生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_口腔保湿剤
出願番号:2012110969
年次:2013
IPC分類:A61K 8/44,A61K 8/81,A61K 8/73,A61Q 11/00


特許情報キャッシュ

北野 和人 濱口 武之 伊藤 文子 内海 博明 和泉谷 武玄 清家 信久 小澤 徹也 JP 2013237632 公開特許公報(A) 20131128 2012110969 20120514 口腔保湿剤 川本産業株式会社 593148804 植木 久一 100075409 植木 久彦 100129757 菅河 忠志 100115082 伊藤 浩彰 100125243 北野 和人 濱口 武之 伊藤 文子 内海 博明 和泉谷 武玄 清家 信久 小澤 徹也 A61K 8/44 20060101AFI20131101BHJP A61K 8/81 20060101ALI20131101BHJP A61K 8/73 20060101ALI20131101BHJP A61Q 11/00 20060101ALI20131101BHJP JPA61K8/44A61K8/81A61K8/73A61Q11/00 7 OL 19 4C083 4C083AC302 4C083AC482 4C083AC542 4C083AC581 4C083AC582 4C083AD091 4C083AD092 4C083AD332 4C083AD351 4C083AD352 4C083AD532 4C083AD552 4C083CC41 本発明は、口腔内の湿度を維持するためのものであり、優れた保湿性を示す上に、塗り広げやすい一方で塗布後は垂れ難い口腔保湿剤に関するものである。 唾液に含まれる成分は大部分が水であるが、その他にも様々な無機化合物や有機化合物が含まれている。例えば、デンプンを分解するためのアミラーゼや、リゾチームなどの殺菌成分も含んでおり、消化の一旦を担ったり、口腔内を清浄に保つ役割も有する。 ヒトの唾液の分泌量は1日当たり1〜1.5リットルにも達するが、年齢と共に減ってくる。その他、シェーグレン症候群などの自己免疫疾患や、糖尿病、腎不全症などの疾患によっても唾液分泌量が減少することがある。 唾液分泌量が減少すると、口腔内細菌の増加により口腔内疾患にかかりやすくなる他、口腔内が乾燥し、食事時や話す時に痛みを感じたり、食物を飲み込み難くなるなどの症状が表れる。高齢者では、じつに半数以上が口腔内の乾燥を自覚しているというデータもあり、特に寝たきりの高齢者では、口を閉じていることができず口腔内の乾燥がより一層進み、上記の症状が悪化するという問題がある。 かかる問題を解消するためのものとして、人工の唾液が開発されている。人工唾液としては、例えば、ヒアルロン酸を含むものや(特許文献1〜4)、非イオン性増粘剤を含むものがある(特許文献5)。 しかし、いわゆる人工唾液は唾液を人工的に再現したものに過ぎないため、口腔内に投与しても直ぐに乾燥してしまうという欠点があった。そこで、口腔内に塗布し、乾燥を防ぐことに特化した製剤も開発されている。 例えば、特許文献6には、口腔内などにおける乾燥粘膜の症状を緩和する薬剤として、トリメチルグリシン(ベタイン)を含むものが開示されている。国際公開第2000/056344号パンフレット特開2007−269805号公報特開2007−269806号公報特開2007−291117号公報特開平6−145044号公報特表2001−508423号公報 上述したように、口腔内などにおける乾燥粘膜の症状を緩和する薬剤は既に開発されている。しかし、高齢化が進む中で口腔内乾燥の問題はさらに顕著なものとなっており、より優れた保湿性が求められていた。また、口腔内の乾燥を抑制するための製剤には、口腔内に満遍なく塗り広げられることが求められる一方で、塗布後には塗布部において確実に作用効果を発揮するために垂れ難い必要がある。 そこで本発明は、口腔内に塗布されることにより口腔内の乾燥を顕著に抑制できるという高い保湿性を有する上に、延展性に優れ塗り広げやすい一方で、適度な粘度を有しており塗布後には垂れ難いという互いに相反する特性を有する口腔保湿剤を提供することを目的とする。 本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、トリメチルグリシンとポリアクリル酸塩とキサンタンガムとを併用して配合すれば、上記の優れた特性を示す口腔保湿剤が得られることを見出して、本発明を完成した。 本発明に係る口腔保湿剤は、トリメチルグリシン、ポリアクリル酸塩およびキサンタンガムを含むことを特徴とする。 本発明製剤におけるトリメチルグリシンの含有量としては、5.0質量%以上、15質量%以下が好適である。当該割合が5.0質量%以上であれば、優れた保湿効果がより確実に発揮される。一方、当該割合が大き過ぎてもトリメチルグリシンの保湿効果は頭打ちになり、また、製剤の苦味が表われてくる場合があり得るので、当該割合としては15質量%以下が好ましい。 本発明の口腔保湿剤としては、キサンタンガムに対するポリアクリル酸塩の質量比が1.0超、5.0以下であるものが好適である。ポリアクリル酸塩は、製剤の粘度を高めて塗布後の垂れを抑制するのみでなく、トリメチルグリシンとの組合せにより保湿性を顕著に向上させる作用効果を有する。かかる効果をより効果的に発揮せしめるためには、キサンタンガムに対するポリアクリル酸塩の質量比を1.0超にすることが好ましい。一方、当該質量比が大き過ぎると、製剤の粘度が高くなり過ぎてキサンタンガムによるチキソトロピー性の向上効果が十分に発揮されなくなるおそれがあり得るので、当該質量比は5.0以下が好ましい。 本発明製剤におけるポリアクリル酸塩とキサンタンガムとの合計の含有量としては、0.8質量%以上、3.0質量%以下が好ましい。当該合計量がこの範囲内であれば、本発明製剤の高い保湿性がより確実に発揮される。 本発明製剤におけるキサンタンガムの含有量としては、0.1質量%以上、1.0質量%以下が好適である。当該割合が0.1質量%以上であれば、ポリアクリル酸塩との組合せによりチキソトロピー性がより確実に高まり、塗布時には容易に塗り広げられる一方で塗布後には垂れ難いという優れた特性が製剤に十分に付与されることになる。それに対して、当該割合が大き過ぎると、製剤が乾燥したときに薄膜が形成されることがあり得るので、当該割合としては1.0質量%以下が好ましい。 本発明製剤におけるポリアクリル酸塩の含有量としては、0.5質量%以上、2.0質量%以下が好適である。ポリアクリル酸塩は、製剤の粘度を適度に高めて塗布後の垂れを抑制すると共に、トリメチルグリシンとの組合せにより保湿性を顕著に高めるという作用効果を示す。当該割合が0.5質量%以上であれば、かかる作用効果がより確実に発揮される。しかし、当該割合が大き過ぎると製剤の粘度が高まり過ぎて塗り広げ難くなるおそれがあり得るので、当該割合としては2.0質量%以下が好ましい。 本発明製剤としては、湿潤剤を含まないか、或いは湿潤剤の含有量が30質量%以上であるものが好ましい。湿潤剤は、塗布部分に潤いを与えると共に保湿作用も発揮するものであるが、本発明製剤の保湿性は主にトリメチルグリシンにより発揮されるものであり、また、液状の湿潤剤は、おそらく口腔内粘膜から水分を奪うことによると考えられるが、製剤の乾燥に連れてシワが発生するなど口腔内粘膜に荒れを生じさせる原因となり得るため、本発明製剤では湿潤剤を含まないことが好ましい。しかし、一般的な液状湿潤剤を30質量%以上配合すると、比較的短時間のみならず、4時間以上といった長時間でも保湿性を飛躍的に高めることができることが、本発明者らの実験的知見により明らかにされている。 本発明に係る口腔内製剤は、口腔内に塗布することにより、その乾燥を効果的に抑制し、且つ保湿することができる。また、本発明製剤は適度な粘度を有しており、口腔内に塗り広げ易い。その一方で、延展性に優れる製剤は単に粘度が低いのが一般的であり、塗布後には特に側面における製剤量が減少し、その部分での乾燥が進んでしまうという欠点があったが、本発明製剤はチキソトロピー性が高く、塗布後には垂れ難い。 よって本発明に係る口腔内製剤は、特に唾液分泌量が少ない高齢者や口を閉じることができない寝たきり患者などの口腔内の乾燥を効果的に抑制できるものとして、非常に有用である。図1は、本発明製剤とその他の製剤について、チキソトロピー性を試験した結果を示すグラフである。図2は、保湿剤としてトリメチルグリシンを含む製剤であって、増粘剤としてポリアクリル酸ナトリウムとキサンタンガムの組合せを含むものと、カルボキシビニルポリマーとキサンタンガムの組合せを含むものの保湿性を試験した結果を示すグラフである。図3は、保湿剤としてトリメチルグリシンを含む製剤であって、増粘剤としてポリアクリル酸ナトリウムとキサンタンガムの組合せを含むものであり、ポリアクリル酸ナトリウムとキサンタンガムの割合を種々変更した製剤の塗布から10分後における保湿性を試験した結果を示すグラフである。図4は、保湿剤としてトリメチルグリシンを含む製剤であって、増粘剤としてポリアクリル酸ナトリウムとキサンタンガムの組合せを含むものであり、ポリアクリル酸ナトリウムとキサンタンガムの割合を種々変更した製剤の塗布から40分後における保湿性を試験した結果を示すグラフである。 本発明に係る口腔保湿剤は、トリメチルグリシン、ポリアクリル酸塩およびキサンタンガムを含むことを特徴とする。 トリメチルグリシンは、グリシンのアミノ基がメチル化されトリメチルアンモニウム基になっている双極性化合物であり、本発明製剤に高い保湿性を付与する上に、口腔粘膜に障害を与え難いものである。 トリメチルグリシンの配合量は、製剤全体に対して5.0質量%以上、15質量%以下が好ましい。当該割合が5.0質量%以上であれば、優れた保湿効果がより確実に発揮される。一方、当該割合が大き過ぎてもトリメチルグリシンの保湿効果は頭打ちになり、また、製剤の苦味が表われてくる場合があり得るので、当該割合としては15質量%以下が好ましい。当該割合としては、6.0質量%以上がより好ましく、10質量%以下がより好ましい。当該割合を10質量%以下とすれば、トリメチルグリシン由来の苦味をより効果的に抑制できる。本発明製剤は口腔内に塗布されるものであるので、味は重要である。 ポリアクリル酸塩はアクリル酸重合体の塩であり、本発明では、製剤の粘度を高めると共に、キサンタンガムとの組合せにより製剤にチキソトロピー性を付与することの他、トリメチルグリシンによる保湿性をより一層高めるために用いる。 ポリアクリル酸塩の種類は特に制限されないが、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウム、ポリアクリル酸カルシウム、ポリアクリル酸マグネシウムなどを挙げることができる。これらの中では、増粘剤として一般的なポリアクリル酸ナトリウムを好適に用いる。 ポリアクリル酸塩の分子量は特に制限されないが、例えば、数平均分子量で10,000以上、200,000以下のものを用いることができる。数平均分子量が10,000以上であれば、製剤の粘度を適度に高めることができる。一方、分子量が大き過ぎると溶媒に溶解し難くなるおそれがあり得るので、分子量としては200,000以下が好ましい。当該数平均分子量としては、20,000以上、150,000以下がより好ましく、30,000以上、100,000以下がさらに好ましい。その分子量分布としては、5,000以上、1,000,000以下が好ましく、10,000以上、500,000以下がより好ましく、20,000以上、200,000以下がさらに好ましい。 ポリアクリル酸塩としては、架橋型のものでも非架橋型のものでも良いが、製剤の粘度をより有効に高められるだけでなく、三次元的な網目構造中に水分子を保持できることから保湿性もより一層向上できるという観点、また、製剤の粘度を高めたときにも糸曳きが少ないという観点より、架橋型のポリアクリル酸の塩がより好適である。 架橋型ポリアクリル酸としては、例えば、ポリアクリル酸のカルボキシル基をC1-6アルキレンジオールや、一般的なジエポキシ架橋剤により分子間架橋したものを挙げることができる。C1-6アルキレンジオールとしては、好ましくはエチレングリコールまたはプロピレングリコールを用いる。また、ジエポキシ架橋剤としては、エチレングリコールジグリシジルエーテルやジエチレングリコールジグリシジルエーテルなどの直鎖状脂肪族ジグリシジルエーテル;2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンジグリシジルエーテルなどの環状脂肪族ジグリシジルエーテル;ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタンジグリシジルエーテルなどの芳香族ジグリシジルエーテルを挙げることができる。なお、架橋剤を過剰に用いても全てのカルボキシ側鎖が反応するわけではないが、架橋型のポリアクリル酸塩の水溶性を確保するために、架橋度はポリアクリル酸に対する架橋剤の量により調整することが好ましい。 ポリアクリル酸塩の配合量は、製剤全体に対して0.5質量%以上、2.0質量%以下が好ましい。当該割合が0.5質量%以上であれば、製剤の粘度が適度に高まり、また、保湿効果やチキソトロピー性の向上効果がより確実に発揮される。しかし、当該割合が大き過ぎると製剤の粘度が高まり過ぎて塗り広げ難くなるおそれがあり得るので、当該割合としては2.0質量%以下が好ましい。当該割合としては、0.7質量%以上がより好ましく、0.8質量%以上がさらに好ましく、また、1.5質量%以下がより好ましく、1.2質量%以下がさらに好ましい。 キサンタンガムは、グルコース2分子、マンノース2分子、グルクロン酸1分子から構成される繰り返し単位からなる多糖類であり、β−1,4結合により連なったグルコースからなる主鎖に、マンノース2分子の間にグルクロン酸が挟まれている側鎖が結合した構造を有する。キサンタンガムは、特定の細菌を用いた醗酵により得られる。キサンタンガムの分子量は、約200万とも、おそらく会合状態により1300万から5000万ともいわれている。本発明では、特にキサンタンガムの種類は限定されず、市販のものを用いることができる。 キサンタンガムは、ポリアクリル酸塩との組合せにより、増粘剤として作用して製剤に適度な粘度を付与するほか、チキソトロピー性を与えるという作用効果を有する。 キサンタンガムの配合量は、製剤全体に対して0.1質量%以上、1.5質量%以下が好適である。当該割合が0.1質量%以上であれば、ポリアクリル酸塩との組合せによりチキソトロピー性がより確実に高まり、塗布時には容易に塗り広げられる一方で塗布後には垂れ難いという優れた特性が製剤に十分に付与されることになる。それに対して、当該割合が大き過ぎると、製剤が乾燥したときに薄膜が形成されることがあり得るので、当該割合としては1.5質量%以下が好ましい。当該割合としては、0.2質量%以上がより好ましく、0.4質量%以上がさらに好ましく、また、1.2質量%以下がより好ましく、1.0質量%以下がさらに好ましく、0.7質量%以下が特に好ましい。 本発明製剤におけるポリアクリル酸塩とキサンタンガムとの合計の含有量は、製剤の粘度を適度なものにする範囲で適宜調整すればよいが、好適には0.8質量%以上、3.0質量%以下が好ましい。当該合計量がこの範囲内であれば、本発明製剤の高い保湿性がより確実に発揮される。当該値としては、1.0質量%以上がより好ましく、1.2質量%以上がさらに好ましく、また、2.5質量%以下がより好ましく、2.0質量%以下がさらに好ましい。 キサンタンガムとポリアクリル酸塩の相対量として、キサンタンガムに対するポリアクリル酸塩の質量比を1.0超、5.0以下とすることが好ましい。ポリアクリル酸塩は、製剤の粘度を高めて塗布後の垂れを抑制するのみでなく、トリメチルグリシンとの組合せにより保湿性を顕著に向上させる作用効果を有する。かかる効果をより効果的に発揮せしめるためには、キサンタンガムに対するポリアクリル酸塩の質量比を1.0超にすることが好ましい。一方、当該質量比が大き過ぎると、製剤の粘度が高くなり過ぎてキサンタンガムによるチキソトロピー性の向上効果が十分に発揮されなくなるおそれがあり得るので、当該質量比は5.0以下が好ましい。当該比としては、1.2以上がより好ましく、1.5以上がさらに好ましく、また、4.0以下がより好ましく、3.0以下がさらに好ましく、2.5以下が特に好ましい。 本発明に係る口腔保湿剤は、保湿剤成分としてトリメチルグリシンを含み、いわゆる増粘剤としてはポリアクリル酸塩とキサンタンガムとの組合せを含むが、その他、口腔外用剤に一般的な成分を含有していてもよい。 例えば、トリエタノールアミン、クエン酸、リンゴ酸などのpH調整剤;ヒノキチオール、グリチルリチン酸塩、セチルピリジニウム塩などの薬効成分;安息香酸塩、p−オキシ安息香酸エステル、セチルピリジニウム塩、グリシン化合物などの保存料;ショ糖、オリゴ糖、アスパルテーム、サッカリン、トレハロース、キシリトール、エリスリトール、グルコースなどの甘味料;ヒアルロン酸ナトリウム、プロタミン、スイゼンジノリなどその他の保湿剤成分;ウメエキス、ハッカエキス、レモングラスなどの香料を用いることができる。 また、本発明に係る口腔保湿剤は、溶媒として水を含むことが好ましい。水の種類は特に制限されず、蒸留水、精製水、純水、超純水、水道水、井戸水などを用いることができるが、不純物が少なく且つ比較的低コストであることから、蒸留水や精製水を用いることが好ましい。 本発明では、いわゆる湿潤剤を配合しないか、或いは湿潤剤の含有量を30質量%以上とするとよい。ここで湿潤剤とは、比較的低分子量である水混和性の液体であり、製剤の流動性を高め且つ水分の蒸発を防ぐものをいい、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、液状ポリエチレングリコールなどを挙げることができる。このように、湿潤剤は塗布部分に潤いを与えると共に保湿作用も発揮するものではあるが、本発明製剤の保湿性はトリメチルグリシンにより発揮される。特に塗布してから1〜1.5時間程度という比較的短時間内においては、乾燥し易いような条件であっても一般的な湿潤剤は必要無く、トリメチルグリシンのみで十分である。また、一般的な液状の湿潤剤を0質量%超、30質量%未満という低濃度配合する場合、おそらく口腔内粘膜から水分を奪うことによると考えられる保湿性の低下を招く。しかし、逆に一般的な液状湿潤剤を30質量%以上配合すると、比較的短時間のみならず、4時間以上といった長時間でも、保湿性を飛躍的に高めることができる。よって、本発明製剤では湿潤剤を含まないか、その含有量を30質量%以上にするとよい。 また、本発明製剤は、口腔内粘膜に塗布することにより乾燥を防ぐものであるので、歯磨剤のように研磨剤を含まないものとする。 本発明に係る口腔保湿剤の製法は特に制限されず、溶媒である水に各成分を溶解または懸濁すればよい。但し、ポリアクリル酸塩とキサンタンガムを加えると溶液の粘度が上がって攪拌し難くなる場合があることから、先ずポリアクリル酸塩とキサンタンガム以外の成分の水溶液を調製した上でポリアクリル酸塩とキサンタンガムを加え、十分に攪拌することが好ましい。また、ポリアクリル酸塩とキサンタンガムの添加によって製剤のpHが変化するので、pH調整剤を添加する場合には最後に添加してpHを調整することが好ましい。 本発明に係る口腔保湿剤は、口腔内に塗布することにより、口腔内の乾燥を効果的に抑制することができる。その塗布量は、被塗布者の年齢や症状などに応じて適宜調整すればよいが、例えば、1回当たり10mg/cm2以上、50mg/cm2以下程度を、2時間以上、12時間以下程度の間隔で、口腔内に満遍なく塗布すればよい。 本発明に係る口腔保湿剤は、優れた保湿効果を示す他、チキソトロピー性が高いため、塗布時には塗り広げやすい一方で塗布後は垂れ難い。よって本発明に係る口腔保湿剤は、例えば塗り広げやすいが垂れやすい低粘度製剤のように、垂れにより製剤の偏在が生じ、部分的に塗布間隔を減ずる必要がなく、利便性の高い製剤であるといえる。 以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。 なお、特に断りが無い限り、「%」は質量%を示す。 実施例1〜6 本発明製剤の製造 トリメチルグリシンを8.0%、架橋型ポリアクリル酸ナトリウム(東亞合成化学社製,製品名「レオジック(登録商標)260H」,分子量分布:30000〜100000,架橋度:1.0%)を1.0%または1.5%、キサンタンガム(三晶社製,製品名「ケルトロール(登録商標)CG−T」,平均分子量:2,000,000(カタログ値))を0.5%、1.0%または1.5%、およびその他の成分を表1のとおり含む製剤を調製した。より詳しくは、ポリアクリル酸塩、キサンタンガムおよびクエン酸以外の成分を、60〜80℃に加温した精製水または蒸留水へ投入して攪拌することで完全に溶解した。得られた溶液に、ポリアクリル酸塩とキサンタンガムを投入して攪拌した。均一な溶液が得られた後、そのpHを確認しながらクエン酸を少量ずつ投入していき、溶液を中性にした。 なお、以下の表や図では、ポリアクリル酸ナトリウムを「PAA」と、カルボキシビニルポリマーを「CVP」と、アルギン酸ナトリウムを「AA」と、セチルピリジニウム塩酸塩を「CPC」と略記する。 比較例1〜14 上記実施例1〜6において、ポリアクリル酸ナトリウムの代わりにカルボキシビニルポリマーまたはアルギン酸ナトリウムを用いるか、或いはキサンタンガムを配合しない製剤を、表2に示す処方に従って、同様に調製した。 試験例1 チキソトロピーインデックスの測定 口腔内製剤としては、塗り広げやすい一方で、塗布後には垂れ難いという特性を有することが好ましい。ここで、剪断力を受けると粘度が低下し、静止すると粘度が上昇するというチキソトロピーという性質がある。即ち、チキソトロピー性を示す口腔内製剤であれば、塗布時には粘度が低下して塗り広げやすく、且つ塗布後には粘度が上昇して垂れ難いといえる。そこで、各製剤について、JIS K6833−1(2008)に従って、異なる剪断速度(回転速度)における見掛け粘度を測定し、その比(チキソトロピーインデックス)を算出することによりチキソトロピー性を評価した。 具体的には、粘弾性測定装置(栄弘産業社製,製品名「RS600」)のプレートローターの温度を37℃に、プレート−ローター間ギャップを52μmに設定した。プレート上に各サンプル(約1g)を載せ、さじで軽く均した後、ローターで挟んだ。ローターを回転数2.5S-1または25.0S-1で30秒間回転させた際における粘弾性を測定した。測定結果を専用のソフトで解析し、両測定値の比を算出した。結果を表3と図1に示す。 表3と図1に示す結果のとおり、増粘剤としてアルギン酸ナトリウムを配合した場合には、チキソトロピーインデックスの値が小さい、即ち、剪断力が大きい場合と小さい場合における粘度の比が小さい。よって、塗布後に垂れ難いが塗り広げ難いか、或いは塗り広げやすいが塗布後に垂れやすいと考えられる。また、増粘剤としてキサンタンガムを配合しない場合、同じくチキソトロピー性が十分でない場合があった。 一方、増粘剤としてキサンタンガムと共にカルボキシビニルポリマーまたはポリアクリル酸ナトリウムを含む製剤は、チキソトロピー性に優れることから、塗布時には塗り広げやすいにもかかわらず、塗布後には垂れ難いという優れた特性を有するものであることが実証された。 なお、カルボキシビニルポリマー(CVP)とポリアクリル酸ナトリウム(PAA)の濃度が異なっているのは、キサンタンガムと組合わせた場合にカルボキシビニルポリマーの方がより低濃度で製剤硬さが上昇するので、カルボキシビニルポリマーとキサンタンガムとの混合物とポリアクリル酸ナトリウムとキサンタンガムとの混合物で、硬さの基準となる貯蔵弾性率を測定した上で、各製剤の硬さをおおよそ合わせた結果である。即ち、カルボキシビニルポリマーを0.3%含む製剤の結果はポリアクリル酸ナトリウムを1.0%含む製剤と、カルボキシビニルポリマーを0.5%含む製剤の結果はポリアクリル酸ナトリウムを1.5%含む製剤と、比較することができる。 試験例2 保湿性試験1 本発明製剤の保湿性を評価するために、上記実施例1と同様の方法により、表4に示す配合で、ポリアクリル酸ナトリウム(PAA)とキサンタンガム(XAN)を含む製剤、およびカルボキシビニルポリマー(CVP)とキサンタンガム(XAN)を含む製剤を調製した。 次に、上記各製剤の保湿性を試験した。具体的には、恒温恒湿室(タバイエスペック社製,TBE−3HM2GEF)を30℃,30%RHに設定した後、室内にトレーを並べ、その上にブタ舌を置いた。10分間後、ブタ舌上に各製剤を0.5g塗布した。塗布後、10分間おきに、水分計(LIFE社製,モイスチャーチェッカームーカス)を用いて水分の測定を行った。水分の測定は、ブタ舌をトレーごと量りの上に置き、量りの指示値が200±20gとなるように水分計を舌表面に対して平行に押し付けた際の指示値を読み取ることにより行った。なお、水分計の説明書によれば、指示値と状態との関係は以下のとおりである。 30以上 − 正常 29以上、30未満 − 境界 27以上、29未満 − やや乾燥 25以上、27未満 − 中程度の乾燥 25未満 − 高度に乾燥 結果を図2に示す。図2のとおり、カルボキシビニルポリマー(CVP)とキサンタンガム(XAN)との組合せの製剤に比べ、ポリアクリル酸ナトリウム(PAA)とキサンタンガム(XAN)との組合せの製剤の方が、押し並べて保湿性は高いとの結果が得られた。また、上記試験例1のとおり、製剤の硬さの点ではカルボキシビニルポリマーを0.5%含む製剤はポリアクリル酸ナトリウムを1.5%含む製剤と同等であり、当該試験で用いたポリアクリル酸ナトリウム(PAA)とキサンタンガム(XAN)との組合せの製剤におけるポリアクリル酸ナトリウムの割合はそれよりも低いにも関わらずカルボキシビニルポリマー(CVP)とキサンタンガム(XAN)との組合せの製剤よりも良好な保湿性を示している。 従って、保湿剤としてトリメチルグリシンを含む製剤の保湿性の点では、ポリアクリル酸ナトリウム(PAA)とキサンタンガム(XAN)との組合せが非常に有用であることが明らかとなった。 試験例3 保湿性試験2 保湿剤としてトリメチルグリシンを含む口腔保湿剤におけるポリアクリル酸ナトリウム(PAA)とキサンタンガム(XAN)の割合と保湿性を試験するために、表5に示す配合で、上記実施例1と同様の方法により製剤を調製した。なお、表中の値は質量%を示す。 上記各製剤について、上記試験例2と同様の条件で保湿性を試験した。各製剤の塗布から10分後の結果を図3に、40分後の結果を図4に示す。 図3〜4のとおり、製剤の塗布から10分後では各製剤間で保湿性に差は見られず、且つ40分後においても指示値はおおよそ25以上を維持していた。このように、本発明に係る口腔保湿剤は、極めて優れた保湿性を有することが示された。 試験例4 保湿性試験3 さらに、本発明製剤の重要な成分であるポリアクリル酸ナトリウムとキサンタンガムに関する検討を進めた。具体的には、まず、表6に示す配合で上記実施例1と同様の方法により製剤を調製した。なお、表中の各成分の値は質量%を示す。 上記で得られた製剤と、上記試験例3で試験した製剤の一部につき、上記試験例2と同様の条件で、各製剤の塗布から40分後の保湿性を測定した。結果を表7に示す。 上記結果のとおり、ポリアクリル酸塩とキサンタンガムとの合計の含有量が製剤全体に対して0.8質量%以上であり、また、キサンタンガムに対するポリアクリル酸塩の質量比が、1.0超である場合には、塗布から40分後においても指示値が25を超えるような高い保湿性が得られることが明らかとなった。 試験例5 保湿性試験4 表8に示す配合で、上記実施例1と同様の方法により製剤を調製した。 上記で得られた製剤につき、上記試験例2と同様の条件で、各製剤の塗布から10分後および40分後の保湿性を測定した。結果を表9に示す。 以上に示す試験例1〜5の結果により、トリメチルグリシンとポリアクリル酸塩とキサンタンガムとを含む本発明製剤は、薬効成分の別によらず保湿性に優れる上に、塗布する際の延展性と塗布後における適度な粘度を有することが実験的に証明された。 試験例6 保湿性試験5 表10に示すとおり、上記実施例1と同様の方法により、上記製剤Jにおいてトリメチルグリシンの濃度を4.0質量%から20.0質量%まで変更した配合で製剤を調製した。 上記で得られた製剤につき、上記試験例2と同様の条件で、各製剤の塗布から10分後、40分後および80分後の保湿性を測定した。結果を表11に示す。 上記結果のとおり、トリメチルグリシンの濃度としては8.0質量%が最適であることが明らかとなった。 試験例7 保湿性試験6 表12に示すとおり、上記実施例1と同様の方法により、上記製剤Jにおいてトリメチルグリシンの濃度を固定し、5.0質量%から30.0質量%の範囲でグリセリンを配合した製剤を調製した。 上記で得られた製剤につき、上記試験例2と同様の条件で、各製剤の塗布から10分後、40分後、80分後および120分後の保湿性を測定した。なお、製剤Jについては、改めて測定を行った。結果を表13に示す。 上記結果のとおり、120分経過時点では、一般的な液状湿潤剤であるグリセリンを比較的高濃度で、具体的には30.0質量%まで配合した方が保湿作用はかえって高まることが明らかとなった。 トリメチルグリシン、ポリアクリル酸塩およびキサンタンガムを含むことを特徴とする口腔保湿剤。 トリメチルグリシンの含有量が製剤全体に対して5.0質量%以上、15質量%以下である請求項1に記載の口腔保湿剤。 キサンタンガムに対するポリアクリル酸塩の質量比が、1.0超、5.0以下である請求項1または2に記載の口腔保湿剤。 ポリアクリル酸塩とキサンタンガムとの合計の含有量が製剤全体に対して0.8質量%以上、3.0質量%以下である請求項1〜3のいずれかに記載の口腔保湿剤。 キサンタンガムの含有量が製剤全体に対して0.1質量%以上、1.0質量%以下である請求項1〜4のいずれかに記載の口腔保湿剤。 ポリアクリル酸塩の含有量が製剤全体に対して0.5質量%以上、2.0質量%以下である請求項1〜5のいずれかに記載の口腔保湿剤。 湿潤剤を含まないか、或いは湿潤剤の含有量が30質量%以上である請求項1〜6のいずれかに記載の口腔保湿剤。 【課題】本発明は、口腔内に塗布されることにより口腔内の乾燥を顕著に抑制できるという高い保湿性を有する上に、延展性に優れ塗り広げやすい一方で、適度な粘度を有しており塗布後には垂れ難いという互いに相反する特性を有する口腔保湿剤を提供することを目的とする。【解決手段】本発明に係る口腔保湿剤は、トリメチルグリシン、ポリアクリル酸塩およびキサンタンガムを含むことを特徴とする。【選択図】なし


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