| タイトル: | 公開特許公報(A)_脂質膜構造体にpH依存性カチオン性を付与する剤、それによりpH依存性カチオン性が付与された脂質膜構造体および脂質膜構造体の製造方法 |
| 出願番号: | 2012119521 |
| 年次: | 2013 |
| IPC分類: | A61K 47/22,C12N 15/09,A61K 9/127,A61K 47/28,A61K 47/24,A61K 31/7105,A61K 48/00,A61K 47/34,A61P 43/00 |
原島 秀吉 畠山 浩人 佐藤 悠介 兵藤 守 櫻井 遊 秋田 英万 JP 2013245190 公開特許公報(A) 20131209 2012119521 20120525 脂質膜構造体にpH依存性カチオン性を付与する剤、それによりpH依存性カチオン性が付与された脂質膜構造体および脂質膜構造体の製造方法 株式会社バイオメッドコア 508376591 原島 秀吉 512137337 畠山 浩人 512137751 佐藤 悠介 512137762 兵藤 守 512137773 櫻井 遊 512137784 秋田 英万 512137795 佐川 慎悟 100110766 小林 基子 100133260 金丸 清隆 100145126 高橋 史織 100164220 川野 陽輔 100169340 原島 秀吉 畠山 浩人 佐藤 悠介 兵藤 守 櫻井 遊 秋田 英万 A61K 47/22 20060101AFI20131112BHJP C12N 15/09 20060101ALI20131112BHJP A61K 9/127 20060101ALI20131112BHJP A61K 47/28 20060101ALI20131112BHJP A61K 47/24 20060101ALI20131112BHJP A61K 31/7105 20060101ALI20131112BHJP A61K 48/00 20060101ALI20131112BHJP A61K 47/34 20060101ALI20131112BHJP A61P 43/00 20060101ALI20131112BHJP JPA61K47/22C12N15/00 AA61K9/127A61K47/28A61K47/24A61K31/7105A61K48/00A61K47/34A61P43/00 105 8 1 OL 35 4B024 4C076 4C084 4C086 4B024AA20 4B024CA11 4B024DA02 4B024GA11 4B024HA11 4B024HA17 4C076AA19 4C076AA95 4C076CC26 4C076DD06F 4C076DD60N 4C076DD63F 4C076DD70F 4C076EE23F 4C076FF32 4C076GG41 4C084AA13 4C084MA05 4C084MA24 4C084NA13 4C084ZB212 4C086AA01 4C086AA02 4C086EA16 4C086MA03 4C086MA05 4C086MA24 4C086NA13 4C086ZB21 本発明は、脂質膜構造体にpH依存性カチオン性を付与する剤、それによりpH依存性カチオン性が付与された脂質膜構造体および脂質膜構造体の製造方法に関する。より詳細には、1−methyl−4,4−bis[(9Z,12Z)−octadeca−9,12−dien−1−yloxy]piperidine(以下、「YSK05」という。)を有効成分とする、脂質膜構造体にpH依存性カチオン性を付与する剤、YSK05によりpH依存性カチオン性が付与された脂質膜構造体、標的遺伝子の伝令RNAの全部または一部と同じまたは相補的な塩基配列を有するRNAを内包する前記脂質膜構造体を有効成分とする標的遺伝子の発現抑制剤、およびYSK05を構成脂質として含む脂質膜を有する脂質膜構造体の製造方法に関する。 細胞の中に核酸や薬剤を送達するために、カチオン性の脂質膜構造体がキャリアとして用いられている。細胞や核酸は一般に負電荷を帯びていることから、カチオン性の脂質膜構造体は、核酸を安定的に保持することができる点や、細胞内に効率的に導入できることなどの点で有用である。そこで、カチオン性の脂質膜構造体の構成脂質として用いることができる、種々のカチオン性脂質が研究開発されており、特許文献1には、肝細胞への毒性が低いカチオン性脂質が開示されている。 一方、カチオン性の脂質膜構造体は、例えば静脈注射などの方法により生体に投与した場合に、負電荷を帯びた血球細胞や血清蛋白質などと非特異的な相互作用をするため、標的細胞への選択的な送達は困難であるという問題を有する。そこで、従来、血中などの中性の環境では中性であり、エンドソームなどの酸性環境ではカチオン性となってエンドソームから細胞質へと移行することができる、pH依存性カチオン性の脂質膜構造体が求められている。pH依存性カチオン性の脂質膜構造体の構成脂質として用いることができる脂質としては、例えば、1,2−dioleoyl−3−dimethylammonium propane(DODAP)を挙げることができる。国際公開パンフレットWO2011/090965号公報 しかしながら、特許文献1に記載のカチオン性脂質は、酸性環境で脂質そのものが分解し易い性質を有し(特許文献1;FIG.1、FIG.2)、それゆえに肝臓で速やかに分解されて肝細胞への毒性が低いカチオン性脂質であって(特許文献1;第1頁第22〜27行目、FIG.4)、脂質膜構造体にpH依存性カチオン性を付与するものではない。また、DODAPは、後述する実施例で示すように、YSK05とは構造が異なる別の物質である。 本発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、YSK05を有効成分とする、脂質膜構造体にpH依存性カチオン性を付与する剤、それによりpH依存性カチオン性が付与された脂質膜構造体および脂質膜構造体の製造方法を提供することを目的とする。 本発明者らは、鋭意研究の結果、YSK05が脂質膜構造体にpH依存性カチオン性を付与すること、YSK05を構成脂質として含む脂質膜を調製することにより、pH依存性カチオン性が付与された脂質膜構造体を製造することができること、および標的遺伝子に対するsiRNAを内包する、YSK05によりpH依存性カチオン性が付与された脂質膜構造体が当該標的遺伝子の発現を抑制することを見出し、下記の各発明を完成した。(1)1−methyl−4,4−bis[(9Z,12Z)−octadeca−9,12−dien−1−yloxy]piperidineを有効成分とする、脂質膜構造体にpH依存性カチオン性を付与する剤。(2)1−methyl−4,4−bis[(9Z,12Z)−octadeca−9,12−dien−1−yloxy]piperidineを構成脂質として含む脂質膜を有する、1−methyl−4,4−bis[(9Z,12Z)−octadeca−9,12−dien−1−yloxy]piperidineによりpH依存性カチオン性が付与された脂質膜構造体。(3)下記(A)または(B)の脂質膜を有する、(2)に記載の脂質膜構造体;(A)(a)1−methyl−4,4−bis[(9Z,12Z)−octadeca−9,12−dien−1−yloxy]piperidine、(b)コレステロールおよび(c)1−palmitoyl−2−oleoyl−sn−glycero−3−phosphoethanolamine(POPE)をモル比が(a)/(b)+(c)≧2/3かつ3/7≦(b)/(c)≦7/3の割合で構成脂質として含む脂質膜、(B)(a)1−methyl−4,4−bis[(9Z,12Z)−octadeca−9,12−dien−1−yloxy]piperidineおよび(b)コレステロールをモル比が13/7≦(a)/(b)≦3の割合で構成脂質として含む脂質膜。(4)ポリエチレングリコールと結合した脂質を構成脂質として含む脂質膜を有する、(2)または(3)に記載の脂質膜構造体。(5)ポリエチレングリコールと結合した脂質がポリエチレングリコールと結合した1,2−dimyristoyl−sn−glycerol(DMG)および/またはポリエチレングリコールと結合した1,2−distearoyl−sn−glycerol(DSG)である、(4)に記載の脂質膜構造体。(6)標的遺伝子の発現抑制剤であって、前記標的遺伝子の伝令RNAの全部または一部と同じまたは相補的な塩基配列を有するRNAを内包する(2)から(5)のいずれかに記載の脂質膜構造体を有効成分とする前記剤。(7)下記(I)または(II)の脂質膜を調製する工程を有する、脂質膜構造体の製造方法;(I)(a)1−methyl−4,4−bis[(9Z,12Z)−octadeca−9,12−dien−1−yloxy]piperidine、(b)コレステロール、(c)1−palmitoyl−2−oleoyl−sn−glycero−3−phosphoethanolamine(POPE)および(d)ポリエチレングリコールが結合した1,2−dimyristoyl−sn−glycerol(DMG)をモル比が(a)/(b)+(c)≧2/3、3/7≦(b)/(c)≦7/3かつ0<(d)/(a)+(b)+(c)≦1/10の割合で構成脂質として含む脂質膜、(II)(a)1−methyl−4,4−bis[(9Z,12Z)−octadeca−9,12−dien−1−yloxy]piperidine、(b)コレステロールおよび(d)ポリエチレングリコールが結合した1,2−dimyristoyl−sn−glycerol(DMG)をモル比が13/7≦(a)/(b)≦3かつ0<(d)/(a)+(b)≦1/10の割合で構成脂質として含む脂質膜。(8)ポリエチレングリコールと結合した1,2−distearoyl−sn−glycerol(DSG)を前記調製した脂質膜に添加する工程を有する、(7)に記載の脂質膜構造体の製造方法。 本発明に係る脂質膜構造体にpH依存性カチオン性を付与する剤によれば、脂質膜構造体の粒子径やPDIなどの物性に影響を与えることなく、脂質膜構造体にpH依存性カチオン性を付与することができる。次に、本発明に係るYSK05によりpH依存性カチオン性が付与された脂質膜構造体やその製造方法によれば、pHの低下に伴い生体膜との膜融合能が向上する脂質膜構造体を得ることができる。また、siRNAや薬剤などの物質を効率良く内包し、かつその内包物を血清中での分解などから保護して安定的に保持することができる脂質膜構造体を得ることができる。また、細胞内に取り込まれた後、リソソームで分解される前に、内包物を速やかに細胞質に放出できることから、内包物を効率的に細胞質に送達できる脂質膜構造体を得ることができる。さらに、標的組織への直接投与のみならず、血中投与によっても、任意の組織に内包物を送達することができる脂質膜構造体を得ることができる。 一方、本発明に係る標的遺伝子の発現抑制剤によれば、標的遺伝子の発現を効率的に抑制することができることから、投与量が少なくて済み、投与対象者の負担を軽減することができる。また、標的組織への直接投与のみならず、血中投与によっても、任意の組織や細胞での標的遺伝子の発現を抑制することができる。特に、本発明に係る標的遺伝子の発現抑制剤によれば、血中滞留性が高いために、enhanced permeability and retention(EPR)効果を利用して、腫瘍組織に送達させることができ、癌遺伝子の発現を抑制する他、腫瘍の治療をすることができる。ここで、EPR効果とは、腫瘍組織の新生血管が正常組織の血管と比較して脆弱であり、透過性が亢進していることから、微小な脂質膜構造体などの微粒子が長時間血中を循環することにより、受動的にがん組織の血管から洩れ出てがん組織へ蓄積する効果をいう(Matsumura Yら、Cancer Res.、第46巻、第6387〜6392頁、1986年)。1,2−dioleoyl−3−trimethylammonium propane(DOTAP)、1,2−dioleoyl−3−dimethylammonium propane(DODAP)および1−methyl−4,4−bis[(9Z,12Z)−octadeca−9,12−dien−1−yloxy]piperidine(YSK05)の構造を示す図である。DOTAP、DODAPまたはYSK05を構成脂質として含む脂質膜を有する脂質膜構造体およびTNS試薬を添加した、種々のpHの緩衝液の相対蛍光強度を示す図である。種々のpHにおける、DOTAP、DODAPまたはYSK05を構成脂質として含む脂質膜を有する空の脂質膜構造体と赤血球との膜融合率を示す図である。ホタルルシフェラーゼ遺伝子伝令RNAに対するsiRNA(anti−luc)を内包し、DOTAP、DODAPまたはYSK05を構成脂質として含む脂質膜を有する脂質膜構造体のルシフェラーゼ遺伝子の発現抑制率(Luc/KD率)を示す図である。anti−lucを内包し、組成3〜7の脂質膜を有する脂質膜構造体について、Luc/KD率を測定した結果(右図)、および、血清中で0〜48時間インキュベートした後、内包していたanti−lucを20%ポリアクリルアミドゲル電気泳動により検出した結果(左図)をそれぞれ示す図である。anti−lucを内包し、組成8〜13(左図)および組成14〜16(右図)の脂質膜を有する脂質膜構造体のLuc/KD率を示す図である。種々のpHにおける、組成3および組成10の脂質膜を有する空の脂質膜構造体(空YSK脂質膜構造体および空YSK/A脂質膜構造体)と赤血球との膜融合率を示す図である。anti−lucを内包し、組成3および組成10の脂質膜を有する脂質膜構造体(luc内包YSK脂質膜構造体およびluc内包YSK/A脂質膜構造体)、ならびに市販のトランスフェクション試薬(LF2k)の、Luc/KD率を示す図である。Cy5で標識したsiRNAを内包し、DODAPおよびYSK05を構成脂質として含む脂質膜を有する脂質膜構造体(Cy5−luc内包DODAP脂質膜構造体およびCy5−luc内包YSK/A脂質膜構造体)を添加した後、Hoechst33342により細胞核を染色した細胞における、Cy5およびHoechst33342の蛍光を示す図である。図中、Cy5の蛍光がドット状に検出された主な箇所を矢印で示す。anti−lucを内包し、DOTAPおよびYSK05を構成脂質として含む脂質膜を有する脂質膜構造体(luc内包DOTAP脂質膜構造体およびluc内包YSK/A脂質膜構造体)の、クロロキンまたは塩化アンモニウムの存在下におけるLuc/KD率を示す図である。anti−luc、siRNA/プロタミン複合体および空YSK脂質膜構造体の混合物、luc内包YSK/A脂質膜構造体、ならびにPEG/luc内包YSK/A脂質膜構造体について、血清中で0〜24時間インキュベートした後、anti−lucを20%ポリアクリルアミドゲル電気泳動により検出した結果を示す図である。各種の脂質膜構造体を投与した腫瘍モデルマウスおよび何も投与していない腫瘍モデルマウス(コントロール)の腫瘍組織における相対PLK1発現量を示す図である。PLK1遺伝子特異的プライマーを用いた5’RACE PCRのPCR増幅産物を示す図である。図中、PLK1遺伝子mRNAが切断された結果生じるRNA断片が特異的に増幅したDNAを示すバンドの位置を矢印で示す。SRBI遺伝子伝令RNAに対するsiRNA(anti−sr)を内包し、組成17〜19の脂質膜を有する脂質膜構造体およびPBSを投与したマウスの、肝臓における相対SRBI発現量を示す図である。anti−srを内包し、組成20〜25の脂質膜を有する脂質膜構造体およびPBSを投与したマウスの肝臓における相対SRBI発現量を示す図である。anti−srを内包し、組成17、26および27の脂質膜を有する脂質膜構造体およびPBSを投与したマウスの肝臓における相対SRBI発現量を示す図である。種々のpHにおける、組成28および組成23の脂質膜を有する空の脂質膜構造体(空YSK/28脂質膜構造体および空YSK/B脂質膜構造体)と赤血球との膜融合率を示す図である。anti−srを内包し、組成28および組成23の脂質膜を有する脂質膜構造体(sr内包YSK/28脂質膜構造体およびsr内包YSK/B脂質膜構造体)を投与したマウスの肝臓における相対SRBI発現量を示す図である。第7因子遺伝子伝令RNAに対するsiRNA(anti−f7)を内包し、組成28および組成23の脂質膜を有する脂質膜構造体(f7内包YSK/28脂質膜構造体およびf7内包YSK/B脂質膜構造体)を投与したマウスの血清中の第7因子割合を示す図である。f7内包YSK/B脂質膜構造体およびPBSを投与したマウスの血清中の第7因子割合について、投与後の経過日数に伴う変化を示す図である。放射性同位体で標識し、ポリエチレングリコール(PEG)と結合した1,2−distearoyl−sn−glycerol(DSG)、すなわちPEG−DSGを0〜3モル%添加した脂質膜を有する脂質膜構造体を投与したマウスの血漿中の放射線濃度を示す図である。各種の脂質膜構造体およびPBSを投与した腫瘍モデルマウスの腫瘍組織における相対PLK1発現量を示す図である。図中、バーの先端の数字は、siRNAの投与量(mg/kg)を示す。 以下、本発明に係る脂質膜構造体にpH依存性カチオン性を付与する剤、それによりpH依存性カチオン性が付与された脂質膜構造体、標的遺伝子の発現抑制剤および脂質膜構造体の製造方法について詳細に説明する。 本発明に係る脂質膜構造体にpH依存性カチオン性を付与する剤は、1−methyl−4,4−bis[(9Z,12Z)−octadeca−9,12−dien−1−yloxy]piperidine(以下、「YSK05」という。)を有効成分とする。 本発明における「pH依存性カチオン性」とは、pHの低下に伴って電荷量が大きくなる性質をいう。従って、本発明におけるpH依存性カチオン性が付与された脂質膜構造体には、正電荷を帯びている脂質膜構造体(カチオン性脂質膜構造体、正帯電性脂質膜構造体)のほか、負電荷を帯びているもの(アニオン性脂質膜構造体、負帯電性脂質膜構造体)や電荷を帯びていないもの(非帯電性脂質膜構造体)、正電荷および負電荷の両方を帯びているもの(両(正負)帯電性脂質膜構造体)も含む。 YSK05は、当業者によって適宜選択可能な方法を用いて合成することができる。そのような方法としては、例えば、既報(Sodeoka M,ら、J.Med.Chem.、第44巻、第3216〜3222頁、2001年)に記載の方法に準じて、まず(9Z,12Z)−Octadecadien−1−OLを合成し、これをアニソールに溶解し、1−methyl−4−piperidone4およびp−トルエンスルホン酸を加えて加熱還流する。その後、有機相を回収して、希釈・洗浄した後、溶媒を除いて粗生成物を得て、これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製する方法のほか、特許文献1に記載の方法を挙げることができる。 YSK05は、適宜、必要に応じて、修飾物質を結合するなどの方法により修飾して用いることができる。そのような修飾物質としては、例えば、PEG鎖、アミノ酸やペプチド、単糖、多糖、蛋白質、核酸、32Pや3H、14C、13C、15Nなどの放射性同位体(RI)や蛍光色素などの標識物質を挙げることができる。 次に、本発明は、YSK05によりpH依存性カチオン性が付与された脂質膜構造体を提供する。なお、YSK05によりpH依存性カチオン性が付与された脂質膜構造体において、上述した本発明に係る脂質膜構造体にpH依存性カチオン性を付与する剤の構成と同等または相当する構成については再度の説明を省略する。 本発明に係るYSK05によりpH依存性カチオン性が付与された脂質膜構造体がpH依存性カチオン性を有するか否かは、定法に従って確認することができ、例えば、負荷電性のTNS試薬を用いて簡便に確認することができる。TNS試薬はカチオン性の脂質膜に入り込んで蛍光を発する試薬であり、この方法では、種々のpHとなるよう調製した緩衝液中で脂質膜構造体とTNS試薬とを混合した後、緩衝液の蛍光強度を測定する。測定した蛍光強度と緩衝液のpHとの相関関係を確認し、pHが小さいほど蛍光強度が大きい場合は、当該脂質膜構造体がpH依存性カチオン性を有すると判断することができる。 本発明に係るYSK05によりpH依存性カチオン性が付与された脂質膜構造体の好ましい形態としては、脂質二重層からなる脂質膜を有する閉鎖小胞を挙げることができ、そのような脂質膜構造体としては、例えば、リポソームを挙げることができる。ここで、本発明に係るYSK05によりpH依存性カチオン性が付与された脂質膜構造体が有する脂質膜の枚数は、1枚であってもよく、2以上の複数枚であってもよい。 本発明に係るYSK05によりpH依存性カチオン性が付与された脂質膜構造体は、YSK05を構成脂質として含む脂質膜を有する。YSK05を構成脂質として含む脂質膜を調製する方法は、定法に従って行うことができる。そのような方法としては、例えば、溶媒にYSK05を溶解し、これを用いて、単純水和法、超音波処理法、エタノール注入法、エーテル注入法、逆相蒸発法、界面活性剤法、凍結・融解法などの公知の方法により脂質膜構造体を調製する方法を挙げることができる。また、YSK05を用いずにこれらの方法により脂質膜構造体を調製した後、当該脂質膜構造体の脂質膜にYSK05を添加してもよい。 本発明に係るYSK05によりpH依存性カチオン性が付与された脂質膜構造体の脂質膜には、構成脂質として、YSK05のみを含んでもよく、YSK05のほかにYSK05以外の脂質を含んでもよい。YSK05以外の脂質は、カチオン性脂質、両(正負)帯電性脂質や非帯電性脂質を含む中性脂質、アニオン性脂質のいずれでもよく、脂質の種類としては、例えば、リン脂質、糖脂質、ステロール、長鎖脂肪族アルコールあるいはグリセリン脂肪酸エステルなどを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。 リン脂質としては、例えば、ホスファチジルコリン(例えば、1,2−Dioleyl−sn−3−phosphatidylCholine(DOPC)、ジラウロイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、dipalmitoyl phosphatidyl Choline(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン、1−Stearoyl−2−oleyl−sn−glycero−3−phosphatidylCholine(SOPC)など)、ホスファチジルグリセロール(例えば、ジオレオイルホスファチジルグリセロール、ジラウロイルホスファチジルグリセロール、ジミリストイルホスファチジルグリセロール、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、ジステアロイルホスファチジルグリセロールなど)、ホスファチジルエタノールアミン(例えば、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン、ジラウロイルホスファチジルエタノールアミン、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジオレオイルグリセロフォスフォエタノールアミン(DOPE)、1−palmitoyl−2−oleoyl−sn−glycero−3−phosphoethanolamine(POPE)など)、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸(PA)、カルジオリピン、またはこれらの水素添加物、卵黄、大豆その他の動植物に由来する天然脂質(例えば、卵黄レシチン、大豆レシチンなど)などを挙げることができ、これらのうちの1種または2種以上を用いることができる。 糖脂質としては、スフィンゴミエリン、スルホキシリボシルグリセリド、ジグリコシルジグリセリド、ジガラクトシルジグリセリド、ガラクトシルジグリセリド、グリコシルジグリセリドなどのグリセロ糖脂質、ガラクトシルセレブロシド、ラクトシルセレブロシド、ガングリオシドなどのスフィンゴ糖脂質などを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。 ステロールとしては、コレステロール(Chol)、コレステロールコハク酸、ラノステロール、ジヒドロラノステロール、デスモステロール、ジヒドロコレステロールなどの動物由来のステロール、スチグマステロール、シトステロール、カンペステロール、ブラシカステロールなどの植物由来のステロール(フィトステロール)、チモステロール、エルゴステロールなどの微生物由来のステロールなどを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。また、これらのステロールは、一般には脂質二重層を物理的または化学的に安定させるために、あるいは膜の流動性を調節するために用いることができる。 長鎖脂肪酸または長鎖脂肪族アルコールとしては、炭素数10〜20の脂肪酸またはそのアルコールを使用することができる。そのような長鎖脂肪酸または長鎖脂肪族アルコールとしては、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、アラキジン酸、マルガリン酸、ツベルクロステアリン酸などの飽和脂肪酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、アラキドン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エレオステアリン酸などの不飽和脂肪酸、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、リノリルアルコールなどを挙げることができ、具体的には、1,2−dimyristoyl−sn−glycerol(DMG)、1,2−distearoyl−sn−glycerol(DSG)などを挙げることができる。 グリセリン脂肪酸エステルとしては、モノアシルグリセリド、ジアシルグリセリド、トリアシルグリセリドを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。 カチオン性脂質としては、上述した脂質の他、例えば、ジオクタデシルジメチルアンモニウムクロライド(dioctadecyldimethylammonium chloride、DODAC)、N−(2,3−オレイルオキシ)プロピル−N,N,N−トリメチルアンモニウム(N−(2,3−dioleyloxy)propyl−N,N,N−trimethylammonium、DOTMA)、ジドデシルアンモニウムブロミド(didodecylammonium bromide、DDAB)、1,2−dioleoyl−3−trimethylammonium propane(DOTAP)、1,2−dioleoyl−3−dimethylammonium propane(DODAP)、3β−N−(N’,N’−ジメチルアミノエタン)カルバモールコレステロール(3β−N−(N’,N’,−dimethyl−aminoethane)−carbamol cholesterol、DC−Chol)、1,2−ジミリストイルオキシプロピル−3−ジメチルヒドロキシエチルアンモニウム(1,2−dimyristoyloxypropyl−3−dimethylhydroxyethyl ammonium、DMRIE)、2,3−ジオレイルオキシ−N−[2(スペルミンカルボキサミド)エチル]−N,N−ジメチル−1−プロパンアンモニウムトリフルオロアセテート(2,3−dioleyloxy−N−[2(sperminecarboxamido)ethyl]−N,N−dimethyl−1−propanaminum trifluoroacetate、DOSPA)などを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。 また、両(正負)帯電性脂質や非帯電性脂質を含む中性脂質としては、上述した脂質の他、例えば、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、セラミドなどを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。また、アニオン性脂質としては、上述した脂質の他、例えば、ジアシルホスファチジルセリン、ジアシルホスファチジン酸、N−スクシニルホスファチジルエタノールアミン(N−スクシニルPE)、ホスファチジルエチレングリコール、コレステリルヘミスクシネート(CHEMS)などを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。 本発明に係るYSK05によりpH依存性カチオン性が付与された脂質膜構造体の脂質膜には、上述した脂質を任意の割合で含むことができるが、(a)YSK05、(b)Cholおよび(c)POPEを、モル比が(a)/(b)+(c)≧2/3かつ3/7≦(b)/(c)≦7/3の割合で含むこと、または、(a)YSK05および(b)Cholをモル比が13/7≦(a)/(b)≦3の割合で含むことが好ましい。 また、本発明に係るYSK05によりpH依存性カチオン性が付与された脂質膜構造体の脂質膜には、PEGと結合した脂質を含むことが好ましい。この場合のPEGと結合した脂質としては、上述した脂質がPEGと結合したものを挙げることができるが、それらのうち、PEGと結合した1,2−dimyristoyl−sn−glycerol(DMG)、すなわちPEG−DMGや、PEGと結合した1,2−distearoyl−sn−glycerol(DSG)、すなわちPEG−DSGがより好ましい。 本発明に係るYSK05によりpH依存性カチオン性が付与された脂質膜構造体の脂質膜には、上述した脂質の他に、トコフェロール、没食子酸プロピル、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシトルエンなどの抗酸化剤、ステアリルアミン、オレイルアミンなどの正荷電を付与する荷電物質、ジセチルホスフェートなどの負電荷を付与する荷電物質、膜表在性タンパク質、膜内在性タンパク質などの膜タンパク質、抗体、脂質膜構造体に細胞透過能や核移行能を付与するペプチドなどの機能性ペプチド、標的化リガンドその他のドラッグデリバリー用機能性素子を結合または含有させることができ、その結合量や含有量は適宜調節することができる。 また、本発明に係るYSK05によりpH依存性カチオン性が付与された脂質膜構造体は、その脂質膜の内部に種々の物質を内包させて用いることができる。この場合の内包させる物質はいかなるものでもよく、例えば、薬剤、核酸、ペプチド、タンパク質、糖またはこれらの複合体などの種々の生理活性物質や標識物質、リポソームやミセルなどの脂質膜構造体を挙げることができ、診断、治療などの目的に応じて適宜選択することができる。これらの物質を、YSK05によりpH依存性カチオン性が付与された脂質膜構造体に内包させる方法は定法に従って行うことができ、そのような方法としては、例えば、極性溶媒または非極性溶媒に標これらの物質を溶解し、これを用いて、上述したYSK05を構成脂質として含む脂質膜を調製する方法を挙げることができる。 本発明に係るYSK05によりpH依存性カチオン性が付与された脂質膜構造体は、生理食塩水、リン酸緩衝液,クエン緩衝液,酢酸緩衝液などの適当な水性溶媒に分散させて使用することができる。分散液には、糖類、多価アルコール、水溶性高分子、非イオン界面活性剤、抗酸化剤、pH調節剤、水和促進剤などの添加剤を適宜添加してもよい。また、本発明に係る脂質膜構造体は、前記の分散液を乾燥させた状態で保存することができる。 次に、本発明は、標的遺伝子の発現抑制剤を提供する。本発明に係る標的遺伝子の発現抑制剤は、標的遺伝子の伝令RNA(mRNA)の全部または一部と同じまたは相補的な塩基配列を有するRNAを内包する、YSK05によりpH依存性カチオン性が付与された脂質膜構造体を有効成分とする。なお、標的遺伝子の発現抑制剤において、上述した本発明に係る脂質膜構造体にpH依存性カチオン性を付与する剤またはYSK05によりpH依存性カチオン性が付与された脂質膜構造体の構成と同等または相当する構成については再度の説明を省略する。 本発明に係る標的遺伝子の発現抑制剤において、標的遺伝子は特に限定されず、後述する実施例で示すように、ルシフェラーゼ遺伝子、PLK1遺伝子、SRBI遺伝子、第7因子遺伝子など、標的遺伝子の種類を問わず、その発現を抑制することができる。 標的遺伝子の伝令RNAの全部または一部と相補的な塩基配列を有するRNAは、1本鎖でもよく相補的結合した2本鎖でもよい。また、その構造としては、環状構造や直鎖状、相補的二本鎖構造のほか、これらが入り混じった構造などを挙げることができる。また、塩基長は特に限定されず、例えば5mer、10mer、15mer、20mer、21mer、25mer、30mer、40merなどとすることができ、これより長くてもよく、短くてもよい。 標的遺伝子の伝令RNAの全部または一部と相補的な塩基配列を有するRNAとして、具体的には、例えば、small interfering RNA(short interfering RNA;siRNA)やmicro RNA(miRNA)、small temporal RNA(stRNA)、primary miRNA(pri−mRNA)、pre−miRNA、モルホリノアンチセンスオリゴなどを挙げることができ、標的遺伝子の伝令RNAの全部または一部と同じ塩基配列を有するRNAとして、具体的には、例えば、miRNAを抑制するanti−miRNA oligonucleotide(AMO)などを挙げることができる。 標的遺伝子の伝令RNAの全部または一部と同じまたは相補的な塩基配列を有するRNAは、市販のsiRNAを用いることができるほか、当業者によって適宜選択可能な方法を用いて合成することができる。そのような方法としては、例えば、合成装置を用いて化学合成する方法の他、標的遺伝子の伝令RNAの全部または一部と同じまたは相補的な塩基配列を鋳型とし、RNAポリメラーゼを用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により合成する方法、プラスミドベクターやウイルスベクターなどのベクターに標的遺伝子の伝令RNAの全部または一部と同じまたは相補的な塩基配列を挿入して組み換えベクターを作製し、作製した組み換えベクターを適切な宿主細胞に導入して得られる形質転換体を培養して増殖させ、増殖させた形質転換体から採取する方法などを挙げることができる。なお、いずれの合成法も、当業者により広く知られている一般的な方法の他、あらゆる方法を利用することができる。 標的遺伝子の伝令RNA(mRNA)の全部または一部と同じまたは相補的な塩基配列を有するRNAを、YSK05によりpH依存性カチオン性が付与された脂質膜構造体に内包させる方法は、定法に従って行うことができる。そのような方法としては、例えば、水系溶媒に標的遺伝子の伝令RNAの全部または一部と同じまたは相補的な塩基配列を有するRNAを溶解し、これを用いて、上述したYSK05を構成脂質として含む脂質膜を調製する方法を行う方法を挙げることができる。この場合、標的遺伝子の伝令RNA(mRNA)の全部または一部と同じまたは相補的な塩基配列を有するRNAは、あらかじめプロタミンと複合体を形成させてナノ粒子とするなどの前処理をしてもよい。 本発明に係る脂質膜構造体にpH依存性カチオン性を付与する剤および標的遺伝子の発現抑制剤の製剤化には、当業者に公知の方法を用いることができる。投与形態もまた、当業者によって適宜選択することができる投与形態でよく、そのような投与形態としては、例えば、経口投与製剤として調製する場合の、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、コーティング剤、液剤、懸濁剤などの形態を挙げることができ、非経口投与製剤にする場合の、吸入剤、注射剤、点滴剤、座薬、塗布剤、噴霧剤、貼付剤などの形態を挙げることができる。また、その投与量は、医薬組成物の製剤形態、投与方法、使用目的およびこれに適用される投与対象の年齢、体重、症状によって適宜設定することができる。 最後に、本発明は、脂質膜構造体の製造方法を提供する。本発明に係る脂質膜構造体の製造方法は、 (I)(a)YSK05、(b)Chol、(c)POPEおよび(d)PEG−DMGをモル比が(a)/(b)+(c)≧2/3、3/7≦(b)/(c)≦7/3かつ0<(d)/(a)+(b)+(c)≦1/10の割合で構成脂質として含む脂質膜、 (II)(a)YSK05、(b)Cholおよび(d)PEG−DMGをモル比が13/7≦(a)/(b)≦3かつ0<(d)/(a)+(b)≦1/10の割合で構成脂質として含む脂質膜、 以上(I)または(II)の脂質膜を調製する工程を有する。なお、脂質膜構造体の製造方法において、上述した本発明に係る脂質膜構造体にpH依存性カチオン性を付与する剤、YSK05によりpH依存性カチオン性が付与された脂質膜構造体または標的遺伝子の発現抑制剤の構成と同等または相当する構成については再度の説明を省略する。 (I)または(II)の脂質膜を調製する方法としては、上述したYSK05を構成脂質として含む脂質膜を調製する方法を挙げることができる。また、本発明に係る脂質膜構造体の製造方法は、(I)または(II)の工程の後に、PEG−DSGを前記調製した脂質膜に添加する工程を有することが好ましい。この場合のPEG−DSGを添加する割合は特に限定されず、脂質膜構造体の使用目的、構成脂質の種類や割合、内包物の種類などに応じて適宜設定することができ、例えば、PEG−DSG以外の総脂質に対して1モル%、2モル%、3モル%、5モル%、7モル%、10モル%、15モル%、20モル%などとすることができる。 本発明に係る脂質膜構造体の製造方法には、本発明の特徴を損なわない限り、他の工程を含むことができ、そのような工程としては、例えば、精製工程、標識工程、染色工程、濾過工程、整粒工程、濃縮工程、希釈工程、修飾工程などを挙げることができる。 以下、本発明に係る脂質膜構造体にpH依存性カチオン性を付与する剤、それによりpH依存性カチオン性が付与された脂質膜構造体、標的遺伝子の発現抑制剤および脂質膜構造体の製造方法について、実施例に基づいて説明する。なお、本発明の技術的範囲は、これらの実施例によって示される特徴に限定されない。<実施例1>1−methyl−4,4−bis[(9Z,12Z)−octadeca−9,12−dien−1−yloxy]piperidineの合成(1)(9Z,12Z)−Octadecadien−1−OL 市販のカチオン性脂質である1,2−dioleoyl−3−trimethylammonium propane(DOTAP)および市販のpH依存性カチオン性脂質である1,2−dioleoyl−3−dimethylammonium propane(DODAP)の構造を参考として、1−methyl−4,4−bis[(9Z,12Z)−octadeca−9,12−dien−1−yloxy]piperidine(以下「YSK05」という。)を設計した。YSK05、DOTAPおよびDODAPの構造を図1に示す。 YSK05を合成するため、まず、既報(Sodeoka M,ら、J.Med.Chem.、第44巻、第3216〜3222頁、2001年)に記載の方法を改変した方法により、(9Z,12Z)−Octadecadien−1−OLを合成した。具体的には、テトラヒドロフラン(THF)50mLに、水素化リチウムアルミニウム375mg(20nmol)を懸濁し、4℃に冷却した。そこへリノレン酸1.65mL(10mmol)を滴下し、30分間撹拌した。その後、オイルバスで加熱しながら2時間還流した。これを冷却した後、5mLの水を加え、続いて1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液50mLを加えて反応を停止させた。次に、酢酸エチル200mLを加えて希釈した後、濾過し、飽和食塩水を用いて回収した濾液を2回洗浄した。続いて、有機相を回収して、そこに無水硫酸ナトリウムを加えて脱水した。これを濾過した後、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去し、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー{溶離溶媒;ヘキサン:酢酸エチル(連続勾配)}に供することにより精製して、(9Z,12Z)−Octadecadien−1−OL2.4g(9mmol)を得た。収率は約90%であった。 (9Z,12Z)−Octadecadien−1−OLのプロトン核磁気共鳴(1H NMR;500MHz)データδ0.88 (t, 3H, J = 7.2Hz), 1.25?1.36 (m, 16H), 1.53?1.58 (m, 2H), 2.02?2.06 (m, 4H), 2.76 (t, 2H, J = 6.9 Hz), 3.62 (t, 2H, J = 6.9 Hz), 5.29?5.40 (m, 4H).(2)YSK05 本実施例1(1)の(9Z,12Z)−Octadecadien−1−OLを50mLのアニソールに溶解した後、1−methyl−4−piperidone455μL(3.7mmol)を加え、続いてp−トルエンスルホン酸780mg(4.1mmol)を加えた。ディーンスターク装置およびジムロートを装着し、16時間加熱還流した。冷却した後、有機相を回収して、200mLの酢酸エチルを加えて希釈した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を用いてこれを洗浄した後、さらに飽和食塩水を用いて洗浄した。続いて、無水硫酸ナトリウムを加えて脱水し、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去することにより粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー{溶離溶媒;ジクロロメタン:メタノール(連続勾配)}に供することにより精製し、油状物質としてYSK05を1.55g(2.4mmol)得た。収率は62%であった。 YSK05のプロトン核磁気共鳴(1H NMR;400MHz)データδ0.89 (t, 6H, J = 7.1 Hz), 1.23-1.38 (m, 36H), 1.50?1.55 (m, 4H), 1.77?1.82 (m, 4H), 2.02?2.07 (m, 8H), 2.28 (s, 3H), 2.40 (br, 3H), 2.77 (t, 2H, J = 6.6 Hz), 3.36 (t, 2H, J = 6.9 Hz), 5.29?5.39 (m, 8H). MS (FD): (M)+ Calcd for C42H77NO2: 627, found 627.<実施例2>脂質膜構造体の製造(1)siRNAを内包する脂質膜構造体 DOTAP、DODAP、YSK05、1,2−dioleoyl−sn−glycero−3−phosphoethanolamine(DOPE)、コレステロール(Chol)およびポリエチレングリコール(PEG)と結合した1,2−dimyristoyl−sn−glycerol(DMG)(PEG−DMG)を、下記の組成1〜3の脂質組成および総脂質濃度が1.5mmol/Lとなるようにtert−ブチルアルコールに希釈して、脂質溶液とした。ホタルルシフェラーゼ遺伝子伝令RNAに対するsiRNA(anti−luc;配列番号1、2)68.6μgを1mmol/Lのクエン酸緩衝液(pH4.5)に溶解し、攪拌しながら、窒素/リン酸比(N/P比)が1.1となるようにプロタミンを滴下してsiRNAとプロタミンとの複合体(siRNA/プロタミン複合体)を形成させた。siRNA/プロタミン複合体を含む溶液(siRNA複合体溶液)を、脂質溶液に滴下して激しく攪拌した後、攪拌しながら1mmol/Lのクエン酸緩衝液(pH4.5)を加えることによりtert−ブチルアルコールの濃度を20%(v/v)以下とした。その後、Amicon Ultra filter units(Millipore社)およびリン酸緩衝生理食塩水(pH7.4;PBS)を用いて限外ろ過を行うことにより外液をPBSに交換し、siRNAを内包する脂質膜構造体を得た。組成1、2および3の脂質溶液から得られた脂質膜構造体を、それぞれluc内包DOTAP脂質膜構造体、luc内包DODAP脂質膜構造体およびluc内包YSK脂質膜構造体とした。脂質溶液の脂質組成(モル比)組成1;DOTAP:DOPE:Chol:PEG−DMG=30:40:30:3組成2;DODAP:DOPE:Chol:PEG−DMG=30:40:30:3組成3;YSK05:DOPE:Chol:PEG−DMG=30:40:30:3(2)siRNAを内包しない脂質膜構造体 siRNA複合体溶液に代えて1mmol/Lのクエン酸緩衝液(pH4.5)を用いて、本実施例2(1)に記載の方法を行うことにより、siRNAを内包しない脂質膜構造体を得た。組成1、2および3の脂質溶液から得られた脂質膜構造体を、それぞれ空DOTAP脂質膜構造体、空DODAP脂質膜構造体および空YSK脂質膜構造体とした。(3)脂質膜構造体の物性 本実施例2(1)の脂質膜構造体の平均粒子径、多分散度(PDI)およびゼータ電位をZetasizer Nano ZS ZEN3600(MALVERN Instrument社)を用いて測定した。その結果を表1に示す。表1に示すように、平均粒子径およびPDIは、各脂質膜構造体がいずれも近似した値であった。これに対して、ゼータ電位は、luc内包DOTAP脂質膜構造体がカチオン性を示す値であり、luc内包DODAP脂質膜構造体およびluc内包YSK脂質膜構造体は、ほぼ中性を示す値であった。この結果から、YSK05は、脂質膜構造体の平均粒子径やPDIなどの物性には影響を与えないこと、および、Zetasizer Nano ZS ZEN3600(MALVERN Instrument社)を用いた測定環境(中性の環境)では中性を示すことが明らかになった。(4)siRNA内包率 2本鎖の核酸にインターカレートして蛍光を発するRibogreen試薬を用いて、siRNA内包率を測定した。具体的には、20μg/mLのデキストラン硫酸およびRibogreen試薬を含む10mmol/LのHepes緩衝液(pH7.4)に、本実施例2(1)の脂質膜構造体を希釈し、励起波長500nmおよび蛍光波長525nmで蛍光強度を測定し、分解前蛍光強度とした。その後、0.1%(w/v)となるようTritonX−100を添加することにより脂質膜構造体を分解して、再度、同波長により蛍光強度を測定し、分解後蛍光強度とした。続いて、式1;siRNA内包率(%)={(分解後蛍光強度−分解前蛍光強度)/分解後蛍光強度}×100によりsiRNA内包率を算出した。その結果を表1に示す。表1に示すように、luc内包YSK脂質膜構造体のsiRNA内包率は、およそ90%であった。この値は、luc内包DOTAP脂質膜構造体と比較して高く、luc内包DODAP脂質膜構造体と比較して同等であった。この結果から、YSK05を構成脂質として含む脂質膜を有する脂質膜構造体には、効率的にsiRNAを内包させることができることが明らかになった。<実施例3>脂質膜構造体の機能(1)pH依存性カチオン性 負荷電性のTNS試薬を用いて脂質膜構造体のカチオン性を評価した。TNS試薬はカチオン性の脂質膜に入り込んで蛍光を発するため、蛍光強度が脂質膜のカチオン性の指標となる。具体的には、pH2.5〜9.5の範囲で種々のpHとなるよう調製した、終濃度130mmol/LのNaClを含む20mmol/Lのクエン酸緩衝液、リン酸ナトリウム緩衝液またはトリスHCl緩衝液を用意した。これらの緩衝液に、本実施例2(1)の脂質膜構造体を脂質濃度が30μmol/Lとなるよう加え、続いてTNS試薬を6μmol/Lとなるよう加えて、最終容量を200μLとした。その後、37℃において励起波長321nmおよび蛍光波長447nmで蛍光強度を測定した。各脂質膜構造体における蛍光強度の最大値を100%として、相対蛍光強度を百分率で算出した。また、相対蛍光強度が50%であるpHをpKaとした。その結果を図2に示す。 図2に示すように、luc内包DOTAP脂質膜構造体を含む緩衝液の相対蛍光強度はpHに関わらず一定であった。これに対して、luc内包DODAP脂質膜構造体およびluc内包YSK脂質膜構造体を含む緩衝液では、pHが小さいほど相対蛍光強度が大きく、pHが大きいほど相対蛍光強度が小さかった。また、luc内包DODAP脂質膜構造体およびluc内包YSK脂質膜構造体を含む緩衝液のpKaは、それぞれ、5.7および6.6であった。この結果から、YSK05を構成脂質として含む脂質膜を有する脂質膜構造体は、pHの低下に伴って電荷量が大きくなる性質(pH依存性カチオン性)を有すること、および、YSK05は脂質膜構造体にpH依存性カチオン性を付与することが明らかになった。 また、pH6〜7付近におけるluc内包YSK脂質膜構造体およびluc内包DODAP脂質膜構造体を含む緩衝液の相対蛍光強度を比較すると、luc内包YSK脂質膜構造体の方がluc内包DODAP脂質膜構造体よりも相対蛍光強度が大きかった。すなわち、luc内包DODAP脂質膜構造体よりもluc内包YSK05脂質膜構造体の方が、中性環境から酸性環境への変化に伴い、速やかに電荷量が大きくなることが明らかになった。この結果から、YSK05を構成脂質として含む脂質膜を有する脂質膜構造体は、DODAPを構成脂質として含む脂質膜を有する脂質膜構造体と比較して、細胞外(中性環境)から細胞内へと取り込まれた後、エンドソーム(酸性環境)から速やかに細胞質に放出されることが示唆された。(2)膜融合能 脂質膜構造体の生体膜との膜融合能を、赤血球を用いて評価した。脂質膜構造体が赤血球の膜と融合すると、溶液中にヘモグロビンが漏れ出るため、漏れ出たヘモグロビンの量が膜融合能の指標となる。具体的には、雄性ICRマウスより血液を採取して赤血球を回収し、生理食塩水に懸濁した。PBSをpH7.5、6.5および5.5に調製した後、一定量の赤血球を含む生理食塩水を添加した。続いて、実施例2(2)の脂質膜構造体を含むPBSを、3.3μL、10μLおよび30μL添加した。また、脂質膜構造体を含まない同量のPBSを添加したものをネガティブコントロール(NC)とし、脂質膜構造体を含まない同量のPBSを添加した後、0.5%(w/v)となるようTritonX−100を添加して赤血球を溶解させたものをポジティブコントロール(PC)とした。これらを、37℃で30分間インキュベートした後、4℃、400×gの条件下で5分間遠心分離を行い、上清を回収して、545nmにおける吸光度を測定することにより、ヘモグロビンの量を測定した。続いて、ポジティブコントロール(PC)の測定値を100%として各測定値を百分率で表し、これを膜融合率(%)とした。その結果を図3に示す。 図3に示すように、膜融合率は、空DOTAP脂質膜構造体、空DODAP脂質膜構造体ではpHに関わらず一定であったのに対して、空YSK脂質膜構造体では、pHが小さいほど大きかった。すなわち、空YSK脂質膜構造体は、pHが小さいほど赤血球と膜融合を起こしやすいことが明らかになった。この結果から、YSK05を構成脂質として含む脂質膜を有する脂質膜構造体は、pHの低下に伴い、生体膜と膜融合し易くなること、すなわち膜融合能が向上することが示された。(3)ルシフェラーゼ遺伝子の発現抑制 ホタルルシフェラーゼおよびウミシイタケルシフェラーゼの2種類を安定して発現するHeLa細胞(dluc−HeLa細胞)を96ウェルプレートに5×103個/ウェルの濃度で播種し、37℃、5%CO2雰囲気下で24時間培養した。培地は、終濃度で10%(v/v)の仔ウシ血清、100U/mLのペニシリン、100mg/mLのストレプトマイシンおよび0.4mg/mLのG418を含むDMEM培地(以下「試薬含有DMEM培地」という。)を用いた。その後、PBSを用いて細胞を洗浄し、実施例2(1)の脂質膜構造体を終濃度1〜243nmol/L(siRNA濃度)で含む試薬含有DMEM培地を加えて24時間培養した。また、脂質膜構造体を含まない試薬含有DMEM培地を加えて同様に培養してコントロールとした。続いて、PBSを用いて洗浄した後、細胞を回収し、Dual Luciferase Reporter Assay System(プロメガ社)を用いてルシフェラーゼの発光強度を測定した。次に、ウミシイタケルシフェラーゼ発光強度をホタルルシフェラーゼ発光強度で除して相対発光強度を算出した。続いて、相対発光強度について、コントロールの相対活性の値を100%として百分率(%)で表し、これをルシフェラーゼ遺伝子の発現抑制率(Luc/KD率)とした。その結果を図4に示す。 図4に示すように、Luc/KD率は、siRNA濃度がいずれの場合においても、luc内包YSK脂質膜構造体がluc内包DOTAP脂質膜構造体およびluc内包DODAP脂質膜構造体よりも大きかった。また、luc内包YSK脂質膜構造体のLuc/KD率は、siRNA濃度が30nmol/L以上で約50%以上と、高い値であった。これらの結果から、標的遺伝子の伝令RNAの全部または一部と同じまたは相補的な塩基配列を有するRNAを内包する、YSK05を構成脂質として含む脂質膜を有する脂質膜構造体は、標的遺伝子の発現を抑制することができること、および、その発現抑制効果がYSK05を構成脂質として含まないものと比較して大きいことが示された。<実施例4>好適脂質組成Aの脂質膜構造体の製造(1)脂質の種類の検討[1−1]ルシフェラーゼ遺伝子の発現抑制 DOPEに加えて、1−palmitoyl−2−oleoyl−sn−glycero−3−phosphoethanolamine(POPE)、1,2−Dioleyl−sn−3−phosphatidylCholine(DOPC)、1−Stearoyl−2−oleyl−sn−glycero−3−phosphatidylCholine(SOPC)および1,2−Distearoyl−sn−3−phosphatidylCholine(DSPC)を用いて、脂質溶液の組成を下記組成3〜7とし、本実施例2(1)に記載の方法を行うことにより脂質膜構造体を得た。組成3;YSK05:DOPE:Chol:PEG−DMG=30:40:30:3組成4;YSK05:POPE:Chol:PEG−DMG=30:40:30:3組成5;YSK05:DOPC:Chol:PEG−DMG=30:40:30:3組成6;YSK05:SOPC:Chol:PEG−DMG=30:40:30:3組成7;YSK05:DSPC:Chol:PEG−DMG=30:40:30:3 続いて、これらの脂質膜構造体について、実施例3(3)に記載の方法によりLuc/KD率を測定した。ただし、試薬含有DMEM培地におけるsiRNA濃度は9nmol/Lおよび27nmol/Lとした。その結果を図5左図に示す。図5左図に示すように、siRNA濃度が9nmol/Lおよび27nmol/Lのいずれの場合も、組成4の脂質膜を有する脂質膜構造体が、組成3および5〜7の脂質膜を有する脂質膜構造体と比較してLuc/KD率が最も高かった。すなわち、POPEを構成脂質として含む脂質膜を有する脂質膜構造体に内包されたanti−lucは、DOPE、DOPC、SOPCおよびDSPCを構成脂質として含む脂質膜を有する脂質膜構造体に内包されたsiRNAと比較して、ルシフェラーゼ遺伝子の発現効率効果が大きいことが明らかになった。[1−2]血清耐性 雄性ICRマウスから血清を採取し、本実施例4(1)[1−1]の脂質膜構造体を加えた。脂質膜構造体を加えた直後(0時間後)および37℃で6時間後、24時間後および48時間インキュベートした後、−80℃で凍結することにより、血清によるsiRNAの分解を停止させた。その後、室温にて解凍した後、速やかにフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール抽出を行って、脂質膜構造体に内包されていたsiRNAを回収した。回収したsiRNAを20%ポリアクリルアミドゲル電気泳動(150V、2時間)に供した後、ゲルを1μg/mLのエチジウムブロマイド水溶液に浸漬して染色した。その結果を図5右図に示す。図5右図に示すように、siRNAを示すバンドの蛍光強度は、0時間後および6時間後では組成3〜7の脂質膜を有する各脂質膜構造体間で同等であったのに対し、24時間後および48時間後では、組成4の脂質膜を有する脂質膜構造体が組成3および5〜7の脂質膜を有する脂質膜構造体と比較して最も大きかった。この結果から、POPEを構成脂質として含む脂質膜を有する脂質膜構造体に内包されたsiRNAは、DOPE、DOPC、SOPCおよびDSPCを構成脂質として含む脂質膜を有する脂質膜構造体に内包されたsiRNAと比較して、血清中で分解されずに残存する時間が長いこと、すなわち血清耐性が大きいことが明らかにった。(2)脂質の割合の検討 脂質溶液の組成を下記組成8〜16とし、実施例2(1)に記載の方法を行うことにより脂質膜構造体を得た。続いて、組成8〜16の脂質膜構造体について、実施例3(3)に記載の方法によりLuc/KD率を測定した。ただし、試薬含有DMEM培地におけるsiRNA濃度は1〜27nmol/Lの範囲で種々の濃度とした。組成8〜13の脂質膜構造体の結果を図6左図に、組成14〜16の脂質膜構造体の結果を図6右図にそれぞれ示す。組成8; YSK05:POPE:Chol:PEG−DMG=50:15:35:3組成9; YSK05:POPE:Chol:PEG−DMG=50:20:30:3組成10;YSK05:POPE:Chol:PEG−DMG=50:25:25:3組成11;YSK05:POPE:Chol:PEG−DMG=50:30:20:3組成12;YSK05:POPE:Chol:PEG−DMG=50:35:15:3組成13;YSK05:POPE:Chol:PEG−DMG=50:40:10:3組成14;YSK05:POPE:Chol:PEG−DMG=40:20:40:3組成15;YSK05:POPE:Chol:PEG−DMG=50:20:30:3組成16;YSK05:POPE:Chol:PEG−DMG=60:20:20:3 図6左図に示すように、Luc/KD率を組成8〜13の脂質膜を有する脂質膜構造体の間で比較すると、siRNA濃度がいずれの場合も、組成10の脂質膜を有する脂質膜構造体が最も大きく、組成8、9、11および12の脂質膜を有する脂質膜構造体は比較的大きかった。また、図6右図に示すように、Luc/KD率を組成14〜16の脂質膜を有する脂質膜構造体の間で比較すると、組成14<15<16の順に大きかった。これらの結果から、anti−lucを内包する脂質膜構造体の脂質膜におけるYSK05、POPEおよびCholのモル比が、15/35≦POPE/Chol≦35/15すなわち7/3≦POPE/Chol≦3、かつYSK05/(POPE+Chol)≧40/(20+40)すなわちYSK05/POPE+Chol≧2/3である場合は、ルシフェラーゼ遺伝子の発現抑制効果が大きいことが明らかになった。 以上の本実施例4(1)[1−1]および[1−2]ならびに(2)の結果から、標的遺伝子の伝令RNAの全部または一部と同じまたは相補的な塩基配列を有するRNAを内包する、YSK05を構成脂質として含む脂質膜を有する脂質膜構造体の当該脂質膜における構成脂質の好適な組成は、YSK05/Chol+POPE≧2/3かつ3/7≦Chol/POPE≦7/3(モル比;以下、「好適脂質組成A」という。)であることが明らかになった。<実施例5>好適脂質組成Aの脂質膜構造体の機能(1)脂質膜構造体の製造ならびに物性、siRNA内包率およびpKa 脂質溶液における脂質組成を実施例4(2)の組成10として、実施例2(1)に記載の方法を行うことにより脂質膜構造体を得て、これをluc内包YSK/A脂質膜構造体とした。また、luc内包YSK/A脂質膜構造体の、平均粒子径、PDIおよびゼータ電位を実施例2(3)に記載の方法により、siRNA内包率を実施例2(4)に記載の方法により、pKaを実施例3(1)に記載の方法により、それぞれ測定した。その結果、luc内包YSK/A脂質膜構造体の平均粒子径は116±5nm、PDIは、0.09±0.02、ゼータ電位は+4.5±2.1mV、siRNA内包率は93±4%およびpKaは6.4であった。これらの値は、実施例2(1)のluc内包YSK脂質膜構造体における値(表1、図2)と近似していた。(2)膜融合能 脂質溶液における脂質組成を実施例4(2)の組成10として、実施例2(2)に記載の方法を行うことにより脂質膜構造体を得て、これを空YSK/A脂質膜構造体とした。空YSK/A脂質膜構造体について、実施例3(2)に記載の方法により膜融合率を求めた。比較のため、実施例3(2)で求めた空YSK脂質膜構造体の膜融合率と合わせて図7に示す。図7に示すように、膜融合率は、pH7.4では各脂質膜構造体間で同等であったが、pH6.5およびpH5.5では空YSK/A脂質膜構造体の方が空YSK脂質膜構造体よりも顕著に大きかった。この結果から、YSK05を構成脂質として含む脂質膜を有する脂質膜構造体の当該脂質膜における脂質組成を好適脂質組成Aとすることにより、膜融合能が向上することが明らかになった。(3)ルシフェラーゼ遺伝子の発現抑制 本実施例5(1)のluc内包YSK/A脂質膜構造体について、実施例3(3)に記載の方法によりLuc/KD率を測定した。また、市販のトランスフェクション試薬であるLipofectamine2000(LF2k;Carlsbad社)を用いて、添付の使用書に従いanti−lucをdluc−HeLa細胞に導入し、実施例3(3)に記載の方法によりLuc/KD率を測定した。その結果を、実施例3(3)で求めたluc内包YSK脂質膜構造体のLuc/KD率と合わせて図8に示す。図8に示すように、Luc/KD率は、siRNA濃度がいずれの場合においても、luc内包YSK/A脂質膜構造体がluc内包YSK脂質膜構造体およびLF2kよりも大きかった。これらの結果から、標的遺伝子の伝令RNAの全部または一部と同じまたは相補的な塩基配列を有するRNAを内包する、YSK05を構成脂質として含む脂質膜を有する脂質膜構造体の当該脂質膜における脂質組成を好適脂質組成Aとすることにより、標的遺伝子の発現抑制効果が増大することが明らかになった。<実施例6>脂質膜構造体の遺伝子発現抑制機構の検討(1)siRNAの細胞質への移行状態の観察 anti−lucに代えてCy5で標識したanti−luc(Cy5−anti−luc;配列番号3、4)を用いて、脂質溶液における脂質組成を実施例2(1)の組成2および実施例4(2)の組成10として、実施例2(1)に記載の方法を行うことにより脂質膜構造体を得た。組成2および10の脂質溶液から得られた脂質膜構造体を、それぞれCy5−luc内包DODAP脂質膜構造体およびCy5−luc内包YSK/A脂質膜構造体とした。 ガラスボトムディッシュに1×105個/ウェルの濃度でdluc−HeLa細胞を播種して、1時間用サンプルおよび6時間用サンプルとした。1時間用サンプルおよび6時間用サンプルを、試薬含有DMEM培地を用いて37℃、5%CO2雰囲気下で24時間培養した後、Cy5−luc内包YSK/A脂質膜構造体およびCy5−luc内包DODAP脂質膜構造体を100nmol/L(siRNA濃度)となるように培地に添加し、37℃で1時間インキュベートした。その後、冷却したPBSを用いて細胞を3回洗浄した。続いて、1時間用サンプルについては4%(v/v)パラホルムアルデヒド/PBSを加えて10分間インキュベートすることにより細胞を固定した。一方、6時間用サンプルについては試薬含有DMEM培地を加えて、37℃で6時間インキュベートした後、冷却したPBSを用いて3回洗浄し、同様に細胞を固定した。PBSを用いて固定後の1時間用サンプルおよび6時間用サンプルを洗浄し、Hoechst33342を添加して10分間細胞核を染色した後、共焦点レーザー顕微鏡Nikon A1(Nikon社)および60倍対物レンズを用いて、Cy5およびHoechst33342の蛍光を観察した。その結果を図9に示す。 図9に示すように、1時間用サンプルでは、Cy5−luc内包DODAP脂質膜構造体およびCy5−luc内包YSK/A脂質膜構造体のいずれを添加した場合も、Cy5の蛍光がドット状に見られた。すなわち、Cy5−luc内包DODAP脂質膜構造体およびCy5−luc内包YSK/A脂質膜構造体に内包されたsiRNAは、いずれもエンドサイトーシスにより細胞内に取り込まれてエンドソームに局在することが明らかになった。一方、6時間用サンプルでは、Cy5−luc内包DODAP脂質膜構造体を加えた場合はCy5の蛍光がドット状に見られたのに対し、Cy5−luc内包YSK/A脂質膜構造体を加えた場合はCy5の蛍光が細胞内に拡散して見られた。すなわち、Cy5−luc内包DODAP脂質膜構造体に内包されたsiRNAは、細胞内に取り込まれて一定時間が経過した後も依然としてエンドソーム内に局在しているのに対して、Cy5−luc内包YSK/A脂質膜構造体に内包されたsiRNAは細胞質に移行して拡散していることが明らかになった。これらの結果から、標的遺伝子の伝令RNAの全部または一部と同じまたは相補的な塩基配列を有するRNAを内包する、YSK05を構成脂質として含む脂質膜を有する脂質膜構造体は、細胞内に取り込まれた後、内包するRNAを速やかに細胞質に放出することが示された。(2)酸性化阻害物質存在下での遺伝子発現抑制 実施例5(1)のluc内包YSK/A脂質膜構造体および実施例2(1)のluc内包DOTAP脂質膜構造体について、実施例3(3)に記載の方法によりLuc/KD率を測定した。ただし、脂質膜構造体を含む試薬含有DMEM培地に、酸性化を阻害する物質であるクロロキンまたは塩化アンモニウムを種々の濃度で添加した。その結果を図10に示す。 図10に示すように、luc内包DOTAP脂質膜構造体では、クロロキンまたは塩化アンモニウムの濃度が大きいほど、Luc/KD率が大きくなる傾向であったのに対し、luc内包YSK/A脂質膜構造体ではクロロキンまたは塩化アンモニウムの濃度が大きいほど、Luc/KD率が小さくなった。すなわち、luc内包YSK/A脂質膜構造体では、酸性化が阻害されたことにより遺伝子発現抑制効果が減少した。この結果、本実施例5(4)、ならびに実施例3(1)、(2)および(3)の結果から、標的遺伝子の伝令RNAの全部または一部と同じまたは相補的な塩基配列を有するRNAを内包する、YSK05を構成脂質として含む脂質膜を有する脂質膜構造体は、細胞内に取り込まれた後、エンドソームの酸性化によりカチオン性を帯びてエンドソームと膜融合し、内包するRNAを細胞質に放出して、標的遺伝子の発現を抑制することが示された。<実施例7>PEG−DSGを構成脂質として含み、好適脂質組成Aの脂質膜を有する脂質膜構造体の機能(1)PEG−DSGの添加 実施例5(1)のluc内包YSK/A脂質膜構造体ならびに実施例2(1)のluc内包DOTAP脂質膜構造体およびluc内包DODAP脂質膜構造体を含むPBSに、10%(v/v)となるようエタノールを加え、PEGと結合した1,2−distearoyl−sn−glycerol(DSG)(PEG−DSG)を、PEG−DSG以外の総脂質に対して3モル%となるよう加えた後、45℃で45分間インキュベートした。ここで、DSGは炭素数が18であり、比較的長い炭素鎖を有するため、脂質膜構造体の脂質膜に入り込んで安定する。すなわち、上記操作により、脂質膜構造体の脂質膜にPEG−DSGを添加して、PEG−DSGを構成脂質として含む脂質膜を有する脂質膜構造体を得て、これをPEG/luc内包YSK/A脂質膜構造体、PEG/luc内包DOTAP脂質膜構造体およびPEG/luc内包DODAP脂質膜構造体とした。(2)血清耐性 anti−luc、実施例2(1)のsiRNA/プロタミン複合体および実施例2(2)の空YSK脂質膜構造体、実施例5(1)のluc内包YSK/A脂質膜構造体ならびに本実施例7(1)のPEG/luc内包YSK/A脂質膜構造体について、実施例4(1)[1−2]に記載の方法を行った。ただし、siRNA/プロタミン複合体および空YSK脂質膜構造体は混合して血清に加えた。また、インキュベート時間は0、3、6および24時間とし、インキュベートする前に、Triton−X100を0.05%(w/v)となるように添加した場合と添加しない場合とを行った。その結果を図11に示す。 図11に示すように、Triton−X100を添加しない場合、anti−lucならびにsiRNA/プロタミン複合体および空YSK脂質膜構造体の混合物ではインキュベート時間の経過に伴ってsiRNAを示すバンドの蛍光強度が小さく、幅が広くなり、かつ泳動速度が増大したことから、siRNAが分解されたことが確認された。これに対して、luc内包YSK/A脂質膜構造体では3および6時間後において、バンドの蛍光強度、幅および泳動速度が0時間後と同等であり、24時間後において、バンドの蛍光強度および幅がやや小さくなったものの、泳動速度は低下しなかった。また、PEG/luc内包YSK/A脂質膜構造体では、0〜24時間後において、バンドの蛍光強度、幅および泳動速度がほとんど変化しなかった。すなわち、luc内包YSK脂質膜構造体およびluc内包YSK/A脂質膜構造体では、siRNAがほとんど分解されなかったことが確認された。これらの結果から、YSK05を構成脂質として含む脂質膜を有する脂質膜構造体に内包されたsiRNAは、内包されていないsiRNAと比較して、血清耐性が大きいことが示された。また、当該脂質膜にPEG−DSGを添加することにより、内包されたsiRNAの血清耐性がより大きくなることが明らかになった。(3)PLK1遺伝子の発現抑制[3−1]脂質膜構造体の製造 anti−lucに代えてPolo−like kinase1(PLK1)遺伝子伝令RNAに対するsiRNA(anti−plk1;配列番号5、6)を用いて、実施例2(1)に記載の方法により脂質膜構造体を得た。組成1〜3の脂質溶液から得られた脂質膜構造体を、それぞれpl内包DOTAP脂質膜構造体、pl内包DODAP脂質膜構造体およびpl内包YSK脂質膜構造体とした。また、脂質溶液における脂質組成を実施例4(2)の組成10とし、anti−lucに加えてanti−plk1を用いて、実施例2(1)に記載の方法により脂質膜構造体を得て、それぞれluc内包YSK/A脂質膜構造体およびpl内包YSK/A脂質膜構造体とした。続いて、これらの脂質膜構造体の脂質膜について、本実施例7(1)に記載の方法を行うことにより、PEG−DSGを構成脂質として含む脂質膜を有する脂質膜構造体を得て、これをPEG/pl内包DOTAP脂質膜構造体、PEG/pl内包DODAP脂質膜構造体、PEG/pl内包YSK脂質膜構造体、PEG/luc内包YSK/A脂質膜構造体およびPEG/pl内包YSK/A脂質膜構造体とした。[3−2]腫瘍モデルマウスへの投与 ヒト腎細胞癌由来OSRC2細胞を10%(v/v)のFBS、100U/mLのペニシリンおよび100mg/mLのストレプトマイシンを含むPRMI1640培地(試薬含有PRMI培地)を用いて37℃、5%CO2雰囲気下で培養して、PBSに懸濁した。続いて、1匹あたり1000000個のOSRC2細胞を、雄性BALB/cヌードマウスの背部皮下に移植して、腫瘍モデルマウスとした。移植したOSRC2細胞が形成する腫瘍の体積を経時的に測定しながら飼育し、腫瘍体積が約100mm3となった時点で、本実施例7(3)[3−1]の脂質膜構造体を腫瘍組織に直接投与し、24時間飼育した。腫瘍体積は式2;腫瘍体積=1/2×(腫瘍の長径)×(腫瘍の短径)2により算出した。また、投与量は10μg(siRNA量)/1匹とした。何も投与しない腫瘍モデルマウスを同様に飼育し、コントロールとした。[3−3]定量リアルタイムPCR 本実施例6(3)[3−2]のマウスから腫瘍組織を回収して、そのうち30mg前後の腫瘍塊をホモジェナイズし、4℃、15000rpmの条件下で10分間遠心分離を行った。上清を回収してRNeasy kit(キアゲン社)を用いてtotal RNAを回収した。1μgのtotal RNAを鋳型として、High Capacity RNA−to−cDNA kit(アプライドバイオシステムズ社)を用いて添付の使用書に従って逆転写反応を行い、cDNAを得た。2ngのcDNAについて、Fast SYBR Green Master Mix(アプライドバイオシステムズ社)およびLightcycler480(Roche社)を用いて、定法に従い定量リアルタイムPCRを行って、ヒトPLK1遺伝子の伝令RNA発現量を測定した。定量リアルタイムPCRの反応液スケールは15μLとし、ヒトPLK1遺伝子およびヒトGAPDH遺伝子のPCR用プライマーは以下の配列を用いた。また、ヒト(Glyceraldehyde−3−phosphate dehydrogenase)GAPDH遺伝子の伝令RNA発現量を内部標準として補正した。補正後のヒトPLK1遺伝子の伝令RNA発現量について、コントロールでのヒトPLK1遺伝子の伝令RNA発現量を1.0とした相対値で表し、これを相対PLK1発現量とした。その結果を図12に示す。 ヒトPLK1遺伝子のプライマーフォワード;5’−AATAAAGGCTTGGAGAACCC−3’(配列番号7)リバース;5’−ACCTCACCTGTCTCTCGAAC−3’(配列番号8) ヒトGAPDH遺伝子のプライマーフォワード;5’−CCTCTGACTTCAACAGCGAC−3’(配列番号9)リバース;5’−CGTTGTCATACCAGGAAATGAG−3’(配列番号10) 図12に示すように、相対PLK1発現量は、PEG/luc内包YSK/A脂質膜構造体、PEG/pl内包DOTAP脂質膜構造体およびPEG/pl内包DODAP脂質膜構造体を投与した場合はコントロールとほぼ同等であった。これに対して、PEG/pl内包YSK脂質膜構造体およびPEG/pl内包YSK/A脂質膜構造体を投与した場合は、コントロールと比較して顕著に小さかった。この結果から、anti−plk1を内包する、YSK05に加えてPEG−DSGを構成脂質として含む脂質膜を有する脂質膜構造体を腫瘍組織に直接投与することにより、腫瘍組織におけるPLK1遺伝子の発現が抑制されたことが示された。 また、相対PLK1発現量は、PEG/pl内包YSK脂質膜構造体を投与した場合よりもPEG/pl内包YSK/A脂質膜構造体を投与した場合の方が小さかった。この結果から、PLK1遺伝子の発現抑制効果は、当該脂質膜における脂質組成を好適脂質組成Aとすることにより増大したことが明らかになった。anti−plk1を内包する、YSK05に加えてPEG−DSGを構成脂質として含む脂質膜を有する脂質膜構造体の当該脂質膜における脂質組成を好適脂質組成Aとすることにより、PLK1遺伝子の発現抑制効果が増大することが明らかになった。[3−4]5’RACE 5’RACE PCRを行って、PLK1遺伝子mRNAが切断された結果生じるRNA断片を特異的に増幅し、anti−plk1によるRNA干渉が起きているか否かを確認した。 具体的には、まず、本実施例7(3)[3−2]のマウスから腫瘍組織を回収して、そのうち30mg前後の腫瘍塊をTRIzol(Invitrogen社)中でホモジュナイズして、total RNAを抽出した。また、試薬含有PRMI培地を用いて37℃、5%CO2雰囲気下で24時間培養したOSRC2細胞を用意し、PEG/pl内包YSK/A脂質膜構造体を100nmol/L(siRNA濃度)となるように培地に添加して37℃で24時間インキュベートしたものをポジティブコントロール細胞(PC細胞)とし、脂質膜構造体を添加せず、同様にインキュベートしたものをネガティブコントロール細胞(NC細胞)とした。PC細胞およびNC細胞からも、TRIzol(Invitrogen社)を用いて、total RNAを抽出した。5μgのtotal RNAを65℃で5分間加熱した後、4℃に置いた。続いて、T4 RNA ligase (TaKaRa社)と1.2μgのRNAアダプター(5’−NH2−CGACUGGAGCACGAGGACACUGACAUGGACUGAAGGAGUAGAAA−3’;配列番号11)とを加えて、37℃で1時間インキュベートすることによりライゲーション反応を行った。次に、フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコールを用いて定法に従いRNAを抽出し、エタノール沈殿を行った後水10μLに溶解してRNA水溶液とした。このRNA水溶液全量を鋳型として、SuperScript III(Invitrogen社)およびPLK1遺伝子特異的プライマー(5’−GGACAAGGCTGTAGAACCCACAC−3’;配列番号12)を用いて逆転写反応を行うことによりcDNAを得た。逆転写反応の条件は、65℃で5分間熱変性した後4℃とし、50℃で1時間および70℃で15分間とした。続いて、cDNAを鋳型として、以下の条件で5’RACE PCR(touch−down PCRおよびnested PCR)を行って5’RACE PCR産物を得た。5’RACE PCR産物を2%TBEアガロースゲルで電気泳動し、1ug/mLエチジウムブロマイドで染色して観察した。その結果を図13に示す。 touch−down PCRの条件鋳型;cDNAフォワードプライマー1(f1);(RNAアダプターの5’側領域に相当)5’−CGACTGGAGCACGAGGACACTGA−3’(配列番号13)リバースプライマー1(r1);(PLK1遺伝子伝令RNAの3’末端領域に相当)5’−GCTTGTCCACCATAGTGCGG−3’(配列番号14)PCR装置;2720 Thermal Cycler(アプライドバイオシステムズ社)反応条件;94℃で2分間の後、94℃で30秒および72℃で40秒を1サイクルとして5サイクル、続いて、94℃で30秒および70℃で40秒を1サイクルとして5サイクル、続いて、94℃で30秒、66℃で30秒および72℃で40秒を1サイクルとして25サイクル、その後72℃で10分。 nested PCRの条件鋳型;touch−down PCRのPCR産物フォワードプライマー;(RNAアダプターの3’側領域(f1の3’側領域)に相当)5’−GGACACTGACATGGACTGAAGGAGTA−3’(配列番号15)リバースプライマー;(r1により伸長されたPLK1遺伝子伝令RNAの5’側領域に相当)5’−TCCTTGCAGCAGCCGTACTC−3’(配列番号16)PCR装置;2720 Thermal Cycler(アプライドバイオシステムズ社)反応条件;94℃で2分の後、94℃で30秒、64℃で30秒および72℃で40秒を1サイクルとして20サイクル、その後72℃で10分。 図13に示すように、PC細胞では、PLK1遺伝子mRNAが切断された結果生じるRNA断片特異的に増幅したDNAを示すバンドが明確に確認された。そして、これに相当するバンドは、コントロールおよびPEG/luc内包YSK/A脂質膜構造体を投与したマウスでは見られなかったのに対し、PEG/pl内包YSK/A脂質膜構造体を投与したマウスでは明確に見られた。すなわち、PEG/pl内包YSK/A脂質膜構造体を投与したマウスの腫瘍組織では、PLK1遺伝子伝令RNAが切断されていることが明らかになった。この結果から、anti−plk1を内包し、YSK05に加えてPEG−DSGを構成脂質として含む脂質膜を有する脂質膜構造体の投与により、PLK1遺伝子伝令RNAに対してRNA干渉が起こすことができることが確認された。<実施例8>好適脂質組成Bの脂質膜構造体の製造(1)脂質の種類の検討[1−1]脂質膜構造体の製造 anti−lucに代えてSRBI遺伝子伝令RNAに対するsiRNA(anti−sr;配列番号17、18)を、1mmol/Lのクエン酸緩衝液(pH4.5)に代えて20mmol/Lのクエン酸緩衝液(pH4.0)をそれぞれ用いて、脂質溶液の組成を下記組成17〜19とし、実施例2(1)に記載の方法を行うことにより、anti−srを内包する、YSK05を構成脂質として含む脂質膜を有する脂質膜構造体を得た。組成17は、既報(Semple S.C.、Nat.Biotechnol.、第28巻、第2号、2010年)を参考として設定した。組成17;YSK05:DSPC:Chol:PEG−DMG=57.1:7.1:34.3:7.5組成18;YSK05:dipalmitoyl phosphatidyl Choline(DPPC):Chol:PEG−DMG=57.1:7.1:34.3:7.5組成19;YSK05:Chol:PEG−DMG=60:40:7.5[1−2]SRBI遺伝子の発現抑制 本実施例8(1)の脂質膜構造体をジエチルエーテルまたはネンブタールを用いて麻酔した5〜6週齢の雄性ICRマウスの尾静脈に投与した。投与量は10〜12.5mL/kg(1.5mg/kg;siRNA量)とした。また、同量のPBSを投与したマウスをコントロールとした。投与から24時間経過後、ジエチルエーテルまたはネンブタールを用いてマウスに麻酔をした後、開腹して肝臓を採取した。採取した肝臓について、実施例6(3)[3−3]に記載の方法により定量リアルタイムPCRを行い、相対SRBI発現量を求めた。ただし、定量リアルタイムPCRのPCR用プライマーは以下の配列を用いて、マウスGAPDH遺伝子の伝令RNA発現量を内部標準とした。その結果を図14に示す。 マウスSRBI遺伝子のプライマーフォワード;5’−AATAAAGGCTTGGAGAACCC−3’(配列番号19)リバース;5’−ACCTCACCTGTCTCTCGAAC−3’(配列番号20) マウスGAPDH遺伝子のプライマーフォワード;5’−AGCAAGGACACTGAGCAAG−3’(配列番号21)リバース;5’−TAGGCCCCTCCTGTTATTATG−3’(配列番号22) 図14に示すように、相対SRBI発現量は、組成17〜19のいずれの脂質膜を有する脂質膜構造体を投与した場合も、コントロールと比較して顕著に小さかった。すなわち、anti−srを内包する、YSK05を構成脂質として含む脂質膜を有する脂質膜構造体の血中投与により、肝臓におけるSRBI遺伝子の発現が抑制されたことが明らかになった。また、組成19の脂質膜を有する脂質膜構造体を投与した場合の相対SRBI発現量は、組成17の脂質膜を有する脂質膜構造体を投与した場合よりも小さく、組成18の脂質膜を有する脂質膜構造体を投与した場合と比較して同等であった。すなわち、当該脂質膜に構成脂質としてDSPCやDPPCを含まずとも、それらを含むものと同等またはそれ以上に、SRBI遺伝子の発現を抑制できることが明らかになった。(2)脂質の割合の検討 脂質溶液の組成を下記組成20〜25とし、本実施例8(1)[1−1]に記載の方法を行うことにより脂質膜構造体を得た。続いて、組成20〜25の脂質膜を有する脂質膜構造体について、本実施例8(1)[1−2]に記載の方法により相対SRBI発現量を求めた。ただし、投与量は0.2、0.2、1.0または2.0mg/Kg(siRNA量)とした。その結果を図15に示す。図15に示すように、投与量が0.2および0.4mg/Kgでは組成23、1.0mg/kgでは組成23および24、2.0mg/kgでは組成22の脂質膜を有する脂質膜構造体を投与した場合に、相対SRBI発現量が顕著に小さかった。これらの結果から、anti−srを内包する、YSK05を構成脂質として含む脂質膜を有する脂質膜構造体の当該脂質膜におけるYSK05とCholとのモル比が、75/35≦YSK05/Chol≦75/25すなわち13/7≦YSK05/Chol≦3である場合は、SRBI遺伝子の発現抑制効果が大きいことが明らかになった。組成20;YSK05:Chol:PEG−DMG=55:45:3組成21;YSK05:Chol:PEG−DMG=60:40:3組成22;YSK05:Chol:PEG−DMG=65:35:3組成23;YSK05:Chol:PEG−DMG=70:30:3組成24;YSK05:Chol:PEG−DMG=75:25:3組成25;YSK05:Chol:PEG−DMG=80:20:3 以上の本実施例8(1)および(2)の結果から、YSK05を構成脂質として含む脂質膜を有する脂質膜構造体の当該脂質膜における構成脂質の好適な組成は、13/7≦YSK05/Chol≦3(モル比;以下、「好適脂質組成B」という。)であることが明らかになった。(3)PEG−DMGの割合の検討 脂質溶液の組成を本実施例8(1)[1−1]の組成17、ならびに下記組成26および27として、本実施例8(1)[1−1]に記載の方法を行うことにより脂質膜構造体を得た。続いて、組成17、26および27の脂質膜を有する脂質膜構造体について、本実施例8(1)[1−2]に記載の方法により相対SRBI発現量を求めた。ただし、投与量は1.5mg/Kg(siRNA量)とした。その結果を図16に示す。図16に示すように、相対SRBI発現量は、組成17、26および27のいずれの脂質膜を有する脂質膜構造体を投与した場合も小さかった。すなわち、anti−srを内包する、YSK05を構成脂質として含む脂質膜を有する脂質膜構造体の当該脂質膜におけるPEG−DMGのモル比が、PEG−DMG以外の総脂質に対して10モル%以下である場合は、SRBI遺伝子の発現抑制効果が大きいことが明らかになった。これらの結果から、YSK05を構成脂質として含む脂質膜を有する脂質膜構造体の当該脂質膜におけるPEG−DMGの割合は、PEG−DMG以外の総脂質に対して10モル%以下が好適であることが明らかになった。組成17;YSK05:DSPC:Chol:PEG−DMG=57.1:7.1:34.3:7.5組成26;YSK05:DSPC:Chol:PEG−DMG=57.1:7.1:34.3:3組成27;YSK05:DSPC:Chol:PEG−DMG=57.1:7.1:34.3:10<実施例9>好適脂質組成Bの脂質膜構造体の機能(1)脂質膜構造体の製造ならびに物性、siRNA内包率およびpKaの確認 脂質溶液の組成を組成28;YSK05:DSPC:Chol:PEG−DMG=50:10:40:3および実施例8(2)の組成23として、本実施例8(1)[1−1]に記載の方法を行うことにより脂質膜構造体を得た。組成28および23の脂質溶液から得られた脂質膜構造体を、それぞれおよびsr内包YSK/28脂質膜構造体およびsr内包YSK/B脂質膜構造体とした。sr内包YSK/B脂質膜構造体について、平均粒子径、PDIおよびゼータ電位を実施例2(3)に記載の方法により、siRNA内包率を実施例2(4)に記載の方法により、pKaを実施例3(1)に記載の方法により、それぞれ測定したところ、いずれの値も実施例2(1)のluc内包YSK脂質膜構造体における値(表1、図2)と近似していた(結果は図示しない)。(2)膜融合能 脂質溶液における脂質組成を本実施例9(1)の組成28および実施例8(2)の組成23とし、1mmol/Lのクエン酸緩衝液(pH4.5)に代えて20mmol/Lのクエン酸緩衝液(pH4.0)を用いて、実施例2(2)に記載の方法を行うことにより脂質膜構造体を得た。組成28および23の脂質溶液から得られた脂質膜構造体をそれぞれ空YSK/28脂質膜構造体および空YSK/B脂質膜構造体として、実施例3(2)に記載の方法にて膜融合率を求めた。その結果を図17に示す。図17に示すように、pHが7.4、6.5、6.0および5.5のいずれの場合も、空YSK/B脂質膜構造体の方が空YSK/28脂質膜構造体よりも膜融合率が大きかった。この結果から、YSK05を構成脂質として含む脂質膜を有する脂質膜構造体の当該脂質膜における脂質組成を好適脂質組成Bとすることにより、膜融合能が向上することが明らかになった。(3)SRBI遺伝子の発現抑制 本実施例9(1)のsr内包YSK/B脂質膜構造体およびsr内包YSK/28脂質膜構造体について、実施例8(1)[1−2]に記載の方法により相対SRBI発現量を求めた。ただし、投与量は0.05〜4mg/kg(siRNA量)の範囲で種々の投与量とした。その結果を図18に示す。図18に示すように、相対SRBI発現量が0.5となるsiRNAの投与量(ED50/SRBI)は、sr内包YSK/28脂質膜構造体ではおよそ1〜2mg/kgであったのに対して、sr内包YSK/B脂質膜構造体ではおよそ0.1mg/kgであった。すなわち、sr内包YSK/B脂質膜構造体はsr内包YSK/28脂質膜構造体と比較して、少量のsiRNAで効率的にSRBI遺伝子の発現を抑制できることが明らかになった。(4)第7因子遺伝子の発現抑制 anti−srに代えて第7因子遺伝子伝令RNAに対するsiRNA(anti−f7;配列番号23、24)を用いて、脂質溶液の組成を本実施例9(1)の組成28および実施例8(2)の組成23とし、本実施例8(1)[1−1]に記載の方法を行うことにより脂質膜構造体を得た。組成28および23の脂質溶液から得られた脂質膜構造体を、それぞれf7内包YSK/28脂質膜構造体およびf7内包YSK/B脂質膜構造体とした。続いて、各脂質膜構造体を、ジエチルエーテルまたはネンブタールを用いて麻酔した5〜6週齢の雄性ICRマウスの尾静脈に投与した。投与量は20〜25mL/kg(0.03〜1mg/kg;siRNA量)とした。また、脂質膜構造体を含まないPBSを同量投与したマウスをコントロールとした。投与から48時間経過後、マウスから定法に従って血液を採取して血漿を得た。olorimetric Biophen VII assay kit(Aniara社)を用いて、添付の使用書に従って血漿中の第7因子の量を測定した。測定結果について、コントロールの測定値で検量線を作成し、コントロールの測定値を100%とした百分率で表して、これを第7因子割合(%)とした。その結果を図19に示す。 図19に示すように、第7因子割合は、f7内包YSK/28脂質膜構造体およびf7内包YSK/B脂質膜構造体のいずれを投与した場合も、投与量に依存して小さくなった。すなわち、anti−f7を内包する、YSK05を構成脂質として含む脂質膜を有する脂質膜構造体の血中投与により、血漿における第7因子遺伝子の発現が抑制されたことが明らかになった。 また、0.1、0.2および1.0mg/kgのいずれの投与量においても、f7内包YSK/B脂質膜構造体を投与した場合の方がf7内包YSK/28脂質膜構造体よりも第7因子割合が顕著に小さく、第7因子割合が50%となるsiRNAの投与量(ED50/F7)は、f7内包YSK/28脂質膜構造体では0.8mg/kgであったのに対して、f7内包YSK/B脂質膜構造体では0.06mg/kgであった。すなわち、f7内包YSK/B脂質膜構造体はf7内包YSK/28脂質膜構造体と比較して、少量のsiRNAで効率的に第7因子遺伝子の発現を抑制できることが明らかになった。 以上の本実施例9(3)および(4)の結果から、標的遺伝子の伝令RNAの全部または一部と同じまたは相補的な塩基配列を有するRNAを内包する、YSK05を構成脂質として含む脂質膜を有する脂質膜構造体の脂質組成を好適脂質組成Bとすることにより、標的遺伝子の発現抑制効果が増大することが明らかになった。<実施例10>遺伝子発現抑制効果の持続時間 実施例9(4)のf7内包YSK/B脂質膜構造体について、実施例9(4)に記載の方法を行い、第7因子割合を求めた。ただし、投与量は1.0mg/kg(siRNA量)とし、血清の採取は投与直後ならびに投与から1、3、5、7、10および14日後に行った。その結果を図20に示す。図20に示すように、投与後1〜14日後のいずれにおいても、第7因子割合は50%以下であった。この結果から、標的遺伝子の伝令RNAの全部または一部と同じまたは相補的な塩基配列を有するRNAを内包する、YSK05を構成脂質として含む脂質膜を有する脂質膜構造体は、投与後、14日間間にわたって標的遺伝子の発現を抑制することができることが示された。<実施例11>PEG−DSGを構成脂質として含み、好適脂質組成Bの脂質膜を有する脂質膜構造体の機能(1)PEG−DSGの添加 脂質溶液の組成を実施例8(2)の組成23とし、脂質溶液に放射性同位体である3H−コレステリルヘキサデシルエチル(CHE)をおよそ4ng/mLとなるよう添加して、本実施例8(1)[1−1]に記載の方法を行うことにより、脂質膜を放射性同位体で標識した脂質膜構造体を得た。続いて、PEG−DSGの添加量をPEG−DSG以外の総脂質に対して0、1、2および3モル%として実施例7(1)に記載の方法を行い、PEG−DSGを構成脂質として含み、放射性同位体で標識した脂質膜を有する脂質膜構造体を得た。(2)血中滞留性 本実施例11(1)の脂質膜構造体を、ジエチルエーテルもしくはネンブタールを用いて麻酔した雄性ICRマウス(5〜6週齢)の尾静脈より投与した。投与から10分間および2時間経過した後、定法に従って血液を採取して血漿を得た。液体シンチレーションカウンターを用いて血漿中の放射線量を測定し、血漿1mL当たりの放射線濃度を、投与した総放射線量(Injected Dose)に対する百分率(%ID)で表した(%ID/mL)。その結果を図21に示す。 図21に示すように、投与から10分後と2時間後との放射線濃度を比較すると、PEG−DSGの添加量が大きいほど、10分後と2時間後との放射線濃度の差が小さかった。すなわち、脂質膜におけるPEG−DSGの添加量が大きいほど、血漿中の脂質膜構造体の時間経過に伴う減少量が小さいことが明らかになった。この結果から、YSK05を構成脂質として含む脂質膜を有する脂質膜構造体の当該脂質膜にPEG−DSGを添加することにより、血中滞留性が向上することが示された。(3)PLK1遺伝子の発現抑制 anti−srに代えてanti−plk1およびanti−lucを用いて、脂質溶液の組成を実施例8(2)の組成23とし、実施例8(1)[1−1]に記載の方法を行うことにより、anti−plk1およびanti−lucを内包する脂質膜構造体を得て、それぞれpl内包YSK/B脂質膜構造体およびluc内包YSK/B脂質膜構造体とした。続いて、実施例7(1)に記載の方法を行い、脂質膜にPEG−DSGを添加して得られた脂質膜構造体を、PEG/pl内包YSK/B脂質膜構造体およびPEG/luc内包YSK/B脂質膜構造体とした。次に、これを、実施例7(3)[3−2]に記載の方法により腫瘍モデルマウスへ投与した。ただし、腫瘍モデルマウス作成に用いる癌細胞種としてOSRC2細胞に加えてヒト肝臓癌由来Huh7細胞およびヒト肝臓癌由来HepG2細胞を用い、投与方法は腫瘍組織への直接投与に代えて静脈内投与とし、anti−plk1を内包する脂質膜構造体の投与量は0.3、0.75、1.5、3、4mg/kg(siRNA量)、anti−lucを内包する脂質膜構造体の投与量は3mg/kg(siRNA量)とした。その後、実施例7(3)[3−3]に記載の方法により相対PLK1発現量を求めた。その結果を図22に示す。 図22に示すように、Huh7細胞の腫瘍組織における相対PLK1発現量は、PEG/luc内包YSK/B脂質膜構造体を投与した場合はコントロールとほぼ同等であった。これに対して、PEG/pl内包YSK/B脂質膜構造体を投与した場合は、OSRC2細胞、Huh7細胞およびHepG2細胞のいずれの腫瘍組織における相対PLK1発現量も、投与量にかかわらず、コントロールと比較して顕著に小さかった。この結果から、anti−plk1を内包する、YSK05に加えてPEG−DSGを構成脂質として含む脂質膜を有する脂質膜構造体を血中投与することにより、腫瘍組織におけるPLK1遺伝子の発現が抑制されたことが示された。 1−methyl−4,4−bis[(9Z,12Z)−octadeca−9,12−dien−1−yloxy]piperidineを有効成分とする、脂質膜構造体にpH依存性カチオン性を付与する剤。 1−methyl−4,4−bis[(9Z,12Z)−octadeca−9,12−dien−1−yloxy]piperidineを構成脂質として含む脂質膜を有する、1−methyl−4,4−bis[(9Z,12Z)−octadeca−9,12−dien−1−yloxy]piperidineによりpH依存性カチオン性が付与された脂質膜構造体。 下記(A)または(B)の脂質膜を有する、請求項2に記載の脂質膜構造体;(A)(a)1−methyl−4,4−bis[(9Z,12Z)−octadeca−9,12−dien−1−yloxy]piperidine、(b)コレステロールおよび(c)1−palmitoyl−2−oleoyl−sn−glycero−3−phosphoethanolamine(POPE)をモル比が(a)/(b)+(c)≧2/3かつ3/7≦(b)/(c)≦7/3の割合で構成脂質として含む脂質膜、(B)(a)1−methyl−4,4−bis[(9Z,12Z)−octadeca−9,12−dien−1−yloxy]piperidineおよび(b)コレステロールをモル比が13/7≦(a)/(b)≦3の割合で構成脂質として含む脂質膜。 ポリエチレングリコールと結合した脂質を構成脂質として含む脂質膜を有する、請求項2または請求項3に記載の脂質膜構造体。 ポリエチレングリコールと結合した脂質がポリエチレングリコールと結合した1,2−dimyristoyl−sn−glycerol(DMG)および/またはポリエチレングリコールと結合した1,2−distearoyl−sn−glycerol(DSG)である、請求項4に記載の脂質膜構造体。 標的遺伝子の発現抑制剤であって、前記標的遺伝子の伝令RNAの全部または一部と同じまたは相補的な塩基配列を有するRNAを内包する請求項2から請求項5のいずれかに記載の脂質膜構造体を有効成分とする前記剤。 下記(I)または(II)の脂質膜を調製する工程を有する、脂質膜構造体の製造方法;(I)(a)1−methyl−4,4−bis[(9Z,12Z)−octadeca−9,12−dien−1−yloxy]piperidine、(b)コレステロール、(c)1−palmitoyl−2−oleoyl−sn−glycero−3−phosphoethanolamine(POPE)および(d)ポリエチレングリコールが結合した1,2−dimyristoyl−sn−glycerol(DMG)をモル比が(a)/(b)+(c)≧2/3、3/7≦(b)/(c)≦7/3かつ0<(d)/(a)+(b)+(c)≦1/10の割合で構成脂質として含む脂質膜、(II)(a)1−methyl−4,4−bis[(9Z,12Z)−octadeca−9,12−dien−1−yloxy]piperidine、(b)コレステロールおよび(d)ポリエチレングリコールが結合した1,2−dimyristoyl−sn−glycerol(DMG)をモル比が13/7≦(a)/(b)≦3かつ0<(d)/(a)+(b)≦1/10の割合で構成脂質として含む脂質膜。 ポリエチレングリコールと結合した1,2−distearoyl−sn−glycerol(DSG)を前記調製した脂質膜に添加する工程を有する、請求項7に記載の脂質膜構造体の製造方法。 【課題】 YSK05を有効成分とする、脂質膜構造体にpH依存性カチオン性を付与する剤、それによりpH依存性カチオン性が付与された脂質膜構造体および脂質膜構造体の製造方法を提供する。【解決手段】 1−methyl−4,4−bis[(9Z,12Z)−octadeca−9,12−dien−1−yloxy]piperidineを有効成分とする。本発明によれば、脂質膜構造体の粒子径やPDIなどの物性に影響を与えることなく、脂質膜構造体にpH依存性カチオン性を付与することができ、pHの低下に伴い生体膜との膜融合能が向上し、siRNAや薬剤などの物質を効率良く内包し、かつその内包物を血清中での分解などから保護して安定的に保持することができる脂質膜構造体を得ることができる。【選択図】 図1配列表