タイトル: | 公開特許公報(A)_歯周炎治療薬 |
出願番号: | 2012086327 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | A61K 45/00,A61K 31/4409,A61P 1/02,A61P 43/00,C12N 9/99,C12N 15/09 |
山口 洋子 大島 光宏 JP 2013216589 公開特許公報(A) 20131024 2012086327 20120405 歯周炎治療薬 学校法人日本大学 899000057 特許業務法人 もえぎ特許事務所 110000774 山口 洋子 大島 光宏 A61K 45/00 20060101AFI20130927BHJP A61K 31/4409 20060101ALI20130927BHJP A61P 1/02 20060101ALI20130927BHJP A61P 43/00 20060101ALI20130927BHJP C12N 9/99 20060101ALI20130927BHJP C12N 15/09 20060101ALN20130927BHJP JPA61K45/00A61K31/4409A61P1/02A61P43/00 111C12N9/99C12N15/00 A 3 OL 14 4B024 4C084 4C086 4B024AA01 4B024BA19 4B024CA01 4B024CA04 4B024CA09 4B024CA11 4B024CA20 4B024DA03 4B024DA06 4B024EA04 4B024GA11 4B024HA01 4B024HA11 4C084AA17 4C084MA16 4C084MA27 4C084MA34 4C084MA52 4C084MA57 4C084MA66 4C084NA14 4C084ZA67 4C084ZC20 4C086AA01 4C086AA02 4C086BC17 4C086MA01 4C086MA04 4C086MA16 4C086MA27 4C086MA34 4C086MA52 4C086MA57 4C086MA66 4C086NA14 4C086ZA67 4C086ZC20 本発明は、チロシンキナーゼ阻害剤を有効成分とする歯周炎治療薬に関する。さらに詳しくは、血管内皮細胞増殖因子(Vascular endothelial growth factor;以下、VEGFと示す場合がある)受容体チロシンキナーゼ阻害剤を有効成分とする歯周炎治療薬に関する。 歯周炎は歯周病の一つの症状であり、炎症が歯根膜および歯槽骨まで及んだ状態のものを言う。従来、この歯周炎の治療には、抗生物質をはじめとする抗菌薬や抗炎症薬が主に使用されてきた。しかし、これらの投与はあくまでも対症療法でしかなく、抗菌薬の投与による耐性菌の出現や、胃腸炎等の副作用が生じる問題もあり、長期的に使用できなかった。 歯周炎のうち、若年性歯周炎や急性進行性歯周炎において、強度の血管新生を伴う病変が認められることが確認されており、近年、血管内皮細胞増殖因子/血管透過性因子(VEGF/VPF)に対する抗体を含む製剤を、歯周炎も対象とする歯周病の治療薬として提供することが開示されている(特許文献1)。 また、慢性破壊性成人歯周炎に対しては、主な病原体とされるポルフィロモナス・ジンジバリス等を含む、ポルフィロモナスの種を標的とする分子標的薬剤(TMA)が開示されている(特許文献2)。 しかし、これらの治療薬は、抗体を有効成分とするものや、病原体となる微生物自体を標的とするものであり、副作用の少ない治療薬として、十分に治療に用いることができるとはいえず、より効果的な歯周炎治療薬の提供が望まれていた。 このような歯周炎治療薬のひとつとして、本発明者らは、歯周炎の原因のひとつとされる歯周組織のコラーゲン分解に着目し、コラーゲン分解阻害能を有するホスホジエステラーゼ阻害剤が歯周炎治療剤の有効成分となり得ることを開示している(特許文献3、参照)。 歯周組織のコラーゲン分解は、代謝が変化した歯周組織構成細胞によって起こることを本発明者らは見出しており、本発明において、このような細胞を特異的な標的として作用する、新たな歯周炎治療薬の提供を試みた。特開2002−97157号公報特表2008−505936号公報特開2011−162455号公報 本発明は、副作用の少ない、新たな歯周炎治療薬を提供することを課題とする。 本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、歯周組織のコラーゲン分解を起こす、代謝が変化した歯周組織構成細胞(悪玉線維芽細胞)を用いた生体外歯周炎モデル(コラーゲンゲルを用いた三次元培養法)において、Flt−1(Fms−like tyrosine kinase 1;以下、Flt−1と示す場合がある)が高発現していることを確認した。Flt−1は、チロシンキナーゼ型受容体である血管内皮細胞増殖因子受容体分子のひとつである。 本発明者らは、この生体外歯周炎モデルにおいてVEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤を作用させたところ、コラーゲンゲルの分解が顕著に阻害されたことから、VEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤が、チロシンキナーゼ型受容体を特異的な標的とする歯周炎分子標的治療薬の有効成分となり得ることを見出した。 すなわち、本発明は次の(1)〜(3)の歯周炎治療薬等に関する。(1)チロシンキナーゼ阻害剤を有効成分とする歯周炎治療薬。(2)チロシンキナーゼ阻害剤がVEGF(Vascular endothelial growth factor)受容体チロシンキナーゼ阻害剤である上記(1)に記載の歯周炎治療薬。(3)チロシンキナーゼ阻害剤がN−(4−Chlorophenyl)−2−[(pyridin−4−yl methyl)amino]benzamideである上記(1)または(2)に記載の歯周炎治療薬。 本発明の歯周炎治療薬は、チロシンキナーゼ型受容体を特異的な標的として作用する分子標的治療薬であるため、歯周炎に関わらない正常細胞にはほとんど影響を与えない、副作用の低い薬として利用することが可能である。また、本発明において、有効成分とされるチロシンキナーゼ型受容体阻害剤は、すでに複数の物質が提供されていることから、これらの中から歯周炎の治療において特に有用なものを選択し、より有効な薬を提供することも容易となる。歯周炎治療薬の濃度依存的な効果を示した図である(実施例1)。歯周炎治療薬の濃度依存的な効果(残存コラーゲン量)を示した図である(実施例1)。HE染色により、歯周炎治療薬によるコラーゲン分解阻害の有無や程度を確認した図である(実施例1)。ウイルスの感染効率、ノックダウン効率を示した図である(試験例)。リアルタイムRT−PCRの結果を示した図である(試験例)。Flt-1の発現がノックダウンされた細胞を含むコラーゲンゲルにおける、コラーゲンゲルの収縮の程度を示した図である(試験例)。Flt-1の発現がノックダウンされた細胞を含むコラーゲンゲルにおける、残存コラーゲン量を示した図である(試験例)。HE染色により、Flt-1の発現がノックダウンされた細胞におけるコラーゲン分解能を確認した図である(試験例)。 本発明の「歯周炎治療薬」は、チロシンキナーゼ阻害剤を有効成分とするものであって、歯周炎の予防または治療に有用な薬のことをいう。有効成分であるチロシンキナーゼ阻害剤のみからなるものであってもよく、その他薬学的に許容される他の成分を含むものであってもよい。 本発明の「歯周炎治療薬」の有効成分であるチロシンキナーゼ阻害剤は、歯周炎の予防または治療に利用できるものであればいずれのものでもあっても良いが、特に、歯周組織のコラーゲン分解を起こす、代謝が変化した歯周組織構成細胞(悪玉線維芽細胞)に特異的に作用して、歯周組織におけるコラーゲンの分解を阻害することで、歯周炎の予防または治療に利用できるものであることが好ましい。 このようなチロシンキナーゼ阻害剤として、例えば、VEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤等が挙げられる。本発明の「歯周炎治療薬」の有効成分として用いる受容体チロシンキナーゼ阻害剤としては、例えばVEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤であるN−(4−Chlorophenyl)−2−[(pyridin−4−yl methyl)amino]benzamide等が挙げられる。これはメルク社の製品番号676481(VEGF Receptor Tyrosine Kinase Inhibitor II)等、市販のものであってもよい。 また、これらの化合物の生理学的に許容される塩、例えば塩酸塩も受容体チロシンキナーゼ阻害剤として、本発明の歯周炎治療薬の有効成分に含むことができる。 本発明の「歯周炎治療薬」の対象となる歯周炎としては、慢性歯周炎、侵襲性歯周炎、遺伝疾患に伴う歯周炎等が挙げられる。 本発明の「歯周炎治療薬」は、液状、固形状、半固形状等のどのような形状であっても良く、塗布剤、チューイングガム、歯磨き剤、うがい薬またはシリンジで投与する歯周ポケット内貼薬等として用いることができる。また、内服薬、歯肉や歯根膜への注射剤として用いることもできる。 以下、実施例をあげて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。1.歯周炎治療薬 受容体チロシンキナーゼ阻害剤であるN−(4−Chlorophenyl)−2−[(pyridin−4−yl methyl)amino]benzamideとして、メルク社の製品番号676481(VEGF Receptor Tyrosine Kinase Inhibitor II)をそのまま歯周炎治療薬として用いた。2.コラーゲンゲルの調製1)細胞の調製 歯周外科手術の際に切除され不要となった歯肉片より組織を経て細切後、組織片をプレートの底に静置し、組織片から外生した細胞を第1代として継代培養を行ったヒト歯肉線維芽細胞(GF:Gingival fibroblasts)を、コラーゲン分解能を有する細胞として得た。 本発明においては、このようにして得られたヒト歯肉線維芽細胞をコラーゲンゲルの中に混和し、その上に初代培養ヒト歯肉上皮細胞を播種した三次元培養において、コラーゲン分解能が特に高いことが確認されたヒト歯肉線維芽細胞(悪玉線維芽細胞)であるGF00、GF32−4またはGFA9を用いた。これらは、それぞれ異なる歯肉片を由来とするヒト歯肉線維芽細胞(悪玉線維芽細胞)であった。 次に、歯周外科手術の際に切除され、不要となった歯肉片をDispase処理した後、結合組織部分から剥離した上皮組織を細切後、組織片をプレートの底に静置し、組織片から外生した細胞を第1代として継代培養を行ったヒト歯肉上皮細胞(GE:Gingival epithelial cells)GEe12またはGEA7を、コラーゲン分解能を高める細胞として得た。2)コラーゲンゲルの構築 セルマトリックスtypeI−A(新田ゼラチン)、5×DMEM、再構成用緩衝液(新田ゼラチン)を混合し、コラーゲン混合溶液を作成した。このコラーゲン混合溶液に、上記1.の歯周炎治療薬を0.4μM、2μM、10μMまたは20μMとなるようにそれぞれ加えた。比較としてとして、歯周炎治療薬をまったく加えないものも作成した(以下、0μMと示す場合がある)。 これらに上記1)で調製したコラーゲン分解能を有する細胞(GF00、GF32−4またはGFA9)を懸濁した後、6穴プレート内に播種して30分間硬化(ゲル化)させ、コラーゲン分解能を有する細胞を含むコラーゲンゲルを構築した。 次に、このコラーゲンゲル上に、上記1)で調製したコラーゲン分解能を高める細胞(GEe12またはGEA7)をトリプシンで分散させた後播種し、コラーゲン分解能を高める細胞の単層を形成させ、コラーゲン分解能を有する細胞とコラーゲン分解能を高める細胞とを含むコラーゲンゲルを構築した。2.コラーゲン分解阻害効果の判定法 上記で構築した被験物質を含むコラーゲンゲルを、24時間後にプレートの底から浮かせ、コラーゲンゲル浮遊培養を開始した。浮遊培養開始時点に、再度被験物質を加えた。浮遊培養開始後5日目(培養開始後6日目)にコラーゲンゲルの収縮レベルを調べ、その後、各ゲル中の残存コラーゲン量を定量することで、各濃度の歯周炎治療薬添加によるコラーゲン分解阻害の有無や程度を調べた。 さらに、同様に浮遊培養したゲルをメッシュ上に載せ、ゲル表面が空気に曝される状態でさらに5日間培養を行い、回収したゲル(培養開始後11日目)をHE染色し、コラーゲンの分解によって現れる線維芽細胞周囲の空胞を観察することで、歯周炎治療薬添加によるコラーゲン分解阻害の有無や程度を調べた。3.結果 コラーゲン分解能を有する細胞としてGF00、GF32−4またはGFA9を用い、コラーゲン分解能を高める細胞としてGEe12を用いた場合のコラーゲンゲルの収縮レベルを図1に示した。 また、コラーゲン分解能を有する細胞としてGF00、GF32−4またはGFA9を用い、コラーゲン分解能を高める細胞としてGEe12を用いた場合の各ゲル中の残存コラーゲン量を調べ、各例における残存コラーゲン量の平均と標準偏差を図2に示した。 図1および図2に示されるように、歯周炎治療薬として添加したN−(4−Chlorophenyl)−2−[(pyridin−4−yl methyl)amino]benzamideとして、メルク社の製品番号676481(VEGF Receptor Tyrosine Kinase Inhibitor II)の添加濃度に依存して、コラーゲンゲルの分解が抑制されることが確認できた。とくに10μM以上添加すると、コラーゲンゲルの分解の抑制が顕著であった。また、20μM添加した場合でも、細胞が死滅することなく、コラーゲンの分解を阻害できることが確認できた。 また、コラーゲン分解能を有する細胞としてGF00またはGF32−4を用い、コラーゲン分解能を高める細胞としてGFA9を用い、歯周炎治療薬を10μM加えた場合、または比較としてまったく加えない場合のHE染色の結果を図3に示した。 その結果、歯周炎治療薬をまったく加えない場合(図3、Control)では、コラーゲンの分解によって線維芽細胞周囲に空胞が観察されるのに対し、歯周炎治療薬を加えた場合(図3、VEGFR in)では、細胞の周囲に空胞が観察されず、コラーゲンの分解が顕著に阻害されていることが確認できた。<歯周炎治療薬> 実施例1において製造した、N−(4−Chlorophenyl)−2−[(pyridin−4−yl methyl)amino]benzamideを有効成分とする歯周炎治療薬を製造した。[試験例]Flt−1の発現がノックダウンされた細胞におけるコラーゲン分解能の検討1.Flt−1ノックダウン細胞の作製 次の1)〜7)の工程により、チロシンキナーゼ型受容体である血管内皮細胞増殖因子受容体分子のひとつであるFlt−1の発現がノックダウンされた細胞を得た。1)miRNA配列の設計 BLOCK−iT(商品名) RNAi Designer(http://rnaidesigner.Invitrogen.com/rnaiexpress/,Invitrogen社)に、GenBank accession numbers(FLT1:AF063657.2)に挙げられているFlt−1遺伝子のmRNAを入力し、miRNA配列を設計した。 設計したmiRNA配列の4種類において、リアルタイムRT−PCRにてノックダウン効率を比較して最終的に、表1に示されるものを選択した。2)pcDNA6.2ベクターへの組み込み pcDNA6.2ベクターへの組み込みは、BLOCK−iT Pol II miR RNAi Expression Vector Kit with EmGFP(Invitrogen社)を使用した。 まず、センス鎖とアンチセンス鎖を最終濃度50μMになるように調整し、95℃、4分間にてアニーリング反応をさせた後、10分間室温で放置した。次に、pcDNA(商品名) 6.2−GW/EmGFP−miRを5ng、T4 DNA ligaseを0.5Uと、上記で得られたアニーリング産物溶液が最終的に2nMになるように調整し、室温で5分間ライゲーション反応をさせた。 上記で得られたライゲーション産物溶液2μLとOne Shot(登録商標) TOP10 Chemically Competent E.Coli(Invitrogen社)25μLを混合し、氷上にて30分間培養した。その後42℃にて30秒間熱処理を行い、すぐさま氷上に戻した後2分間培養し、トランスフォーメーションを行った。 これに450μLのS.O.C培地(Invitrogen社)を入れ、37℃ 200rpmにて水平に振盪培養した。その後、50μg/mLのスペクチノマイシンを含むLB固形培地にプレーティングを翌朝まで培養した。コロニーをピックアップし翌朝までLB液体培地にて培養し、得られた大腸菌からQuickLyse Miniprep kit(QIAGEN社)にてプラスミドDNAを抽出・精製した。キットに付属のEmGFP forward sequence primer(配列表配列番号3)を用いてABI PRISM(登録商標) 310 Genetic Analyzerにてシークエンシングを行い、目的の配列が挿入されていることを確認した。3)ドナーベクターの組み込み(BP反応) Gateway(登録商標) BP Clonase(商品名) II Enzyme Mixを使用した。また本実験のnegative controlとしてキットに付属のpcDNA 6.2−GW/EmGFP−miR−neg control plasmidを使用した。このベクターは通常のpre−miRNAとしてヘアピン構造を形成するが、いずれの脊椎動物特異的遺伝子をターゲットとしないとされている。 上記のMiniprepの産物、またはpcDNA 6.2−GW/EmGFP−miR−neg control plasmidを150ngとpDONR(商品名) 221(Invitrogen社)を150ng、Gateway BP Clonase II Enzyme Mixを2μL加えてピペッティングを行った後に25℃で1時間培養しBP反応を行わせた。 BP反応産物1μLをOne Shot TOP10 Chemically Competent E.Coliに、上記と同様にトランスフォーメーションし、100μg/mLのカナマイシンを含むLB固形培地にプレーティングし、翌朝まで培養した。ピックアップしたコロニーを翌朝までLB液体培地にて培養し、得られた大腸菌からQuickLyse Miniprep KitにてプラスミドDNAを抽出・精製した。4)デスティネーションベクターへの組み込み(LR反応) Gateway LR Clonase(商品名) II Enzyme Mixを使用した。またデスティネーションベクターとしてEF−1αプロモーターを発現するCSII−EF−RfAを選択した。 上記のMiniprepの産物 150ng、CSII−EF−RfA 150ngと、さらにGateway LR Clonase II Enzyme Mixを2μL加えてピペッティングを行った後に、25℃で1時間培養しLR反応を行わせた。プロテアーゼKを1μL加えて37℃で10分間培養し、LR反応を停止させた。 LR反応産物1μLをOne Shot Stbl3 Chemically Competent E.Coli (Invitrogen社)に上記と同様にトランスフォーメーションし、100μg/mLのアンピシリンを含むLB固形培地にプレーティングし翌朝まで培養した。ピックアップしたコロニーを翌朝までLB液体培地にて培養し、得られた大腸菌からHiSpeed Plasmid Midi Kit(QIAGEN社)にてプラスミドDNAを抽出・精製した。5)レンチウイルスの作成 次の(a)および(b)の2種類の混合液を各々作成し、5分間室温で静置した後、(a)と(b)を混合して20分間室温で静置した。(a)Opti−MEM(GIBCO社) 1.25mL、pCAG−HIVgp 2.5μg、pCMV−VSV−G−RSV−Rev 2.5μg、レンチウイルス発現ベクター 4.5μg(b)Opti−MEM(GIBCO社) 1.25mL、Lipofectamine(商品名) 2000(Invitrogen社) 30μL 次に、293FT細胞(Invitrogen社)をOpti−MEM(GIBCO社)+10% FBSで1.2×106/mLの濃度で懸濁液を作成した。 上記の(a)と(b)の混合溶液と細胞懸濁液4mLを混合し、100mm Collagen Coated Dish(Collagen Type I)(IWAKI社)にて一晩培養した。翌日、293FT細胞の増殖培地6mLに培地交換して培養を続け、2日後、細胞上清を回収し3000rpm・5分で遠心し、培養上清を回収した。回収した培養上清は、500μLずつ分注し−80℃で保存した。6)レンチウイルス感染 ヒト歯肉線維芽細胞(悪玉線維芽細胞)であるGF00、またはGF32−04を1x105個ずつエッペンドルフチューブに分注し3000rpm 3分で遠心し、上清を除去した。これに上記5)で調製した500μLのウイルス液を加えてピペッティングし、さらに増殖培地500μLを加えてピペッティングし、6well dishにまき一晩培養した。翌日に通常の増殖培地2mLに培地交換した。 ウイルスの感染効率は、感染後72時間後にフローサイトメトリーにてGFP陽性細胞を検出することによって行った(EPICS XL System II;Coulter社)。またノックダウン効率はリアルタイムRT−PCRにて測定した(Mx−3000P;Stratagene社)。なお、内部コントロールとしてGAPDHを用い、リアルタイムRT−PCRに使用したプライマーは表2に示した。7)結果 GF00におけるウイルスの感染効率、ノックダウン効率を図4に示した。どちらのヒト歯肉線維芽細胞(悪玉線維芽細胞)においてもウイルスの感染効率は70−80%であった。 また、図5に示したように、リアルタイムRT−PCRにおいてもGF00において、FLT1の発現が40%程度に減少していることが確認できた。なお、図5における“00normal”は、未処理のGF00のことを指し、“00ntc”は何もコードしていないランダムな配列を挿入したコントロールベクターを導入したGF00のことを指し、“00flt”は、FLT−1のmiRNAをコードする遺伝子を導入したGF00のことを指している。2.Flt−1の発現がノックダウンされた細胞におけるコラーゲン分解能の検討 上記1.にて作成したFlt−1の発現がノックダウンされた細胞(GF00またはGF32−4)を用い、コラーゲン分解能を高める細胞としてGEA7を用い、実施例1、1.と同様の方法によってコラーゲンゲルを構築した。 構築したコラーゲンゲルを、24時間後にプレートの底から浮かせ、コラーゲンゲル浮遊培養を開始した。浮遊培養開始後5日目(培養開始後6日目)に、コラーゲンゲルの収縮レベルを調べた後、各ゲル中の残存コラーゲン量を定量した。 さらに、同様に浮遊培養したゲルをメッシュ上に載せ、ゲル表面が空気に曝される状態でさらに5日間培養を行い、回収したゲル(培養開始後11日目)をHE染色し、コラーゲンの分解によって線維芽細胞周囲に空胞が観察されるか否かを確認することにより、Flt−1の発現がノックダウンされた細胞におけるコラーゲン分解能を調べた。 コラーゲンゲルの収縮レベルを図6に示し、各ゲル中の残存コラーゲン量を図7に示した。図6および図7において、“FLT1”としてFlt−1の発現がノックダウンされた場合、“NTC(non template control)”としてFlt−1の発現がノックダウンされていない場合(コントロール)の結果を示している。これらに示されるように、GF00、GF32−4のいずれにおいても、Flt−1の発現がノックダウンされたことにより、コラーゲンの分解が顕著に阻害されていることが確認できた。 さらに、Flt−1の発現がノックダウンされた細胞(GF00)におけるHE染色の結果を図8に示した。その結果、Flt−1の発現がノックダウンされた細胞を用いたコラーゲンゲルにおいては、線維芽細胞周囲に空胞が観察されず、コラーゲンの分解が顕著に阻害されていることが確認できた。 したがって、これらの結果より、ヒト歯肉線維芽細胞(悪玉線維芽細胞)等におけるチロシンキナーゼ型受容体を特異的な標的として、その発現を阻害することにより、コラーゲンの分解を抑制し、これによって、歯周炎の治療を行うことが可能であることが示唆された。 本発明の歯周炎治療薬の提供により、歯周炎に関わらない正常細胞にはほとんど影響を与えない、副作用の低い新たな歯周炎治療薬を提供することが可能となる。チロシンキナーゼ阻害剤を有効成分とする歯周炎治療薬。チロシンキナーゼ阻害剤がVEGF(Vascular endothelial growth factor)受容体チロシンキナーゼ阻害剤である請求項1に記載の歯周炎治療薬。チロシンキナーゼ阻害剤がN−(4−Chlorophenyl)−2−[(pyridin−4−yl methyl)amino]benzamideである請求項1または2に記載の歯周炎治療薬。 【課題】副作用の少ない、新たな歯周炎治療薬の提供。【解決手段】VEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤を有効成分とする、副作用の少ない、新たな歯周炎治療薬を提供する。【選択図】なし配列表