タイトル: | 公開特許公報(A)_クマリン誘導体 |
出願番号: | 2012124729 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | C07D 413/14,C09B 57/02,C09K 11/06,H05B 33/12 |
川嶋 真一 川島 啓佑 金秋 優子 JP 2013173726 公開特許公報(A) 20130905 2012124729 20120531 クマリン誘導体 ハリマ化成株式会社 312016056 深井 敏和 100104318 川嶋 真一 川島 啓佑 金秋 優子 JP 2012012510 20120124 C07D 413/14 20060101AFI20130809BHJP C09B 57/02 20060101ALI20130809BHJP C09K 11/06 20060101ALI20130809BHJP H05B 33/12 20060101ALI20130809BHJP JPC07D413/14C09B57/02 DC09K11/06H05B33/12 E 3 OL 34 3K107 4C063 3K107CC02 3K107CC07 3K107CC45 3K107EE25 4C063AA05 4C063BB01 4C063CC79 4C063DD52 4C063EE10 本発明は、有機色変換材料などの有機光学材料として利用可能な新規なクマリン誘導体に関する。 クマリン6、クマリン7などのクマリン化合物は、紫外線を照射すると黄緑色の蛍光を示す蛍光色素である。従来、クマリン化合物は、燃料油識別用の着色剤、洗濯用蛍光増白剤といった蛍光材料として、あるいは各種ディスプレイにおける波長補正フィルタ用の色素といった着色材料として用いられている。さらに近年では、クマリン系化合物の光増感機能に着目して、色素レーザ用の色素、色素増感型太陽電池における増感色素、各種ディスプレイにおける色変換フィルタや発光デバイスといった用途への応用も検討されている。また、クマリン化合物については、特許文献1〜4に記載されているように、各種誘導体の合成とその応用が試みられている。 クマリン化合物を、色変換フィルタ、発光デバイス、波長補正フィルタなどに用いる場合には、例えば、クマリン化合物と、バインダ用樹脂とを、任意成分としての硬化剤などとともに、溶媒中に溶解・分散させて溶解液を調製し、得られた塗布液を基材上に塗布することにより、クマリン化合物が均一に溶解した塗布膜を形成することが求められている。このため、上記塗布液におけるクマリン化合物には、例えば、(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、シリコーン樹脂などのバインダ用樹脂に対する溶解性が良好であることが求められる。特開2011−001323号公報特開2009−210745号公報特開2007−273440号公報特開2007−023162号公報 しかしながら、公知のクマリン化合物は、上記バインダ用樹脂に対する溶解性が十分ではない。さらに、公知のクマリン化合物は、塗布膜中に高濃度で含有させたときに発光量子収率が低下し、発光強度がクマリン化合物の添加量に比例しなくなる現象、すなわち濃度消光が顕著に現われて、発光色が長波長側にシフトする傾向もある。 本発明の目的は、バインダ用樹脂に対する溶解性が良好であり、かつ濃度消光の影響が小さい新規なクマリン誘導体と、それを用いた有機光学材料とを提供することである。 本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討を行った結果、下記一般式(1)で表されるクマリン誘導体によれば、バインダ用樹脂に対する溶解性を向上させることができ、しかも濃度消光の影響を低減させることができるという新たな知見と、下記一般式(1)で表されるクマリン誘導体が有機色変換材料などの有機光学材料として有用であるという新たな知見を見出し、本発明を完成するに至った。 本発明の一局面は、下記一般式(1)で表されるクマリン誘導体に関する。 式中、R1およびR1aは、同一または異なって、一般式(2):で表されるN置換アミノ基、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、1〜10個の炭素原子を有するアルコキシ基、または水素原子を示し、 R2aおよびR2bは、同一または異なって、1〜12個の炭素原子を有するアルキル基を示すか、または、R2aおよびR2bは、互いに結合して5〜7員環の含窒素ヘテロ環を形成する、4〜10個の炭素原子を有するアルキレン基を示し、 R3、R3a、R4およびR4aは、同一または異なって、水素原子もしくは1〜10個の炭素原子を有するアルキル基を示すか、または、R1およびR1aが前記一般式(2)で表されるN置換アミノ基である場合(但し、R2aおよびR2bが互いに結合して5〜7員環の含窒素ヘテロ環を形成する場合を除く)において、R2aとR3、R2bとR4、R2aとR3a、およびR2bとR4aの組合せの少なくとも1つは、互いに結合して5〜7員環の含窒素ヘテロ環を形成する、4〜10個の炭素原子を有するアルキレン基を示し、 R5およびR5aは、同一または異なって、水素原子、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、または6〜30個の炭素原子を有するアリール基を示し、 R6aおよびR6bは、同一または異なって、水素原子、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、または6〜30個の炭素原子を有するアリール基、ハロゲン原子、またはシアノ基を示し、 Xは、酸素原子、硫黄原子またはイミノ基を示し、 Yは、一般式(3):で表される2価基、または式(4):で表されるスルホニル基を示し、 R7aおよびR7bは、同一または異なって、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、1〜10個の炭素原子を有するハロゲン化アルキル基、6〜30個の炭素原子を有するアリール基、7〜30個の炭素原子を有するアラルキル基、または水素原子を示す。 また、本発明の他の一局面は、上記一般式(1)で表されるクマリン誘導体を含有する有機光学材料に関し、本発明のさらに他の一局面は、上記一般式(1)で表されるクマリン誘導体を含有する有機色変換材料に関する。 本発明に係る上記一般式(1)で表されるクマリン誘導体(以下、「クマリン誘導体(1)」という。)は、(メタ)アクリル樹脂などのバインダ用樹脂に対する溶解性が良好である。このため、クマリン誘導体(1)と、(メタ)アクリル樹脂などのバインダ用樹脂と、溶媒とを混合したときには、バインダ用樹脂中にクマリン誘導体(1)が均一に溶解した塗布液を調製することができる。さらに、その結果、本発明のクマリン誘導体(1)を用いることによって、クマリン誘導体(1)が均一に溶解された、クマリン濃度のムラが小さい塗布膜を得ることができる。また、これにより、色変換フィルタや発光デバイスの品質向上を図ることができる。 さらに、本発明のクマリン誘導体(1)は、濃度消光の影響が小さいことから、バインダ用樹脂中でのクマリン誘導体(1)の含有量を高めることができる。その結果、色変換フィルタや発光デバイスなどの、クマリン誘導体(1)を用いた有機光学材料における光学特性を向上させることができる。実施例1〜4で得られたクマリン誘導体とクマリン6についての吸光スペクトルを示すグラフである。実施例1〜4で得られたクマリン誘導体とクマリン6についての蛍光スペクトルを示すグラフである。実施例5および6で得られたクマリン誘導体についての吸光スペクトルを示すグラフである。実施例5および6で得られたクマリン誘導体についての蛍光スペクトルを示すグラフである。実施例1〜4で得られたクマリン誘導体およびクマリン6についての蛍光量子収率と蛍光色素の濃度との関係を示すグラフである。 <クマリン誘導体(1)> 本発明のクマリン誘導体は、下記一般式(1)で表される。以下、このクマリン誘導体(1)について詳細に説明する。 式中、R1、R1a、R3、R3a、R4、R4a、R5、R5a、R6、R6a、XおよびYは、前記と同じである。 (クマリン骨格) クマリン誘導体(1)は、2個の下記一般式(5)で示されるクマリン骨格(以下、「クマリン骨格(5)」という。)が、後述する2価基Yを介して結合した構造を有する。なお、クマリン骨格(5)は、一般式(1)における2価基Yの左右で互いに異なるものを有する場合を含むが、以下の説明においては、下記一般式(5)の2価基Yの左側に示したクマリン骨格に基づいて、両方のクマリン骨格を説明する。特に断らない限り、基R1a、R3a、R4a、R5aおよびR6aの詳細については、それぞれ対応する基R1、R3、R4、R5およびR6と同様である。 式中、R1、R3、R4、R5、R6およびXは、前記と同じである。 クマリン骨格(5)は、クマリン誘導体の3位の炭素原子と、特定の含窒素複素環のII位の炭素原子とが結合した構造を有する。一般式(5)中の符号1〜8はクマリン誘導体における置換位置番号であり、符号I〜VIIは含窒素複素環における置換位置番号である。 上記含窒素複素環のXは、酸素原子、硫黄原子またはイミノ基(>NH)を表し、これらのなかでも、特に酸素原子であることが好ましい。すなわち、クマリン骨格(5)は、下記一般式(5a)、(5b)または(5c)で表され、なかでも、一般式(5a)で表されるクマリン骨格が好ましい。 式中、R1、R3、R4、R5およびR6は、前記と同じである。 (基R1) クマリン骨格(5)におけるR1は、下記一般式(2)で表されるN置換アミノ基(以下、「N置換アミノ基(2)」という。)、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、1〜10個の炭素原子を有するアルコキシ基、または水素原子を示す。 基R1としてのN置換アミノ基(2) 基R1がN置換アミノ基(2)である場合において、N置換アミノ基(2)のR2aおよびR2bは、(i)同一または異なって、1〜12個の炭素原子を有するアルキル基を示すか、または、(ii)互いに結合して5〜7員環の含窒素ヘテロ環を形成する、4〜10個の炭素原子を有するアルキレン基を示す。 R2aおよびR2bが上記(i)の場合において、1〜12個の炭素原子を有するアルキル基は、−CnH2n+1で示される基(nは1〜12の整数)であって、全ての構造異性体を含む。このようなアルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル、n−ヘキシル、イソヘキシル、3−メチルペンチル、5−メチルペンチル2−エチルブチル、2,2−ジメチルブチル、ヘプチル、n−オクチル、6−メチルヘプチル、5−メチルヘプチル、2−メチルヘプチル、5,5−ジメチルヘキシル、2,2−ジメチルヘキシル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシルなどが挙げられる。アルキル基の炭素数は、具体的には、1〜10が好ましく、1〜8がより好ましく、2〜8がさらに好ましく、なかでも、2〜4が特に好ましい。アルキル基は、直鎖状および分岐状のいずれであってもよい。 R2aおよびR2bが上記(i)の場合において、R2aとR2bとは、同一のアルキル基であることが好ましい。N置換アミノ基の好適態様としては、例えば、ジエチルアミノ、ジブチルアミノ、ジヘキシルアミノ、ジオクチルアミノ、ジ−2−エチルヘキシルなどが挙げられ、特に好ましくは、ジ−n−ブチルアミノが挙げられる。 R2aおよびR2bが上記(ii)の場合において、4〜10個の炭素原子を有するアルキレン基としては、テトラメチレン、ペンタメチレンおよびヘキサメチレンと、これらのアルキレン基を主鎖として、さらにメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルなどのアルキル側鎖が置換した、全体で4〜10個の炭素原子を有する基と、が挙げられる。 その他の基R1 R1に相当する基として、N置換アミノ基(2)以外の基には、上述のとおり1〜10個の炭素原子を有するアルキル基と、1〜10個の炭素原子を有するアルコキシ基と、水素原子とが挙げられる。 1〜10個の炭素原子を有するアルキル基としては、N置換アミノ基(2)のR2aおよびR2bに相当する1〜10個の炭素原子を有するアルキル基として例示したものと同様のアルキル基が挙げられる。なかでも、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基が好ましく、メチルまたはエチルがより好ましく、メチルが特に好ましい。 1〜10個の炭素原子を有するアルコキシ基は、−OCmH2m+1で示される基であり、mが3〜10の場合には、全ての構造異性体を含む。このようなアルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシオクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシなどが挙げられる。 一般に、基R1がジエチルアミノなどのN置換アミノ基(2)であるクマリン誘導体(1)は、青色領域の光を吸収し、緑色領域の蛍光を示す。また、一般に、基R1がメチルなどのアルキル基、メトキシなどのアルコキシ基、および水素原子であるクマリン誘導体(1)は、紫外領域の光を吸収し、青色領域の蛍光を示す。よって、基R1は、クマリン誘導体(1)に求められる吸収波長や発光波長に応じて適宜選択すればよい。 クマリン骨格(5)におけるR1は、上述の基のなかでも特に、ジエチルアミノ、ジブチルアミノ、メチル、メトキシおよび水素原子が好ましい。 また、青色領域の光を吸収し、緑色領域の蛍光を示すクマリン誘導体(1)においては、上記波長領域の光に対する吸光度や蛍光強度が強いという観点より、R1がジエチルアミノまたはジブチルアミノであることが好ましく、ジ−n−ブチルアミノであることが特に好ましい。 紫外領域の光を吸収し、青色領域の蛍光を示すクマリン誘導体(1)においては、上記波長領域の光に対する吸光度や蛍光強度が強いという観点より、R1が水素原子であることが好ましい。 (基R3およびR4) クマリン骨格(5)におけるR3およびR4は、(I)同一または異なって、水素原子、もしくは1〜10個の炭素原子を有するアルキル基を示すか、または(II)R2aおよびR2bがN置換アミノ基(2)である場合(但し、R2aおよびR2bが互いに結合して5〜7員環の含窒素ヘテロ環を形成する場合を除く)において、R2aとR3、R2aとR3a、R2bとR4、R2bとR4aの組合せの少なくとも1つは、互いに結合して5〜7員環の含窒素ヘテロ環を形成する、4〜10個の炭素原子を有するアルキレン基を示す。 R3およびR4が上記(I)の場合において、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基としては、N置換アミノ基(2)のR2aおよびR2bに相当する1〜10個の炭素原子を有するアルキル基として例示したものと同様のアルキル基が挙げられる。 R3およびR4が上記(II)の場合において、4〜10個の炭素原子を有するアルキレン基としては、N置換アミノ基(2)のR2aおよびR2bに相当する4〜10個の炭素原子を有するアルキレン基として例示したものと同様のアルキレン基が挙げられる。 R3およびR4が上記(II)の場合において、クマリン骨格(5)の具体例としては、例えば、下記一般式(5x)で表される骨格[R2aとR3(R3a)、およびR2bとR4(R4a)がそれぞれ互いに結合して、いずれも6員環の含窒素ヘテロ環を形成する、トリメチレン基である場合]や、下記一般式(5y)で表される骨格[R2aとR3(R3a)、およびR2bとR4(R4a)がそれぞれ互いに結合して、いずれも6員環の含窒素ヘテロ環を形成する、1,1−ジメチルトリメチレン基である場合]が挙げられる。 式中、R5、R6およびXは、前記と同じである。また、クマリン骨格(5)におけるR3およびR4は、上述の基の中でも特に、水素原子が好ましい。 (基R5) クマリン骨格(5)におけるR5は、水素原子、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、または6〜30個の炭素原子を有するアリール基を示す。 1〜10個の炭素原子を有するアルキル基としては、N置換アミノ基(2)のR2aおよびR2bに相当する1〜10個の炭素原子を有するアルキル基として例示したものと同様のアルキル基が挙げられる。なかでも、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基が好ましい。 6〜30個の炭素原子を有するアリール基としては、フェニル、o−トリル、m−トリル、p−トリル、2,3−キシリル、2,4−キシリル、2,5−キシリル、3,4−キシリル、3,5−キシリル、メシチル、m−クメニル、2−インデニル、1−ナフチル、2−ナフチル、2−アントリル、2−フェナントリルなどが挙げられる。なかでも、アリール基の炭素原子の数は6〜14が好ましく、6〜10がより好ましい。 クマリン骨格(5)におけるR5は、上述の基の中でも特に、水素原子が好ましい。 (基R6) クマリン骨格(5)におけるR6は、水素原子、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、6〜30個の炭素原子を有するアリール基、ハロゲン原子、またはシアノ基を示す。 1〜10個の炭素原子を有するアルキル基としては、N置換アミノ基(2)のR2aおよびR2bに相当する1〜10個の炭素原子を有するアルキル基として例示したものと同様のアルキル基が挙げられる。なかでも、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基が好ましい。 6〜30個の炭素原子を有するアリール基としては、クマリン骨格(5)のR5に相当する6〜30個の炭素原子を有するアリール基として例示したものと同様の基が挙げられる。なかでも、アリール基の炭素原子の数は6〜14が好ましく、6〜10がより好ましい。 ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。 クマリン骨格(5)におけるR6は、上述の基の中でも特に、水素原子が好ましい。 クマリン骨格(5)の観点より、クマリン誘導体(1)の好適態様としては、下記一般式(1A)、(1B)、(1C)、(1D)および(1E)で表される化合物が挙げられる。 式中、Yは前記と同じであり、Etはエチル基を示し、Buはブチル基を示す。 (2価基Y) クマリン誘導体(1)における2価基Yは、下記一般式(3)で表される2価基(以下、「2価基(3)」という。)、または式(4)で表されるスルホニル基を示す。 2価基(3)におけるR7aおよびR7bは、同一または異なって、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、1〜10個の炭素原子を有するハロゲン化アルキル基、6〜30個の炭素原子を有するアリール基、7〜30個の炭素原子を有するアラルキル基、または水素原子を示す。 1〜10個の炭素原子を有するアルキル基としては、N置換アミノ基(2)のR2aおよびR2bに相当する1〜10個の炭素原子を有するアルキル基として例示したものと同様の基が挙げられる。これらの中でも、メチルおよびエチルが好ましく、メチルが特に好ましい。 1〜10個の炭素原子を有するハロゲン化アルキル基としては、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基における少なくとも1個の水素原子を、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子に置換したものが挙げられる。このようなハロゲン化アルキル基としては、モノフルオロメチル、ジフルオロメチル、パーフルオロメチル、モノクロロメチル、ジクロロメチル、パークロロメチル、モノブロモメチル、ジブロモメチル、パーブロモメチル、モノフルオロエチル、ジフルオロエチル、トリフルオロエチル、テトラフルオロエチル、パーフルオロエチルなどが挙げられる。これらの中でも、ハロゲン化アルキル基の炭素原子数は1または2が好ましく、1がより好ましい。また、ハロゲン化アルキル基のハロゲン原子はフッ素原子が好ましい。ハロゲン化アルキル基の好適態様としては、パーフルオロメチルが挙げられる。 6〜30個の炭素原子を有するアリール基としては、クマリン骨格(5)のR5に相当する6〜30個の炭素原子を有するアリール基としてとして例示したものと同様のアリール基が挙げられる。これらの中でも、アリール基の炭素原子の数は6〜14が好ましく、6〜10がより好ましい。 7〜30個の炭素原子を有するアラルキル基(アリールアルキル基)としては、ベンジル、フェネチル、ジフェニルメチル、トリチル、スチリル、シンナミルなどが挙げられる。これらの中でも、アラルキル基の炭素原子の数は、7〜13個が好ましい。 クマリン誘導体(1)における2価基Yは、なかでも、2,2−ヘキサフルオロイソプロピリデン[1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−2−イリデン、2価基(3)のR7aおよびR7bがトリフルオロメチルである基]、イソプロピリデン[2価基(3)のR7aおよびR7bがメチルである基]、メチレン[2価基(3)のR7aおよびR7bが水素原子である基]、およびスルホニル[式(4)]が好ましく、2,2−ヘキサフルオロイソプロピリデンおよびイソプロピリデンがより好ましく、2,2−ヘキサフルオロイソプロピリデンが特に好ましい。 2価基Yの結合位置は、クマリン骨格(5)におけるIV位からVII位の炭素原子のいずれであってもよいが、V位またはVI位の炭素原子と結合していることが好ましく、V位の炭素原子と結合していることが好ましい。2価基Yを介して相対する2つのクマリン骨格(5)は、互いに異なる置換位置で2価基Yと結合していてもよいが、同じ置換位置で2価基Yと結合していることがより好ましい。 すなわち、2価基Yの観点より、クマリン誘導体(1)の好適態様としては、下記一般式(1a)、(1b)、(1c)および(1d)で表される化合物が挙げられる。 式中、R1、R1a、R3、R3a、R4、R4a、R5、R5a、R6、R6aおよびXは、前記と同じである。 本発明のクマリン誘導体として、特に好ましくは、下記式(1−1)〜(1−8)で表される化合物が挙げられる。 式中、EtおよびBuは、前記と同じである。 式(1−1)〜(1−6)で表されるクマリン誘導体は、青色領域の光を吸収し、緑色領域で発光する。一方、式(1−7)および式(1−8)で表されるクマリン誘導体は、紫外領域の光を吸収し、青色領域で発光する。 <クマリン誘導体(1)の合成方法> クマリン誘導体(1)の合成方法の一例を以下に示す。 まず、下記反応式(I)に示すように、サリチルアルデヒド化合物(6)とマロン酸ジエチル(7)との環化反応によって、クマリン化合物(8)を合成する。この合成反応は、例えば、サリチルアルデヒド化合物(6)およびマロン酸ジエチル(7)を溶媒に溶解させて、ピペリジン存在下で加熱することにより行うことができる。 式中、R1、R3、R4、R5、R6およびEtは、前記と同じである。Acはアセチル基を示す。 次いで、下記反応式(II)に示すように、反応式(I)で得られたクマリン化合物(8)に、アルデヒド基(−CHO)を導入し、アルデヒド基含有クマリン化合物(9)を合成する。クマリン化合物(8)へのアルデヒド基の導入は、例えば、塩化ホスホリルおよび脱水ジメチルホルムアミドを用いて行うことができる。 式中、R1、R3、R4、R5およびR6は、前記と同じである。 さらに、下記反応式(III)に示すように、反応式(II)で得られたアルデヒド基含有クマリン化合物(9)と、下記式(10)で表わされる化合物とを反応させて、本発明のクマリン誘導体を合成する。この反応は、例えば、アルデヒド基含有クマリン化合物(9)、化合物(10)および酢酸アンモニウムを、溶媒(氷酢酸)に溶解し、加熱下、撹拌することにより行うことができる。 なお、下記式(10)で表わされる化合物は、アルデヒド基含有クマリン化合物(9)に対して1/2モル当量の割合で反応するように用いられる。 式中、R1、R3、R4、R5、R6、X、YおよびAcは、前記と同じである。 クマリン誘導体(1)の合成方法の他の一例を以下に示す。 クマリン誘導体(1)は、下記反応式(IV)に示すように、サリチルアルデヒド化合物(6)と、シアノ酢酸エチル(11)と、下記式(10)で表わされる化合物と、安息香酸とを溶媒に溶解させて、窒素気流下で加熱することにより、1段階で合成することもできる。 なお、シアノ酢酸エチル(11)は、サリチルアルデヒド化合物(6)に対して等モル当量の割合で反応するように用いられ、下記式(10)で表わされる化合物は、サリチルアルデヒド化合物(6)に対して1/2モル当量の割合で反応するように用いられる。 式中、R1、R3、R4、R5、R6、X、YおよびEtは、前記と同じである。 本発明のクマリン誘導体(1)は、良好な溶解性を有し、かつ濃度消光の影響が小さく、例えば有機光学材料、有機色変換材料などとして利用できる。 以下、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。 <クマリン誘導体(1)の合成> 実施例1:クマリン誘導体(1−1)の合成 下記反応式(i)〜(iii)に示す工程を経ることにより、前記式(1−1)で表されるクマリン誘導体を合成した。 (7−ジエチルアミノクマリン(8−1)の合成) 1.93g(10mmol)の4−ジエチルアミノサリチルアルデヒド(6−1)と、3.20g(20mmol)のマロン酸ジエチル(7)と、1mLのピペリジンとを、50mlの無水エタノールに溶解した。次いで、還流条件下で6時間撹拌しながら反応を行った。反応終了後、エタノールを減圧留去して、反応混合物に10mLの濃塩酸と10mLの氷酢酸とを加え、さらに6時間撹拌した。反応混合物を室温まで冷却した後、200mLの氷水中に入れてさらに冷却し、次いで、反応混合物に30質量%水酸化ナトリウム水溶液を滴下することにより、反応混合物のpHを約5に調整した。反応混合物を30分間撹拌した後、生じた沈殿物をろ過し、水で洗浄して乾燥した。こうして得られた沈殿物をトルエンで再結晶することにより、式(8−1)で表される7−ジエチルアミノクマリンを得た。収量は1.74g(8.0mmol)、収率は80%であった。 7−ジエチルアミノクマリン(8−1)の合成工程を反応式(i)に示す。 式中、EtおよびAcは、前記と同じである。 7−ジエチルアミノクマリン(8−1)の1H−NMRの測定結果を以下に示す(測定条件;400MHz、CDCl3)。 δ:7.55(d、1H)、7.23(d、1H)、6.59(d、1H)、6.51(s、1H)、6.06(d、1H)、3.42(m、4H)、1.21(t、6H) (7−ジエチルアミノクマリン−3−アルデヒド(9−1)の合成) 2mLの塩化ホスホリルを入れた反応容器に、0℃、窒素雰囲気下で2mLの脱水ジメチルホルムアミドを徐々に滴下した後、室温まで昇温して30分間撹拌した。次いで、1.50g(6.91mmol)の7−ジエチルアミノクマリン(8−1)を10mLの脱水ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解して反応容器に入れ、50℃で12時間撹拌した。反応混合物を、200mLの氷水中に入れ、20質量%水酸化ナトリウム水溶液を加えた。生じた沈殿物をろ過し、水で洗浄して乾燥した。こうして得られた沈殿物をエタノールで再結晶することにより、式(9−1)で表される7−ジエチルアミノクマリン−3−アルデヒドを得た。収量は1.20g(4.89mmol)、収率は70%であった。 7−ジエチルアミノクマリン−3−アルデヒド(9−1)の合成工程を反応式(ii)に示す。 式中、Etは前記と同じである。 7−ジエチルアミノクマリン−3−アルデヒド(9−1)の1H−NMRの測定結果を以下に示す(測定条件;400MHz、CDCl3)。 δ:10.13(s、1H)、8.26(s、1H)、7.43(d、1H)、6.67(d、1H)、6.50(s、1H)、3.49(m、4H)、1.25(t、6H) (クマリン誘導体(1−1)の合成) 2.0g(8.15mmol)の7−ジエチルアミノクマリン−3−アルデヒド(9−1)と、1.49g(4.08mmol)の2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(10−1)と、12.6g(163mmol)の酢酸ナトリウムとを、40mLの氷酢酸に溶解して、90℃で10時間撹拌した。次いで、反応混合物を200mLの水中に入れた。生じた沈殿物をろ過してジクロロメタンに溶解し、水とともに分液漏斗に入れて洗浄した。分液漏斗から回収したジクロロメタン層を硫酸ナトリウムで乾燥した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、式(1−1)で表されるクマリン誘導体を得た。収量は1.67g(2.04mmol)、収率は50%であった。 クマリン誘導体(1−1)の合成工程を反応式(iii)に示す。 式中、EtおよびAcは、前記と同じである。 クマリン誘導体(1−1)の1H−NMRの測定結果を以下に示す(測定条件;400MHz、CDCl3)。 δ:8.58(s、2H)、8.00(s、2H)、7.54(d、2H)、7.41(d、2H)、7.33(d、2H)、6.64(dd、2H)、6.55(d、2H)、3.43(q、8H)、1.24(t、12H) クマリン誘導体(1−1)の吸光スペクトルの測定結果を図1に示し、蛍光スペクトルの測定結果を図2に示す。吸光スペクトルは、紫外可視分光光度計(日本分光社製の「V−650」)を用いて測定した。蛍光スペクトルは、絶対量子収率測定装置(浜松ホトニクス社製の「C9920−12」)を用いて、各蛍光色素の極大吸収波長の励起光を照射した際の蛍光を測定した。測定サンプルには、吸光スペクトルおよび蛍光スペクトルのいずれについても、クマリン誘導体(1−1)のクロロホルム溶液(濃度1×10-5M)を用いた。 実施例2:クマリン誘導体(1−2)の合成 下記反応式(iv)に示す工程を経ることにより、前記式(1−2)で表されるクマリン誘導体を合成した。 2.0g(8.15mmol)の7−ジエチルアミノクマリン−3−アルデヒド(9−1)と、1.05g(4.08mmol)の2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(10−2)と、12.6g(163mmol)の酢酸ナトリウムとを、40mLの氷酢酸に溶解して、90℃で10時間撹拌した。次いで、反応混合物を200mLの水中に入れた。生じた沈殿物をろ過してジクロロメタンに溶解し、水とともに分液漏斗に入れて洗浄した。分液漏斗から回収したジクロロメタン層を硫酸ナトリウムで乾燥した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、式(1−2)で表されるクマリン誘導体を得た。収量は1.45g(2.04mmol)、収率は50%であった。 クマリン誘導体(1−2)の合成工程を反応式(iv)に示す。 式中、EtおよびAcは、前記と同じである。 クマリン誘導体(1−2)の1H−NMRの測定結果を以下に示す(測定条件;400MHz、CDCl3)。 δ:8.58(s、2H)、7.81(s、2H)、7.41(t、4H)、7.12(d、2H)、6.63(dd、2H)、6.52(d、2H)、3.45(q、8H)、1.81(s、6H)、1.24(t、12H) クマリン誘導体(1−2)の吸光スペクトルの測定結果を図1に示し、蛍光スペクトルの測定結果を図2に示す。 実施例3:クマリン誘導体(1−3)の合成 下記反応式(v)に示す工程を経ることにより、前記式(1−3)で表されるクマリン誘導体を合成した。 2.0g(8.15mmol)の7−ジエチルアミノクマリン−3−アルデヒド(9−1)と、1.0g(4.08mmol)の2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン(10−3)と、12.6g(163mmol)の酢酸ナトリウムとを、40mLの氷酢酸に溶解して、90℃で10時間撹拌した。次いで、反応混合物を200mLの水中に入れた。生じた沈殿物をろ過してジクロロメタンに溶解し、水とともに分液漏斗に入れて洗浄した。分液漏斗から回収したジクロロメタン層を硫酸ナトリウムで乾燥した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、式(1−3)で表されるクマリン誘導体を得た。収量は1.5g(2.04mmol)、収率は50%であった。 クマリン誘導体(1−3)の合成工程を反応式(v)に示す。 式中、EtおよびAcは、前記と同じである。 クマリン誘導体(1−3)の1H−NMRの測定結果を以下に示す(測定条件;400MHz、CDCl3)。 δ:8.63(s、2H)、8.40(s、2H)、7.96(d、2H)、7.67(d、2H)、7.43(d、2H)、6.66(dd、2H)、6.53(d、2H) クマリン誘導体(1−3)の吸光スペクトルの測定結果を図1に示し、蛍光スペクトルの測定結果を図2に示す。 実施例4:クマリン誘導体(1−4)の合成 下記反応式(vi)に示す工程を経ることにより、前記式(1−4)で表わされるクマリン誘導体を合成した。 2.49g(10mmol)の4−(ジ−n−ブチルアミノ)サリチルアルデヒド(6−2)と、1.13g(10mmol)のシアノ酢酸エチル(11)と、1.83g(5.0mmol)の2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(10−1)とを、22g(250mmol)の1−ペンタノールに溶解させ、0.41g(3.4mmol)の安息香酸を加えて、窒素気流下、135℃で7時間撹拌した。次いで、1−ペンタノールを減圧留去し、残渣をトルエンに溶解して水で洗浄した。トルエン層を硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮し、さらに、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;ヘキサン−酢酸エチル混合溶媒)で精製することにより、式(1−4)で表されるクマリン誘導体を得た。収量は1.39g(1.5mmol)、収率は30%であった。 クマリン誘導体(1−4)の1H−NMRの測定結果を以下に示す(測定条件;400MHz、CDCl3)。 δ:0.99(12H、t)、1.36−1.42(8H、m)、1.59−1.67(8H、m)、3.37(8H、t)、6.51(2H、d)、6.63(2H、dd)、7.32(2H、d)、7.41(2H、d)、7.54(2H、d)、7.99(2H、s)、8.61(2H、s) クマリン誘導体(1−4)の吸光スペクトルの測定結果を図1に示し、蛍光スペクトルの測定結果を図2に示す。 図1および図2には、比較対象として、クマリン6の吸光スペクトルおよび蛍光スペクトルの測定結果を併せて示した。いずれの測定条件も、実施例1〜3と同様である。 なお、図2中に下向き矢印で示した波長においては、クマリン誘導体(1−4)、クマリン誘導体(1−3)、クマリン誘導体(1−1)、クマリン誘導体(1−2)およびクマリン6の順で、蛍光スペクトルの強度が高かった。 実施例5:クマリン誘導体(1−7)の合成 下記反応式(vii)〜(ix)に示す工程を経ることにより、前記式(1−7)で表されるクマリン誘導体を合成した。 (クマリン(8−2)の合成) 1.22g(10mmol)のサリチルアルデヒド(6−3)と、3.20g(20mmol)のマロン酸ジエチル(7)と、1mLのピペリジンとを、50mlの無水エタノールに溶解した。次いで、還流条件下で6時間撹拌しながら反応を行った。反応終了後、エタノールを減圧留去して、反応混合物に10mLの濃塩酸と10mLの氷酢酸とを加え、さらに6時間撹拌した。反応混合物を室温まで冷却した後、200mLの氷水中に入れてさらに冷却し、次いで、反応混合物に30質量%水酸化ナトリウム水溶液を滴下することにより、反応混合物のpHを約5に調整した。反応混合物を30分間撹拌した後、生じた沈殿物をろ過し、水で洗浄して乾燥した。こうして得られた沈殿物をトルエンで再結晶することにより、式(8−2)で表されるクマリンを得た。収量は1.17g(8.0mmol)、収率は80%であった。 クマリン(8−2)の合成工程を反応式(vii)に示す。 式中、EtおよびAcは、前記と同じである。 (クマリン−3−アルデヒド(9−2)の合成) 2mLの塩化ホスホリルを入れた反応容器に、0℃、窒素雰囲気下で2mLの脱水ジメチルホルムアミドを徐々に滴下した後、室温まで昇温して30分間撹拌した。次いで、1.01g(6.91mmol)のクマリン(8−2)を10mLの脱水ジメチルホルムアミドに溶解して反応容器に入れ、50℃で12時間撹拌した。反応混合物を、200mLの氷水中に入れ、20質量%水酸化ナトリウム水溶液を加えた。生じた沈殿物をろ過し、水で洗浄して乾燥した。こうして得られた沈殿物をエタノールで再結晶することにより、式(9−2)で表されるクマリン−3−アルデヒドを得た。収量は0.85g(4.89mmol)、収率は70%であった。 クマリン−3−アルデヒド(9−2)の合成工程を反応式(viii)に示す。 (クマリン誘導体(1−7)の合成) 1.42g(8.15mmol)のクマリン−3−アルデヒド(9−2)と、1.49g(4.08mmol)の2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(10−1)と、12.6g(163mmol)の酢酸ナトリウムとを、40mLの氷酢酸に溶解して、90℃で10時間撹拌した。次いで、反応混合物を200mLの水中に入れた。生じた沈殿物をろ過してジクロロメタンに溶解し、水とともに分液漏斗に入れて洗浄した。分液漏斗から回収したジクロロメタン層を硫酸ナトリウムで乾燥した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、式(1−7)で表されるクマリン誘導体を得た。収量は1.38g(2.04mmol)、収率は50%であった。 クマリン誘導体(1−7)の合成工程を反応式(ix)に示す。 式中、EtおよびAcは、前記と同じである。 クマリン誘導体(1−7)の1H−NMRの測定結果を以下に示す(測定条件;400MHz、CDCl3)。 δ:8.81(s、2H)、8.10(s、2H)、7.62−7.71(m、6H)、7.38−7.45(m、6H) クマリン誘導体(1−7)の吸光スペクトルの測定結果を図3に示し、蛍光スペクトルの測定結果を図4に示す。 実施例6:クマリン誘導体(1−8)の合成 下記反応式(x)に示す工程を経ることにより、前記式(1−8)で表されるクマリン誘導体を合成した。 1.42g(8.15mmol)のクマリン−3−アルデヒド(9−2)と、1.05g(4.08mmol)の2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(10−2)と、12.6g(163mmol)の酢酸ナトリウムとを、40mLの氷酢酸に溶解して、90℃で10時間撹拌した。次いで、反応混合物を200mLの水中に入れた。生じた沈殿物をろ過してジクロロメタンに溶解し、水とともに分液漏斗に入れて洗浄した。分液漏斗から回収したジクロロメタン層を硫酸ナトリウムで乾燥した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、式(1−8)で表されるクマリン誘導体を得た。収量は1.16g(2.04mmol)、収率は50%であった。 クマリン誘導体(1−8)の合成工程を反応式(x)に示す。 式中、EtおよびAcは、前記と同じである。 クマリン誘導体(1−8)の1H−NMRの測定結果を以下に示す(測定条件;400MHz、CDCl3)。 δ:8.77(s、2H)、7.88(s、2H)、7.64−7.69(m、4H)、7.36−7.51(m、6H)、7.31(dd、2H) クマリン誘導体(1−8)の吸光スペクトルの測定結果を図3に示し、蛍光スペクトルの測定結果を図4に示す。 <クマリン誘導体(1)の蛍光特性の評価> (蛍光膜の作製) 蛍光色素としての、実施例1で得られたクマリン誘導体(1−1)と、アクリル樹脂と、トルエンとを、所定の割合で混合することにより、アクリル樹脂中にクマリン誘導体(1−1)を溶解させることにより、樹脂固形分の濃度が40質量%の樹脂溶液を得た。得られた樹脂溶液を、10mm角、厚さ1mmのガラス板上に、スピンコータを用いて塗布した。次いで、得られた塗膜を、雰囲気温度80℃で加熱して乾燥させることにより、膜厚約5μmの蛍光膜を得た。 クマリン誘導体(1−1)に代えて、実施例2で得られたクマリン誘導体(1−2)と、クマリン6についても、上記と同様にして蛍光膜を作製した。 (蛍光膜の蛍光色素濃度と蛍光量子収率) 絶対量子収率測定装置(浜松ホトニクス社製の「C9920−12」)を用い、上記蛍光膜について、各蛍光色素の極大吸収波長の励起光を照射した際の蛍光量子収率の測定を行った。その結果を表1および図5に示す。 アクリル樹脂などの樹脂膜に蛍光色素を添加して光学材料や色変換材料として利用する場合において、十分な着色(吸収)や発光を得るためには、蛍光色素をある程度高い濃度で添加する必要がある。また、蛍光色素の樹脂への高い溶解性と、濃度消光の影響が小さいことが求められる。 表1および図5より明らかなように、比較例1のクマリン6は、添加濃度の増加に伴う量子収率の低下の幅が大きく現れた。また、蛍光色素を1質量%までしか溶解させることができなかったため、十分な着色(吸収)や発光が得られなかった。 これに対し、実施例1〜4のクマリン誘導体は、比較例1のクマリン6と比べてより高い濃度でクマリン誘導体をアクリル樹脂中に溶解させることができた。例えば、実施例2のクマリン誘導体(1−2)は、比較例1のクマリン6に比べて2倍の濃度でアクリル樹脂中に溶解させることができ、実施例1のクマリン誘導体(1−1)および実施例4のクマリン誘導体(1−4)では、より一層高い濃度で溶解させることができた。また、実施例1〜4のクマリン誘導体は、いずれも比較例1のクマリン誘導体に比べて蛍光量子収率を高い値に維持することができた。 下記一般式(1)で表される、クマリン誘導体。 式中、 R1およびR1aは、同一または異なって、一般式(2):で表されるN置換アミノ基、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、1〜10個の炭素原子を有するアルコキシ基、または水素原子を示し、 R2aおよびR2bは、同一または異なって、1〜12個の炭素原子を有するアルキル基を示すか、または、R2aおよびR2bは、互いに結合して5〜7員環の含窒素ヘテロ環を形成する、4〜10個の炭素原子を有するアルキレン基を示し、 R3、R3a、R4およびR4aは、同一または異なって、水素原子もしくは1〜10個の炭素原子を有するアルキル基を示すか、または、R1およびR1aが前記一般式(2)で表されるN置換アミノ基である場合(但し、R2aおよびR2bが互いに結合して5〜7員環の含窒素ヘテロ環を形成する場合を除く)において、R2aとR3、R2bとR4、R2aとR3a、およびR2bとR4aの組合せの少なくとも1つは、互いに結合して5〜7員環の含窒素ヘテロ環を形成する、4〜10個の炭素原子を有するアルキレン基を示し、 R5およびR5aは、同一または異なって、水素原子、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、または6〜30個の炭素原子を有するアリール基を示し、 R6aおよびR6bは、同一または異なって、水素原子、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、または6〜30個の炭素原子を有するアリール基、ハロゲン原子、またはシアノ基を示し、 Xは、酸素原子、硫黄原子またはイミノ基を示し、 Yは、一般式(3):で表される2価基、または式(4):で表されるスルホニル基を示し、 R7aおよびR7bは、同一または異なって、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、1〜10個の炭素原子を有するハロゲン化アルキル基、6〜30個の炭素原子を有するアリール基、7〜30個の炭素原子を有するアラルキル基、または水素原子を示す。 請求項1に記載のクマリン誘導体を含有する、有機光学材料。 請求項1に記載のクマリン誘導体を含有する、有機色変換材料。 【課題】(メタ)アクリル樹脂などのバインダ用樹脂に対する溶解性が良好であり、かつ濃度消光の影響が小さい新規なクマリン誘導体と、それを用いた有機光学材料の提供。【解決手段】下記一般式(1)で表されるクマリン誘導体および、その有機光学材料、有機色変換材料等への応用。式中、R1は、水素原子等を示し、Xは、酸素原子、硫黄原子またはイミノを示し、Yは、2,2−ヘキサフルオロイソプロピリデン、イソプロピリデン等を示す。【選択図】なし