2(R1は、二価の有機基である)で表される官能基を有するものであり、前記固相担体による前記ペプチド断片の捕捉を、一般式R2COCOR3(R2及びR3は、それぞれ、同一又は異なっていてよい炭素数1〜8のアルキル基である)で表されるジケトン存在下で行う、請求項1のタンパク質のC末端ペプチドを濃縮する方法。 前記−R1−B(OH)2基が、−NH−mC6H4−B(OH)2で表される基である、請求項2のタンパク質のC末端ペプチドを濃縮する方法。 前記エンドプロテイナーゼがArgCである、請求項1〜3のいずれかのタンパク質のC末端ペプチドを濃縮する方法。 前記ArgCがmouse submaxillary grand又はClostridium hystriticum由来の酵素である、請求項4のタンパク質のC末端ペプチドを濃縮する方法。 前記タンパク質のC末端がリジン残基である、請求項1〜5のいずれかのタンパク質のC末端ペプチドを濃縮する方法。 前記タンパク質のN末端アミノ基及び/又はC末端カルボキシル基がフリーであり、N末端修飾工程及びC末端修飾工程のいずれも行わない、請求項1〜6のいずれかのタンパク質のC末端ペプチドを濃縮する方法。 請求項1〜7のいずれかの方法によって、タンパク質からC末端ペプチド断片を濃縮する工程と、濃縮された前記C末端ペプチド断片を質量分析に供し、アミノ酸配列を決定する工程とを含む、タンパク質のC末端配列解析法。 前記質量分析に供される前に、電荷を有する求核基を有する化合物を用いて、前記濃縮されたペプチドの末端アミノ基の修飾が行われる、請求項8のタンパク質のC末端配列解析法。 【課題】多くのタンパク質に適用可能で、タンパク質のC末端修飾及びN末端修飾を必須としない、簡便なC末端ペプチド濃縮法を提供する。【解決手段】タンパク質を、アルギニン残基のC末端切断能を有するエンドプロテイナーゼを用いた消化に供し、C末端ペプチド断片とその他のペプチド断片とを含む消化物を得る工程と、前記消化物を、アルギニンへの結合能を有する固相担体への接触に供し、前記その他のペプチド断片を前記固相担体で捕捉することによって、前記C末端ペプチド断片を分離する工程とを含む、タンパク質のC末端ペプチドを濃縮する方法。【選択図】図1配列表