タイトル: | 公開特許公報(A)_浸透探傷試験用湿式現像剤及び該現像剤を用いた現像方法 |
出願番号: | 2012123642 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | G01N 21/91 |
津葉本 寿博 JP 2013250095 公開特許公報(A) 20131212 2012123642 20120530 浸透探傷試験用湿式現像剤及び該現像剤を用いた現像方法 マークテック株式会社 390002808 安藤 順一 100067301 上村 喜永 100129702 前川 真貴子 100173406 津葉本 寿博 G01N 21/91 20060101AFI20131115BHJP JPG01N21/91 A 8 1 OL 10 2G051 2G051AA90 2G051AB07 2G051CA11 2G051GB01 2G051GB02 2G051GB04 本発明は、自動車部材などの各種部材の表面に存在する微細な開口欠陥部の探傷に適用される浸透探傷試験に用いられる湿式現像剤及び該現像剤を使用した現像方法に関する。 周知のとおり、非破壊検査方法の一種である「JIS Z 2343−1〜4」に規格化されている浸透探傷試験は、自動車部材(例えば、ピストンロッド)などの各種部材の表面に存在する微細な開口欠陥部(例えば、微細なクラックやピンホール)の探傷に汎用されており、その基本的態様は、当該JIS規格に示されているように、染色浸透液(通常、油溶性赤色染料を溶剤に溶解させた浸透性の強い液体が用いられる)を用いる方法又は蛍光浸透液(通常、紫外線灯:ブラックライト:照射下で黄緑色蛍光を発する油溶性蛍光染料を溶剤に溶解させた浸透性の強い液体が用いられる)を用いる方法がある。 染色浸透液を用いる探傷試験方法では、染色浸透液を被検査物表面に付着させて開口欠陥部に浸透させた後、当該欠陥部内に浸透せずに被検査物表面に残留している余剰染色浸透液を除去し、次いで当該被検査物表面に炭酸マグネシウム粉末や炭酸カルシウム粉末などの無機質白色粉末を分散媒に分散させて界面活性剤を添加して製造した現像剤を塗布して、前記無機質白色粉末の薄層を形成して、該薄層によって開口欠陥部内に浸透している染色浸透液を薄層表面に吸い出させることによって欠陥指示模様を現出させ、自然光又は白色光の下で観察して当該欠陥指示模様によって開口欠陥部の存在・位置を探傷する。 蛍光浸透液を用いる探傷試験方法では、蛍光浸透液を被検査物表面に付着させて開口欠陥部に浸透させた後、当該欠陥部に浸透せずに被検査物表面に残留している余剰蛍光浸透液を除去した後、前記現像剤を適用することなく、暗所において被検査物表面にブラックライトを照射して開口欠陥部内に残留している蛍光浸透液を黄緑色に発光させ該黄緑色の欠陥指示模様によって開口欠陥部の存在・位置を探傷する態様と、余剰浸透液を除去した後、前記染色浸透液を用いる場合と同様に現像剤を適用して開口欠陥部に残留している蛍光浸透液を薄層表面に吸い出させた後に暗所においてブラックライトを照射して、該薄層表面に吸い出されている蛍光浸透液を黄緑色に発光させ該黄緑色の欠陥指示模様によって開口欠陥部の存在・位置を探傷する態様とがあり、現像剤を適用する態様の方がより微細な開口欠陥部が探傷できる。 染色浸透液及び蛍光浸透液(以下単に『浸透液』ということがある)には、種々様々な処方の製品が市販・汎用されており、当業者において汎用されている市販品を、油溶性赤色染料(例えば、オイルレッド5B:商品名:オリエント株式会社やSudan Red 462:商品名:BASF社)及び油溶性蛍光染料(例えば、Fluorol 7GA:商品名:GAF社:やフロレッセントブライトニスエージェント68:商品名:日本化薬株式会社)を溶解している主溶剤によって大別すれば、水及び水と相溶する水溶性有機溶剤を主溶剤とする水ベース染色浸透液・水ベース蛍光浸透液と可燃性の非水溶性有機溶剤(通常、高沸点有機溶剤)を主溶剤とする油ベース染色浸透液・油ベース蛍光浸透液とに分類できる。なお、油ベース染色浸透液・油ベース蛍光浸透液には希釈溶剤(通常、揮発性低・中沸点有機溶剤)が配合されている。 油ベース染色浸透液・油ベース蛍光浸透液は、水ベース染色浸透液・水ベース蛍光浸透液と比べて、開口欠陥部に浸透した浸透液を過剰に除去することがないので、一般的には水ベース染色浸透液・水ベース蛍光浸透液よりも探傷精度が高く、微細な開口欠陥部を検出するために用いられているが、溶剤として有機溶剤を使用するため、消防法において取り扱いや貯蔵量の規制がある。 一方、水ベース染色浸透液・水ベース蛍光浸透液は、主溶剤が水と水溶性有機溶剤とを引火点を有しない割合にて混合されているので、消防法の規格を満たして取り扱いや貯蔵量の問題がない。そして、同じく分散媒が水であり引火点を有さない湿式現像剤で現像すれば、浸透探傷試験実施場所周辺の火気の使用に注意する必要がないので、水ベース浸透液と湿式現像剤との組み合わせは、自動車工場で汎用されており、また製鉄所でのスラブの探傷にも適している。 しかし、前記湿式現像剤を使用する現像方法では、現像剤の分散媒が水であるため欠陥指示模様が時間の経過とともに大きく拡大されすぎる傾向がある。これは、水が乾燥するまでに時間がかかるため、湿式現像剤の粉末の隙間に染色浸透液・蛍光浸透液が浸透して広がりすぎるからである(以下この現象を本明細書中では『ニジミ』という)。 ニジミの発生は探傷精度に悪影響を及ぼし、例えば2個の開口欠陥部が隣接する場合には、2つの欠陥指示模様として現出しても、時間の経過とともにニジミにより重なり合って1つの欠陥指示模様になってしまったり、開口欠陥部が線状である場合には、太い線状の欠陥指示模様として現出しても、時間の経過とともにニジミにより楕円形の欠陥指示模様になってしまったりする。このように時間の経過とともに欠陥指示模様の大きさや形が変化してしまうという問題点がある。 また、一般的に使用される湿式現像剤に含有される無機質白色粉末の平均粒子径は約4μm未満の微細粉末であり、その含有量は約5〜15重量%であるが、被検査物が大形であったり、加熱できない材質であったり等の理由により、湿式現像剤の塗布後に被検査物を乾燥機で乾燥させることができないときには、エアブロー等で乾燥させているが、この場合乾燥時間を短縮するため湿式現像剤中の水分量を減少させ粉末含有量を約40〜60重量%まで増加させた現像剤が用いられている。 そして、粉末含有量が約40〜60重量%の現像剤の場合、一般的に使用されている平均粒子径が約4μm未満の微細粉末であると、粘度が上昇して均一な薄層が形成できず、厚くなりムラができて現像剤として機能しなくなるので、粉末含有量が多くても粘度が上昇しないように平均粒子径約4〜8μmの大きな粉末が用いられている。 しかし、粉末の平均粒子径が大きくなると粉末同士の隙間が大きくなり、開口欠陥部に残存した染色浸透液・蛍光浸透液が薄層中に吸い出される際、この大きな隙間に染色浸透液・蛍光浸透液が浸透するので、一般的な平均粒子径約4μm未満の微細粉末を使用した湿式現像剤と比較してさらにニジミが拡大し、開口欠陥部の正確な検出(探傷)が一層困難になるといった問題点がある。 本発明者は、前記諸問題点を解決することを技術的課題とし、試行錯誤的な数多くの試作・実験を重ねた結果、湿式現像剤であっても水溶性樹脂を添加することで、薄層に含まれる粉末の周囲に水溶性樹脂を存在させて、当該水溶性樹脂が開口欠陥部から隙間に浸透する染色浸透液・蛍光浸透液を取り込み固めるので欠陥指示模様のニジミが広がり過ぎず、かつ、水溶性樹脂の種類及び/又は添加量を選定して使用することでニジミの広がりを調節して、欠陥指示模様を所望の大きさに調整することができるという刮目すべき知見を得て、前記技術的課題を達成したものである。 前記技術的課題は、次のとおり本発明によって解決できる。 即ち、本発明は、水溶性樹脂が溶解している水に無機質白色粉末が分散していることを特徴とする浸透探傷試験用湿式現像剤である(請求項1)。 また、本発明は、前記水溶性樹脂の含有量が0.1〜5重量%である請求項1記載の浸透探傷試験用湿式現像剤である(請求項2)。 また、本発明は、前記水溶性樹脂が水溶性アクリル酸エステル系樹脂、水溶性カルボキシメチルセルロース樹脂及び水溶性ポリビニルアルコール樹脂から選択される1種以上である請求項1または2記載の浸透探傷試験用湿式現像剤である(請求項3)。 また、本発明は、前記無機質白色粉末の平均粒子径が4〜8μmである請求項1乃至3のいずれかに記載の浸透探傷試験用湿式現像剤である(請求項4)。 また、本発明は、前記無機質白色粉末の含有量が40〜60重量%である請求項1乃至4のいずれかに記載の浸透探傷試験用湿式現像剤である(請求項5)。 また、本発明は、前記無機質白色粉末が炭酸マグネシウム及び/又は炭酸カルシウムである請求項1乃至5のいずれかに記載の浸透探傷試験用湿式現像剤である(請求項6)。 また、本発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の浸透探傷試験用湿式現像剤を使用することを特徴とする浸透探傷試験における現像方法である(請求項7)。 また、本発明は、前記水溶性樹脂の含有量及び/又は種類を選定して使用することにより欠陥指示模様の大きさを調整する請求項7記載の浸透探傷試験における現像方法である(請求項8)。 本発明は、水溶性樹脂が溶解している水に無機質白色粉末が分散していることを特徴とする浸透探傷試験用湿式現像剤であるので、粉末同士の隙間に水溶性樹脂が存在し、当該水溶性樹脂が、粉末同士の隙間に浸透する染色浸透液・蛍光浸透液を取り込み固めてニジミの過度な拡大を抑制するので、時間が経過しても欠陥指示模様の大きさや形が変化しにくくなり、開口欠陥部を正確に検出(探傷)することができる。 また、本発明の湿式現像剤に添加する前記水溶性樹脂を0.1〜5重量%の範囲で変化させれば、ニジミの広がりを調節することができるので、例えば、目視による検出が容易な大きさであり、かつ、隣接する開口欠陥部の欠陥指示模様が重なり合うことがないといった所望の欠陥指示模様の大きさに調整することができる。 また、添加する水溶性樹脂が水溶性アクリル酸エステル系樹脂、水溶性カルボキシメチルセルロース樹脂、水溶性ポリビニルアルコール樹脂から選択される1種以上であれば、水に溶解しやすく、かつ、湿式現像剤自体の粘度を上昇させにくいので現像剤に添加しても均一な薄層を形成することができる。 また、前記無機質白色粉末含有量が40〜60重量%、平均粒子径4〜8μmの粉末を用いた湿式現像剤は、粉末の平均粒子径が大きいため粒子間の隙間が大きくなってニジミが拡大しやすいが、水溶性樹脂が浸透する染色浸透液・蛍光浸透液を取り囲んで固めることでニジミの過度な拡大を抑制することができるので、開口欠陥部を正確に検出(探傷)することができる。 また、無機質白色粉末を白色度が高く速乾性に優れている炭酸マグネシウム及び/又は炭酸カルシウムとすることで均一な白色薄層が形成できるので、欠陥指示模様を明確に現出させることができ、開口欠陥部を正確に検出(探傷)することができる。 さらに、本発明の湿式現像剤を使用した浸透探傷試験方法は、染色浸透液・蛍光浸透液のニジミの過度な拡大を抑制できるとともに、必要に応じて、湿式現像剤に含有させる水溶性樹脂の量及び/又は種類を選定して使用することによって欠陥指示模様を所望の大きさに調整することができる。 加えて、本発明は、市販の染色浸透液・蛍光浸透液と組合せて用いることができるので、種々の大きさ及び深さの開口欠陥部の浸透探傷試験に使用することができる。水溶性樹脂の添加に伴って、ほぼ円形状の欠陥指示模様の直径が小さくなることを示した図である。 本発明の実施の形態は次の通りである。 本発明の浸透探傷試験用湿式現像剤は、水に無機質白色粉末を分散させ、水溶性樹脂を添加して製造する。 本発明に使用する無機質白色粉末は特に限定されるものではないが、炭酸マグネシウム粉末、炭酸カルシウム粉末、無水ケイ酸粉末、含水ケイ酸粉末等を例として挙げることができる。特に炭酸マグネシウム粉末及び炭酸カルシウム粉末は白色度が高いため好適に用いることができる。 無機質白色粉末の平均粒子径は特に限定されるものではなく、一般的に使用されている平均粒子径が約4μm未満の微細粉末はもとより、粉末含有量が約40〜60重量%の場合に用いられている平均粒子径約4〜8μmの粉末も用いることができる。 なお、粉末の平均粒子径が約8μmより大きくなると、現像剤の製造時や薄層形成時の分散性が悪くなる。 本発明における無機質白色粉末の含有量は5〜60重量%であり、好ましくは40〜60重量%である。5重量%より少なければ、現像剤の薄層が形成されない虞があり、また60重量%より多ければ、湿式現像剤の粘度が上昇して薄層とならずまたムラもできるので、いずれも現像剤として機能せず好ましくない。 本発明における水溶性樹脂には、天然系、半合成系、合成系いずれの水溶性樹脂も使用することができるが、アクリル酸エステル系の水溶性ポリマーが好ましい。好ましいアクリル酸エステル系の水溶性ポリマーとしてはスチレンーアクリル酸エステル共重合樹脂、スチレン―アクリル酸エステル特殊共重合樹脂、スチレン−(メタ)−アクリル酸エステル共重合樹脂、酢酸ビニル−アクリル酸共重合樹脂、アクリル酸エステル共重合樹脂、アクリル酸エステル特殊共重合樹脂等を挙げることができる。 また、水溶性カルボキシメチルセルロース、水溶性ヒドロキシメチルセルロース等のセルロース系の半合成系水溶性樹脂、水溶性ポリビニルアルコール等の合成系水溶性樹脂も好適に用いることができる。 水溶性樹脂の含有量は、0.1重量%以上が好ましく、さらに好ましいのは0.1〜5重量%である。0.1重量%未満であると粉末同士の隙間に浸透する浸透液を十分に吸収することができず、ニジミが広がりすぎる虞があり、また、5重量%より多く添加してもニジミの拡大に対する抑制効果に変化はなく、かつ、湿式現像剤の粘度が上昇すると均一な薄層を形成しにくくなるためいずれも好ましくない。 また、本発明には、無機質白色粉末を十分に分散させるため界面活性剤を添加することができる。添加する界面活性剤はノニオン系界面活性剤が好ましく、例として、ノイゲンXL−40,HLB:10.5(商品名:第一工業製薬株式会社)、ノイゲンLF−30X,HLB:9.4 (商品名:第一工業製薬株式会社)、ノイゲンDKS NL−60,HLB:11.5(商品名:第一工業製薬株式会社)を挙げることができる。界面活性剤の添加量は限定されないが、0.1〜3.0重量%が好ましく、より好ましくは0.5〜1.0重量%である。(湿式現像剤の調製) 本実施の形態に係る浸透探傷試験用湿式現像剤の調製は容易であり、水をプロペラ式撹拌機を用いて撹拌しながら無機質白色粉末と界面活性剤を投入し、水溶性樹脂を添加した後、全体が均一になるまで撹拌して製造する。(浸透探傷試験方法) 本実施の形態に係る浸透探傷試験方法は、先ず、市販の浸透探傷試験用浸透液を被検査物表面に塗布して付着させて開口欠陥部に浸透させ(浸透処理)、次いで、当該被検査物表面を水圧:約0.1〜0.3Mpa・流量:1〜3L/minにて当該欠陥部内に浸透せずに被検査物表面に残っている余剰浸透液を洗浄・除去する(洗浄処理)。 エアブロー等により被検査物表面に残存する水滴を除去した後、湿式現像剤を塗布し、乾燥機やエアブローにて乾燥させて現像剤の薄層を形成する(現像処理)。 開口欠陥部に残存していた浸透液は現像剤の薄層に吸い出されて欠陥指示模様を現出する。現出した指示模様の直径はノギスを使用して測定する。 現出した欠陥指示模様のニジミが広がりすぎて、隣接する欠陥指示模様同士が重なり合うような場合には、水溶性樹脂の添加量及び/または種類を変更して適切な大きさとなるよう調整する。 水溶性樹脂の添加量及び/または種類を選定し、決定した後、同一の湿式現像剤を使用すれば、開口欠陥部の大きさ及び深さ等を比較して検出(探傷)することができる。(湿式現像剤の調製) ガラス製ビーカーに所要量の水を充填してプロペラ式撹拌機を用いて300rpmで撹拌しながら所要量の界面活性剤(ノイゲンXL−40(HLB:10.5))と所要量の炭酸カルシウム白色粉末(平均粒子径6μm)を添加し、その後、所要量のスチレン−アクリル酸エステル共重合樹脂(ポリゾールSE−1420:商品名:昭和電工株式会社)を添加し、全体が均一になるまで撹拌を続けて湿式現像剤を製造した。また、水溶性樹脂を添加しない外は前記と同様にして製造した湿式現像剤を比較例とした。各添加量及び水の量は表1に記載したとおりである。(欠陥指示模様の大きさの評価方法) 厚さ10mmのアルミ板に直径0.5mm、深さ5mmのドリルホールをあけた人工欠陥試験片を使用し、染色浸透液としてスーパーチェックP−LK(商品名:マークテック株式会社)を用い、人工欠陥試験片に刷毛にて塗布し、5分間浸透させた後、余剰染色浸透液を水圧150kPaにてスプレー洗浄により除去し、次いでエアブローにより人工欠陥試験片表面に付着している水滴を除去した後、湿式現像剤をスプレーガンによって人工欠陥試験片にスプレー塗布し、熱風循環式乾燥機で、70℃、5分間乾燥させて現れたほぼ円形状の欠陥指示模様の直径をノギスで測定した。 上記操作を3回繰り返して測定したほぼ円形状の欠陥指示模様の直径の平均値を指示模様の大きさ(mm)として表1及び図1に示した。 なお、市販の浸透探傷試験用蛍光浸透液であるスーパーグローOD−18S(商品名:マークテック株式会社)を用いた場合には、前記(現像処理)後に、暗所におけるブラックライト照射下で現出した欠陥指示模様の直径をノギスにて測定する。 ポリゾールSE−1420を添加すれば、添加しない場合(比較例)と比べてほぼ円形状の欠陥指示模様の直径の平均値がいずれも小さくなっていることから、無機質白色粉末の平均粒子径が大きい場合においてもニジミの過度な拡大を抑制して、正確に開口欠陥部を検出(探傷)することができる。 さらに、ポリゾールSE−1420の添加量が0.1〜0.5重量%においては、添加量の増加に伴いほぼ円形状の欠陥指示模様の直径が小さくなっていることから、開口欠陥部の大きさによって水溶性樹脂の添加量を調節することで隣接する欠陥指示模様同士の重なりを抑制して、正確に開口欠陥部を検出(探傷)することができる。(水溶性樹脂の種類の比較) 水50ccと界面活性剤(ノイゲンXL−40(HLB:10.5))0.5gと炭酸カルシウム白色粉末(平均粒子径6μm)47.5gと各種水溶性樹脂2.0gを用い、前記と同様にして湿式現像剤を製造し、前記評価方法と同一の方法でほぼ円形状の欠陥指示模様の直径を3回測定し、平均値を指示模様の大きさ(mm)とした。 使用した水溶性樹脂は、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合樹脂(ポリゾールP−503:商品名:昭和電工株式会社)、アクリル酸エステル共重合樹脂(ポリゾールAM−200:商品名:昭和電工株式会社)、スチレン−アクリル酸エステル共重合樹脂(ポリゾールAM−610:商品名:昭和電工株式会社)、アクリル酸エステル特殊共重合樹脂(ポリゾールAE−710DF:商品名:昭和電工株式会社)、スチレン―(メタ)アクリル酸エステル共重合樹脂とポリエステル樹脂の混合物(ポリゾールFP−3000A:商品名:昭和電工株式会社)、スチレンーアクリル酸エステル特殊共重合樹脂(ポリゾールSE−1440:商品名:昭和電工株式会社)、カルボキシメチルセルロース(CMCダイセル1120:商品名:ダイセルファインケム株式会社)、ポリビニルアルコール(ゴセノールGL−03:商品名:日本合成化学工業株式会社)である。 結果を表2に示す。 水溶性樹脂を添加した湿式現像剤のほぼ円形状の欠陥指示模様の直径はいずれも比較例と比べて小さくなるので、無機質白色粉末の平均粒子径が大きい場合においてもニジミの過度な拡大を抑制し、隣接する欠陥指示模様の重なりを防いで正確に開口欠陥部を検出(探傷)することができる。 本発明に係る湿式現像剤は水溶性樹脂を添加することで、当該水溶性樹脂が開口欠陥部から現像剤の薄層中の粉末の隙間に浸透する浸透液を取り込み固めるので、欠陥指示模様のニジミが広がりすぎず、また、水溶性樹脂の種類及び/又は添加量によってニジミの広がりを調節して、欠陥指示模様を所望の大きさに調整することができ、正確に開口欠陥部の検出(探傷)ができるから、自動車会社や製鉄所等における浸透探傷試験用湿式現像剤に適しているので本発明の産業上の利用可能性は大きいといえる。水溶性樹脂が溶解している水に無機質白色粉末が分散していることを特徴とする浸透探傷試験用湿式現像剤。前記水溶性樹脂の含有量が0.1〜5重量%である請求項1記載の浸透探傷試験用湿式現像剤。前記水溶性樹脂が水溶性アクリル酸エステル系樹脂、水溶性カルボキシメチルセルロース樹脂及び水溶性ポリビニルアルコール樹脂から選択される1種以上である請求項1または2記載の浸透探傷試験用湿式現像剤。前記無機質白色粉末の平均粒子径が4〜8μmである請求項1乃至3のいずれかに記載の浸透探傷試験用湿式現像剤。前記無機質白色粉末の含有量が40〜60重量%である請求項1乃至4のいずれかに記載の浸透探傷試験用湿式現像剤。前記無機質白色粉末が炭酸マグネシウム及び/又は炭酸カルシウムである請求項1乃至5のいずれかに記載の浸透探傷試験用湿式現像剤。請求項1乃至6のいずれかに記載の浸透探傷試験用湿式現像剤を使用することを特徴とする浸透探傷試験における現像方法。前記水溶性樹脂の含有量及び/又は種類を選定して使用することにより欠陥指示模様の大きさを調整する請求項7記載の浸透探傷試験における現像方法。 【課題】 浸透探傷試験において湿式現像剤にて現像する際に生じる時間の経過に伴うニジミによる欠陥指示模様の変形及び過度な拡大を抑制し、かつ、欠陥指示模様を所望の大きさに調整できる湿式現像剤を提供する。【解決手段】水溶性樹脂が溶解している水に無機質白色粉末が分散していることを特徴とする浸透探傷試験用湿式現像剤。【選択図】図1