生命科学関連特許情報

タイトル:再公表特許(A1)_腎障害の治療又は予防薬
出願番号:2012078346
年次:2015
IPC分類:A61K 45/00,A61K 31/475,A61K 31/4178,A61K 31/517,A61K 31/438,A61P 43/00,A61P 13/12,A61K 31/496,A61K 31/4155


特許情報キャッシュ

筒居 秀伸 雪村 時人 JP WO2013073382 20130523 JP2012078346 20121101 腎障害の治療又は予防薬 学校法人大谷学園 311016813 岩谷 龍 100077012 筒居 秀伸 雪村 時人 JP 2011252450 20111118 A61K 45/00 20060101AFI20150306BHJP A61K 31/475 20060101ALI20150306BHJP A61K 31/4178 20060101ALI20150306BHJP A61K 31/517 20060101ALI20150306BHJP A61K 31/438 20060101ALI20150306BHJP A61P 43/00 20060101ALI20150306BHJP A61P 13/12 20060101ALI20150306BHJP A61K 31/496 20060101ALI20150306BHJP A61K 31/4155 20060101ALI20150306BHJP JPA61K45/00A61K31/475A61K31/4178A61K31/517A61K31/438A61P43/00 111A61P13/12A61K31/496A61K31/4155 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC 再公表特許(A1) 20150402 2013544207 20 4C084 4C086 4C084AA17 4C084NA14 4C084ZA812 4C084ZC422 4C086AA01 4C086AA02 4C086BC21 4C086BC36 4C086BC38 4C086BC50 4C086CB05 4C086GA02 4C086GA07 4C086GA12 4C086MA01 4C086MA04 4C086MA35 4C086MA52 4C086NA14 4C086ZA81 4C086ZC42 本発明は、腎障害の治療又は予防薬に関する。 腎障害は、腎機能の低下又は腎組織の障害等をきたす疾患であり、検査所見では、血中尿素窒素(BUN)や血清クレアチニンの上昇及び糸球体濾過値(GFR)の顕著な低下等が認められる。前記腎障害は、進行すると透析治療や腎臓移植が必要になる等、臨床上重大な問題となっている。 前記腎障害の原因として、従来から、ATPの欠乏、酸化ストレスの発生、細胞内カルシウム濃度の上昇、タンパク質分解酵素の活性化、好中球の浸潤、細胞極性の消失、炎症性サイトカイン並びに接着因子の増加、レニン・アンジオテンシン系の亢進、エンドセリン、一酸化窒素、並びにプロスタサイクリン等の血管作動性物質の関与等が考えられ、これらのそれぞれに対する治療効果についてすでに数多くの研究結果が報告されてきた。しかしながら、その治療効果は限定的で不十分なものであった(非特許文献1−10参照)。 また、前記腎障害としては、血圧、心拍出量の低下や出血による腎血流の低下に伴うショックにより発症するものや腎移植時等の虚血状態から血流の再開後に発症するもの等、急性のものあるいは慢性に経過するもの等も挙げられるが、このような疾患については、現在までのところ有効な治療又は予防薬が見出されていない。 従って、前記腎障害等、腎疾患に広く有効な新規の治療又は予防薬の開発が強く求められている。Trifillis et al., Exp. Mol. Pathol., 40, 155-168, 1984Paller et al., J. Clin. Invest., 74, 1156-1164, 1984Burke et al., J. Clin. Invest., 74, 1830-1841, 1984Kaushal et al., Am. J. Physiol., 274, F587-F595, 1998Klausner et al., Am. J. Physiol., 256, F794-F802, 1989Molitoris et al., Am. J. Physiol., 272, F430-F433, 1997Takada et al., J. Clin. Invest., 99, 2682-2690, 1997Jerkic et al., Nephrol. Dial. Transplant., 19, 83-94, 2004Schramm et al., Ren. Fail., 16, 555-569, 1994Lifschitz et al., Am. J. Physiol., 247, F714-F717, 1984 本発明の目的は、従来品とは異なる作用機作に基づき腎障害に対する優れた治療又は予防効果を示す医薬品を提供することにある。 本発明者らは、ノルアドレナリン(NA)の過剰な分泌が、急性、慢性を問わず腎障害等の腎疾患に深く関与している可能性に着想し、鋭意検討の結果、α2アドレナリン受容体の遮断作用を有する化合物が、NAの作用又は産生を抑制することにより、腎障害に対する優れた治療又は予防効果を示すことを見出し、さらに検討を重ねて本発明を完成させるに至った。 すなわち、本発明は、[1]α2アドレナリン受容体遮断作用を有する化合物を有効成分として含有することを特徴とする腎障害の治療又は予防薬、[2]α2アドレナリン受容体遮断作用を有する化合物が、インドールアルキルアミン誘導体である前記[1]記載の腎障害の治療又は予防薬、[3]インドールアルキルアミン誘導体が、エステル化されていてもよいヨヒンビン酸もしくはその塩又はインドラミンもしくはその塩である前記[2]記載の腎障害の治療又は予防薬、[4]α2アドレナリン受容体遮断作用を有する化合物が、α2Bアドレナリン受容体遮断作用(好ましくは、選択的α2Bアドレナリン受容体遮断作用)を有する化合物である前記[1]記載の腎障害の治療又は予防薬、[5]α2Bアドレナリン受容体遮断作用を有する化合物が、インダゾイルメチル-1,4-ベンゾジオキサン誘導体又はその塩である前記[4]記載の腎障害の治療又は予防薬、[6]α2アドレナリン受容体遮断作用を有する化合物が、α2Cアドレナリン受容体遮断作用(好ましくは、選択的α2Cアドレナリン受容体遮断作用)を有する化合物である前記[1]記載の腎障害の治療又は予防薬、及び[7]α2Cアドレナリン受容体遮断作用を有する化合物が、ピペラジニイルフェニルアクリジナミン誘導体あるいはスピロキサトリエン又はそれらの塩である前記[6]記載の腎障害の治療又は予防薬に関する。 本発明のα2アドレナリン受容体遮断作用を有する化合物、α2Bアドレナリン受容体の遮断作用を有する化合物又はα2Cアドレナリン受容体の遮断作用を有する化合物は、優れた腎障害の治療又は予防効果を示す。 本発明の腎障害の治療又は予防薬は、α2アドレナリン受容体遮断作用を有する化合物を有効成分として含有することを特徴とする。前記α2アドレナリン受容体としては、α2A、α2B、α2C等のサブタイプが挙げられる。本発明の化合物が有するα2アドレナリン受容体遮断作用としては、例えば、非選択的α2アドレナリン受容体遮断作用、選択的α2Aアドレナリン受容体遮断作用、選択的α2Bアドレナリン受容体遮断作用及び選択的α2Cアドレナリン受容体遮断作用等が挙げられる。特に腎障害の治療又は予防に優れた効果を有する点から、非選択的α2アドレナリン受容体遮断作用、選択的α2Bアドレナリン受容体遮断作用又は選択的α2Cアドレナリン受容体遮断作用を有する化合物等を用いることが好ましい。 前記α2アドレナリン受容体遮断作用を有する化合物としては、本発明の効果を妨げない限り公知化合物に限定されず、広範囲のものを用いることができるが、例えば、エステル化されていてもよいヨヒンビン酸又はその塩、インドラミン等のインドールアルキルアミン誘導体又はその酸付加塩等が挙げられる。該インドールアルキルアミン誘導体は、インドールアルキルアミン骨格を有し、α2アドレナリン受容体遮断作用を有するものであれば、本発明の効果を妨げない限り特に限定されない。また前記エステル化されていてもよいヨヒンビン酸としては、ヨヒンビン酸の低級(C1-6)アルキルエステルやその塩、例えばヨヒンビン(17α-Hydroxy yohimban-16α-carboxylic acid methyl ester)又はその酸付加塩等、ヨヒンビン酸又はその塩基との塩、エステルされていてもよいラウオルシン酸(17α-Hydroxy-20α-yohimban-16β-carboxylic acid)又はその酸付加塩等が挙げられる。 α2Bアドレナリン受容体遮断作用を有する化合物としては、本発明の効果を妨げない限り公知化合物限定されず、広範囲のものを用いることができるが、例えば、イミロキサン(2-(1-Ethyl- 2-indazoyl)methyl-1,4-benzodioxan hydrochloride)等のインダゾイルメチル-1,4-ベンゾジオキサン誘導体又はその酸付加塩;ARC 239 (2-[2-(4-(2-Methoxyphenyl)piperazin-1-yl)ethyl]-4,4-dimethyl-1,3-(2H,4H)-isoquinolindione dihydrochloride)等のピペラジニルイソキノリン誘導体;Prazosin hydrochloride (1-(4-Amino-6,7-dimethoxy-2-quinazolinyl)-4-(2-furanylcarbonyl)piperazine hydrochloride)等のピペラジニルキナゾリン誘導体等が挙げられ、特にインダゾイルメチル-1,4-ベンゾジオキサン誘導体又はその酸付加塩等が好ましく挙げられる。前記インダゾイルメチル-1,4-ベンゾジオキサン誘導体、ピペラジニルイソキノリン誘導体及びピペラジニルキナゾリン誘導体は、それぞれインダゾイルメチル-1,4-ベンゾジオキサン骨格、ピペラジニルイソキノリン骨格、ピペラジニルキナゾリン骨格を有し、α2Bアドレナリン受容体遮断作用を有するものであれば、本発明の効果を妨げない限り特に限定されない。 α2Cアドレナリン受容体遮断作用を有する化合物としては、本発明の効果を妨げない限り公知化合物に限定されず、広範囲のものを用いることができるが、例えば、ピペラジニイルフェニルアクリジナミン誘導体、ベンゾフロキノリジン誘導体及びスピロキサトリエン(8-[(2,3-Dihydro-1,4-benzodioxin-2-yl) methyl]-1-phenyl-1,3,8- triazaspiro[4, 5]decan- 4-one)又はその塩等が挙げられ、特にピペラジニイルフェニルアクリジナミン誘導体あるいはスピロキサトリエン又はそれらの塩等が好ましく挙げられ、前記ピペラジニイルフェニルアクリジナミン誘導体としては、例えばN-[4-(4-メチル-1-ピペラジニル)フェニル]-9-アクリジナミン二塩酸塩、ベンゾフロキノリジン誘導体として、MK-912 ((2S-trans)-1,3,4,5',6,6',7,12b-オクタヒドロ-1',3'-ジメチル-スピロ[2H-ベンゾフロ[2,3-a]キノリジン-2,4'(1'H)-ピリミジン]-2'(3'H)-オン 塩酸塩 水和物)等が挙げられる。また、前記ピペラジニイルフェニルアクリジナミン誘導体及びベンゾフロキノリジン誘導体としては、それぞれピペラジニイルフェニルアクリジナミン骨格、ベンゾフロキノリジン骨格を有し、α2Cアドレナリン受容体遮断作用を有するものであれば、本発明の効果を妨げない限り特に限定されない。 化合物のα2アドレナリン受容体遮断作用を検出する方法としては、従来、いくつかの方法が知られている。それらの方法のうちのいずれかでα2アドレナリン受容体遮断作用が認められる化合物が、本発明で使用される化合物である。α2Bアドレナリン受容体遮断作用、α2Cアドレナリン受容体遮断作用についても同様である。 前記化合物の塩もしくは酸付加塩としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸等との無機酸塩及びギ酸、酢酸、プロピオン酸等との有機酸塩が挙げられる。塩基との塩としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム等の金属との塩やアンモニウム塩が挙げられ、また分子内塩を形成してもよい。 本発明のα2アドレナリン受容体の遮断作用を有する化合物は、動物(例えば、ラット、マウス、ブタ、ネコ、イヌ、ウシ、ウマ、サル、ヒト等の哺乳類動物)の腎障害における障害部位で産生されるNAの産生又はNAの作用を抑制する。 本発明の化合物は神経終末や炎症性細胞等に存在するα2アドレナリン受容体を遮断することにより、腎障害におちいった各種臓器を効果的に保護することができるが、特に腎臓において顕著な保護効果が認められることとなる。したがって、本発明のα2アドレナリン受容体の遮断作用を有する化合物は、腎障害を伴う各種疾患や病態の治療又は予防に有効な医薬、すなわち腎不全の治療もしくは予防薬の有効成分として有用である。 本発明において腎障害とは、腎機能の低下又は腎組織の障害等をきたす疾患を広く包含し、急性のもの及び慢性に経過するもの等、さまざまな疾患が挙げられる。例えば、腎機能障害、腎不全、急性腎障害、慢性腎臓病、腎虚血による障害、糖尿病性腎症等が挙げられる。急性腎障害は原因により、腎血流量の減少が原因となる腎前性急性腎不全、腎実質に障害がある腎性急性腎不全、腎以降の尿流障害による腎後性急性腎不全等がある。腎前性および腎後性急性腎不全は腎性急性腎不全に移行し得る。腎前性急性腎不全とは、心原性ショック(心筋梗塞、心筋炎、心タンポナーデ等)、敗血症、循環血漿量の減少(脱水、出血、摂取量の減少、嘔吐、下痢、多量発汗等)、腎動脈の狭窄や閉塞、薬物(非ステロイド系消炎鎮痛薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬等)等によって腎血流量が減少すること等による。腎性急性腎不全とは、腎実質の障害による血管病変、糸球体病変(急性腎炎、糸球体腎炎等)、急性間質性腎炎(薬剤、感染症等)、急性腎不全、急性尿細管壊死(腎虚血あるいは、シスプラチン、アミノグリコシド、造影剤等の腎毒性物質による尿細管壊死によるもの)等による。腎後性急性腎不全とは、尿路結石、悪性腫瘍の浸潤、前立腺肥大や前立腺癌等による。慢性腎臓病とは、例えば、腎障害または腎機能の低下が3ヶ月以上持続するもの等を指し、ステージ1〜5に分類され得る。本発明の腎障害の治療又は予防薬は、特に、腎虚血あるいは腎カテコラミン系の亢進が病因あるいは病態生理に関係する病態、例えば急性腎障害、腎虚血再灌流障害を伴う腎不全、敗血症性腎不全、急性腎不全で尿細管壊死を伴うものおよび慢性に経過する慢性腎臓病、腎移植後あるいは腎血栓塞栓症等術後の腎虚血再灌流障害、糖尿病性腎症の治療又は予防等に好ましく適用される。 本発明の腎障害の治療又は予防薬の投与方法としては、特に限定されないが、例えば、単回/持続点滴及び経皮吸収等の非経口投与、経口投与、前投与、後投与等が挙げられる。 本発明のα2アドレナリン受容体の遮断作用を有する化合物は、そのままあるいは担体又は賦形剤と共に医薬品の組成物として単独で又は他の治療薬との併用や合剤として投与してもよい。担体又は賦形剤は、他の成分と両立することができ、低毒性のものであればよい。 本発明のα2アドレナリン受容体の遮断作用を有する化合物を有効成分として用いる場合には、通常、薬理学的に許容される担体、賦形剤及び/又はその他の添加剤と混合して、錠剤、散剤、顆粒剤、注射剤等の剤形の医薬組成物として、経口投与又は非経口投与(静脈内、筋肉内、皮下その他の注射ルート等)される。このような用途に使用するための医薬品の製剤を製造する技術自体は従来十分に研究されているので、本発明においても、それらに従ってよい。 以下に本発明に関わるα2アドレナリン受容体遮断作用を有する化合物の一部について、それぞれサブタイプ(α2A、α2Bおよびα2C)別に阻害定数(Ki値)を例示的に示す。これらのKi値は、一面において本発明に関わる化合物のα2アドレナリン受容体遮断作用の強度や腎障害の治療効果や予防効果の有効性・有用性を反映することもある。例えば、α2アドレナリン受容体の少なくとも一のサブタイプに対するKi値として500以下、好ましくは300〜0.001、より好ましくは150〜0.01が挙げられる。 本発明の治療又は予防薬は、虚血性急性腎不全等の腎障害を伴う各種疾患や慢性腎臓病、急性腎障害等病態を治療又は予防するために適切な時期に投与される。例えば、虚血性急性腎不全の場合には、再灌流の約2時間前から再灌流の約2時間後までの間に投与することが出来る。 本発明は、本発明のα2アドレナリン受容体の遮断作用を有する化合物を投与すると、NAの作用又は産生が抑制され、思いがけなくも虚血性急性腎不全等の腎障害を伴う各種疾患や慢性腎臓病、急性腎障害等病態の治療又は予防に予想外に優れた効果を有することを見出し、さらに検討を重ねて完成されたものである。 本発明のα2アドレナリン受容体の遮断作用を有する化合物であるヨヒンビン(ヨヒンビン酸メチルエステル)の場合、低用量(10〜100μg/kg:例えば体重60kgの人なら0.6〜6mg)を投与するとα2受容体を選択的に遮断する。一方で、高用量(1mg/kg以上:例えば体重60kgの人なら60mg以上)を投与するとα2受容体の選択的遮断効果を減じ、むしろ精神作用が強く表れる。また、ヨヒンビンの極量は30mg/回、100mg/日と規定されている。 本発明のα2アドレナリン受容体の遮断作用を有する化合物の適切な投与量は、患者の虚血性急性腎不全等の腎障害を伴う各種疾患や慢性腎臓病、急性腎障害等病態のタイプや症状、投与経路、性差、体重等により変化させることができる。成人の経口投与の場合、例えば、α2系アドレナリン受容体の遮断作用を有する化合物の1日の用量は、通常約0.001〜1000mg/kgであり、好ましくは約0.005〜100mg/kgであり、最も好ましくは、0.01〜0.03mg/kgである。静脈内投与される場合、1日の用量は、通常約0.0005〜100mg/kgであり、好ましくは約0.001〜10mg/kgである。投与は一回又は数回に分けて行うことが出来る。静脈内投与される場合、持続静脈内投与してもよい。 腎障害を伴う各種疾患や慢性腎臓病、急性腎障害等病態の治療又は予防には、第2の成分として、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(カプトプリル、ラミプリル、キナプリル、ベナゼプリル、エナラプリルマレイン酸塩、イミダプリル塩酸塩、リシノプリル水和物等)、アンジオテンシン受容体遮断薬(ロサルタンカリウム、カンデサルタンシレキセチル、バルサルタン、テルミサルタン、イルべサルタン、エプロサルタン、オルメサルタン等)、フィブラート系脂質異常症治療薬(ベザフィブラート、クロフィブラート、フェノフィブラート等)、HMG-CoA還元酵素阻害薬(プラバスタチンナトリウム、シンバスタチン、アトルバスタチンカルシウム水和物、ロスバスタチンカルシウム等)、プロボコールあるいは活性酸素スカベンジャー(ビタミンE、ユビキノン、Nアセチルシステイン等)と併用してよい。また、本発明に関わるα2アドレナリン受容体遮断作用を有する化合物は、これらの第2の成分との合剤としても使用することができる。以下、本発明の有用性を示すため、試験例を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。実施例1:ラット虚血性急性腎不全に対する17α-Hydroxyyohimban-16α-carboxylic acid methyl ester hydrochlorideの腎保護効果の評価 Sprague-Dawley(SD)系雄性ラット(8週齢)を用いた。ペントバルビタール(50 mg/kg、i.p.)麻酔下に右側腹切開を加え、右腎を露出後、右腎動静脈並びに輸尿管を剥離・結紮し、右腎を摘除した後、切開面を縫合した。2週間後、ラットをペントバルビタール麻酔し、左側腹切開を加え、左腎を露出した後、腎動静脈に付着している脂肪を注意深く除去した。次いで、非外傷性クリップを用いて左腎動静脈の血流を遮断し、腎臓を虚血状態にした。45分後にクリップを除去し、血流を再開させて切開面を縫合した。虚血再灌流処置終了24時間後のラットを代謝ケージに入れ、5時間の採尿を行った。採尿終了後、ペントバルビタール麻酔下で採血及び腎臓の摘出を行った。得られた血液及び尿から腎機能パラメーターとして血中尿素窒素(BUN)、血漿中クレアチニン(Pcr)、クレアチニンクリアランス(Ccr)を測定し、得られた腎静脈血からは腎静脈血漿中NA濃度を測定した。なお、血中尿素窒素は尿素窒素 B-テストワコー(和光純薬工業)、血漿および尿中クレアチニン濃度はクレアチニン-テストワコー(和光純薬工業)を用い、腎静脈血漿中のNA濃度は、アルミナ吸着法と高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により血漿からNAを分離した後、電気化学検出器を用いて測定した。また、17α-Hydroxyyohimban-16α-carboxylic acid methyl ester hydrochlorideを100μg/kgの用量で虚血5分前に静脈内投与(薬物投与群)し、対照群には溶媒である0.9%生理食塩水を投与した。なお、右腎摘除のみを施したものを正常群とした。 腎臓の虚血再灌流処置により対照群では正常群と比較してBUN、Pcrの顕著な上昇、Ccrの有意な減少がみられ(表2、対照群)、この腎機能障害は17α-Hydroxyyohimban-16α-carboxylic acid methyl ester hydrochlorideの投与により顕著に改善された(表2、薬物投与群)。また、対照群でみられた再灌流後の腎静脈血漿中NA濃度の上昇は17α-Hydroxy- yohimban-16α-carboxylic acid methyl ester hydrochlorideにより、有意に抑制された(表3)。実施例2:ラット虚血性急性腎不全に対する2-(1-Ethyl-2-indazoyl)methyl-1,4-benzodioxan hydrochlorideあるいはN-[4-(4-Methyl-1-piperazinyl)phenyl]-9-acridinamine dihydrochloride の腎保護効果の評価 Sprague-Dawley(SD)系雄性ラット(8週齢)を用いて実施例1と同様に腎虚血再灌流処置を行い、腎障害モデルを作成した。虚血5分前に2-(1-Ethyl-2-indazoyl)methyl-1,4-benzodioxan hydrochlorideを0.1mg/kg(薬物A投与群)、N-[4-(4-Methyl-1-piperazinyl)phenyl]-9-acridinamine dihydrochlorideを1mg/kg(薬物B投与群)の用量で静脈内投与した。 腎臓の虚血再灌流処置により対照群でみられた腎機能障害は2-(1-Ethyl-2-indazoyl)methyl-1,4-benzodioxan hydrochlorideあるいは、N-[4-(4-Methyl-1-piperazinyl)phenyl]-9-acridinamine dihydrochlorideの投与により顕著に改善された(表4)。実施例3:シスプラチン誘発性腎障害に対する17α-Hydroxyyohimban-16α-carboxylic acid methyl ester hydrochlorideあるいはN-[4-(4-Methyl-1-piperazinyl)phenyl]-9-acridinamine dihydrochlorideの腎保護効果の評価 Sprague-Dawley(SD)系雄性ラット(9週齢)を用いた。シスプラチンは7.5mg/kgの用量で静脈内に投与した。17α-Hydroxyyohimban-16α-carboxylic acid methyl ester hydrochlorideは0.1mg/kg/dayの割合で(薬物A投与群)、N-[4-(4-Methyl-1-piperazinyl)phenyl]-9-acridinamine dihydrochlorideを3mg/kg/dayの割合で(薬物B投与群)いずれも4日間投与した。なお生理的食塩水を投与したものを対照群とした。シスプラチンを投与していない群を正常群とした。シスプラチン投与後3日目から24時間採尿し、採尿終了後、ペントバルビタール麻酔下で採血及び腎臓の摘出を行った。得られた血液及び尿から腎機能パラメーターとして血中尿素窒素(BUN)、血漿中クレアチニン(Pcr)、クレアチニンクリアランス(Ccr)を測定し、得られた腎静脈血からは腎静脈血漿中NA濃度を測定した。 シスプラチン誘発性腎障害の生食投与群でみられた腎機能障害は2-(1-Ethyl-2-indazoyl)methyl-1,4-benzodioxan hydrochlorideあるいは、N-[4-(4-Methyl-1-piperazinyl)phenyl]-9-acridinamine dihydrochlorideの投与により顕著に改善された(表5)。また、対照群でみられた再灌流後の腎静脈血漿中NA濃度の上昇は17α-Hydroxy- yohimban-16α-carboxylic acid methyl ester hydrochlorideにより、有意に抑制された(表6)。 以上の結果より、ラット腎虚血再灌流処置あるいはシスプラチン誘発性腎障害により、腎静脈血漿中NA濃度が上昇し、これが腎虚血再灌流障害あるいはシスプラチン誘発性腎障害の発症および維持に重要な役割を演じていることが示唆された。α2アドレナリン受容体あるいはα2Cアドレナリン受容体の遮断作用を有する化合物の投与により、腎虚血再灌流処置あるいはシスプラチン誘発性腎障害による腎静脈血漿中NA濃度の上昇が抑制され、その結果として腎障害が改善されたと考えられる。 以上の動物実験の結果に基づいて、臨床試験を実施する。 慢性腎臓病患者を対象として、通常の治療に追加して、本発明のα2アドレナリン受容体あるいはα2Cアドレナリン受容体の遮断作用を有する化合物を追加投与する。慢性腎臓病治療の目的は末期腎不全と心血管病の発症・進展抑制にあり、延いてはこのような患者の人工透析等より面倒な治療行為の開始時期を有意に遅らす(例えば約半年以上等)、もしくは排除することができる。臨床試験1:推算糸球体濾過値の軽度〜中等度低下の慢性腎臓病患者を対象に、主要評価項目を推算糸球体濾過値の減少率とし、α2アドレナリン受容体あるいはα2Cアドレナリン受容体の遮断作用を有する化合物の投与群と非投与群に無作為に分け、二重盲検群間比較試験とする。蛋白尿の有無、高血圧、糖尿合併の有無により比較検討する。投与群において推算糸球体濾過値の減少率が有意に低下すると考える。臨床試験2:推算糸球体濾過値の中等度〜高度低下の慢性腎臓病患者を対象に、主要評価項目は、2〜5年間の観察期間における透析導入率とする。α2アドレナリン受容体あるいはα2Cアドレナリン受容体の遮断作用を有する化合物の投与群と非投与群に無作為に分け、二重盲検群間比較試験とする。投与群において透析導入率の有意の低下が認められる。以上の臨床試験あるいは追加の臨床試験結果から、本剤が腎障害の治療又は予防において優れた効果を示すことが実証される。実施例4:製剤例(錠剤) 流動層造粒乾燥機中でヨヒンビン塩酸塩(17.24 g)、マンニトール(3187 g)および微結晶セルロース(663 g)を均一に混合後、機内でヒドロキシプロピルセルロース(132.6 g)の水溶液を噴霧して、混合物を造粒し、ついで同機で乾燥した。得られた造粒物をパワーミルを用い、1.5mmφパンチングスクリーンで解砕して整粒末とする。この整粒末(3,633 g)に対し、クロスカルメロースナトリウム(Ac-Di-Sol)(201.5 g)とステアリン酸マグネシウム(40.3 g)を加え、混合して打錠用顆粒とする。この顆粒を打錠機で7.0mmφの杵を用いて打錠し、1錠あたり重量125mgの素錠とする。得られた素錠に、フィルムコーティング機中で酸化チタンおよび黄色三二酸化鉄を分散し、ポリエチレングリコール8000を溶解したヒドロキシプロピルメチルセルロース2910液を噴霧し、1錠当たりヨヒンビン塩酸塩を0.5 mg含有するフィルム錠約25000錠を得る。 本発明の腎障害治療薬として用いるときは、成人患者に1回につき1〜3錠を、1日に1〜3回、本剤を経口で投与する。 α2アドレナリン受容体遮断作用を有する化合物を有効成分として含有することを特徴とする腎障害の治療又は予防薬。 α2アドレナリン受容体遮断作用を有する化合物が、インドールアルキルアミン誘導体である請求項1記載の腎障害の治療又は予防薬。 インドールアルキルアミン誘導体が、エステル化されていてもよいヨヒンビン酸もしくはその塩又はインドラミンもしくはその塩である請求項2記載の腎障害の治療又は予防薬。 α2アドレナリン受容体遮断作用を有する化合物が、α2Bアドレナリン受容体遮断作用を有する化合物である請求項1記載の腎障害の治療又は予防薬。 α2Bアドレナリン受容体遮断作用を有する化合物が、インダゾイルメチル-1,4-ベンゾジオキサン誘導体又はその塩である請求項4記載の腎障害の治療又は予防薬。 α2アドレナリン受容体遮断作用を有する化合物が、α2Cアドレナリン受容体遮断作用を有する化合物である請求項1記載の腎障害の治療又は予防薬。 α2Cアドレナリン受容体遮断作用を有する化合物が、ピペラジニイルフェニルアクリジナミン誘導体あるいはスピロキサトリエン又はそれらの塩である請求項6記載の腎障害の治療又は予防薬。 腎障害に対する優れた治療又は予防効果を示す医薬品を提供する。α2アドレナリン受容体遮断作用を有する化合物を有効成分として含有することを特徴とする腎障害の治療又は予防薬。20141211A16333全文3 α2アドレナリン受容体遮断作用を有する化合物を有効成分として含有することを特徴とする腎障害の治療又は予防薬。 腎障害が、腎機能障害、腎不全、急性腎障害、慢性腎臓病、腎虚血による障害又は糖尿病性腎症である請求項1に記載の腎障害の治療又は予防薬。 α2アドレナリン受容体遮断作用を有する化合物が、インドールアルキルアミン誘導体である請求項1又は2に記載の腎障害の治療又は予防薬。 インドールアルキルアミン誘導体が、エステル化されていてもよいヨヒンビン酸もしくはその塩又はインドラミンもしくはその塩である請求項3に記載の腎障害の治療又は予防薬。 α2アドレナリン受容体遮断作用を有する化合物が、α2Bアドレナリン受容体遮断作用を有する化合物である請求項1又は2に記載の腎障害の治療又は予防薬。 α2Bアドレナリン受容体遮断作用を有する化合物が、インダゾイルメチル-1,4-ベンゾジオキサン誘導体又はその塩である請求項5に記載の腎障害の治療又は予防薬。 α2アドレナリン受容体遮断作用を有する化合物が、α2Cアドレナリン受容体遮断作用を有する化合物である請求項1又は2に記載の腎障害の治療又は予防薬。 α2Cアドレナリン受容体遮断作用を有する化合物が、ピペラジニイルフェニルアクリジナミン誘導体あるいはスピロキサトリエン又はそれらの塩である請求項7に記載の腎障害の治療又は予防薬。


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