タイトル: | 公開特許公報(A)_癌治療剤 |
出願番号: | 2012110389 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | A61K 48/00,A61K 38/43,A61K 38/55,A61K 31/713,A61P 35/00,A61K 35/76,A61P 43/00,C12N 7/00,C12N 9/00 |
ロー・フェン 高良 毅 廣田 毅 JP 2013237623 公開特許公報(A) 20131128 2012110389 20120514 癌治療剤 アドホック ホールディングス プライベート リミテッド 513144648 ロー・フェン 高良 毅 廣田 毅 A61K 48/00 20060101AFI20131101BHJP A61K 38/43 20060101ALI20131101BHJP A61K 38/55 20060101ALI20131101BHJP A61K 31/713 20060101ALI20131101BHJP A61P 35/00 20060101ALI20131101BHJP A61K 35/76 20060101ALI20131101BHJP A61P 43/00 20060101ALI20131101BHJP C12N 7/00 20060101ALN20131101BHJP C12N 9/00 20060101ALN20131101BHJP JPA61K48/00A61K37/48A61K37/64A61K31/713A61P35/00A61K35/76A61P43/00 121C12N7/00C12N9/00 4 1 OL 8 4B050 4B065 4C084 4C086 4C087 4B050CC07 4B050DD11 4B050LL01 4B065AA95X 4B065AA95Y 4B065CA27 4B065CA44 4C084AA02 4C084AA03 4C084AA13 4C084BA44 4C084DC01 4C084DC32 4C084MA02 4C084MA66 4C084NA05 4C084ZB26 4C084ZC75 4C086AA01 4C086AA02 4C086EA16 4C086MA03 4C086MA04 4C086MA66 4C086NA05 4C086ZB26 4C086ZC75 4C087AA01 4C087AA02 4C087BC83 4C087CA12 4C087MA02 4C087MA66 4C087NA05 4C087ZB26 4C087ZC75 本発明は、癌の遺伝子治療に用いられる薬剤に関する。 わが国においては、年間約70万人が癌と診断されている。癌で死亡する人の割合は、男性では6人に1人、女性では9人に1人であり、年間約34万人が癌で死亡している。また、2人に1人の割合で治療後に癌が再発し、癌の中でもすい臓癌、胆管癌、肺癌、食道癌等は、保険医療による治療成績が極めて悪いとされている。 他方、癌細胞の増殖には、タンパク質の一種であるCDC6が必要であることが知られている。CDC6は、細胞周期の調節因子の一つであり、自己増殖シグナルを発し、腫瘍抑制因子を不活性化する機能を有する。CDC6は、正常な細胞内においては細胞周期中のG1期に一度だけ合成されるが、癌細胞内においては非常に豊富であり、細胞周期中の全ての期間に存在している。したがって、このような性質を有するCDC6を何らかの手段でノックダウンすれば、癌細胞の増殖を停止させ、癌細胞の老化や自殺を誘発することが可能になると考えられる。 CDC6をノックダウンするための技術としては、RNA干渉技術が知られている。具体的には、CDC6 shRNAの導入によってCDC6をノックダウンし、ヒト乳癌細胞の老化を誘発する技術が従来技術として知られている。Luo Feng; Jerry R. Barnhart; Lingtao Wu; Greg Shackleford; Sheng-he Huang & Ambrose Jong (2011). CDC6 Knockdown Renders p16INK4a Re-Activation, Leading to Senescence Human Breast Carcinoma Cells. Fundamental Aspects of DNA Replication, pp. 107-118 しかしながら、上記従来技術による癌の治療効果は、必ずしも十分なものではなかった。そこで、本発明は、複数の導入遺伝子の相乗効果によって癌細胞の増殖を効率的に抑制し、高い治療効果を有する癌治療剤を提供することを課題とする。 本発明が提供する癌治療剤は、具体的には、次のような癌治療剤である。 第1発明では、癌細胞の増殖を抑制するために用いられる物質として、CDC6 shRNA、PTEN、及びp16INK4aを有効成分として含む癌治療剤を提供する。 第2発明では、第1発明を基本として、有効成分が、HIV-1由来のレンチウイルスをベクターとして導入されることを特徴とする癌治療剤を提供する。 第3発明では、第1発明又は第2発明のいずれか一を基本として、内部プロモーターとして、ヒト・テロメラーゼ逆転写酵素をさらに有する癌治療剤を提供する。 第4発明では、第1発明ないし第3発明のいずれか一を基本として、癌治療剤を、癌患者の癌腫を3次元的にその場観察しながらその癌腫に注入することで発がんプロセスを低減させる癌治療方法を提供する。 本発明によれば、癌細胞の増殖を効率的に抑制し、進行した癌に対しても顕著な治療効果を有する癌治療剤を提供できる。 以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるべきものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得る。≪実施形態≫<実施形態:概要> 本実施形態は、癌細胞の増殖を抑制するために用いられる物質として、CDC6 shRNA、PTEN、及びp16INK4aを有効成分として含む癌治療剤に関する。これらの有効成分を体内へ導入するに当たっては、HIV-1由来のレンチウイルスがベクターとして用いられ、レンチウイルスには更に、ヒト・テロメラーゼ逆転写酵素が内部プロモーターとして組み込まれている。 図1を参照する。図1は、本実施形態の癌治療剤による癌細胞の増殖抑制作用を示す概念図である。図1に示すように、本実施形態の癌治療剤においては、レンチウイルスによって導入されるCDC6 shRNA、PTEN、及びp16INK4aがヒト・テロメラーゼ逆転写酵素によって癌細胞内で発現し、癌細胞の増殖を抑制することとなる。<実施形態:構成> 本実施形態における癌治療剤には、有効成分として、CDC6 shRNA、PTEN、及びp16INK4aが含まれている。 「CDC6 shRNA」とは、ショートヘアピンRNAの一種であり、CDC6の合成に関わるメッセンジャーRNAを破壊することによって細胞中のCDC6をノックダウンする機能を有する。具体的には、後に詳述するHIV-1由来のレンチウイルスからエンベロープ遺伝子を除去してウイルスを不活性化させた上で、CDC6 shRNAのオリゴヌクレオチド配列を挿入することによって遺伝子組み換えレンチウイルス・ベクターを生成し、このベクターによって、CDC6 shRNAが細胞内へ導入される。 図2を参照する。図2は、CDC6 shRNAのCDC6発現抑制作用を示す図である。図2には、ヒト神経芽細胞腫由来のLA-N-2細胞、ヒト乳癌由来のMCF7細胞、ヒト神経芽細胞腫由来のCHLA255細胞を、それぞれCDC6 shRNAレンチウイルス(THTD6Ai)、又は遺伝子を組み替えたコントロールウイルス(THTP)に比率1で感染させた場合における、感染から48時間後のCDC6検出結果が示されている。 図2に示すように、感染していない細胞(Mock)及びTHTPに感染した細胞においてはCDC6量の減少が見られないのに対して、THTD6Aiに感染した細胞においてはCDC6量が大幅に減少している。したがって、CDC6 shRNAがヒトの癌細胞内に内在するCDC6をノックダウンする効果を有することが確認された。 次に、図3を参照する。図3は、CDC6 ノックダウンによる細胞周期進行阻害作用を示す図である。図3に示すように、THTD6Aiに感染した細胞においては、感染していない細胞及びTHTPに感染した細胞と比較して、sub-G1期の細胞数の割合が増加し、S期の細胞数の割合が減少している。したがって、CDC6ノックダウンによって、G1期からS期への細胞周期進行が阻害され、癌細胞のアポトーシスが誘発されることが確認された。 「PTEN」とは、酵素の一種であり、タンパク質を脱リン酸化する機能を有する。PTENは、具体的には、pRbの脱リン酸化の触媒として働く。pRbとは、タンパク質の一種であり、細胞増殖を促進させるタンパク質であるE2F/DP-1複合体の働きを抑制する機能を有する。 図4を参照する。図4は、正常な細胞におけるpRbの役割を示す概念図である。図4に示すように、正常な細胞においては、pRbが、細胞増殖を促進させるE2F/DP-1複合体の作用を抑制している。これによって、細胞のG1/S期移行が停止し、細胞が無限に増殖することのないよう調整されている。 次に、図5を参照する。図5は、細胞の癌細胞化を示す概念図である。外界からの刺激等によって、細胞増殖の開始命令が発せられると、CDK4/サイクリンDによってpRbがリン酸化修飾され、立体構造が変化してE2F/DP-1複合体から引き離される。その結果、pRbによる抑制が解かれることによって、細胞増殖に必要な遺伝子が発現誘導を受けて大量に発現し、G1/S期移行が促進される。 本実施形態における癌治療剤は、PTENをpRbの脱リン酸化の触媒として利用することによって、pRbがその本来の機能によってE2F/DP-1複合体の作用を抑制することを可能とする。これによって、細胞のG1/S期移行が停止し、癌細胞の無限増殖が抑制されることとなる。 「p16INK4a」とは、タンパク質の一種であり、サイクリン依存性キナーゼであるCDK4の働きを阻害する機能を有する。 ここで、図6を参照する。図6は、p16INK4aによる細胞増殖抑制作用を示す概念図である。図6に示すように、p16INK4aは、サイクリンDと競合する形でCDK4と結合することによってCDK4のキナーゼ活性を失活させる。これによって、CDK4がpRbをリン酸化することが出来なくなる結果、pRbがE2F/DP-1複合体に阻害的に結合したままとなり、E2Fの標的遺伝子であるS期開始制御遺伝子群が転写誘導を受けられなくなる。そのため、細胞のG1/S期移行が停止し、細胞の増殖が抑制される。 本実施形態における癌治療剤に含まれる有効成分を体内へ導入するに当たっては、遺伝子組み換えレンチウイルスがベクターとして用いられる。遺伝子組み換えレンチウイルスとしては、HIV-1由来のものが望ましい。なぜなら、人間の細胞に効率良く感染し、かつ、宿主のDNAに組み込まれることによって導入遺伝子を長期的かつ安定的に発現させることができるためである。レンチウイルスを用いた精巧なRNA干渉と、ウイルス性タンパク質の生成及び成長によって、目標の細胞の生命活動が深刻に阻害されることとなる。 本実施形態における癌治療剤のレンチウイルスには更に、ヒト・テロメラーゼ逆転写酵素が内部プロモーターとして組み込まれている。ヒト・テロメラーゼ逆転写酵素は、増殖速度の速い悪性の癌細胞においてのみ導入遺伝子を発現させることを特徴とする。これによって、正常な細胞を損傷することなく、レンチウイルスによって導入された遺伝子を癌細胞においてのみ発現させることが可能となる。<実施形態:効果> 本実施形態における癌治療剤は、それぞれ単独で細胞増殖抑制効果を有するCDC6 shRNA、PTEN、及びp16INK4aをいずれも有効成分として含むことから、各有効成分を個別に投与する場合と比較して、癌細胞の増殖をはるかに効率的に抑制することを可能とする。<<製造方法>> 本発明の癌治療剤は、具体的には、以下のような方法によって製造される。<細胞株> レンチウイルスを産生するための細胞株として、ヒト胎児由来の293T腎臓細胞が用いられる。この細胞は、1倍のダルベッコ変法イーグル培地に、10%のウシ胎児血清と、50I.U./mlのペニシリンと、50μg/mlのストレプトマイシンを補った条件において培養される。<細胞膜> レンチウイルスは、水疱性口内炎ウイルスのエンベロープ糖タンパク質であるVSV/Gを細胞膜として有する。<加工方法> 細胞株を利用して産生されたレンチウイルスは、培地のクリアランス、限界ろ過、バッファー置換、ウイルス濃度測定(分画分子量10万)(25倍濃縮)、マトリックスメタロプロテアーゼ、及びろ過の工程を経る。このようにして得られた核酸活性タンパク複合体のタンパク質濃度は14.855072mg/mlであり、ウイルス力価は3×10の7乗i.u./mlである。<<投与方法>> 本発明の癌治療剤の投与方法としては、注射による投与が望ましい。注射に当たっては、注射30分前にチューブを保管場所から取り出して解凍し、注射前の5分間、チューブを37度の湯煎で暖める。濃度70%のエタノールでチューブを洗浄した後拭き取り、注射を行う。注射経路としては、最良の治療結果を得るために、癌中心部の内部に対して注射されることが望ましい。 より具体的には、1倍のPBS溶液又は濃度0.9%の塩化ナトリウムを5mlから10ml程度用いて希釈された合計1mlの薬剤を、週に一度又は二度、腫瘍の中心部に対して直接注射する、といった具合である。薬剤の注射は、少なくとも3週間は継続して行われることが望ましい。<<治療例>> 以下に、本発明の癌治療剤を用いた癌治療の一例について述べる。<症例> 患者は、56歳の男性であり、結腸直腸癌の手術後に癌が再発し、多発性肺転移、胸膜播種性転移、及び骨転移を示していた。他の病院で免疫療法を受けたが、効果は見られなかった。治療開始時における余命は、4週間程度と予測されていた。<結果> CTガイド下で、患者の腫瘍と胸内部に対して、本発明の癌治療剤を直接注射したところ、4回の治療後に、胸水が減少した。また、疼痛や呼吸困難等の症状も消滅し、患者の容態は改善に向かった。実施形態の癌治療剤による癌細胞の増殖抑制作用を示す概念図CDC6 shRNAのCDC6発現抑制作用を示す図CDC6 ノックダウンによる細胞周期進行阻害作用を示す図正常な細胞におけるpRbの役割を示す概念図細胞の癌細胞化を示す概念図p16INK4aによる細胞増殖抑制作用を示す概念図 癌細胞の増殖を抑制するために用いられる物質として、CDC6 shRNA、PTEN、及びp16INK4aを有効成分として含む癌治療剤。 前記有効成分は、HIV-1由来のレンチウイルスをベクターとして導入されることを特徴とする、請求項1に記載の癌治療剤。 内部プロモーターとして、ヒト・テロメラーゼ逆転写酵素をさらに有する請求項1又は2に記載の癌治療剤。 請求項1から3のいずれか一に記載の癌治療剤を、癌患者の癌腫を3次元的にその場観察しながらその癌腫に注入することで発癌プロセスを低減させる癌治療方法。 【課題】複数の導入遺伝子の相乗効果によって癌細胞の増殖を効率的に抑制し、高い治療効果を有する癌治療剤の提供。【解決手段】癌細胞の増殖を抑制するために用いられる物質として、CDC6 shRNA、PTEN、及びp16INK4aを有効成分として含み、これらの有効成分の相乗効果によって、各有効成分を個別に投与する場合と比較して、癌細胞の増殖をはるかに効率的に抑制し、進行した癌に対しても顕著な治療効果を有する癌治療剤。【選択図】図1