タイトル: | 公開特許公報(A)_X線分光器 |
出願番号: | 2012128332 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | G01N 23/22,G01N 23/207 |
奥井 眞人 JP 2013253815 公開特許公報(A) 20131219 2012128332 20120605 X線分光器 神津精機株式会社 592064877 荒井 俊之 100079072 奥井 眞人 G01N 23/22 20060101AFI20131122BHJP G01N 23/207 20060101ALI20131122BHJP JPG01N23/22G01N23/207 1 4 OL 12 2G001 2G001AA03 2G001BA05 2G001CA01 2G001GA01 2G001HA13 2G001KA01 本発明は、X線のエネルギースペクトルを分光するX線分光器に関するものである。 物理学、化学、生物学、地学などの物質科学或いは工学では、物質の構造或いは物性を測定する要請があり、X線回折、X線小角散乱、吸収スペクトルの測定、蛍光エックス線分析、電子線マイクロプローブアナライザー等をはじめとする多くのX線分析法が使われてきた。 これらのX線分析法は、物質中に於ける回折、散乱、吸収あるいは励起等のX線との相互作用を測定するもので、これ等の作用により生じた或いは変化したX線が、どのようなエネルギースペクトルによって構成されるかを測定するX線分光器はいずれのX線分析に於いても必要不可欠なものである。特開2005−140719号公報特開2002−214165号公報 図1は、高分解能を得るX線分光器として、最も一般的な反平行二結晶型分光器の原理図であり、ここでは結晶を反平行配置(++)にとることで、チャンネルカットのような平行配置(+−)の分光器よりも角度分解能を上げようとしたものである。分光結晶の回折角は、理想結晶の回折角とは異なり、その結晶のモザイク化などの結晶性の影響から、或る一定のダーウィン幅を持っている。このため、或る結晶面で回折を起こした場合、ロッキング曲線として示されたダーウィン幅内の強度分布で回折することになるのである。 図1にあって、所定の発光源からの分光対象となるX線λの第一結晶1でのBragg(ブラッグ)角をθ1、そのX線のエネルギーをEBとすると、この分光対象となるX線λの第一結晶1からの出射角は入射角と同じ角度θ1で、エネルギーはEBであり、第二結晶2へ入射するときの角度はθ2で、同じく角度θ2で出射する。そして、上記のロッキング曲線の範囲内で、異なる波長のX線λ+dが角度θ1よりも少し大きい角度θ1+dθで第一結晶1に入射して回折が起きたとすると、この異なる波長のX線λ+dの第一結晶1からの出射角は入射角と同じ角度θ1+dθであり、そのエネルギーはEB より少し低いEB+ΔEとなる。反平行型二結晶分光器の場合、図1に示したようにこの分光対象のX線から波長が異なるX線λ+dが第二結晶2へ入射するときの角度はθ2−dθとなるが、この角度で回折するX線λ+dのエネルギーはより高いEB+ΔEなので、この波長が異なるX線λ+dは第二結晶2からは回折しない。このため、反平行型二結晶分光器は、装置全体としては分光結晶のダーウィン幅よりも充分小さいエネルギー分解能を持つことになり、スペクトル測定精度が高いのである。 しかしながら、反平行二結晶分光器分光器は、その配置の特性上、分光器が大きくなることが最大の障害として挙げられる。このように、装置自体が大型化するところから、電子顕微鏡に応用し、電子線プローブマイクロアナライザー(EPMA)等の他の分析装置との複合化が困難なのである。このことは複合分析装置への発展性に欠けることを意味する。即ち反平行二結晶分光器分光器は、波長分解能を高めた装置を作り易い利点はあるが、分光器の機械設計も複雑となって高価になり、大型化することから、卓上型のような省スペースの装置には採用できない。 特許文献1の発明は、上記した所謂反平行配置型の二結晶分光器と称されるものの具体例であって、放射光を1次X線として試料に照射することにより発生した蛍光X線のスペクトルを測定して元素の化学結合状態または電子構造を解析する蛍光X線分析装置であり、試料から発生した蛍光X線を分光する(+,+)配置の2つの分光結晶と、その分光結晶で分光された蛍光X線の強度を測定する検出器と、分光結晶で分光される蛍光X線の波長を変えながら、その分光された蛍光X線が前記検出器に入射するように、分光結晶と検出器を連動させる連動手段とから構成されており、(+,+)配置の2つの分光結晶を用いて蛍光X線を二回分光するので、蛍光X線のスペクトルの角度分解能が充分で、元素の化学結合状態または電子構造等を詳細に解析することができるとしている。 但し、上述したように反平行配置型の二結晶分光器は殆どが物性研究用のものであり、装置が大規模で、特に分光結晶と検出器を連動させる機械的構成が複雑であり、高価で実用分析として普及するには適しないものであった。 この点を考慮して、平板形状の一結晶型分光器が提案されている。一結晶型分光器は、発光源の領域の広がりによる影響が十分小さくなるような小さい光源にすることにより分光結晶の位置ごとの入射角の違いを生じさせようとするものであり、その光学的ジオメトリーが比較的簡単に達成できるため、位置敏感型検出器を用いればスリットスキャンも不要になり、また小型化が可能なため、電子線マイクロプローブアナライザー(EPMA)等の他の分析装置との複合化に有利である、等の利点がある。 図2は、平板形状の一結晶型分光器の原理図であり、この一結晶型分光器が成立するためには、蛍光X線の発生点Aが上記の十分小さい光源に近いことが必要である。 平板一結晶型分光器の波長分解能を説明するに、蛍光X線の所定の発行源からの放射光を一次X線として試料Aに照射することにより発生した蛍光X線の発行源Aから、θ=90°のときの平板分光結晶3を経て検出器4までの経路の長さをL、位置敏感型検出器4に於ける入射位置をxとすると、数式1と表せる。 結晶分光の分解能は、Bragg式λ=2d sinθを微分することで得られる。即ち、数式2である。 一方、数式3にあって、数式4であることから、平板一結晶型分光器の測定分解能は数式5と表される。 分光対象のX線の発光源Aがその広がりに於ける影響が実用的に無視できるほど十分小さい光源であると、分光結晶3上の位置毎の入射角度は異なるので、Braggの公式により、分光結晶3の面間隔d(結晶ごとの定数)と入射角(Bragg角)で回析するX線の波長は一義的に決定され、検出器4で夫々の位置の強度を測定すれば、光源のスペクトルが判明することになる。即ち、分光されたX線のエネルギースペクトルの分布は検出器4の位置座標にそのまま反映されるので、十分小さい光源の場合は、分光結晶への入射する角度の範囲内での多波長同時測定といえる。 しかしながら一方では、エネルギー分解能を高めようとすれば高角の非対称反射を必要とすることから、分光結晶の選択が困難になる。高分解能を得られる高角の反射が各々の分光結晶ごとにある一定の領域ごとに限られることから、高分解能で分光できる領域は分光結晶ごとに断続的になり、高角の非対称反射を持つ適当な分光結晶がない領域では、要求される分解能では分光できない空白のエネルギー領域が生じてしまうのである。この型の分光器の分解能を結晶のBragg 式で一義的に決定される波長分解能よりも高める工夫が必要であり、分解能は経路の長さLの関数であるから、分解能を上げるためには大型化してしまうのである。 特許文献2の発明は、更に他のX線分光器の典型例を示すもので、試料から放射された蛍光X線を、大きなローランド円上に配置した分光結晶で分光し、同じくローランド円上に配置した位置敏感型検出器で検出するものであり、ここでの分光結晶の反射面は、試料及び検出器に対して凹面となっている。即ち、電子ビーム等が照射される試料の発光源をローランド円上の固定点とし、発光源からの特性X線の分光結晶への入射角と検出器への反射角とが等しくなるように維持しながらローランド円上の分光結晶と検出器とを移動させて、分光波長を走査し、元素の種類の特定等を行うことになる。 しかしながら、分光結晶の反射面が凹面であると、分光結晶上の全面でダーウィン幅の波長の範囲内での反射光が生じ、焦点で結像する。即ち、凹面の焦点では或る一定の小さい波長のダーウィン幅のX線しか集光できない。 よって本発明は、上述した従来技術の欠点、不都合、不満を解消するべく発明されたものであって、位置検出器を用いた測定に於いて、その波長分解能を大幅に改善し、コンパクトで機械的に単純化すると共に、シンプルに高精度を得られるようにすることにある。 上記課題を解決するため、本発明は、試料から放射されたX線を分光結晶で分光し、検出器で検出するX線分光器にあって、前記した分光結晶の反射面を凸面としたことを特徴とする構成である。 分光結晶の反射面を凸面とすることにより、理想的なBragg角に対してわずかに異なる分光結晶への入射角を大きくし、これによって分光器の測定分解能を向上させることができる。分光結晶上の位置毎に異なる波長のX線を同時に分光することができるため分光結晶上の位置毎の角度が大きくなり、即ち角度分解能が高くなり、同時に、試料から分光結晶までの距離及び分光結晶から検出器までの距離を極めて小さなものにすることができるのである。 従って従来の一結晶型分光器に較べてコンパクトになり、しかも位置検出器を用いた測定の波長分解能が大幅に改善される。また、一結晶であるので、二結晶分光器のような機械的な複雑さもなく、シンプルに高精度を得られる。 本発明によれば、一結晶型の分光器そのものを小型化、簡易化しながら、高い波長分解能を得ることが可能で、この両立のメリットは、波長分散(WDX)を用いる分光全てにもたらすことができる。その応用範囲には、HRXRFをはじめとする蛍光X線分析、X線回折やX線小角散乱のアナライザーとしての利用、XAFSのような吸収スペクトルの測定、波長分散X線分析(WDS)を利用した電子線マイクロアナライザーによる特性X線の分析等、WDXを必要とするX線分析の幅広い分野に応用できる。小型化が測れる点で、電子顕微鏡等の他の装置への組み込みにも有利であり、X線分析が利用される幅広い分野、例えば材料科学、バイオマテリアル、環境分析などへの応用が期待できる等、多くの優れた作用効果を奏する。従来の反平行二結晶型分光器のレイトレース図である。従来の平板形状の一結晶型分光器のレイトレースである。図2の概念図である。本発明にかかる一結晶型分光器のレイトレースと図2のレイトレースとを複合したレイトレース図である。図4の概念図である。 図4、図5にあって、十分小さい領域Aを発光源としたBragg角θのエネルギーを持つX線は、反射面を凸面とした分光結晶5にBragg角θで入射し、この入射点に於ける分光結晶5の結晶面の角度をαとすると、θ+αの角度で反射出射し、検出器4に入射して位置Xの強度として測定されることになる。位置毎に異なるエネルギーが測定されることから同時に広いエネルギー領域でスペクトルを測定できる。 図2で示した基準となる平板結晶の光路のうち、試料発光源Aの反射点である光源から結晶までのy方向の距離をL1、結晶面から検出器4までのy方向の距離をL2とすると、本発明に於ける反射面を凸面とした分光結晶5のy座標は、図4のように距離r(1−cosα)だけ遠ざかった位置になる。試料Aの反射点である光源から分光結晶5の結晶面までの距離をl(エル)1、分光結晶5の結晶面から検出器4までの距離をl(エル)2とすると、夫々数式6の如く表せる。 検出器4に於ける入射位置xは、数式7である。 そこで、数式7に数式8を代入すると数式9として計算される。 この数式9は、平板結晶では単に光路長Lの関数であった位置が、光路長L1、L2とベンド角αの関数として表されることを示しており、ベンド角をとることで、従来の平板結晶を用いたときよりも、位置検出器4への入射位置をより屈曲させた位置にし、これによってコンパクトな装置構成で高い分解能を得ることが可能である。図3と図5は同一条件下での従来の平板形状のレイトレースと本発明にかかる一結晶型分光器のレイトレースとを同一縮尺で示したものであり、本発明が従来の平板結晶よりも極めてコンパクトに設計できることが理解できる。 従来の平板結晶型分光器では面間隔dと光路Lによって決定されていた測定分解能を、本発明では分光結晶5を凸に湾曲させることで、同一条件でより高分解能化したものであり、この分解能の向上は、同じ分解能ならば、本発明の分光器は従来の分光器と比較して上述したように光路Lが短縮されることを意味し、コンパクトなWDXとしての応用、例えばEPMA等の他の分析装置との複合化を進める上で大きな利点となる。1 第一結晶2 第二結晶3 平板分光結晶4 検出器5 分光結晶A 試料 試料から放射されたX線を分光結晶で分光し、検出器で検出するX線分光器にあって、前記分光結晶の反射面を凸面としたことを特徴とするX線分光器。 【課題】X線のエネルギースペクトルを分光するX線分光器であって、位置検出器を用いた測定に於いて、その波長分解能を大幅に改善し、コンパクトで機械的に単純化すると共に、シンプルに高精度を得られるようにする。【解決手段】試料Aから放射されたX線を分光結晶5で分光し、検出器4で検出するX線分光器にあって、分光結晶5の反射面を凸面としたことを特徴とする構成で、分光結晶5の反射面を凸面とすることにより、理想的なBragg角に対してわずかに異なる分光結晶5への入射角を大きくし、これによって分光器の測定分解能を向上させることができ、分光結晶上の位置毎に異なる波長のX線を同時に分光することができるため分光結晶5上の位置毎の角度が大きくなり、同時に、試料から分光結晶5までの距離及び分光結晶5から検出器4までの距離を極めて小さなものにすることができる。【選択図】図4