タイトル: | 再公表特許(A1)_トルテロジン含有貼付剤 |
出願番号: | 2012083400 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | A61K 31/137,A61K 9/70,A61K 47/32 |
柴田 大樹 村田 健介 服部 健一 田中 真司 JP WO2013099835 20130704 JP2012083400 20121225 トルテロジン含有貼付剤 帝國製薬株式会社 000215958 鮫島 睦 100100158 田村 恭生 100068526 新田 昌宏 100138900 呉 英燦 100162684 秋山 信彦 100176474 柴田 大樹 村田 健介 服部 健一 田中 真司 JP 2011286530 20111227 A61K 31/137 20060101AFI20150410BHJP A61K 9/70 20060101ALI20150410BHJP A61K 47/32 20060101ALI20150410BHJP JPA61K31/137A61K9/70 401A61K47/32 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC 再公表特許(A1) 20150507 2013551689 17 4C076 4C206 4C076AA74 4C076BB31 4C076CC17 4C076DD29 4C076DD30 4C076DD34A 4C076DD45 4C076DD50 4C076EE03A 4C076FF34 4C076FF56 4C076FF63 4C076FF67 4C076FF68 4C206AA02 4C206AA10 4C206FA11 4C206KA01 4C206MA02 4C206MA05 4C206MA52 4C206MA83 4C206NA03 4C206NA07 4C206NA08 4C206NA10 4C206NA11 4C206ZA81 本発明は、経皮吸収性、および保存中の薬物安定性に優れ、かつ皮膚刺激性の低い改良されたトルテロジン含有貼付剤に関する。 トルテロジンは過活動膀胱の治療のために用いられており、経口製剤として、市場に広く流通している。現在、市販されているトルテロジン経口製剤は、主としてトルテロジン酒石酸塩が有効成分として使用されている。 一方、トルテロジンを配合した経皮吸収製剤に関しては、かつてより様々な方法で貼付剤化が試みられている(特許文献1〜4)。貼付剤の利点としては、一定の血中薬物濃度を持続できること、副作用が生じた場合に貼付剤を剥離することにより容易に投与を中止できること等が挙げられる。また、経口剤の場合は投与時に水等の液体を必要とするため、尿負荷が増加して治療に悪影響を及ぼす恐れがあるが、貼付剤の場合は尿負荷が増加しないため、患者の服薬遵守の面で有利である。 一般的に経皮吸収製剤においては酸付加塩を使用するよりも、遊離塩基を使用した方が高い経皮吸収性を示すことが知られているため、トルテロジンに関しては、特に遊離塩基を用いた貼付剤に関する報告が多く見られる傾向にある(特許文献2〜4)。 しかしながらトルテロジンの遊離塩基を用いた貼付剤を検討する場合、基剤成分の選択を誤ると、基剤成分とトルテロジンが反応し、トルテロジンの分解反応が生じ、保存中の主薬の含量低下、および分解生成物の産生を引き起こしたりする場合があり、それにより製剤の安定性に重大な影響を及ぼす可能性がある。すなわちトルテロジン遊離塩基を主薬成分として選択する場合には、基剤成分について、主薬の安定性に影響を与えないような構成とする必要がある。 上記特許文献2〜4に開示されているトルテロジン遊離塩基を含有した貼付剤に関しては主にアクリル系粘着剤が使用されているが、アクリル系粘着剤にトルテロジンを配合した場合、保存中に主薬の含量が低下し、分解物の産生が促進される傾向にある。すなわち製剤の安定性という側面から見た場合、アクリル系粘着剤を基剤成分とした貼付剤は不完全なものであった。 また、トルテロジン含有貼付剤には皮膚刺激性に関して問題があり、本発明者らの研究によれば、トルテロジンの皮膚透過速度(flux:μg/cm2/hr)と貼付剤の皮膚刺激性との間には相関性が存在するとの知見を得た。従って、トルテロジンの貼付剤化にあたっては、製剤から皮膚への移行速度を適切な範囲に調整することにより、薬効と安全性を両立させることが可能となることが判明した。これらのトルテロジンの特性については、上記各先行技術には記載も示唆もされていないものであり、本発明者らの独自の検討結果により得られた新たな知見である。特表2011−512405号特表2002−523446号特表2002−544222号特表2011−521975号 従来知られているトルテロジン含有貼付剤では、経皮吸収性を高めるためにトルテロジンの遊離塩基を用いることが提案されているが、遊離塩基を用いた場合には基剤成分によってはトルテロジンが反応して安定性を損なう場合があり、また、トルテロジンが分解して分解物の産生が認められる問題があった。さらにトルテロジン含有貼付剤には、皮膚刺激性を示す等の問題があった。 本発明は、トルテロジン含有貼付剤における上記問題点を解決し、主薬の経皮吸収性、および保存中の薬物安定性に優れ、かつ皮膚刺激性の低い改良されたトルテロジン含有貼付剤を提供するものである。 すなわち本発明は、支持体上に粘着剤層が積層された貼付剤であって、粘着剤層が、ゴム系粘着剤、粘着付与樹脂、および軟化剤を含む粘着基剤に、有効成分としてトルテロジンを配合して得られることを特徴とするトルテロジン含有貼付剤であり、かつ粘着基剤中でトルテロジンが遊離塩基の形で存在する貼付剤に関する。 また、より具体的な本発明の態様では、定常状態でのトルテロジンの皮膚透過速度(flux:μg/cm2/hr)が1.0〜50.0の範囲であるトルテロジン含有貼付剤を提供する。 本発明に従って、ゴム系粘着剤、粘着付与樹脂、および軟化剤を含む粘着基剤成分にトルテロジンを配合し、かつ粘着基剤中でトルテロジンが遊離塩基の形で存在するような貼付剤とすることにより、トルテロジンの経皮吸収性および安定性に優れ、かつ皮膚刺激性の低い貼付剤を提供することが可能となった。 本発明のトルテロジン含有貼付剤は、ゴム系粘着剤に、通常配合される粘着付与樹脂および軟化剤を配合した基剤を粘着基剤成分として用い、これに有効成分のトルテロジンを配合して得られる組成物を粘着剤層とし、これを支持体上に積層することにより調製される。 本発明のトルテロジン含有貼付剤におけるトルテロジン遊離塩基の配合量は、粘着剤層の全重量に基づいて0.5〜20重量%であり、好ましくは1〜10重量%である。トルテロジン遊離塩基の配合量が0.5重量%未満であると、十分な薬効が得られず、逆に20重量%より多く配合した場合は貼付剤の製剤物性に対して悪影響を及ぼす上に、費用対効果の面でも好ましくない。また、本発明におけるトルテロジンは、予め遊離塩基のトルテロジンを配合してもよく、またトルテロジン酸付加塩、例えばトルテロジン酒石酸塩に水酸化ナトリウム、アミン類等の塩基性化合物を添加して付加塩を脱離させる方法により、製剤中にトルテロジン遊離塩基を生成させてもよい。塩基性化合物としてはアミン類が好ましく、特にジエタノールアミンが好ましい。塩基性化合物の配合量は、粘着剤層の全重量に基づいて0.3〜13重量%とすることが好ましく、0.6〜6.5重量%とすることが特に好ましい。トルテロジン酸付加塩と塩基性化合物の配合量の比(モル比)は、塩基性化合物/トルテロジン酸付加塩=0.8〜5.0であり、好ましくは1.0〜3.0である。 また、本発明のトルテロジン含有貼付剤においては、定常状態でのラットにおけるトルテロジンの皮膚透過速度(flux:μg/cm2/hr)が1.0〜50.0の範囲となるように調整するのが好ましく、fluxが1.0未満であると、十分な薬効が得られず、逆に50.0を超えると、トルテロジンの急激な皮膚への移行に伴う皮膚刺激が生じるので好ましくない。従って、上記主薬成分の配合量の決定に際しては、fluxを考慮して決定するのが好ましく、かかる観点からもトルテロジン遊離塩基の配合量は、粘着剤層の全重量に基づいて0.5〜20重量%であり、1〜10重量%とすることが特に好ましい。 本発明のトルテロジン含有貼付剤の粘着剤層に用いるゴム系粘着剤の配合量は、粘着剤層の全重量に基づいて5〜50重量%、好ましくは10〜30重量%である。5重量%未満では粘着剤層の凝集力が十分でなく肌に基剤が残るという問題が起き、50重量%を超えると凝集力が高すぎて粘着力の低下、或いは練合作業の低下を招くため好ましくない。 本発明のトルテロジン含有貼付剤の粘着剤層に用いることができるゴム系粘着剤は、限定されるものではないが、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体、スチレンイソプレンゴム、ポリイソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ポリイソブチレン、クロロプレンゴム、天然ゴムラテックス、およびSBR合成ラテックス等を挙げることができ、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体が特に好ましい。 スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体としては、一般に販売されているものが用いられてよく、限定されるものではないが、クレイトンD1111、クレイトンD1161、クレイトンDKX401、およびクレイトンD1107(商品名、クレイトンポリマージャパン株式会社製)、クインタック3421、およびクインタック3570C(商品名、日本ゼオン株式会社製)、SIS5002、およびSIS5200(商品名、JSR株式会社製)、ならびにカリフレックスTR−1107、カリフレックスTR−1111、カリフレックスTR−1112、およびカリフレックスTR−1117(商品名、シェル化学株式会社製)等を挙げることができる。本発明の貼付剤に用いられるスチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体としては、ポリスチレン含量が、共重合体の全重量に基づいて10〜30重量%の範囲であるものが特に好ましい。具体的には、クレイトンD1111(ポリスチレン含量:22重量%)が好適に用いられる。 粘着付与樹脂はゴム系粘着剤と混合することにより、皮膚への粘着性を与えるものであり、その配合量は粘着剤層の全重量に基づいて20〜60重量%、より好ましくは30〜50重量%である。粘着付与樹脂の配合量が20重量%未満では外用貼付剤としての粘着物性が悪くなり、60重量%を超えると粘着タックが強くなりすぎて皮膚から剥がすとき、物理的な皮膚刺激を生じるため好ましくない。本発明に用いる粘着付与樹脂としては、ロジン系樹脂、脂環族飽和炭化水素樹脂、テルペン系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂等から1種または2種以上を選択して使用できる。 ロジンとは、松脂を蒸留して得られるロジン酸を主成分とする天然樹脂である。かかるロジン系樹脂としては、限定されるものではないが、パインクリスタルKE−311、パインクリスタルKE−100、およびエステルガムH(商品名、荒川化学工業株式会社製)など、ならびにフォーラル85、およびフォーラル105(商品名、ハーキュレス株式会社製)等を挙げることができる。脂環族飽和炭化水素樹脂としては、限定されるものではないが、アルコンP−70、アルコンP−90、アルコンP−100、アルコンP−115、およびアルコンP−125(商品名、荒川化学工業株式会社製)等を挙げることができる。テルペン系樹脂としては、限定されるものではないが、YS−レジンPX1150、およびYSポリスター(商品名、ヤスハラケミカル株式会社製)、ならびにピコライト(商品名、ハーキュレス株式会社製)等を挙げることができる。フェノール系樹脂としては、限定されるものではないが、タマノル(商品名、荒川化学工業株式会社製)等を挙げることができる。本発明の貼付剤に用いられる粘着付与樹脂としては、ロジン系樹脂、例えば水添ロジングリセリンエステル、および脂環族飽和炭化水素樹脂が特に好ましい。 本発明の貼付剤の粘着剤層には、さらに、流動パラフィン、ワセリン等の油脂類、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリイソプレン等の液状ゴム類等の軟化剤を配合することができ、その配合量は、粘着剤層の全重量に基づいて5〜70重量%、より好ましくは20〜60重量%である。 流動パラフィンとしては、限定されるものではないが、ハイコールM−352(商品名、カネダ株式会社製)、クリストールN−352(商品名、エクソンモービル有限会社製)ならびにKAYDOL、およびHYDROBRITE(ソネボーン有限会社製)等を挙げることができる。ポリブテンとしては、限定されるものではないが、日石ポリブテンHV−300F(商品名、新日本石油化学株式会社製)等を挙げることができる。ポリイソブチレンとしては、限定されるものではないが、オパノールB−3、オパノールB−10、オパノールB−15、オパノールB−50、オパノールB−100、およびオパノールB−200(商品名、BASF株式会社製)、ならびにテトラックス3T、テトラックス4T、テトラックス5T、およびテトラックス6T(商品名、新日本石油化学株式会社製)等を挙げることができる。本発明の貼付剤に用いられる軟化剤としては、流動パラフィンおよびポリブテンが特に好ましい。 本発明の貼付剤には、さらに、トルテロジンの経皮吸収性を向上させるため経皮吸収促進剤等を添加することができ、その配合量は、通常、粘着剤層の全重量に基づいて0.5〜10重量%の範囲である。 経皮吸収促進剤としては、限定されるものではないが、ミリスチン酸イソプロピル、アジピン酸ジイソプロピル等の脂肪酸エステル、イソステアリン酸、オレイン酸、ミリスチン酸等の高級脂肪酸、ジイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン類、モノオレイン酸ソルビタン、ラウロマクロゴール等の界面活性剤等が挙げられる。特に、ミリスチン酸イソプロピルが好ましい。 さらに本発明の貼付剤においては、貼付剤の安定性の改善、特に分解生成物の生成抑制を意図して、多価金属塩が好ましく配合される。多価金属塩としては例えば、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化鉄、二酸化チタン等が例示できるが、特に酸化亜鉛及び水酸化アルミニウムが好ましく使用される。多価金属塩の配合量は、粘着剤層の全重量に基づいて0.1〜2.0重量%とすることが好ましく、0.1〜0.5重量%とすることが特に好ましい。 さらに本発明の貼付剤における粘着基剤成分として、基剤の接着性・安定性の調整のために、必要に応じて、通常の貼付剤に用いられる添加成分が、適宜選択され、使用できる。例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等の水溶性高分子、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体、無水ケイ酸、軽質無水ケイ酸等のケイ素化合物、シリカ類等の無機充填剤、およびジブチルヒドロキシトルエン等の酸化防止剤などを適宜適量含有させることができる。さらに必要に応じて防腐剤、清涼剤、殺菌剤、着香剤、着色剤等を配合することができる。 本発明の貼付剤における支持体は、特に限定されるものではなく、貼付剤用として通常用いられる伸縮性または非伸縮性のものが用いられる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ナイロン、ポリウレタン等の合成樹脂で形成されたフィルムもしくはシートまたはこれらの積層体、多孔質膜、発泡体、織布、不織布、あるいは紙材を用いることができる。 本発明のトルテロジン含有貼付剤の製品には、前記支持体上に積層された粘着剤層の上に剥離ライナーを付し、使用に際して、剥離ライナーを剥がして、粘着剤層の面を所望の皮膚に貼り付ける。 本発明の貼付剤に使用される剥離ライナーは、貼付剤用として通常用いられているものが用いられ、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、紙等を用いることができ、特にポリエチレンテレフタレートが好ましい。剥離ライナーは剥離力を至適にするため、必要に応じてシリコン処理をしてもよい。 また、本発明の貼付剤には、保存中における主薬の安定性の向上のために、脱酸素剤を共存させてもよい。脱酸素剤としては鉄を原料とするものや、非鉄金属を原料とするものが好ましく用いられる。脱酸素剤の共存方法としては、包装容器に脱酸素剤を直接封入する方法、あるいは包装容器に脱酸素フィルムを積層した形態のものを使用する方法等が挙げられる。 本発明の貼付剤は、例えば以下の方法によって製造することができる。トルテロジンを適当な溶媒に溶解させ、薬液を調製する。別に、ゴム系粘着剤としてのスチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体、流動パラフィン、粘着付与樹脂、およびその他の各成分を適当な溶媒に混合溶解させ、粘着基剤を得る。溶媒としては、トルエン、酢酸エチル、エタノール、メタノール等が使用でき、成分に応じて適宜選択し、1種または2種以上を混合して使用できる。次に、粘着基剤に薬液を添加し、均一になるまで撹拌混合することによって得られた粘着剤溶液を、剥離ライナーまたは支持体上に伸展して溶媒を乾燥除去後、支持体または剥離ライナーと貼り合わせて本発明の貼付剤を得ることができる。なお、粘着剤層の厚みは30〜200μm、より好ましくは50〜100μmである。30μm未満であると、薬物放出の持続性が乏しくなり、200μmを超えると、粘着剤層中の薬物含量が増え、残存薬物量の増加や製造コストの増加を引き起こす。 次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の濃度は特に断らない限り「重量%」である。また、実施例および比較例において、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体はクレイトンD1111(クレイトンポリマージャパン株式会社製)を、水添ロジングリセリンエステルはパインクリスタルKE−311(荒川化学工業株式会社製)を、脂環族飽和炭化水素樹脂はアルコンP−100(荒川化学工業株式会社製)を、および流動パラフィンはハイコールM−352(カネダ株式会社製)を使用している。実施例1 トルテロジン遊離塩基をトルエンに溶解させ、薬液を調製した。別に、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体、流動パラフィン、粘着付与樹脂をトルエンに混合溶解させ、粘着基剤を得た。この粘着基剤に薬液を添加し、均一になるまで撹拌混合することによって得られた粘着剤溶液を、剥離ライナー上に伸展して溶媒を乾燥除去させ、厚さ100μmの粘着剤層を形成後、支持体を貼り合わせることにより貼付剤を得た。なお、各成分の配合比は表1に示すとおりである。実施例2〜10 表1に示す組成により、実施例1の製法に従い、各実施例の貼付剤を作製した。実施例11〜12 トルテロジン酒石酸塩をジエタノールアミンおよびトルエンに溶解させ、薬液を調製した。以下、表1に示す組成により、実施例1の製法に従い、各実施例の貼付剤を作製した。なお本製剤は、粘着基剤中でトルテロジン酒石酸塩がジエタノールアミンにより脱塩され、遊離塩基の状態で存在していると考えられる。〔比較例〕 トルテロジン酒石酸塩をトルエンに懸濁させ、薬液を調製した。別に、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体、流動パラフィン、および粘着付与樹脂をトルエンに混合溶解させ、粘着基剤を得た。この粘着基剤に薬液を添加し、均一になるまで撹拌混合することによって得られた粘着剤溶液を、剥離ライナー上に伸展して溶媒を乾燥除去させ、厚さ100μmの粘着剤層を形成後、支持体を貼り合わせることにより貼付剤を得た。なお、各成分の配合比は表2に示すとおりである。本製剤は、塩基性化合物を配合していないため、粘着基剤中でトルテロジンが遊離塩基とならず、酸付加塩(トルテロジン酒石酸塩)の状態で存在していると考えられる。〔試験例1〕:in vitroヘアレスラット皮膚透過性試験 本発明の貼付剤におけるトルテロジンの経皮吸収性を検討するため、各実施例、および比較例について、ヘアレスラットにおけるin vitro皮膚透過性試験を行った。ヘアレスラット(HWY系、7週齢)の腹部摘出皮膚をフランツ型拡散セルにセットし、円形(φ14mm)に裁断した各試験製剤を貼付した。レセプター側にはリン酸緩衝生理食塩水を満たし、ウォータージャケットには、37℃の温水を還流した。経時的にレセプター液をサンプリングし、皮膚を透過したトルテロジン量を液体クロマトグラフ法により測定し、その結果より、定常状態(試験開始後15〜18時間目)における皮膚透過速度(flux:μg/cm2/hr)を算出した。 その結果を、表3に示す。 上記の各試験結果より、特に主薬濃度が等しい本発明の貼付剤と比較例の貼付剤とを比較した場合、本発明の貼付剤は、比較例の貼付剤と比べ、優れた経皮吸収性を示す製剤であることが判明した。〔試験例2〕:製剤中のトルテロジンの安定性試験1(含量試験) 60℃で1箇月保存した、実施例8の製剤6.25cm2をとり、剥離ライナーを除き、細かく裁断した後、テトラヒドロフラン/メタノール混液(3:2)6mLを入れた褐色遠沈管に入れて、30分間超音波照射し、更に30分間激しく振り混ぜた。抽出液を分取し、残渣にテトラヒドロフラン/メタノール混液を6mL加えて30分間超音波照射し、更に30分間激しく振り混ぜた。抽出液を分取し、テトラヒドロフラン/メタノール混液を加えて正確に25mLとした(試料原液)。この液5mLを正確に量り、移動相Aを加えて正確に25mLとした。この液を孔径0.45μmのメンブランフィルターでろ過し、初めのろ液3mLを除き、ろ液を試料溶液とした。別に酒石酸トルテロジン標準品約14.6mg(トルテロジン遊離塩基として約10mg)を精密に量り、イオン交換水を加えて溶かし、正確に20mLとした。この液4mLを正確に量り、イオン交換水を加えて正確に10mLとした。この液2mLを正確に量り移動相Aを加えて正確に10mLとし、標準溶液とした。試料溶液および標準溶液各40μLにつき、下記の条件で液体クロマトグラフィーにより試験を行い、トルテロジンのピーク面積ATおよびASを求め、次式により製剤中のトルテロジンの含量を測定した。 WS:トルテロジン標準品の秤取量(トルテロジン遊離塩基)(mg) AT:試料溶液のピーク面積 AS:標準溶液のピーク面積試験条件 検出器:紫外吸光光度計(測定波長:234nm) カラム:内径4.6mm、長さ25cmのステンレス管に5μmの液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリル化シリカゲルを充てんする。 カラム温度:40℃付近の一定温度 移動相A:アセトニトリル400mLとリン酸10mLを水に溶かして1000mLとする。 流量:毎分0.85mL(トルテロジンの保持時間約8分) 面積測定範囲:12分 試験結果を表4に示す。本発明の貼付剤は安定性の高い製剤であることが確認できた。〔試験例3〕:製剤中のトルテロジンの安定性試験2(純度試験) 40℃で2箇月保存した実施例8〜10の製剤、及び60℃で1箇月保存した実施例8の各製剤6.25cm2をとり、剥離ライナーを除き、細かく裁断した後、テトラヒドロフラン/メタノール混液(3:2)6mLを入れた褐色遠沈管に入れて、30分間超音波照射し、更に30分間激しく振り混ぜた。抽出液を分取し、残渣にテトラヒドロフラン/メタノール混液を6mL加えて30分間超音波照射し、更に30分間激しく振り混ぜた。抽出液を分取し、テトラヒドロフラン/メタノール混液を加えて正確に25mLとした(試料原液)。この液5mLを正確に量り、移動相[移動相A/移動相B(4:1)]を加えて正確に10mLとした。この液を孔径0.45μmのメンブランフィルターでろ過し、初めのろ液3mLを除き、ろ液を試料溶液とした。この液25μLずつを正確にとり、次の条件で液体クロマトグラフィーにより試験を行い、各々のピーク面積を自動積分法により測定した。試験条件 検出器:紫外吸光光度計(測定波長:234nm) カラム:内径4.6mm、長さ25cmのステンレス管に5μmの液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリル化シリカゲルを充てんする。 カラム温度:40℃付近の一定温度 移動相A:リン酸5mLを水に溶かして1000mLとする。 移動相B:アセトニトリル 移動相の送液:移動相Aおよび移動相Bの混合比を次の表5のように変えて濃度勾配制御する。 製剤中の分解生成物の総量を表6に示す。分解生成物の総量は、主薬成分のピーク面積に対する、各分解物のピーク面積の比(%)を求め、それらの合計で示している。表6の結果から、本発明の貼付剤は各保存条件においても分解生成物の産生が抑えられていることが確認できた。特に多価金属塩を配合した実施例9、及び実施例10の製剤において分解生成物の産生量が低く抑えられていた。〔試験例4〕:ウサギ皮膚一次刺激性試験 実施例6および実施例8の製剤についてウサギ皮膚一次刺激性試験を行った。それぞれの貼付剤を除毛したウサギ背部に48時間貼付し、剥離後1時間目、24時間目および48時間目の皮膚症状から刺激指数(P.I.I)を求めた。結果およびその評価基準を、それぞれ表7、および表8に示す。 表7の結果から、本発明の貼付剤は皮膚刺激性が低いことが確認できた。 本発明によれば、トルテロジンの経皮吸収性および安定性に優れ、かつ皮膚刺激性の低いトルテロジン含有貼付剤を提供することができる。 支持体上に粘着剤層が積層された貼付剤であって、粘着剤層が、ゴム系粘着剤、粘着付与樹脂、および軟化剤を含む粘着基剤に、有効成分としてトルテロジンを配合して得られることを特徴とするトルテロジン含有貼付剤であり、かつ粘着基剤中でトルテロジンが遊離塩基の形で存在する貼付剤。 トルテロジン遊離塩基の配合量が、粘着剤層の全重量に基づいて0.5〜20重量%の範囲である、請求項1に記載の貼付剤。 トルテロジン遊離塩基の配合量が、粘着剤層の全重量に基づいて1〜10重量%の範囲である、請求項1に記載の貼付剤。 ゴム系粘着剤の配合量が、粘着剤層の全重量に基づいて5〜50重量%の範囲である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の貼付剤。 ゴム系粘着剤がスチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の貼付剤。 スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体のポリスチレン含量が、共重合体の全重量に基づいて10〜30重量%の範囲である、請求項5に記載の貼付剤。 本発明は、支持体上に粘着剤層が積層された貼付剤であって、粘着剤層が、ゴム系粘着剤、粘着付与樹脂、および軟化剤を含む粘着基剤に、トルテロジンを配合して得られることを特徴とするトルテロジン含有貼付剤であり、かつ粘着基剤中でトルテロジンが遊離塩基の形で存在する貼付剤を提供する。