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タイトル:特許公報(B2)_撹拌制御による水処理方法
出願番号:2012109041
年次:2015
IPC分類:C02F 1/52,B01D 21/01,G01N 33/18


特許情報キャッシュ

川端 洋之進 新井 忠男 小渕 絵美 JP 5711692 特許公報(B2) 20150313 2012109041 20120511 撹拌制御による水処理方法 株式会社ヤマト 392035972 株式会社トーケミ 591205673 望月 孜郎 100077975 川端 洋之進 新井 忠男 小渕 絵美 20150507 C02F 1/52 20060101AFI20150416BHJP B01D 21/01 20060101ALI20150416BHJP G01N 33/18 20060101ALI20150416BHJP JPC02F1/52 ZB01D21/01 102G01N33/18 A B01D 21/00−21/34 C02F 1/52− 1/56 特開2002−292207(JP,A) 特開昭61−061605(JP,A) 特開2005−103430(JP,A) 3 2013233527 20131121 17 20120913 金 公彦 本発明は、浄水施設などの水処理施設において混和池で凝集剤を用いて水を処理するに際して、混和池の撹拌状態に関する撹拌G値という指標を利用して凝集剤を混和させて凝集沈澱する水処理方法に関する。 上水道の水処理施設などでは、限られた敷地内で原水中の濁質を効果的に水中より除去するために、一般的に凝集剤を利用した水処理を行っている。このような水処理施設では、一般的に、まず原水に凝集剤を加えて撹拌装置を備えた混和池にて凝集剤を急速撹拌によって均一に混和し、次いで緩い撹拌のもとにフロック形成池で凝集剤によるフロックを形成させ、次に沈澱池に静置して形成したフロックを沈殿させて分離して浄水を得ている。 この混和池において原水に凝集剤が注入され、撹拌機により凝集剤と原水中の微粒子とが均一に混和することでまずマイクロフロックが形成される。原水中の微粒子は、通常その表面にマイナス(−)の電気を帯びており、マイナス電気同士で反発しあうため、水中で分散状態を保っている。凝集剤は水中のアルカリ成分と反応してプラス(+)の電気を帯びた金属の水酸化物を生成することで、マイナスに帯電した微粒子と混和して電気的中和が起こり、微粒子相互の反発をなくすことで、微小なマイクロフロックを形成する。このマイクロフロックは、次の工程のフロック形成池で多数のマイクロフロックが相互に集合して大きな集合体であるフロックを形成する。このような大きなフロックが形成されることで、次の工程の沈澱池においてフロックが効率よく沈澱し、水から分離されるため、汚濁水の効率の良い清澄化が可能となる。 特に、昨今の原水水質の悪化に伴い、指標E260を代表とする溶解性有機物成分の除去も浄水施設での処理対象とする必要性が生じており、より高度の水処理のために凝集効果をより一層高めることが求められている。 水処理施設での目標の達成のために、従来から凝集剤として硫酸アルミニウムなどが用いられてきた。硫酸アルミニウムは、凝集剤の溶液となってもその粘性などに問題はなく、その混和操作も単純なものであった。例えば、原水の流下箇所に凝集剤を直接接触させて混合を行う操作や、凝集剤と原水との会合水をポンプ圧で板面に衝突させて混和を促進したりする単純な混和操作もあるが、通常は混和池に凝集剤を注入しながら画一的な撹拌操作を行い、単純に凝集剤を水中へ均一に分散させるという方法が採用されてきている。 しかし、近年になって水中の溶解性有機物成分の除去などのより高度の水処理の要請に伴って、凝集剤としてもより凝集効果の高い凝集剤、例えば鉄系高分子系凝集剤、アルミニウム系高分子系凝集剤などが開発されてきている。このような凝集効果の高い凝集剤では、原水が最初に凝集剤と接触する際の接触状況によって凝集作用に関連する化学反応も画一的でなくなり、凝集剤と原水との初期混和の状態が凝集作用に大きな影響を及ぼすことがわかってきた。しかしながら、一般的な浄水設備では、このような凝集剤と原水との初期混和の状態については特別な考慮はされておらず、このような目的のために従来の設備の仕様の変更などもなされていないのが現状である。 冬期の浄水施設では、原水の濁度が低い場合であっても、処理された浄水の水質が悪化したり、短時間の運転でろ過池が閉塞するという問題があった。これは水の温度の低下によって水の動粘性係数が増加するため、混和池での撹拌が不足し、凝集剤による電気的中和が十分に行われず、良好なマイクロフロックが形成されないということが原因である。混和池において良好なマイクロフロックが形成されない場合には、次の工程のフロック形成池においても緩速撹拌によるフロック形成が十分に行われず、フロック形成が不良となる。その結果、沈澱池にてフロックの沈澱と分離除去が効果的に行われないために、浄水の水質悪化が発生したり、短時間の運転でのろ過池の閉塞を引き起こしていた。 このような問題に対応し、安定して良好な品質の浄水を得るためにするために、従来は凝集剤の注入率を増加させたり、ろ過池の逆洗頻度を増加することで沈澱不良対策としてきた。しかし、過剰な凝集剤の注入は、単に薬品コストが増加するというだけでなく、アルミニウム系高分子凝集剤は処理水中のアルミニウムの増加という問題があり、また、ろ過池逆洗頻度の増加をもたらし、浄水処理能力の低下をもたらすという問題があった。 また、平成15年4月の水道水質基準値の改訂によりアルミニウムについて初めての基準値が導入され、水質管理目標値として基準値の2分の1の値が設定されたこともあり、アルミニウム系凝集剤を使用する浄水施設においては、冬期のアルミニウム系高分子凝集剤の過剰注入による凝集不良対策がとりにくくなったという問題もある。 本発明は、以上のような特に冬期に浄水施設等の水処理施設の混和池において低水温時にマイクロフロックの形成が不良となるという問題点を解決し、凝集剤を混和する際の撹拌速度を適切に制御することによって、処理する水の温度が低下した場合であっても、より効率的に濁質を凝集沈澱して除去することのできる水処理方法を提供するものである。 本発明者らは、上記のような課題を解決すべく鋭意検討した結果、水処理施設の混和池での処理する水と凝集剤との初期混和に着目し、この初期混和において撹拌G値を指標とすることによって、上記の目的を達成することができることを見出し本発明を完成した。 即ち、本発明は、以下の内容をその要旨とする発明である。(1)撹拌機を備えた混和池を有する水処理施設において、混和池で原水に凝集剤を添加して初期混和を行うに際し、処理する原水と使用する凝集剤における最適撹拌G値をあらかじめ求めておき、凝集剤の混和を行う際に混和池又はその前段の着水井の原水の温度を測定し、その温度に基づいて算出される当該混和池の撹拌G値を前記最適撹拌G値に一致させるように混和池の撹拌機の撹拌速度を制御することを特徴とする水処理施設における水処理方法。(2)最適撹拌G値が、処理する原水と使用する凝集剤を用いて、当該混和池の操作方法に近似させた状態の模擬試験装置を用いて測定して得たものであることをと特徴とする前記(1)記載の水処理施設における水処理方法。(3)凝集剤が、鉄系凝集剤又はアルミニウム系凝集剤のいずれかであることをと特徴とする前記(1)又は(2)に記載の水処理施設における水処理方法。(4)凝集剤が、ポリシリカ鉄又はポリ塩化アルミニウムのいずれかであることをと特徴とする前記(1)ないし(3)のいずれかに記載の水処理施設における水処理方法。 本発明の方法によれば、例えば、浄水場などの撹拌機を備えた混和池を有する水処理施設において、冬期などに処理する水の温度が低下した場合にも、その混和池での撹拌G値を指標にすることによって混和池の撹拌速度を最適な条件に制御することが可能となる。その結果、原水の水温が低下した場合においても、最適な条件で水処理を行うことができ、水質の悪化を防止することができる。このため水質の悪化を防ぐための凝集剤の過剰な添加を避けることができる。水の温度と動粘性係数の関係を示すグラフである。撹拌G値の計算式における撹拌機の各部位の記号を示す説明図である。実施例でジャーテストに用いた試験装置の模式図である。実施例のジャーテストでサンプルの採取に用いたサイフォン管の模式図である。実施例のジャーテストで得られた原水濁度が2、凝集剤としてPSIを注入した場合の凝集剤注入率に対する上澄水濁度の変化のグラフである。実施例のジャーテストで得られた原水濁度が2、凝集剤としてPACを注入した場合の凝集剤注入率に対する上澄水濁度の変化のグラフである。実施例のジャーテストで得られた原水濁度が5、凝集剤としてPSIを注入した場合の凝集剤注入率に対する上澄水濁度の変化のグラフである。実施例のジャーテストで得られた原水濁度が5、凝集剤としてPACを注入した場合の凝集剤注入率に対する上澄水濁度の変化のグラフである。実施例で連続式水処理試験に用いた試験装置の模式図である。実施例の連続式水処理試験で得られた原水濁度が2、凝集剤としてPSIを注入した場合の上澄水濁度の経時変化を示すグラフである。実施例の連続式水処理試験において、図10の場合の濁度残存率を示すグラフである。実施例の連続式水処理試験において、図10の場合のE260残存率を示すグラフである。実施例の連続式水処理試験で得られた原水濁度が2、凝集剤としてPACを注入した場合の上澄水濁度の経時変化を示すグラフである。実施例の連続式水処理試験において、図13の場合の濁度残存率を示すグラフである。実施例の連続式水処理試験において、図13の場合のE260残存率を示すグラフである。実施例の連続式水処理試験において、図13の場合のアルミニウム残存率を示すグラフである。実施例の連続式水処理試験で得られた原水濁度が5、凝集剤としてPSIを注入した場合の上澄水濁度の経時変化を示すグラフである。実施例の連続式水処理試験において、図17の場合の濁度残存率を示すグラフである。実施例の連続式水処理試験において、図17の場合のE260残存率を示すグラフである。実施例の連続式水処理試験で得られた原水濁度が5、凝集剤としてPACを注入した場合の上澄水濁度の経時変化を示すグラフである。実施例の連続式水処理試験において、図20の場合の濁度残存率を示すグラフである。実施例の連続式水処理試験において、図20の場合のE260残存率を示すグラフである。実施例の連続式水処理試験において、図20の場合のアルミニウム残存率を示すグラフである。 本発明の方法は、まず混和池で原水に凝集剤を混和して濁質をマイクロフロック化させ、次いでフロック形成池でこれらが集合したフロックを形成させ、次に沈澱池で汚濁物質の凝集物を沈澱させ分離するという工程からなる水処理施設に適用される。 この水処理施設の混和池は、撹拌機を備えており、この撹拌機によって原水と注入された凝集剤とを混合する。この際、濁質の良好なマイクロフロックを形成させるためには原水と凝集剤とが良好な状態で接触し、混和されることが重要であり、そのためにこの混和池での撹拌機の撹拌状態をこれにあった状態に制御することが重要である。 本発明の方法は、このような水処理施設において、混和池での「撹拌G値」を指標として、原水の温度低下などの温度変化があった場合にも、撹拌G値をこの原水の場合の最適撹拌G値に一致するように混和池の攪拌機の回転速度を制御することによって、使用する凝集剤のマイクロフロックの形成に最適な撹拌状態を維持することができるものである。 本発明で使用する「撹拌G値」は、次の式(I)によって表わされるものであって、混和池の容量や備えられた撹拌機の形状や撹拌速度、処理水の動粘性係数などによって決定される、個々の混和池の運転状態に固有の数値であって、混和池における撹拌状態、撹拌強度を表す数値である。 ここで、式(I)の諸記号は下記のものを意味する。撹拌機についての記号はそれぞれ図2に示す部分である。 G:撹拌G値 (1/s)CD:抵抗係数 1.5(−)A:撹拌翼面積 (B×L×n) (m2)k:係数 0.85(-)ΦD:撹拌翼直径(m) V:混和池容量(m3)R:撹拌速度(rpm)γ:水の動粘性係数(m2/s) この撹拌G値は、まず混和池の容量(V)とそこに備えられた撹拌機の形状(AやΦD)によって変化するが、これらの数値が一定とした場合であっても、撹拌機の回転数(R)や水の動粘性係数(γ)によって変化する。水の動粘性係数は図2に示すように、水の温度によって大きく変化し、温度が低下するとともに増加する。従って、撹拌G値は混和池の容量や撹拌機の形状が一定であっても、処理する水の温度が変化するとともに変化し、水の温度が低下すると撹拌G値も低下する。 一方、水処理施設などの攪拌機を備えた混和池においては、凝集剤を添加してマイクロフロックを形成させるに際して、最も効果的にマイクロフロックを形成させる「最適撹拌G値」というものが存在する。この最適撹拌G値は、処理する水の水質や添加する凝集剤の注入率、緩和池での滞留時間などが影響する数値であって、例えば、あらかじめジャーテストと呼ばれる模擬試験によって、実際に処理する原水と使用する凝集剤とを用いて決定することができる。 具体的には、この最適撹拌G値は、例えばジャーテストによって次のようにして決定される。まず、実際の浄水場の混和池の槽容量、撹拌翼面積、撹拌速度(回転数)、被処理水の温度などの運転条件を把握しておく。次に、浄化処理すべき実際の浄水場の水(原水)を採取し、これに凝集剤を種々の注入率で添加したものを被処理水として、例えば図3に示すようなジャーテストに用いる模擬試験装置(ジャーテスター)によって、撹拌機の回転数を変化させて凝集処理を行い、得られた被処理水の上澄部分の濁度を測定して、被処理水の水質を評価する。撹拌機の回転数を変えることによって、上記の式(I)によってこのジャーテスターでの撹拌G値が求められるので、この撹拌G値をパラメーターとして凝集剤の注入率に対する被処理水の水質を表す水の濁度の変化のグラフが得られる。この結果から、最も濁度の数値の低下の大きい撹拌G値が試験に供した被処理水での「最適撹拌G値」となる。 ジャーテスターは、一般的に1リットルのビーカーに1リットルの原水を分取して、試験に供する。ジャーテスターの撹拌軸や撹拌翼の面積は1リットル程度の水の撹拌を想定したものであり、回転数は0〜180rpm程度の範囲で変化させることができる。このジャーテストは、浄水場の混和池の撹拌G値をジャーテストで再現するために、当該混和池の操作方法に近似させたものであり、ジャーテスターの撹拌速度を調整することで対応する。まず、このジャーテスターにおいて、浄水場の混和池の滞留時間に対応する長さの時間だけ攪拌機を種々の撹拌速度で急速撹拌を行い、その後フロック形成池の滞留時間に対応する長さの時間だけ緩速撹拌を行い、その後沈澱池の滞留時間に対応する長さの時間だけ静置した後、ビーカー内の上澄水を採取して、その濁度を測定する。 ジャーテスターの撹拌翼は、実際の混和池で使用されているものと同じものが好ましく、2枚翼のピッチドパドルが一般的である。撹拌翼のタイプはピッチドパドル又はピッチドタービンのいずれであっても、また撹拌翼を傾斜させたものであってもよいが、どのタイプのものであっても図2に示すようにして撹拌翼直径(ΦD)、撹拌翼面積(A)を求める。 このようにして処理すべき実際の浄水場の原水とそこで使用する凝集剤の種類に対応した最適撹拌G値が決定される。次に、実際の浄水場の混和池での原水の温度と、混和池の槽容量(V)、混和池に備えられた撹拌翼の面積(B×L×n)、撹拌翼直径(ΦD)、撹拌速度(R)および混和池の原水の温度での水の動粘性係数(γ)を決めることによって、前記式(I)によって実際の運転状態での撹拌G値が求められる。ここで得られた撹拌G値が上述のようにして得た最適撹拌G値に比べて小さい場合には、攪拌機の撹拌速度(回転数)を増加させて、撹拌G値が最適撹拌G値に近づくように運転条件を制御する。このようにして実際の浄水場の混和池において最適撹拌G値の状態で運転することによって、混和池で注入された凝集剤を最適な状態で原水と接触させ、混和させることができ、良好なマイクロフロックを形成させることができる。 冬期になると原水の温度が低くなり、水処理施設の混和池の温度も低下する。前述したように、冬期に混和池の水温の低下とともに、浄水水質が悪化したり、短時間の運転でろ過池が閉塞するという問題があったが、これは混和池で原水と凝集剤の良好な初期混和が達成されないことが原因であった。 本発明は、このような問題に対応して、この混和池において凝集剤を添加して濁質のマイクロフロックを形成させるに際して、上記の最適撹拌G値を指標として、混和池での原水の実際の温度に基づいて算出される撹拌G値をこの最適撹拌G値に一致させるように混和池の撹拌機の撹拌速度を制御するものである。混和池での原水の実際の温度としては、混和池またはその前段に設けられた着水井での原水の温度を測定する。 例えば、冬期などになって混和池の実際の温度が低下した場合に、実際の浄水場の混和池でのその温度での撹拌G値を上記式(I)によって算出し、この値が混和池の最適撹拌G値と一致しない場合には、混和池の攪拌機の撹拌速度を調節することのよって混和池を凝集剤によるマイクロフロックの形成に最適な撹拌状態にすることができる。 本発明の方法では、混和池において濁質のマイクロフロックを形成させるために種々の凝集剤を使用することができる。このための凝集剤としては従来から使用されている種々の凝集剤が使用することができ、例えば、硫酸アルミニウム、塩化第2鉄、ポリ硫酸第二鉄、ポリ塩化アルミニウム、ポリシリカ鉄などの種々の凝集剤を使用することができる。これらの凝集剤のなかでも、特に、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、ポリシリカ鉄(PSI)などの高性能の凝集剤を使用する場合がより効果的である。 本発明の水処理方法は、その原水が水道水などの浄水系の水処理だけでなく、家庭の生活排水、都市下水からの廃水、農業廃水、種々の産業廃水などの種々の廃水を処理する水処理施設においても使用することができる。 混和池における撹拌G値を最適値に制御する本発明の方法によれば、適用する原水の水質が異なる場合であっても、その原水に対する最適撹拌G値を見極めた上で撹拌G値をこの値に近づくように制御することで良好なマイクロフロックを形成できるため、上澄水の濁度、溶解性有機物の指標であるE260、不溶解性アルミニウムやその他マイクロフロック化により除去が期待される水質を評価する項目についてはそれらの値の改善をすることができる。 本発明において水処理施設で使用される凝集剤は、特に、鉄系高分子凝集剤であるポリシリカ鉄(PSI)やアルミニウム系高分子凝集剤であるポリ塩化アルミニウム(PAC)などが好ましい。本発明の方法では、いずれの凝集剤を使用する際も、使用する凝集剤での最適撹拌G値を見極めた上で撹拌G値をこの値に近づくように制御することで良好なマイクロフロックを形成できるため、上澄水の濁度、溶解性有機物の指標であるE260、不溶解性アルミニウムやその他マイクロフロック化により除去が期待される水質を評価する項目についてはそれらの値の改善をすることができる。 また、例えば、模擬試験のための連続処理装置と実際の水処理施設の混和池やフロック形成池の滞留時間や沈澱池の水面積負荷の設計諸元が異なる浄水施設であっても、最適撹拌G値を見極めた上で撹拌G値をこの値に近づくように制御することで良好なマイクロフロックを形成できるため、上澄水の濁度、溶解性有機物の指標であるE260、不溶解性アルミニウムやその他マイクロフロック化により除去が期待される水質を評価する項目についてはそれらの値の改善をすることができる。 なお、処理する水の品質を評価するための、水の濁度、溶解性有機物の指標であるE260、及びアルミニウムについては、以下の方法によって測定したものを用いる。 水の濁度は、光が水中の濁り粒子によって生じる散乱光量を積分球を用いて測定し、それと同時に水中を透過する透過光量を測定し、それらの比率から求める積分球式光電光度法によって求める。即ち、試験水の濁度Dは、散乱光量をIR、透過光量をITとすると、次の式によって求められる。なお、Kは濁度標準液を用いた検量線から決定される比例定数である。 水中の不飽和結合を有する有機物質は紫外部に吸収を示すことから、250〜260nmの波長域における吸光度を測定して、水の有機物汚染の状況や浄水処理過程の水処理性能を評価することができる。分光光度計によって紫外部である260nmの波長域での水の吸光度を測定する。これが「E260」という表記で水中の溶解性有機物の量を示す値として使用される。詳しくは、日本水道協会発行の「上水試験方法 2011年版 II.理化学編」に記載されている。 水中のアルミニウムとその化合物は、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法によって、波長396.152nm、又は309.271nmの発光強度を測定することによって、その濃度を求める。詳しくは、日本水道協会発行の「上水試験方法 2011年版 III.金属類編」に記載されている。 これらの水質評価項目については、前記最適撹拌G値を求めるジャーテストにおいては、水中の溶存状態の濁質を測定する場合と、不溶解性の成分も含めた全体の値を求める場合がある。そのため、溶存状態の成分を評価する場合は、採水した試料を1μmメンブレンフィルターでろ過し、この濾過水について上記の評価をおこなう。 上記の水質評価項目については、次の表1に示すように試験水及び評価項目に応じてろ過の有無を区別する。 濁度は水全体の濁りを評価するためろ過なしとし、E260は溶解性成分を評価するためろ過を実施する。アルミニウムについては、模擬原水は不溶解性アルミニウム及び溶解性アルミニウムのトータルの値を知るためにろ過なしとし、処理水についてはろ過を行う。その理由は、ろ過なしでは上澄水中に残ったフロックの有無により値の変動が大きく評価しにくいこと、一般的に浄水施設や排水処理施設では凝集沈澱処理の後段に砂ろ過処理工程を設けており、1μmメンブレンフィルターでろ過することは、砂ろ過と同等のろ過効果が得られることから、ろ過水のアルミニウムを測定することで、良好なフロック形成による不溶解性アルミニウムの捕捉性を評価することができる。 混和池あるいはその前段の着水井の原水の水温を測定して、その温度に基づいて算出される当該混和池の撹拌G値を最適撹拌G値に一致させるシステムとして、最適撹拌G値を達成するために式(I)を用いて得られる撹拌速度を制御変数として利用することによって、フィードバック制御システムを構築することができる。 フィードバック制御とは、制御変数の目標値からのずれを計算し、ずれがなくなるように操作変数の値を調節する仕組みである。ずれをなくすために、制御変数の計測、目標値と制御変数の比較(偏差の算出)、操作変数の変更の手続きを繰り返し行う方法である。本発明の方法では、式(I)を用いて最適撹拌G値を達成するための撹拌速度を制御変数の目標値とすることで、目標撹拌速度と計測撹拌速度の偏差から操作変数を算出する演算式を汎用シーケンサに内蔵させることができるため、フィードバック制御のために専用の調節計を導入することなく、最適撹拌G値に対応する撹拌速度に向けて撹拌機の撹拌速度を追随させることができるため、撹拌G値制御システムを汎用シーケンサ及び汎用タッチパネルにより構築することで安価な制御システムを提供することができる。 従来より、大雨などの影響で原水の濁度の増加による原水負荷の上昇に対して、処理能力を安定させるために凝集剤の注入量を増加させる操作が一般的な維持管理手法として実施されている。しかし、原水の濁度上昇に対応して凝集剤の注入量を追随させるフィードバック制御は、調節計が高価であることなどから、維持管理者が手動で凝集剤注入量を変更しているのが現状である。これに対して、偏差から操作変数を算出する演算式が内蔵されている汎用シーケンサを用いる本発明の方法によることで、フィードバック制御のために専用の調節計を購入することなく、最適凝集剤注入率にいたる凝集剤の注入量に向けて凝集剤注入ポンプの注入量を追随させることができるため、原水流量や原水濁度に対する凝集剤注入量のフィードバック制御を汎用シーケンサ及び汎用タッチパネルにより構築することで安価な制御システムを提供することができる。(1)模擬試験による最適撹拌G値の決定 まず、水道水にカオリンを加えて所定の濁度に調整した模擬原水を調製した。最適撹拌G値を決定するために、図3に示すような竪型の撹拌機を8個有するジャーテスターを用意して、この模擬原水を用いて撹拌機の撹拌G値をパラメータとしたジャーテストを実施した。 模擬原水を1Lビーカーに1リットル採取し、この模擬原水の入ったビーカーを図3のジャーテスターにそれぞれ設置し、水処理施設の「凝集剤の混和−フロック形成−沈澱分離」の工程に対応するように、「急速撹拌−緩速撹拌−静置」の撹拌条件で回分操作にて浄水処理試験を実施した。撹拌条件は、表2に示すように、混和池撹拌に相当する急速撹拌は撹拌機の回転速度が115rpm、150rpm及び180rpmの3種類とし、フロック形成池に相当する緩速撹拌は40rpmとした。また、撹拌時間は、急速撹拌が3分間、緩速撹拌が10分間、静置時間が10分間とした。このジャーテスターによる模擬試験の撹拌G値を前記式(I)によって求めた。この撹拌G値の値を表2に示す。 模擬原水として濁度2度に調整したものと濁度5度に調整したものの2種類を用いた。また、混和池に相当する急速撹拌の直前に凝集剤をビーカーに注入し、3分間の急速撹拌にかけた。凝集剤としてはポリ塩化アルミニウム(PAC)とポリシリカ鉄(PSI)の2種類の凝集剤を用いた。凝集剤の注入率は、PSIのときに0〜50(mg/L)、PACのときに0〜40(mg/L)の範囲で注入量を種々変えて実施した。 この混和池に相当する急速撹拌工程の評価方法として、ジャーテストの静置工程の10分が経過した後の上澄水の濁度を採用した。上澄水濁度測定用のサンプルは一定の深さから採水する必要があるため、緩速撹拌終了と同時に図4に示すサイフォン管を1Lビーカーに設置し、静置工程の10分が経過した後に、図4に示す所定の深さより採水し、これを用いて濁度を測定した。なお、この模擬試験においては模擬原水の水温は25℃で一定とした。 これらの模擬試験から得られた結果を、模擬原水の濁度2度と濁度5度のものについて撹拌G値をパラメーターとして、それぞれ図5〜図8に示す。 即ち、図5は、水温25℃の模擬原水の濁度2度に対する凝集剤としてPSIを使用した場合の、急速撹拌G値を200、300、400(1/s)をパラメーターとしたPSIの注入率が0〜50(mg/L)に対する上澄水濁度の測定結果である。図6は、同様に、凝集剤としてPACを使用した場合のPACの注入率が0〜40(mg/L)に対する上澄水濁度の測定結果である。また、図7と図8は、模擬原水の濁度5度に対するそれぞれ凝集剤としてPSIとPACを使用した場合の上澄水濁度の測定結果である。 これらの試験結果から、凝集剤としてPSIを使用した場合には、模擬原水の濁度が2度と5度のいずれの場合も、撹拌G値が300(1/s)のときに凝集剤注入率が30〜45(mg/L)の低い注入率における上澄水濁度が最も改善しており、同様に凝集剤としてPACを使用した場合には、撹拌G値が300(1/s)のときに凝集剤注入率が15〜25(mg/L)の低い注入率における上澄水濁度が最も改善していることがわかった。従って、この結果から、この模擬原水に対する最適撹拌G値は300(1/s)であることがわかった。(2)連続処理装置による試験 次に、図9に示すような、負荷一定の原水に対して「凝集剤の混和−フロック形成−沈澱分離」からなる浄水処理プロセスに対応した、「冷却池−凝集剤の混和池−フロック形成池−沈澱池」からなる連続式の水処理用模擬試験装置を用いて、低水温原水に対して混和池撹拌機の撹拌速度を速めて撹拌G値を最適値に維持するような水質改善の影響評価を目的とした連続処理実験を行った。 表3には、この連続処理実験に用いた濁度2度及び5度の模擬原水の水質を示す。模擬原水の当初の水温は25℃であった。表4には、原水流量(L/min)と、混和池、フロック形成池、沈澱池それぞれの容量(L)、滞留時間(min)及び備えられた攪拌機の撹拌速度(rpm)を示す。 なお、凝集剤としてPSI、PACのいずれを使用する場合においても、凝集時のpHを弱酸性域(pH6.8程度)に維持して高い凝集効果を発揮したいため、pH調整剤として硫酸又は炭酸ナトリウムを用いて、模擬原水のpHを使用する凝集剤に合わせて所定のpHに調整した。 この連続式の処理装置は、実際の浄水施設に倣ってスケールダウンしたものであり、凝集剤注入率や混和池滞留時間、沈澱池の水面積負荷は一般的な設計諸元に基づく値とした。ただし、フロック形成池の滞留時間は実際の浄水施設の値よりも短くして、PSI及びPACによる処理水質を高めとすることで撹拌G値適用の違いをより明確化させるような設計とした。 混和池の撹拌機の撹拌速度については、前記ジャーテスト結果である模擬原水に対する最適撹拌G値を採用し、混和池の槽容量や撹拌翼面積などの数値を前記式(I)に入力し、この水温に対する最適撹拌G値を維持するために必要な撹拌速度を計算した。その結果、この混和池での最適撹拌G値300(1/s)を維持するために求められる撹拌機の撹拌速度は、水温25℃の場合に150rpmであり、水温5℃では180rpmであった。 次に、図9に示す連続式の模擬試験装置において、模擬原水を原水貯槽に貯留し、原水を原水ポンプで流量一定で冷却池へ移送させた。そして冷却池越流せきより混和池へと流入した時点を連続処理実験の実験開始とし、同時に混和値への凝集剤の注入を開始した。なお、実験開始時、混和池、フロック形成池及び沈澱池は、水道水で満たした状態であった。原水は、混和池にて混和・凝集されてマイクロフロックを形成し、フロック形成池にて緩速撹拌によりフロックが形成される。形成されたフロックは沈澱池にて沈澱分離除去され、上澄水は越流せきより放流された。 原水の温度が低下した場合の本発明の方法の水質改善の影響評価をするため、実験開始と同時に冷却装置にて原水冷却を実施した。表4にその実験条件を示す。 ここで、「G値適用」とは、原水の温度が25℃から5℃へと低下させた場合に、混和池の撹拌速度を150rpmから180rpmに速くして撹拌G値を300(1/s)に維持した条件の場合である。また、「対照系」とは、原水の温度を25℃から5℃まで低下させた場合であっても撹拌速度を150rpmで一定のままとした場合であって、撹拌G値が300から236(1/s)に低下した条件の場合である。 各条件とも4時間の連続処理実験を行い、上澄水の濁度、溶解性有機物の指標である紫外線吸光度(E260)、溶解性アルミニウムの値(Al)を測定し、それぞれの処理方法について水質比較を行った。またフロック形成池の撹拌機の撹拌速度は、各実験条件とも水温変化に関係なく30rpmの一定とした。凝集剤はPSI及びPACを使用し、その注入率はジャーテストで得た注入率PSIで45mg/L及びPAC25mg/Lを採用し、各実験条件とも水温変化に関係なく注入量は一定とした。 以上の模擬原水の連続処理実験での各条件における水質測定結果を図10〜図23に示す。即ち、原水濁度2度、凝集剤がPSIの場合の連続試験による上澄水濁度の経時変化を図10に、この場合の原水に対する処理水の濁度の残存率を図11に、処理水のE260残存率を図12に示す。原水濁度2度、凝集剤がPACの場合の結果を同様に図13〜図16に示す。なお、凝集剤がPACの場合には溶解性アルミニウム残存率を図16に示す。また、原水濁度5度、凝集剤がPSIの場合の結果を同様に図17〜図19に、原水濁度5度、凝集剤がPACの場合の結果を同様に図20〜図23に示す。なお、凝集剤がPACの場合には溶解性アルミニウム残存率を図23に示す。 図中の残存率とは、4時間の連続処理実験において、水温及び濁度が定常となった実験開始後2.5〜4時間の4点のそれぞれの分析値の平均値の原水におけるこれらの値に対する百分率である。 なお、図11では濁度残存度の値が100%を超えているが、これは以下の事情によるものである。上記の連続処理実験においては、上澄水濁度を総じて高くすることで撹拌G値適用の違いをより明確化させるために、フロック形成池滞留時間を実際の浄水施設の値よりも短くしたことが原因である。混和池で「G値適用」により良好なマイクロフロックを形成できても、フロック形成を推進するフロック形成池での平均滞留時間が短いため、フロック形成が不十分な状態で沈澱池に移送されたためと考えられる。従って濁度残存率が100%を超過したのは、この連続処理実験に限ったものであり、実際の浄水施設にPSIを使用する際は、フロック形成池滞留時間は一般的な設計諸元に基づいているため、良好なフロック形成により濁度残存率を低レベルにすることができる。 本発明の方法である「G値適用」の結果を、原水の温度低下に際しても撹拌条件を変更しなかった「対照系」と比較すると、原水の濁度2度、5度のいずれの原水に対しても、PSI及びPACのいずれの凝集剤でも上澄水濁度、溶解性有機物指標であるE260の残存率はいずれも対照系よりG値適用の方が低くなることが分かった。さらに凝集剤としてPAC使用時は溶解性アルミニウム残存率もG値適用の方が低くなった。これらのことから、原水の温度変化に対応して撹拌G値を制御する本発明の方法を適用することによって混和池で良好なマイクロフロックを形成することができ、濁質を効果的に沈澱分離させることができ、優れた水質改善効果を確認することができた。 本発明の方法によって、水処理施設において、冬季の水温低下などによる処理性能の低下による水質の低下を効果的の防止することが可能となり、各種の水処理施設の効率的な運転に有用である。 撹拌機を備えた混和池を有する水処理施設において、混和池で原水に鉄系凝集剤及び/又はアルミニウム系凝集剤から選ばれる無機凝集剤を添加して初期混和を行うに際し、処理する原水と使用する凝集剤における最適撹拌G値をあらかじめ求めておき、凝集剤の混和を行う際に混和池又はその前段の着水井の原水の温度を測定し、その温度に基づいて算出される当該混和池の撹拌G値が前記最適撹拌G値に一致するように、次の式(I) [ ここで、式(I)の諸記号は下記のものを意味する G:撹拌G値 (1/s) CD:抵抗係数 1.5(−) A:撹拌翼面積 (B×L×n) (m2) k:係数 0.85(-) ΦD:撹拌翼直径(m) V:混和池容量(m3) R:撹拌速度(rpm) γ:水の動粘性係数(m2/s) ]によって決定される撹拌速度Rを用いて、混和池の撹拌機の撹拌速度を制御することを特徴とする水処理施設における水処理方法。 最適撹拌G値が、処理する原水と使用する凝集剤を用いて、当該混和池の操作方法に近似させた状態の模擬試験装置を用いて測定して得たものであることをと特徴とする請求項1記載の水処理施設における水処理方法。 前記無機凝集剤が、ポリシリカ鉄又はポリ塩化アルミニウムのいずれかであることをと特徴とする請求項1又は2に記載の水処理施設における水処理方法。


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