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タイトル:公開特許公報(A)_脱硫された脂肪酸又は脂肪酸エステルの製造方法
出願番号:2012119453
年次:2013
IPC分類:C11B 3/08,C11B 3/10,C07C 31/125,C07C 29/147,C07B 61/00


特許情報キャッシュ

辻 啓太 播磨 和幸 石倉 康寛 田村 正純 JP 2013245281 公開特許公報(A) 20131209 2012119453 20120525 脱硫された脂肪酸又は脂肪酸エステルの製造方法 花王株式会社 000000918 大谷 保 100078732 片岡 誠 100089185 山下 耕一郎 100149250 辻 啓太 播磨 和幸 石倉 康寛 田村 正純 C11B 3/08 20060101AFI20131112BHJP C11B 3/10 20060101ALI20131112BHJP C07C 31/125 20060101ALI20131112BHJP C07C 29/147 20060101ALI20131112BHJP C07B 61/00 20060101ALN20131112BHJP JPC11B3/08C11B3/10C07C31/125C07C29/147C07B61/00 300 9 OL 14 4H006 4H039 4H059 4H006AA02 4H006AC41 4H006BA08 4H006BA09 4H006BA10 4H006BA12 4H006BA14 4H006BA20 4H006BA61 4H006BE20 4H006FE11 4H039CA60 4H039CB20 4H059AA07 4H059BA26 4H059BA30 4H059BC12 4H059CA21 4H059CA40 4H059EA21 本発明は、脱硫された脂肪酸又は脂肪酸エステルの製造方法、及びその製造方法で得られる脱硫された脂肪酸又は脂肪酸エステルを原料とするアルコールの製造方法に関する。 ヤシ油やパーム油等の油脂由来の脂肪酸又は脂肪酸エステルは天然由来の長鎖炭化水素源として、機能素材の原料、バイオ燃料等として有用である。特にこれを水素添加することで得られる高級アルコールは界面活性剤等の原料として有用である。天然油脂由来の脂肪酸又は脂肪酸エステルには、微量成分として水素添加触媒を被毒する硫黄を有する化合物(以下硫黄成分ともいう。)が含有されているため、アルコールの製造に用いるためには硫黄成分を除く必要がある。 従来のメチルエステルを経由するアルコールの製造方法においては、メチルエステルの段階で蒸留を行うことで硫黄成分をある程度除くことができる。そして、蒸留後のメチルエステルを更に吸着剤で処理することで硫黄含有量の少ないメチルエステルを得ることができる(特許文献1)。 一方、コスト及び環境負荷低減の目的で、メチルエステルを経ず、また、水素添加の前段階での蒸留を行わない、油脂又は脂肪酸からの直接水素添加法によるアルコールの製造が提案されており、これに伴う新たな脱硫技術の開発が望まれている。 特許文献2には、燃料油を、過酸化水素、カルボン酸、及び酸触媒もしくは酸を含有する酸化剤で処理した後、吸着剤と接触させて処理することで、脱硫する方法が開示されている。特許文献2では、対象となる燃料油として、実際に効果が確認されているのは灯油のみである。 このように、石油化学分野においても環境への影響や、臭気や色相悪化を防ぐために水素化脱硫法等の脱硫手段が種々提案されているが、石油化学分野における脱硫は下記の理由から、そのまま油脂の脱硫方法として適用することはできない。・主たる硫黄成分がベンゾチオフェン等の芳香族の硫黄成分であること・反応温度を300℃以上にて実施していること・硫黄成分濃度の初期値及び低減目標値が高いこと また、気相中における硫黄成分の除去方法として、特許文献3は、硫黄成分として実質的に硫化アルキルのみを10ppm以下の濃度で含む気体を、臭素を吸着せしめた活性炭と接触させて硫化アルキルを除去する方法を開示している。ここでは、気相中に存在する硫化アルキルを除去しており、液相での適用については、特に言及されていない。更に、油脂中の硫黄成分の組成については必ずしも明らかではないが、硫化アルキルのみではない。特開2007−224272号公報特開2002−322483号公報特開昭54−132470号公報 本発明は、新たな脂肪酸又は脂肪酸エステルの脱硫方法を提供するものであり、特に、メチルエステルの経由や蒸留の必要のない、脱硫された脂肪酸又は脂肪酸エステルの製造方法、及び、その製造方法で得られる脂肪酸又は脂肪酸エステルを原料とするアルコールの製造方法を提供する。 本発明者らは、硫黄成分を含有する原料油脂を臭素系酸化剤と接触させて、それと同時に又はそれに引き続いて、洗浄又は吸着処理を行うことで、脱硫された脂肪酸又は脂肪酸エステルが製造できることを見出した。 すなわち、本発明は、以下の[1]及び[2]に関する。[1] 下記工程1及び工程2を含み、工程1に次いで工程2を行う、又は工程1と工程2と同時に行う、脱硫された脂肪酸又は脂肪酸エステルの製造方法。 工程1:脂肪酸及び脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上と、硫黄成分と、を含有する原料油脂に、液相にて臭素系酸化剤を接触させる工程 工程2:(a)極性溶媒による洗浄処理又は(b)吸着剤による吸着処理を行う工程[2] [1]の製造方法で得られた脱硫された脂肪酸又は脂肪酸エステルに対して、周期律表第8族、第9族、及び第10族から選ばれる1種又は2種以上の金属を含む触媒を用いて水素添加反応を行う、アルコールの製造方法。 本発明により、脱硫された脂肪酸又は脂肪酸エステルが容易に得られる。特に、メチルエステルの経由や蒸留をしなくても、硫黄成分の含有量の低い脂肪酸又は脂肪酸エステルを効率よく得ることができる。 更に得られた脂肪酸又は脂肪酸エステルを原料として、効率的に水素添加法にてアルコールを製造することができる。 本発明の脱硫された脂肪酸又は脂肪酸エステルの製造方法は、下記工程1及び工程2を含み、工程1に次いで工程2を行う、又は工程1と工程2と同時に行う方法である。 工程1:脂肪酸及び脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上と、硫黄成分と、を含有する原料油脂に、液相にて臭素系酸化剤を接触させる工程 工程2:(a)極性溶媒による洗浄処理又は(b)吸着剤による吸着処理を行う工程[原料油脂] 本発明の製造方法において用いられる原料油脂は、脂肪酸及び脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上(以下単に「脂肪酸類」ともいう)と硫黄成分とを含有する。 脂肪酸としては、特に制限されないが、油脂を加水分解して得られる脂肪酸があげられる。 脂肪酸エステルとしては、特に制限されないが、油脂、油脂を炭素数1〜5の低級アルコールとエステル交換して得られる低級アルキルエステル、油脂を炭素数6〜25の高級アルコールとエステル交換して得られるワックス等が挙げられる。 ここで上記の油脂とは、トリグリセリドを主成分とする長鎖脂肪酸のグリセリンエステルを含む組成物を指し、ジグリセリド、モノグリセリド、脂肪酸等を含有していてもよい。ここで主成分とは、全体量の50質量%以上を占める成分を意味する。 油脂の原料としてはヤシ油、パーム核油、パーム油、大豆油、コーン油、藻油、ヤトロファ油等の植物油、牛脂、豚脂、魚油等の動物油等が挙げられる。これらの中では、安定供給性の観点から、植物油がより好ましく、界面活性剤等の高付加価値製品原料として有用な炭素数12、14のアルキル鎖長を多く含む観点から、ヤシ油及びパーム核油が更に好ましい。 原料油脂に含まれる脂肪酸又は、脂肪酸エステルの脂肪酸残基の炭素数としては8〜24が好ましく、10〜22がより好ましく、12〜18が更に好ましい。 脂肪酸又は脂肪酸エステルは単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。 原料油脂中に含まれる脂肪酸又は脂肪酸エステルの含有量は、特に制限されないが、例えば、80質量%以上が好ましく、90質量%がより好ましく、95質量%以上が更に好ましい。当該含有量の上限は例えば100質量%である。 本発明の方法はいずれの原料油脂にも好適に用い得るが、油脂及び脂肪酸に適用することで、続くアルコールの製造を含めて低コスト低環境負荷のプロセスを提供することができる。 硫黄成分としては、特に制限されないが、例えば、チオール類、スルフィド類、ジスルフィド類、チオカルボン酸類、並びにチオフェン等の芳香族硫黄成分が例示される。これらの成分は、本発明にて効率的に除去できる。 原料油脂(処理前)の硫黄含有量は、粗パーム核油や粗ヤシ油中に通常含有されている程度が好ましいが、例えば、5mg/kg以下が好ましく、より好ましくは3〜5mg/kgである。ここで本明細書において硫黄含有量は、実施例記載の方法により測定するものとする。 本発明に用いられる原料油脂は、具体的には、例えば、粗ヤシ油、粗パーム核油、粗パーム油、粗大豆油、粗コーン油、粗藻油、粗ヤトロファ油等の粗植物油、粗牛脂、粗豚脂、粗魚油等の粗動物油から選ばれる一種又は二種以上が挙げられる。[臭素系酸化剤] 本発明にて用いられる臭素系酸化剤としては、臭素(Br2)、次亜臭素酸又はその塩、臭素酸又はその塩等が挙げられる。これらの臭素系酸化剤の中でも、コスト、取扱性、脱硫効率の観点から、臭素、次亜臭素酸又はその塩が好ましく、臭素が更に好ましい。 臭素系酸化剤の形態としては、特に制限されないが、原料油脂中の硫黄成分との接触効率を高める観点から液相状態であることが好ましい。例えば、原体、水溶液、有機溶液等が好適に用いられ、中でも、安価で取り扱いが容易である観点から、水溶液が好ましい。 水溶液中の臭素系酸化剤の濃度は、特に制限されないが、0.1〜3質量%が好ましく0.5〜2質量%がより好ましく、0.8〜1.5質量%が更に好ましい。 なお、臭素系酸化剤の形態として、活性炭などに担持された臭素を用いてもよい。[工程1] 工程1は、脂肪酸及び脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上と、硫黄成分と、を含有する原料油脂に、液相にて臭素系酸化剤を接触させる工程である。 臭素系酸化剤の接触は例えば液相状態の原料油脂に対して撹拌下に、臭素系酸化剤を添加することで行われる。 ここで、液相状態とは、原料油脂中の脂肪酸類の融点以上かつ沸点以下の温度で、液体が存在する様態を指す。但し、少量の気相や固体が含有することを許容する。 接触時の状態を液相とすることで、原料を蒸発させるための過度のエネルギーを消費することなく、原料油脂中の硫黄成分と臭素系酸化剤の接触が効率的に行われる。 接触は、バッチ式の反応槽を用いてもよく、連続式の装置を用いてもよい。 接触時の温度は脂肪酸類が液相を保つ範囲であれば特に制限はない。常温で固体の油脂を用いる場合、いったん融点以上の温度で液体状態とした後に冷えて、過冷却液体となったものも好適に用いられる。操作の安定性上の観点から、20〜200℃が好ましく、30〜120℃がより好ましく、40〜80℃が更に好ましい。 接触時の圧力は、特に制限されないが、0.01〜1000kPaの範囲が好適である。 接触時間は硫黄成分の量、臭素系酸化剤の添加量、温度等の条件によって変わるが、通常0.1分〜600分の範囲で好適に行われる。 接触時の雰囲気は、特に制限されないが、脂肪酸類の着色等の品質劣化を防ぐ観点から窒素・アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。 脂肪酸類はそのままで接触に供されるが、液相を保ちかつ流動性を保つ観点から、溶媒を用いてもよい。溶媒としては、アルコール類、炭化水素類が挙げられる。 臭素系酸化剤の使用量は原料油脂に対して、0.01〜120質量%の範囲が好ましく、0.05〜50質量%の範囲がより好ましく、0.1〜12質量%の範囲が更に好ましい。0.01質量%以上とすることで、十分許容できる短時間で酸化を行うことが可能となる。一方120質量%以下とすることで、後の洗浄又は吸着工程の負荷を低減することができる。 また、臭素系酸化剤の使用量は、原料油脂に含まれる硫黄元素1質量部あたり、5〜5000質量部が好適に用いられ、50〜1000質量部がより好ましく、100〜500質量部が更に好ましい。[工程2] 工程2は、(a)極性溶媒による洗浄処理又は(b)吸着剤による吸着処理のいずれかを含む工程である。<(a)極性溶媒による洗浄処理> 本発明の洗浄処理工程にて用いられる極性溶媒としては、特に制限されないが、水又は、脂肪酸類と液液相分離する範囲で、有機溶媒を含む水溶液が用いられる。溶媒の具体例としてはメタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等が好適に用いられる。洗浄効率の観点から、水、又は水−メタノール混合溶媒が好ましい。分層性の観点から、メタノールと水との組み合わせ(95:5)もしくは水単独で用いる場合が更に好ましい。 洗浄時の温度は、特に制限されないが、脂肪酸類が液相を保つ範囲が好ましい。洗浄工程は、脂肪酸類が液相状態を保っている限り、工程1で液相状態とした後に室温まで冷えたものであっても、好適に行うことができる。具体的には操作の安定性の観点から20〜200℃が好ましく、30〜120℃がより好ましく、40〜80℃が更に好ましい。 洗浄は脂肪酸類に溶媒を添加し、十分撹拌した後分層させ、溶媒層を除去することによって行われる。向流式の吸収塔を用いて連続的に行うこともできる。 洗浄に用いる溶媒の使用量は原料油脂100部に対して、10〜1000部が好ましく、20〜500部がより好ましく、50〜200部がより好ましい。洗浄をバッチ式で行う場合は、数回に分けて行うことが好ましい。 洗浄の終点は、硫黄成分の分析によって決めることができる。[(b)吸着処理](吸着剤) 本発明の工程1後の原料油脂に対して用いられる吸着剤は、特に制限されないが、例えば、活性炭、活性白土、シリカ、ゼオライト、イオン交換樹脂など公知の吸着剤が使用できる。これらの中では、活性炭やシリカ、活性白土が好ましく、高極性成分の除去に適しているという観点から活性白土及びシリカが更に好ましい。 なお、日本エンバイロケミカルズ社より販売されている添着炭(GS2X4/6G)は、活性炭上に臭素が付着したものであり、上記酸化処理と吸着処理を同時に行うことが可能である。 吸着剤の使用量は原料油脂に対して0.1〜10質量%が好ましく0.3〜5質量%が好ましく、0.5〜2質量%がより好ましい。 吸着処理は上記吸着剤を上記脂肪酸類に添加して、所定時間撹拌することで行われる。 吸着処理は、吸着剤を充填したカラムに、上記の脂肪酸類を通ずることでも実施できる。カラムを用いる場合、液空間速度は1〜100/hが好ましく、10〜50/hが好ましい。 吸着温度は脂肪酸類が液相を保つ範囲が好ましい。工程1で液相状態とした後に室温まで冷えたものであっても、好適に行うことができる。具体的には操作の安定性の観点から、20〜200℃が好ましく、30〜160℃がより好ましく、40〜120℃が更に好ましい。 また、吸着時の圧力は、特に制限されないが、1〜1000kPaの範囲が好ましく、5〜300kPaがより好ましく、8〜100kPaの範囲が更に好ましい。 吸着時間は5〜300分が好ましく、10〜180分より好ましく、20〜150分が更に好ましい。 吸着処理後、濾過、遠心分離等の手段で脂肪酸類と吸着剤を分離することができる。 製品は通常の後処理によって得られる。溶媒を用いた場合は溶媒を蒸留除去して、目的物を得る。 工程2は工程1と同時又は工程1に引き続き行うことができる。 工程1及び2の結果得られる、脱硫された脂肪酸又は脂肪酸エステル(以下単に「脱硫原料油脂」と称する)に含まれる硫黄含有量は3mg/kg以下、より好ましくは1mg/kg以下、更に好ましくは0.8mg/kg以下であり、水素添加反応等の各種反応の中間原料として好適に用いられる。[工程3] 本発明においては、工程3として、工程1及び工程2によって脱硫原料油脂をNi及びCuから選ばれる一種以上の金属を含有する吸着剤と接触させる工程を行うことができる。 工程3に用いられる吸着剤は、特に制限されないが、Ni及びCuから選ばれる少なくとも1種の金属を10〜85質量%(吸着剤全量中の金属酸化物としての含有量)含有し、かつ細孔直径20〜200nmの範囲の細孔容量が0.15〜1.0mL/gのものであり、Ni及びCuから選ばれる少なくとも1種の金属が担体に担持されたものが好ましい。 担体としては、特に制限されないが、例えばシリカ、アルミナ、シリカアルミナ、ゼオライト、珪藻土、活性白土、チタニア、ジルコニア、活性炭等の公知の担体が使用できるが、シリカ、アルミナ、シリカアルミナ、チタニア、ジルコニアが好ましく、シリカ、シリカアルミナが特に好ましい。 吸着処理方式としては、特に制限されないが、例えば懸濁方式あるいは固定床方式等、一般に使用される何れの方式も使用することが可能である。大量に処理を行う場合、連続的な固定床方式が有利である。 固定床方式で連続的に吸着処理を行う場合、次のような条件で行うことが好ましい。雰囲気ガスは水素が好ましく、不活性ガスを共存させてもよい。不活性ガスとしては、窒素、アルゴン及びヘリウムが挙げられる。雰囲気ガスの流量は、処理する脱硫原料油脂のモル数に対する水素のモル比で、0.1〜300倍になるような範囲が好ましい。雰囲気ガスの圧力は、0.01〜50MPaが好ましく、0.1〜30MPaが更に好ましい。 処理温度は、十分な吸着速度を得る観点から、40℃以上が好ましく、50℃以上が更に好ましい。また、水素化分解等の副反応を抑制する観点から、200℃以下が好ましく、180℃以下が更に好ましい。 原料となる脱硫原料油脂の流通速度は、生産性、触媒寿命、水素化分解の抑制等の観点から適宜設定されるが、1時間当たりの液空間速度(LHSV)で、0.1以上が好ましく、また充分な吸着性能を得る観点から、LHSVで5以下が好ましい。 工程3の結果、脂肪酸等に含まれる硫黄成分の含有量は0.8mg/kg以下、より好ましくは0.5mg/kg以下、更に好ましくは0.2mg/kg以下になっており、触媒による水素添加反応に好適に用いられる。[アルコールの製造方法] 本発明は、上記のように工程1及び2、場合によっては更に工程3を経て得られた脱硫原料油脂に対して、周期律表第8族、第9族及び第10族から選ばれる1種又は2種以上の金属を含む触媒を用いて水素添加反応を行う、アルコールの製造方法をも提供する。 触媒としては、例えば、Co/Mo、Co/Zr等のCo系触媒、Cu/Cr、Cu/Zn等のCu系触媒、その他にRe系、Ru系、Rh系及び白金等の貴金属系触媒を使用することができる。これらの触媒のなかでは、アルコールの選択性が高く、また副生する脂肪酸に対する耐久性も高い理由からCo系触媒が好ましい。上記何れかの触媒の存在下、液相懸濁床あるいは固定床方式等、一般に使用される何れの反応方式によっても、水素化反応を行うことが可能である。 液相懸濁床方式で反応を行う場合、触媒量は、脂肪酸類に対し0.1〜20質量%が好ましいが、反応温度あるいは反応圧力に応じて、実用的な反応収率が得られる範囲内において任意に選択できる。反応温度は、好ましくは160〜350℃、より好ましくは200〜280℃である。反応圧力は、好ましくは0.1〜35MPa、より好ましくは3〜30MPaである。 固定床方式で連続的に反応を行う場合、触媒は、円柱状あるいはペレット状、球状等に成形されたものを使用することが好ましい。反応温度は、好ましくは130〜300℃、より好ましくは150〜270℃であり、反応圧力は、好ましくは0.1〜30MPaである。LHSVは、生産性及び反応性を考慮し、反応条件に応じて任意に決定される。 本発明の方法で得られる脱硫された脂肪酸類は、触媒毒が除かれているので、水素添加によるアルコールの製造に好適に用いられる。 また、メチルエステル等の低級アルキルエステルはSOx発生の少ないバイオディーゼル燃料としても好適に用いられる。 本発明の製造方法により得られるアルコールは、界面活性剤等の各種機能素材の原料として有用である。 油脂への直接水素添加反応に応用では、脂肪族アルコールとともに、高収率でグリセリンを回収することができる。 特に、油脂、又は脂肪酸に適用すれば、エステルを経ずにアルコールが得られることから、より低コストで、環境負荷の少ない製法となる。 通常の低級アルキルエステルに適用しても、触媒の寿命が延びることから、環境に対してフレンドリーなプロセスとなる。 上述した実施の形態に関し、本発明は以下の脱硫された脂肪酸又は脂肪酸エステルの製造方法、及び、アルコールの製造方法を開示する。<1> 下記工程1及び工程2を含み、工程1に次いで工程2を行う、又は工程1と工程2と同時に行う、脱硫された脂肪酸又は脂肪酸エステルの製造方法。 工程1:脂肪酸及び脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上と、硫黄成分と、を含有する原料油脂に、液相にて臭素系酸化剤を接触させる工程 工程2:(a)極性溶媒による洗浄処理又は(b)吸着剤による吸着処理を行う工程<2> 脱硫された脂肪酸又は脂肪酸エステル中の硫黄含有量が1mg/kg以下である、<1>に記載の製造方法。<3> 原料油脂中の硫黄含有量が3〜5mg/kgである、<1>又は<2>に記載の製造方法。<4> 臭素系酸化剤が、臭素、次亜臭素酸及びその塩から選ばれる1種又は2種以上の化合物である、<1>〜<3>のいずれかに記載の製造方法。<5> 臭素系酸化剤の、原料油脂に対する使用量が、0.01〜120質量%、より好ましくは0.05〜50質量%、更に好ましくは0.1〜12質量%である、<1>〜<4>のいずれかに記載の製造方法。<6> 臭素酸化剤の原料油脂に対する使用量が、原料油脂に含まれる硫黄元素1質量部あたり、5〜5000質量部、より好ましくは50〜1000質量部、更に好ましくは100〜500質量部である、<1>〜<5>のいずれかに記載の製造方法。<7> 臭素酸化剤が、臭素水溶液である、<1>〜<6>のいずれかに記載の製造方法。<8> 臭素水溶液の臭素の濃度が、0.1〜3質量%、好ましくは0.5〜2質量%、更に好ましくは0.8〜1.5質量%である、<7>に記載の製造方法。<9> 工程2が(b)吸着剤による吸着処理を行う工程であり、吸着剤が、活性炭、活性白土、シリカ、ゼオライト、及びイオン交換樹脂から選ばれる1種又は2種以上の吸着剤である、<1>〜<8>のいずれかに記載の製造方法。<10> 工程2における吸着剤の使用量が、原料油脂に対して0.1〜10質量%、より好ましくは0.3〜5質量%、更に好ましくは0.5〜2質量%である、<1>〜<9>のいずれかに記載の製造方法。<11> 工程2における吸着温度が、20〜200℃、より好ましくは30〜160℃、更に好ましくは40〜120℃である、<1>〜<10>のいずれかに記載の製造方法。<12> 工程2における吸着時の圧力が、1〜1000kPaの範囲、より好ましくは5〜300kPaの範囲、更に好ましくは8〜100kPaの範囲である、<1>〜<11>のいずれかに記載の製造方法。<13> 吸着時間は、5〜300分、より好ましくは10〜180分、更に好ましくは20〜150分である、<1>〜<12>のいずれかに記載の製造方法。<14> 工程1に次いで工程2を行う、<1>〜<13>のいずれかに記載の製造方法。<15> 更に下記工程3を行う、<1>〜<14>のいずれかに記載の製造方法。 工程3:工程1及び工程2によって脱硫された脂肪酸又は脂肪酸エステルをNi及びCuから選ばれる一種以上の金属を含有する吸着剤と接触させる工程<16> 工程3における吸着剤は、Ni及びCuから選ばれる少なくとも1種の金属を10〜85質量%(吸着剤全量中の金属酸化物としての含有量)含有し、かつ細孔直径20〜200nmの範囲の細孔容量が0.15〜1.0mL/gのものであり、Ni及びCuから選ばれる少なくとも1種の金属が担体に担持されたものである、<15>に記載の製造方法。<17> 工程3が、固定床方式で連続的に行われる、<15>又は<16>に記載の製造方法。<18> 工程3における雰囲気ガスが少なくとも水素を含み、雰囲気ガスの圧力は、0.01〜50MPa、より好ましくは0.1〜30MPaである、<15>〜<17>に記載の製造方法。<19> 工程3における処理温度が、40℃以上、より好ましくは50℃以上200℃以下、更に好ましくは50℃以上180℃以下である、<15>〜<18>のいずれかに記載の製造方法。<20> <1>〜<19>のいずれかに記載の製造方法で得られた脱硫された脂肪酸又は脂肪酸エステルに対して、周期律表第8族、第9族、及び第10族から選ばれる1種又は2種以上の金属を含む触媒を用いて水素添加反応を行う、アルコールの製造方法。<21> 水素添加反応が液相懸濁床方式で行われる、<20>に記載のアルコールの製造方法。<22> 反応温度が、160〜350℃、更に好ましくは200〜280℃である、<21>に記載のアルコールの製造方法。<23> 水素添加反応の反応圧力は、0.1〜35MPa、更に好ましくは3〜30MPaである、<21>又は<22>に記載のアルコールの製造方法。<24> 水素添加反応が固定床方式で連続的に行われる、<20>に記載のアルコールの製造方法。<25> 触媒が、円柱状あるいはペレット状、球状等に成形されたものである、<24>に記載のアルコールの製造方法。<26> 反応温度が、130〜300℃、更に好ましくは150〜270℃である、<24>又は<25>に記載のアルコールの製造方法。<27> 反応圧力が、0.1〜30MPaである、<24>〜<26>のいずれかに記載のアルコールの製造方法。[硫黄含有量の測定法] 以下の実施例において、硫黄含有量の測定は、ANTEK社製低濃度硫黄分析計9000LLSにて行った。詳細には以下の方法による。(標準溶液の調製) 硫化ジブチル0.228gを溶媒(カルコール 1098、花王社製、デシルアルコール)500mLに溶解させ、この溶液を100mLメスフラスコに2mL加える。これにカルコール 1098を98mL加え、2ng/μLの標準溶液を調製した。また、同様の手法にて1ng/μL及び、5ng/μLの標準溶液も調製した。(サンプルの調製) 測定サンプルを4gバイアルに加え、これにイソオクタン5mLを加え、サンプルを調製した。(硫黄含有量の測定) 硫黄含有量は、測定サンプルをキャピラリーに導入後、酸素ガスにて燃焼し、生成するSO2ガスの濃度を紫外線蛍光式濃度センサーにて測定した。(実施例1:油脂の酸化・吸着処理) 下口付き四つ口フラスコ200mLに粗パーム核油50g(硫黄含有量:4.7mg/kg)を入れた。50℃まで昇温した後、ここに臭素水(臭素含有量1質量%)を6g(原料油脂中に含有している硫黄元素に対してBr2として250質量倍の臭素量)加えた。反応は、液相、40℃、常圧にて30分行った(工程1)。次いで、そのまま吸着剤を粗パーム核油に対して1質量%(0.5g)添加し、120℃、8kPaにて25分間反応を行った(工程2)。吸着剤としては、活性炭(カルボラフィン(日本エンバイロケミカルズ社製))を用いた。 上記実施例の転化率を以下の表1に示す。(実施例2〜5) 実施例1と同様の手法にて油脂の酸化・吸着処理を行った。但し吸着剤としては、活性炭(カルボラフィン)に変えて、活性炭(白鷺A、(日本エンバイロケミカルズ社製))、活性炭(MHS40/80(日本エンバイロケミカルズ社製))、活性白土(ガレオンアースV2(水澤化学工業社製))、シリカ(Trisyl300(Grace Davison Discovery Sciences社製))を用いた。 結果を表1に示す。(比較例1) 工程1の臭素との接触工程を行わず、工程2のみを実施例1と同様の手法で行い、脱硫されたパーム核油を製造した。結果を表1に示す。 表1から分かるように40℃、常圧という穏和な条件にて臭素水を滴下し、これを市販の吸着剤にて吸着処理することで高い脱硫効果が得られた。(実施例6:油脂の臭素処理及び洗浄処理) 実施例1の通りに原料粗パーム核油(硫黄含有量:4.7mg/kg)に対して工程1の臭素との接触を行った後、臭素処理された脂肪酸類を水500mLにて3度抽出し洗浄を行った(工程2)。抽出は水を加え常温(25℃)で1分間撹拌の後、分層して上下両相がほぼ透明になるまで静置(約3〜5分)後、水を抜きだすことで行った。 結果を表2に示す。(比較例2) 工程1の臭素との接触を行わない以外は実施例6と同様の操作で、洗浄されたパーム核油を製造した。結果を表2に示す。(実施例7) 1質量%臭素水の代わりに、9質量%臭素酸ナトリウム水溶液0.5gを用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、脱臭されたパーム核油を得た。得られたパーム核油中の硫黄含有量は1.5mg/kgであった。(実施例8)油脂の酸化・吸着処理 30lSUS製容器に粗パーム核油(硫黄含有量:4.7mg/kg)を20Kg加え、添着炭(GS2X4/6G、臭素添着量800mg/kg)を原料油脂に対して1質量%(200g)加えた(同時に工程1及び工程2を行った。)。接触は40℃、常圧にて1時間行った。接触後、吸着剤をろ過して除いた。処理後パーム核油の硫黄含有量は0.90(mg/kg)であった。(実施例9) 実施例1と同様の手法で、工程1及び工程2を行い、脱硫されたパーム核油を得た。更に得られた脱硫された油脂に対して、工程3として以下の操作を行った。<工程3>(吸着剤の活性化・反応) 500mLオートクレーブに特許文献1(特開2007−224272号公報)に記載された手法にて合成されたNi含有吸着剤2.0g及び、ラウリルアルコール200gを仕込み、系内を水素に置換した後、1MPaに昇圧し、200℃にて2時間処理した。冷却、脱圧することで得られた吸着剤を用いて、工程3を行った。(吸着処理) 上記の容器に脱硫後パーム核油(硫黄含有量0.90mg/kg)200gを仕込み、系内を水素に置換した後、24.5MPaに昇圧し、135℃にて3時間処理した。冷却、脱圧後、処理後パーム核油の硫黄含有量を測定したところ、0.05(mg/kg)以下であった。(実施例10)脱硫後パーム核油のNi触媒脱硫処理 実施例1と同様の手法で、工程1及び工程2を行い、脱硫されたパーム核油を得た。当該脱硫パーム核油に対して、Niを含有する吸着剤による脱硫処理を行った。(吸着剤の調製) 特許文献1(特開2007−224272号公報)に記載された手法にてNiを含有する吸着剤を製造し、得られた吸着剤を固定床型反応器(SUS製、内径13mmφ、高さ833mm)に充填した。あらかじめ硫黄分を除去した脂肪酸メチルエステルをLHSV1.74/hにて、水素(圧力20MPa、導入量44.2NL/h)とともに、155℃に調整された前記固定床反応器の上部から24時間流通させ、活性化した。(吸着処理) 上記のようにして調製した固定床反応器に、20MPa、155℃の反応条件にて、上記実施例8で得られた脱硫パーム核油を、LHSV=5、水素131.7NL/hの条件下(条件A)に反応器上部より供給し、吸着処理を行った。反応器内温度が所定温度に到達した時点を0hとし、4hおきにサンプリングを行い、脱硫パーム核油を24時間流通させた時の、脱硫パーム核油中の残留硫黄含有量、及び脱硫活性を表3に示した。反応温度、LHSVを表3に示す条件B〜Dとして、同様に残留硫黄含有量、及び脱硫活性を測定し表3に示した。なお、脱硫活性は次式で算出した。 脱硫活性=log(吸着処理前の硫黄含有量/吸着処理後の硫黄含有量) ここで「log」は自然対数を表す。(実施例11)(アルコールの製造) 実施例10で得られた脱硫されたパーム核油を原料とし、特開2008−221199号に記載の方法に従い、アルコールを得る。 なお、触媒毒性分である硫黄含有量が0.1(mg/kg)程度と極めて微量であるために、アルコールの製造用触媒の劣化を抑制することができる。このため、高効率的なアルコールの製造手段を提供することができ、その工業的価値は多大である。 発明の方法で得られる脱硫された脂肪酸又は脂肪酸エステルは、触媒毒が除かれているので、水素添加によるアルコールの製造や、SOx発生の少ないバイオディーゼル燃料としても好適に用いられる。また、本発明の製造方法により得られるアルコールは、界面活性剤等の各種機能素材の原料として有用である。 下記工程1及び工程2を含み、工程1に次いで工程2を行う、又は工程1と工程2と同時に行う、脱硫された脂肪酸又は脂肪酸エステルの製造方法。 工程1:脂肪酸及び脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上と、硫黄成分と、を含有する原料油脂に、液相にて臭素系酸化剤を接触させる工程 工程2:(a)極性溶媒による洗浄処理又は(b)吸着剤による吸着処理を行う工程 原料油脂中の硫黄含有量が3〜5mg/kgである、請求項1に記載の製造方法。 臭素系酸化剤が、臭素、次亜臭素酸及びその塩から選ばれる1種又は2種以上の化合物である、請求項1又は2に記載の製造方法。 臭素系酸化剤の、原料油脂に対する使用量が、0.01〜120質量%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。 工程2が(b)吸着剤による吸着処理を行う工程であり、吸着剤が、活性炭、活性白土、シリカ、ゼオライト、及びイオン交換樹脂から選ばれる1種又は2種以上の吸着剤である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。 工程1に次いで工程2を行う、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。 更に下記工程3を行う、請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。 工程3:工程1及び工程2によって脱硫された脂肪酸又は脂肪酸エステルをNi及びCuから選ばれる一種以上の金属を含有する吸着剤と接触させる工程 脱硫された脂肪酸又は脂肪酸エステル中の硫黄含有量が1mg/kg以下である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。 請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法で得られた脱硫された脂肪酸又は脂肪酸エステルに対して、周期律表第8族、第9族、及び第10族から選ばれる1種又は2種以上の金属を含む触媒を用いて水素添加反応を行う、アルコールの製造方法。 【課題】本発明は、脱硫された脂肪酸又は脂肪酸エステルの製造方法等を提供する。【解決手段】下記工程1及び工程2を含み、工程1に次いで工程2を行う、又は工程1と工程2と同時に行う、脱硫された脂肪酸又は脂肪酸エステルの製造方法。 工程1:脂肪酸及び脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上と、硫黄成分と、を含有する原料油脂に、液相にて臭素系酸化剤を接触させる工程 工程2:(a)極性溶媒による洗浄処理又は(b)吸着剤による吸着処理を行う工程【選択図】なし


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